(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
造形対象である対象造形物を造形する3次元造形装置において、前記対象造形物に対応した3次元モデルである対象造形物モデルを所定の間隔でスライスすることでスライスモデルである対象スライスモデルを作成し、前記対象スライスモデルのスライス画像である対象スライス画像を作成するスライス画像作成装置であって、
前記対象スライスモデルは、複数の線分を有する輪郭線を複数有し、かつ、前記複数の輪郭線のうち何れか2つ以上の前記輪郭線が交差する交点を有し、
前記輪郭線には、前記対象造形物の外郭の形状を示す島輪郭線と、前記対象造形物の穴の形状を示す穴輪郭線とが含まれ、
前記島輪郭線と前記穴輪郭線とに対して異なる周回方向を設定する周回方向設定部と、
前記対象スライスモデルの前記複数の輪郭線の前記複数の線分の中から、前記対象スライスモデルを前記3次元造形装置が造形する造形領域と、前記3次元造形装置が造形しない非造形領域とを区別するための輪郭線を得るピーリングを行う線分であるピーリング線分を設定するピーリング線分設定部と、
前記ピーリング線分の前記周回方向に向かって前記ピーリング線分上をピーリングするピーリング部と、
前記交点において交差した複数の輪郭線の線分を候補線分とし、前記ピーリング部によって前記ピーリング線分上をピーリングしているときに前記交点に到達した際、前記交点を中心に、前記ピーリング線分と、前記複数の候補線分とがそれぞれ成す角度であって、前記ピーリング線分から前記ピーリング線分の前記周回方向と同一の方向に向かって成す角度である交点角度を有する交点情報を取得する交点情報取得部と、
前記複数の候補線分のうち、最も角度が小さい前記交点角度を有し、かつ前記造形領域と前記非造形領域とを区別する線分であって前記複数の候補線分のうち最外殻に配置された前記候補線分を、前記交点において前記ピーリング線分から乗り移る線分とし、前記候補線分を新たなピーリング線分とする乗り移り部と、
前記ピーリング部によって連続してピーリングされた線分を1つの生成された輪郭線である生成輪郭線とし、前記生成輪郭線に基づいて、前記造形領域と前記非造形領域とに分割することで、前記対象スライス画像を作成する作成部と、
を備えた、スライス画像作成装置。
前記交点情報は、前記候補線分が前記ピーリング部によってピーリングされた線分か、前記ピーリング部によってピーリングされていない未ピーリング線分であるかに関する情報であるピーリング情報を有し、
前記交点情報取得部は、前記候補線分の前記ピーリング情報を取得し、
前記乗り移り部は、前記ピーリング情報において、前記未ピーリング線分である前記候補線分のうち、最も角度が小さい前記交点角度を有し、かつ最外郭に配置された前記候補線分を前記新たなピーリング線分とする、請求項1または2に記載されたスライス画像作成装置。
前記交点処理部は、前記抽出した交点からそれぞれ等しい距離の位置に前記集約交点を設定し、前記抽出した交点を削除する、請求項4に記載されたスライス画像作成装置。
造形対象である対象造形物を造形する3次元造形装置において、前記対象造形物に対応した3次元モデルである対象造形物モデルを所定の間隔でスライスすることでスライスモデルである対象スライスモデルを作成し、前記対象スライスモデルのスライス画像である対象スライス画像を作成するスライス画像作成方法であって、
前記対象スライスモデルは、複数の線分を有する輪郭線を複数有し、かつ、前記複数の輪郭線のうち何れか2つ以上の前記輪郭線が交差する交点を有し、
前記輪郭線には、前記対象造形物の外郭の形状を示す島輪郭線と、前記対象造形物の穴の形状を示す穴輪郭線とが含まれ、
前記島輪郭線と前記穴輪郭線とに対して異なる周回方向を設定する周回方向設定工程と、
前記対象スライスモデルの前記複数の輪郭線の前記複数の線分の中から、前記対象スライスモデルを前記3次元造形装置が造形する造形領域と、前記3次元造形装置が造形しない非造形領域とを区別するための輪郭線を得るピーリングを行う線分であるピーリング線分を設定するピーリング線分設定工程と、
前記ピーリング線分の前記周回方向に向かって前記ピーリング線分上をピーリングするピーリング工程と、
前記交点において交差した複数の輪郭線の線分を候補線分とし、前記ピーリング工程において前記ピーリング線分上をピーリングしているときに前記交点に到達した際、前記交点を中心に、前記ピーリング線分と、前記複数の候補線分とがそれぞれ成す角度であって、前記ピーリング線分から前記ピーリング線分の前記周回方向と同一の方向に向かって成す角度である交点角度を有する交点情報を取得する交点情報取得工程と、
前記複数の候補線分のうち、最も角度が小さい前記交点角度を有し、かつ前記造形領域と前記非造形領域とを区別する線分であって前記複数の候補線分のうち最外殻に配置された前記候補線分を、前記交点において前記ピーリング線分から乗り移る線分とし、前記候補線分を新たなピーリング線分とする乗り移り工程と、
前記ピーリング工程において連続してピーリングした線分を1つの生成された輪郭線である生成輪郭線とし、前記生成輪郭線に基づいて、前記造形領域と前記非造形領域とに分割することで、前記対象スライス画像を作成する作成工程と、
を包含する、スライス画像作成方法。
前記交点情報は、前記候補線分が前記ピーリング工程においてピーリングした線分か、前記ピーリング工程においてピーリングしていない未ピーリング線分であるかに関する情報であるピーリング情報を有し、
前記交点情報取得工程では、前記候補線分の前記ピーリング情報を取得し、
前記乗り移り工程では、前記ピーリング情報において、前記未ピーリング線分である前記候補線分のうち、最も角度が小さい前記交点角度を有し、かつ最外郭に配置された前記候補線分を前記新たなピーリング線分とする、請求項7または8に記載されたスライス画像作成方法。
前記交点処理工程では、前記抽出した交点からそれぞれ等しい距離の位置に前記集約交点を設定し、前記抽出した交点を削除する、請求項10に記載されたスライス画像作成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、造形する対象造形物が、1つの造形物(以下、単位造形物という。)を複数組み合わせた対象造形物(以下、全体対象造形物という。)であることがあり得る。例えば、
図13(a)は、上記全体造形物に対応した対象造形物モデル(以下、全体造形物モデルという。)170の斜視図である。
図13(b)は、全体造形物モデル170の側面図である。
図13(a)に示すように、全体造形物モデル170は、複数の単位造形物に対応した単位造形物モデル170a、170b、170cの輪郭線によって構成されている。
図14は、
図13(b)の全体造形物モデル170を位置PT100でスライスしたスライスモデル(以下、全体スライスモデルという。)172である。
図14に示すように、このような全体スライスモデル172は、全体造形物モデル170と同様に、複数の単位造形物モデル170a、170b、170cの輪郭線173a、173b、173cによって構成されている。全体スライスモデル172には、複数の輪郭線173a、173b、173cが交差する交点184が存在することがあり得る。
【0007】
そこで、全体スライスモデル172のスライス画像(以下、全体スライス画像という。)を作成することに先立って、CAD装置などによって、全体スライスモデル172の輪郭線上を追跡することで、複数の輪郭線173a、173b、173cの中から、全体スライスモデル172の全体を示す輪郭線であって、造形領域と非造形領域とを区別するための輪郭線を得ること(以下、ピーリングともいう。)を行う。例えば、CAD装置は、
図14の輪郭線173a上の矢印の向きに、輪郭線173a上を追跡している場合、交点184では、輪郭線173aから他の輪郭線に乗り移ることが行われる。しかしながら、交点184では、乗り移ることが可能な輪郭線が複数存在する。具体的には、交点184において、乗り移ることが可能な輪郭線は、輪郭線173bおよび輪郭線173cの2つである。そのため、本来なら、輪郭線173cに乗り移るべきであるが、他の輪郭線である輪郭線173bに乗り移るおそれがあった。その輪郭線173bに乗り移った場合、全体スライスモデル172に関するピーリング(造形領域と非造形領域とを区別するための輪郭線を得ること)を正しく行うことができないため、所望の全体スライス画像を作成することができないおそれがあった。所望の全体スライス画像を作成できない場合、所望の全体造形物を造形することができない。なお、ピーリングとは、前述したように、造形領域と非造形領域とを区別するための輪郭線を得ることであり、「ピーリングする」とは、造形領域と非造形領域とを区別するための輪郭線を追跡することである。よって、ピーリングの途中で、乗り移る事が可能な輪郭線が複数存在する交点(例えば、交点184)に差し掛かった場合に、交点を通過後、次の造形領域と非造形領域とを区別するための輪郭線に乗り移る。これは、結果的に、常に造形領域の最外殻に位置する輪郭線を選択することになる。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、造形対象である対象造形物を造形する3次元造形装置において、所望のスライス画像を得ることが可能なスライス画像作成装置、3次元造形システム、および、スライス画像作成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るスライス画像作成装置は、造形対象である対象造形物を造形する3次元造形装置において、前記対象造形物に対応した3次元モデルである対象造形物モデルを所定の間隔でスライスすることでスライスモデルである対象スライスモデルを作成し、前記対象スライスモデルのスライス画像である対象スライス画像を作成するスライス画像作成装置である。前記対象スライスモデルは、複数の線分を有する輪郭線を複数有し、かつ、前記複数の輪郭線のうち何れか2つ以上の前記輪郭線が交差する交点を有する。前記輪郭線には、前記対象造形物の外郭の形状を示す島輪郭線と、前記対象造形物の穴の形状を示す穴輪郭線とが含まれる。前記スライス画像作成装置は、周回方向設定部と、ピーリング線分設定部と、ピーリング部と、交点情報取得部と、乗り移り部と、作成部とを備えている。前記周回方向設定部は、前記島輪郭線と前記穴輪郭線とに対して異なる周回方向を設定する。前記ピーリング線分設定部は、前記対象スライスモデルの前記複数の輪郭線の前記複数の線分の中から、前記対象スライスモデルを前記3次元造形装置が造形する造形領域と、前記3次元造形装置が造形しない非造形領域とを区別するための輪郭線を得るピーリングを行う線分であるピーリング線分を設定する。前記ピーリング部は、前記ピーリング線分の前記周回方向に向かって前記ピーリング線分上をピーリングする。前記交点情報取得部は、前記交点において交差した複数の輪郭線の線分を候補線分とし、前記ピーリング部によって前記ピーリング線分上をピーリングしているときに前記交点に到達した際、前記交点を中心に、前記ピーリング線分と、前記複数の候補線分とがそれぞれ成す角度であって、前記ピーリング線分から前記ピーリング線分の前記周回方向と同一の方向に向かって成す角度である交点角度を有する交点情報を取得する。前記乗り移り部は、前記複数の候補線分のうち、最も角度が小さい前記交点角度を有し、かつ前記造形領域と前記非造形領域とを区別する線分であって前記複数の候補線分のうち最外殻に配置された前記候補線分を、前記交点において前記ピーリング線分から乗り移る線分とし、前記候補線分を新たなピーリング線分とする。前記作成部は、前記ピーリング部によって連続してピーリングされた線分を1つの生成された輪郭線である生成輪郭線とし、前記生成輪郭線に基づいて、前記造形領域と前記非造形領域とに分割することで、前記対象スライス画像を作成する。
【0010】
前記スライス画像作成装置によれば、ピーリング部によってピーリング線分をピーリング中に、複数の輪郭線が交差する交点に到達した場合、交点情報取得部は、ピーリング線分と複数の候補線分とがそれぞれ成す角度である交点角度に関する角度情報を取得している。交点において、ピーリング中のピーリング線分から次の乗り移る線分は、ピーリング線分からピーリング線分の周回方向と同一の方向に向かって最も近い位置に配置された線分である。本発明では、交点角度を取得し、最も角度が小さい交点角度を有し、かつ最外殻に配置された候補線分を、交点において、次に乗り移る線分にしている。よって、複数の輪郭線が交差する交点が存在する対象スライスモデルであっても、交点において、次に乗り移る線分を正確に決定することができる。したがって、対象スライスモデルにおいて、輪郭線のピーリングが正確にできるため、所望の輪郭線が得られる。その結果、所望の対象スライス画像を作成することができる。
【0011】
本発明の好ましい一態様によれば、前記交点情報は、前記候補線分の前記周回方向が前記交点に近づくIn方向であるか、前記交点から遠ざかるOut方向であるかに関する情報である周回方向情報を有する。前記交点情報取得部は、前記候補線分の前記周回方向情報を取得する。前記乗り移り部は、前記周回方向が前記Out方向である前記候補線分のうち、最も角度が小さい前記交点角度を有し、かつ最外殻に配置された前記候補線分を前記新たなピーリング線分とする。
【0012】
上記態様によれば、交点情報取得部は、候補線分の周回方向情報を取得している。候補線分のうち周回方向がIn方向である線分は、ピーリングする方向が逆になるため、交点において次に乗り移る線分とはならない。そこで、上記態様では、仮に、最も角度が小さい交点角度を有する候補線分が、周回方向がIn方向である線分の場合、その候補線分を、次に乗り移る候補となる線分から除外することができる。よって、交点において、次に乗り移る線分をより正確に決定することができる。
【0013】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記交点情報は、前記候補線分が前記ピーリング部によってピーリングされた線分か、前記ピーリング部によってピーリングされていない未ピーリング線分であるかに関する情報であるピーリング情報を有する。前記交点情報取得部は、前記候補線分の前記ピーリング情報を取得する。前記乗り移り部は、前記ピーリング情報において、前記未ピーリング線分である前記候補線分のうち、最も角度が小さい前記交点角度を有し、最外殻に配置された前記候補線分を前記新たなピーリング線分とする。
【0014】
上記態様によれば、交点情報取得部は、候補線分のピーリング情報を取得している。候補線分のうち既にピーリングされた線分は、交点において次に乗り移る線分とはならない。そこで、上記態様では、仮に、最も角度が小さい交点角度を有する候補線分が既にピーリングされた線分である場合、その候補線分を、次に乗り移る候補となる線分から除外することができる。よって、交点において、次に乗り移る線分をより正確に決定することができる。
【0015】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記対象スライスモデルは、前記交点を複数有する。前記スライス画像作成装置は、前記複数の交点のうち、互いの前記交点間の距離が所定の距離よりも短い交点を複数抽出し、前記抽出した交点を1つの交点である集約交点に集約する交点処理部を備えている。
【0016】
複数の輪郭線が交差する交点が複数存在し、かつ、それら交点間の距離が所定の距離よりも短いような場合、コンピュータプログラムにおいて、交点を誤認識することによって、輪郭線のピーリングが失敗することがある。例えば、コンピュータプログラムにおいて、ピーリング中に、本来到達すべき交点ではなく、本来到達すべき交点に対して近傍した位置に配置された交点に到達したと誤認識することがあり得る。しかし、上記態様によれば、交点間の距離が所定の距離よりも短い位置に配置された複数の交点を1つの集約交点に集約している。よって、上述したような誤認識を事前に防止することができる。
【0017】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記交点処理部は、前記抽出した交点からそれぞれ等しい距離の位置に前記集約交点を設定し、前記抽出した交点を削除する。
【0018】
上記態様によれば、集約する複数の交点からそれぞれ等しい距離に位置するように集約交点を設定している。このことによって、集約交点と、集約する複数の交点とのそれぞれの距離をできるだけ短くすることができる。よって、造形対象である対象造形物の断面形状に近い対象スライス画像を作成することができる。
【0019】
本発明に係る3次元造形システムは、前記3次元造形装置と、上述した何れかに記載されたスライス画像作成装置と、を備えている。
【0020】
上記態様によれば、上述した何れかに記載されたスライス画像作成装置を備えた3次元造形システムを提供することができる。
【0021】
本発明に係るスライス画像作成方法は、造形対象である対象造形物を造形する3次元造形装置において、前記対象造形物に対応した3次元モデルである対象造形物モデルを所定の間隔でスライスすることでスライスモデルである対象スライスモデルを作成し、前記対象スライスモデルのスライス画像である対象スライス画像を作成するスライス画像作成方法である。前記対象スライスモデルは、複数の線分を有する輪郭線を複数有し、かつ、前記複数の輪郭線のうち何れか2つ以上の前記輪郭線が交差する交点を有する。前記輪郭線には、前記対象造形物の外郭の形状を示す島輪郭線と、前記対象造形物の穴の形状を示す穴輪郭線とが含まれる。前記スライス画像作成方法は、周回方向設定工程と、ピーリング線分設定工程と、ピーリング工程と、交点情報取得工程と、乗り移り工程と、作成工程とを包含する。前記周回方向設定工程では、前記島輪郭線と前記穴輪郭線とに対して異なる周回方向を設定する。前記ピーリング線分設定工程では、前記対象スライスモデルの前記複数の輪郭線の前記複数の線分の中から、前記対象スライスモデルを前記3次元造形装置が造形する造形領域と、前記3次元造形装置が造形しない非造形領域とを区別するための輪郭線を得るピーリングを行う線分であるピーリング線分を設定する。前記ピーリング工程では、前記ピーリング線分の前記周回方向に向かって前記ピーリング線分上をピーリングする。前記交点情報取得工程では、前記交点において交差した複数の輪郭線の線分を候補線分とし、前記ピーリング工程において前記ピーリング線分上をピーリングしているときに前記交点に到達した際、前記交点を中心に、前記ピーリング線分と、前記複数の候補線分とがそれぞれ成す角度であって、前記ピーリング線分から前記ピーリング線分の前記周回方向と同一の方向に向かって成す角度である交点角度を有する交点情報を取得する。前記乗り移り工程では、前記複数の候補線分のうち、最も角度が小さい前記交点角度を有し、かつ前記造形領域と前記非造形領域とを区別する線分であって前記複数の候補線分のうち最外殻に配置された前記候補線分を、前記交点において前記ピーリング線分から乗り移る線分とし、前記候補線分を新たなピーリング線分とする。前記作成工程では、前記ピーリング工程において連続してピーリングした線分を1つの生成された輪郭線である生成輪郭線とし、前記生成輪郭線に基づいて、前記造形領域と前記非造形領域とに分割することで、前記対象スライス画像を作成する。
【0022】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記交点情報は、前記候補線分の前記周回方向が前記交点に近づくIn方向であるか、前記交点から遠ざかるOut方向であるかに関する情報である周回方向情報を有する。前記交点情報取得工程では、前記候補線分の前記周回方向情報を取得する。前記乗り移り工程では、前記周回方向が前記Out方向である前記候補線分のうち、最も角度が小さい前記交点角度を有し、かつ最外郭に配置された前記候補線分を前記新たなピーリング線分とする。
【0023】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記交点情報は、前記候補線分が前記ピーリング工程においてピーリングした線分か、前記ピーリング工程においてピーリングしていない未ピーリング線分であるかに関する情報であるピーリング情報を有する。前記交点情報取得工程では、前記候補線分の前記ピーリング情報を取得する。前記乗り移り工程では、前記ピーリング情報において、前記未ピーリング線分である前記候補線分のうち、最も角度が小さい前記交点角度を有し、かつ最外殻に配置された前記候補線分を前記新たなピーリング線分とする。
【0024】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記対象スライスモデルは、前記交点を複数有する。前記スライス画像作成方法は、前記複数の交点のうち、互いの前記交点間の距離が所定の距離よりも短い交点を複数抽出し、前記抽出した交点を1つの交点である集約交点に集約する交点処理工程を包含する。
【0025】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記交点処理工程では、前記抽出した交点からそれぞれ等しい距離の位置に前記集約交点を設定し、前記抽出した交点を削除する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、造形する対象造形物に対応する所望の対象スライス画像を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るスライス画像作成装置を備えた3次元造形システムについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0029】
図1は、本実施形態に係る3次元造形システム10の断面図である。
図2は、3次元造形システム10の平面図である。なお、図面中の符号F、Rr、L、Rは、それぞれ前、後、左、右を示している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、3次元造形システム10の設置態様を何ら限定するものではない。
【0030】
3次元造形システム10は、3次元造形物を造形するシステムである。
図1に示すように、3次元造形システム10は、3次元造形装置10Aと、スライス画像作成装置100(
図7参照)とを備えている。3次元造形装置10Aは、3次元造形物の断面形状を用意し、液体の光硬化性樹脂を硬化させて断面形状に対応した形状の樹脂層を順次積層することによって、3次元造形物を造形する装置である。ここで、「断面形状」とは、3次元造形物を所定の厚み(例えば、0.1mm)ごとにスライスしたときの断面の形状である。「光硬化性樹脂」とは、所定の波長を含む光が照射されると、硬化する樹脂である。3次元造形装置10Aは、台11と、槽12と、ホルダ13と、光学装置14と、制御装置16とを備えている。
【0031】
台11は、ケース25に支持されている。台11には、光硬化性樹脂23に照射する光を通過させる開口21が形成されている。槽12は、液体の光硬化性樹脂23を収容する。槽12は、台11上に取り付け可能に載置されている。
図2に示すように、槽12は、台11に載置された状態において、台11の開口21を覆う。槽12は、光を透過させることのできる材料、例えば、透明な材料によって形成されているとよい。
【0032】
図1に示すように、ホルダ13は、槽12の上方、かつ、台11の開口21の上方に配置されている。ホルダ13は、下降したときに槽12内の光硬化性樹脂23に浸漬し、上昇するときに、光が照射されて硬化した光硬化性樹脂23を吊り上げるように昇降自在に構成されている。ここでは、台11には、上下方向に延びた支柱41が設けられている。支柱41の前方には、スライダ42が取り付けられている。スライダ42は、支柱41に沿って昇降自在であり、モータ43によって上方または下方に移動する。ここでは、ホルダ13は、スライダ42に取り付けられており、支柱41の前方に配置されている。ホルダ13は、モータ43によって上方または下方に移動する。
【0033】
光学装置14は、台11の下方に配置されている。光学装置14は、槽12内に収容された液体の光硬化性樹脂23に所定の波長からなる光を照射する装置である。光学装置14は、台11の下方に設けられたケース25に収容されている。光学装置14は、プロジェクタ31と、ミラー32とを備えている。プロジェクタ31は、光を発する光源であり、台11の前部の下方に配置されている。プロジェクタ31は、ホルダ13よりも前方に配置されている。プロジェクタ31の後部には、レンズ(図示せず)が配置されている。プロジェクタ31は、レンズを通じて前方から後方に向かって光を発する。ミラー32は、プロジェクタ31から発せられた光を槽12に向かって反射させる部材である。ミラー32は、台11に形成された開口21の下方、かつ、プロジェクタ31の後方に配置されている。プロジェクタ31から発せられた光は、ミラー32によって反射され、台11の開口21を通じて槽12内の光硬化性樹脂23に照射される。
【0034】
制御装置16は、ホルダ13が取り付けられたスライダ42を昇降自在に制御するモータ43、および、光学装置14のプロジェクタ31に接続されている。制御装置16は、モータ43を駆動することによって、スライダ42およびホルダ13を上方または下方に移動させる。制御装置16は、プロジェクタ31から発せられる光のエネルギー、光度、光量、光の波長帯域、光の形状、光を照射させる位置および光を発するタイミングなどを制御する。なお、制御装置16の構成は特に限定されない。例えば、制御装置16は、コンピュータであり、中央演算処理装置(以下、CPUという。)と、CPUが実行するプログラムなどを格納したROMと、RAMなどを備えていてもよい。
【0035】
以上、本実施形態に係る3次元造形装置10Aの構成について説明した。3次元造形装置10Aにおいて、造形対象である対象造形物を造形する際、CAD装置などを用いて対象造形物に対応した対象造形物モデルが作成される。そして、対象造形物モデルを所定の間隔でスライスすることで、対象造形物の断面形状に対応した対象スライスモデルを複数作成する。ここでは、対象スライスモデルのデータとは、STLデータのことである。
【0036】
対象スライスモデルは、造形する造形領域と、造形しない非造形領域とに分割される。ここでは、造形領域と非造形領域とにおいて、それぞれ異なる色を施すことによって、対象スライスモデルの対象スライス画像を作成する。例えば、造形領域には白色を施し、非造形領域には黒色を施すことによって、対象スライス画像を作成する。
【0037】
3次元造形装置10Aは、作成した対象スライス画像を用いて、光学装置14のプロジェクタ31から発せられた光の照射位置を制御する。例えば、硬化する光硬化性樹脂23の位置を適宜変更することで、造形領域に位置する光硬化性樹脂23を硬化させ、非造形領域に位置する光硬化性樹脂23を硬化させないようにする。このことによって、対象スライス画像に沿った断面形状を造形することができる。そして、ホルダ13を順次上昇させることによって、硬化した樹脂層が下方に向かって連続的に形成されることで、所望の対象造形物が造形される。
【0038】
ところで、上述したように、
図14に示した輪郭線173a上の矢印の方向に輪郭線173a上をピーリングしている場合、複数の輪郭線が交差する交点184では、輪郭線173aから他の輪郭線に乗り移ることが行われる。しかしながら、交点184では、乗り移ることが可能な輪郭線が複数存在する。具体的には、交点184において、乗り移ることが可能な輪郭線は、輪郭線173b、173cの2つである。そのため、本来なら、輪郭線173cに乗り移るべきであるが、他の輪郭線である輪郭線173bに乗り移るおそれがあった。仮に、その輪郭線173bに乗り移った場合、全体スライスモデル172に関するピーリングを正しく行うことができないため、所望の全体スライス画像を作成することができないおそれがあった。所望の全体スライス画像を作成できない場合、所望の全体造形物を造形することができない。
【0039】
そこで、本実施形態では、全体スライスモデルの輪郭線上のピーリングを正確に行うことが可能なスライス画像作成装置100を提供する。
【0040】
本願出願人は、輪郭線のピーリングが失敗する原因について検討した。検討した結果、本願出願人は、上述したような交点184のように、複数の輪郭線173a、173b、173cが1つの点で交差するとき、次に乗り移る輪郭線が明確に決定されていなかったため、ピーリングが正しく行うことができないことがあり得ることを見出した。そこで、本願出願人は、複数の輪郭線173a、173b、173cが交差する交点184において、複数の輪郭線173a、173b、173cと交点184とのそれぞれの情報(以下、交点情報という。)を取得することで、交点184において、乗り移る輪郭線を明確に決定することができることを見出した。具体的な交点情報は、以下の通りである。
【0041】
ここでは、まず、対象造形物モデルを構成する輪郭線について説明する。
図3は、対象造形物モデル110の例を示す図であり、対象造形物モデル110の斜視図である。
図4は、
図3の対象造形物モデル110の対象スライスモデル120の一例を示す図である。
図3に示す対象造形物モデル110は、4つの単位造形物モデル111、112、113、114を組み合わせた全体造形物モデルである。
図4に示すように、対象スライスモデル120を構成する輪郭線は、島輪郭線121、122、123、124と、穴輪郭線125とを有している。ここで、「島輪郭線」とは、3次元造形装置10Aが造形する造形領域の外郭を示す輪郭線のことである。「穴輪郭線」とは、穴の形状を示す輪郭線のことである。コンピュータプログラムにおいて、島輪郭線121〜124と穴輪郭線125とを識別するために、それぞれの輪郭線において周回方向を設定する。例えば、
図4の対象スライスモデル120では、島輪郭線121〜124の周回方向が時計回りであり、穴輪郭線125の周回方向が反時計回りである。なお、島輪郭線121〜124の周回方向と穴輪郭線125の周回方向とは異なっていればよい。例えば、島輪郭線121〜124の周回方向が反時計回りであり、穴輪郭線125の周回方向が時計回りであってもよい。ここでは、設定した周回方向は、ピーリングを行う際にピーリングする方向でもある。
【0042】
なお、輪郭線は、複数の線分によって構成されている。ここでは、線分は、交点と交点とを結ぶ線である。例えば、輪郭線124の線分124aは、交点131と交点134とを結ぶ線である。
図5は、
図4の対象スライスモデル120の範囲Aを拡大した拡大図である。
図5に示すように、例えば、島輪郭線121は、少なくとも線分121a、121bを有している。島輪郭線122は、少なくとも線分122a、122bを有している。
【0043】
次に、上述した交点情報について詳述する。対象スライスモデル120では、3つの輪郭線121、122、124が交差する交点131が存在する。例えば、ピーリングしている線分(以下、ピーリング線分という。)が輪郭線124の線分124aであるとする。このとき、ピーリング線分124a上を周回方向の向きでピーリングし、交点131に到達した場合、次に乗り移る候補となる輪郭線の線分(以下、候補線分という。)は、輪郭線121の線分121a、121b、輪郭線122の線分122a、122b、輪郭線124の線分124bである。ここでは、各輪郭線の候補線分121a、121b、122a、122b、124bに関する交点情報を取得することで、次に乗り移る輪郭線の線分の候補を決定することができる。具体的には、本実施形態では、交点情報は、「角度情報」、「周回方向情報」および「ピーリング情報」を有する。
【0044】
交点131において、次に乗り移る線分は、ピーリング線分124aからピーリング線分124aの周回方向と同一の方向(輪郭線124の周回方向であり、この場合、時計回りの方向)に向かって最も近い線分である。
図5では、交点131において、ピーリング線分124aから乗り移るべき線分は、線分121bである。そこで、ピーリング線分124aの周回方向と同一の方向において、ピーリング線分124aから最も近い位置に配置された線分を求めるために「角度情報」を使用する。「角度情報」とは、交点において、ピーリング線分と、複数の候補線分とがそれぞれ成す角度(以下、交点角度という。)に関する情報である。この交点角度は、ピーリング中のピーリング線分からピーリング線分の周回方向に向かって成す角度のことである。例えば、
図5において、交点131を中心にして、ピーリング線分124aと候補線分121bとの交点角度は、θ1である。同様に、交点131を中心にして、ピーリング線分124aと、候補線分122b、124b、121a、および122aとのそれぞれの交点角度は、θ2、θ3、θ4、およびθ5である。
【0045】
また、交点131において、次に乗り移る線分は、候補線分の周回方向が交点131から遠ざかる方向である線分である。そこで、「周回方向情報」を使用する。ここで、「周回方向情報」とは、候補線分の周回方向が、交点に近づく方向(以下、In方向)であるか、交点から遠ざかる方向(Out方向)であるかに関する情報のことである。
図5では、周回方向がIn方向である候補線分は、線分121a、122aである。周回方向がOut方向である候補線分は、線分121b、122b、124bである。そのため、周回方向情報によって、In方向である線分121a、122aが次に乗り移る線分の候補から外される。
【0046】
また、交点131において、次に乗り移る線分は、まだピーリングされていない線分である。そこで、「ピーリング情報」を使用する。ここで、「ピーリング情報」とは、候補線分が既にピーリングされた線分か否かに関する情報のことである。以下、既にピーリングされた線分をピーリング済み線分といい、まだピーリングされていない線分を未ピーリング線分ともいう。例えば、
図5では、全ての候補線分121a、121b、122a、122b、124bが未ピーリング線分であるとする。
【0047】
本実施形態では、以上の3つの交点情報を使用して、複数の候補線分の中から次に乗り移る線分を決定する。具体的には、複数の候補線分のうち、Out方向に周回方向が設定され、かつ、未ピーリング線分である線分のうち、ピーリング線分からピーリング線分の周回方向と同一の方向に向かって最も近い位置に配置されている線分、すなわち、最も小さい交点角度を有する線分が次に乗り移る線分である。例えば、
図5に示すように、ピーリング線分124aをピーリング中に、交点131に到達したとき、周回方向がOut方向に設定され、未ピーリング線分であって、かつ、最も小さい交点角度θ1を有する候補線分121bに乗り移る。
【0048】
以上のように、交点情報を取得することで、複数の輪郭線が交差する交点が存在している対象スライスモデルであっても、輪郭線の乗り換えが正確に行われるため、輪郭線のピーリングの失敗を回避することができる。
【0049】
本願出願人は、輪郭線のピーリングが失敗する原因についてさらに検討した。検討した結果、本願出願人は、複数の輪郭線が交差する交点が複数存在し、かつ、それら交点が互いに近傍している場合、コンピュータプログラムにおいて、交点が誤認識されることによって、輪郭線のピーリングが失敗することを発見した。
図6(a)は、対象スライスモデル140の一例を示す図であり、対象スライスモデル140の一部を拡大した図である。例えば、
図6(a)では、複数の交点145、146、147が存在する。これら交点145〜147が互いに近傍しているとする。ここで、例えば、ピーリング線分141aをピーリングしているとき、交点145に到達し、次にピーリング線分141aから他の線分に乗り移ることが行われる。しかしながら、交点145〜147が互いに近傍しているため、コンピュータプログラムにおいて、ピーリング中に到達した交点を正しく認識することができないことがある。例えば、本来ならば交点145に到達したのにも関わらず、交点146または交点147に到達したと認識することがあり得る。その結果、線分の乗り移りが正しく行われないため、ピーリングが正しく行われない場合がある。
【0050】
そこで、本願出願人は、複数の交点145〜147が互いに近傍している場合、それら交点145〜147を1つの交点に集約することで、到達した交点の誤認識を防止することができることを見出した。互いに近傍している複数の交点を1つの交点(以下、集約交点という。)に集約する手順は特に限定されない。例えば、
図6(a)に示すように、交点145〜147のうち2つの交点間の距離d1、d2、d3は、何れも所定の距離よりも短いとする。このように、交点145〜147同士の距離d1、d2、d3が所定の距離よりも短い場合、該当する交点145〜147同士は近接している判定し、それら交点145〜147を1つの交点に集約する。このとき、例えば、
図6(b)に示すように、交点145〜147を集約交点148に集約し、集約交点148に、交点145〜147に接続されていた線分141a、141b、142a、142b、143a、143bを接続する。そして、
図6(a)の交点145〜147は削除される。なお、集約交点148は、削除する前の交点145〜147のそれぞれから距離が等しい点である。ただし、集約交点は、交点145〜147の何れかであってもよい。例えば、集約交点が交点145である場合、他の交点146、147は削除され、交点146、147に接続されていた線分141b、142a、142b、143aは、交点145に接続される。なお、ここでは、「近接」とは、交点同士が接している場合も含む。
【0051】
以上のことによって、ピーリング中に到達した交点を、近傍に位置する交点と誤認識することを回避することができる。
【0052】
本実施形態では、スライス画像作成装置100は、上述したように、交点において交点情報を取得することで乗り移り先の線分を決定する機能、および、近傍している複数の交点を1つの集約交点に集約する機能を有している。
【0053】
次に、本実施形態に係るスライス画像作成装置100について詳細に説明する。
図7は、スライス画像作成装置100のブロック図である。スライス画像作成装置100は、3次元造形装置10Aと別体であってもよいし、3次元造形装置10Aに内蔵されていてもよい。例えば、スライス画像作成装置100は、コンピュータであり、CPUと、CPUが実行するプログラムなどを格納したROMと、RAMなどを備えていてもよい。ここでは、コンピュータ内に保存されたプログラムを使用して、対象スライス画像を作成する。スライス画像作成装置100は、3次元造形装置10Aの制御装置16(
図1参照)に接続されている。スライス画像作成装置100は、3次元造形システム10のための専用のコンピュータであってもよく、汎用のコンピュータであってもよい。
【0054】
スライス画像作成装置100は、記憶部52と、前処理部54と、スライスモデル作成部56と、周回方向設定部58と、交点処理部60と、ピーリング線分設定部62と、ピーリング部64と、交点情報取得部66と、乗り移り部68と、輪郭線判定部70と、作成部72と
を備えている。なお、上述した各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。
【0055】
図8は、対象スライス画像を作成する手順を示したフローチャートである。ここでは、
図3の対象造形物モデル110をスライスして、
図4の対象スライスモデル120を作成し、その後、対象スライスモデル120の対象スライス画像160(
図12参照)を作成する手順について、
図8のフローチャートを用いて説明する。
【0056】
なお、ここでは、記憶部52には、対象造形物に対応する対象造形物モデル110(
図3参照)のデータが予め記憶されているものとする。対象造形物モデル110のデータは、例えば、ユーザの操作によって、記憶媒体または他のコンピュータ(図示せず)から記憶部52に読み込まれる。対象造形物モデル110は、例えば、XYZ直交座標系の複数の点の集合で特定されるものであり、3次元モデルである。対象造形物モデル110では、複数のポリゴンを組み合わせることで、対象造形物を再現している。
【0057】
まず、ステップS101では、前処理部54は、記憶部52に記憶された対象造形物モデル110に対して、前処理を行う。対象造形物モデル110は、造形対象である対象造形物の3次元形状を忠実に再現した詳細なデータであることが多い。対象造形物モデル110をそのまま用いると、スライス画像作成装置100における対象スライス画像160(
図12参照)の作成処理に多大な時間を要することがある。そこで、前処理部54は、対象造形物モデル110に対して前処理を行うことで、対象造形物モデル110のデータ量を小さくすることが好ましい。ここでは、前処理部54は、対象造形物モデル110に対して平滑化処理を行う。例えば、平滑化処理として、対象造形物モデル110を構成するポリゴンの数を減少させ、データ量を小さくする処理を行えばよい。平滑化処理の方法は特に限定されず、例えば、従来公知の平滑化処理の方法を適用することができる。例えば、平滑化処理の方法として、ガウス関数を使用してもよい。ここでは、平滑化処理が行われた対象造形物モデル110のデータは、記憶部52に記憶される。なお、ステップS101の前処理は、省略することが可能である。
【0058】
次に、ステップS102では、例えば、スライスモデル作成部56は、
図4に示すような対象スライスモデル120を作成する。ここでは、スライスモデル作成部56は、
図3の対象造形物モデル110を所定の間隔で水平方向にスライスすることによって、対象造形物の断面形状に沿った2次元の対象スライスモデルを複数作成する。ただし、スライスする方向は、水平方向に限定されず、垂直方向であってもよい。なお、上記所定の間隔は、予め決められた値であり、記憶部52に予め記憶されている値である。
図4の対象スライスモデル120は、作成した複数の対象スライスモデルのうちの1つである。上述したように、対象スライスモデル120は、島輪郭線121〜124と、穴輪郭線125とから構成されている。スライスモデル作成部56によって作成された対象スライスモデル120は、記憶部52に記憶される。
【0059】
次に、ステップS103では、周回方向設定部58は、対象スライスモデル120の各輪郭線において、周回方向を設定する。周回方向設定部58は、島輪郭線と穴輪郭線とについて、互いに異なる周回方向を設定する。
図4の対象スライスモデル120では、島輪郭線は、輪郭線121〜124であり、穴輪郭線は、輪郭線125である。ここでは、周回方向設定部58は、島輪郭線121〜124の周回方向を時計回りに設定し、穴輪郭線125の周回方向を反時計回りに設定する。
【0060】
次に、ステップS104では、交点処理部60は、対象スライスモデル120に対して交点処理を行う。上述したように、例えば、
図6(a)の対象スライスモデル140では、交点145〜147が存在し、交点145〜147のうち2つの交点間の距離d1、d2、d3は、何れも所定の距離よりも短い。このように、交点同士の距離d1、d2、d3が所定の距離よりも短い場合、交点処理部60は、該当する交点145〜147同士は近接している判定し、交点145〜147を抽出する。そして、抽出した交点145〜147を1つの交点に集約する。この所定の距離は、予め定められている値であり、記憶部52に予め記憶されている値である。
図6(a)の対象スライスモデル140では、交点145〜147は、互いに近接している。そのため、交点処理部60は、交点145〜147を1つの集約交点148(
図6(b)参照)に集約し、交点145〜147を削除する。そして、交点処理部60は、集約交点148に、交点145〜147に接続されていた線分141a、141b、142a、142b、143a、143bを接続する。なお、
図4の対象スライスモデル120では、互いの交点間の距離は所定の距離以上の長さである。そのため、対象スライスモデル120では、交点処理部60によって複数の交点が1つの集約交点に集約される処理は行われない。
【0061】
次に、ステップS105では、ピーリング線分設定部62は、ピーリングを開始するピーリング線分を設定する。ここでは、ピーリング線分設定部62は、対象スライスモデル120の輪郭線の線分のうち、まだピーリングしていない線分の中で最外郭に位置する輪郭線の線分を、ピーリング線分に設定する。なお、ステップS105の処理を最初に行う際、まだ輪郭線の線分のピーリングは行われていないため、ピーリング線分は、最外郭に位置する輪郭線の線分の何れかである。例えば、
図4の対象スライスモデル120では、輪郭線121が最外郭に位置する輪郭線の1つである。よって、ステップS105の処理を最初に行う場合、ピーリング線分設定部62は、例えば、輪郭線121の線分121bをピーリング線分に設定する。
【0062】
次に、ステップS106において、ピーリング部64は、ピーリング線分121bのピーリングを開始する。ここでは、ピーリング部64は、ピーリング線分121bの周回方向、すなわち、線分121bを有する輪郭線121の周回方向に向かってピーリングを開始する。
図4の対象スライスモデル120では、ピーリング線分121bを有する輪郭線121は、島輪郭線であり、輪郭線121の周回方向は、時計回りの方向である。そこで、ピーリング部64は、時計回りの方向に向かって、ピーリング線分121bのピーリングを開始する。ところで、
図5に示すように、ピーリング線分が線分124aであり、線分124aをピーリングしている場合、複数の輪郭線121、122、124が交差する交点131に到達する。このように、交点131に到達した場合、現在のピーリング線分124aから他の線分に乗り移ることが行われる。
図9は、ピーリング線分124aから他の線分に乗り換える手順を示したフローチャートである。ここでは、ピーリング線分124aから他の線分に乗り換える手順は、
図9のステップS201〜S203に示す通りである。
【0063】
本実施形態では、交点131において、ピーリング線分124aから、次にどの線分に乗り移るかの決定は、交点情報に基づいて行われる。そのため、まず、ステップS201では、交点情報取得部66は、乗り移る候補である候補線分121a、121b、122a、122b、124bに関する交点情報を取得する。ここでは、交点情報は、「角度情報」、「周回方向情報」および「ピーリング情報」を有する。上述したように、角度情報とは、交点において、ピーリング中のピーリング線分124aと、複数の候補線分121a、121b、122a、122b、124bとがそれぞれ成す交点角度θ1、θ2、θ3、θ4、θ5に関する情報である。周回方向情報とは、候補線分121a、121b、122a、122b、124bの周回方向が、交点131に近づくIn方向か、交点131から遠ざかるOut方向かに関する情報のことである。ピーリング情報とは、候補線分121a、121b、122a、122b、124bが既にピーリングされた線分か否かに関する情報のことである。例えば、交点131における候補線分121bにおいて、角度情報である交点角度はθ1であり、周回方向情報における周回方向は、Out方向であり、ピーリング情報では未ピーリング線分である。
【0064】
ステップS201において、交点131における複数の候補線分121a、121b、122a、122b、124bに関するそれぞれの交点情報を取得した後、ステップS202では、乗り移り部68は、交点131において、次に乗り移る線分を決定する。ここでは、乗り移り部68は、複数の候補線分121a、121b、122a、122b、124bの中から、周回方向がOut方向であり、かつ、まだピーリングされていない未ピーリング線分である線分の中で交点角度が最も小さい線分を、次に乗り移る線分とする。なお、次に乗り移る線分は、複数の候補線分のうち最外郭に位置する線分でもある。
図4の対象スライスモデル120では、交点131において、次に乗り移る線分は、線分121bである。そして、ステップS203では、ピーリング部64は、線分121bを新たなピーリング線分に設定し、ピーリング線分121bの周回方向に向かってピーリングを再開する。
【0065】
なお、
図4の対象スライスモデル120では、輪郭線121の線分121bからピーリングを開始する。そして、線分121bをピーリング中に交点132に到達する。交点132において、線分121bから輪郭線122の線分122cに乗り移る。線分122cをピーリング中に交点133に到達し、交点133において、線分122cから線分123aに乗り移る。その後、もう一度、交点133に到達し、線分123aから線分122dに乗り移る。次に、交点134に到達し、交点134において、線分122dから線分124aに乗り移る。その後、上述したように、交点131において、線分124aから線分121bに乗り移って、輪郭線のピーリングが終了する。ここでは、連続してピーリングされた線分を1つの輪郭線151(
図10参照)とする。
【0066】
次に、ステップS107において、まだピーリングしていない線分(輪郭線)が存在するか否かを判定する。まだピーリングしていない線分、すなわち、ピーリングすべき線分が存在する場合、ステップS105に戻り、ピーリング線分設定部62が、次にピーリングを開始する輪郭線の線分を設定する。以上のようにして、全ての輪郭線の線分をピーリングするまで、ステップS105〜S107を繰り返し行う。ステップS107において、ピーリングしていない線分が存在しない場合、次にステップS108に進む。
【0067】
図10は、ピーリング後(ピーリングが行われた後)の対象スライスモデル120を示す図である。
図10に示すように、対象スライスモデル120では、ピーリングを行った結果、連続してピーリングされた線分を1つの生成された輪郭線とし、合計4つの輪郭線151〜154が生成されている。ここでは、各輪郭線151〜154において、ピーリングした方向が周回方向となる。そのため、輪郭線151、153、154の周回方向は時計回りのため、輪郭線151、153、154は、島輪郭線である。一方、輪郭線152の周回方向は反時計回りであるため、輪郭線152は、穴輪郭線である。なお、本実施形態では、輪郭線151〜154は、本発明の「生成輪郭線」に対応する。
【0068】
ステップS108では、ピーリング、すなわち、輪郭線のピーリングによって得られた輪郭線151〜154の判定を行う。ここでは、輪郭線判定部70は、輪郭線151〜154が必要な輪郭線であるか否かを判定する。そして、不要であると判定された輪郭線を削除する。具体的には、輪郭線判定部70は、島輪郭線のうち、最も隣接した位置で外側から囲む島輪郭線が設定されている島輪郭線が不要な輪郭線であると判定する。換言すると、輪郭線判定部70は、対象となる島輪郭線において、対象となる島輪郭線を囲む輪郭線のうち、最も近い位置で囲む輪郭線が島輪郭線である場合、その対象となる島輪郭線は不要な輪郭線であると判定する。例えば、
図10において、島輪郭線153は、最も隣接した位置で島輪郭線151に囲まれている。そのため、島輪郭線153は、不要な輪郭線であると判定される。同様に、島輪郭線154は、最も隣接した位置で島輪郭線153に囲まれているため、不要な輪郭線であると判定される。なお、島輪郭線151は、他の島輪郭線に囲まれていないため、対象スライスモデル120の外郭を示す輪郭線であるといえる。よって、輪郭線判定部70は、島輪郭線151は、必要な輪郭線であると判定する。輪郭線152は、穴輪郭線であり、穴の形状を示す輪郭線である。そのため、輪郭線判定部70は、穴輪郭線152は必要な輪郭線であると判定する。
【0069】
図11は、不要な輪郭線を削除した後の対象スライスモデル120を示す図である。以上のようにして、
図11に示すように、輪郭線判定部70は、島輪郭線153、154は不必要な輪郭線であると判定し、島輪郭線153、154を削除する。一方、輪郭線判定部70は、島輪郭線151、および、穴輪郭線152は必要な輪郭線であると判定する。よって、島輪郭線151、および、穴輪郭線152は残された状態となる。
【0070】
次に、ステップS109では、作成部72は、対象スライス画像160(
図12参照)を作成する。具体的には、まず、作成部72は、
図11の対象スライスモデル120を造形領域と非造形領域とに分ける。ここでは、作成部72は、島輪郭線151に囲まれた領域のうち、穴輪郭線152によって囲まれた領域を除いた領域を造形領域156aに設定する。一方、作成部72は、造形領域156a以外の領域、すなわち、穴輪郭線152によって囲まれた領域と、島輪郭線151によって囲まれていない領域を非造形領域156bに設定する。そして、作成部72は、造形領域156a内のピクセルを白色に変換し、非造形領域156b内のピクセルを黒色に変換することで、
図12に示すような対象スライス画像160を作成する。なお、
図12において、黒色に施された領域は、斜線で表現されている。
【0071】
なお、3次元造形装置10Aは、以上のようにして作成された対象スライス画像に沿った対象造形物を造形する。例えば、
図12の対象スライス画像160を使用して、対象スライス画像160に対応した断面形状を造形する。具体的には、造形領域156aである白色に施された領域に位置する光硬化性樹脂23にプロジェクタ31から発せられた光を照射させることで、造形領域156aに対応する領域に位置する光硬化性樹脂23を硬化させる。一方、非造形領域156bである黒色に施された領域に位置する光硬化性樹脂23には、プロジェクタ31から発せられた光を照射させない。このことによって、非造形領域156bに対応する位置には、造形させないようにする。
【0072】
以上のように、本実施形態では、
図5に示すように、ピーリング部64によってピーリング線分124aをピーリング中に、複数の輪郭線121、122、124が交差する交点131に到達した場合、交点情報取得部66は、ピーリング線分124aと複数の候補線分121a、121b、122a、122b、124bとがそれぞれ成す角度である交点角度θ1〜θ5に関する角度情報を取得している。交点131において、ピーリング中のピーリング線分124aから次の乗り移る線分は、ピーリング線分124aからピーリング線分124aの周回方向と同一の方向に向かって最も近い位置に配置された線分である。
図5の対象スライスモデル120では、交点131において、交点角度θ1〜θ5を取得し、最も角度が小さい交点角度θ1を有する候補線分121bを、次に乗り移る線分にしている。よって、複数の輪郭線121、122、124が交差する交点131が存在する対象スライスモデル120であっても、交点131において、次に乗り移る線分を正確に決定することができる。したがって、対象スライスモデル120において、輪郭線のピーリングが正確にできるため、
図11のような所望の輪郭線151、152が得られる。その結果、
図12に示すような所望の対象スライス画像160を作成することができる。
【0073】
本実施形態では、交点情報取得部66は、
図5に示すように、候補線分121a、121b、122a、122b、124bの周回方向が交点131に近づくIn方向であるか、交点131から遠ざかるOut方向であるかに関する候補線分の周回方向情報を取得している。候補線分121a、121b、122a、122b、124bのうち周回方向がIn方向である線分121a、122aは、ピーリングする方向が逆になるため、交点131において次に乗り移る線分とはならない。よって、例えば、最も角度が小さい交点角度を有する候補線分が、周回方向がIn方向である線分の場合、その候補線分を、次に乗り移る候補となる線分から除外することができる。よって、交点において、次に乗り移る線分をより正確に決定することができる。
【0074】
また、本実施形態では、交点情報取得部66は、候補線分121a、121b、122a、122b、124bのピーリング情報を取得している。候補線分121a、121b、122a、122b、124bのうち既にピーリングされた線分は、交点131において次に乗り移る線分とはならない。よって、例えば、最も角度が小さい交点角度を有する候補線分が既にピーリングされた線分である場合、その候補線分を、次に乗り移る候補となる線分から除外することができる。よって、交点において、次に乗り移る線分をより正確に決定することができる。
【0075】
図6(a)に示すように、複数の輪郭線141〜143が交差する複数の交点145〜147が存在し、かつ、それら交点145〜147間の距離が所定の距離よりも短いような場合、コンピュータプログラムにおいて、交点を誤認識することによって、輪郭線のピーリングが失敗することがある。例えば、コンピュータプログラムにおいて、ピーリング中に、交点145に到達したと認識すべきところ、交点146または交点147に到達したと誤認識することがあり得る。しかし、本実施形態では、交点処理部60は、
図6(b)に示すように、交点間の距離が所定の距離よりも短い位置に配置された複数の交点145〜147を1つの集約交点148に集約している。よって、上述したような誤認識を事前に防止することができる。
【0076】
本実施形態では、交点処理部60は、集約交点148を、集約すべき複数の交点145〜147からそれぞれ等しい距離の位置に設定する。そして、交点処理部60は、複数の交点145〜147を削除する。このことによって、集約交点148と、集約すべき複数の交点145〜147とのそれぞれの距離をできるだけ短くすることができる。よって、造形対象である対象造形物の断面形状に近い対象スライス画像160を作成することができる。
【0077】
なお、前述したように、スライス画像作成装置100の記憶部52、前処理部54、スライスモデル作成部56、周回方向設定部58、交点処理部60、ピーリング線分設定部62、ピーリング部64、交点情報取得部66、乗り移り部68、輪郭線判定部70、および作成部72は、ソフトウェアにより構成されていてもよい。すなわち、上記各部は、コンピュータプログラムがコンピュータに読み込まれることにより、当該コンピュータによって実現されるようになっていてもよい。本発明には、コンピュータを上記各部として機能させるためのコンピュータプログラムが含まれる。また、本発明には、当該コンピュータプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体が含まれる。