(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エンボスは、紙の漉き目の方向に短尺な楕円形状であり、長辺にくびれ部を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の家庭用薄葉紙の製造方法。
前記家庭用薄葉紙は、パルプ及び水溶性バインダーを含有する実質的に水分解可能であり、目付が30〜150gsmの水解性シートであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の家庭用薄葉紙の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態である家庭用薄葉紙を詳細に説明する。但し、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0018】
なお、本発明である家庭用薄葉紙において、家庭用薄葉紙は水解性シートであるトイレクリーナー100を一例にして説明する。また、トイレクリーナー100の図面縦方向をX方向、トイレクリーナー100の図面横方向をY方向として説明する。
【0019】
また、トイレクリーナー100のY方向は、抄紙機上の紙の進行(漉き目の)方向(マシン方向(MD方向):machine direction)であり、トイレクリーナー100のX方向
は、抄紙機の幅(流れ目に直角)方向(クロスマシン方向(CD方向)、cross machine direction)である。
【0020】
(実施形態)
本実施形態によって製造されるトイレクリーナー100は、複数枚の原紙がプライ加工(積層)されたものであって、所定の薬液が塗布されている。また、トイレクリーナー100のシート全面には、
図1に示す通り、紙の漉き目の方向に短尺な楕円形状にエンボスEM11の加工が施されている。
また、
図1の図面手前方向に凸部のエンボスEM11と、図面手前方向に凹部のエンボスEM11を交互に配置されている。
【0021】
また、トイレクリーナー100の全面に加工されたエンボスは、
図2に示すように、凸部のエンボスEM21と凹部のエンボスEM22とが、交互に配置され、凸部のエンボスEM21と凹部のエンボスEM22との間に中間部MD21を有するエンボスパターンを形成している。ここで、凹部のエンボスEM22は、凸部のエンボスEM21を反転した形状である。また、中間部MD21は、エンボスEM21若しくはエンボスEM22が未形成の部分であり、このため、中間部MD21の高さは、凸部のエンボスEM21よりも低く、凹部のエンボスEM22よりも高い。
【0022】
このように、凸部のエンボスEM21及び凹部のエンボスEM22が縦方向においても横方向においても交互に形成されていることで、凸部同士や凹部同士が一列に並んでいるエンボスパターンよりも汚れの拭き取り性を向上させることができる。なお、凸部のエンボスEM21と凹部のエンボスEM22の形状は、特に限定されず、円形、楕円形、多角形等が用いられる。各形状を組み合わせたものとしてもよい。
【0023】
なお、エンボスEM21及びEM22の形状としては、
図2に示すように、紙の漉き目の方向に短尺な楕円形状であり、且つ、長辺にくびれ部を有する形状、所謂、ひょうたん形状のエンボスが好ましい。
【0024】
また、トイレクリーナー100は、折り畳み加工されることにより、例えば、8つ折りに折り畳まれる。そして、折り畳まれた状態で保管用のプラスチックケースや包装フィルム内等に保管され、使用時には必要に応じて広げて使用される。
【0025】
また、本実施形態のトイレクリーナー100は、トイレを掃除した後、そのまま便器の水溜りに廃棄できるように、水解性の繊維集合体から構成されている。
【0026】
繊維集合体としては、天然繊維、合成繊維又はこれらを混合した繊維等を使用することができ、水解性を有する繊維集合体であれば特に限定されることはない。好適な原料繊維としては、木材パルプ、非木材パルプ、レーヨン、コットン等のセルロース系繊維、ポリ乳酸などからなる生分解性繊維等が挙げられる。また、基材の強度を向上させるために、水溶性バインダーとしてポリビニルアルコール(PVA)やカルボキシメチルセルロース(CMC)等を配合若しくは塗工・塗布してもよい。
【0027】
また、本実施形態のトイレクリーナー100には、所定の薬液が塗布されており、具体的には、水性洗浄剤の他、香料、防腐剤、除菌剤、紙力増強剤等の補助剤を含む所定の薬液が塗布されている。
【0028】
薬液としては、適宜のものを使用することができ、例えば、水性洗浄剤としては、界面活性剤の他、低級又は高級(脂肪族)アルコールを使用することができる。香料としては、水性香料の他、オレンジオイル等の油性香料の中から、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン等のパラベン類を使用することができる。除菌剤としては、アルコール、パラオキシ安息香酸エステル、モノマーの四級アンモニウム塩、塩化セチルピリジニウム、フェノキシエタノール等を使用することができる。紙力増強剤としては、ホウ酸、種々の金属イオン等を使用することができる。
【0029】
また、上述した薬液の成分の補助剤については適宜選択可能であり、必要に応じて他の機能を果たす成分を薬液に含ませてもよい。
【0030】
このようなトイレクリーナー100を折り加工する際に、トイレクリーナー100の縦方向(X方向)の中心部を折り目として折り畳むのではなく、例えば、
図3(a)の折り返し点PT31(中間部MD21の中心点)に示すような、トイレクリーナー100のエンボスEM21及びEM22の裾の部分を繋ぐX方向に平行な直線を折り目として、トイレクリーナー100を折り畳んだ場合、
図3(b)に示すように、下側(一方の側)にある凸部のエンボスEM21の膨出部PR31が、上側(他方の側)の凹部のエンボスEM22の膨出部PR32に入り込むことになる。
【0031】
このため、トイレクリーナー100を折り畳むことにより、トイレクリーナー100の上側(他方の側)と下側(一方の側)とから圧力がかかった場合であっても、下側(一方の側)にある凸部のエンボスEM21の膨出部PR31が、上側(他方の側)の凹部のエンボスEM22の膨出部PR32に入り込んでいるので、嵩高である多段構造のエンボスEM21及びEM22が保護されて潰れにくくなる。
【0032】
これに対して、例えば、凸部のエンボスEM21の膨出部PR31の中心を繋ぐX方向に平行な直線を折り目として、トイレクリーナー100を折り畳んだ場合には、
図3(c)に示すように、凸部のエンボスEM21の膨出部PR31の頂点同士が当接してしまう。
【0033】
そして、
図3(c)に示すような状態において、トイレクリーナー100の上側(他方の側)と下側(一方の側)とから圧力がかかった場合には、凹部のエンボスEM22の膨出部PR32に圧力が集中してしまい、凹部のエンボスEM22が潰れてしまうおそれがある。
【0034】
[トイレクリーナー100の製造方法]
次に、トイレクリーナー100の製造方法について説明する。
図4は、トイレクリーナー100の製造方法を示すフローチャートである。
図5は、トイレクリーナー100の原紙シートに対してバインダー溶液を付与する溶液付与設備の模式図である。
図6は、
図5に示す溶液付与設備でバインダー溶液が付与された原紙シートを加工する加工設備の模式図である。
【0035】
トイレクリーナー100の製造方法では、
図4に示すように、先ず、抄紙機(図示省略)で原紙となる紙を抄造する抄紙工程(S1)を行う。
【0036】
次いで、
図4及び
図5に示すように、溶液付与設備において、抄造された原紙を巻取った複数(例えば、2本)の1次原反ロール1,1からそれぞれ繰り出される連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工しプライ連続シート1Bとするプライ加工工程(S2)と、プライ連続シート1Bに対してバインダー溶液を付与し連続シート1Cとする溶液付与工程(S3)と、連続シート1Cを乾燥させる乾燥工程(S4)と、乾燥させた連続水解性シート1Dをスリットし巻取るスリット・巻き取り工程(S5)とを行う。なお、1次原反ロールは2本以上であれば適宜本数を変更可能であるが、以下の説明においては、2本使用する場合の例について説明する。
【0037】
次いで、
図5及び
図7に示すように、加工設備において、上記スリット・巻き取り工程(S5)で巻取った2次原反ロール11から繰り出される連続水解性シート1Dに対して折り畳み加工を施す第1の折り畳み工程(S6)と、第1の折り畳み工程(S6)にて2つ折りにされた連続水解性シート1Dに対してエンボス加工を施すエンボス加工工程(S7)と、エンボス加工が施されたエンボス済シート1Eに対して更に折り畳み加工を施す第2の折り畳み工程(S8)と、第2の折り畳み工程(S8)にて8つ折りにされたエンボス済シート1Eに対して仕上げ加工を施す仕上げ加工工程(S9)とを行う。なお、各工程の詳細については、後述する。
【0038】
〔抄紙工程〕
先ず、本実施形態にかかる抄紙工程(S1)について説明する。本発明の抄紙工程(S1)では、例えば、公知の湿式抄紙技術により抄紙原料を抄紙して原紙シートを形成する。すなわち、抄紙原料を湿紙の状態とした後に、ドライヤーなどによりこれを乾燥して、薄葉紙、クレープ紙などの原紙シートを形成する。
原紙シートの原料としては、例えば、既知のバージンパルプ、古紙パルプなどを利用でき、少なくともパルプ繊維を含むものである。この原料となるパルプは、特にLBKPとNBKPを適宜の割合で配合したものが適する。なお、パルプ繊維以外の繊維として、レーヨン繊維や合成繊維などが含有されていてもよい。
また、本発明の原紙シートには、凝集剤として、アニオン性アクリルアミド系重合体(以下、「アニオン性PAM」する。)が含有される。アニオン性PAMとは、アクリルアミド系単量体とアニオン性単量体とを共重合して得られる重合体である。
アクリルアミド系単量体としては、アクリルアミド単独や、アクリルアミドと以下のようなアクリルアミドと共重合可能なノニオン性単量体等と、の混合物である。アクリルアミドと共重合可能なノニオン性単量体としては、メタクリルアミド、N、N−ジメチルアクリルアミド、N、N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−ビニルロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドが例示される。これらは単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
アニオン性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びこれらの中和塩が例示される。
なお、アニオン性PAMの水溶性を損ねない程度であれば、スチレン、アクリルニトリル、(メタ)アクリル酸エステル等の単量体を配合してもよい。
アニオン性PAMの添加量としては、好適には、10〜1000ppm程度である。このような、パルプと同電荷のアニオン系の凝集剤を用いて抄紙することで、原紙シートの凝集を低下させることができ、毛細管現象により水解性を向上させることができる。
なお、原紙シートには、上述したパルプ及び凝集剤の他、湿潤紙力剤、接着剤、剥離剤等の抄紙用薬品を適宜用いてもよい。
また、本発明の実施形態では、後述する溶液付与設備の溶液付与工程でバインダー溶液が付与されるが、抄紙工程の段階でバインダー溶液を付与するようにしてもよい。
抄紙工程でもバインダー溶液を付与した場合、得られる水解性シート全体の強度を高めることができ、後工程の溶液付与工程で更にバインダー溶液を付与することにより、当該水解性シートの表面強度をより一層高めることができるようになる。
【0039】
抄紙工程でバインダー溶液を付与する方法としては、例えば、抄紙原料であるパルプを含む分散液中に水溶性バインダーと該水溶性バインダーのパルプ繊維への定着剤を添加して、これを原料として湿式抄造する方法が知られている(特開平3−193996号公報)。つまり水溶性バインダーを内添する方法である。また、パルプを含む分散液からシートを湿式抄紙し、プレス脱水或いは半乾燥した後に水溶性バインダーを噴霧乾燥或いは塗工乾燥して、所定量の水溶性バインダーを含有する繊維シートを製造することも可能である。つまり水溶性バインダーを外添する方法である。この際には、プレス脱水を行うよりも熱風通過乾燥機などのプレ乾燥方式を用いた方が、低密度でより水解性の良い繊維シートを得ることができる。更に上述の湿式抄紙法ではなく、水を使わずにパルプ繊維を乾式で解繊して、ウェブを形成した後に水溶性バインダーを噴霧し、その後乾燥して繊維シートを製造することも可能である。いわゆるエアレイド製法である。
【0040】
図7には、バインダーとして水溶性バインダーを用いた場合の繊維シートの製造に好ましく用いられる製造装置の一例の概略図が示されている。
図7に示す製造装置(湿式抄造機)は、フォーマー21と、ワイヤーパートと、第1ドライパート24と、スプレーパートと、第2ドライパート31とを備えて構成されている。
【0041】
フォーマー21は、調製装置(図示せず)から供給された完成紙料を所定の濃度に調節してワイヤーパートへ供給するものである。図示しない調製装置は、パルプ繊維等の原料を離叩解する装置と、離叩解された原料にサイズ剤、顔料、紙力増強剤、漂白剤、凝集剤等の添加剤を添加する添加装置とを備え、水解紙の特性に応じた所定濃度の原料からなる紙料を完成紙料として調製するように構成されている。また、パルプスラリーにバインダーを混合することも可能である。ワイヤーパートは、フォーマーから供給された完成紙料を抄き網に湿紙として形成するものである。第1ドライパート24は、ワイヤーパートにおいて形成された湿紙を乾燥させるものである。スプレーパートは、第1ドライパート24で乾燥された紙にバインダーを噴霧するものである。第2ドライパート31は、スプレーパートでバインダーが噴霧され湿潤状態になっている紙を乾燥させるものである。
【0042】
フォーマー21から供給された完成紙料がワイヤーパートにおいて抄造され、ワイヤー22上に湿紙が形成される。湿紙は、ワイヤーパートに設置されているサクションボックス23による吸引によって水分が除去され、所定の水分率となされる。次いで湿紙は、第1ドライパート24に導入されて乾燥される。第1ドライパート24はスルーエアードライヤー(以下、TADという)から構成されている。TADは、周面が通気性を有する回転ドラム25と、該回転ドラム25をほぼ気密に覆うフード26とを備えている。TADにおいては、所定温度に加熱された空気がフード26内に供給されるようになされている。加熱された空気は回転ドラム25の外側から内部に向けて流通する。湿紙は、
図7中、矢印方向に回転する回転ドラム25の周面に抱かれた状態で搬送される。TAD内を搬送されている間、湿紙にはその厚み方向へ加熱空気が貫通し、それによって湿紙は乾燥され紙となる。
【0043】
第1ドライパート24で得られた紙には、スプレーパートにおいてバインダーを含む水溶液(バインダー溶液)が噴霧される。スプレーパートは第1及び第2ドライパート24,31間の位置である。両ドライパート24,31は、コンベアを介して連結されている。
【0044】
コンベアは、それぞれ矢示方向に回転する上コンベアベルト27と下コンベアベルト28とを備えている。コンベア27は、第1ドライパート24のTADによって乾燥されて紙をこれら両ベルト27,28間に挟持した状態で第2ドライパート31へ搬送するように構成されている。上コンベアベルト27の下流側の折り返し端には真空ロール29が配置されている。真空ロール29は、上コンベアベルト27の裏面に紙を吸着させ、その吸着状態下に上コンベアベルト27を搬送させるようになっている。
【0045】
図7に示すように、スプレーパートはスプレーノズル30を備えている。スプレーノズル30は第2ドライパート31の下方で且つ真空ロール29に対向するように配設されている。スプレーノズル30は、真空ロール29に向けてバインダーを含む噴霧液を噴霧して、紙に該噴霧液を添加(外添)するものである。
【0046】
スプレーパートにおいてバインダーが供給された後、紙は第2ドライヤーパート31へ搬送される。第2ドライヤーパート31はヤンキードライヤーから構成されている。噴霧液が噴霧されて湿潤状態となっている紙は、フード33内に設置されたヤンキードライヤーの回転ドラム32の周面に抱かれた状態で搬送される。回転ドラム32に抱かれて搬送されている間に紙の乾燥が進行する。
【0047】
なお、スプレーパートにおいてバインダーを供給する位置は、第1及び第2ドライパート24,31間の位置であればよく、例えば、上コンベアベルト27の上方(
図7に示す第1及び第2ドライパート24,31間の矢印位置)からバインダーを噴霧するようにしてもよい。また、更に第2ドライパート31で乾燥させた後の紙に対して上方(
図7に示す第2ドライパート31の右側の矢印位置)からバインダーを噴霧するようにしてもよい。また、第1及び第2ドライパート24,31間、及び第2ドライパート31の後において、バインダーを噴霧する方向は上方からに限らず、下方からでも、上下両方からでもよい。
【0048】
本実施形態では、抄紙工程において、原紙シートの縦横の繊維配向の比率(縦/横)が0.8〜2.0、好ましくは1.0となるように調整が行われる。繊維配向の調整は、例えば、抄紙機において、抄紙原料をワイヤーパートに供給する角度を調整することで行うことができる。抄紙原料を供給する角度は、例えば、ヘッドボックスのスライス開度を調整することにより行うことができる。又は、抄紙機の搬送方向(走行方向)と直交する方向に振動を与える等により繊維配向を調整することとしてもよい。
【0049】
〔連続乾燥原紙〕
連続乾燥原紙1Aの物性としては、好適には、目付けが15〜75gsm程度である。また、プライ加工された水溶性バインダーを含むシート(連続水解性シート1D)の目付けは、30〜150gsm程度である。なお、目付けは、JIS P 8124に基づくものである。
連続乾燥原紙1Aは、後述するプライ加工工程(S2)、溶液付与工程(S3)、乾燥工程(S4)、スリット・巻き取り工程(S5)を経て、プライ加工された水解紙となり、更に、後述する第1の折り畳み工程(S6)、エンボス加工工程(S7)、第2の折り畳み工程(S8)、仕上げ加工工程(S9)を経て、トイレクリーナー100に加工される。
【0050】
〔プライ加工工程〕
次いで、本実施形態のプライ加工工程(S2)について説明する。プライ加工工程(S2)では、
図5に示すように、原反ロール1から連続的に繰り出される各連続乾燥原紙1A,1Aを、その連続方向に沿ってプライ加工しプライ連続シート1Bとする重ね合わせ部2に供給される。重ね合わせ部2は、一対のロールで構成され、各連続原紙1A,1Aをプライ加工し、プライ加工されたプライ連続シート1Bを形成する。なお、連続乾燥原紙1A,1A同士を重ね合わせる際に、連続乾燥原紙1A,1A同士がずれにくくなるように、ピンエンボス(コンタクトエンボス)で軽く留めておいてもよい。
【0051】
〔バインダー溶液〕
次いで、バインダー溶液について説明する。バインダー溶液は、カルボキシルメチルセルロース(CMC)を水溶性バインダーとして含むものである。バインダー溶液中におけるカルボキシルメチルセルロースの濃度としては、1〜30重量%、好ましくは、1重量%以上、4重量%未満とする。
【0052】
他方、CMCについては、そのエーテル化度が0.6〜2.0、特に0.9〜1.8、更に好ましくは1.0〜1.5であるのが望ましい。水解性と湿潤紙力の発現が極めて良好となる。
【0053】
また、CMCは、水膨潤性のものを用いることができる。これは、薬液中の特定金属イオンの架橋により、未膨潤化のままシートを構成する繊維をつなぎとめる機能を発揮し、清掃・清拭作業に耐えうる拭き取りシートとしての強度を発現することができる。
【0054】
バインダー溶液中のカルボキシルメチルセルロース以外の成分としては、ポリビニルアルコール、デンプン又はその誘導体、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、トラントガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、カラギーナン、ガラクトマンナン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、プルプラン、ポリエチレンオキシド、ビスコース、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸のヒドロキシル化誘導体、ポリビニルピロリドン/ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体等のバインダー成分が挙げられる。
【0055】
水解性が良好となる点や架橋反応により湿潤強度を発現しうる点からカルボキシル基を有する水溶性バインダーを用いることが好ましい。
カルボキシル基を有する水溶性バインダーは、水中で容易にカルボキシラートを生成するアニオン性の水溶性バインダーである。その例としては多糖誘導体、合成高分子、天然物が挙げられる。多糖誘導体としてはカルボキシメチルセルロースの塩、カルボキシエチルセルロース又はその塩、カルボキシメチル化デンブン又はその塩などが挙げられ、特にカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩が好ましい。
【0056】
合成高分子としては、不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体の塩、不飽和カルボン酸と該不飽和カルボン酸と共重合可能な単量体との共重合体の塩などが挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。これらと共重合可能な単量体としては、これら不飽和カルボン酸のエステル、酢酸ビニル、エチレン、アクリルアミド、ビニルエーテルなどが挙げられる。特に好ましい合成高分子は、不飽和カルボン酸としてアクリル酸やメタクリル酸を用いたものであり、具体的にはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸メタクリル酸共重合体の塩、アクリル酸又はメタクリル酸とアクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキルとの共重合体の塩が挙げられる。天然物としては、アルギン酸ナトリウム、ザンサンガム、ジェランガム、タラガントガム、ペクチンなどが挙げられる。
【0057】
〔溶液付与工程〕
次いで、本実施形態の溶液付与工程(S3)ついて説明する。溶液付与工程(S3)では、
図5に示すように、プライ連続シート1Bの両方の外面(連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工した時に連続乾燥原紙1A,1A同士が対向しない面)に2流体方式又は1流体方式の各スプレーノズル3,3により上述のバインダー溶液を噴霧して連続シート1Cを生成する。
プライ加工工程においてプライ加工された直後のプライ連続シート1Bは、連続乾燥原紙1A,1Aが単に重なっているに過ぎないため、溶液付与工程においてプライ連続シート1Bの両面から、バインダー溶液をスプレーノズル3,3で塗布すると、連続乾燥原紙1A,1Aが離れた状態でバインダー溶液を付与する場合と実質的に同様であり、バインダー溶液が厚さ方向に浸透し、搬送中にシート同士が密着し、スリット・巻き取り工程で圧着する中で、更に浸透するのである。
なお、バインダー溶液の噴霧方法として、プライ連続シート1Bの片方の外面に上述のバインダー溶液を噴霧するようにしても良い。また、上述の1次原反ロール1,1からそれぞれ繰り出される連続乾燥原紙1A,1Aの少なくとも一方のシートの外面(各シートが対向しない面)に対して、2流体方式のスプレーノズルより上述のバインダー溶液を噴霧し、直後に当該連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工することにより、上述の連続シート1Cと同等のシートを生成するようにしても良い。
【0058】
2流体方式のスプレーノズル3は、2系統に分けられた圧縮空気と液体を混合し、噴射させる方式のスプレーノズルであり、圧縮した液体を単独で噴射させる1流体方式のスプレーノズルに比べて、液体をきめ細かく均一に噴霧することができる。
本実施形態で2流体方式のスプレーノズルを使用する場合、プライ加工されたプライ連続シート1Bの各々の外面に高い圧力(噴射圧1.5MPa以上)でバインダー溶液(粘度400〜1200MPa.s)を塗布するので、シートの厚さ方向にバインダー溶液を含浸させやすい。
一方、本実施形態で1流体方式のスプレーノズルを使用する場合、プライ加工されたプライ連続シート1Bの各々の外面に噴射圧1.5MPa以下でバインダー溶液(粘度400〜1200MPa.s)を塗布することで、シートの厚さ方向にバインダー溶液を含浸させやすく、シート表面にバインダー溶液を均一に塗布させやすくしている。
このようにして、プライ連続シート1Bの外面にバインダー溶液を噴霧することで、トイレクリーナー100は、厚み方向において中央(両面に塗布した場合)又はバインダー溶液の非塗布面(片面に塗布した場合)からバインダー溶液の塗布面に向かうにつれて水溶性バインダーの含有量が増加した状態となるので、水解性を確保しつつ、表面強度を向上させることができ、強く擦ってもダメージが生じにくいトイレクリーナー100を製造することが可能となる。
【0059】
〔乾燥工程〕
次いで、本実施形態の乾燥工程(S4)について説明する。乾燥工程(S4)では、
図5に示すように、乾燥設備4において、上述の連続シート1Cのバインダー溶液中の不溶な液分を蒸発させて、有効成分、特にCMCを繊維に対して定着させる。
ここで、連続シート1Cの外面から厚み方向内側に向かうにつれて、バインダー溶液の浸み込む量が減少していくことから、当該厚み方向内側に向かうにつれて、CMCの定着量が減少することとなる。そのため、後述する仕上げ加工工程(S7)で薬液が含浸された際、当該厚み方向内側に向かうにつれて、架橋反応が起こり難く、空隙を多く有することから、シート内部に当該薬液を閉じ込めた状態とすることができる。これにより、得られるトイレクリーナー100を乾き難くすることができる。
乾燥設備4としては、連続シート1Cに対して熱風を吹き付けて乾燥させるフード付きドライヤー設備が利用できる。なお、シート同士をより密着させるために、プレスロールやターンロールを設置し、乾燥工程(S4)の前に当該プレスロールや当該ターンロールに連続シート1Cを通しても良い。
【0060】
また、上記乾燥設備として赤外線照射による設備を用いても良い。この場合、上記連続シート1Cの搬送方向に複数の赤外線照射部を並列し、搬送される当該連続シート1Cに対して赤外線を照射して乾燥を行う。赤外線により水分が発熱し乾燥されるものである
ため、熱風によるドライヤーと比較して、均一な乾燥が可能であり、後段のスリット・巻き取り工程においての皺の発生が防止できる。
【0061】
〔スリット・巻き取り工程〕
次いで、本実施形態のスリット・巻き取り工程(S5)について説明する。スリット・巻き取り工程(S5)では、プライ加工された連続水解性シート1Dをオフラインの加工機で加工する際の原反とするために、上述の乾燥工程(S4)で乾燥されCMCの定着が図られた連続水解性シート1Dをテンションを調整しながら、スリッター5で所定の幅にスリットし、ワインダー設備6において、巻き取ることとなる。巻き取り速度は、プライ加工工程(S2)、溶液付与工程(S3)、乾燥工程(S4)を考慮して適宜定める。過度に早いとシートの破断が生じ、過度に遅いと皺が発生するのでこれに留意する。
スリット・巻き取り工程(S5)で、プライ加工された連続水解性シート1Dが圧着されることにより、連続水解性シート1Dがより一体化され、1枚相当のシートとなる。
【0062】
〔第1の折り畳み工程〕
次いで、本実施形態の第1の折り畳み工程(S6)について説明する。第1の折り畳み工程(S6)では、
図6に示すように、2次原反ロール11から繰り出される、連続水解性シート1Dに対して、折り畳み加工機12によって折り畳み加工が施されることにより、連続水解性シート1DがMD方向の中央部で2つ折りに折り畳まれる。
【0063】
〔エンボス加工工程〕
次いで、本実施形態のエンボス加工工程(S7)について説明する。エンボス加工工程(S7)では、
図6に示すように、第1の折り畳み工程(S6)にて2つ折りにされた連続水解性シート1Dに対して、エンボスロール13によって、シート全面に所定の形状をなすエンボス加工が施される。このエンボス加工は、シートの強度、嵩高性、拭き取り性等を高めると共に、デザイン性を高めることを目的としてなされている。
【0064】
〔第2の折り畳み工程〕
次いで、本実施形態の第2の折り畳み工程(S8)について説明する。第2の折り畳み工程(S8)では、
図6に示すように、エンボス加工工程(S7)にてエンボス加工が施されたエンボス済シート1Eに対して、折り畳み加工機14によって折り畳み加工が施されることにより、エンボス済シート1EがCD方向に2つ折りに折り畳まれ、更にCD方向に2つ折りに畳まれる。つまり、上述の第1の折り畳み工程(S6)と第2の折り畳み工程(S8)とで、シートは8つ折りに折り畳まれることとなる。
第2の折り畳み工程(S8)では、一方の側の凸部のエンボスEM21が凹部のエンボスEM22に入り込むように折り畳み加工を行う。
【0065】
〔仕上げ加工工程〕
次いで、本実施形態の仕上げ加工工程(S9)について説明する。仕上げ加工工程(S9)では、
図6に示すように、仕上げ加工設備15において、エンボス済シート1Eの裁断加工、裁断された各シートへの上記薬液の含浸、当該薬液を含浸させた各シートの包装を一連の流れで行う。ここで、薬液に含有される架橋剤は、CMCを水溶性バインダーとして用いた場合、多価金属イオンを用いることが好ましい。特に、アルカリ土類金属、マンガン、亜鉛、コバルト及びニッケルからなる群から選択される1種又は2種以上の多価金属イオンを用いることが、繊維間が十分に結合されて使用に耐え得る湿潤強度が発現する点、及び水解性が十分になる点から好ましい。これらの金属イオンのうち、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、コバルト、ニッケルのイオンを用いることが特に好ましい。
以上の各工程を経ることにより、トイレクリーナー100が製造される。
【実施例】
【0066】
次に、本実施形態のトイレクリーナーの製造方法により製造、すなわち2つ折りに畳まれたシート(連続水解性シート1D)に対して、エンボス加工を施して製造されたトイレクリーナー(実施例)と、エンボス加工前は折り加工を施さずに当該エンボス加工の後に折り加工を施して製造されたトイレクリーナー(比較例1、2)について、エンボスの潰れにくさを評価した結果、及び折り加工後のシートの剥がれ易さを評価した結果を、表1及び2を用いて説明する。
【0067】
<実施条件>
実施例 原紙の素材;パルプ100%
パルプ配合;NBKP:LBKP=40:60
プライ後の秤量;90g/m
2(プライ前の各シート1枚当り45g/m
2)
プライ数;2プライ
水溶性バインダー及びその含有量;CMC 片面当り0.6g/m
2、両面で1.2g/m
2(スプレー塗布)
薬液成分;界面活性剤、グリコールエーテル、除菌剤、香料、水等
薬液含浸率;200%
エンボス加工前の折り加工;有
折り加工により重畳するエンボスのズレ;無
比較例1 原紙の素材;パルプ100%
パルプ配合;NBKP:LBKP=40:60
プライ後の秤量:90g/m
2(プライ前の各シート1枚当り45g/m
2)
プライ数:2
水溶性バインダー及びその含有量:CMC 片面当り0.6g/m
2、両面で1.2g/m
2(スプレー塗布)
薬液成分;界面活性剤、グリコールエーテル、除菌剤、香料、水等
薬液含浸率;200%
エンボス加工前の折り加工;無
折り加工により重畳するエンボスのズレ;有
比較例2 原紙の素材;パルプ100%
パルプ配合;NBKP:LBKP=40:60
プライ後の秤量:90g/m
2(プライ前の各シート1枚当り45g/m
2)
プライ数:2
水溶性バインダー及びその含有量:CMC 片面当り0.6g/m
2、両面で1.2g/m
2(スプレー塗布)
薬液成分;界面活性剤、グリコールエーテル、除菌剤、香料、水等
薬液含浸率;200%
エンボス加工前の折り加工;無
折り加工により重畳するエンボスのズレ;無
【0068】
<エンボスの潰れにくさの評価方法>
上述の実施例、比較例1、2のトイレクリーナーをそれぞれ2枚重ね、その上に直径25mmのプラスティック製の円筒(重さ38g)と、0.893kg、1.481kg、2.951kg、4.96kg、9.958kgの各錘を5分間載せた後、上記の円筒と錘を取り除いた直後とそれから15分後とでエンボスの潰れ具合を評価した。具体的には、エンボスが潰れた後、元の状態に復元した場合を「○」、エンボスが潰れた後、少し復元した場合を「△」、エンボスが潰れた後、復元しない場合を「×」として評価した。
なお、錘の重さを0.893kgとしたのは、単位面積当りの荷重を0.19kg/cm
2(搬送ベルトでのエンボスの潰れを想定した荷重)とするためである。また、錘の重さを1.481kgとしたのは、単位面積当りの荷重を0.31kg/cm
2(パッケージ時のエンボスの潰れを想定した荷重)とするためである。また、錘の重さを2.951kgとしたのは、単位面積当りの荷重を0.61kg/cm
2(実使用時のエンボスの潰れを想定した荷重)とするためである。また、錘の重さを4.96kgとしたのは、単位面積当りの荷重を1.02kg/cm
2とするためである。また、錘の重さを9.958kgとしたのは、単位面積当りの荷重を2.04kg/cm
2とするためである。
【0069】
<折り加工後のシートの剥がれ易さの評価方法>
上述の実施例、比較例1、2のそれぞれのトイレクリーナーについて、MD方向の中央部で2つ折りに折り畳まれた状態のシートを25mm幅にロールカッターでカットして試験片を作成し、引張試験機で当該試験片の180°剥離強度を測定した。
なお、当該測定において、チャックの移動速度は500mm/分とし、測定された第一極大点荷重を剥離強度とする。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
表1に示す評価結果のとおり、実施例では、単位面積当りの荷重を0.19kg/cm
2、0.31kg/cm
2、0.61kg/cm
2、1.02kg/cm
2、2.04kg/cm
2とするいずれの場合においても、評価結果は「○」であった。つまり、搬送ベルトでの搬送時であっても、パッケージ時であっても、実使用時であってもエンボスが潰れた後、元の状態に復元することがわかった。
一方、比較例1では、単位面積当りの荷重を0.19kg/cm
2とした場合、評価結果は「△」であり、単位面積当りの荷重を0.31kg/cm
2、0.61kg/cm
2、1.02kg/cm
2、2.04kg/cm
2とした場合、評価結果は「×」であった。つまり、搬送ベルトでの搬送時にあっては、エンボスが潰れた後、少し復元するが、パッケージ時や実使用時にあっては、エンボスが潰れた後、復元しないことがわかった。
また、比較例2では、単位面積当りの荷重を0.19kg/cm
2、0.31kg/cm
2、0.61kg/cm
2とした場合、評価結果は「○」であり、単位面積当りの荷重を1.02kg/cm
2とした場合、評価結果は「△」であり、単位面積当りの荷重を2.04kg/cm
2とした場合、評価結果は「×」であった。つまり、搬送ベルトでの搬送時やパッケージ時にあっては、エンボスが潰れた後、元の状態に復元することがわかった。また、実使用時であっても、清掃対象物へトイレクリーナーを押さえつけたときの力が弱ければ(例えば、単位面積当りの荷重;0.61kg/cm
2)、エンボスが潰れた後、元の状態に復元するが、この力が強くなると(例えば、単位面積当りの荷重;1.02kg/cm
2)、エンボスが潰れた後、復元し難くなり、この力が更に強くなると(例えば、単位面積当りの荷重;2.04kg/cm
2)、エンボスが潰れた後、復元しなくなることがわかった。
【0073】
表2に示す評価結果のとおり、実施例、比較例1、2のいずれの場合も、剥離強度の値は同程度であることがわかった。つまり、エンボス加工の前に折り畳み加工を施しても施さなくても、折り畳まれた状態から折り畳まれていない状態へトイレクリーナーを展開する際のトイレクリーナーの剥がし易さに影響が無いことがわかった。
【0074】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
本発明の実施形態等の説明に際しては、縦方向及び横方向の少なくとも一方に、凸部のエンボスEM21と凹部のエンボスEM22とが、交互に配置され、凸部のエンボスEM21と凹部のエンボスEM22との間に中間部MD21を有するエンボスパターンを例示しているが、必ずしもこの形状に限定されるものではなく、3段以上の多段構造であってもよい。また、エンボスの形状は方形、多角形等の任意の形状でよい。
【0075】
また、
図3(b)における凸部のエンボスEM21から凹部のエンボスEM22までの高さHT31及びHT32は、例えば、0.4mm〜5.0mmであることが好ましい。
【0076】
本発明の実施形態等の説明に際しては、所定回数折り畳まれた矩形状の1枚の家庭用薄葉紙を例示しているが、所定回数折り畳まれた矩形状の家庭用薄葉紙を複数枚積層した家庭用薄葉紙積層体としてもよい。
例えば、
図8に示すように、家庭用薄葉紙積層体LY81は、3回(MD方向に1回、CD方向2回)折り畳まれた1枚の家庭用薄葉紙を複数枚積層することにより構成される。
【0077】
また、本発明の実施形態等の説明に際しては、スプレー方式によりバインダー溶液を塗布するようにしたが、1次原反ロール1から連続的に繰り出される連続乾燥原紙1Aに対して、ドクターチャンバー方式(一つのバックアップロールに対して対になる二つの刷版ロールと、各刷版ロールと対になるアニロックロールと、各アニロックスロールに対して薬液を付与するドクターチャンバーを備える転写設備)、若しくは/及び、3ロール方式(一つのバックアップロールに対して対になる二つの刷版ロールと、各刷版ロールと対になるアニロックロールと、各アニロックスロールに対して薬液を付与するディップロールと、ディップロールに薬液を付与するパンを備える転写設備)によってバインダー溶液を塗布するようにしてもよい。つまり、複数の原紙(連続乾燥原紙1A)がプライ加工されてなる水解性シートの製造方法において、水溶性バインダーを含んでいない複数の原紙のうち、前記水解性シートの表面及び裏面となる原紙の少なくともいずれか一方の面に対してバインダー溶液を付与(転写)する溶液付与工程と、前記複数の原紙をプライ加工するプライ加工工程と、プライ加工されたシートを乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥工程で乾燥させた前記シートを所定幅にスリットし巻き取る巻き取り工程と、を含み、前記溶液付与工程は、前記水解性シートの表面及び裏面となる原紙の少なくともいずれか一方の面に対応して設けられた印刷機から前記バインダー溶液を対応する原紙に転写するようにする。
なお、上記溶液付与工程では、水溶性バインダーを含んでいない複数の原紙のうち、水解性シートの表面及び裏面となる原紙の少なくともいずれか一方の面に対してバインダー溶液を付与する他、水溶性バインダーを含む複数の原紙のうち、水解性シートの表面及び裏面となる原紙の少なくともいずれか一方の面に対してバインダー溶液を付与するようにしてもよい。
【0078】
単なるロール転写では、所望量の薬液を付与するためには、極めて高濃度の薬液が必要となり、かかる薬液は粘度が高くなるためにロール転写で均一転写することができない。また、粘度を低くするために濃度を低くすれば、上述の通り所望の付与量とすることができない。このように乾燥原紙に対して薬液を付与することが極めて困難なことであることから、ドクターチャンバー方式、若しくは/及び、3ロール方式を採用する。
一つのバックアップロールに対して対となる刷版ロールを設けるドクターチャンバー方式、若しくは/及び、3ロール方式を採用することにより、各刷版ロールにおける付与量が少なくとも、合計量において十分な量の薬液を乾燥原紙に対して付与できる。また、バックアップロールが一つであることにより、極めて均一に付与できる。これは、バックアップロールが一つであることで、最初の刷版ロールから次の刷版ロールまでの間の張力が極めて安定して一定であることから、二つの刷版ロールで二段階付与しても、連続原紙に対して極めて均一に薬液を付与することができるのである。また、二つの刷版ロールの間隔が短くなることから、最初の刷版ロールで薬液が付与された後、直ちに次の刷版ロールでの付与がなされことからも、付与ムラなく均一転写ができるのである。このような効果は、単に、バックアップロールと刷版ロールを一対二段にしただけでは得ることはできない。
【0079】
また、より好ましくはドクターチャンバー方式で薬液を付与する方が、3ロール方式より幅方向でより均一に安定して薬液を転写できるため好ましい。
更に、薬液が付与された連続紙を乾燥させる乾燥工程を有する。この乾燥工程は、連続紙に直接的に接触しない間接乾燥が望ましく、特に赤外線照射によるものが望ましい。間接乾燥の場合には皺の発生が抑制される。特に、赤外線照射によるものとすると、紙面各所の乾燥が均一に生ずるので、乾燥時における皺や歪みなどの発生が効果的に防止できる。
以下にドクターチャンバー方式を例に詳しく説明する。
【0080】
このドクターチャンバー方式による転写設備は、一つのバックアップロールに対して一つの刷版ロールが設けられている。
バインダー溶液を塗布する際の塗布加工速度は30〜100m/分で操業され、より好ましくは50〜80m/分で操業される。30m/分未満では乾燥されるまえにクレープが伸びてしまい、後工程で加工しづらいという問題がある。逆に100m/分超過では十分な転写量が得られなかったり、幅方向での塗布量のバラツキにより、湿潤強度や水解性にバラツキが生じる。
【0081】
上記バックアップロールの直径は250〜420mmが適当である。直径が250mm未満であると刷版ロールとバックアップロールの接地面積が少なくなり安定的な塗布ができなくなる。直径が420mm超であっても製造上の問題はないが、設備費用が過多にかかるため好ましくない。
【0082】
上記刷版ロールには、これにバインダー溶液を受け渡すアニロックスロールがそれぞれ設けられており、このアニロックスロールに対しては、これにバインダー溶液を受け渡して付与するドクターチャンバーが設けられている。また、ドクターチャンバーに対しては、これにバインダー溶液を受け渡して付与するスネークポンプが、アニロックスロールの溶液パンに供給するための送りと戻りの両方に設置されており、ドクターチャンバーに対して粘度の高いバインダー溶液の移送が可能となっている。
【0083】
1次原反ロール1から繰り出された連続乾燥原紙1Aは、適宜のガイドロールを介して、バックアップロールに巻き掛けられて、適宜の張力と表面の安定性が付与される。
そして、このバックアップロールに巻き掛けられた連続乾燥原紙1Aに対して、刷版ロールにてバインダー溶液がロール転写される。
ここで、刷版ロールは、凹溝のないベタ版仕様のシームレスロールとし、連続乾燥原紙1Aの全体にバインダー溶液をベタ印刷の如く付与する。この刷版ロールとして用いられるシームレスロールは、タイプロールのスリーブにゴム板を巻きつけ釜に入れて過熱溶接し、研磨して成形したものである。材料として用いるゴム板は所定の目的に応じて材質や硬度、色等を選択することができる。
【0084】
他方、刷版ロールにバインダー溶液を受け渡すアニロックスロールの線数及びセル容量は、バインダー溶液の濃度にもよるが、線数60〜120線/インチ、セル容量40〜90ml/m
2とするのが望ましい。線数が60線/インチ未満であると刷版ロールに過度のバインダー溶液が受け渡され、結果的に連続乾燥原紙1Aに対して刷版ロールからムラを持ってバインダー溶液が付与されるおそれが高まる。反対に、線数が120線/インチを超えると十分な量かつ刷版ロールの周面全体にバインダー溶液を受け渡すことが困難となる。また、セル容量が40ml/m
2未満であると十分な量のバインダー溶液を刷版ロールに受け渡すことが困難となり、セル容量が90ml/m
2を超えても歩留まりの悪化を招くだけである。
なお、上述のようにバインダー溶液が付与(転写)される連続乾燥原紙1Aは、プライ加工する際に最上層又は最下層となる原紙のみを対象とする。つまり、例えば、3プライ加工する場合、中層となる連続乾燥原紙1Aに対してはバインダー溶液を付与(転写)しない。
【0085】
また、上記のドクターチャンバー方式では、連続乾燥原紙1Aに対してバインダー溶液を転写、すなわち、プライ加工工程の前、連続乾燥原紙1Aに対してバインダー溶液を転写するようにしているが、プライ加工工程の後、プライ加工されたプライ連続シート1Bに対してバインダー溶液を転写するようにしてもよい。
つまり、複数の原紙(連続乾燥原紙1A)がプライ加工されてなる水解性シートの製造方法において、水溶性バインダーを含んでいない複数の原紙をプライ加工するプライ加工工程と、プライ加工されたシートに対してバインダー溶液を付与(転写)する溶液付与工程と、前記バインダー溶液を付与されたシートを乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥工程で乾燥させた前記シートを所定幅にスリットし巻き取る巻き取り工程と、を含み、前記溶液付与工程は、プライ加工されたシートの少なくともいずれか一方の外面に対応して設けられた印刷機から前記バインダー溶液を対応する外面に転写するようにする。
なお、上記プライ加工工程では、水溶性バインダーを含んでいない複数の原紙をプライ加工する他、水溶性バインダーを含む複数の原紙をプライ加工するようにしてもよい。
このように、ドクターチャンバー方式でバインダー溶液を転写する場合、粘度の高いバインダー溶液を塗布することができるので、シート内部までバインダー溶液が浸透することを抑制することができる。よって、シート表面にのみCMCを定着させることが可能となる。なお、ドクターチャンバー方式でバインダー溶液を転写する場合の他、例えば、ホットメルト樹脂塗工用のコーターによりバインダー溶液をシート表面にコーティングするようにしてもよい。かかる場合もシート表面にのみCMCを定着させることが可能となる。
【0086】
また、本発明の実施形態等の説明に際しては、
図5に示す溶液付与設備の溶液付与工程でバインダー溶液が付与されるようにしたが、抄紙工程の段階でバインダー溶液を付与するようにしてもよい。
つまり、複数の原紙(連続乾燥原紙1A)がプライ加工されてなる水解性シートの製造方法において、前記複数の原紙をそれぞれ抄造する抄紙工程を含み、前記抄紙工程は、抄造中の湿紙に対してバインダー溶液を付与するようにする。
【0087】
具体的には、抄紙工程では、例えば、抄紙網で形成された湿紙をフェルト上に載せて搬送すると共に、そのフェルト上の湿紙をタッチロールを介してヤンキードライヤーに移行させ、そのヤンキードライヤーに付着されて搬送される過程で湿紙を乾燥させて原紙を得るが、上述のヤンキードライヤー上に移行された直後の湿紙に対してバインダー溶液をスプレーノズルから噴霧するようにする。
このように、抄紙工程でもバインダー溶液を付与した場合、得られる水解性シート全体の強度を高めることができ、後工程の溶液付与工程で更にバインダー溶液を付与することにより、当該水解性シートの表面強度をより一層高めることができるようになる。
【0088】
また、本発明の実施形態等の説明に際しては、水溶性バインダーとしてCMCを用いたが、ポリビニルアルコール(PVA)を用いてもよい。
【0089】
その他、トイレクリーナー100の細部構成に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。