特許第6603087号(P6603087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603087
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】光学装置
(51)【国際特許分類】
   G21K 1/06 20060101AFI20191028BHJP
【FI】
   G21K1/06 B
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-178086(P2015-178086)
(22)【出願日】2015年9月10日
(65)【公開番号】特開2017-53738(P2017-53738A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】小野田 忍
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第204359942(CN,U)
【文献】 特開平08−146197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21K 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一端及び他端と、前記一端と前記他端とを接続するように前記軸方向に沿って延びておりX線を反射させる内面と、を有する筒状の光学素子と、
前記軸方向に延びる第1貫通孔が形成され、前記第1貫通孔に前記光学素子を収容する収容部材と、
前記光学素子を前記収容部材に固定する固定部と、を備え、
前記固定部は、前記一端に当接すると共に前記収容部材に固定される第1固定部と、前記他端に当接すると共に前記収容部材に固定される第2固定部と、を有し、前記第1固定部と前記第2固定部とにより前記軸方向に沿って前記光学素子を挟持することによって前記光学素子を前記収容部材に固定し、
前記収容部材における前記一端側の端面には凹部が形成されており、
前記第1貫通孔は、前記凹部の底面に開口しており、
前記第1固定部は、
前記底面上に配置され前記一端に当接する環状のストッパと、
前記ストッパ上に配置された環状の弾性部材と、
前記弾性部材を前記ストッパに押圧した状態で前記収容部材に固定される押圧部材と、を有する、光学装置。
【請求項2】
前記ストッパの内径は、前記光学素子の前記一端側の内径よりも大きく、且つ前記光学素子の前記一端側の外径よりも小さく、
前記弾性部材は、前記ストッパ及び前記第1貫通孔上に配置されている、請求項記載の光学装置。
【請求項3】
前記ストッパは、前記一端に当接する当接面を含み、
前記当接面は、前記ストッパの内縁に近づくにつれて、前記他端から離れるように傾斜したテーパ面を含み、
前記一端は前記テーパ面よりも前記ストッパの内縁側において前記当接面に当接する、
請求項又は記載の光学装置。
【請求項4】
前記収容部材には、前記第1貫通孔を形成する前記収容部材の内面と前記収容部材の外面とに開口する第2貫通孔が形成されている、請求項1〜のいずれか一項記載の光学装置。
【請求項5】
軸方向の一端及び他端と、前記一端と前記他端とを接続するように前記軸方向に沿って延びておりX線を反射させる内面と、を有する筒状の光学素子と、
前記軸方向に延びる第1貫通孔が形成され、前記第1貫通孔に前記光学素子を収容する収容部材と、
前記光学素子を前記収容部材に固定する固定部と、を備え、
前記固定部は、前記一端に当接すると共に前記収容部材に固定される第1固定部と、前記他端に当接すると共に前記収容部材に固定される第2固定部と、を有し、前記第1固定部と前記第2固定部とにより前記軸方向に沿って前記光学素子を挟持することによって前記光学素子を前記収容部材に固定し、
前記収容部材には、前記第1貫通孔を形成する前記収容部材の内面と前記収容部材の外面とに開口する第2貫通孔が形成されている、光学装置。
【請求項6】
前記光学素子の厚さは、1.0mm以下である、請求項1〜5のいずれか一項記載の光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、反射鏡の保持方法が記載されている。この反射鏡の保持方法では、内部に流体を充填させた中空の弾性体リングを介して、保持部材がX線反射鏡の周囲を保持している。また、特許文献2には、X線分析装置が記載されている。このX線分析装置では、軸対称斜入射反射鏡の軸方向の数個所に渡って、リング状の加圧機構が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−318334号公報
【特許文献2】特開平9−166558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したX線反射鏡や軸対称斜入射反射鏡といった光学素子を所定のホルダに固定する際には、光学素子の反射面の変形を抑制することが望ましい。しかしながら、例えば特許文献1に記載のX線分析装置にあっては、反射面に交差する方向(軸方向に交差する方向)に沿って光学素子に応力が加えられるため、反射面の変形が避けがたい。反射面に変形が生じると、光学素子の性能が十分に発揮されないおそれがある。
【0005】
本発明は、光学素子の反射面の形状の変形を抑制できる光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光学装置は、軸方向の一端及び他端と、一端と他端とを接続するように軸方向に沿って延びておりX線を反射させる内面と、を有する筒状の光学素子と、軸方向に延びる第1貫通孔が形成され、第1貫通孔に光学素子を収容する収容部材と、光学素子を収容部材に固定する固定部と、を備え、固定部は、一端に当接すると共に収容部材に固定される第1固定部と、他端に当接すると共に収容部材に固定される第2固定部と、を有し、第1固定部と第2固定部とにより軸方向に沿って光学素子を挟持することによって光学素子を収容部材に固定する。
【0007】
この光学装置においては、光学素子は、一端と他端とを接続するように軸方向に沿って延びると共にX線を反射させる内面を有している。すなわち、光学素子の反射面は、軸方向に沿って延びている。また、光学素子は、収容部材の第1貫通孔に収容された状態で、固定部により固定されている。固定部は、光学素子の一端に当接すると共に収容部材に固定される第1固定部と、光学素子の他端に当接すると共に収容部材に固定される第2固定部と、を有している。そして、固定部は、第1固定部と第2固定部とにより、軸方向に沿って光学素子を挟持することによって光学素子を収容部材に固定する。したがって、この光学装置にあっては、光学素子の固定に際して、反射面に交差する方向に沿って反射面に応力が加わりにくい。よって、反射面の形状の変化が抑制される。なお、この光学装置によれば、光学素子を収容部材の内面(第1貫通孔を形成する面)から離間させた状態で、光学素子を収容部材に固定することも可能である。このため、収容部材の内面から光学素子への応力の入力を避け、反射面の形状の変形を確実に抑制可能である。
【0008】
本発明に係る光学装置においては、収容部材における一端側の端面には凹部が形成されており、第1貫通孔は、凹部の底面に開口しており、第1固定部は、底面上に配置され一端に当接する環状のストッパと、ストッパ上に配置された環状の弾性部材と、弾性部材をストッパに押圧した状態で収容部材に固定される押圧部材と、を有してもよい。この場合、第1固定部では、押圧部材が弾性部材をストッパに押圧することにより、ストッパが光学素子に当接し、光学素子を固定している。このため、光学素子の固定に際して、光学素子に必要以上の力が加わることを抑制できる。この結果、光学素子の形状の変形を一層抑制できる。
【0009】
本発明に係る光学装置においては、ストッパの内径は、光学素子の一端側の内径よりも大きく、且つ光学素子の一端側の外径よりも小さく、弾性部材は、ストッパ及び第1貫通孔上に配置されていてもよい。この場合、ストッパの内径が光学素子の一端側の内径よりも大きいので、ストッパが光学素子への入射光又は光学素子からの出射光の光路に干渉することを抑制可能である。また、ストッパの内径が光学素子の一端側の外径よりも小さいので、ストッパが光学素子の一端に確実に当接する。また、弾性部材がストッパ及び第1貫通孔上に配置されているので、弾性部材がストッパ及び底面上に配置されている場合に比べて、押圧部材による押圧力が光学素子の一端に作用し易くなる。この結果、光学素子が確実に固定される。
【0010】
本発明に係る光学装置においては、ストッパは、一端に当接する当接面を含み、当接面は、ストッパの内縁に近づくにつれて、他端から離れるように傾斜したテーパ面を含み、一端はテーパ面よりもストッパの内縁側において当接面に当接してもよい。この場合、テーパ面を用いて、光学素子を容易に位置決めすることができる。
【0011】
本発明に係る光学装置においては、収容部材には、第1貫通孔を形成する収容部材の内面と収容部材の外面とに開口する第2貫通孔が形成されていてもよい。この場合、第2貫通孔を用いて、第1貫通孔内を容易に真空排気することができる。
【0012】
本発明に係る光学装置においては、光学素子の厚さは、1.0mm以下であってもよい。このように光学素子の厚さが薄い場合でも、光学素子の反射面の形状の変形を好適に抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光学素子の反射面の形状の変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る光学装置の断面図である。
図2図1の光学装置の分解断面図である。
図3図1の光学装置を軸方向に沿って第1固定部側から見た図である。
図4図1の光学装置を軸方向に沿って第2固定部側から見た図である。
図5】変形例に係る光学装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1図4を参照して、本実施形態に係る光学装置1について説明する。図1は、本実施形態に係る光学装置の断面図である。図2は、図1の光学装置の分解断面図である。図3は、図1の光学装置を軸方向に沿って第1固定部側から見た図である。図4は、図1の光学装置を軸方向に沿って第2固定部側から見た図である。
【0017】
図1図4に示されるように、光学装置1は、光学素子2と、収容部材3と、固定部4と、を備えている。光学素子2は、全反射を利用してX線の結像及び集光を行う。光学素子2は、例えば、ウォルターミラーといった筒状の斜入射反射鏡である。光学素子2は、例えば、円筒状であり、軸方向Dに対して回転対称性を有している。
【0018】
光学素子2は、軸方向Dの一端2a及び他端2bと、一端2aと他端2bとを接続するように軸方向Dに沿って延びる内面2c及び外面2dと、を有している。内面2cは、X線を反射させる。内面2cは、一端2a側において回転双曲面とされ、他端2b側において回転楕円面とされている。外面2dは、内面2cの反対側を向いている。
【0019】
光学素子2の軸方向Dの長さは、例えば、30mmである。光学素子2の一端2a側の内径d1は、光学素子2の内径の最小値であり、例えば、3.8mmである。光学素子2の他端2b側の内径d2は、光学素子2の内径の最大値であり、例えば、5.4mmである。光学素子2の一端2a側の外径d3は、光学素子2の外径の最小値であり、例えば、5.4mmである。光学素子2の他端2b側の外径d4は、光学素子2の外径の最大値であり、例えば、7.0mmである。光学素子2の厚さt(内面2cと外面2dとがなす距離)は、1.0mm以下であり、例えば、0.8mm程度である。
【0020】
収容部材3は、軸方向Dに延びる筒状の部材である。収容部材3は、例えば、円筒状の部材である。収容部材3は、軸方向Dの端面3a及び端面3bと、端面3aと端面3bとを接続するように軸方向Dに沿って延びる内面3c及び外面3dと、を有している。端面3aは、一端2a側に配置されている。端面3aには凹部5が形成されている。凹部5は、軸方向Dから見て、例えば、円形を呈する底面5aを有している。端面3aからの凹部5の深さ、即ち、軸方向Dに沿う底面5aと端面3aとの間の距離は、例えば、2.0mmである。凹部5の直径は、例えば、13mmである。
【0021】
端面3bは、他端2b側に配置されている。端面3bには凹部6が形成されている。凹部6は、軸方向Dから見て、例えば、円形を呈する底面6aを有している。端面3bからの凹部6の深さ、即ち、軸方向Dに沿う底面6aと端面3bとの間の距離は、例えば、2.0mmである。凹部6の直径は、例えば、13mmである。
【0022】
収容部材3には、軸方向Dに延びる第1貫通孔A1が内面3cにより形成されている。収容部材3は、第1貫通孔A1に光学素子2を収容している。第1貫通孔A1は、例えば、円柱状である。第1貫通孔A1は、底面5a及び底面6aに開口している。第1貫通孔A1の軸方向Dに沿う長さは、光学素子2の軸方向Dの長さと同等である。第1貫通孔A1の直径は、光学素子2の外径の最大値(即ち、他端2b側の外径)よりも大きく、例えば、11mmである。
【0023】
収容部材3には、内面3cと外面3dとに開口する第2貫通孔A2が更に形成されている。第2貫通孔A2は、軸方向Dに交差する方向に延びている。第2貫通孔A2の直径は、例えば、1.5mmである。
【0024】
固定部4は、第1固定部41と、第2固定部42とを有している。第1固定部41は、一端2aに当接すると共に収容部材3の端面3a側に固定されている。第2固定部42は、他端2bに当接すると共に収容部材3の端面3b側に固定されている。固定部4は、第1固定部41と第2固定部42とにより軸方向Dに沿って光学素子2を挟持することによって、光学素子2を収容部材3に固定している。
【0025】
第1固定部41は、ストッパ71と、弾性部材81と、押圧部材91と、を有している。ストッパ71は、例えば、円環状の板部材である。ストッパ71は、一端2aに当接する当接面73を含んでいる。当接面73は、例えば、円環状の平面である。一端2aは、当接面73の内縁側の部分に当接する。ストッパ71の内径d5は、光学素子2の一端2a側の内径d1よりも大きく、且つ光学素子2の一端2a側の外径d3よりも小さい。ストッパ71の内径d5は、例えば、4.4mmである。ストッパ71の外径は、底面5aの直径と同等である。ストッパ71は、底面5a上に配置されている。ストッパ71の外縁側の一部が底面5a上に配置され、ストッパ71の内縁側の残部が第1貫通孔A1上に配置されている。当接面73の外縁側の一部は、底面5aと対向している。
【0026】
弾性部材81は、例えば、Oリングであり、円環状を呈している。弾性部材81の外径は、ストッパ71の内径よりも大きく、第1貫通孔A1の直径よりも小さい。弾性部材81は、ストッパ71及び第1貫通孔A1上に配置されている。
【0027】
押圧部材91は、底部91aと、底部91aの外縁から、収容部材3側に延びるように立設された側部91bと、を含んでいる。底部91aは、例えば、円板状である。側部91bは、例えば、円筒状である。底部91aの中央には、X線を通過させるためのX線通過孔91cが形成されている。X線通過孔91cの直径は、光学素子2の一端2a側の内径d1よりも大きく、且つ弾性部材81の内径よりも小さい。X線通過孔91cの直径は、例えば、6.0mmである。
【0028】
底部91aには、真空排気用の空気抜き孔91dが更に形成されている。空気抜き孔91dは、具体的には、底部91aのうち、端面3aにおける凹部5以外の部分(凹部5の外側部分)と対向する部分に形成されている。側部91bの内径は、収容部材3の端面3a側の外径と同等である。側部91bの内面と、端面3a側の外面3dとには、それぞれネジが形成され、これにより、押圧部材91が収容部材3の端面3a側に着脱自在に固定されている。
【0029】
第2固定部42は、ストッパ72と、弾性部材82と、押圧部材92と、を有している。ストッパ72は、例えば、円環状の板部材である。ストッパ72は、他端2bに当接する当接面74を含んでいる。当接面74は、例えば、円環状の平面である。他端2bは、当接面74の内縁側の部分に当接する。ストッパ72の内径d6は、光学素子2の他端2b側の内径d2よりも大きく、且つ光学素子2の他端2b側の外径d4よりも小さい。ストッパ72の内径d6は、例えば、6.0mmである。ストッパ72の外径は、底面6aの直径と同等である。ストッパ72は、底面6a上に配置されている。ストッパ72の外縁側の一部が底面6a上に配置され、ストッパ72の内縁側の残部が第1貫通孔A1上に配置されている。当接面74の外縁側の一部は、底面6aと対向している。
【0030】
弾性部材82は、例えば、Oリングであり、円環状を呈している。弾性部材82の外径は、ストッパ72の内径よりも大きく、第1貫通孔A1の直径よりも小さい。弾性部材82は、ストッパ72及び第1貫通孔A1上に配置されている。
【0031】
押圧部材92は、底部92aと、底部92aの外縁から、収容部材3側に延びるように立設された側部92bと、を含んでいる。底部92aは、例えば、円板状である。側部92bは、例えば、円筒状である。底部92aの中央には、X線を通過させるためのX線通過孔92cが形成されている。X線通過孔92cの直径は、光学素子2の他端2b側の内径d2よりも大きく、且つ弾性部材82の内径よりも小さい。X線通過孔92cの直径は、例えば、7.6mmである。
【0032】
底部92aには、真空排気用の空気抜き孔92dが更に形成されている。空気抜き孔92dは、具体的には、底部92aのうち、端面3bにおける凹部6以外の部分(凹部6の外側部分)と対向する部分に形成されている。側部92bの内径は、収容部材3の端面3b側の外径と同等である。側部92bの内面と、端面3b側の外面3dとには、それぞれネジが形成され、これにより、押圧部材92が収容部材3の端面3b側に着脱自在に固定されている。
【0033】
光学装置1を組み立てるには、まず、凹部6の底面6a上にストッパ72を配置し、ストッパ72上に弾性部材82を配置する。次に、この状態で、押圧部材92を収容部材3の端面3b側に固定する。次に、収容部材3と光学素子2とを同芯に軸合せした状態で、光学素子2を第1貫通孔A1に収容し、他端2bをストッパ72に当接させる。第1貫通孔A1の直径は、光学素子2の外径の最大値(即ち、他端2b側の外径)よりも大きいので、光学素子2は、外面2dを収容部材3の内面3cから離間させた状態で収容される。
【0034】
続いて、凹部5の底面5a上にストッパ71を配置し、ストッパ71を一端2aに当接させる。次に、ストッパ71上に弾性部材81を配置し、この状態で押圧部材91を収容部材3の端面3a側に固定する。これにより、光学素子2を第1固定部41と第2固定部42とで挟持し、収容部材3に同芯で収容して固定することができる。
【0035】
以上説明したように、光学装置1においては、光学素子2は、X線を反射させる反射面として、一端2aと他端2bとを接続するように軸方向Dに沿って延びる内面2cを有している。また、光学素子2は、収容部材3の第1貫通孔A1に収容された状態で、固定部4により固定されている。固定部4は、光学素子2の一端2aに当接すると共に収容部材3に固定される第1固定部41と、光学素子2の他端2bに当接すると共に収容部材3に固定される第2固定部42と、を有している。そして、固定部4は、第1固定部41と第2固定部42とにより、軸方向Dに沿って光学素子2を挟持することによって光学素子2を収容部材3に固定する。
【0036】
したがって、この光学装置1にあっては、光学素子2の固定に際して、反射面である内面2cに交差する方向に沿って反射面に応力が加わりにくい。よって、反射面の形状の変化が抑制される。特に、この光学装置1では、光学素子2を収容部材3の内面3cから離間させた状態で、光学素子2を収容部材3に固定している。このため、収容部材3の内面3cから光学素子2への応力の入力を避け、反射面の形状の変形を確実に抑制可能である。特に、光学素子2は、厚さtが1.0mm以下であり、薄肉構造を有している。このような場合でも、光学装置1によれば、光学素子2の内面2cの形状の変化を好適に抑制できる。
【0037】
また、ストッパ71の内径d5は、光学素子2の一端2a側の内径d1よりも大きい。したがって、ストッパ71が、光学素子2への入射光又は光学素子2からの出射光の光路に干渉することを抑制可能である。更に、ストッパ71の内径d5は、光学素子2の一端2a側の外径d3よりも小さい。したがって、ストッパ71を光学素子2の一端2aに確実に当接させることができる。
【0038】
また、ストッパ72の内径d6は、光学素子2の他端2b側の内径d2よりも大きい。したがって、ストッパ72が、光学素子2への入射光又は光学素子2からの出射光の光路に干渉することを抑制可能である。更に、ストッパ72の内径d6は、光学素子2の他端2b側の外径d4よりも小さい。したがって、ストッパ72を光学素子2の他端2bに確実に当接させることができる。
【0039】
また、第1固定部41では、押圧部材91によるストッパ71の押圧に際して、弾性部材81が用いられ、第2固定部42では、押圧部材92によるストッパ72の押圧に際して、弾性部材82が用いられている。これにより、第1固定部41及び第2固定部42において、光学素子2に必要以上の力が加わることを抑制できる。この結果、光学素子2の形状の変形を一層抑制できる。
【0040】
また、弾性部材81は、ストッパ71及び第1貫通孔A1上に配置されている。したがって、弾性部材81がストッパ71及び底面5a上に配置されている場合に比べて、押圧部材91による押圧力が光学素子2の一端2aに作用し易くなる。この結果、光学素子2が確実に固定される。
【0041】
また、弾性部材82は、ストッパ72及び第1貫通孔A1上に配置されている。したがって、弾性部材82がストッパ72及び底面6a上に配置されている場合に比べて、押圧部材92による押圧力が光学素子2の他端2bに作用し易くなる。この結果、光学素子2が確実に固定される。
【0042】
また、収容部材3には第2貫通孔A2が形成されているので、第1貫通孔A1における光学素子2の外側の空間についても容易に真空排気することができる。これにより、例えば、光学装置1が配置された空間を真空引きした際に、第1貫通孔A1における光学素子2の外部の気圧が、光学素子2の内部の気圧よりも高くなることに起因して、ストッパ71及びストッパ72がそれぞれ光学素子2から離れる方向に力を受け、光学素子2を挟持できなくなることを抑制可能となる。また、光学素子2の内部と外部との間の気圧差を抑制できるので、内面2c又は外面2dへの応力の入力を抑制できる。この結果、反射面の形状の変形を抑制可能となる。
【0043】
また、押圧部材91には、空気抜き孔91dが形成されているので、弾性部材81の外周側の空間(端面3aとストッパ71と弾性部材81と押圧部材91とにより規定される空間)についても真空排気することができる。これにより、例えば、光学装置1が配置された空間を真空引きした際に、弾性部材81の外周側の空間の気圧が、弾性部材81の内周側の空間の気圧よりも高くなることに起因して、第1固定部41による固定構造が悪影響を受けることを抑制可能となる。このような悪影響として、例えば、弾性部材81の外周側と内周側との間に気圧差が発生することにより、光学素子2の保持力が変わり、光学素子2が光軸中心からずれることが考えられる。
【0044】
また、押圧部材92には、空気抜き孔92dが形成されているので、弾性部材82の外周側の空間(端面3bとストッパ72と弾性部材82と押圧部材92とにより規定される空間)についても真空排気することができる。これにより、例えば、光学装置1が配置された空間を真空引きした際に、弾性部材82の外周側の空間の気圧が、弾性部材82の内周側の空間の気圧よりも高くなることに起因して、第2固定部42による固定構造が悪影響を受けることを抑制可能となる。このような悪影響として、例えば、弾性部材82の外周側と内周側との間に気圧差が発生することにより、光学素子2の保持力が変わり、光学素子2が光軸中心からずれることが考えられる。
【0045】
また、空気抜き孔91dは、底部91aのうち、端面3aにおける凹部5以外の部分(凹部5の外側部分)と対向する部分に形成されている。上記のとおり、弾性部材81は、凹部5に配置されるので、空気抜き孔91dによれば、弾性部材81の外周側の空間を確実に真空排気することができる。
【0046】
また、空気抜き孔92dは、底部92aのうち、端面3bにおける凹部6以外の部分(凹部6の外側部分)と対向する部分に形成されている。上記のとおり、弾性部材82は、凹部6に配置されるので、空気抜き孔92dによれば、弾性部材82の外周側の空間を確実に真空排気することができる。
【0047】
以上、本実施形態に係る光学装置1について説明したが、本発明は、これに限られるものではない。
【0048】
図5は、変形例に係る光学装置の断面図である。以下では、図1及び図5を参照しながら、実施形態に係る光学装置1との相違点を中心に、変形例に係る光学装置1Aの説明を行う。図1及び図5に示されるように、光学装置1Aは、固定部4に変えて固定部4Aを備える点で光学装置1と相違している。固定部4Aは、第1固定部41及び第2固定部42に変えて、第1固定部41A及び第2固定部42Aを有する点で、固定部4と相違している。第1固定部41Aは、ストッパ71に代えてストッパ71Aを有する点で、第1固定部41と相違している。第2固定部42Aは、ストッパ72に代えてストッパ72Aを有する点で、第2固定部42と相違している。
【0049】
ストッパ71Aは、例えば、円環状の板部材である。ストッパ71Aは、一端2aに当接する当接面73Aを含んでいる。当接面73Aは、例えば、円環状をなしている。当接面73Aは、ストッパ71Aの内縁に近づくにつれて、他端2bから離れるように傾斜したテーパ面75を含んでいる。一端2aは、テーパ面75よりもストッパ71Aの内縁側において当接面73Aに当接する。テーパ面75の内径は、例えば、外径d3に設定されている。当接面73Aの外縁側の一部は、底面5aと対向している。
【0050】
ストッパ72Aは、例えば、円環状の板部材である。ストッパ72Aは、他端2bに当接する当接面74Aを含んでいる。当接面74Aは、例えば、円環状をなしている。当接面74Aは、ストッパ72Aの内縁に近づくにつれて、一端2aから離れるように傾斜したテーパ面76を含んでいる。他端2bは、テーパ面76よりもストッパ72Aの内縁側において当接面74Aに当接する。テーパ面76の内径は、例えば、外径d4に設定されている。当接面74Aの外縁側の一部は、底面6aと対向している。
【0051】
このように、光学装置1Aでは、ストッパ71Aの当接面73Aは、テーパ面75を含んでいるので、テーパ面75を用いて一端2aをテーパ面75の内側の位置に案内することができる。これにより、一端2aが容易に位置決めされる。また、ストッパ72Aの当接面74Aは、テーパ面76を含んでいるので、テーパ面76を用いて他端2bをテーパ面76内側の位置に案内することができる。これにより、他端2bが容易に位置決めされる。以上のように、変形例に係る光学装置1Aでは、一端2a及び他端2bが容易に位置決めされる結果、光学素子2が容易に位置決めされる。
【0052】
また、例えば、第1固定部41は、少なくとも一端2aに当接すると共に収容部材3に固定される構成を有していればよい。例えば、第1固定部41は、ストッパ71及び弾性部材81を有さず、押圧部材91が一端2aに直接当接する構成を有していてもよい。また、第2固定部42は、少なくとも他端2bに当接すると共に収容部材3に固定される構成を有していればよい。例えば、第2固定部42は、ストッパ72及び弾性部材82を有さず、押圧部材92が他端2bに直接当接する構成を有していてもよい。このように一端2aに直接当接する構成の押圧部材91、及び他端2bに直接当接する構成の押圧部材92のいずれか一方が収容部材3と一体的に形成されていてもよい。なお、光学装置1は、第1固定部41が弾性部材81を用いる構成、及び、第2固定部42が弾性部材82を用いる構成の少なくともいずれか一方を備えることにより、光学素子2に必要以上の力が加わることを抑制できる。
【0053】
光学装置1では、押圧部材91及び押圧部材92は、着脱自在に収容部材3に固定されているとして説明したが、押圧部材91及び押圧部材92の固定方法は、これに限られず、接着等によってもよい。
【0054】
光学素子2は、一端2a、他端2b及び内面2cを有する筒状の光学素子であればよく、一端2aの内径d1が他端2bの内径d2と同じ大きさであってもよいし、一端2aの外径d3が他端2bの外径d4と同じ大きさであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1,1A…光学装置、2…光学素子、2a…一端、2b…他端、2c…内面、3…収容部材、3a…端面、3c…内面、3d…外面、4,4A…固定部、5…凹部、5a…底面、41,41A…第1固定部、42,42A…第2固定部、71,71A…ストッパ、73A…当接面、75…テーパ面、81…弾性部材、91…押圧部材、A1…第1貫通孔、A2…第2貫通孔、D…軸方向、d1…内径、d2…内径、d3…外径、d4…外径、d5…内径、d6…内径、t…厚さ。
図1
図2
図3
図4
図5