(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
FMラジオ放送に用いられる音声デジタルSTL(Studio to Transmitter Link)/TTL(Transmitter to Transmitter Link)装置は、音声信号のデジタル変調/復調及び送受信を行うものであり、放送所において、放送本局からのデジタル変調された音声信号を受信復調して、FM放送波に変調して、放送波を出力する放送機に出力するものである。
また、中継放送所として動作する場合は、上述した動作に加えて、復号された音声信号を再びデジタル変調して、別の放送所に送信する中継局としても動作するものである。
【0003】
ところで、FMラジオ放送で用いられる単一周波数放送網(SFN:Single Frequency Network)は、放送サービスエリアを単一の周波数で構成するため、放送周波数を有効に活用できるメリットがある。
【0004】
しかし、このFM同期放送を実現するためには、FM放送波を出力する放送本局、または同一周波数でFM放送波を出力する複数の中継局において、放送波の出力タイミングを同期させる必要がある。
【0005】
デジタルテレビジョン放送で用いられるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式のように、デジタル変調方式を用いた場合は、マルチパス妨害による隣接シンボルの干渉をガードインターバルで吸収することができるが、FMラジオ放送で用いられるアナログ変調方式の場合、各放送波出力のタイミングのズレ(遅延差)による干渉の影響は大きくなる。
そこで、従来のFM同期放送では、放送本局や複数の中継局において、それぞれ遅延時間を調整して、放送機から同一のタイミングで一斉に放送波を出力するようにしている。
【0006】
[従来の放送通信システムの概略:
図12]
従来の放送通信システムの概略構成について
図12を用いて説明する。
図12は、従来の放送通信システムの概略構成例を示す説明図である。
図12に示すように、従来の放送通信システムは、放送本局と、中継局1と、中継局2とを備えた多段中継のシステムである。
【0007】
放送本局には、STL送信装置(STL TX)101が設けられており、入力された音声信号を多重、変調してマイクロ波として送信する。
尚、放送本局の構成を単に「送信装置」と称することがある。また、放送本局にも、中継局と同様の受信装置及び放送波を出力するFM送信装置が設けられている場合があるが、ここでは図示を省略する。
【0008】
中継局1は、放送本局からのマイクロ波を受信して、後段の中継局2にマイクロ波を送信すると共に、復調された信号の遅延時間を調整して変調し、放送波を出力するものである。
中継局1の構成について説明する。
中継局1は、STL受信装置(STL RX)121と、データ分配部122と、TTL送信装置(TTL TX)123と、遅延調整装置124と、FM送信機(FM TX)125とを備えている。
尚、中継局(中継局1,2)の構成を単に「受信装置」と称することがある。
【0009】
STL受信装置121は放送本局のSTL送信装置101から送信されたマイクロ波を受信して復調する。
データ分配部122は、STL受信装置121で受信した信号を、次段の中継局2に伝送する高周波信号と、元の音声信号であるベースバンド信号とに分配する。
TTL送信装置(TTL TX)123は、分配された高周波信号を再度変調してマイクロ波として中継局2に送信する。
【0010】
遅延調整装置124には、予め測定された伝送路遅延の情報に基づいて設定された遅延時間(固定遅延量D1)が記憶されており、ベースバンド信号を設定された遅延時間D1だけ遅延させて、FM送信装置125に出力する。固定遅延量は、各中継局からの放送波が同じタイミングで発放されるように調整するための時間である。
FM送信装置125は、入力されたベースバンド信号を変調して、FM放送信号として発放する。
【0011】
中継局1では、STL受信装置121で受信したマイクロ波が復調され、データ変換部122で高周波信号とベースバンド信号に分配されて、高周波信号はTTL送信装置123で再変調されて中継局2に送信される。
また、ベースバンド信号は、遅延調整装置124で固定遅延量D1だけ遅延されて出力され、FM送信装置125からFM放送信号として出力される。
【0012】
中継局2は、中継局1からのマイクロ波を受信して復調し、遅延時間を調整してFM放送波を出力するものである。
中継局2は、STL受信装置131と、遅延調整装置132と、FM送信装置133とを備えている。中継局2の遅延調整装置132には、固定遅延量D2が記憶されている。
【0013】
そして、中継局2では、STL受信装置121で受信したマイクロ波が復調され、ベースバンド信号が遅延調整装置132で固定遅延量D2だけ遅延されて、FM送信機133に出力され、FM送信機133で変調されてFM放送信号として出力される。
【0014】
このように、各中継局の伝搬路遅延に応じて、適切な遅延時間で放送波を出力することにより、同一のタイミングで放送信号が発放され、SFN(Single Frequency Network)のサービスエリアでは、単一周波数によるFM同期放送が実現されるものである。
【0015】
[従来の放送通信システムにおける遅延時間の設定]
そして、従来の放送通信システムでは、FM放送波を出力する複数の中継局の伝搬路遅延量をオシロスコープ等の測定器を用いて予め測定し、測定結果に基づいて、最も伝送遅延の大きい中継局でも同じタイミングで出力できるように、各中継局の音声信号の遅延時間を決定して、各遅延調整装置に設定するようにしていた。
また、放送本局のFM送信機には、マイクロ波の出力から各中継局でFM放送波が出力されるタイミングまでの時間が遅延調整装置に設定されている。
つまり、従来の放送通信システムでは、放送本局及び各中継局の遅延時間は固定値となっていた。
【0016】
しかし、マイクロ波で空中伝送を行うSTL/TTLでは、伝搬上のフェージング等に起因する伝搬路遅延の変動が生じる場合がある。
また、光ケーブルを用いたRF伝送でも季節や温度変化によるケーブル長の変化等に起因する遅延時間の変動が生じる場合がある。
このような場合には、伝搬路遅延が予め測定した遅延時間と異なるため、各中継局において音声信号の出力タイミングがずれてしまい、同期放送ができなくなるおそれがある。
【0017】
尚、放送通信システムとしては、放送本局と中継局との間を光回線を用いて通信する構成もあり、この場合にも予め測定した伝送遅延時間に基づいて、各中継局で固定遅延量を設定しておき、各中継局から同一タイミングで放送信号を出力するようにしている。
【0018】
[関連技術]
尚、放送通信システムの従来技術としては、特開2006−14140号公報「遅延設定用データ送信装置、TS−STL/TTL受信放送所地上デジタル放送波遅延時間測定調整装置およびIF−STL/TTL受信放送所地上デジタル放送波遅延時間測定調整装置」(日本放送協会、特許文献1)、特開2006−5615号公報「単一周波数網地上ディジタル放送システム、単一周波数網の同期方式、及び送信装置」(営電株式会社、特許文献2)、特開2004−320348号公報「放送信号の送信時刻測定装置及びその測定方法、この送信時刻測定装置を用いた送信装置及び中継装置、及び遅延時間測定装置」(株式会社東芝、特許文献3)、特開2003−32207号公報「地上波ディジタル放送のSFNシステム及びその伝送遅延制御方法」(日本電気株式会社、特許文献4)がある。
【0019】
特許文献1には、演奏所から、地上デジタルテレビジョン放送波の各放送所における遅延時間の調整量の基準となる相対遅延設定用データを有するNSI(Network Synchronization Information)パラメータをTS(Transport Stream)信号に多重して送信し、各放送所にて放送波が同じタイミングで出力されるよう制御することが記載されている。
【0020】
特許文献2には、地上ディジタル放送システムの単一周波数網において、基幹局から中継局にTS(Transport Stream)データ信号を送信し、最も遠い中継局からTS信号を折り返して基幹局に戻して、遅延時間を検出し、各中継局では検出された遅延時間を考慮して送信タイミングを一致させることが記載されている。
【0021】
特許文献3〜4には、地上デジタルテレビジョン放送の単一周波数網において、複数の放送所における送信信号のタイミングを制御することが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、従来の放送通信システムでは、放送本局及び各中継局に設定されている遅延時間が固定値であるため、フェージングや季節変化に伴う伝搬路遅延の変動に追随することができず、同期放送ができなくなる可能性があるという問題点があった。
【0024】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、フェージングや季節変化に伴う伝搬路遅延の変動があっても、各中継局で音声信号を常に適切な遅延時間だけ遅延させて、放送本局及び複数の中継局から同一タイミングで放送波を出力することができる放送通信システム、放送通信装置及び放送通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、送信装置から受信装置へ送信された音声信号を放送信号として同一周波数を用いて同期放送を行う
FMラジオ放送の放送通信システムであって、入力音声信号を含む放送通信データに時間情報を書き込む際に、送信側で受信したGPS信号の基準信号
の立ち上がりからの経過時間に基づいて現在時刻を
示す同期時刻印を生成し、時間情報として
、同期時刻印と、受信側における放送波への変調開始時刻を指定する変調開始時刻印とを
複数のフレームから成るオーディオブロック毎に各フレームのAES/EBUのユーザビットに書き込んで多重化して送信する送信装置と、受信側で受信したGPS信号の基準信号
の立ち上がりからの経過時間に基づいて、送信装置から放送通信データを受信した時刻を受信時刻として算出し、受信した放送通信データから
オーディオブロック毎に入力音声信号と
AES/EBUのユーザビットに書き込まれた時間情報とを分離し、受信時刻と時間情報に含まれる同期時刻印との差分を伝送遅延時間として算出し、時間情報に含まれる変調開始時刻印と受信時刻との差分をタイミング調整時間として算出し、当該タイミング調整時間に基づいて入力音声信号を
オーディオブロック毎に遅延させてから放送波への変調を開始する受信装置とを備えたことを特徴としている。
【0029】
また、本発明は、送信装置から送信された音声信号を受信して、放送信号として出力する
FMラジオ放送の放送通信装置であって、送信装置において、送信側で受信したGPS信号の基準信号
の立ち上がりからの経過時間に基づいて算出された現在時刻を示す同期時刻印と、受信側における放送波への変調開始時刻を指定する変調開始時刻印とが時間情報として
複数のフレームから成るオーディオブロック毎に各フレームのAES/EBUのユーザビットに書き込まれて送信された放送通信データを受信して、
オーディオブロック毎に入力音声信号と時間情報とを分離する受信部と、受信側で受信したGPS信号の基準信号
の立ち上がりからの経過時間に基づいて、放送通信データを受信した時刻を受信時刻として算出する現在時刻認識部と、受信時刻と
オーディオブロック毎に時間情報に含まれる同期時刻印との差分を伝送遅延時間として算出する伝送時間計算部と、時間情報に含まれる変調開始時刻印と受信時刻との差分をタイミング調整時間として算出するタイミング調整時間決定部と、タイミング調整時間に基づいて入力音声信号を
オーディオブロック毎に遅延させる遅延時間調整部と、遅延時間調整部で遅延された音声信号をアナログ音声信号に変換するアナログ音声変換部と、アナログ音声信号を放送波に変調する変調部とを備えたことを特徴としている。
【0030】
また、本発明は、送信装置から受信装置へ送信された音声信号を放送信号として同一周波数を用いて同期放送を行う
FMラジオ放送の放送通信システムにおける放送通信方法であって、送信装置が、入力音声信号を含む放送通信データに時間情報を書き込む際に、送信側で受信したGPS信号の基準信号
の立ち上がりからの経過時間に基づいて現在時刻を
示す同期時刻印を生成し、時間情報として、
同期時刻印と、受信側における放送波への変調開始時刻を指定する変調開始時刻印とを
複数のフレームから成るオーディオブロック毎に各フレームのAES/EBUのユーザビットに書き込んで多重化して送信し、受信装置が、受信側で受信したGPS信号の基準信号
の立ち上がりからの経過時間に基づいて、送信装置から放送通信データを受信した時刻を受信時刻として算出し、受信した放送通信データから
オーディオブロック毎に入力音声信号と時間情報とを分離し、受信時刻と時間情報に含まれる同期時刻印との差分を伝送遅延時間として算出し、時間情報に含まれる変調開始時刻印と受信時刻との差分をタイミング調整時間として算出し、当該タイミング調整時間に基づいて入力音声信号を遅延させてから放送波への変調を開始する
と共に、伝送遅延時間を送信装置にフィードバックすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、送信装置から受信装置へ送信された音声信号を放送信号として同一周波数を用いて同期放送を行う
FMラジオ放送の放送通信システムであって、入力音声信号を含む放送通信データに時間情報を書き込む際に、送信側で受信したGPS信号の基準信号
の立ち上がりからの経過時間に基づいて現在時刻を
示す同期時刻印を生成し、時間情報として
、同期時刻印と、受信側における放送波への変調開始時刻を指定する変調開始時刻印とを
複数のフレームから成るオーディオブロック毎に各フレームのAES/EBUのユーザビットに書き込んで多重化して送信する送信装置と、受信側で受信したGPS信号の基準信号
の立ち上がりからの経過時間に基づいて、送信装置から放送通信データを受信した時刻を受信時刻として算出し、受信した放送通信データから
オーディオブロック毎に入力音声信号と
AES/EBUのユーザビットに書き込まれた時間情報とを分離し、受信時刻と時間情報に含まれる同期時刻印との差分を伝送遅延時間として算出し、時間情報に含まれる変調開始時刻印と受信時刻との差分をタイミング調整時間として算出し、当該タイミング調整時間に基づいて入力音声信号を
オーディオブロック毎に遅延させてから放送波への変調を開始する受信装置とを備えた放送通信システムとしているので、フェージングや季節変化によって伝送遅延時間が変動した場合でも、実際の伝送遅延時間に応じて適切なタイミング調整時間を算出することができ、複数の中継局から同一タイミングで放送波を出力して、単一周波数FM同期放送を実現することができる効果がある。
【0033】
また、本発明によれば、音声デジタル放送において、送信装置でAES/EBUのユーザビットに時刻情報を埋め込んで送信し、受信装置で当該時刻情報に基づいて遅延時間を調整することで同期放送を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る放送通信システム及び放送通信方法は、放送本局の送信装置が、GPS信号から得られる例えば1秒に1回のパルス信号(1PPS(Pulse Per Second)信号)に同期する時間情報を、AES/EBU音声信号のユーザビット領域に多重して送信し、中継局の受信装置が、GPS信号から得られる1PPS信号と受信信号から取り出した1PPSの時間情報とを比較して伝送遅延時間を求め、伝送遅延時間に基づいて、予め設定されている基準遅延時間までの時間をタイミング調整時間として算出して、受信信号から取り出した音声信号を当該タイミング調整時間だけ遅延させて変調し、放送波として出力するものであり、フェージングや季節変化によって伝送遅延時間が変動した場合でも、それに応じて適切なタイミング調整時間を算出することができ、複数の中継局から同一タイミングで放送波を出力して、最良な単一周波数FM同期放送を実現することができるものである。
【0036】
また、本発明の実施の形態に係る放送通信システム及び放送通信方法は、送信装置が、例えば1PPSのパルス信号(1PPS信号)に基づいて送信時刻を示す同期時刻情報を生成し、同期時刻情報とFM放送波への変調開始時刻とをAES/EBU音声信号のユーザビット領域に多重して送信し、中継局の受信装置が、GPS信号から得られる1PPS信号から求められる現在時刻と受信信号から取り出した同期時刻情報とを比較して伝送遅延時間を求めると共に、現在時刻から受信した変調開始時刻までの時間をタイミング調整時間として算出して、受信信号から取り出した音声信号を当該タイミング調整時間だけ遅延させて変調し、放送波として出力するものであり、フェージングや季節変化によって伝送遅延時間が変動した場合でも、それに追随して適切なタイミング調整時間を算出して最良な単一周波数FM同期放送を実現でき、また、算出された伝送遅延時間を放送本局にフィードバックすることにより、変調開始時刻を調整することができ、システムの保守管理を容易にすることができるものである。
【0037】
[第1の実施の形態:
図1]
本発明の第1の実施の形態に係る放送通信システム(第1のシステム)について
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る放送通信システムの概略構成図である。
図1に示すように、第1のシステムは、放送本局と、中継局(1)と、中継局(2)とを備えている。
第1のシステムでは、放送本局には送信装置10が設けられ、中継局(1)には受信装置20とFM送信装置200が設けられ、中継局(2)には受信装置30とFM送信装置300が設けられている。
また、送信装置10、受信装置20,30には、それぞれGPS受信部が設けられており、同一の基準タイミングを受信するものである。
【0038】
第1のシステムの特徴として、送信装置10は、AES/EBUの音声信号に、GPS信号に基づいて生成した時間情報を多重してマイクロ波で送信する。
時間情報は、後述するように、GPS信号から生成した1PPS信号に同期した情報である。
【0039】
また、第1のシステムの特徴として、各中継局の受信装置20には、予め遅延基準時間が設定されている。
第1のシステムでは、最も遠方にある中継局(2)の伝送遅延時間を考慮して発報のタイミングを設定しており、送信装置1から出力される音声信号から発報のタイミングまでの時間を、遅延基準時間として受信装置20,30に記憶しておく。
ここでは、遅延基準時間を2000μsとしている。
【0040】
そして、受信装置20は、送信装置10から受信したマイクロ波を受信装置30に送信すると共に、受信信号から取り出した時間情報と、GPS信号に基づいて自己が生成した1PPSの基準信号とに基づいて伝送遅延時間を求め、更に全てのFM送信装置からの発報タイミングを合わせるために遅延時間を調整して、音声信号をFM送信装置200に出力する。
FM送信装置200は、音声信号を変調してFM放送信号として出力する。
【0041】
受信装置30は、受信装置20からマイクロ波を受信して時間情報と音声信号を取り出し、伝送遅延時間を求め、遅延時間を調整して、音声信号をFM送信装置300に出力する。
FM送信装置300は、音声信号を変調してFM放送信号として出力する。
【0042】
受信装置20,30において音声信号をFM送信装置に出力するタイミングを調整することにより、FM送信装置200,300における発報のタイミングを一致させることができるものである。
【0043】
[第1のシステムにおける遅延時間の調整]
第1のシステムにおける遅延時間の調整について説明する。
受信装置20では、送信装置の時間情報(S1)と、自己が生成した1PPS信号のタイミング(S2)に基づいて伝送遅延時間(S2−S1、例えば500μs)を算出する。
そして、予め設定されている遅延基準時間(2000μs)から伝送遅延時間を差し引いて、タイミング調整時間を算出する。
ここでは、2000−500=1500μs であり、受信装置20では、音声信号を1500μsだけ遅延させてFM送信装置200に出力する。
【0044】
同様に、受信装置30では、送信装置の時間情報(S1)と、自己が生成した1PPS信号のタイミング(S3)から伝送遅延時間(S3−S1、例えば1000μs)を求め、2000−1000=1000μsをタイミング調整時間として算出する。
つまり、受信装置30では、音声信号を1000μsだけ遅延させてFM送信装置300に出力する。
【0045】
このようにして、第1のシステムでは、送信装置から送信する毎にタイミング調整時間を算出することにより、伝送路のフェージング等による伝送遅延時間の変化にも対応することができ、放送波の出力タイミングの同期を図ることが可能となるものである。
【0046】
[AES/EBUデジタルオーディオデータ構造:
図2]
次に、第1のシステムで用いられるAES/EBUデジタルオーディオデータの構造について
図2を用いて説明する。
図2は、AES/EBUデジタルオーディオデータの構造を示す説明図である。AES/EBUデータは、請求項における放送通信データに相当している。
【0047】
図2に示すように、AES/EBU信号は、1オーディオブロックを一つの単位とし、192のオーディオフレーム(フレーム0〜フレーム191)で構成される。
また、1オーディオフレームは、2つの32ビットオーディオサブフレームで構成されており、サブフレームA、サブフレームBと呼ばれる。ステレオ信号ならばLチャンネル、Rチャンネルの音声データがそれぞれ格納されている。
【0048】
[AES/EBUデジタルオーディオサブフレーム構造:
図3]
次に、AES/EBUデジタルオーディオサブフレーム構造について
図3を用いて説明する。
図3は、AES/EBUデジタルオーディオサブフレームの構造を示す説明図である。
サブフレームは、プリアンブル、補助データ、オーディオデータワード、有効ビット、ユーザビット、チャネルステータスビット、パリティビットの7つの領域から構成されている。
【0049】
各領域のデータについて説明する。
プリアンブル(同期ワード)は、新しいフレームのスタートを示すデータであり、4ビットで構成される。このプリアンブルが、それぞれオーディオブロックのスタート、オーディオブロックのスタート以外のサブフレームAのスタート、サブフレームBのスタートのフラグとなるビットシーケンスである。
【0050】
補助データは、オーディオデータワードとしても使用できるが、狭い帯域の音声信号の伝送、例えばスタジオ間の連絡などにも使用される4ビットのデータである。
オーディオデータワードは、本線のオーディオ信号が格納されているデータであり、4ビットの補助データを使用することで、最大24ビットまで割当てることができる。
【0051】
有効ビットは、データが有効であるか無効であるかを示すデータ(1ビット)である。
"0"にセットすることで、オーディオデータワードがD/A変換可能な有効データであることを表し、"1"にセットすることで、受信側はオーディオ信号をミュートにすることができる。
【0052】
ユーザビットはユーザが自由に使用できるデータ(1ビット)であり、本システムでは、ここに1PPS信号に基づく時間情報を格納する。
ユーザビットのデータは、受信側の装置で8ビット(1バイト)×24列のメモリアレイに送られる。このメモリアレイでは、サブフレーム毎に、オーディオブロックのスタートからフレーム番号順に192のビットを格納する。
【0053】
第1のシステムの受信装置20,30は、ユーザビットをメモリアレイに格納して解析し、送信装置10で入力された時間情報を読み取るようにしている。送信装置10及び受信装置20,30の動作については後述する。
【0054】
チャネルステータスビットは、エンファシス、カテゴリコード、コピー禁止フラグなどの情報が格納されたデータ(1ビット)であり、ユーザビットと同様に、受信側の装置で8ビット(1バイト)×24列のメモリアレイに格納される。
パリティビット(1ビット)は、偶数パリティを表示し、奇数個の伝送誤りを検知するためのデータである。
【0055】
[送信装置10の構成:
図4]
次に、放送本局に設けられた送信装置10の構成について
図4を用いて説明する。
図4は、送信装置10の構成ブロック図である。
図4に示すように、送信装置10は、GPS受信部と、基準信号発生部11と、AES/EBUデータ変換部12と、STL送信装置13とを備えている。
GPS受信部は、GPS信号を受信する。
基準信号発生部11は、GPS信号に同期した基準パルス(1PPS信号)を発生する。
【0056】
AES/EBUデータ変換部12は、基準信号に基づいて、送信装置における時間情報を生成するものである。
具体的には、AES/EBUデータ変換部12は、1PPS信号をトリガとして、1PPS信号を受信したタイミングで、当該オーディオフレームのAES/EBU信号のユーザビット領域のビットを"1"に変換する。
【0057】
つまり、AES/EBUデータ変換部12は、送信側パルス信号に同期して"1"となる時間情報をAES/EBUフレームのユーザビットに埋め込むものである。
そして、第1のシステムでは、これを受信側の遅延量調整のための遅延差検出として利用する。
STL送信装置13は、ユーザビットが変換されたフレームを含むAES/EBU信号を、多重、変調して、マイクロ回線を通して中継局(1)へ送信する。
【0058】
[受信装置の構成:
図5]
次に、受信装置の構成について
図5を用いて説明する。
図5は、受信装置の構成を示す構成ブロック図である。
尚、ここでは、別の中継局への中継を行わない受信装置の構成を示しており、
図1に示した中継局(2)の構成に相当している。ここでは、中継局(2)として説明するが、中継局(1)も
図5とほぼ同等の構成を備えている。
【0059】
図5に示すように、受信装置は、TTL受信装置31と、AES/EBUデータ復元部32と、GPS受信部と、基準信号発生部33と、遅延調整装置34と、FM送信装置35とを備えている。
尚、中継局(1)では、送信装置10からの信号を受信するため、TTL受信装置31の代わりにSTL受信装置を備えている。
【0060】
TTL受信装置31は、中継局(1)からのマイクロ波を受信して、復調し、ABS/EBU信号を分離する。
ABS/EBUデータ復元部32は、ABS/EBUデータのユーザビットをメモリアレイに格納して、時間情報を解析すると共に、音声信号を後述する遅延調整装置34に出力する。
【0061】
時間情報の解析について説明する。
受信装置のABS/EBUデータ復元部32は、メモリアレイをスキャンして、ユーザビットが"1"となったフラグをトリガとしてパルスを発生し、遅延調整装置34に出力する。
ABS/EBUデータ復元部32から出力されるパルス信号は、送信装置10で生成した1PPS信号に同期した信号であるが、伝送によって遅延が生じた1PPS信号となっている。
ここでは、ABS/EBUデータ復元部32からの1PPS信号のタイミングをS2とする。ABS/EBUデータ復元部32からの1PPS信号は、請求項に記載した受信パルス信号に相当している。
【0062】
また、GPS受信部は、GPS信号を受信する。
基準信号発生部33は、GPS信号に同期した基準パルス信号(1PPS信号)を発生する。ここで、受信側で生成した1PPS信号のタイミングをS1とする。
遅延調整装置34は、音声信号をFM放送機に出力するタイミングを調整するものであり、比較部341と、遅延発生部342とを備えている。
【0063】
比較部341は、基準信号発生部33からの1PPS信号と、AES/EBUデータ復元部32からの1PPS信号とを比較して、タイミングS2とS1の差(S2−S1)を伝送遅延時間(伝搬路遅延、遅延量)として算出する。
尚、後述するように、送信装置10からの時間情報は、途中で中継されてもそのまま保存されるので、末端の受信装置では、送信装置10から中継局を経て受信装置で受信されるまでの伝送遅延時間を算出可能となる。
【0064】
また、上述の例では受信装置のABS/EBUデータ復元部32においてパルスを発生し、当該パルス信号を受信パルス信号と定義し、基準信号発生部33におけるGPS信号に同期した基準パルス信号と比較しているが、パルス信号はアナログ的な信号として生成して比較する場合、又はデジタル的な信号として生成して比較する場合の両方が考えられる。
例えば、受信装置のABS/EBUデータ復元部32において受信パルス信号をデジタル的な信号として生成した場合には、基準信号発生部33におけるGPS信号に同期した基準パルス信号をデジタル変換してデジタル的な信号として生成すれば、デジタルデータとしての比較となる。つまり、各パルス信号はそれぞれの信号同士を比較できるためのものであればよい。
【0065】
遅延発生部342は、比較部341で算出された伝送遅延時間と、予め設定された遅延基準時間とに基づいて、タイミング調整時間を算出し、AES/EBUデータ復元部32からの音声信号をタイミング調整時間だけ遅延させて、FM送信装置35に出力する。
これにより、受信装置では、マイクロ回線で受信した信号をタイミング遅延時間だけ遅延させてFM放送波として出力でき、全ての受信装置で同一タイミングで放送波を発放するものである。
【0066】
受信装置の動作について
図5を用いて説明する。
受信装置では、TTL受信装置31でマイクロ回線から受信された信号は、AES/EBUデータ復元部32で送信装置で書き込まれた時間情報が抽出され、それに基づいて生成された1PPS信号が遅延調整装置34の比較部341に入力される。
【0067】
比較部341では、基準信号発生部33からの1PPS信号のタイミングS1と、受信信号から生成した1PPS信号(受信パルス信号)のタイミングS2とが比較され、伝送遅延時間S2−S1が算出される。
そして、遅延発生部342において、遅延基準時間−伝送遅延時間がタイミング調整時間として算出され、音声信号が当該タイミング調整時間だけ遅延されてFM送信機35に出力されて、放送波として出力される。
このようにして受信装置の動作が行われる。
【0068】
[伝送遅延時間の算出:
図6]
ここで、伝送遅延時間の算出について
図6を用いて説明する。
図6は、伝送遅延時間の算出を示す模式説明図である。
図6に示すように、受信装置の基準信号発生部33で生成した1PPS信号と、AES/EBUデータ復元部32からの1PPS信号(受信パルス信号)とを比較すると、タイミングS2は、伝搬路遅延によってS1に比べて遅れている。
比較部341は、基準信号発生部33からの1PPS信号を受信すると、S1のタイミングを保持し、AES/EBUデータ復元部32からの1PPS信号を受信すると、S2のタイミングを保持して、伝送遅延時間をS2−S1として算出する。
【0069】
また、別の方法として、比較部341は、基準信号発生部33で生成した1PPS信号をトリガとしてカウントを開始し、AES/EBUデータ復元部32からの1PPS信号を受信するとカウントを終了し、当該カウント値に基づいて伝送遅延時間を算出するようにしてもよい。
伝送遅延時間の算出は、いずれの方法で行ってもよい。
【0070】
本システムでは、伝送遅延時間を毎秒算出しているので、フェージングの影響により伝送遅延時間が変動したとしても、その都度実際の伝送遅延時間を精度良く算出することができ、これにより、最適なタイミング遅延時間で音声信号を遅延させて、良好なFM同期放送を実現できるものである。
【0071】
[多段中継を行う場合の受信装置の構成:
図7]
次に、多段中継を行う場合の受信装置の構成について
図7を用いて説明する。
図7は、多段中継を行う場合の受信装置の構成を示す構成ブロック図であり、
図1に示した中継局(1)の構成を示している。
図7に示すように、中継局(1)の受信装置は、
図5に示した中継局(2)の受信装置と同等の受信動作を行う構成として、STL受信装置21と、AES/EBUデータ復元部22と、GPS受信部と、基準信号発生部23と、遅延調整装置24と、FM送信装置25とを備え、更に、後段の中継局への中継動作を行う構成として、データ分配部26及びTTL送信装置27を備えている。
図5と同様の構成部分については説明を省略する。
尚、多段中継を行う受信装置においても、
図5に示した受信装置と同様にタイミング調整時間を算出して、放送波の出力タイミングを調整するものである。
【0072】
STL受信装置21は、送信装置10からのマイクロ波を受信する。
データ分配部26は、STL受信装置21で受信した信号を2つに分配し、一方はAES/EBUデータ復元部22に出力し、他方はTTL送信装置27に出力する。
データ分配部26においては、音声信号と共に、ユーザビットも分配伝送される。
つまり、送信装置10からの時間情報はそのまま保存されて、後段の中継局に送信されるようになっている。
尚、中継局(1)の受信装置は、送信本局の送信装置10のように、自らが生成した1PPS信号のタイミングを示す時間情報を埋め込むことは行わないものである。
【0073】
TTL送信装置27は、ユーザビットを含む分配された信号を変調して、マイクロ回線で後段の中継局に送信する。
そして、後段の中継局においても、
図5で説明したように、遅延調整装置で、自己が生成した基準信号と、AES/EBUデータ復元部で解析された時間情報とを比較して、タイミング調整時間を算出することにより、適切な遅延時間だけ音声信号を遅延させて放送波を出力できるものである。
このように、第1のシステムでは、複数段に亘って中継する構成としてもFM同期放送を実現することができるものである。
【0074】
[光回線を用いた受信装置の構成:
図8]
放送局によっては、放送の信頼性を向上させるために、マイクロ回線だけでなく、光回線を備えて二重系とし、光回線でもAES/EBUデータを伝送する場合もある。
このような場合、例えば、通常はマイクロ回線からの信号を用いて放送を行うが、何らかの障害が発生して、マイクロ波信号を正常に受信できなかった場合に、光回線で受信した信号を用いて放送を実現するものである。
【0075】
光回線を用いた受信装置の構成について
図8を用いて説明する。
図8は、光回線を用いた受信装置の構成を示す構成ブロック図である。
図8に示すように、光回線を用いた受信装置は、
図5に示したマイクロ回線を用いた受信装置の構成に加えて、光信号受信部46と、AES/EBU切替器47とを備えている。
尚、音声信号の出力タイミングを調整するタイミング調整時間の算出方法は、
図5に示した受信装置と同様である。
【0076】
光回線を用いた受信装置の特徴部分について説明する。
光信号受信部46は、光回線を介して受信した光信号を電気信号に変換して、復調する。
AES/EBU切替器47は、STL受信装置41からの受信信号を監視して、同期信号を正常に受信した場合には、STL受信装置41からのAES/EBU信号を出力し、正常に受信しなかった場合には、光信号受信部46からの信号に切り替えて、光回線経由で受信したAES/EBU信号を出力する。
【0077】
これにより、無線回線に障害が発生した場合でも、予備回線である光回線からのAES/EBU信号を受信することができ、放送を正常に行うことができるものである。
そして、光回線を用いた受信装置においても、光回線経由で受信したAES/EBU信号の時間情報に基づいて、遅延調整装置44でタイミング調整時間を精度よく算出して、音声信号を適切に遅延させてFM送信装置に出力し、FM同期放送を実現できるものである。
【0078】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る放送通信システム(第2のシステム)について説明する。
第2のシステムは、送信装置において、送信データに時刻情報を埋め込む処理が為された時刻と、各中継局に設けられた受信装置での変調開始時刻とを時間情報として音声データに多重して送信し、各中継局の受信装置で音声信号の変調開始のタイミングを調整するものである。
【0079】
[第2の送信装置の構成:
図9]
第2のシステムにおける送信装置(第2の送信装置)の特徴部分について
図9を用いて説明する。
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る放送通信システムの送信装置AES/EBUデータ変換部の構成ブロック図である。
図9に示すように、第2の送信装置は、GPS受信部と、基準信号発生部51と、AES/EBUデータ変換部52とを備えている。尚、
図9では、信号を伝送するSTL送信装置や光送信装置等の伝送手段は省略している。
【0080】
第2の送信装置の各部について説明する。
GPS受信部は、GPS信号を受信する。
基準信号発生部51は、受信したGPS信号に同期した基準信号として1PPS信号を生成する(3A)。
【0081】
また、AES/EBUデータ変換部52は、AES/EBU変換部53と、時刻情報付加部54と、同期時刻印発生部55と、変調開始時刻印発生部56とを備えている。
AES/EBU変換部53は、入力された音声信号(3A)を
図2,3に示したAES/EBUオーディオデータ(3B)に変換する。
時刻情報付加部54は、AES/EBU信号(3B)に、後述する同期時刻印と、変調開始時刻印とを多重して(3F)伝送手段に出力する。
【0082】
同期時刻印発生部55は、第2の送信装置の特徴部分であり、送信されるAES/EBU信号に付加する現在時刻の情報(同期時刻印)を生成する。
同期時刻印は、オーディオブロック毎にAES/EBUデータ変換部52で時刻情報が書き込まれた時刻を示す情報であり、送信時刻とみなすことができる。
同期時刻印発生部55は、基準信号発生部51からの1PPS信号(3C)の立ち上がりからの経過時間をカウントして、同期時刻印(3D)を生成し、定期的に(常時)時刻情報付加部54と変調開始時刻印発生部56に出力する。
【0083】
変調開始時刻印発生部56も、第2の送信装置の特徴部分であり、外部から設定された遅延時間設定情報に基づいて、変調開始時刻の情報を生成する。
具体的には、変調開始時刻印発生部56は、同期時刻印発生部55からの同期時刻印に、遅延時間設定情報(3E)に基づく遅延時間を加算して変調開始時刻とし、当該情報を変調開始時刻印(3G)として時刻情報付加部54に出力する。
【0084】
変調開始時刻印は、各中継局において放送のための変調を開始する時刻を示す情報であり、全ての中継局に共通の情報となっている。第2のシステムでは、変調開始時刻印を放送本局側からその都度指定する構成としており、伝送路の実況に応じて調整できるものとなっている。
【0085】
遅延時間設定情報は、システムの管理者が任意に設定可能な情報であり、第2のシステムでは、受信装置から伝送遅延時間の情報を収集し、それに基づいて適切な遅延時間設定情報を設定できるものである。これについては後述する。
【0086】
そして、時刻情報付加部54では、AES/EBU変換部53からAES/EBUデータ(3B)が入力されると、同期時刻印及び変調開始時刻印を読み取って、1オーディオブロック単位でユーザビットに同期時刻印を書き込む。
【0087】
ここで、第2の送信装置では、1オーディオブロック(192ビット)のユーザビットを用いて、同期時刻印及び変調開始時刻印を書き込むようにしている。
これにより、音声データに、当該オーディオブロックが送信装置で処理された時刻(送信時刻情報)及び当該オーディオブロックを受信装置で変調開始すべき時刻の情報が付加されるものである。
【0088】
そして、音声信号に同期時刻印及び変調開始時刻印が多重されたAES本線信号(3F)が生成され、STL送信装置や光信号送信装置によって受信装置に伝送される。
【0089】
[第2の受信装置の構成:
図10]
次に、第2の放送通信システムにおける受信装置(第2の受信装置)について
図10を用いて説明する。
図10は、第2の送信装置の構成を示す構成ブロック図である。
図10に示すように、第2の受信装置は、GPS受信部と、基準信号発生部61と、同時放送用変調器62とを備えている。尚、変調部69の出力段に放送機が設けられているが、ここでは省略している。同様に、送信装置の伝送手段に対応する受信手段が設けられているが、省略する。
【0090】
基準信号発生部61は、GPS受信部で受信したGPS信号に基づいて、GPS信号に同期する1PPS信号を発生する。
【0091】
また、同時放送用変調器62は、更に、AES/EBU時刻情報抽出部63と、現在時刻認識部64と、伝送時間計算部65と、タイミング調整時間決定部66と、遅延時間調整部66と、AES/EBUアナログ音声変換部68と、変調部69とを備えている。
【0092】
AES/EBU時刻情報抽出部63は、有線又は無線の伝送手段によって伝送され、受信部で受信、復調されたAES本線信号(3E)から、送信装置で埋め込まれた同期時刻印及び変調開始時刻印を取り出す。
そして、AES/EBU時刻情報抽出部63は、同期時刻印(4C)を伝送時間計算部65に出力すると共に、変調開始時刻印(4E)をタイミング調整時間決定部66に出力する。
尚、AES本線信号から分離された音声信号は、遅延時間調整部67に出力される。
【0093】
また、現在時刻認識部64は、基準信号発生部61で生成された1PPS信号に基づいて、1PPS信号の立ち上がりを時間0として、1PPS信号の立ち上がりから現在までの経過時間を算出して、現在時刻情報(4J)として伝送時間計算部65に出力する。現在時刻情報は、請求項に記載した受信時刻に相当している。
【0094】
伝送時間計算部65は、現在時刻情報と同期時刻印とに基づいて、伝送遅延時間を算出する。
具体的には、同期時刻印は送信時の時刻を示しており、現在時刻情報は受信時の時刻を示しているので、両者の差分(現在時刻情報−同期時刻印)が伝送遅延時間となる。後述するように、伝送遅延時間は受信装置から、例えば定期的に送信装置にフィードバックされて、システムの保守管理に用いられるものである。
また、伝送時間計算部65は、現在時刻情報をそのままタイミング調整時間決定部66に出力する。
【0095】
タイミング調整時間決定部66は、伝送時間計算部65から出力された現在時刻情報(4J)と、AES/EBU時刻情報抽出部63から出力された変調開始時刻印(4E)とに基づいて、タイミング調整時間を算出する。
タイミング調整時間は、音声信号を変調開始時刻印で設定された変調開始時刻に変調するには、どれだけ遅延させればよいかを示す時間である。タイミング調整時間の算出については後述する。
【0096】
遅延時間調整部67は、入力されたAES/EBUの音声データを、タイミング調整時間決定部66から出力されたタイミング調整時間に従って遅延させ(4F)、AES/EBUアナログ音声変換部68に出力する。
【0097】
AES/EBUアナログ音声変換部68は、入力された音声データをアナログ音声信号(4G)に変換する。
変調部69は、アナログ音声信号を変調して、FM放送波(4H)として出力する。
【0098】
[第2の受信装置におけるタイミング調整時間の算出方法:
図9,10,11]
次に、第2の受信装置におけるタイミング調整時間の算出方法について
図9,10,11を用いて説明する。
図11は、第2の受信装置におけるタイミング調整時間の算出方法を示す説明図である。
図11(a)は、GPS信号に基づいて生成された1PPS信号を示す。この信号は放送本局でも中継局でも同じタイミングの基準信号として生成される。
【0099】
そして、
図11(b)に示すように、第2の送信装置では、1PPSの立ち上がりから経時して、時刻t1においてAES/EBU信号(
図9の3B)が時刻情報付加部54に入力され、AES/EBUのオーディオブロックに変調同期信号として同期時刻印(
図9の3D)が埋め込まれる。つまり、同期時刻印の情報(送信時刻に相当する情報)は時刻t1となる。
また、その際に、受信装置側でいつ変調を開始するかを指定する変調開始時刻印(時刻tm)も埋め込まれる。
【0100】
第2の受信装置では、それぞれの伝送路によって発生する別々の遅延時間を経て、AES本線信号(
図10の3E)を受信する。そのときの時刻t2を、受信時刻として現在時刻認識部64で認識する。t2の時刻は伝送路の状態によって異なるため、それぞれの受信装置において異なるものとなる。
【0101】
そして、伝送時間計算部65において、t2−t1を計算して、伝送遅延時間とする。
また、タイミング調整部66において、タイミング調整時間がtm−t2として算出される。
各受信装置において、遅延時間調整部67で音声信号をタイミング調整時間(tm−t2)だけ遅延させてから変調を開始することにより、全ての受信装置で同一時刻tmに同一の音声信号を発放することができるものである。
これにより、複数の受信装置における同期放送用変調器は、別々の伝送路を経て受信された信号を、同一時刻tmに出力でき、同期放送を実現することができるものである。
【0102】
尚、伝送時間計算部65において算出される伝送遅延時間は、タイミング調整時間の算出には直接用いられないものであるが、中継局から放送本局にフィードバックされて、放送通信の調整に用いられる。
例えば、システム運用開始時には、放送本局において、十分長い遅延時間設定情報を設定して、変調開始時刻tmをかなり遅い時刻としていた場合でも、中継局から受け取った伝送遅延時間がそれほど長くないことが判明した場合には、遅延時間設定情報をより短時間として、変調開始時刻tmをより早い時刻に設定することができるものである。
このように、実際の伝送路の状況を反映させて、放送通信を決め細かく調整することが可能となるものである。
【0103】
[実施の形態の効果]
本発明の第1の実施の形態に係る放送通信システム、放送通信装置、及び放送通信方法によれば、送信装置において、AES/EBU音声信号のユーザビット領域に、送信装置で生成した送信側1PPS信号に同期した時間情報を多重して送信し、受信装置において、受信信号から時間情報を抽出し、時間情報に同期した1PPS信号を受信1PPS信号として生成し、当該受信1PPS信号と自己がGPS信号に基づいて生成した1PPS信号との差に基づいて伝送遅延時間を求め、予め設定された基準遅延時間から伝送遅延時間を差し引いてタイミング調整時間を算出し、音声信号を当該タイミング調整時間だけ遅延させてからFM送信機に出力するようにしているので、フェージングや季節変化によって伝搬路の状況が変動しても、それに追随して実際の状況に応じた精度の高い伝送遅延時間を算出でき、複数の中継局で同一のタイミングで放送波を出力する同期放送を実現することができる効果がある。
【0104】
また、本発明の第2の実施の形態に係る放送通信システム、放送通信装置、及び放送通信方法によれば、送信装置において、AES/EBU音声信号のユーザビット領域に、送信時刻を示す同期時刻印と、受信装置における変調開始時刻を指定する変調開始時刻印とを埋め込んで送信し、受信装置において、受信時刻と受信した同期時刻印との差分から伝送遅延時間を算出し、受信した変調開始時刻印と受信時刻との差分からタイミング調整時間を算出して、音声信号を当該タイミング調整時間だけ遅延させてからFM放送波に変調するようにしているので、伝搬路の状況が変動しても、それに追随して精度の高い伝送遅延時間を算出でき、複数の中継局で同一のタイミングで放送波を出力する同期放送を実現することができる効果がある。
【0105】
また、第2のシステムによれば、受信装置が、算出した伝送遅延時間を送信装置にフィードバックするようにしているので、システムの管理者が、伝送遅延時間に基づいて遅延時間設定情報を調整することができ、実際の伝搬路の状態に応じて、より良好な放送通信を実現することができる効果がある。