【実施例】
【0027】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記実施例及び比較例において、試験シートの減臭性・消臭性、及び臭気吸着性能の回復効果は下記の試験方法により測定し、評価した。
〈減臭性・消臭性〉
容積5LのTedlar(登録商標)バッグを4個用意し、各々のバッグに濃度10ppm
に調整した個々の化学物質ガス、アンモニア(塩基性)、イソ吉草酸(酸性)、硫
化水素(酸性)、トルエン(VOC)を各々3L封入し、10cm×10cmサイ
ズの試験シートを、試験シートの表裏面ともバッグ内壁に触れないようにアンモニ
アバッグ内に固定し、30分後のアンモニアガス濃度を測定し、この試験シートを
次にイソ吉草酸バッグ内に固定し30分後のイソ吉草酸ガス濃度を測定し、この
試験シートを次に硫化水素バッグ内に固定し、30分後の硫化水素ガス濃度を測定
し、この試験シートを次にトルエンバッグ内に固定し、30分後のトルエンガス
濃度を測定した。
〈臭気吸着性能の回復〉
2−1)10cm×10cmサイズの試験シートを容積5LのTedlar(登録商標)
バッグに入れ、試験シートの表裏面ともバッグ内壁に触れないようバッグ内に固定
し、濃度10ppmに調整したアンモニアガスを3L封入したバッグ内環境に60分
間晒し、10分毎にアンモニアガス濃度を検知管で測定し1回目の減臭曲線を描い
た。取出した試験シートを新たなTedlar (登録商標)バッグに入れ、1回目の試験
同様濃度10ppmに調整したアンモニアガスを3L封入したバッグ内環境に120
分間晒し、10分、30分、60分、120分毎にアンモニアガス濃度を検知管で
測定し2回目の減臭曲線を描いた。同様に3回目の試験を繰り返し3回目の減臭曲
線を描いた。
2−2)3回目の試験を終えた試験シートを5Lの水道水を入れたバット内に浸漬
した状態で20℃×60分間静置し水洗処理した。次に取出した試験シートを80
℃設定のギアーオーブン(電気ヒーター式)内に吊るして30分間の熱風加熱処理
を行った。この水洗〜加熱処理を行った試験シートを、再度容積5LのTedlar(登
録商標)バッグに入れ、試験シートの表裏面ともバッグ内壁に触れないようバッグ
内に固定し、濃度10ppmに調整したアンモニアガスを3L封入したバッグ内環境
に120分間晒し、10分、30分、60分、120分毎にアンモニアガス濃度を
検知管で測定し4回目(再生処理後)の減臭曲線を描き、1回目(初期消臭性能)
の減臭曲線のピークとの対比による再生率を求めた。
2−3)上記1)試験と同じ要領で、連続で4種のガスに対しての減臭試験を行い
、回復の処理を施した後(2−2処理後)の減臭曲線ピークと、1回目(初期消臭
性能)の減臭曲線ピークとの対比による再生率を求めた。
〈通気度〉
JIS L1096 8.27.1 A法に定めるフラジール形法により求めた。
【0028】
[実施例1]
1).樹脂被覆層を有する糸条(1)
(無アルカリ)ガラス繊維糸条(フィラメント径9μm、400本フィラメント:75番手:687dtex)のマルチフィラメント扁平糸を芯糸とし、コーティングダイスに芯通しした押出成型機を用い、下記配合1の軟質塩化ビニル系樹脂ペースト状組成物をコートダイスノズル孔から押出すことで芯糸の全周に樹脂被覆を行い、180℃の熱処理ゲル化工程を経て、これを冷却して引き取ることで樹脂被覆糸条(1)を得た。
〔配合1〕軟質塩化ビニル樹脂ペースト組成物
ペースト塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤) 60質量部
※商品名:ヘキサモールDINCH(BASF社製)
エポキシ化大豆油(可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合安定剤 2質量部
※塩基性複合体粒子(A)
〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体(平均粒子径1μm) 15質量部
※酸性複合体粒子(B)
〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体(平均粒子径1μm) 15質量部
※ゼオライト粒子(D)
合成ゼオライト(平均粒子径2μm) 15質量部
アゾジカルボアミド(熱分解ガス発生物質) 4質量部
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 0.3質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
酸化チタン(白顔料) 2質量部
2)〈通気性可撓シート(1)〉
樹脂被覆糸条(1)を経糸条群及び緯糸条群として、各々2本揃とする2/2ななこ(バスケット)織物による単層織物で、経糸条群は1インチ間28本の織密度、また緯糸条群は1インチ間30本の織密度とする織物を得た。次にこの織物を200℃で2分間熱処理を施し、熱分解ガス発生物質の熱分解ガス生成による発泡気泡痕(12体積%)を形成すると同時に、2/2ななこ織物の織り交点を熱融着により織り組織が固定された、空隙率2%(0.1mm
2以下の空隙部の総和)は、通気度30cc/cm
2/秒、質量860g/m
2、外観が白色の通気性可撓シート(1)を得た。糸条2本揃とする2/2ななこ(バスケット)織物、経糸条群は1インチ間28本の織密度、緯糸条群は1インチ間30本の織密度とする空隙率2%の織物の織交点に生じる空隙部の数は、(28/2)−1本×(30/2)−1本=182個/インチ
2、またインチ
2に対する2%は12.9mm
2であるから1個の空隙部の面積は約0.07mm
2となる。
【0029】
[実施例2]
〈通気性可撓シート(2)〉
実施例1の配合1に用いた塩基性複合体粒子(A)としての〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体15質量部を、〔酸化マグネシウム/アルミナ〕複合体15質量部に置換え、同様に配合1に用いた酸性複合体粒子(B)としての〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体15質量部を〔酸化チタン/アルミナ〕複合体15質量部に置換えた(配合2)による樹脂被覆糸条(2)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例1と同規格の2/2ななこ(バスケット)織物:空隙率2%(1個の空隙部の面積は約0.07mm
2)、通気度30cc/cm
2/秒、質量860g/m
2を得た。
【0030】
[実施例3]
〈通気性可撓シート(3)〉
実施例1の配合1に用いた塩基性複合体粒子(A)としての〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体15質量部を、〔酸化マグネシウム/アルミナ〕複合体15質量部に置換えた(配合3)による樹脂被覆糸条(3)を用い、経糸群の打ち込み密度42本/インチ、緯糸群の打ち込み密度36本/インチである二重織物を、上層織物組織を右上がりの2/1の斜文織、下層織物組織を左上がりの2/1の斜文織、上層織物と下層織物とを5本跨ぎの結線で結接して製織し、次にこの織物を200℃で2分間熱処理を施し、熱分解ガス発生物質の熱分解ガス生成による発泡気泡痕(12体積%)を形成すると同時に、二重織物の織り交点を熱融着して接着して織り組織が固定された、空隙率1.2%(1個の空隙部の面積は約0.02mm
2)、通気度18cc/cm
2/秒、質量1160g/m
2、外観が白色の通気性可撓シート(3)を得た。
【0031】
[実施例4]
〈通気性可撓シート(4)〉
実施例1の配合1に用いた酸性複合体粒子(B)としての〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体15質量部を〔酸化チタン/アルミナ〕複合体15質量部に置換えた(配合4)による樹脂被覆糸条(4)を用いた以外は実施例3と同様の二重織物として、空隙率1.2%(1個の空隙部の面積は約0.02mm
2)、通気度18cc/cm
2/秒、質量1160g/m
2、外観が白色の通気性可撓シート(4)を得た。
【0032】
[実施例5]
〈通気性可撓シート(5)〉
ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(アラミド繊維:フィラメント径12μm、843dtex)のマルチフィラメント扁平糸を芯糸とし、コーティングダイスに芯通しした押出成型機を用い、下記配合5の軟質塩化ビニル系樹脂ペースト状組成物をコートダイスノズル孔から押出すことで芯糸の全周に樹脂被覆を行い、180℃の熱処理ゲル化工程を経て、これを冷却して引き取ることで得られた樹脂被覆糸条(5)に変更した以外は実施例1と同様として、2/2ななこ織物:空隙率3%(1個の空隙部の面積は約0.1mm
2)、通気度45cc/cm
2/秒、質量825g/m
2、外観が白色の通気性可撓シート(5)を得た。
〔配合5〕軟質塩化ビニル樹脂ペースト組成物
※配合1において、塩基性複合体粒子(A);〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体15質量部を20質量部に増量し、酸性複合体粒子(B):〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体15質量部を10質量部に減量し、(A):(B)質量比を2:1に変更した以外は配合1と同一。
【0033】
[実施例6]
〈通気性可撓シート(6)〉
炭素繊維(フィラメント径8μm、660dtex)のマルチフィラメント扁平糸を芯糸とし、コーティングダイスに芯通しした押出成型機を用い、下記配合6の軟質塩化ビニル系樹脂ペースト状組成物をコートダイスノズル孔から押出すことで芯糸の全周に樹脂被覆を行い、180℃の熱処理ゲル化工程を経て、これを冷却して引き取ることで得られた樹脂被覆糸条(6)に変更した以外は実施例1と同様として、2/2ななこ織物:空隙率2.5%(1個の空隙部の面積は約0.09mm
2)、通気度38cc/cm
2/秒、質量810g/m
2、外観が白色の通気性可撓シート(6)を得た。
〔配合6〕軟質塩化ビニル樹脂ペースト組成物
※配合1において、塩基性複合体粒子(A);〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体15質量部を10質量部に減量し、酸性複合体粒子(B):〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体15質量部を20質量部に増量し、(A):(B)質量比を1:2に変更した以外は配合1と同一。
【0034】
[実施例7]
〈通気性可撓シート(7)〉
実施例1で用いた樹脂被覆糸条(1)を、ポリエステル(PET)繊維(フィラメント径10μm、833dtex)のマルチフィラメント扁平糸を芯糸とし、コーティングダイスに芯通しした押出成型機を用い、配合1の軟質塩化ビニル系樹脂ペースト状組成物をコートダイスノズル孔から押出すことで芯糸の全周に樹脂被覆を行い、180℃の熱処理ゲル化工程を経て、これを冷却して引き取ることで得られた樹脂被覆糸条(7)に変更した以外は実施例1と同様として、2/2ななこ織物:空隙率2%(1個の空隙部の面積は約0.07mm
2)、通気度30cc/cm
2/秒、質量780g/m
2、外観が白色の通気性可撓シート(7)を得た。
【0035】
[実施例8]
〈通気性可撓シート(8)〉
樹脂被覆糸条(7)を経糸条群及びバイアス糸条群とする単層織物で、経糸条群は1インチ間22本の織密度、右上バイアス糸条群は1インチ間18本、左上バイアス糸条群は1インチ間18本の織密度とする三軸織物を得た。次にこの織物を200℃で2分間熱処理を施し、熱分解ガス発生物質の熱分解ガス生成による発泡気泡痕(12体積%)を形成すると同時に、織り交点を熱融着により織り組織が固定された、空隙率2.2%(1個の空隙部の面積は約0.025mm
2)、通気度33cc/cm
2/秒、質量980g/m
2、外観が白色の通気性可撓シート(8)を得た。
【0036】
実施例1〜8の通気性可撓シート1〜8は、何れも樹脂被覆層を有する糸条を織編要素に含み、樹脂被覆層には、〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体、及び〔酸化マグネシウム/アルミナ〕複合体から選ばれた1種以上の塩基性複合体粒子群(A)と、〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体、及び〔二酸化チタン/アルミナ〕複合体から選ばれた1種以上の酸性複合体粒子群(B)とを、(A):(B)質量比2:1〜1:2とする酸化物複合体混合物(C)と、ゼオライト(D)を含み、質量比(C):(D)を2:1とするもので、この要件を満たすことによって、塩基性複合体粒子群(A)の存在により、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、イソ吉草酸、ノネナールなどの酸性悪臭に対する減臭(消臭)効果と、酸性複合体粒子群(B)の存在によって、アンモニア、トリメチルアミンなどの塩基性悪臭に対する減臭(消臭)効果を同時発現し、また樹脂被覆層にゼオライト粒子(D)を含有することでシンナーやトルエンなどの有機溶剤、ホルムアルデヒドなどの揮発性化学物質臭などに対しても吸着性を発現し、しかも吸着効果が飽和状態となっても、(熱)水洗、ヒーター加熱、及び天日干し、の単独、または併用の処理によって臭気吸着率が初期の50%以上に容易に回復できることなどの特徴が確認された。また通気度(JIS L1096:フラジール法)0.5〜65cc/cm
2/秒の空隙部は通気によるガス交換で消臭効果をより高いのもとした。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
[比較例1]
実施例1の配合1を下記配合7に変更し、配合7で樹脂被覆した糸条(8)を用いた以外は実施例1と同様として、空隙率2%、通気度30cc/cm
2/秒、質量860g/m
2外観が白色の2/2ななこ織柄の通気性可撓シート(9)を得た。得られたシート(9)は酸化亜鉛、二酸化珪素、及びアルミナを含むものであったが、塩基性複合体粒子(A);〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体、及び酸性複合体粒子(B):〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体の形態を取らないことで、実施例1のシート(1)と比較して、アンモニア、イソ吉草酸、硫化水素、トルエンとも減臭効果に劣り、それによってアンモニア、イソ吉草酸、硫化水素、トルエンなどの臭気吸着性能の回復性を大きく損なうものであった。
〔配合7〕軟質塩化ビニル樹脂ペースト組成物
※配合1において、塩基性複合体粒子(A);〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体15質量部、及び酸性複合体粒子(B):〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体15質量の合計30質量部を省略し、酸化亜鉛(平均粒子径1μm)10質量部、二酸化珪素(平均粒子径1μm)10質量部、及びアルミナ(平均粒子径1μm)10質量部の合計30質量部と置き換えた以外は配合1と同一。
【0040】
[比較例2]
実施例1の配合1を下記配合8に変更し、配合8で樹脂被覆した糸条(9)を用いた以外は実施例1と同様として、空隙率2%、通気度30cc/cm
2/秒、質量860g/m
2外観が白色の2/2ななこ織柄の通気性可撓シート(10)を得た。得られたシート(10)は酸性複合体粒子(B)の含有量が塩基性複合体粒子(A)の1/5と少ないことで、実施例1のシート(1)と比較して特にアンモニアの減臭効果が不十分なものであり、しかもそれによってアンモニアの減臭効果の回復性も不十分なものであった。
〔配合8〕軟質塩化ビニル樹脂ペースト組成物
※配合1において、塩基性複合体粒子(A);〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体15質量部を25質量部に増量し、酸性複合体粒子(B):〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体15質量部を5質量部に減量し、(A):(B)質量比を5:1に変更した以外は配合1と同一。
【0041】
[比較例3]
実施例1の配合1を下記配合9に変更し、配合9で樹脂被覆した糸条(10)を用いた以外は実施例1と同様として、空隙率2%、通気度30cc/cm
2/秒、質量860g/m
2外観が白色の2/2ななこ織柄の通気性可撓シート(11)を得た。得られたシート(11)は塩基性複合体粒子(A)の含有量が酸性複合体粒子(B)の1/5と少ないことで、実施例1のシート(1)と比較して、特にイソ吉草酸、及び硫化水素の減臭効果が不十分なものであり、しかもそれによってイソ吉草酸、及び硫化水素の減臭効果の回復性も不十分なものであった。
〔配合9〕軟質塩化ビニル樹脂ペースト組成物
※配合1において、塩基性複合体粒子(A);〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体15質量部を5質量部に減量し、酸性複合体粒子(B):〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体15質量部を25質量部に増量し、(A):(B)質量比を1:5に変更した以外は配合1と同一。
【0042】
[比較例4]
実施例1の配合1を下記配合10に変更し、配合10で樹脂被覆した糸条(11)を用いた以外は実施例1と同様として、空隙率2%、通気度30cc/cm
2/秒、質量860g/m
2外観が白色の2/2ななこ織柄の通気性可撓シート(12)を得た。得られたシート(12)はゼオライト粒子(D)15質量部を3質量部に減量し、酸化物複合体混合物(C)との質量比(C):(D)を10:1としたことで、実施例1のシート(1)と比較して特にトルエンガスの消臭効果が劣り、トルエンガスの消臭効果の回復性も希薄なものであった。
〔配合10〕軟質塩化ビニル樹脂ペースト組成物
※実施例1の配合1からゼオライト粒子(D)15質量部を3質量部に減量し、酸化物複合体混合物(C)との質量比(C):(D)を10:1とした以外は配合1と同一。
【0043】
【表3】