(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603116
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】光電変換装置
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0352 20060101AFI20191028BHJP
【FI】
H01L31/04 342A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-231937(P2015-231937)
(22)【出願日】2015年11月27日
(65)【公開番号】特開2017-98496(P2017-98496A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久保 新太郎
(72)【発明者】
【氏名】仲山 徹
(72)【発明者】
【氏名】二宮 寿一
(72)【発明者】
【氏名】大島 卓也
【審査官】
竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0284061(US,A1)
【文献】
特表2008−522359(JP,A)
【文献】
特開2011−009285(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0006319(US,A1)
【文献】
特開2009−246025(JP,A)
【文献】
特表2007−535806(JP,A)
【文献】
WANG, H. et al.,PbS-Quantum-Dot-Based Heterojunction Solar cells Utilizing ZnO Nanowires for High External Quantum E,THE JOURNAL OF PHYSICAL CHEMISTRY LETTERS,2013年 7月10日,Vol.4,pp.2455-2460
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の量子ドットが集積された量子ドット集積部と、該量子ドット集積部内に設けられた複数のキャリア収集部とを有する量子ドット層を備えている光電変換装置であって、前記キャリア収集部は、前記量子ドット集積部を厚み方向に延伸する柱状部を有するとともに、該柱状部は、側面に該柱状部の長手方向に延伸する凹部を有しており、該凹部の底面が丸くなっていることを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記キャリア収集部は、前記柱状部を立設させるための基部層を備えていることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
複数の量子ドットが集積された量子ドット集積部と、該量子ドット集積部内に設けられた複数のキャリア収集部とを有する量子ドット層を備えている光電変換装置であって、前記キャリア収集部は、前記柱状部を立設させるための基部層を備えており、前記量子ドット集積部を厚み方向に延伸する柱状部を有するとともに、該柱状部が、側面に該柱状部の長手方向に延伸する凹部を有していることを特徴とする光電変換装置。
【請求項4】
前記柱状部の幅は、前記基部層側が開放端側よりも広いことを特徴とする請求項2または3に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記量子ドット集積部は、n型の量子ドット群とp型の量子ドット群とからなる2つの群を有しており、前記2つの群の各々が、前記キャリア収集部に近い側からその周囲に向けて層状に配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれかに記載の光電変換装置。
【請求項6】
複数の量子ドットが集積された量子ドット集積部と、該量子ドット集積部内に設けられた複数のキャリア収集部とを有する量子ドット層を備えている光電変換装置であって、前記キャリア収集部は、前記量子ドット集積部を厚み方向に延伸する柱状部を有するとともに、該柱状部は、側面に該柱状部の長手方向に延伸する凹部を有しており、前記量子ドット集積部は、n型の量子ドット群とp型の量子ドット群とからなる2つの群を有しており、前記2つの群の各々が、前記キャリア収集部に近い側からその周囲に向けて層状に配置されていることを特徴とする光電変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高効率の新たな光電変換装置として知られている量子ドット太陽電池は、量子ドットに特定波長の太陽光が当たり励起される電子と、その電子が価電子帯から伝導帯まで励起されたときに生じる正孔とをキャリアとして利用する。
【0003】
この場合、量子ドット太陽電池の光電変換効率は、量子ドット集積部内に生成するキャリアの総量に関係することから、例えば、量子ドット集積部の厚みを厚くして量子ドットの集積度を増やすことが発電量の向上につながる。
【0004】
量子ドット内においてキャリアは、理論的には、エネルギー緩和が起こりにくく消滅し難いと考えられている。
【0005】
しかしながら、量子ドットを集積させて量子ドット集積部を形成した場合には、量子ドット内に生成したキャリアは、障壁層を含む量子ドット集積部内に存在する欠陥と結合して消滅しやすく、これにより電極まで到達できる電荷量の低下が起こり、光電変換効率を高められないという問題がある。
【0006】
このような問題に対し、近年、量子ドット集積部内において、キャリアの集電性を高めるための構造が種々提案されている。例えば、特許文献1には、
図6に示すように、複数の量子ドット101が集積された量子ドット集積部103内に、ナノロッドと呼ばれるキャリア収集部105を配置させた例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2009−536790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、これまで開示されたキャリア収集部105は、その形状がシリンダー、カラムおよび線形構造といったいわゆる柱状体の形状が一般的であり、水平方向の断面(以下、横断面という場合がある。)が円に代表されるように等方的な形状である。このため、上記した従来のキャリア収集部105は単位体積に対する表面積がさほど大きくない形状となっている。その結果、従来のキャリア収集部105は表面に接触する量子ドット数が少ないことから電荷の収集効率が低く、未だ光電変換効率が低いという問題がある。
【0009】
従って本発明は、電荷の収集効率が高く、光電変換効率を向上することのできる光電変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光電変換装置は、複数の量子ドットが集積された量子ドット集積部と、該量子ドット集積部内に設けられた複数のキャリア収集部とを有する量子ドット層を備えている光電変換装置であって、前記キャリア収集部は、前記量子ドット集積部を厚み方向に延伸する柱状部を有するとともに、該柱状部は、側面に該柱状部の長手方向に延伸する凹部を有して
おり、該凹部の底面が丸くなってい
る。
本発明の光電変換装置は、複数の量子ドットが集積された量子ドット集積部と、該量子ドット集積部内に設けられた複数のキャリア収集部とを有する量子ドット層を備えている光電変換装置であって、前記キャリア収集部は、前記柱状部を立設させるための基部層を備えており、前記量子ドット集積部を厚み方向に延伸する柱状部を有するとともに、該柱状部が、側面に該柱状部の長手方向に延伸する凹部を有している。
本発明の光電変換装置は、複数の量子ドットが集積された量子ドット集積部と、該量子ドット集積部内に設けられた複数のキャリア収集部とを有する量子ドット層を備えている光電変換装置であって、前記キャリア収集部は、前記量子ドット集積部を厚み方向に延伸する柱状部を有するとともに、該柱状部は、側面に該柱状部の長手方向に延伸する凹部を有しており、前記量子ドット集積部は、n型の量子ドット群とp型の量子ドット群とからなる2つの群を有しており、前記2つの群の各々が、前記キャリア収集部に近い側からその周囲に向けて層状に配置されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電荷の収集効率が高く、光電変換効率を向上することのできる光電変換装置 を得ることできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の光電変換装置の一実施形態を部分的に模式的に示す分解斜視図である。
【
図2】柱状部の幅方向における断面を示すもので、柱状部に形成された凹部の底面が丸くなっている状態を示す模式図である。
【
図3】基部層側の幅が開放端側の幅よりも広い柱状部を示す斜視図である。
【
図4】(a)は、量子ドット集積部がn型の量子ドット群とp型の量子ドット群とから構成されており、柱状部側にn型の量子ドット群が配置され、n型の量子ドット群の周囲にp型の量子ドット群が配置された状態を示す断面模式図、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
【
図5】本実施形態の光電変換装置の製造方法を示す工程図である。
【
図6】(a)は、従来の光電変換装置を示す断面模式図であり、(b)は、(a)のA−A線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の光電変換装置の一実施形態を部分的に模式的に示す分解斜視図である。ここでは、キャリア収集部の形状を分かりやすくするために、量子ドットの充填量を少なくして描いている。また、ここに示した光電変換装置は、光電変換層1が1層の量子ドット太陽電池を例として示しているが、本発明はこれに限られるものではなく、光電変換層1が2層以上となったものにも適用される。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の光電変換装置は、光電変換層1の上面側に透明導電膜3およびガラス基板5がこの順に設けられ、一方、光電変換層1の下面側には電極層7が設けられている。
【0015】
なお、この光電変換装置では、ガラス基板5の上面側が光の入射面16aとなり、電極層7の下面側が光の出射面16bとなる。この場合、光の入射面16a側であるガラス基板11の表面や光の出射面16bである電極層7の表面には保護層や反射防止材などが設けられる場合がある。
【0016】
本実施形態の光電変換装置を構成する光電変換層1は、半導体基板9と量子ドット層11とを有する構成となっている。
図1では、半導体基板9および半導体基板9とキャリア収集部15との間を簡略化して描いているが、より詳細には、半導体基板9はp/n接合されたものであり、また、この半導体基板9とキャリア収集部15との間には接合層が存在する。
【0017】
量子ドット層11は、複数の量子ドット13aが集積された量子ドット集積部13内にキャリア収集部15となる複数の柱状部15Aを有する構造である。
【0018】
ここで、キャリア収集部15を構成する柱状部15Aは、量子ドット層11を厚み方向に延伸する長尺状を成しており、一方端が解放端15aとなっている。この場合、柱状部15Aの一方が解放端15aとなっているため、
図1には図示していないが、その開放端15aと透明導電膜3との間にも量子ドット13aが存在している。
【0019】
ここで、量子ドット層11内に設けられた複数の柱状部15Aのうちの一部は、柱状部
15Aの側面15sに、その柱状部15Aの長手方向に延伸する凹部15Uを有している。
【0020】
側面15sに凹部15Uを有する柱状部15Aは、横断面が円のように等方的な形状の場合に比較して単位体積に対する表面積が大きくなる。これによりキャリア収集部15の体積が同じであっても比表面積が大きい分だけ量子ドット層11内に集積されている量子ドット13aをより多く柱状部15Aに接触させることができる。その結果、柱状部15AにおけるキャリアCの収集効率が向上することから、光電変換装置の開放電圧(Voc)が向上し、高い光電変換効率を有する量子ドット太陽電池を得ることが可能になる。これは、複数存在する柱状部15Aの中に、側面15sに凹部15Uを有する柱状部15Aが含まれていると、量子ドット層11内に存在する全ての柱状部15Aから見積もられる比表面積の合計が、横断面がいずれも等方形状である柱状部によって形成されている場合の比表面積の合計よりも大きくなるからである。
【0021】
このような点から、側面15sに凹部15Uを有する柱状部15Aの割合は、量子ドット層11の中で多い方が良く、例えば、量子ドット層11の横断面を観察したときの柱状部15Aの総数に対する数の割合で、単位面積当たり50%以上、特に、90%以上であることが望ましい。ここで、柱状部15Aが、側面15sに2列以上の凹部15Aを有する、いわゆる横断面が歯車状の形状であると、柱状部15Aの側面15sの量子ドット13aとの接触面積をさらに増やすことができ、開放電圧(Voc)をさらに高めることができる。
【0022】
また、この柱状部15Aは、上述のように、凹部15Uが長手方向に沿って伸びた形状であるため、量子ドット13aが柱状部15Aの周囲に置かれたときに、量子ドット13aを柱状部15Aの長手方向、すなわち量子ドット層11の厚み方向に緻密化するように配置させることができる。これにより柱状部15Aの長手方向へ流れるキャリアCの連続性が高まり、キャリアCが消滅し難くなり、電流値の低下が抑えられる。
【0023】
また、この光電変換装置は、光電変換層1が半導体基板9と量子ドット層11とを有する構成であることから、半導体基板9のバンドギャップに量子ドット層11のバンドギャップを加えたものとなるため、幅広い波長領域をカバーすることが可能になる。
【0024】
図2は、柱状部15Aの幅方向における断面を示すもので、柱状部15Aに形成された凹部15Uの底面15Usが丸くなっている状態を示す模式図である。柱状部15Aの側面15sに凹部15Uを有する形状であれば、凹部15Uの底面15Usの形状はさほど尖った形状でなくても良く、例えば、凹部15Uの底面15Usは丸くなっている方が良い。凹部15Uの底面15Usが丸くなっていると、通常、球状や多角形状と言った粒子状の量子ドット13aの輪郭形状に沿うようになり、柱状部15Aと量子ドット13aとの接触面積を大きくすることができる。これによりキャリアCの収集効率をさらに高めることができる。
【0025】
また、この光電変換装置では、
図1に示すように、キャリア収集部15は、柱状部15Aを立設させるための基部層15Bを備えていることが望ましい。柱状部15Aが半導体基板9の主面に対してほぼ垂直に立つように設けられている場合に、キャリア収集能力を有する基部層15Bが半導体基板9の主面をカバーするように設けられていると、量子ドット層11とキャリア密度の高い透明導電膜3との接触による短絡を防止することができる。この場合、基部層15Bの表面にも量子ドット13aの輪郭形状に合うように凹部(凹部の形状は溝状であっても良い。)が形成されていることが望ましい。
【0026】
図3は、基部層側の幅が開放端側の幅よりも広い柱状部を示す斜視図である。
図3は、
柱状部15Aの最大径を基部層15B側と開放端15a側とで測定したときに、基部層15B側の最大径D
2の方が開放端15a側の最大径D
1よりも大きい場合には、柱状部15Aは、基部層15B側における電流密度を高めることができることから、キャリアCの収集効率をさらに高めることができる。
【0027】
また、本実施形態の光電変換装置では、量子ドット集積部13が、n型の量子ドット群13anとp型の量子ドット群13apとからなる2つの群を有しており、2つの群の各々が、キャリア収集部15に近い側からその周囲に向けて層状に配置されていることが望ましい。
【0028】
例えば、
図4(a)(b)には、一例として、柱状部15A側にn型の量子ドット群13anが配置され、n型の量子ドット群13anの周囲にp型の量子ドット群13pが配置された状態を示している。
【0029】
通常、量子ドット13aは、光のエネルギーを受けることによって、量子ドット13a内に存在していた電子が伝導帯まで励起されると同時に、正孔が形成されて、これらがキャリアCとなって光電変換が起こる。このとき、
図4に示すように、量子ドット層11内を、柱状部15A側からn型の量子ドット群13anにより構成される層とp型の量子ドット群13apにより構成される層とを積層した構成にすると、n型の量子ドット群13anおよびp型の量子ドット群13apのそれぞれに移動できる電子および正孔が生成したときに、電子および正孔はそれぞれn型の量子ドット群13anおよびp型の量子ドット群13apの方により移動しやすくなり、これによりキャリアCの集電性をさらに高めることができる。
【0030】
なお、
図4(a)(b)では、柱状部15A側にn型の量子ドット群13anを配置した構成を示しているが、この場合、柱状部15A側にp型の量子ドット群13apを配置した構成でも同様の光電変換特性を得ることができる。
【0031】
また、
図4(a)(b)では、半導体基板9の表面上に直接、柱状部15Aを形成した構成となっているが、この場合も、
図1の構成と同様に、柱状部15Aが半導体基板9上に配置された基部層15Bの表面に形成された構成とすることもできる。
【0032】
上記した量子ドット集積部13を構成する量子ドット13a、半導体基板9、柱状部15Aおよび基部層15Bの材料としては、種々の半導体材料が適用されるが、そのエネルギーギャップ(Eg)としては、0.15〜4.50evを有するものが好適である。具体的な半導体材料としては、ゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、銅(Cu)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、硫黄(S)、鉛(Pb)、テルル(Te)およびセレン(Se)から選ばれるいずれか1種またはこれらの化合物もしくは酸化物を用いることが望ましい。
【0033】
また、上記した量子ドット13aにおいては、電子の閉じ込め効果を高められるという理由から、量子ドット13aの表面に障壁層(バリア層)を有していてもよい。障壁層は量子ドット13aとなる半導体材料に比較して2〜15倍のエネルギーギャップを有している材料が好ましく、エネルギーギャップ(Eg)が1.0〜10.0evを有するものが好ましい。なお、量子ドット13aが表面に障壁層を有する場合には、障壁層の材料としては、Si、C、Ti、Cu、Ga、S、InおよびSeから選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物(半導体、炭化物、酸化物、窒化物)が好ましい。
【0034】
上述のように、本実施形態の光電変換装置について、
図1〜
図4を基に説明したが、本発明の光電変換装置は、光電変換層1を構成する量子ドット層11の厚みや量子ドット1
3aのバンドギャップを変化させた構成にした場合には、吸収できる光の波長領域をより広くすることができ、さらに高い光電変換効率を示す量子ドット太陽電池を得ることができる。
【0035】
次に、本実施形態の光電変換装置の製造方法について説明する。
図5は、本実施形態の光電変換装置の製造方法を示す工程図である。
【0036】
まず、
図5(a)に示すように、一方の主面に電極層7を有する半導体基板9を準備する。次に、
図5(b)に示すように、この半導体基板9の電極層7とは反対側の主面にキャリア収集部15となる半導体膜21を形成し、次いで、半導体膜21の表面にマスク23を設置する。マスク23にはキャリア収集部15を構成する柱状部15A以外の部分を開口させたものを用いる。
【0037】
次に、
図5(c)に示すように、エッチング処理(反応性イオンエッチング(RIE))を行って半導体膜21から柱状部15Aを形成する。このとき、柱状部15Aとともに、半導体膜21の下層側を残すことにより基部層15Bを形成する。ここで、柱状部15Aを
図3に示すような形状にする場合には、マスクの断面を裾広がり状の形状に加工したものを用いる。
【0038】
次に、
図5(d)に示すように、キャリア収集部15の周囲に量子ドット13aを充填して、量子ドット集積部13内にキャリア収集部15を有する量子ドット層11を形成する。次いで、量子ドット層1の上面に透明導電膜3を形成した後、この透明導電膜3の表面にガラス基板5を設置する。
【0039】
次に、このガラス基板5の表面に、必要に応じて保護層や反射防止材など形成する。
【0040】
以上より得られる光電変換装置は、量子ドット層11内に、側面15sに凹部15Uを有する柱状部15Aを備えていることから、キャリア収集部15(柱状部15A)の表面積が大きくなり、キャリアCの収集効率が高まり、光電変換効率を高めることができる。
【実施例】
【0041】
以下、上記した柱状部を有する光電変換層を1層備えた光電変換装置を
図5に示した方法により作製し、Vocを評価した。このとき、透明導電膜にはインジウム錫酸化物(ITO)を用い、電極層には金(Au)を用いた。量子ドットにはPbS粒子(平均粒径:5nm)を用いた。
図4に示す光電変換装置を作製する際には、p型、n型に変成させたPbS粒子を用いた。キャリア収集部および基部層には酸化亜鉛を用いた。半導体基板としてはシリコン基板を用いた。
【0042】
作製した光電変換装置は、シリコン基板の平均厚みが100μm、量子ドット集積膜の平均厚みが1.2μm、基部層の平均厚みが0.05μm、キャリア収集部の厚み方向の平均長さ(基部層の表面からキャリア収集部の開放端までの長さ)が1.0μm、電極層の平均厚みが0.1μm、透明導電膜の平均厚みが0.3μm、ガラス基板の平均厚みが100μmであった。
【0043】
次に、作製した光電変換装置の横断面を走査電子顕微鏡によって観察し、キャリア収集部の形状を確認した。
【0044】
次に、得られた光電変換装置の透明導電膜と電極層間にリード線を接続し、I−V特性を測定した。
【0045】
【表1】
【0046】
開放電圧(Voc)は、従来構造の試料No.5が0.35Vであったのに対し、
図1の構造の試料No.1は0.38V、
図2の構造の試料No.2は0.40V 、
図3の
構造の試料No.3は0.39Vおよび
図4の構造の試料No.4は0.42Vであり、柱状部の側面に長手方向に延伸する凹部を有するようにした試料は、横断面の形状が円形状の試料より高い開放電圧を示し、電荷の収集効率が高かった 。
【符号の説明】
【0047】
1・・・・・・・・・・・光電変換層
3・・・・・・・・・・・透明導電膜
5・・・・・・・・・・・ガラス基板
7・・・・・・・・・・・電極層
9・・・・・・・・・・・半導体基板
11・・・・・・・・・・量子ドット層
13・・・・・・・・・・量子ドット集積部
13a・・・・・・・・・量子ドット
13an・・・・・・・・n型の量子ドット群
13pn・・・・・・・・p型の量子ドット群
15・・・・・・・・・・キャリア収集部
15a・・・・・・・・・(キャリア収集部の)開放端
15s・・・・・・・・・(キャリア収集部の)側面
15A・・・・・・・・・柱状部
15B・・・・・・・・・基部層
16a・・・・・・・・・光の入射面
16b・・・・・・・・・光の出射面
21・・・・・・・・・・半導体膜
23・・・・・・・・・・マスク
C・・・・・・・・・・・キャリア