特許第6603118号(P6603118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6603118油圧回路の異常検知装置及び油圧回路の異常検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603118
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】油圧回路の異常検知装置及び油圧回路の異常検知方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/12 20100101AFI20191028BHJP
【FI】
   F16H61/12
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-236250(P2015-236250)
(22)【出願日】2015年12月3日
(65)【公開番号】特開2017-101765(P2017-101765A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122770
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 翔
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 正人
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−213316(JP,A)
【文献】 特開平8−326855(JP,A)
【文献】 特開2014−190400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/12
B60W 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧源からの油圧を第1油圧に調圧する第1調圧手段と、前記第1調圧手段で調圧した前記第1油圧を第2油圧に調圧する第2調圧手段と、前記第1調圧手段で調圧した前記第1油圧を検出する第1油圧検出手段と、前記第2調圧手段で調圧した前記第2油圧を検出する第2油圧検出手段と、を備える油圧回路の異常検知装置であって、
前記第1調圧手段と前記第1油圧検出手段の何れかに異常がある場合、前記第2油圧が前記第1油圧と一致するように前記第2調圧手段を調圧制御する調圧制御手段と、
前記調圧制御手段による調圧制御後に、前記第1油圧検出手段で検出した前記第1油圧と前記第2油圧検出手段で検出した前記第2油圧との差の絶対値が所定値未満であるか否かを判定する油圧判定手段と、
前記油圧判定手段で前記差の絶対値が所定値未満であると判定した場合に前記第1調圧手段が異常と判別し、前記油圧判定手段で前記差の絶対値が所定値以上であると判定した場合に前記第1油圧検出手段が異常と判別する異常判別手段と、
前記第1油圧検出手段で検出した前記第1油圧と前記第1油圧を調圧制御する際の目標油圧との差が第1閾値以上か否かを判定する異常判定手段と、を備え、
前記調圧制御手段は、前記異常判定手段で前記第1閾値以上と判定した場合、前記第2油圧が前記第1油圧と一致するように前記第2調圧手段を調圧制御することを特徴とする油圧回路の異常検知装置。
【請求項2】
前記異常判別手段は、前記第1調圧手段が異常と判別した場合、前記第1油圧検出手段で検出した前記第1油圧が第2閾値以上の場合に前記第1調圧手段が高圧側固着の異常と判別し、前記第1油圧検出手段で検出した前記第1油圧が前記第2閾値未満の場合に前記第1調圧手段が低圧側固着の異常と判別することを特徴とする請求項1に記載の油圧回路の異常検知装置。
【請求項3】
前記第1調圧手段は、第1ソレノイドバルブと第1スプールバルブを有し、前記第1ソレノイドバルブから供給される第1制御圧に応じて前記第1スプールバルブで前記第1油圧に調圧し、
前記異常判別手段は、前記油圧判定手段で前記差の絶対値が所定値未満であると判定した場合に前記第1ソレノイドバルブと前記第1スプールバルブのうちの少なくとも一方が異常と判別することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の油圧回路の異常検知装置。
【請求項4】
前記第2調圧手段は、第2ソレノイドバルブと第2スプールバルブを有し、前記第2ソレノイドバルブから供給される第2制御圧に応じて前記第2スプールバルブで前記第2油圧に調圧し、
前記調圧制御手段は、前記第2スプールバルブが全開になるように前記第2ソレノイドバルブを調圧制御することを特徴とする請求項1〜請求項の何れか一項に記載の油圧回路の異常検知装置。
【請求項5】
前記油圧回路は、車両に搭載された無段変速機の油圧回路であり、
前記第2調圧手段で調圧した前記第2油圧を前記無段変速機に供給することを特徴とする請求項1〜請求項の何れか一項に記載の油圧回路の異常検知装置。
【請求項6】
油圧源からの油圧を第1油圧に調圧する第1調圧手段と、前記第1調圧手段で調圧した前記第1油圧を第2油圧に調圧する第2調圧手段と、前記第1調圧手段で調圧した前記第1油圧を検出する第1油圧検出手段と、前記第2調圧手段で調圧した前記第2油圧を検出する第2油圧検出手段と、を備える油圧回路の異常検知方法であって、
前記第1調圧手段と前記第1油圧検出手段の何れかに異常がある場合、前記第2油圧が前記第1油圧と一致するように前記第2調圧手段を調圧制御する調圧制御工程と、
前記調圧制御工程での調圧制御後に、前記第1油圧検出手段で検出した前記第1油圧と前記第2油圧検出手段で検出した前記第2油圧との差の絶対値が所定値未満であるか否かを判定する油圧判定工程と、
前記油圧判定工程で前記差の絶対値が所定値未満であると判定した場合に前記第1調圧手段が異常と判別し、前記油圧判定工程で前記差の絶対値が所定値以上であると判定した場合に前記第1油圧検出手段が異常と判別する異常判別工程と、
前記第1油圧検出手段で検出した前記第1油圧と前記第1油圧を調圧制御する際の目標油圧との差が第1閾値以上か否かを判定する異常判定工程と、を含み、
前記調圧制御工程は、前記異常判定工程で前記第1閾値以上と判定した場合、前記第2油圧が前記第1油圧と一致するように前記第2調圧手段を調圧制御することを特徴とする油圧回路の異常検知方法。
【請求項7】
前記異常判別工程は、前記第1調圧手段が異常と判別した場合、前記第1油圧検出手段で検出した前記第1油圧が第2閾値以上の場合に前記第1調圧手段が高圧側固着の異常と判別し、前記第1油圧検出手段で検出した前記第1油圧が前記第2閾値未満の場合に前記第1調圧手段が低圧側固着の異常と判別することを特徴とする請求項に記載の油圧回路の異常検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧回路の異常検知装置及び油圧回路の異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の自動変速機としては、変速ショックなく、変速比を無段階に変更できる無段変速機(CVT(Continuously Variable Transmission))が広く実用化されている。無段変速機は、入力軸に設けられたプライマリプーリと、出力軸に設けられたセカンダリプーリと、これらのプーリに掛け渡されるチェーンなどの動力伝達要素とを備え、それぞれのプーリの溝幅を変化させて動力伝達要素の巻き付け径を変化させることで変速比を無段階に変化させている。無段変速機の変速制御は、油圧回路を用いて各プーリにそれぞれ供給する油圧を制御することで行われる。油圧回路では、エンジンで駆動されるオイルポンプから吐出される高圧の作動油を所定のライン圧に調圧し、更に、ライン圧を減圧して各プーリに供給している。
【0003】
この油圧回路を構成する部品に異常があると、例えば、変速制御を適切に行うことができない。そこで、油圧回路の異常の検知する方法が各種提案されており、例えば、特許文献1にライン圧の調圧弁の異常を検知する方法が開示されている。特許文献1では、調圧弁に対してライン圧が最低圧になるように指令値を出力すると共に減圧弁に対してセカンダリ圧が最大圧(すなわち、セカンダリ圧=ライン圧)になるように指令値を出力し、油圧センサで検出したセカンダリ圧(検出値)とライン圧の最低圧(指令値)との差が所定値以上の場合には調圧弁が異常と判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−124960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1にはライン圧を直接検出する油圧検出手段を備えない構成であってもライン圧の調圧弁の異常を検知できる技術が開示されているが、一般に、ライン圧を調圧する油圧回路にはライン圧を検出する検出手段が設けられている。この検出手段に異常がある場合も、ライン圧を精度良く調圧できない。そこで、ライン圧が正常に調圧されていない場合には、ライン圧の調圧弁の異常かあるいはライン圧の検出手段の異常かを判別することが望まれている。しかし、特許文献1では、ライン圧の検出手段の異常については考慮されていない。また、特許文献1に開示の方法では、調圧弁の異常検知を行う場合にはライン圧を最低圧に変化させる必要がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、調圧手段で調圧する油圧を変化させることなく、調圧手段の異常かあるいは調圧された油圧を検出する油圧検出手段の異常かを判別できる油圧回路の異常検知装置及び油圧回路の異常検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る油圧回路の異常検知装置は、油圧源からの油圧を第1油圧に調圧する第1調圧手段と、第1調圧手段で調圧した第1油圧を第2油圧に調圧する第2調圧手段と、第1調圧手段で調圧した第1油圧を検出する第1油圧検出手段と、第2調圧手段で調圧した第2油圧を検出する第2油圧検出手段と、を備える油圧回路の異常検知装置であって、第1調圧手段と第1油圧検出手段の何れかに異常がある場合、第2油圧が第1油圧と一致するように第2調圧手段を調圧制御する調圧制御手段と、調圧制御手段による調圧制御後に、第1油圧検出手段で検出した第1油圧と第2油圧検出手段で検出した第2油圧とが略一致しているか否かを判定する油圧判定手段と、油圧判定手段で略一致していると判定した場合に第1調圧手段が異常と判別し、油圧判定手段で略一致していないと判定した場合に第1油圧検出手段が異常と判別する異常判別手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る油圧回路の異常検知方法は、油圧源からの油圧を第1油圧に調圧する第1調圧手段と、第1調圧手段で調圧した第1油圧を第2油圧に調圧する第2調圧手段と、第1調圧手段で調圧した第1油圧を検出する第1油圧検出手段と、第2調圧手段で調圧した第2油圧を検出する第2油圧検出手段と、を備える油圧回路の異常検知方法であって、第1調圧手段と第1油圧検出手段の何れかに異常がある場合、第2油圧が第1油圧と一致するように第2調圧手段を調圧制御する調圧制御工程と、調圧制御工程での調圧制御後に、第1油圧検出手段で検出した第1油圧と第2油圧検出手段で検出した第2油圧とが略一致しているか否かを判定する油圧判定工程と、油圧判定工程で略一致していると判定した場合に第1調圧手段が異常と判別し、油圧判定工程で略一致していないと判定した場合に第1油圧検出手段が異常と判別する異常判別工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、第2油圧が第1油圧と一致するように調圧制御することで、第2油圧を検出する第2油圧検出手段の検出値を用いて第1調圧手段の異常かあるいは第1油圧検出手段の異常かを判別できる。つまり、第1油圧検出手段による第1油圧(検出値)が第2油圧検出手段による第2油圧(検出値)に略一致していると判定した場合、第1油圧検出手段が正常に第1油圧を検出しているので、第1調圧手段が異常と判別できる。一方、第1油圧(検出値)が第2油圧(検出値)に略一致していないと判定した場合、第1油圧検出手段が正常に第1油圧を検出していないので、第1油圧検出手段が異常と判別できる。このように、本発明によれば、第1調圧手段で調圧する第1油圧を変化させることなく、第1調圧手段の異常かあるいは第1油圧検出手段の異常かを精度良く判別できる。
【0010】
本発明に係る油圧回路の異常検知装置では、第1油圧検出手段で検出した第1油圧と第1油圧を調圧制御する際の目標油圧との差が第1閾値以上か否かを判定する異常判定手段を備え、調圧制御手段は、異常判定手段で第1閾値以上と判定した場合、第2油圧が第1油圧と一致するように第2調圧手段を調圧制御することが好ましい。
【0011】
本発明に係る油圧回路の異常検知方法では、第1油圧検出手段で検出した第1油圧と第1油圧を調圧制御する際の目標油圧との差が第1閾値以上か否かを判定する異常判定工程を含み、調圧制御工程は、異常判定工程で第1閾値以上と判定した場合、第2油圧が第1油圧と一致するように第2調圧手段を調圧制御することが好ましい。
【0012】
このようにすれば、第1油圧(検出値)と目標油圧との差が第1閾値以上か否かを判定することで、油圧回路における第1油圧に関する第1調圧手段と第1油圧検出手段の何れかに異常があることを精度良く検知できる。したがって、本発明によれば、第1油圧(検出値)と目標油圧との差が第1閾値以上の場合に第2油圧が第1油圧と一致するように調圧制御して第1油圧(検出値)と第2油圧(検出値)とを比較判定することで、第1調圧手段と第1油圧検出手段の何れかに異常がある場合に第1調圧手段の異常かあるいは第1油圧検出手段の異常かの判別を行うことができる。
【0013】
本発明に係る油圧回路の異常検知装置では、異常判別手段は、第1調圧手段が異常と判別した場合、第1油圧検出手段で検出した第1油圧が第2閾値以上の場合に第1調圧手段が高圧側固着の異常と判別し、第1油圧検出手段で検出した第1油圧が第2閾値未満の場合に第1調圧手段が低圧側固着の異常と判別することが好ましい。
【0014】
本発明に係る油圧回路の異常検知方法では、異常判別工程は、第1調圧手段が異常と判別した場合、第1油圧検出手段で検出した第1油圧が第2閾値以上の場合に第1調圧手段が高圧側固着の異常と判別し、第1油圧検出手段で検出した第1油圧が第2閾値未満の場合に第1調圧手段が低圧側固着の異常と判別することが好ましい。
【0015】
このようにすれば、第1調圧手段が高圧側に固着する異常かあるいは低圧側に固着する異常かまでを判別でき、第1調圧手段の異常の状態をより詳細に判別できる。
【0016】
本発明に係る油圧回路の異常検知装置では、第1調圧手段は、第1ソレノイドバルブと第1スプールバルブを有し、第1ソレノイドバルブから供給される第1制御圧に応じて第1スプールバルブで第1油圧に調圧し、異常判別手段は、油圧判定手段で略一致していると判定した場合に第1ソレノイドバルブと第1スプールバルブのうちの少なくとも一方が異常と判別する構成としてもよい。このように構成することで、第1油圧を精度良く調圧できる。
【0017】
本発明に係る油圧回路の異常検知装置では、第2調圧手段は、第2ソレノイドバルブと第2スプールバルブを有し、第2ソレノイドバルブから供給される第2制御圧に応じて第2スプールバルブで第2油圧に調圧し、調圧制御手段は、第2スプールバルブが全開になるように第2ソレノイドバルブを調圧制御する構成としてもよい。このように構成することで、第2油圧を精度良く調圧できる。
【0018】
本発明に係る油圧回路の異常検知装置では、油圧回路は、車両に搭載された無段変速機の油圧回路であり、第2調圧手段で調圧した第2油圧を無段変速機に供給する構成としてもよい。このように構成することで、無段変速機の油圧回路の異常を判別できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第1調圧手段で調圧する第1油圧を変化させることなく、第1調圧手段の異常かあるいは調圧された第1油圧を検出する第1油圧検出手段の異常かを精度良く判別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る異常検知装置及び油圧回路の構成を模式的に示す図である。
図2】実施形態に係る異常検知装置が適用されるCVTの構成を示す断面図である。
図3】実施形態に係る異常検知処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0022】
実施形態では、車両に搭載されたチェーン式のCVT(無段変速機)の油圧回路の異常を検知する異常検知装置に適用する。実施形態に係る油圧回路では、オイルポンプからの吐出圧をライン圧(特許請求の範囲に記載の第1油圧に相当)に調圧し、ライン圧をCVTの各プーリに供給するプーリ圧(特許請求の範囲に記載の第2油圧に相当)に調圧(減圧)する。
【0023】
図1及び図2を参照して、実施形態に係る油圧回路の異常検知装置1について説明する。図1は、実施形態に係る異常検知装置及び油圧回路の構成を模式的に示す図である。図2は、実施形態に係る異常検知装置が適用されるCVTの構成を示す断面図である。
【0024】
異常検知装置1について説明する前に、CVT2と油圧回路3について説明する。まず、CVT2について説明する。CVT2は、例えば、トルクコンバータ(図示省略)を介してエンジン(図示省略)のクランク軸に接続され、エンジンからの駆動力を変換して出力する。CVT2は、トルクコンバータの出力軸と接続されるプライマリ軸(入力軸)20と、プライマリ軸20と平行に配設されたセカンダリ軸(出力軸)21とを有している。
【0025】
プライマリ軸20には、プライマリプーリ22が設けられている。プライマリプーリ22は、固定プーリ22aと、可動プーリ22bとを有している。固定プーリ22aは、プライマリ軸20に接合されている。可動プーリ22bは、固定プーリ22aに対向し、プライマリ軸20の軸方向に摺動自在かつ相対回転不能に装着されている。プライマリプーリ22は、固定プーリ22aと可動プーリ22bとの間のコーン面間隔(すなわち、プーリ溝幅)を変更できるように構成されている。
【0026】
セカンダリ軸21には、セカンダリプーリ23が設けられている。セカンダリプーリ23は、固定プーリ23aと、可動プーリ23bとを有している。固定プーリ23aは、セカンダリ軸21に接合されている。可動プーリ23bは、固定プーリ23aに対向し、セカンダリ軸21の軸方向に摺動自在かつ相対回転不能に装着されている。セカンダリプーリ23は、固定プーリ23aと可動プーリ23bとの間のプーリ溝幅を変更できるように構成されている。
【0027】
プライマリプーリ22とセカンダリプーリ23との間には、駆動力を伝達するチェーン24が掛け渡されている。CVT2は、プライマリプーリ22とセカンダリプーリ23の各プーリ溝幅を変化させて、各プーリ22,23に対するチェーン24の巻き付け径の比率(プーリ比)を変化させることで変速比を無段階で変更する。なお、チェーン24のプライマリプーリ22に対する巻き付け径をRpとし、セカンダリプーリ23に対する巻き付け径をRsとすると、変速比iは、i=Rs/Rpで表される。
【0028】
プライマリプーリ22の可動プーリ22bには、プライマリ駆動油室(油圧シリンダ室)25が形成されている。セカンダリプーリ23の可動プーリ23bには、セカンダリ駆動油室(油圧シリンダ室)26が形成されている。プライマリ駆動油室25には、プーリ比を変化させるための変速圧とチェーン24の滑りを防止するためのプーリ圧(クランプ圧)が導入される。セカンダリ駆動油室26には、プーリ圧(プライマリ駆動油室25に導入されるプーリ圧と同じプーリ圧)が導入される。このプーリ圧は、油圧回路3から導入される。
【0029】
油圧回路3について説明する。油圧回路3には、オイルポンプ4(特許請求の範囲に記載の油圧源に相当)からオイルが供給される。油圧回路3では、オイルポンプ4から吐出されるオイルの吐出状態を全吐出状態と半吐出状態の何れかに切り替える。さらに、油圧回路3では、何れかの吐出状態で吐出されたオイルの吐出圧をライン圧に調圧し、このライン圧をプーリ圧に調圧(減圧)してCVT2のプライマリ駆動油室25とセカンダリ駆動油室26に供給する。油圧回路3は、バルブボディを構成する一部の油圧回路である。バルブボディ(油圧回路3)には、コントロールバルブ機構が組み込まれている。コントロールバルブ機構は、複数のスプールバルブとスプールバルブを動かすソレノイドバルブ(電磁弁)を用いてバルブボディ内に形成された油路を開閉することで油圧を変化させる。なお、バルブボディは、油圧回路3以外にも、例えば、プライマリ駆動油室25に変速圧を供給する油圧回路、車両の前進/後進を切替える前後進切替機構に油圧を供給する油圧回路なども有している。
【0030】
オイルポンプ4は、エンジンの動力により駆動されてオイルパン(図示省略)に溜まっているオイルを吸い込み、昇圧した高圧のオイルを油圧回路3に吐出する。オイルポンプ4は、例えば、トロコイドポンプである。オイルポンプ4は、1つの吸入口4aと、2つの吐出口(第1吐出口4b、第2吐出口4c)とを有している。吸入口4aには、オイルパンに連通された油路40が接続されている。第1吐出口4bには、ライン圧用の油路41が接続されている。第2吐出口4cには、切替バルブ31に連通された油路42が接続されている。
【0031】
油圧回路3は、切替ソレノイドバルブ30と、切替バルブ31と、ライン圧ソレノイドバルブ32(特許請求の範囲に記載の第1ソレノイドバルブ(第1調圧手段)に相当)と、ライン圧バルブ33(特許請求の範囲に記載の第1スプールバルブ(第1調圧手段)に相当)と、プーリ圧ソレノイドバルブ34(特許請求の範囲に記載の第2ソレノイドバルブ(第2調圧手段)に相当)と、プーリ圧バルブ35(特許請求の範に記載の第2スプールバルブ(第2調圧手段)に相当)と、ライン圧検出センサ36(特許請求の範囲に記載の第1油圧検出手段に相当)と、プーリ圧検出センサ37(特許請求の範囲に記載の第2油圧検出手段に相当)とを有している。
【0032】
油圧回路3では、後述するTCU(Transmission Control Unit)10によって切替制御される切替ソレノイドバルブ30と切替バルブ31により、オイルポンプ4の吐出状態を全吐出状態と半吐出状態とに切り替える。
【0033】
切替ソレノイドバルブ30は、オン・オフソレノイドバルブである。切替ソレノイドバルブ30には、油路41に連通する油路43と、切替バルブ31に連通する油路44とが接続されている。切替ソレノイドバルブ30は、TCU10に接続されている。切替ソレノイドバルブ30は、TCU10から所定の電流が供給されるとオンし、電流の供給が停止されるとオフする。切替ソレノイドバルブ30は、オンすると、油路43を介して供給されるオイルを用いて切替制御圧を発生し、切替バルブ31に油路44を介して切替制御圧を供給する。切替ソレノイドバルブ30は、オフすると、切替バルブ31への切替制御圧の供給を停止する。
【0034】
切替バルブ31は、スプールバルブであり、軸方向に摺動するスプール31aと、スプール31aの一端側に配置されたスプリング31bとを有している。切替バルブ31には、オイルポンプ4に連通する油路42と、切替ソレノイドバルブ30に連通する油路44と、油路41に連通する油路45と、オイルを排出するための油路46とが接続されている。切替バルブ31は、切替ソレノイドバルブ30から切替制御圧が供給されるか否かに応じてスプール31aの軸方向への駆動(位置)が制御される。つまり、切替バルブ31は、油路44を介して供給される切替制御圧による押力(切替制御圧×受圧面積)と(但し、切替ソレノイドバルブ30がオフの場合には切替制御圧は供給停止)、スプリング31bのバネ力(付勢力)とのバランスに応じてスプール31aが軸方向に駆動される。
【0035】
切替バルブ31は、切替ソレノイドバルブ30から切替制御圧が供給されると、油路42と油路46とを連通するようにスプール31aが移動する。この場合、オイルポンプ4の第2吐出口4cから油路42に吐出されたオイルが油路46を介して排出され、オイルポンプ4の第1吐出口4bのみからオイルが油路41に吐出される半吐出状態となる。これにより、オイルポンプ4の負荷が低減され、車両の燃費が向上する。一方、切替バルブ31は、切替ソレノイドバルブ30からの切替制御圧の供給が停止されると、油路42と油路45とを連通するようにスプール31aが移動する。この場合、オイルポンプ4の第2吐出口4cから油路42に吐出されたオイルが油路45を介して油路41に合流され、オイルポンプ4の第1吐出口4bと第2吐出口4cからオイルが油路41に吐出される全吐出状態となる。全吐出状態の場合、半吐出状態よりも多くの量のオイルが吐出されるので、半吐出状態よりも吐出圧を高圧にできる。
【0036】
油圧回路3では、TCU10によって調圧制御されるライン圧ソレノイドバルブ32とライン圧バルブ33により、何れかの吐出状態(全吐出状態又は半吐出状態)で吐出されたオイルの吐出圧(全吐出状態での油圧又は半吐出状態での油圧)を所定のライン圧に調圧する。このライン圧ソレノイドバルブ32とライン圧バルブ33の構成により、ライン圧を精度良く調圧できる。
【0037】
ライン圧ソレノイドバルブ32は、リニアソレノイドバルブである。ライン圧ソレノイドバルブ32には、油路41に連通する油路47と、ライン圧バルブ33に連通する油路48とが接続されている。ライン圧ソレノイドバルブ32は、TCU10に接続されている。ライン圧ソレノイドバルブ32は、TCU10から供給される電流値に応じてプランジャの軸方向への駆動(位置)が制御され、ライン圧制御圧を変化させる。ライン圧ソレノイドバルブ32は、ライン圧バルブ33に油路48を介してライン圧制御圧を供給する。
【0038】
ライン圧バルブ33は、スプールバルブであり、軸方向に摺動するスプール33aと、スプール33aの一端側に配置されたスプリング33bとを有している。ライン圧バルブ33には、ライン圧ソレノイドバルブ32に連通する油路48と、油路41に連通する油路49と、オイルを排出するための油路50とが接続されている。ライン圧バルブ33は、ライン圧ソレノイドバルブ32から供給されるライン圧制御圧に応じてスプール33aの軸方向への駆動(位置)が制御される。つまり、ライン圧バルブ33は、油路48を介して供給されるライン圧制御圧による押力(ライン圧制御圧×受圧面積)と、スプリング33bのバネ力(付勢力)とのバランスに応じてスプール33aが軸方向に駆動されることにより、油路50を介して排出されるオイルの量が調節され、ライン圧を調圧する。油路41には、この調圧されたライン圧のオイルが流れる。
【0039】
油圧回路3では、TCU10によって調圧制御されるプーリ圧ソレノイドバルブ34とプーリ圧バルブ35により、ライン圧をプーリ圧に調圧(減圧)する。このプーリ圧ソレノイドバルブ34とプーリ圧バルブ35の構成により、プーリ圧を精度良く調圧(減圧)できる。
【0040】
プーリ圧ソレノイドバルブ34は、リニアソレノイドバルブである。プーリ圧ソレノイドバルブ34には、油路41に連通する油路51と、プーリ圧バルブ35に連通する油路52とが接続されている。プーリ圧ソレノイドバルブ34は、TCU10に接続されている。プーリ圧ソレノイドバルブ34は、TCU10から供給される電流値に応じてプランジャの軸方向への駆動(位置)が制御され、プーリ圧制御圧を変化させる。プーリ圧ソレノイドバルブ34は、プーリ圧バルブ35に油路52を介してプーリ圧制御圧を供給する。
【0041】
プーリ圧バルブ35は、スプールバルブであり、軸方向に摺動するスプール35aと、スプール35aの一端側に配置されたスプリング35bとを有している。プーリ圧バルブ35には、プーリ圧ソレノイドバルブ34に連通する油路52と、油路41に連通する油路53と、プーリ圧用の油路54とが接続されている。プーリ圧バルブ35は、プーリ圧ソレノイドバルブ34から供給されるプーリ圧制御圧に応じてスプール35aの軸方向への駆動(位置)が制御される。つまり、プーリ圧バルブ35は、油路52を介して供給されるプーリ圧制御圧による押力(プーリ圧制御圧×受圧面積)と、スプリング35bのバネ力(付勢力)と、油路53を介して供給されるライン圧による押力(ライン圧×受圧面積)とのバランスに応じてスプール35aが軸方向に駆動されることにより、ライン圧を所定のプーリ圧に調圧(減圧)する。油路54には、調圧されたプーリ圧のオイルが流れる。なお、プーリ圧は、ライン圧以下の圧力に調圧(減圧)され、最大圧がライン圧である。プーリ圧バルブ35が全開に制御されると、プーリ圧=ライン圧となる。
【0042】
油路54は、油路55及び油路56に連通されている。油路55は、CVT2のセカンダリ駆動油室26に連通されている。油路56は、CVT2のプライマリ駆動油室25に連通されている。ライン圧から減圧されたプーリ圧が各駆動油室25,26に供給されることで、必要以上に高いプーリ圧が供給されないので、車両の燃費が向上する。
【0043】
ライン圧検出センサ36は、ライン圧を検出するセンサである。ライン圧検出センサ36は、油路41に接続されている。ライン圧検出センサ36は、TCU10に接続されている。ライン圧検出センサ36で検出されたライン圧は、TCU10に出力される。
【0044】
プーリ圧検出センサ37は、プーリ圧を検出するセンサである。プーリ圧検出センサ37は、油路54に接続されている。プーリ圧検出センサ37は、TCU10に接続されている。プーリ圧検出センサ37で検出されたプーリ圧は、TCU10に出力される。
【0045】
それでは、異常検知装置1について説明する。異常検知装置1は、油圧回路3の異常を検知する装置である。特に、異常検知装置1は、油圧回路3におけるライン圧の異常を検知すると、ライン圧を調圧するライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33の異常かあるいはライン圧を検出するライン圧検出センサ36の異常かを判別する。異常検知装置1の異常検知処理は、TCU10における1つの機能として実施される。
【0046】
なお、ライン圧ソレノイドバルブ32、ライン圧バルブ33の異常には、ライン圧を高圧側に固着する異常と低圧側に固着する異常とがある。高圧側固着の異常は、ライン圧ソレノイドバルブ32とライン圧バルブ33のうちの少なくとも一方がライン圧を高圧側(油路50を全閉)にする固着の異常である。低圧側固着の異常は、ライン圧ソレノイドバルブ32とライン圧バルブ33のうちの少なくとも一方がライン圧を低圧側(油路50を全開)にする固着の異常である。
【0047】
TCU10は、演算を行うマイクロプロセッサ、マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラムなどを記憶するROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、バッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM及び入出力I/Fなどを有して構成されている。
【0048】
TCU10には、ライン圧検出センサ36、プーリ圧検出センサ37を含む各種センサが接続されている。TCU10には、切替ソレノイドバルブ30、ライン圧ソレノイドバルブ32、プーリ圧ソレノイドバルブ34を含む各ソレノイドが接続されている。また、TCU10は、CAN(Controller Area Network)を介して、エンジンを総合的に制御するECU(Engine Control Unit)から、例えば、アクセルペダル開度、エンジン回転数、車速などの情報を受信する。
【0049】
TCU10は、変速マップに従い、車両の運転状態(例えば、アクセルペダル開度、車速)に応じて自動で変速比を無段階に変速する制御を行う。変速マップは、TCU10内のROMに格納されている。この際、TCU10は、油圧回路3の各ソレノイド30,32,34に対しては以下の制御を行う。TCU10は、車両の運転状態に応じてオイルポンプ4の吐出状態を全吐出状態にするかあるいは半吐出状態するかを判断し、半吐出状態の場合には所定の電流を切替ソレノイドバルブ30に供給し、全吐出状態の場合には電流の供給を停止する。TCU10は、調圧制御する際のライン圧の指令値である目標ライン圧を設定し、目標ライン圧にするために必要な電流をライン圧ソレノイドバルブ32に供給する。TCU10は、ライン圧以下に調圧制御する際のプーリ圧の指令値である目標プーリ圧を設定し、目標プーリ圧にするために必要な電流をプーリ圧ソレノイドバルブ34に供給する。
【0050】
特に、TCU10は、上述した油圧回路3の異常を検知する機能を有している。そのために、TCU10は、異常判定部11(特許請求の範囲に記載の異常判定手段に相当)と、調圧制御部12(特許請求の範囲に記載の調圧制御手段に相当)と、油圧判定部13(特許請求の範囲に記載の油圧判定手段に相当)と、異常判別部14(特許請求の範囲に記載の異常判別手段に相当)とを有している。TCU10は、ROMに記憶されているプログラムがマイクロプロセッサによって実行されることで、異常判定部11、調圧制御部12、油圧判定部13及び異常判別部14の各機能が実現される。
【0051】
異常判定部11は、油圧回路3におけるライン圧に異常があるか否かを判定する。具体的には、異常判定部11は、ライン圧検出センサ36で検出されたライン圧と目標ライン圧との差(絶対値)を算出し、この差が第1閾値以上か否か(つまり、ライン圧(検出値)が目標ライン圧よりも第1閾値以上高いかあるいはライン圧が目標ライン圧よりも第1閾値以上低いか)を判定する。第1閾値は、ライン圧に異常があるか否かを判定するための閾値である。第1閾値は、適宜設定され、例えば、ライン圧ソレノイドバルブ32、ライン圧バルブ33、ライン圧検出センサ36の各仕様などに応じて設定される。異常判定部11は、ライン圧と目標ライン圧との差が第1閾値以上と判定した場合(ライン圧(検出値)が目標ライン圧から乖離している場合)、ライン圧を調圧するライン圧ソレノイドバルブ32、ライン圧バルブ33とライン圧を検出するライン圧検出センサ36のうちの何れか一方に異常があると判定する。一方、異常判定部11は、ライン圧と目標ライン圧との差が第1閾値未満と判定した場合(ライン圧(検出値)が目標ライン圧に略一致している場合)、ライン圧ソレノイドバルブ32、ライン圧バルブ33、ライン圧検出センサ36が正常であると判定する。
【0052】
調圧制御部12は、ライン圧(検出値)が目標ライン圧から乖離している場合にプーリ圧がライン圧と一致するように調圧制御する。具体的には、調圧制御部12は、異常判定部11でライン圧と目標ライン圧との差が第1閾値以上と判定した場合、プーリ圧バルブ35を全開(この場合、目標プーリ圧はライン圧に設定)にするために必要な電流をプーリ圧ソレノイドバルブ34に供給する。
【0053】
油圧判定部13は、プーリ圧がライン圧第2油圧と一致するように調圧制御した後にプーリ圧(検出値)とライン圧(検出値)とが略一致しているか否かを判定する。具体的には、油圧判定部13は、調圧制御部12での調圧制御後に、ライン圧検出センサ36で検出されたライン圧とプーリ圧検出センサ37で検出されたプーリ圧とを比較し、ライン圧とプーリ圧とが略一致しているか否かを判定する。この比較判定では、例えば、ライン圧(検出値)とプーリ圧(検出値)との差(絶対値)を算出し、その差が所定値以上か否かを判定する。所定値は、ライン圧(検出値)とプーリ圧(検出値)とが略一致しているか否かを判定する閾値であり、例えば、ライン圧検出センサ36、プーリ圧検出センサ37の各検出精度などに応じて設定される。
【0054】
異常判別部14は、プーリ圧(検出値)とライン圧(検出値)との比較判定結果に応じてライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33の異常かあるいはライン圧検出センサ36の異常かを判別する。具体的には、異常判別部14は、油圧判定部13でライン圧(検出値)とプーリ圧(検出値)とが略一致していると判定した場合にはライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33の異常と判別する。つまり、各センサ36,37の検出値が略一致しており、ライン圧検出センサ36は正常に働いているので、ライン圧(検出値)の目標ライン圧からの乖離はライン圧ソレノイドバルブ32とライン圧バルブ33のうちの少なくとも一方の異常によるものと判断できる。一方、異常判別部14は、油圧判定部13でライン圧(検出値)とプーリ圧(検出値)とが略一致していない(不一致)と判定した場合にはライン圧検出センサ36の異常と判別する。つまり、各センサ36,37の検出値が異なっているので、ライン圧(検出値)の目標ライン圧からの乖離はライン圧検出センサ36の異常によるものと判断できる。
【0055】
さらに、異常判別部14は、ライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33の異常が高圧側固着の異常かあるいは低圧側固着の異常かを判別する。具体的には、異常判別部14は、油圧判定部13でライン圧(検出値)とプーリ圧(検出値)とが略一致していると判定した場合、ライン圧検出センサ36で検出されたライン圧が第2閾値以上か否かを判定する。第2閾値は、ライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33の異常が高圧側固着の異常か低圧側固着の異常か(ライン圧(検出値)が目標ライン圧よりも高圧側に乖離しているかあるいは低圧側に乖離しているか否か)を判定するための閾値である。第2閾値は、適宜設定され、例えば、目標ライン圧に第1閾値を加算した値が設定される。異常判別部14は、ライン圧(検出値)が第2閾値以上と判定した場合、ライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33の異常が高圧側固着の異常と判別する。この場合、ライン圧(検出値)が目標ライン圧よりも少なくとも第1閾値以上高くなっているので、ライン圧ソレノイドバルブ32とライン圧バルブ33のうちの少なくとも一方が高圧側に固着していると判断できる。一方、異常判別部14は、ライン圧が第2閾値未満と判定した場合、ライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33の異常が低圧側固着の異常と判別する。この場合、ライン圧(検出値)が目標ライン圧よりも少なくとも第1閾値以上低くなっているので、ライン圧ソレノイドバルブ32とライン圧バルブ33のうちの少なくとも一方が低圧側に固着していると判断できる。
【0056】
なお、TCU10でライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33とライン圧検出センサ36のうちの何れか一方に異常があると判別した場合、その異常を運転者に対して知らせるために、車載ディスプレイに異常を知らせるメッセージの表示、異常を知らせるメッセージの音声出力、警告灯の点灯などを行うようにするとよい。また、ライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33の異常かあるいはライン圧検出センサ36の異常かを示す情報やライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33の異常の場合には高圧側固着の異常かあるいは低圧側固着の異常かを示す情報(例えば、ダイアグノーシスコード)をTCU10などに記録させるようにするとよい。
【0057】
図1を参照しつつ、図3のフローチャートに沿って異常検知装置1の動作について説明する。図3は、実施形態に係る異常検知処理の流れを示すフローチャートである。本処理は、例えば、所定時間毎に繰り返し行われてもよいし、所定の条件を満たした場合に行われてもよい。
【0058】
なお、通常、以下の動作により、ライン圧が調圧されている。TCU10では、目標ライン圧を設定し、目標ライン圧にするために必要な電流をライン圧ソレノイドバルブ32に供給する。ライン圧ソレノイドバルブ32では、正常な場合には供給された電流に応じたライン圧制御圧を発生し、このライン圧制御圧を油路48を介してライン圧バルブ33に供給する。ライン圧バルブ33では、正常な場合には供給されたライン圧制御圧に応じてスプール33aが移動し、スプール33aの位置に応じて油路50を介してオイルを排出し、目標ライン圧になるようにライン圧を調圧する。ライン圧検出センサ36では、この調圧されたライン圧を検出し、ライン圧(検出値)をTCU10に出力している。
【0059】
TCU10では、ライン圧検出センサ36で検出されたライン圧と目標ライン圧との差(絶対値)が第1閾値以上か否かを判定する(ステップS10)。ステップS10にて第1閾値未満と判定した場合(ライン圧ソレノイドバルブ32、ライン圧バルブ33及びライン圧検出センサ36に異常がない場合)、本処理を終了する。
【0060】
ステップS10にて第1閾値以上と判定した場合、TCU10では、プーリ圧がライン圧と一致するように、プーリ圧バルブ35を全開にするために必要な電流をプーリ圧ソレノイドバルブ34に供給する(ステップS12)。プーリ圧ソレノイドバルブ34では、供給された電流に応じたプーリ圧制御圧を発生し、このプーリ圧制御圧を油路52を介してプーリ圧バルブ35に供給する。プーリ圧バルブ35では、供給されたプーリ圧制御圧に応じてスプール35aがバルブ全開状態(油路54が全開状態)になる位置まで移動する。
【0061】
TCU10では、ライン圧検出センサ36で検出されたライン圧とプーリ圧検出センサ37で検出されたプーリ圧とが略一致するか否かを判定する(ステップS14)。
【0062】
ステップS14にて略一致すると判定した場合、TCU10では、ライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33の異常と判別し、ライン圧検出センサ36で検出されたライン圧が第2閾値以上か否かを判定する(ステップS16)。ステップS16にて第2閾値以上と判定した場合、TCU10では、ライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33が高圧側固着の異常と判別する(ステップS18)。一方、ステップS16にて第2閾値未満と判定した場合、TCU10では、ライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33が低圧側固着の異常と判別する(ステップS20)。これにて、本処理を終了する。
【0063】
ステップS14にて略一致しない(不一致)と判定した場合、TCU10では、ライン圧検出センサ36の異常と判別する(ステップS22)。これにて、本処理を終了する。
【0064】
実施形態に係る異常検知装置1によれば、ライン圧が正常に調圧されていない場合にプーリ圧がライン圧と一致するように調圧制御することで、プーリ圧検出センサ37の検出値を用いてライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33の異常かあるいはライン圧検出センサ36の異常かを判別できる。つまり、ライン圧検出センサ36によるライン圧(検出値)がプーリ圧検出センサ37によるプーリ圧(検出値)に略一致していると判定した場合、ライン圧検出センサ36が正常にライン圧を検出しているので、ライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33が異常と判別できる。一方、ライン圧検出センサ36によるライン圧(検出値)がプーリ圧検出センサ37によるプーリ圧(検出値)に略一致していない(不一致)と判定した場合、ライン圧検出センサ36が正常にライン圧を検出していないので、ライン圧検出センサ36が異常と判別できる。このように、異常検知装置1によれば、ライン圧を変化させずに、ライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33の異常かあるいはライン圧検出センサ36の異常かを精度良く判別できる。この異常検知装置1は、異常検知を行う場合、ライン圧を変化させる必要がないので、ドライバビリティに影響を与えない。また、この異常検知装置1は、車両の走行中でも異常検知を行うことができる。
【0065】
また、実施形態に係る異常検知装置1によれば、ライン圧(検出値)と目標ライン圧との差が第1閾値以上か否かを判定することで、油圧回路3におけるライン圧に関するライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33とライン圧検出センサ36の何れかに異常がことを精度良く検知できる。したがって、異常検知装置1によれば、ライン圧(検出値)と目標ライン圧との差が第1閾値以上の場合にプーリ圧がライン圧と一致するように調圧制御してライン圧(検出値)とプーリ圧(検出値)とを比較判定することで、ライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33とライン圧検出センサ36の何れかに異常がある場合にライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33の異常かあるいはライン圧検出センサ36の異常かの判別を行うことができる。
【0066】
また、実施形態に係る異常検知装置1によれば、ライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33が異常と判別した場合、ライン圧検出センサ36で検出されたライン圧が第2閾値以上か否かあるいは第2閾値未満かを判定することで、ライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33の異常が高圧側固着の異常かあるいは低圧側固着の異常かまでを判別でき、ライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33の異常の状態をより詳細に判別できる。
【0067】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では車両に搭載されるチェーン式のCVT2の油圧回路3に適用したが、ベルト式やトロイダル式のCVT、ATやDCTなどの他の自動変速機、自動変速機以外の装置の油圧回路にも適用可能であり、また、車両以外に搭載される装置の油圧回路にも適用可能である。
【0068】
上記実施形態では第1調圧手段としてライン圧ソレノイドバルブ32とライン圧バルブ33を適用し、第2調圧手段としてプーリ圧ソレノイドバルブ34とプーリ圧バルブ35を適用したが、第1調圧手段と第2調圧手段についてリニアソレノイドバルブとスプールバルブを用いた構成に限られない。
【0069】
上記実施形態では吐出状態を全吐出状態と半吐出状態とに切り替えることができる油圧回路3及びオイルポンプ4に適用したが、吐出状態の切り替えができない油圧回路及びオイルポンプに適用してもよい。
【0070】
上記実施形態ではライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33の異常と判別した場合には高圧側固着の異常かあるいは低圧側固着の異常かまでを判別する構成としたが、この判別までは行わずに、ライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33の異常かあるいはライン圧検出センサ36の異常かまでを判別する構成としてもよい。
【0071】
上記実施形態ではライン圧(検出値)と目標ライン圧との差が第1閾値以上か否かを判定することによりライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33とライン圧検出センサ36の何れかに異常があることを検知する構成としたが、他の方法でライン圧ソレノイドバルブ32又は/及びライン圧バルブ33とライン圧検出センサ36の何れかに異常があることを検知してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 異常検知装置
2 CVT
3 油圧回路
4 オイルポンプ(油圧源)
10 TCU
11 異常判定部(異常判定手段)
12 調圧制御部(調圧制御手段)
13 油圧判定部(油圧判定手段)
14 異常判別部(異常判別手段)
30 切替ソレノイドバルブ
31 切替バルブ
32 ライン圧ソレノイドバルブ(第1ソレノイドバルブ、第1調圧手段)
33 ライン圧バルブ(第1スプールバルブ、第1調圧手段)
34 プーリ圧ソレノイドバルブ(第2ソレノイドバルブ、第2調圧手段)
35 プーリ圧バルブ(第2スプールバルブ、第2調圧手段)
36 ライン圧検出センサ(第1油圧検出手段)
37 プーリ圧検出センサ(第2油圧検出手段)
図1
図2
図3