(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記低密度層が、エチレン・プロピレン・ジエンゴム100重量部に対して、有機系発泡剤を0.1重量部〜40重量部、無機系発泡剤を2重量部〜40重量部、および発泡助剤を2重量部〜40重量部含む、請求項1から4のいずれかに記載の吸音材。
前記高密度層が、金属、樹脂フィルム、紙、ゴムシートおよびこれらの積層体からなる群から選択される1つで構成されている、請求項1から7のいずれかに記載の吸音材。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の代表的な実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
A.吸音材の全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による吸音材の概略断面図である。本実施形態の吸音材100は、低密度層10と高密度層20とを有する。低密度層10と高密度層20とは、任意の適切な接着剤または両面テープ(図示せず)で積層されている。本実施形態においては、高密度層20は、代表的には吸音材100の吸音側に設けられ得る。なお、本明細書において「低密度層」は吸音材における相対的に密度が低い方の層を意味し、「高密度層」は相対的に密度が高い方の層を意味するものであり、密度の具体的な値を基準とするものではない。
【0010】
別の実施形態においては、吸音材は、別の低密度層(図示せず)をさらに有していてもよい。なお、便宜上、低密度層10を第1の低密度層、別の低密度層を第2の低密度層と称する場合がある。第2の低密度層は、第1の低密度層10と高密度層20との間に設けられてもよく、高密度層20の第1の低密度層10側と反対側に設けられてもよい。第2の低密度層が第1の低密度層10と高密度層20との間に設けられる場合には、高密度層20は吸音材の吸音側に設けられ得る。第2の低密度層が高密度層20の第1の低密度層10側と反対側に設けられる場合には、第1の低密度層10が吸音側であってもよく、第2の低密度層が吸音側であってもよい。
【0011】
吸音材100は、総厚みが好ましくは26mm以下である。低密度層が第1の低密度層10のみで構成されている場合には、吸音材の総厚みは、より好ましくは20mm以下であり、さらに好ましくは1mm〜15mmである。本発明によれば、このような非常に薄い厚みにかかわらず、非常に優れた低周波領域の吸音特性(低音吸収特性)を有する吸音材を実現することができる。
【0012】
吸音材100の面密度は1.8kg/m
2以上であり、好ましくは1.8kg/m
2〜4.2kg/m
2であり、より好ましくは1.8kg/m
2〜4kg/m
2である。吸音材の面密度がこのような範囲であれば、厚さや重量に制限がある用途においても非常に優れた低音吸収特性を実現することができる。
【0013】
吸音材100の密度は、好ましくは100kg/m
3〜250kg/m
3であり、より好ましくは120kg/m
3〜170kg/m
3である。吸音材の密度がこのような範囲であれば、薄型で非常に優れた低音吸収特性を実現することができる。
【0014】
1つの実施形態においては、吸音材100は、600Hz以下の音の吸音率が好ましくは60%以上であり、より好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。上記のとおり、本発明によれば、非常に薄い厚みにかかわらず、このような優れた低音吸収特性を有する吸音材を実現することができる。なお、吸音特性は、JIS A 1405−2に準拠して測定され得る。
【0015】
B.低密度層
B−1.第1の低密度層
第1の低密度層10は、音波の振動エネルギーを熱エネルギーに変換することにより、吸音を行う。第1の低密度層は、後述するような連続気泡構造を有することにより、共振周波数を低波長側にシフトさせることができる。結果として、非常に優れた低音吸収特性を実現することができる。
【0016】
第1の低密度層10は、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(以下、EPDMとも称する)連続気泡発泡体で構成されている。本明細書において「連続気泡発泡体」とは、発泡体に形成される気泡の少なくとも一部が連続する構造を有する発泡体を意味する。連続気泡発泡体は、連続気泡構造を有していてもよく、半連続半独立気泡構造を有していてもよい。連続気泡構造は、連続気泡率が100%である構造をいう。半連続半独立気泡構造は、連続気泡率の下限0%を超えて、好ましくは10%以上であり、上限が100%未満であり、好ましくは98%未満である構造をいう。さらに、連続気泡発泡体の平均セル径は、好ましくは50μm以上であり、より好ましくは100μm以上であり、さらに好ましくは200μm以上である。一方、平均セル径は、好ましくは1200μm以下であり、より好ましくは1000μm以下であり、さらに好ましくは800μm以下である。なお、平均セル径は、例えば顕微鏡の拡大画像から画像解析を行うことにより求めることができる。
【0017】
第1の低密度層10の厚みは、好ましくは25mm以下であり、より好ましくは20mm以下であり、さらに好ましくは15mm以下である。一方、第1の低密度層10の厚みは、好ましくは1mm以上であり、より好ましくは5mm以上である。第1の低密度層として後述する材料を用いて上記のような連続気泡発泡体を採用することにより、このような薄い厚みでありながら非常に優れた低音吸収特性を実現することができる。
【0018】
第1の低密度層10のヤング率は、好ましくは100000Pa以下であり、より好ましくは50000Pa以下であり、さらに好ましくは30000Pa以下である。なお、第1の低密度層のヤング率の下限は、例えば5000Paである。第1の低密度層のヤング率がこのような範囲であれば、音のエネルギーを吸音材の変形エネルギーに良好に変換して吸音できるという利点がある。なお、ヤング率は、例えば、動的粘弾性測定装置(例えば、TA Instruments社製「RSA−G2」を使用して、ひずみ1%、周波数1Hz、常温、圧縮モードで測定され得る。
【0019】
第1の低密度層10の面密度は、好ましくは1kg/m
2〜3kg/m
2である。第1の低密度層の面密度がこのような範囲であれば、高密度層の面密度を調整することにより、吸音材全体の面密度を所望の範囲とすることができる。その結果、薄型で、かつ、優れた低音吸収特性を有する吸音材が得られ得る。
【0020】
第1の低密度層10の密度は、好ましくは50kg/m
3〜130kg/m
3である。第1の低密度層の密度がこのような範囲であれば、音のエネルギーを吸音材の変形エネルギーに良好に変換し、かつ、その共振周波数を600Hz以下に調整できるという利点がある。
【0021】
EPDM連続気泡発泡体を構成する材料としては、所望の薄型化が実現され、かつ、所望の低音吸収特性が得られる限りにおいて、任意の適切な材料を用いることができる。EPDM連続気泡発泡体は、代表的には、EPDM100重量部に対して、有機系発泡剤0.1重量部〜40重量部、無機系発泡剤2重量部〜40重量部、発泡助剤2重量部〜40重量部を含有する。
【0022】
EPDMは、エチレン、プロピレンおよびジエン類の共重合によって得られるゴムであり、エチレン−プロピレン共重合体に、さらにジエン類を共重合させて不飽和結合を導入することにより、加硫剤による加硫を可能としている。ジエン類としては、任意の適切なジエン類を用いることができる。具体例としては、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンが挙げられる。
【0023】
有機系発泡剤としては、任意の適切な有機系発泡剤を用いることができる。有機系発泡剤としては、例えば、アゾ系化合物、N−ニトロソ系化合物、ヒドラジド系化合物、セミカルバジド系化合物、フッ化アルカン、トリアゾール系化合物が挙げられる。アゾ系化合物の具体例としては、アゾジカルボン酸アミド(ADCA)、バリウムアゾジカルボキシレート、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼンが挙げられる。N−ニトロソ系化合物の具体例としては、N,N ’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DTP)、N,N ’−ジメチル−N,N ’−ジニトロソテレフタルアミド、トリニトロソトリメチルトリアミンが挙げられる。ヒドラジド系化合物の具体例としては、4,4 ’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド、2,4−トルエンジスルホニルヒドラジド、p,p−ビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)エーテル、ベンゼン−1,3−ジスルホニルヒドラジド、アリルビス(スルホニルヒドラジド)が挙げられる。セミカルバジド系化合物の具体例としては、p−トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4 ’−オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)が挙げられる。フッ化アルカンの具体例としては、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタンが挙げられる。トリアゾール系化合物の具体例としては、5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾールが挙げられる。好ましくは、アゾ系化合物またはN−ニトロソ系化合物が用いられ、さらに好ましくは、アゾジカルボン酸アミド(ADCA)またはN,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DTP)が用いられる。なお、有機系発泡剤としては、加熱膨張性の物質がマイクロカプセル内に封入された熱膨張性微粒子を用いてもよい。そのような熱膨張性微粒子としては、例えば、マイクロスフェア(商品名、松本油脂社製)などの市販品を用いてもよい。有機系発泡剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0024】
有機系発泡剤の配合割合は、EPDM100重量部に対して、上記のとおり好ましくは0.1重量部〜40重量部であり、より好ましくは5重量部〜30重量部である。有機系発泡剤がアゾ系化合物である場合には、その配合割合は、EPDM100重量部に対して、好ましくは5重量部〜40重量部であり、より好ましくは10重量部〜30重量部である。有機系発泡剤がN−ニトロソ系化合物である場合には、その配合割合は、EPDM100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜40重量部であり、より好ましくは5重量部〜30重量部である。
【0025】
無機系発泡剤としては、任意の適切な無機系発泡剤を用いることができる。無機系発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウムなどの炭酸水素塩、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの炭酸塩、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸アンモニウムなどの亜硝酸塩、水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化ホウ素塩、アジド類が挙げられる。好ましくは、炭酸水素塩が用いられ、さらに好ましくは、炭酸水素ナトリウムが用いられる。無機系発泡剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0026】
無機系発泡剤の配合割合は、EPDM100重量部に対して、上記のとおり好ましくは2重量部〜40重量部であり、より好ましくは2重量部〜20重量部である。
【0027】
有機系発泡剤および無機系発泡剤の組合せとしては、任意の適切な組合せが採用され得る。好ましくは、有機系発泡剤としてアゾジカルボン酸アミド(ADCA)またはN,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DTP)と、無機系発泡剤として炭酸水素ナトリウムとの組合せが挙げられる。
【0028】
有機系発泡剤および無機系発泡剤の配合割合(有機系発泡剤/無機系発泡剤)は、重量比で、好ましくは20/1〜0.1/1であり、より好ましくは9/1〜1/1であり、さらに好ましくは6/1〜1/1である。有機系発泡剤が上記の配合割合を上回ると、得られる発泡体が独立気泡となる場合がある。有機系発泡剤が上記の配合割合を下回ると、ガス抜けにより発泡体を得ることができない場合がある。
【0029】
発泡助剤としては、任意の適切な発泡助剤を用いることができる。発泡助剤としては、例えば、尿素系化合物、サリチル酸系化合物、安息香酸系化合物が挙げられる。発泡助剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。好ましくは、尿素系化合物が用いられる。有機系発泡剤の分解温度(発泡温度)を効率的に低下させることができ、後述する2段発泡することができ、かつ、低コストであるからである。
【0030】
発泡助剤の配合割合は、EPDM100重量部に対して、上記のとおり好ましくは2重量部〜40重量部であり、好ましくは5重量部〜10重量部である。発泡助剤をこのような範囲で配合することにより、発泡時において、有機系発泡剤の分解温度(発泡温度)を低下させることができる。その結果、発泡時に、まず有機系発泡剤が発泡し(1次発泡)、次いで無機系発泡剤が発泡する(2次発泡)という2段発泡を実現することができ、連続気泡発泡体を実現することができる。
【0031】
EPDM連続気泡発泡体は、上記のEPDM、有機系発泡剤、無機系発泡剤および発泡助剤とともに、充填剤、軟化剤、加硫剤、加硫促進剤を配合して、加硫および発泡(加硫発泡)することによって得ることができる。
【0032】
充填剤としては、任意の適切な充填剤を用いることができる。充填剤としては、例えば、無機系充填剤、有機系充填剤が挙げられる。無機系充填剤の具体例としては、炭酸カルシウム(例えば、重質炭酸カルシウム)、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸およびその塩類、クレー、タルク、雲母粉、ベントナイト、シリカ、アルミナ、アルミニウムシリケート、アセチレンブラック、アルミニウム粉が挙げられる。有機充填剤の具体例としては、コルクが挙げられる。充填剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。好ましくは、炭酸カルシウムが用いられる。充填剤の配合割合は、EPDM連続気泡発泡体100重量部に対して、好ましくは300重量部以下であり、より好ましくは200重量部以下である。
【0033】
軟化剤としては、任意の適切な軟化剤を用いることができる。軟化剤としては、例えば、乾性油類または動植物油類(例えば、アマニ油)、石油系オイル類(例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル)、アスファルト類、低分子量ポリマー類、有機酸エステル類(例えば、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)のようなフタル酸エステル、リン酸エステル、高級脂肪酸エステル、アルキルスルホン酸エステル)、増粘付与剤などが用いられる。軟化剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。好ましくは、石油系オイル類またはアスファルト類が用いられる。これらを用いることにより、得られるEPDM連続気泡発泡体に、優れた耐熱性および耐候性を付与することができる。
【0034】
軟化剤の配合割合は、EPDM100重量部に対して、好ましくは20重量部〜300重量部であり、好ましくは50重量部〜200重量部である。軟化剤をこのような配合割合で用いることにより、加工性の向上を図ることができ、柔軟なEPDM連続気泡発泡体を得ることができる。
【0035】
加硫剤としては、任意の適切な加硫剤を用いることができる。加硫剤としては、例えば、硫黄、硫黄化合物類(例えば、4,4’−ジチオジモルホリン)、セレン、酸化マグネシウム、一酸化鉛、有機過酸化物類(例えば、クメンペルオキシド)、ポリアミン類、オキシム類(例えば、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム)、ニトロソ化合物類(例えば、p− ジニトロソベンジン)、樹脂類(例えば、アルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物)、アンモニウム塩類(例えば、安息香酸アンモニウム)が挙げられる。加硫剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。好ましくは、硫黄が用いられる。加硫性に優れるので、優れた耐久性を有するEPDM連続気泡発泡体が得られるからである。
【0036】
加硫剤の配合割合は、その種類(したがって、加硫効率)に応じて適切に設定され得る。例えば硫黄を用いる場合には、その配合割合は、EPDM100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜10重量部であり、より好ましくは0.5重量部〜3重量部である。
【0037】
加硫促進剤としては、例えば、チアゾール類(例えば、2―メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド)、ジチオカルバミン酸類(例えば、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛)、グアニジン類(例えば、ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン)、スルフェンアミド類(例えば、ベンゾチアジル−2−ジエチルスルフェンアミド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、チウラム類(例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド)、キサントゲン酸類(例えば、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛)、アルデヒドアンモニア類(例えば、アセトアルデヒドアンモニア、ヘキサメンチレンテトラミン)、アルデヒドアミン類(例えば、n−ブチルアルデヒドアニリン、ブチルアルデヒドモノブチルアミン)、チオウレア類(例えば、ジエチルチオウレア、トリメチルチオウレア)が挙げられる。加硫促進剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。加硫速度などの観点から、好ましくはジチオカルバミン酸類が用いられる。加硫促進剤の配合割合は、耐ブルーム性、加硫速度などの観点から、EPDM100重量部に対して、好ましくは0.5重量部〜10重量部であり、より好ましくは1重量部〜5重量部である。
【0038】
なお、加硫促進剤とは反対に、必要に応じて加硫遅延剤を用いてもよい。加硫遅延剤としては、有機酸(例えば、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸)またはアミン類(例えば、N−ニトロソ−ジフェニルアミン、N−ニトロソ−フェニル−β−ナフチルアミン)が挙げられる。加硫遅延剤を用いることにより、成形加工性を調節することができる。
【0039】
EPDM連続気泡発泡体には、目的に応じて任意の適切な添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、補強材、加硫助剤、滑剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、着色剤、防カビ剤、難燃剤が挙げられる。
【0040】
補強材としては、任意の適切な補強材を用いることができる。補強材としては、例えば、カーボンブラックが挙げられる。補強材の配合割合は、EPDM100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜80重量部であり、好ましくは0.5〜50重量部である。
【0041】
加硫助剤としては、任意の適切な加硫助剤を用いることができる。加硫助剤としては、例えば、酸化亜鉛が挙げられる。加硫助剤の配合割合は、EPDM100重量部に対して、好ましくは1重量部〜20重量部であり、好ましくは2重量部〜10重量部である。
【0042】
滑剤としては、任意の適切な滑剤を用いることができる。滑剤としては、例えば、ステアリン酸またはそのエステル類が挙げられる。滑剤の配合割合は、EPDM100重量部に対して、好ましくは0.5重量部〜5重量部であり、好ましくは1重量部〜3重量部である。
【0043】
EPDM連続気泡発泡体の製造方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。一例について説明する。まず、EPDM、充填剤、軟化剤および目的に応じた添加剤を適宜選択して配合し、これをニーダ、ミキサーあるいはミキシングロールなどを用いて混練することによって混和物を調製する。混練は、加熱下で行ってもよい。次いで、混和物に、さらに、加硫剤、有機系発泡剤、無機系発泡剤、加硫促進剤および発泡助剤を適宜選択して配合し、これをさらに混練した後に加熱することにより加硫発泡する。より具体的には、加硫発泡は、混和物をカレンダー成形や押出成形などによってシート状などに成形して加硫発泡してもよく、あるいは、射出成形やプレス成形などによって、例えば凹凸などの複雑な形状に成形して、加硫発泡してもよい。加硫発泡における加熱温度は、配合される加硫剤の加硫開始温度、配合される発泡剤の発泡温度などに応じて適切に設定され得る。加硫温度は、例えば450℃ 以下であり、好ましくは100℃〜350℃ であり、より好ましくは120℃〜250℃ である。
【0044】
上記のような加硫発泡により、混和物が軟化する一方で有機系発泡剤および無機系発泡剤が膨張し、発泡構造を形成しつつ加硫が進行して、所望のEPDM連続気泡発泡体が形成される。さらに、上記のような加硫温度に設定することにより、加硫発泡において、まず有機系発泡剤が発泡し(1次発泡)、次いで1次発泡より高い温度で無機系発泡剤が発泡して(2次発泡)、2段発泡する。
【0045】
なお、加硫発泡においては、加硫と発泡とを、それぞれ異なる温度条件において順次行なってもよく、発泡倍率の調節などを目的として、加圧下で加硫発泡を行なってもよい。
【0046】
加硫発泡においては、得られるEPDM連続気泡発泡体の発泡倍率(発泡前後の密度比)は、好ましくは10倍〜30倍、より好ましくは10倍〜20倍に設定され得る。発泡倍率をこのような範囲に設定することにより、良好な低音吸収特性を実現し得る連続気泡構造を得ることができる。なお、発泡倍率は、有機系発泡剤および無機系発泡剤の配合割合、加硫発泡時間および温度などを調整することにより制御することができる。
【0047】
上記のような方法によれば、ロールまたは針などを用いて強制的に連続気泡を形成することなく、発泡時に連続気泡化を実現することができる。その結果、簡易かつ低コストでEPDM連続気泡発泡体を得ることができる。
【0048】
B−2.第2の低密度層
第2の低密度層の厚みは、第1の低密度層10の厚みよりも薄くてもよく、厚くてもよく、同一であってもよい。第2の低密度層が第1の低密度層と高密度層との間に設けられる場合には、第2の低密度層の厚みは、代表的には第1の低密度層10の厚みよりも薄い。第2の低密度層の厚みは、例えば1mm〜15mmであり、好ましくは3mm〜7mmである。
【0049】
第2の低密度層の面密度は、好ましくは0.1kg/m
2〜1.7kg/m
2である。第2の低密度層の面密度がこのような範囲であれば、薄型で、かつ、優れた低音吸収特性を有する吸音材が得られ得る。
【0050】
第2の低密度層の構成材料、連続気泡構造、および上記以外の特性については、第1の低密度層に関してB−1項で説明したとおりである。
【0051】
C.高密度層
高密度層20の面密度は、好ましくは2kg/m
2以下であり、好ましくは0.4kg/m
2〜1.2kg/m
2である。面密度がこのような範囲であれば、上記のような低密度層を用いた場合であっても吸音材全体の面密度を所望の範囲とすることができる。その結果、薄型で、かつ、優れた低音吸収特性を有する吸音材が得られ得る。
【0052】
高密度層20の密度は、好ましくは500kg/m
3〜10000kg/m
3である。高密度層の密度がこのような範囲であれば、より薄くかつ安価な高密度層を用いて吸音材全体の面密度を所望の範囲とすることができるという利点がある。
【0053】
高密度層20の厚みは、好ましくは10μm〜1000μmであり、より好ましくは50μm〜500μmである。高密度層の厚みがこのような範囲であれば、吸音材全体として所望の密度および面密度を実現することができる。
【0054】
高密度層を構成する材料としては、所望の薄型化が実現され、かつ、所望の低音吸収特性が得られる限りにおいて、任意の適切な材料を用いることができる。高密度層は、代表的には非通気性である。高密度層が非通気性であることにより、音のエネルギーを吸音材の変形エネルギーに良好に変換して吸音できるという利点がある。なお、通気性は、JIS P8117(ガーレー試験法)により測定され得る。
【0055】
高密度層を構成する材料の具体例としては、金属、樹脂フィルム、紙、ゴムシートおよびこれらの積層体が挙げられる。金属としては、例えば、アルミニウム、ステンレス(SUS)、鉄、銅が挙げられる。金属は、代表的には金属箔として用いられ得る。樹脂フィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のようなポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP)のようなポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS)が挙げられる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、実施例における測定および評価方法は下記のとおりである。
【0057】
(1)厚み
厚みゲージを用いて測定した。
(2)面密度
実施例および比較例で得られた吸音材、ならびに、実施例および比較例に用いた低密度層(発泡体)および高密度層について、これらをφ100mmの打抜き刃で打ち抜いて円柱状のサンプルを作製し、当該サンプルの重量を電子天秤で測定し、 面積0.00785(m
2)で割ることにより求めた。なお、0.00785(m
2)はφ100mmの円の面積である。
(3)密度
上記(2)で求めた面密度を上記(1)で測定した厚みで割ることにより求めた。
(4)吸音率
ブリュエル・ケアー製の音響管を使用し、JIS A 1405−2に準拠して測定した。 具体的には、実施例および比較例で得られた吸音材を、φ100mmの打ち抜き刃で打ち抜いて円柱状のサンプルを作製し、当該サンプルについて周波数100Hz〜1600Hzの範囲の吸音率を測定した。測定範囲内において吸音率が最大となる周波数および吸音率をそれぞれ「ピーク周波数」および「ピーク吸音率」とした。さらに、100Hz〜600Hzの範囲内における最大吸音率を「600Hz以下の最大吸音率」として評価した。
(5)ヤング率
実施例および比較例に用いた低密度層(発泡体)について、動的粘弾性測定装置(TA Instruments社製「RSA−G2」を使用して、ひずみ1%、周波数1Hz、常温、圧縮モードで測定した。
【0058】
(実施例1〜18および比較例1〜9)
表1に示す構成の低密度層(第1の低密度層)および高密度層を表1に示す方法で貼り合わせ、それぞれの吸音材を作製した。得られた吸音材を上記の評価に供した。結果を表1に示す。
なお、表1において、例えば「吸音率0.8」という記載は吸音率が80%であることを示す。「SUS」はステンレス(SUS304H)を示す。「Al」はアルミニウム(A1050P)を示す。「PET」は、住友ベークライト社製「サンロイドPETエース」を示す。「両面テープ」は日東電工社製「No.5691W」を示し、「接着剤」は東亜合成社製「アロンアルファ ゼリー状」を示す。
「EH2200」は日東電工社製「エプトシーラーEH2200」を示し、「EC−100」は日東電工社製「エプトシーラーEC−100」を示し、「EC−200」は日東電工社製「エプトシーラーEC−200」を示し、「EV1000」は日東電工社製「エプトシーラーEV1000」を示す。これらはいずれも、エチレン・プロピレン・ジエンゴム連続気泡発泡体である。
【0059】
【表1】
【0060】
(実施例19)
表2に示す構成の第1の低密度層、第2の低密度層および高密度層を表2に示す方法で貼り合わせ、それぞれの吸音材を作製した。得られた吸音材を上記の評価に供した。結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
(評価)
表1および表2から明らかなように、本発明の実施例は、比較例に比べて600Hz以下の音の最大吸音率が顕著に優れている。