(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記絶縁層は、前記層状骨格を上下方向に複数有するとともに、上側の前記層状骨格の無機絶縁粒子と、下側の前記層状骨格の無機絶縁粒子とが前記層状骨格の厚み方向に配列していることを特徴とする請求項1記載の樹脂基板。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(形態1)
以下、本発明の一実施形態に係る樹脂基板用シートについて、
図1および
図2を参照しつつ説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0012】
図1は、樹脂基板用シート1を上下方向(樹脂基板用シートの厚み方向)に切断した断面を模式的に示している。樹脂基板用シート1は、例えば、後述するように樹脂基板の製造に使用されるものである。この樹脂基板用シート1は、
図1に示すように、シート部材2と、シート部材2の主面上に積層されている絶縁層前駆体(以下、単に絶縁層ということがある)3とを有している。
【0013】
シート部材2は、絶縁シート1を取り扱う際に、絶縁層3を支持するものであり、配線に加工される。シート部材2は、例えば平板状の銅箔からなる。シート部材2が銅箔からなる場合、シート部材2の耐熱性を向上させることができる。また後述する配線層として利用することができる。なお、シート部材2は、フィルム状の樹脂シートであっても良い。
【0014】
絶縁層3は、後述する樹脂基板の配線層間の絶縁を確保するものである。絶縁層3は、シート部材2上に積層された第1絶縁層前駆体(以下、単に第1絶縁層ということがある)4と、第1絶縁層4上に積層された第2絶縁層前駆体(以下、単に第2絶縁層ということがある)5とを有している。絶縁層3の厚みは、例えば5μm以上50μm以下、望ましくは8μm以上20μm以下に設定されている。
【0015】
第1絶縁層4の厚みは、例えば1μm以上15μm以下に設定されている。第1絶縁層4は、
図2に示すように、複数の無機絶縁粒子6aおよび第1樹脂部8によって形成されている。すなわち、複数の無機絶縁粒子6aが粒子形状を保持したまま互いに接続するこ
とによって、第1絶縁層4の主要部である層状骨格Aが形成されている。
【0016】
さらに詳細に説明すると、第1絶縁層4は、複数の無機絶縁粒子6aがシート部材2の面方向(2次元的)に配列しており、隣接する2個の無機絶縁粒子6a間で構成される2面間粒界7aと、隣接する3個以上(
図2では4個)の無機絶縁粒子6a間で構成される多重点粒界7bとを有するとともに、無機絶縁粒子6a同士が2面間粒界7aにおいてネック6bで接合された層状骨格Aを有しており、該層状骨格Aの多重点粒界7bには、未硬化もしくは半硬化状態の樹脂が配されて第1樹脂部8とされ、第1絶縁層4が構成されている。
【0017】
図1では、第1絶縁層4は、1層の層状骨格Aを有している。すなわち、第1絶縁層4を平面視したときに、
図2(a)に示すように、対向する無機絶縁粒子(以下、第1粒子ということがある)6aの対向面間が2面間粒界7aとされており、この2面間粒界7aには、ネック6bが形成され、このネック6bにより2つの第1粒子6aが接合し一体化している。
【0018】
ネック6bは、後述するように、第1粒子6aよりも粒径が小さい多数の第2無機絶縁粒子(以下、第2粒子ということがある)同士がある程度焼結して形成されており、ネック6bの内部には空隙6b1が形成されている。この空隙6b1は閉気孔である。このネック部6bは、第2粒子の形状が殆ど判明しない程度に一体化されて構成されている。なお、上述の空隙6b1は、存在しなくても差し支えない。
【0019】
ネック6bは、第1絶縁層4を平面視した時および断面視した時に、2つの第1粒子6aの最も近接している部分を中心に配置されており、
図2(b)に示すように、第1絶縁層4の厚さ方向中央部に位置しており、第1絶縁層4の厚さ方向上層部および下層部には存在していない。
【0020】
また、多重点粒界7bは、
図2(a)に示すように、平面視した時に、4つの第1粒子6aの面および、2面間粒界7aのネック6bとで囲まれた領域で構成されており、この多重点粒界7bには、未硬化もしくは半硬化状態の樹脂が充填され、第1樹脂部8とされている。この樹脂は、
図2(b)に示すように、第1絶縁層4の厚さ方向中央部のみならず、上層部および下層部にも配置されている。
【0021】
また、層状骨格Aにおける樹脂(第1樹脂部8)の含有率は、例えば55体積%以上に設定され、望ましくは60体積%以上に設定され、前述の特許文献1よりも多くできる。このような樹脂の含有率は、例えば、第1絶縁層4の断面の顕微鏡写真を用い、画像解析装置で面積比率を算出し、体積換算することで得られる。
【0022】
第1絶縁層4の厚みは、
図2(b)では、第1粒子6aの直径と同一に記載したが、
図2(c)に示すように、層状骨格Aの厚さ(第1粒子6aの直径)よりも厚く、第1粒子6aの上下面に樹脂層を有する場合であっても良い。言い換えれば、第1絶縁層4が、層状骨格Aの上下面に樹脂層を有する場合であっても良い。なお、第1絶縁層4が、層状骨格Aの上面または下面に樹脂層を有する場合であっても良いことは勿論である。
【0023】
第1粒子6aの粒子径は、0.1μm以上5μm以下に設定されている。第1粒子6aの粒径は、例えば、まず第1絶縁層4の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、20粒子数以上50粒子数以下の粒子を含むように拡大した断面を撮影し、拡大した断面にて粒子の最大径を測定することによって算出される。
【0024】
第1粒子6aの形状は、例えば球状である。第1粒子6aは、例えば酸化珪素、酸化ア
ルミニウム、酸化チタニウム、酸化マグネシウムまたは酸化ジルコニウム等の無機絶縁材料からなる。また、第1粒子6aは単一の材料からなってもよいし、複数種類の材料からなってもよい。なお、第1粒子6aは、熱膨張率が例えば0.6ppm/℃以上12ppm/℃以下である材料からなる。また、第1粒子6aは、ヤング率が例えば10GPa以上300GPa以下である材料からなる。第1粒子6aは、溶融シリカであることが特に望ましい。
【0025】
第1樹脂部8は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂またはポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂等からなり、また、第1樹脂部8は、熱膨張率が例えば30ppm/℃以上60ppm/℃以下である材料からなる。また、第1樹脂部8は、ヤング率が例えば2GPa以上10GPa以下である材料からなり、適宜後述の無機充填剤を含有せしめても良い。第1樹脂部8は、樹脂基板用シート1において未硬化あるいは半硬化状態である。
【0026】
第2絶縁層5は、樹脂基板の製造時に、絶縁層3と配線層、または絶縁層3とこの絶縁層3に積層される他の絶縁層3とを接着するものである。第2絶縁層5は、
図1(b)に示すように、第2樹脂部13および第2樹脂部13の樹脂内に配されている無機充填材35を有している。この第2絶縁層5は、多重点粒界7bに樹脂を配する工程で、層状骨格A上に樹脂を多めに塗布し、第2絶縁層5を形成しても良い。
【0027】
第2絶縁層5の厚みは、第1絶縁層4の厚みよりも小さくてもよい。これにより、第2絶縁層5の熱膨張の影響が小さくなり、第1絶縁層4は、第2絶縁層5の熱膨張量を効果的に低減させることができる。なお、第2絶縁層5の厚みは、例えば1μm以上40μm以下に設定されている。
【0028】
第2絶縁層5の第2樹脂部13は、第1絶縁層4の第1樹脂部8と接続している。その結果、第2絶縁層5と第1絶縁層4との接着強度を向上させることができ、例えば第1絶縁層4と第2絶縁層5の熱膨張率の違いによる剥離を低減することができる。
【0029】
また、第2絶縁層5の第2樹脂部13は、上記したように、第1絶縁層4の第1樹脂部8と一体的に形成されてもよい。すなわち、第2絶縁層5を形成する樹脂が、第1絶縁層4の多重点粒界7bに入り込んで、第1樹脂部8を形成してもよい。その結果、第2絶縁層5と第1絶縁層4との剥離を効果的に低減することができる。
【0030】
第2樹脂部13は、主に第2絶縁層5を構成するものである。第2樹脂部13は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂またはポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂等からなる。また、第2樹脂部13は、熱膨張率が例えば30ppm/℃以上60ppm/℃以下である材料からなる。また、第2樹脂部13は、ヤング率が例えば2GPa以上10GPa以下である材料からなり、適宜後述の無機充填剤35を含有せしめても良い。第2樹脂部13は、樹脂基板用シート1において未硬化状態あるいは半硬化状態である。
【0031】
無機充填材35は、第2絶縁層5の強度を向上させるものである。無機充填材35の形状は、例えば球状である。無機充填材35の粒子径は、第1粒子6aの粒子径以上であってもよい。無機充填材35の粒子径は、例えば0.1μm以上5μm以下に設定される。また、第2絶縁層5に対する無機充填材35の含有率は、第1絶縁層4に対する第1粒子6aの含有率よりも小さくてもよい。無機充填材35の第2絶縁層5に対する含有率は、例えば60体積%以下に設定されている。第2絶縁層5の無機充填材35は、樹脂中に離れて存在する。なお、第1樹脂部8と第2樹脂部13とは同一材料である必要はない。
【0032】
以上のような樹脂基板用シートの製造方法について説明する。先ず、例えば、特開2010−64945号公報に開示されるように、第1粒子6aおよびこの第1粒子6aよりも粒径が小さい第2粒子を、正および負に帯電させ、静電相互作用により第1粒子6aの表面に第2粒子を吸着させる。第2粒子は、第1粒子6aの表面に脱落はしないが移動できる程度の吸着力で付着している。
【0033】
この後、第2粒子が吸着した第1粒子6aを、水等の分散液中に分散させ、この分散液をシート部材2上に塗布し、乾燥させる。この乾燥工程で、水とともに第2粒子が、第1粒子6aの2面間粒界7aに表面張力により移動し、分散液が完全に除去される。この後、低温で焼成することにより、
図3(a)に示すような層状骨格Aを形成できる(例えば、シ−エムシー出版 ゾル−ゲル法の最新応用と展望 P250〜251)。なお、焼成は、第
2粒子が空隙6b1を有する程度に、例えば500〜1500℃の低温で焼結する。また、焼成方法としては、通常の大気焼成の他、雰囲気焼成、加圧焼成、マイクロ波焼成、パルス通電焼成、電子ビーム照射等が適宜用いられる。第2粒子の粒径は、例えば5nm以上80nm未満に設定されている。
【0034】
そして、
図3(b)に示すように、上記層状骨格Aに第2絶縁層5を形成する樹脂8aを塗布し、プレスすることにより、樹脂8aを、
図3(c)に示すように、多重点粒界7bに配置する。
【0035】
具体的には、シート部材2、第1絶縁層4の層状骨格Aおよび樹脂8aを上下方向に加熱加圧することによって、第1絶縁層4の多重点粒界7bに樹脂8aを入り込ませる。
【0036】
シート部材2等の加熱温度は、例えば60℃以上250℃以下に設定される。シート部材2等の加圧圧力は、例えば0.1MPa以上5MPa以下に設定される。シート部材2等の加熱加圧時間は、例えば0.5分以上300分以下に設定される。第2絶縁層5の樹脂8aの上記加熱時間における溶融粘度は、例えば10000Pa・s以下に設定される。層状骨格Aの厚み、シート部材2等の加圧圧力および第2絶縁層5の樹脂8aの溶融粘度を適宜調整することによって、層状骨格Aの多重点粒界7bに入り込んだ樹脂8a(第1樹脂部8)をシート部材2に接触させることができる。
【0037】
あるいは、キャリアフィルム上に樹脂8aを既存の成形方法によりシート状に成形したものを準備し、層状骨格A上に載置し、前述と同様の方法で加熱加圧することによっても、第1絶縁層4の多重点粒界7bに樹脂8aを入り込ませることが可能である。なお、キャリアフィルムは、加熱加圧後に剥離する。樹脂基板用シート1における第1絶縁層4の第1樹脂部8は、未硬化または半硬化状態である。
【0038】
この後、第1絶縁層4上に、第2絶縁層5を形成する樹脂を塗布乾燥させることにより、第2絶縁層5を形成し、樹脂基板用シート1を作製できる。
【0039】
なお、層状骨格Aの上に第2絶縁層5を形成する樹脂8aを多めに配置し、前述と同様の方法で加熱加圧することにより、第1絶縁層4と第2絶縁層5とを同時に形成しても良い。
【0040】
このような樹脂基板用シート1では、複数の第1粒子6aは粒子形状を保持したままネック6bを介して互いの一部で結合しており、第1粒子6a同士を強固に連結できるとともに、多重点粒界7bに第1樹脂部8が配されているため、第1絶縁層4中の樹脂量を従来よりも増加でき、第1樹脂部8による第1粒子6a同士の連結力を向上できる。
【0041】
さらに、多重点粒界7bに充填された第1樹脂部8がシート部材2の表面に接合してい
るため、言い換えれば、第1樹脂部8は、複数の第1粒子6a同士の間に配され、かつ複数の第1粒子6aの表面とシート部材2の一主面と接合しているため、樹脂基板を作製する前の樹脂基板用シート1の段階において、シート部材2に第1樹脂部8を接触させることによって、シート部材2と第1絶縁層4との接着強度を向上させることができる。その結果、シート部材2から第1絶縁層4が剥離することを低減し、樹脂基板用シート1の取り扱いを容易にすることができる。
【0042】
(形態2)
図4は、本発明の樹脂基板用シート1の他の形態を示すもので、第1絶縁層4を、2層の層状骨格Aで構成したものである。この形態の樹脂基板用シート1では、形態1の層状骨格Aを上下方向に2層積層して第1絶縁層4が構成されており、上側の層状骨格A1の第1粒子6aと、下側の層状骨格A2の第1粒子6aとが、層状骨格A1、A2の厚み方向に配列している。
【0043】
具体的には、層状骨格A1の第1粒子6aの中心と、層状骨格A2の第1粒子6aの中心とを結ぶ線分S1が、層状骨格A1の複数の第1粒子6aの中心を結ぶ線分S2とがほぼ直交するように、上側の層状骨格A1のX、Y方向に配列した第1粒子6aと、下側の層状骨格A2のX、Y方向に配列した第1粒子6aとが、層状骨格A1、A2の厚み方向に配列している。言い換えると、層状骨格A1、A2の厚み方向に平面視したとき、
図4(c)に示すように、層状骨格A1、A2の第1粒子6aはほぼ重なって見える。層状骨格A1、A2の多重点粒界7bには樹脂が配置されて、第1樹脂部8とされている。
【0044】
このような構成の樹脂基板用シート11は、形態1の製法のようにして、シート部材2上に層状骨格A1、A2をそれぞれ作製し、層状骨格A1、A2の多重点粒界7bに樹脂を配し、この後、
図5(a)(b)に示すように、層状骨格A2の上に層状骨格A1を積層し、
図5(c)に示すように、層状骨格A1上のシート部材2を剥離し、第1絶縁層4を形成し、この第1絶縁層4上に第2絶縁層5を形成して、作製することができる。
【0045】
このような
図4の樹脂基板用シート1についても、上記形態1と同様な効果を有することができるが、さらに第1絶縁層4の強度を向上できる。
【0046】
(形態3)
図6は、本発明の樹脂基板用シート1のさらに他の形態を示すもので、第1絶縁層4を、2層の層状骨格Aで構成したものである。この形態の樹脂基板用シート1では、形態1の層状骨格Aを上下方向に2層積層して第1絶縁層4が構成されており、上側の層状骨格A1の第1粒子6aが、下側の層状骨格A2の第1粒子6a間に位置している。
【0047】
具体的には、
図6(b)(c)に示すように、層状骨格A1の第1粒子6aの中心と、層状骨格A2の第1粒子6aの中心とを結ぶ線分S3が、層状骨格A1の複数の第1粒子6aの中心を結ぶ線分S4とがほぼ45度となるように、上側の層状骨格A1の第1粒子6aと、下側の層状骨格A2の第1粒子6aとが配列している。層状骨格A1、A2の多重点粒界7bに樹脂が配置され、て、第1樹脂部8とされている。
【0048】
このような構成の樹脂基板用シート1は、形態1の製法のようにして、シート部材2上に層状骨格A1、A2をそれぞれ作製し、層状骨格A1、A2の多重点粒界7bに樹脂を配し、この後、
図7(a)(b)に示すように、上側の層状骨格A1の第1粒子6aが、下側の層状骨格A2の第1粒子6a間に位置するように、層状骨格A2の上に層状骨格A1を積層し、
図7(c)に示すように、層状骨格A1上のシート部材2を剥離し、第1絶縁層4を形成し、この第1絶縁層4上に第2絶縁層5を形成して、作製することができる。
【0049】
このような
図6の樹脂基板用シート1についても、上記形態1と同様な効果を有することができるが、形態1、2よりも、さらに第1絶縁層4の強度を向上できる。
【0050】
さらに、
図6(d)に示すように、上側の層状骨格A1の第1粒子6aが、下側の層状骨格A2の第1粒子6a間に細密充填の形状となるように、層状骨格A2の上に層状骨格A1を積層することにより、第1絶縁層4の強度をさらに向上できる。
【0051】
(樹脂基板)
次に、上述した樹脂基板用シート1を用いて製造された樹脂基板14を、
図8を参照しつつ詳細に説明する。
図8は、樹脂基板を上下方向に切断した断面を模式的に示している。
【0052】
樹脂基板14は、例えば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ装置またはその周辺機器等の電子機器に使用されるものである。樹脂基板14は、例えばビルドアップ多層配線基板であって、
図8に示すように、コア基板15とコア基板15の上下に形成された一対のビルドアップ層16とを備えている。
【0053】
コア基板15は、樹脂基板14の剛性を高めつつ一対のビルドアップ16間の導通を図るものである。コア基板15は、樹脂基体17と、樹脂基体17を上下方向に貫通して形成されている筒状のスルーホール導体18と、スルーホール導体18に取り囲まれた領域に配された柱状の絶縁体19とを含んでいる。
【0054】
樹脂基体17は、コア基板15の剛性を高めるものである。この樹脂基体17は、例えば樹脂と、この樹脂に被覆された基材および無機絶縁充填材とを含んでいる。
【0055】
樹脂基体17に含まれた樹脂は、樹脂基体17の主要部を形成するものである。この樹脂は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族液晶ポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂またはポリエーテルケトン樹脂等の樹脂材料からなる。
【0056】
樹脂基体17に含まれた基材は、樹脂基体17を高剛性化および低熱膨張化するものである。この基材は、繊維によって構成された織布もしくは不織布または繊維を一方向に配列したものからなる。また、この繊維は、例えばガラス繊維または樹脂繊維等からなる。
【0057】
樹脂基体17に含まれた無機絶縁フィラーは、樹脂基体17を高剛性化および低熱膨張化するものである。この無機絶縁フィラーは、例えば酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウムまたは炭酸カルシウム等の無機絶縁材料からなる複数の粒子により構成されている。
【0058】
スルーホール導体18は、コア基板15の上下の配線層21を電気的に接続するものである。このスルーホール導体18は、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケルまたはクロム等の導電材料からなる。
【0059】
絶縁体19は、後述するビア導体20の支持面を形成するものである。この絶縁体19は、例えばポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂またはビスマレイミドトリアジン樹脂等の樹脂材料からなる。
【0060】
なお、絶縁体19の代わりに、上述のするホール導体と同様の導電材料を用いてスルーホールを充填しても差し支えない。
【0061】
一方、コア基板15の上下には、上述した如く、一対のビルドアップ層16が形成されている。ビルドアップ層16は、厚み方向に沿ったビア孔が形成された絶縁層3と、樹脂基体17上または絶縁層3上に部分的に形成された配線層21と、ビア孔内に形成されたビア導体20とを含んでいる。
【0062】
絶縁層3は、コア基板15側に位置している第2絶縁層5と、第2絶縁層5上に積層されている第1絶縁層4とを含んでいる。なお、第1絶縁層4および第2絶縁層5は、上述した樹脂基板用シート1が備えていたものである。また、樹脂基板用シート1では第1絶縁層4の第1樹脂部8および第2絶縁層5の第2樹脂部13は未硬化であったが、樹脂基板14では、第1樹脂部8および第2樹脂部13は硬化している。
【0063】
第2絶縁層5は、配線層21の側面および上面に接着しつつ、樹脂基体17と絶縁層3とを接着、または積層された絶縁層3同士を接着するものである。第1絶縁層4は、絶縁層3の主要部をなし、厚み方向に沿って離れて配された配線層21同士の絶縁部材として機能するものである。第1絶縁層4は、樹脂材料と比較して低熱膨張率および高剛性であるから、絶縁層3の平面方向への熱膨張率を低減することができる。したがって、樹脂基板14と樹脂基板14上に実装される電子部品(図示せず)との平面方向への熱膨張率の差を低減し、ひいては樹脂基板14の反りを低減することができる。
【0064】
配線層21は、平面方向または厚み方向に沿って互いに離れて配されており、接地用配線、電力供給用配線または信号用配線として機能するものである。この配線層21は、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケルまたはクロム等の導電材料からなる。配線層21の厚みは、例えば3μm以上20μm以下に設定されている。配線層21の熱膨張率は、例えば14ppm/℃以上18ppm/℃以下に設定されている。配線層21のL/S(ライン/スペース)は、例えば3/3μm以上60/60μm以下に設定されている。
【0065】
ビア導体20は、厚み方向に互いに離れて配された配線層21同士を電気的に接続するものであり、コア基板15に向って幅狭となる柱状に形成されている。ビア導体20は、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケルまたはクロムの導電材料からなる。また、ビア導体20は、熱膨張率が例えば14ppm/℃以上18ppm/℃以下に設定されている。
【0066】
本発明の実施形態に係る樹脂基板14の製造方法について、
図9〜
図12を参照しつつ説明する。樹脂基板14の製造方法は、主に準備工程、積層工程、露出工程および配線形成工程を有している。なお、本発明は、以下の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。なお、
図9〜
図12は、本発明の一実施形態に係る樹脂基板用シート1を使用して製造する樹脂基板14の製造方法の一工程を示した断面図である。
【0067】
(1)まず、上記のようにして作製された樹脂基板用シート1を準備する。
【0068】
(2)コア基板15(基板)を準備する。コア基板15の作製には、まず、例えば金属箔上に複数の樹脂層が積層された樹脂基体17を形成する。次いで、例えばドリル加工やレーザー加工等によって樹脂基体17にスルーホールを形成した後、例えば無電解めっき法、電気めっき法、蒸着法、CVD法またはスパッタリング法等により、スルーホールの内壁に筒状のスルーホール導体18を形成する。次いで、スルーホール導体18に取り囲まれた領域に樹脂材料を充填することによって絶縁体19を形成し、導電材料を絶縁体1
9の露出部に被着させた後、従来周知のフォトリソグラフィー技術またはエッチング等により、金属箔をパターニングして配線21を形成する。
【0069】
以上のようにして、コア基板15を準備する。
【0070】
(3)
図9に示すように、樹脂基板用シート1をコア基板15の上下面に積層する。具体的には樹脂基板用シート1の積層は、樹脂基板用シート1の第2絶縁層5がコア基板15に接触するように行なう。
【0071】
(4)第1樹脂部8および第2樹脂部13を熱硬化させる。具体的には、樹脂基板用シート1およびコア基板15を、圧力を印加しながら第1樹脂部8および第2樹脂部13の熱硬化開始温度以上に加熱することによって、樹脂基板用シート1中の未硬化状態の第1樹脂部8および第2樹脂部13を熱硬化させる。樹脂基板用シート1等の圧力は、例えば0.5MPa以上5.0MPa以下、加熱温度は、例えば80℃以上180250℃以下に設定される。
【0072】
(5)
図10に示すように、シート部材2の表面からシート部材2、第1絶縁層4および第2絶縁層5を厚み方向に貫通する貫通穴を形成する。貫通穴の形成は、例えばYAGレーザー装置または炭酸ガスレーザー装置を用いてシート部材2の上面にレーザー光を照射することによって行なう。
【0073】
(6)貫通孔底部に残留する樹脂残渣の除去、いわゆるデスミア処理を行う。デスミア処理は一般的に強アルカリ水溶液を用いて行うが、プラズマ等を用いても差し支えない。なお、強アルカリ性の水溶液としては、例えば過マンガン酸カリウムまたは過マンガン酸ナトリウム等の水溶液である。
【0074】
(7)貫通穴にビア導体20を形成する。ビア導体20は、例えば無電解めっき、蒸着法、CVD法またはスパッタリング法を用いて、貫通穴内に導電材料を埋めることによって形成される。
【0075】
(8)銅箔からなるシート部材2を、
図11に示すように、例えばフォトリソグラフィー技術を用いてエッチング加工することにより、第1絶縁層4上に配線層21を形成する。
【0076】
なお、絶縁層3の表面を粗化する場合には、(8)の後に、シート部材2の一部をエッチングして除去して露出した第1絶縁層4の表層の一部(無機絶縁粒子6の一部)を除去し、絶縁層3の表面を粗化することができる。第1絶縁層4の一部の表面の除去は、例えば無機絶縁粒子6が酸化珪素からなる場合であれば、無機絶縁粒子6を溶かす強アルカリ性の水溶液によって行なう、強アルカリ性の水溶液としては、例えば過マンガン酸カリウムまたは過マンガン酸ナトリウム等の水溶液である。なお、第1絶縁層4の無機絶縁粒子6の一部が除去される一方で、第2絶縁層5は残存させることから、第2絶縁層5は上記水溶液には溶けにくい材料で形成する。なお、このとき、無機絶縁粒子6を複数の材料から形成することによって、粗化の度合いを調整することができる。また、複数の無機絶縁粒子6中に、例えば、酸化アルミニウム等の異なる単一の材料からなる無機絶縁粒子6を混ぜることによっても粗化の度合いを調整することができる。
【0077】
(9)次に、
図12に示すように、絶縁層3を複数層形成すべく、表面が粗化された第1絶縁層4の粗化面、および配線層21の表面に、さらに、樹脂基板用シート1の未硬化の第2絶縁層5を積層し、絶縁層3を複数層形成する。第1絶縁層4の粗化面に、未硬化の第2絶縁層5がアンカー効果により、強固に接合できる。なお、
図9〜12は、理解を
容易にするため、絶縁シート1を拡大して示している。
【0078】
以上のようにして、
図8に示したような、樹脂基板14を作製する。
【0079】
このような樹脂基板14では、上記の特許文献1と比較して、下記のような効果を有する。すなわち、上記の特許文献1では、絶縁層における無機絶縁粒子の充填率をいわゆる最密充填よりも高くすることができるため、無機絶縁粒子を適切に選択することにより、熱膨張係数や熱伝導率といった熱特性、弾性率等の機械的特性、誘電特性や絶縁性等を制御することが可能である。一方で、樹脂の含有率が低下する結果、配線基板とした際の可撓性低下によりクラック等が発生する恐れが増大することや、配線パターンの埋め込み性の悪化、さらには、低熱膨張と高剛性の両立による基板反り低減を目的として無機絶縁粒子に溶融シリカを選択した場合、レーザー加工後の樹脂残渣除去工程(いわゆるデスミア工程)にて、該工程にて一般的に使用される強アルカリ処理の際に第1無機絶縁粒子が非常に微細であるがゆえに短時間で溶解し、絶縁層が崩壊するといった課題がある。
【0080】
これに対して、上記形態の樹脂基板14では、複数の第1粒子6aが粒子形状を保持したままネック6bで結合しており、第1粒子6a同士を強固に連結できるとともに、多重点粒界7bに第1樹脂部8が配されているため、第1絶縁層4中の樹脂量を従来よりも増加でき、第1樹脂部8による第1粒子6a同士の連結力を向上できる。
【0081】
また、特許文献1に比較して、第1粒子6aの絶縁層における充填率を過度に高くすることなく、逆に言えば樹脂の含有率を過度に低下させることなく、各種特性の制御、特に機械的特性の向上を可能とすることができるため、クラック等の発生やパターン埋め込み性の劣化、デスミア工程における第1絶縁層4の崩壊等を防止することができる。
【0082】
実装構造体は、樹脂基板14の上面に電子部品を配置し、配線層21にバンプや半田等の接合部材を介して電子部品を実装することによって得られる。
【0083】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良、組合せ等が可能である。
【0084】
上述した本発明の実施形態は、絶縁層3を2層積層した構成を例に説明したが、1層でも良く、3層以上でも良い。
【0085】
また、上述した本発明の実施形態は、樹脂基板用シート1を用いてビルドアップ多層配線基板を製造した構成を例に説明したが、樹脂基板用シート1を用いて製造する樹脂基板は他のものでも構わない。他の樹脂基板としては、例えばインターポーザー基板、コアレス基板または単層基板が挙げられる。ここで、インターポーザー基板とは、1層の絶縁層3と、絶縁層3を貫通する貫通導体と、絶縁層3上に配され、貫通導体に電気的に接続する配線21とを備えている樹脂基板である。また、コアレス基板とは、絶縁層3と、絶縁層3を貫通するビア導体20と、絶縁層3上に配され、ビア導体20に電気的に接続する配線21とを備え、絶縁層3と配線21とが交互に複数積層されてなるものであって、コア基板15を有していない樹脂基板である。
【0086】
さらに、上記形態では、第1絶縁層4に第1粒子6aを含む場合について説明したが、第1粒子6a以外の無機絶縁粒子を含有していても良い。
【0087】
また、シート部材2上に第1粒子6aを配置して樹脂基板用シート1を形成したが、樹脂基板用シート1上に樹脂からなるプライマー層を形成し、このプライマー層上に第1粒子6aを配置して樹脂基板用シート1を形成しても良い。