(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非晶質シリカを主成分とする母粒子の表面に、結晶性セリアを主成分とする子粒子が結合していて、下記[1]から[4]の特徴を備える平均粒子径50〜350nmのシリカ系複合微粒子を含む、シリカ系複合微粒子分散液。
[1]前記シリカ系複合微粒子は、シリカとセリアとの質量比が100:11〜316であること。
[2]前記シリカ系複合微粒子は、X線回折に供すると、セリアの結晶相のみが検出されること。
[3]前記シリカ系複合微粒子は、X線回折に供すると、前記結晶性セリアの(111)面の結晶子径が10〜25nmであること。
[4]前記シリカ系複合微粒子は、画像解析法で測定された短径/長径比が0.8以下である粒子の個数割合が50%以上であること。
前記シリカ系複合微粒子は、Na、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn及びZrの各元素の含有率がそれぞれ100ppm以下であり、U、Th、Cl、NO3、SO4およびFの含有率がそれぞれ5ppm以下であることを特徴とする請求項1記載のシリカ系複合微粒子分散液。
前記工程1のシリカゾルとして、Na、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn及びZrの各元素の含有率がそれぞれ100ppm以下であり、U、Th、Cl、NO3、SO4およびFの含有率がそれぞれ5ppm以下であるシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルを使用することを特徴とする請求項4記載のシリカ系複合微粒子分散液の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明について説明する。
本発明は、非晶質シリカを主成分とする母粒子の表面に、結晶性セリアを主成分とする子粒子が結合していて、下記[1]から[4]の特徴を備える平均粒子径50〜350nmのシリカ系複合微粒子を含む、シリカ系複合微粒子分散液である。
[1]前記シリカ系複合微粒子は、シリカとセリアとの質量比が100:11〜316であること。
[2]前記シリカ系複合微粒子は、X線回折に供すると、セリアの結晶相のみが検出されること。
[3]前記シリカ系複合微粒子は、X線回折に供すると、前記結晶性セリアの(111)面の結晶子径が10〜25nmであること。
[4]前記シリカ系複合微粒子は、画像解析法で測定された短径/長径比が0.8以下である粒子の個数割合が50%以上であること。
このようなシリカ系複合微粒子分散液を、以下では「本発明の分散液」ともいう。
また、本発明の分散液が含むシリカ系複合微粒子を、以下では「本発明の複合微粒子」ともいう。
【0016】
本発明のシリカ系複合微粒子分散液は、該シリカ系複合微粒子のNa、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn及びZrの各元素の含有率がそれぞれ100ppm以下であり、U、Th、Cl、NO
3、SO
4およびFの含有率がそれぞれ5ppm以下であることが好ましい。
更に、本発明は、本発明のシリカ系複合微粒子分散液を含む研磨用スラリーである。
【0017】
また、本発明は、下記の工程1及び工程2を備え、本発明の分散液が得られる、シリカ系複合微粒子分散液の製造方法である。
工程1:シリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルを、撹拌条件下、温度5〜98℃、pH範囲7.0〜9.0に維持しながら、セリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、前駆体粒子を含む前駆体粒子分散液を得る工程。
工程2:前記前駆体粒子分散液
のpHを6.0〜7.0とした後、これを乾燥させ、400〜1,200℃で焼成し、その後、乾式による解砕・粉砕及び溶媒分散を行うか、又は、湿式による解砕・粉砕を行うことで、本発明の分散液を得る工程。
このようなシリカ系複合微粒子分散液の製造方法を、以下では「本発明の製造方法」ともいう。
なお、本発明の製造方法における前記工程1のシリカゾルとして、Na、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn及びZrの各元素の含有率がそれぞれ100ppm以下であり、U、Th、Cl、NO
3、SO
4およびFの含有率がそれぞれ5ppm以下であるシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルを使用することが好ましい。
【0018】
本発明の分散液は、本発明の製造方法によって製造することが好ましい。
【0019】
以下において、単に「本発明」と記した場合、本発明の分散液、本発明の複合微粒子及び本発明の製造方法のいずれをも意味するものとする。
【0020】
本発明の複合微粒子について説明する。
【0021】
<母粒子>
本発明の複合微粒子において、母粒子は非晶質シリカを主成分とする。
【0022】
母粒子を乳鉢を用いて粉砕し、例えば従来公知のX線回折装置(例えば、理学電気株式会社製、RINT1400)によってX線回折パターンを得ると、cristobaliteのような結晶性シリカのピークは現れない。すなわち、母粒子に含まれるシリカは非晶質であることを確認できる。なお、前記母粒子の粉砕は、通常、母粒子が溶媒に分散しているシリカゾルを乾燥させ、粉砕処理に適用する。
【0023】
また「主成分」とは、含有率が90質量%以上であることを意味する。すなわち、母粒子において、非晶質シリカの含有率は90質量%以上である。
この含有率は95質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましく、99.5質量%以上であることが好ましく、100質量%であることがさらに好ましい。以下に示す本発明の説明において「主成分」は、このような意味で用いるものとする。
【0024】
母粒子は非晶質シリカを主成分とするが、本発明の効果を妨げない範囲で、結晶性シリカや不純物元素を含んでいても構わない。なお、母粒子におけるNa、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn、及びZrの各元素の含有率は、それぞれ100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、25ppm以下であることが更に好ましく、5ppm以下であることがいっそう好ましい。
【0025】
また、母粒子におけるU、Th、Cl、NO
3、SO
4およびFの各元素の含有率はそれぞれ5ppm以下であることが好ましい。
【0026】
母粒子における上記の各元素の含有率の測定方法については、実施例にて記したとおりである。
【0027】
後述のとおり本発明に係るシリカ系複合微粒子の平均粒子径は、50〜350nmの範囲にあり、その母粒子の平均粒子径は必然的に350nmより小さい値となる。なお、本願においては、後述の工程1で使用するシリカゾルの平均粒子径をもって母粒子の平均粒子径とする。この母粒子の平均粒子径が、30〜200nmの範囲のシリカ系複合微粒子が好適に使用される。
母粒子の平均粒子径が上記のような範囲にあると、本発明の分散液を研磨剤として用いた場合にスクラッチが少なくなる。母粒子の平均粒子径が小さすぎると研磨レートが不足する。平均粒子径が大きすぎると、スクラッチが生じ、基板の面精度が悪化する傾向がある。
【0028】
母粒子の平均粒子径は、公知の動的光散乱法粒子径測定装置(例えば、日機装株式会社製、マイクロトラックUPA装置や大塚電子社製PAR−III)を用いて測定したものである。
【0029】
母粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、俵状、短繊維状、四面体状(三角錐型)、六面体状、八面体状、板状、不定形の他に表面に疣状突起を有するものや、金平糖状のものであってもよく、また、多孔質状のものであってもよいが、球状のものが好ましい。球状とは、母粒子の短径/長径比が0.8以下の粒子個数比が10%以下のものである。母粒子は、短径/長径比が0.8以下の粒子個数比が5%以下のものであることがより好ましく、0%のものであることがさらに好ましい。
短径/長径比は、後述する本発明の複合微粒子の短径/長径比の測定方法(画像解析法)と同様の方法で測定する。
【0030】
<子粒子>
本発明の複合微粒子では、上記のような母粒子の表面に子粒子が結合している。
【0031】
本発明の複合微粒子において、子粒子は結晶性セリアを主成分とする。
【0032】
本発明の複合微粒子を、乳鉢を用いて粉砕し、例えば従来公知のX線回折装置(例えば、理学電気株式会社製、RINT1400)によってX線回折パターンを得ると、セリアの結晶相のみが検出される。
セリアの結晶相としては、Cerianiteが挙げられる。なお、前記複合微粒子の粉砕は、通常、複合微粒子が溶媒に分散している複合微粒子分散液を乾燥させ、粉砕処理に適用する。
【0033】
子粒子は結晶性セリア(結晶性Ce酸化物)を主成分とし、その他のもの、例えばセリウム以外の元素を含んでもよい。
ただし、上記のように、本発明の複合微粒子をX線回折に供するとセリアの結晶相のみが検出される。すなわち、セリア以外の結晶相を含んでいたとしても、その含有率は少ないため、X線回折による検出範囲外となる。
なお、「主成分」の定義は前述の通りである。
【0034】
子粒子について、前記シリカ系複合微粒子をX線回折に供して測定される、結晶性セリアの(111)面の結晶子径は10〜25nmであり、14〜18nmであることが好ましく、15〜16nmであることがより好ましい。
【0035】
結晶性セリアの(111)面の結晶子径は、次に説明する方法によって得られる値を意味するものとする。
初めに、本発明の複合微粒子を、乳鉢を用いて粉砕し、例えば従来公知のX線回折装置(例えば、理学電気(株)製、RINT1400)によってX線回折パターンを得る。そして、得られたX線回折パターンにおける2θ=28度近傍の(111)面のピークの半価幅を測定し、下記のScherrerの式により、結晶子径を求める。
D=Kλ/βcosθ
D:結晶子径(オングストローム)
K:Scherrer定数
λ:X線波長(1.7889オングストローム、Cuランプ)
β:半価幅(rad)
θ:反射角
【0036】
子粒子の大きさは、母粒子より小さく、平均粒子径15〜25nmであることが好ましく、18〜23nmであることがより好ましい。
子粒子の大きさは、透過型電子顕微鏡を用いて30万倍に拡大した写真投影図(例えば後述する
図1(C))において、各粒子の平均粒子径を得た後、任意の50個の粒子の平均粒子径を単純平均して得た値を意味する。
【0037】
<本発明の複合微粒子>
本発明の複合微粒子は、上記のような母粒子の表面に、上記のような子粒子が結合したものである。
【0038】
本発明の複合微粒子において、シリカとセリアの質量比は100:11〜316であり、100:30〜150であることが好ましく、100:60〜120であることがより好ましい。シリカに対するセリアの量が少なすぎると、母粒子同士が結合し、粗大粒子が発生する場合がある。この場合に本発明の分散液を含む研磨剤(研磨スラリー)は、研磨基材の表面に欠陥(スクラッチの増加などの面精度の低下)を発生させる可能性がある。また、シリカに対するセリアの量が多すぎても、コスト的に高価になるばかりでなく、資源リスクが増大する。さらに、粒子同士の融着が進み、粗大化したり、あるいはセリア粒子が遊離しやすい。その結果、基板の表面粗度が上昇(Raの悪化)したり、スクラッチが増加する、更に遊離したセリアが基板に残留する、研磨装置の廃液配管等への付着といったトラブルを起こす原因ともなりやすい。
【0039】
本発明の複合微粒子では、前記母粒子と前記子粒子とが結合している。具体的には、本発明の複合微粒子は、シリカ微粒子(母粒子)の表面に、粒子状の結晶性セリア(子粒子)が焼結等して結合したものであり、凹凸の表面形状を有している。
すなわち、母粒子と子粒子との少なくとも一方(好ましくは双方)が、それらの接点において溶着し、好ましくは双方が固着することで強固に結合している。
【0040】
本発明の複合微粒子は粒子連結型であることが好ましい。粒子連結型とは、2個以上の母粒子同士が各々一部において結合しているものを意味する。母粒子同士は少なくとも一方(好ましくは双方)がそれらの接点において溶着し、好ましくは双方が固着することで強固に結合しているものと考えられる。ここで、母粒子同士が結合した後に、その表面に子粒子が結合した場合の他、母粒子の表面に子粒子が結合した後、他のものに結合した場合であっても、粒子連結型とする。
連結型であると基板との接触面積を多くとる事が出来るため、研磨エネルギーを効率良く基板へ伝えることが出来るため研磨速度が高い。また、粒子当たりの研磨圧力が単粒子よりも低くなるためスクラッチも少ない。
【0041】
本発明の複合微粒子において、画像解析法で測定された短径/長径比が0.80以下(好ましくは0.67以下)である粒子の個数割合は50%以上である。
ここで、画像解析法で測定された短径/長径比が0.80以下である粒子は、原則的に粒子結合型のものと考えられる。
【0042】
画像解析法による短径/長径比の測定方法を説明する。透過型電子顕微鏡により、本発明の複合微粒子を倍率25万倍(ないしは50万倍)で写真撮影して得られる写真投影図において、粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とする。これより、短径/長径比(DS/DL)を求める。そして、写真投影図で観察される任意の50個の粒子において、短径/長径比が0.80以下である粒子の個数割合(%)を求める。
【0043】
本発明の複合微粒子では、短径/長径比が0.80以下(好ましくは0.67以下)である粒子の個数割合が50%以上であるが、55%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましい。この範囲の複合微粒子は、研磨材として使用した際に、研磨速度が高くなり好ましい。
【0044】
本発明の複合微粒子は前述の粒子連結型であることがより好ましいが、その他の形状のもの、例えば球状粒子を含んでいてもよい。
【0045】
本発明の複合微粒子は、比表面積が4〜100m
2/gであることが好ましく、30〜60m
2/gであることがより好ましい。
【0046】
ここで、比表面積(BET比表面積)の測定方法について説明する。
まず、乾燥させた試料(0.2g)を測定セルに入れ、窒素ガス気流中、250℃で40分間脱ガス処理を行い、その上で試料を窒素30体積%とヘリウム70体積%の混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させる。次に、上記混合ガスを流しながら試料の温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、試料の比表面積を測定する。
このようなBET比表面積測定法(窒素吸着法)は、例えば従来公知の表面積測定装置を用いて行うことができる。
本発明において比表面積は、特に断りがない限り、このような方法で測定して得た値を意味するものとする。
【0047】
本発明の複合微粒子の平均粒子径は50〜350nmであることが好ましく、170〜260nmであることがより好ましい。複合微粒子の平均粒子径が50〜350nmの範囲にある場合、研磨材として適用した場合に、研磨速度が高くなり好ましい。
【0048】
本発明の複合微粒子の平均粒子径は、公知の動的光散乱法粒子径測定装置(例えば、日機装株式会社製、マイクロトラックUPA装置や大塚電子社製PAR−III)を用いて、測定したものである。
【0049】
本発明に係る複合微粒子は、非晶質シリカを主成分とする母粒子と、結晶性セリアからなる子粒子から構成されるが、本発明の効果を妨げない範囲で、例えば、結晶性シリカや不純物元素を含んでいても構わない。なお、本発明の複合微粒子において、Na、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn及びZrの各元素の含有率は、それぞれ100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、25ppm以下であることが更に好ましく、5ppm以下であることがいっそう好ましい。
【0050】
また、本発明の複合微粒子におけるU、Th、Cl、NO
3、SO
4およびFの各元素の含有率は、それぞれ5ppm以下であることが好ましい。
本発明の複合微粒子分散液は、Na、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn及びZrの各元素の含有率がそれぞれ100ppm以下であり、U、Th、Cl、NO
3、SO
4およびFの含有率がそれぞれ5ppm以下であることを特徴とする複合酸化物微粒子分散液である場合と、必ずしもこのような条件を満たさない複合酸化物微粒子分散液である場合がある。このうち、前者は、高純度な研磨剤の適用が求められる用途、例えば、半導体基板、配線基板などの半導体デバイスなどの研磨用途において研磨剤として好適に使用することができる。また、後者は、高純度な研磨剤の適用が求められない用途、例えば、ガラス研磨などに適用される。(前者は、高純度な研磨剤の適用が求められない用途にも当然に適用可能である。)
【0051】
本発明の複合微粒子について走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察すると、母粒子(シリカ粒子)表面に子粒子(セリア結晶粒子)が結合している様子を確認することができるが、母粒子に子粒子が結合してなる粒子を覆うように、全体に薄い被膜が形成されており、さらにEDS分析を行うことで、この被膜がシリカ成分からなることを確認した。
このシリカ被膜は、子粒子(セリア結晶粒子)と母粒子(シリカ粒子)の結合(力)を助長すると考えられる。よって、例えば、本発明の分散液を研磨剤(研磨スラリー)として用いた場合、研磨中に母粒子(シリカ粒子)の表面から子粒子(セリア結晶粒子)が脱落するのを防ぐ効果があるものと考えられる。
この様な構造(現象)により、本発明の分散液を研磨剤として用いた場合、研磨速度が高く、面精度やスクラッチの悪化が少ないと考えられる。また、焼成されているため、粒子表面の−OH基が少なく、その影響によって、研磨基材への粒子残りも少ないと考えられる。例えば、被研磨基材がシリカ系材料の場合、被研磨基材表面にもシラノール基(SiOH)が存在するが、研磨粒子(シリカ)の表面にもSiOHが存在すると、両シラノール基が反応して研磨粒子が被研磨基材表面へ残留する場合があると考えられる。また遊離セリアは正の電荷をもつため基板へ付着しやすい。そのため本発明のようにセリア粒子表面へのシリカ被覆はセリア粒子に負の電荷を付与するため、基板への付着を低減化する効果もある。
【0052】
<本発明の分散液>
本発明の分散液について説明する。
本発明の分散液は、上記のような本発明の複合微粒子が分散溶媒に分散しているものである。
【0053】
本発明の分散液は分散溶媒として、水及び/又は有機溶媒を含む。この分散溶媒として、例えば純水、超純水、イオン交換水のような水を用いることが好ましい。さらに、本発明の分散液は、添加剤として、研磨促進剤、界面活性剤、pH調整剤及びpH緩衝剤からなる群より選ばれる1種以上を含んでいてもよい。
【0054】
また、本発明の分散液を備える分散溶媒として、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルイソカルビノールなどのアルコール類;アセトン、2−ブタノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、3,4−ジヒドロ−2H−ピランなどのエーテル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、エチレンカーボネートなどのエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、1,2−ジクロルエタン、ジクロロプロパン、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類などの有機溶媒を用いることができる。これらを水と混合して用いてもよい。
【0055】
本発明の分散液に含まれるシリカ系複合微粒子の濃度(固形分濃度)は0.3〜50質量%の範囲にあることが好ましい。
【0056】
本発明の分散液の製造方法は特に限定されないが、次に説明する本発明の製造方法によって製造することが好ましい。
【0057】
<本発明の製造方法>
発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、以下に説明する工程1及び工程2を備える。
【0059】
<工程1>
工程1では原料としてシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルを使用する。
使用するシリカゾルとしては、公知のシリカゾルを適用可能であり、例えば、水硝子を原料として調製したシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルやアルコキシシランを原料として合成したシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルなどを挙げることができる。
【0060】
一般に水硝子を原料として調製したシリカ微粒子は、原料水硝子に由来するNa、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn、Zr、U及びTh、Cl、NO
3、SO
4およびFの各元素又はイオン種を合計で数千ppm程度含有する。このようなシリカ微粒子を用いる場合、シリカ微粒子を溶媒に分散してなるシリカゾルとした後、イオン交換処理を行って前記各元素又はイオン種の含有率を下げることは可能であるが、その場合でも数百ppm程度の前記各元素又はイオン種が残留する。そのため水硝子を原料としたシリカ粒子を用いる場合は、酸処理等で不純分を低減化させることもできる。
他方、アルコキシシランを原料として合成したシリカ微粒子は、通常、Na、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn及びZrの各元素の含有率は100ppm以下であり、U、Th、Cl、NO
3、SO
4およびFの各元素の含有率は5ppm以下であるので、特に半導体デバイスの製造分野に適用する研磨粒子としては、アルコキシシランの加水分解により製造したシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルを用いることが好ましい。
本発明に係るシリカ系複合微粒子は、前記各元素又はイオン種の含有量が極めて低い水準にあるため、半導体デバイスなどの研磨用途に好適に使用することができる。
なお、工程1で使用するシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルとしては、平均粒子径が350nmより小さいものが使用される。通常は、平均粒子径30〜200nmの範囲のシリカゾルが好適に使用される。
【0061】
工程1では、上記のようなシリカ微粒子が溶媒に分散したシリカゾルを、撹拌条件下、温度5〜98℃(好ましくは50〜98℃)、pH範囲7.0〜9.0に維持しながらセリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、前駆体粒子を含む前駆体粒子分散液を得る。
【0062】
前記シリカゾルにおける分散媒は水を含むことが好ましく、水ゾルを使用することが好ましい。
【0063】
前記シリカゾルにおける固形分濃度は、SiO
2換算基準で1〜40質量%であることが好ましい。この固形分濃度が低すぎると、製造工程でのシリカ濃度が低くなり生産性が悪くなり得る。
【0064】
また、陽イオン交換樹脂又は陰イオン交換樹脂、あるいは鉱酸、有機酸等で不純物を抽出し、限外ろ過膜などを用いて、必要に応じて、シリカゾルの脱イオン処理を行うことができる。脱イオン処理により不純物イオンなどを除去したシリカゾルは表面にケイ素を含む水酸化物を形成させやすいのでより好ましい。
【0065】
工程1では、上記のようなシリカゾルに、撹拌条件下、温度5〜98℃、pH範囲7.0〜9.0に維持しながら、セリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加する。
セリウムの金属塩として、セリウムの塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、金属アルコキシドなどを用いることができる。具体的には、硝酸第一セリウム、炭酸セリウム、硫酸第一セリウム、塩化第一セリウムなどを挙げることができる。なかでも、硝酸第一セリウムが好ましい。中和と同時に過飽和となった溶液から、結晶性セリウム酸化物が生成し、それらは速やかにシリカ微粒子に凝集沈着機構で付着するので結合性酸化物形成の効率が高く好ましい。
【0066】
シリカゾルに対するセリウムの金属塩の添加量は、得られる本発明の複合微粒子におけるシリカとセリアの比が、前述のように、100:11〜316の範囲となる量とする。
【0067】
シリカゾルにセリウムの金属塩を添加した後、撹拌する際の温度は5〜98℃であるが、50〜95℃であることが好ましい。この温度が低すぎると水酸化物との混合あるいは低酸化物を形成し、結晶化させる反応が著しく遅くなるので好ましくない。逆に、この温度が高すぎると反応器壁面にスケールなどが生じやすくなり好ましくない。
【0068】
また、撹拌する際の時間は0.5〜24時間であることが好ましく、0.5〜18時間であることがより好ましい。この時間が短すぎると結晶性の酸化セリウムが十分に形成できないため好ましくない。逆に、この時間が長すぎても結晶性の酸化セリウムの形成はそれ以上反応が進まず不経済となる。
【0069】
また、シリカゾルにセリウムの金属塩を添加し、撹拌する際のシリカゾルのpH範囲は7.0〜9.0とするが、7.6〜7.9とすることが好ましい。この際、アルカリ等を添加しpH調整を行うことが好ましい。このようなアルカリの例としては、公知のアルカリを使用することができる。具体的には、アンモニア水溶液、水酸化アルカリ、アルカリ土類金属、アミン類の水溶液などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
このような工程1によって、本発明の複合微粒子の前駆体である粒子(前駆体粒子)を含む分散液(前駆体粒子分散液)が得られる。
【0071】
工程1で得られた前駆体粒子分散液を、工程2に供する前に、純水やイオン交換水などを用いて、さらに希釈あるいは濃縮して、次の工程2に供してもよい。
【0072】
なお、前駆体粒子分散液における固形分濃度は1〜27質量%であることが好ましい。
【0073】
また、所望により、前駆体粒子分散液を、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、限外ろ過膜、イオン交換膜などを用いて脱イオン処理してもよい。
【0074】
<工程2>
工程2では、前駆体粒子分散液
のpHを6.0〜7.0とした後、これを乾燥させた後、400〜1,200℃で焼成する。
【0075】
乾燥する方法は特に限定されない。従来公知の乾燥機を用いて乾燥させることができる。具体的には、箱型乾燥機、バンド乾燥機、スプレードライアー等を使用することができる。
なお
、さらに乾燥前の前駆体粒子分散液のpHを6.0〜7.0とす
る。乾燥前の前駆体粒子分散液のpHを6.0〜7.0とした場合、表面活性を抑制できるからである。
【0076】
乾燥後、焼成する温度は400〜1200℃であるが、800〜1100℃であることが好ましく、1000〜1090℃であることがより好ましい。このような温度範囲において焼成すると、セリアの結晶化が十分に進行し、また、母粒子と子粒子とが強固に結合する。この温度が高すぎると、セリアの結晶が異常成長したり、母粒子を構成する非晶質シリカが結晶化したり、セリア同士の融着が進む可能性がある。
【0077】
工程2では、焼成して得られたシリカ系複合微粒子について乾式による解砕・粉砕及び溶媒分散を行うか、又は、湿式による解砕・粉砕を行うことで、シリカ系複合微粒子分散液を得る。
乾式の解砕・粉砕装置としては従来公知の装置を使用することができるが、例えば、アトライター、ボールミル、振動ミル、振動ボールミル等を挙げることができる。湿式の解砕・粉砕装置としても従来公知の装置を使用することができるが、例えば、バスケットミル等のバッチ式ビーズミル、横型・縦型・アニュラー型の連続式のビーズミル、サンドグラインダーミル、ボールミル等の湿式媒体攪拌式ミル(湿式解砕機)が挙げられる。湿式媒体攪拌ミルに用いるビーズとしては、例えば、ガラス、アルミナ、ジルコニア、スチール、フリント石等を原料としたビーズを挙げることができる。
【0078】
このような本発明の製造方法によって、本発明の分散液を得ることができる。
【0079】
<研磨用スラリー>
本発明の分散液を含む液体は、研磨スラリー(以下では「本発明の研磨用スラリー」ともいう)として好ましく用いることができる。
【0080】
本発明の研磨用スラリーは半導体基板などを研磨する際の研磨速度が高く、また研磨時に研磨面のキズ(スクラッチ)が少ないなどの効果に優れている。
【0081】
本発明の研磨用スラリーは分散溶媒として、水及び/又は有機溶媒を含む。この分散溶媒として、例えば純水、超純水、イオン交換水のような水を用いることが好ましい。さらに、本発明の研磨用スラリーは、添加剤として、研磨促進剤、界面活性剤、複素環化合物、pH調整剤及びpH緩衝剤からなる群より選ばれる1種以上を含んでいてもよい。
【0082】
<研磨促進剤>
本発明に係る研磨用スラリーには、被研磨材の種類によっても異なるが、必要に応じて従来公知の研磨促進剤を使用することができる。この様な例としては、過酸化水素、過酢酸、過酸化尿素などおよびこれらの混合物を挙げることができる。このような過酸化水素等の研磨促進剤を含む研磨剤組成物を用いると、被研磨材が金属の場合には効果的に研磨速度を向上させることができる。
【0083】
研磨促進剤の別の例としては、硫酸、硝酸、リン酸、シュウ酸、フッ酸等の無機酸、および酢酸などの有機酸、あるいはこれら酸のアンモニウム塩、アミン塩およびこれらの混合物などを挙げることができる。これらの研磨促進剤を含む研磨用組成物の場合、複合成分からなる被研磨材を研磨する際に、被研磨材の特定の成分についての研磨速度を促進することにより、最終的に平坦な研磨面を得ることができる。
【0084】
本発明に係る研磨用スラリーが研磨促進剤を含有する場合、その含有量としては、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0085】
<界面活性剤及び/又は親水性化合物>
研磨用スラリーの分散性や安定性を向上させるためにカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系の界面活性剤または親水性化合物を添加することができる。界面活性剤と親水性化合物は、いずれも被研磨面への接触角を低下させる作用を有し、均一な研磨を促す作用を有する。界面活性剤及び/又は親水性化合物としては、例えば、以下の群から選ばれるものを使用することができる。
【0086】
陰イオン界面活性剤として、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩が挙げられ、カルボン酸塩として、石鹸、N−アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド;スルホン酸塩として、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼン及びアルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩;硫酸エステル塩として、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩;リン酸エステル塩として、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテルリン酸塩を挙げることができる。
【0087】
陽イオン界面活性剤として、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩;両性界面活性剤として、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、アルキルアミンオキサイドを挙げることができる。
【0088】
非イオン界面活性剤として、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型が挙げられ、エーテル型として、ポリオキシエチレンアルキルおよびアルキルフェニルエーテル、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが挙げられ、エーテルエステル型として、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、エステル型として、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、ショ糖エステル、含窒素型として、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミド等が例示される。その他に、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0089】
界面活性剤としては陰イオン界面活性剤もしくはノ非イオン系界面活性剤が好ましく、また、塩としては、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等が挙げられ、特にアンモニウム塩およびカリウム塩が好ましい。
【0090】
さらに、その他の界面活性剤、親水性化合物等としては、グリセリンエステル、ソルビタンエステルおよびアラニンエチルエステル等のエステル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリエチレングリコール、アルキルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリエチレングリコール、アルケニルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルケニルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリプロピレングリコール、アルキルポリプロピレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリプロピレングリコール等のエーテル;アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、カードラン及びプルラン等の多糖類;グリシンアンモニウム塩及びグリシンナトリウム塩等のアミノ酸塩;ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸アンモニウム塩、ポリメタクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリフマル酸、ポリ(p−スチレンカルボン酸)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アミノポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリアミド酸アンモニウム塩、ポリアミド酸ナトリウム塩及びポリグリオキシル酸等のポリカルボン酸及びその塩;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリアクロレイン等のビニル系ポリマ;メチルタウリン酸アンモニウム塩、メチルタウリン酸ナトリウム塩、硫酸メチルナトリウム塩、硫酸エチルアンモニウム塩、硫酸ブチルアンモニウム塩、ビニルスルホン酸ナトリウム塩、1−アリルスルホン酸ナトリウム塩、2−アリルスルホン酸ナトリウム塩、メトキシメチルスルホン酸ナトリウム塩、エトキシメチルスルホン酸アンモニウム塩、3−エトキシプロピルスルホン酸ナトリウム塩等のスルホン酸及びその塩;プロピオンアミド、アクリルアミド、メチル尿素、ニコチンアミド、コハク酸アミド及びスルファニルアミド等のアミド等を挙げることができる。
【0091】
なお、適用する被研磨基材がガラス基板等である場合は何れの界面活性剤であっても好適に使用できるが、半導体集積回路用シリコン基板などの場合であって、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはハロゲン化物等による汚染の影響を嫌う場合にあっては、酸もしくはそのアンモニウム塩系の界面活性剤を使用することが望ましい。
【0092】
本発明に係る研磨用スラリーが界面活性剤及び/又は親水性化合物を含有する場合、その含有量は、総量として、研磨用スラリーの1L中、0.001〜10gとすることが好ましく、0.01〜5gとすることがより好ましく0.1〜3gとすることが特に好ましい。
【0093】
界面活性剤及び/又は親水性化合物の含有量は、充分な効果を得る上で、研磨用スラリーの1L中、0.001g以上が好ましく、研磨速度低下防止の点から10g以下が好ましい。
【0094】
界面活性剤または親水性化合物は1種のみでもよいし、2種以上を使用してもよく、異なる種類のものを併用することもできる。
【0095】
<複素環化合物>
本発明の研磨用スラリーについては、被研磨基材に金属が含まれる場合に、金属に不動態層または溶解抑制層を形成させて、被研磨基材の侵食を抑制する目的で、複素環化合物を含有させても構わない。ここで、「複素環化合物」とはヘテロ原子を1個以上含んだ複素環を有する化合物である。ヘテロ原子とは、炭素原子、又は水素原子以外の原子を意味する。複素環とはヘテロ原子を少なくとも一つ持つ環状化合物を意味する。ヘテロ原子は複素環の環系の構成部分を形成する原子のみを意味し、環系に対して外部に位置していたり、少なくとも一つの非共役単結合により環系から分離していたり、環系のさらなる置換基の一部分であるような原子は意味しない。ヘテロ原子として好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。複素環化合物の例として、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、テトラゾールなどを用いることができる。より具体的には、1,2,3,4−テトラゾール、5−アミノ−1,2,3,4−テトラゾール、5−メチル−1,2,3,4−テトラゾール、1,2,3−トリアゾール、4−アミノ−1,2,3−トリアゾール、4,5−ジアミノ−1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
本発明に係る研磨用スラリーに複素環化合物を配合する場合の含有量については、0.001〜1.0質量%であることが好ましく、0.001〜0.7質量%であることがより好ましく、0.002〜0.4質量%であることがさらに好ましい。
【0097】
<pH調整剤>
上記各添加剤の効果を高めるためなどに必要に応じて酸または塩基を添加して研磨用組成物のpHを調節することができる。
【0098】
研磨用スラリーをpH7以上に調整するときは、pH調整剤として、アルカリ性のものを使用する。望ましくは、水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸アンモニウム、エチルアミン、メチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアミンなどのアミンが使用される。
【0099】
研磨用スラリーをpH7未満に調整するときは、pH調整剤として、酸性のものが使用される。例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリセリン酸などのヒドロキシ酸類が使用される。
【0100】
<pH緩衝剤>
研磨用スラリーのpH値を一定に保持するために、pH緩衝剤を使用しても構わない。pH緩衝剤としては、例えば、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、4ホウ酸アンモ四水和水などのリン酸塩及びホウ酸塩または有機酸などを使用することができる。
【0101】
また、本発明の研磨用スラリーの分散溶媒として、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルイソカルビノールなどのアルコール類;アセトン、2−ブタノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、3,4−ジヒドロ−2H−ピランなどのエーテル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、エチレンカーボネートなどのエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、1,2−ジクロルエタン、ジクロロプロパン、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類などの有機溶媒を用いることができる。これらを水と混合して用いてもよい。
【0102】
本発明の研磨用スラリーに含まれる固形分濃度は0.3〜50質量%の範囲にあることが好ましい。この固形分濃度が低すぎると研磨速度が低下する可能性がある。逆に固形分濃度が高すぎても研磨速度はそれ以上向上する場合は少ないので、不経済となり得る。
【実施例】
【0103】
以下、本発明について実施例に基づき説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0104】
初めに、実施例及び比較例における各測定方法及び試験方法の詳細について説明する。
各実施例及び比較例について、以下の各測定結果及び試験結果を第1表に記す。
【0105】
[Na等の含有率の測定]
[母粒子]
実施例及び比較例における母粒子のSiO
2重量は、それぞれシリカ系複合微粒子分散液の製造工程で投入するシリカゾルに相当するシリカゾルを150℃で1時間乾燥させた後に秤量して求めた。なお、実施例5及び比較例3の母粒子においては、A液に相当するシリカゾルのSiO
2重量を、1000℃灼熱減量を行って秤量により求めた。
次に、全ての実施例及び比較例の母粒子におけるNa、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn、Zr、U及びThの含有率を次の方法で測定した。それぞれのシリカゾルサンプル約10g(固形分20質量%)を白金皿に採取し、弗化水素酸20mlと硝酸5mlを加えて、サンドバス上で加熱して乾固させた。乾固物に硝酸2mlを加えて溶解させ、100mlのメスフラスコに注入し、水を加えて100mlとした。この溶液でNa、Kについては原子吸光分光分析装置(日立製作所社製、Z−2310)で測定した。Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、Zn、Zr、U及びThについてICPプラズマ発光分析装置(SII製SPS5520)にて測定した。
各陰イオン種の含有率は、以下の方法によって測定した。
<Cl>
シリカ微粒子(母粒子)を含有するシリカゾルからなる試料20g(固形分20質量%)に水50ml、酢酸5ml、0.001モル塩化ナトリウム溶液4mlを加えて0.002モル硝酸銀溶液で電位差滴定法(京都電子製:電位差滴定装置AT−610)で分析を行った。
ブランクとして試料を除いて同様の処理をして、値を差し引いて測定値とした。
<NO
3、SO
4、F>
シリカ微粒子(母粒子)を含有するシリカゾルからなる試料5g(固形分20質量%)を水で希釈して100mlにおさめ、遠心分離機(日立製 HIMAC CT06E)にて4000rpmで20分遠心分離して、上澄液をイオンクロマトグラフ(DIONEX製 ICS−1100)にて分析した。
【0106】
[シリカ系複合微粒子]
実施例及び比較例におけるシリカ系複合微粒子のCe、Na、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn、Zr、U、Th、Cl、NO
3、SO
4およびFの含有率を、次の方法で測定した。
それぞれのシリカ系複合微粒子分散液からなるサンプル約1g(固形分20質量%)を白金皿に採取した。リン酸3ml、硝酸5ml、弗化水素酸10mlを加えて、サンドバス上で加熱した。乾固したら、少量の水と硝酸50mlを加えて溶解させて100mlのメスフラスコにおさめ、水を加えて100mlとした。
Na、Kは、この溶液について原子吸光分光分析装置(日立製作所社製、Z−2310)で測定した。
Ce、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、Zn、Zr、U及びThについてICPプラズマ発光分析装置(SII製SPS5520)にて測定した。Cl、NO
3、SO
4およびFの分析方法は次のとおり。
<Cl>
シリカ系複合微粒子分散液からなる試料20g(固形分20質量%)に水50ml、酢酸5ml、0.001モル塩化ナトリウム溶液4mlを加えて0.002モル硝酸銀溶液で電位差滴定法(京都電子製:電位差滴定装置AT−610)で分析を行った。
ブランクとして試料を除いて同様の処理をして、値を差し引いて測定値とした。
<NO
3、SO
4、F>
シリカ系複合微粒子分散液からなる試料5g(固形分20質量%)を水で希釈して100mlにおさめ、遠心分離機(日立製 HIMAC CT06E)にて4000rpmで20分遠心分離して、上澄液をイオンクロマトグラフ(DIONEX製 ICS−1100)にて分析した。
なお、SiO
2重量は、シリカ系複合微粒子分散液の1000℃灼熱減量により求めた固形分重量から、上記で求めたCe濃度をCeO
2に換算した重量を減じることにより求めた。そして、得られたSiO
2重量とCeO
2重量から、シリカ系複合微粒子におけるシリカとセリアの質量比を求めた。
【0107】
[X線回折法、結晶子径の測定]
前述の方法に則り、実施例及び比較例で得られたシリカ系複合微粒子分散液を乾燥し、得られた粉体を乳鉢にて10分粉砕し、X線回折装置(理学電気(株)製、RINT1400)によってX線回折パターンを得て、結晶型を特定した。
また、前述のように、得られたX線回折パターンにおける2θ=28度近傍の(111)面のピークの半価幅を測定し、Scherrerの式により、結晶子径を求めた。
【0108】
<平均粒子径>
実施例及び比較例で得られたシリカゾル及びシリカ系複合微粒子分散液について、これに含まれる粒子の平均粒子径を前述の方法で測定した。具体的にはシリカ母粒子は大塚電子社製PAR−IIIを用い、シリカ系複合微粒子については日機装株式会社製マイクロトラックUPA装置を用いた。
【0109】
<短径/長径比率>
実施例及び比較例で得られたシリカゾル及びシリカ系複合微粒子分散液が含む各粒子について、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;日立製作所社製、型番「S−5500」日立製作所社製、型番:S−5500を用いて倍率25万倍(ないしは50万倍)で写真撮影して得られる写真投影図において、粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とした。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とした。そして、比(DS/DL)を求めた。この測定を任意の50個の粒子について行い、短径/長径比が0.8以下の粒子の個数比率(%)を求めた。
【0110】
[研磨試験方法]
実施例及び比較例の各々において得られたシリカ系複合微粒子分散液を含むスラリー(研磨用スラリー)を調整した。ここで固形分濃度は9質量%とした。
次に、被研磨基板として、ハードディスク用アルミノシリケート製ガラス基板を準備した。この基板はドーナツ形状で、外径65mm、内径20mm、厚み0.635mmである。この基板は一次研磨ずみで、表面粗さ(Ra)は0.3nmであった。
次に、この被研磨基板を研磨装置(ナノファクター株式会社製、NF300)にセットし、研磨パッド(ニッタハース社製「ポリテックスφ12」)を使用し、基板荷重0.18MPa、テーブル回転速度30rpmで研磨用スラリーを20ml/分の速度で10分間供給して研磨を行った。
そして、研磨前後の被研磨基材の重量変化を求めて研磨速度を計算した。
また、研磨基材の表面の平滑性(表面粗さRa)を原子間力顕微鏡(AFM、株式会社日立ハイテクサイエンス社製)を用いて測定した。
スクラッチ(線状痕)の測定については、アルミニウムディスク用基板を研磨装置(ナノファクター株式会社製、NF300)にセットし、研磨パッド(ニッタハース社製「ポリテックスφ12」)を使用し、基板荷重0.05MPa、テーブル回転速度30rpmで研磨用スラリーを20ml/分の速度で5分間供給して研磨を行い、超微細欠陥・可視化マクロ装置(VISION PSYTEC社製、製品名:Micro−MAX)を使用し、Zoom15にて全面観察し、65.97cm
2に相当する研磨処理された基板表面に存在するスクラッチ(線状痕)の個数を数えて合計し、次の基準に従って評価した。
線状痕の個数 評 価
80個未満 「少ない」
80個以上 「多い」
少なくとも80個以上で総数をカウントできない程多い 「※」
【0111】
<実施例1>
《シリカゾル(60nm)》の調製
エタノール12,090gと正珪酸エチル6,363.9gとを混合し、混合液a
1とした。
次に、超純水6,120gと29%アンモニア水444.9gとを混合し、混合液b
1とした。
次に、超純水192.9gとエタノール444.9gとを混合して敷き水とした。
そして、敷き水を撹拌しながら75℃に調整し、ここへ、混合液a
1及び混合液b
1を、各々10時間で添加が終了するように、同時添加を行った。添加が終了したら、液温を75℃のまま3時間保持して熟成させた後、固形分濃度を調整し、SiO
2固形分濃度19質量%、レーザー回折・散乱法大塚電子社製のPAR−IIIにより測定された平均粒子径60nmのシリカゾルを9,646.3g得た。
【0112】
《シリカゾル(平均粒子径108nm)》の調製
メタノール2,733.3gと正珪酸エチル1,822.2gとを混合し、混合液a
2とした。
次に、超純水1,860.7gと29%アンモニア水40.6gとを混合し、混合液b
2とした。
次に、超純水59gとメタノール1,208.9gとを混合して敷き水として、前工程で得た平均粒子径60nmのシリカゾル922.1gを加えた。
そして、シリカゾルを含んだ敷き水を撹拌しながら65℃に調整し、ここへ、混合液a
2及び混合液b
2を、各々18時間で添加が終了するように、同時添加を行った。添加が終了したら、液温を65℃のまま3時間保持して熟成させた後、固形分濃度(SiO
2固形分濃度)を19質量%に調整し、3,600gの高純度シリカゾルを得た。
この高純度シリカゾルの含まれる粒子は大塚電子社製のPAR−IIIにより測定した平均粒子径が108nmであった。
また、ICP測定によるアルカリ金属、アルカリ土類金属等の含有率は1ppm以下であった。母粒子に含まれる各種元素又はイオン種の分析結果を第1表に記す。(以下の実施例及び比較例も同様)
【0113】
次に、この高純度シリカゾル1,053gに陽イオン交換 三菱化学社製SK−1BH)114gを徐々に添加して30分間攪拌し樹脂を分離した。この時のpHは5.1であった。
得られたシリカゾルに超純水を加えて、SiO
2固形分濃度3質量%のA液6,000gを得た。(以下、シリカ系複合微粒子分散液の製造工程において、後記B液に対して投入するシリカゾルを「A液」とする。)
【0114】
次に、硝酸セリウム(III)6水和物(関東化学社製、4N高純度試薬)にイオン交換水を加え、CeO
2換算で2.5質量%のB液を得た。(以下、セリウム金属塩分散液を「B液」とする。)
【0115】
次に、A液(6,000g)を50℃まで昇温して、撹拌しながら、ここへB液(8,453g、SiO
2の100質量部に対して、CeO
2が117.4質量部に相当)を18時間かけて添加した。この間、液温を50℃に維持しておき、また、必要に応じて3%アンモニア水を添加して、pH7.85を維持するようにした。
そして、B液の添加が終了したら、液温を93℃へ上げて4時間熟成を行った。熟成終了後に室内に放置することで放冷し、室温まで冷却した後に、限外膜にてイオン交換水を補給しながら洗浄を行った。洗浄を終了して得られた前駆体粒子分散液は、固形分濃度が7質量%、pHが9.1(25℃にて)、電導度が67μs/cm(25℃にて)であった。
【0116】
次に得られた前駆体粒子分散液に5質量%酢酸を加えてpHを6.5に調整して、120℃の乾燥機中で16時間乾燥させた後、1090℃のマッフル炉を用いて2時間焼成を行い、粉体を得た。
【0117】
得られた粉体125gにイオン交換水375gを加え、さらに3%アンモニア水溶液を用いてpHを9に調整した後、φ0.22mmの高純度シリカビーズ(大研化学工業株式会社製)にて湿式解砕、粉砕を行い、固形分濃度20質量%のシリカ系複合微粒子分散液540gを得た。
【0118】
得られたシリカ系複合微粒子分散液が含むシリカ系複合微粒子について、各種元素又はイオン種の分析結果(含有率)を第1表に記す。(以下の実施例及び比較例も同様)
【0119】
得られたシリカ系複合微粒子分散液が含むシリカ系複合微粒子についてX線回折法によって測定したところ、Cerianiteの回折パターンが見られた。
【0120】
次にシリカ系複合微粒子分散液をロータリーエバポレーターで濃縮し、次いでイオン交換水で希釈して濃度調整を行い、9質量%の研磨用スラリーを得て、研磨試験を行った。また、研磨スラリーに含まれるシリカ系複合微粒子の短径/長径比を測定した。結果を第1表に示す。
また、シリカ系複合微粒子の平均粒子径は、日機装株式会社製の動的光散乱法測定装置マイクトラックUPAを用いて測定した。結果を第1表に示す
【0121】
また、実施例1で得られたシリカ系複合微粒子分散液が含むシリカ系複合微粒子についてSEM,TEMを用いて観察した。SEM像とTEM像(100,000倍)を
図1(a)、(b)に示す。
また、子粒子の粒子径を測定した透過電顕像(300,000倍)を
図1(c)に示す。
【0122】
さらに、実施例1で得られたシリカ系複合微粒子分散液が含むシリカ系複合微粒子のX線回折パターンを
図2に示す。
【0123】
図2のX線回折パターンでは、かなりシャープなCerianiteの結晶であり、TEMやSEM像からセリア結晶粒子がシリカ表面と強く焼結しているように見える。
また、
図1からは、シリカ粒子の表面は薄い被膜状のもので覆われている様子が観察される。
【0124】
<実施例2>
実施例1ではB液の添加量の条件を8,453g(SiO
2の100質量部に対して、CeO
2が117.4質量部に相当)としたが、実施例2ではB液の添加量の条件を2,153g、SiO
2の100質量部に対して、CeO
2が29.9質量部に相当)とし、その他の操作については実施例1と同様に行い、同様の測定等を行った。
結果を第1表に示す。
【0125】
<実施例3>
実施例1ではB液の添加量の条件を8,453g(SiO
2の100質量部に対して、CeO
2が117.4質量部に相当)としたが、実施例3ではB液の添加量の条件を1,080g、SiO
2の100質量部に対して、CeO
2が15質量部に相当)とし、その他の操作については実施例1と同様に行い、同様の測定等を行った。
結果を第1表に示す。
【0126】
<実施例4>
《異形シリカゾル(平均粒子径35nm)》の調製
エタノール7,100gと正珪酸エチル3,742gとを混合し、混合液a
2とした。
次に、超純水1,060gと29%アンモニア水128gとを混合し、混合液b
2とした。
次に、エタノール1,868gを敷き水とした。
そして、敷き水を撹拌しながら75℃に調整し、ここへ、混合液a
2および混合液b
2を、各々6時間で添加が終了するように、同時添加を行った。添加が終了したら、液温を75℃のまま3時間保持して熟成させた後、固形分濃度を調整し、SiO
2固形分濃度19質量%、大塚電子社製PAR−IIIにより測定された平均粒子径35nmのシリカゾルを5,400g得た。
得られた異形シリカゾルに超純水を加えて、SiO
2固形分濃度3質量%のA液を得た。
【0127】
次に、B液の添加量の条件を2,398g(SiO
2の100質量部に対して、CeO
2が33.3質量部に相当)とし、他の条件は実施例1と同じ条件にしてシリカ・セリア複合酸化物を含むシリカ系複合粒子分散液を調製した。そして、実施例1と同様の操作を行い、同様の測定を行った。結果を第1表に示す。
【0128】
<実施例5>
《高純度珪酸液》の調製
SiO
2濃度が24.06質量%、Na
2O濃度が7.97質量%の珪酸ナトリウム水溶液を用意した。そして、この珪酸ナトリウム水溶液にSiO
2濃度が5.0質量%となるように純水を添加した。
【0129】
[酸性珪酸液]
得られた5.0質量%の珪酸ナトリウム水溶液18kgを、6Lの強酸性陽イオン交換樹脂(SK1BH、三菱化学社製)に空間速度3.0h
-1で通液させ、pHが2.7の酸性珪酸液18kgを得た。
得られた酸性珪酸液のSiO
2濃度は4.7質量%であった。
【0130】
[高純度珪酸液]
次に、酸性珪酸液を、強酸性陽イオン交換樹脂(SK1BH、三菱化学社製)に空間速度3.0h
-1で通液させ、pHが2.7の高純度珪酸液を得た。得られた高純度珪酸液のSiO
2濃度は4.4質量%であった。
【0131】
《シリカゾル(平均粒子径25nm)》の調製
純水42gに高純度珪酸液を攪拌しながら514.5g添加し、次いで15%のアンモニア水を1,584.6g添加し、その後83℃に昇温して30分保持した。
次に高純度珪酸液13,700gを18時間かけて添加し、添加終了後に83℃を保持したまま熟成を行い、平均粒子径25nmのシリカゾルを得た。
得られたシリカゾルを40℃まで冷却し、限外ろ過膜(旭化成製SIP1013)にてSiO
2濃度が12%まで濃縮した。
【0132】
《シリカゾル(平均粒子径45nm)》の調製
純水991gに攪拌しながら12%の25nmシリカゾルを963g加えた。次いで15%アンモニア水1,414gを添加し、その後87℃に昇温して30分保持した。
次に高純度珪酸液12,812gを18時間かけて添加し、添加終了後に87℃を保持したまま熟成を行い、平均粒子径45nmのシリカゾルを得た。
得られたシリカゾルを40℃まで冷却し、限外ろ過膜(旭化成製SIP1013)にてSiO
2濃度が12%まで濃縮した。
【0133】
《シリカゾル(平均粒子径70nm)》の調製
純水705gに攪拌しながら12%の平均粒子径45nmシリカゾルを705g加えた。次いで15%アンモニア水50gを添加し、その後87℃に昇温して30分保持した。
次に高純度珪酸液7,168gを18時間かけて添加し、添加終了後に87℃を保持したまま熟成を行い、平均粒子径70nmのシリカゾルを得た。
得られたシリカゾルを40℃まで冷却し、限外ろ過膜(旭化成製SIP1013)にてSiO
2濃度が12%まで濃縮した。
【0134】
《シリカゾル(96nm)》の調製
純水1,081gに攪拌しながら12質量%の平均粒子径70nmシリカゾルを1,081g加えた。次いで15%アンモニア水50gを添加し、その後87℃に昇温して30分保持した。
次に高純度珪酸液6,143gを18時間かけて添加し、添加終了後に87℃を保持したまま熟成を行い、大塚電子社製PAR−IIIで平均粒子径96nmのシリカゾルを得た。
得られたシリカゾルを40℃まで冷却し、限外ろ過膜(旭化成製SIP1013)にてSiO
2濃度が12%まで濃縮した。濃縮後のシリカゾルに陰イオン交換樹脂 三菱化学社製 SANUP Bを添加して陰イオンを除去した。
得られたシリカゾルに超純水を加えて、SiO
2固形分濃度3質量%のA液を得た。
B液の添加量の条件を8,453g(SiO
2の100質量部に対して、CeO
2が117.4質量部に相当)とし、他の条件は実施例1と同じ条件にしてシリカ・セリア複合酸化物を含むシリカ系複合粒子分散液を調製した。そして、実施例1と同様の操作を行い、同様の測定を行った。結果を第1表に示す。
【0135】
また、実施例5で得られたシリカ系複合微粒子分散液についてSEM、TEMを用いて観察した。SEM像とTEM像(100,000倍)を
図3(a)、(b)に示す。
【0136】
さらに、実施例5で得られたシリカ系複合微粒子分散液が含むシリカ系複合微粒子のX線回折パターンを
図4に示す。
【0137】
図3(a)、(b)のSEM像、TEM像や
図4のX線回折ピークから、実施例1とほぼ同じ粒子が得られていることが分かる。また、実施例1の粒子に比べ実施例5の粒子はケイ酸ナトリウムを原料としているために若干Naが高く、このためにシリカ系複合微粒子の焼成は若干低めの温度で行わないと結晶子径が大きくなりすぎる傾向があるため、1,070℃で実施した。
【0138】
<実施例6>
実施例1ではB液の添加量の条件を8,453g(SiO
2の100質量部に対して、CeO
2が117.4質量部に相当)としたが、実施例7ではB液の添加量の条件を14,400g、SiO
2の100質量部に対して、CeO
2が200質量部に相当)とし、その他の操作については実施例1と同様に行い、同様の測定等を行った。
結果を第1表に示す。
【0139】
<実施例7>
実施例1ではB液の添加量の条件を8,453g(SiO
2の100質量部に対して、CeO
2が117.4質量部に相当)としたが、実施例7ではB液の添加量の条件を1,8000g、SiO
2の100質量部に対して、CeO
2が250質量部に相当)とし、その他の操作については実施例1と同様に行い、同様の測定等を行った。
結果を第1表に示す。
【0140】
<比較例1>
実施例1で得られた母粒子について(すなわち、アルコキシシランを原料とした平均粒子径108nmの母粒子をシリカ系複合微粒子として扱って)、研磨試験を行った。
結果を第1表に示す。
【0141】
<比較例2>
実施例4で得られた母粒子について(すなわち、アルコキシシランを原料とした平均粒子径35nmの異形シリカ母粒子をシリカ系複合微粒子として扱って)、研磨試験を行った。
結果を第1表に示す。
【0142】
<比較例3>
実施例5で得られた母粒子について(すなわち、水硝子を原料とした平均粒子径96nmの母粒子をシリカ系複合微粒子として扱って)、研磨試験を行った。
結果を第1表に示す。
【0143】
<比較例4>
実施例1ではB液の添加量の条件を8,453g(SiO
2の100質量部に対して、CeO
2が117.4質量部に相当)としたが、比較例4ではB液の添加量の条件を360g、SiO
2の100質量部に対して、CeO
2が5質量部に相当)とし、その他の操作については実施例1と同様に行った。しかし、粒子が異常成長しているため湿式粉砕が困難で収率がかなり悪かった。結果を第1表に示す。
【0144】
また、比較例4で得られたシリカ系複合微粒子分散液についてSEM、TEMを用いて観察した。SEM像とTEM像(100,000倍)を
図5(a)、(b)に示す。
【0145】
さらに、比較例4で得られたシリカ系複合微粒子分散液が含むシリカ系複合微粒子のX線回折パターンを
図6に示す。
【0146】
図5(a)、(b)より、比較例4の粒子は元の球状粒子の形が崩れ、大きな異形の粒子になっている。
これは、被覆するセリアの量が少ないため、母粒子同士の融着が起こり易いためと考えられる。
【0147】
また、
図6のX線回折より酸化セリウムの結晶以外にCristobaliteが生成しており、これも被覆するセリアの量が少ないため、母粒子同士の融着が起こり易いために変形したり、母粒子が結晶化したと考えられる。
【0148】
<比較例5>
実施例1ではB液の添加量の条件を8,453g(SiO
2の100質量部に対して、CeO
2が117.4質量部に相当)としたが、比較例5ではB液の添加量の条件を28801g、SiO
2の100質量部に対して、CeO
2が400質量部に相当)とし、その他の操作については実施例1と同様に行った。
【0149】
【表1】