(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
駆動ユニットによりケーブルを駆動してスライドドアを開閉させる開閉装置に設けられ、前記駆動ユニットと前記スライドドアとの間で前記ケーブルの移動方向を変換するプーリユニットであって、
取り付け対象物に取り付けられるベース部と、
前記ベース部の一側面に設けられ、当該一側面と交差する方向に突出されたプーリ支持部と、
前記プーリ支持部に回動自在に設けられ、前記ケーブルが巻き掛けられるプーリと、
前記プーリ支持部に設けられ、前記ケーブルを外部に引き出すケーブル引き出し部と、
を備え、
前記ケーブル引き出し部が、前記一側面を前記プーリ支持部の突出方向から見たときに、前記一側面の投影面積の範囲外に設けられ、
前記プーリ支持部は、
前記ベース部に一体に形成され、前記プーリを回動自在に支持するプーリ軸を支持する支持本体と、
前記支持本体に装着され、前記プーリの一部を覆うカバー部材と、
前記支持本体および前記カバー部材を覆い、前記プーリ支持部の内外を密閉するシール部材と、
を備え、
前記ケーブル引き出し部が、前記シール部材に設けられ、
前記カバー部材の前記支持本体に対する装着方向が、前記プーリ支持部の突出方向と交差する方向である、
プーリユニット。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
図1はパワースライドドア装置を備えた車両を示す概要図を、
図2は
図1のパワースライドドア装置を示す斜視図を、
図3はリヤ側プーリユニットを示す
図2のA矢視図を、
図4はリヤ側プーリユニットの内部構造を示す断面図を、
図5はユニット本体の詳細を示す斜視図を、
図6(a),(b)はカバー部材の詳細を示す斜視図を、
図7(a),(b)はシール部材の詳細を示す斜視図を、
図8はユニット本体へのカバー部材の装着手順を示す斜視図を、
図9はカバー部材が装着されたユニット本体へのシール部材の装着手順(前工程)を示す斜視図を、
図10はカバー部材が装着されたユニット本体へのシール部材の装着手順(後工程)を示す斜視図をそれぞれ示している。
【0021】
図1に示す車両10は、ワンボックスタイプの乗用車である。車両10は車体11を備え、当該車体11の側部には乗降用の開口部12が形成されている。開口部12は、開閉体としてのスライドドア13によって開閉される。スライドドア13は、車体11の側部に固定されたガイドレール14に沿って車両前方および車両後方に移動して、これにより開口部12が開閉される。
【0022】
ガイドレール14は、車体11の上下方向に沿う略中央部において、開口部12の後方にあるアウターパネル15に固定されている。ここで、アウターパネル15は、車体11の骨格をなす剛性部材を形成するものである。ガイドレール14は、車体11の側部に沿って車両前方および車両後方に延びる直線部14aと、当該直線部14aの車両前方側の端部から車室内側(図中下側)へ向けて湾曲する引き込み部14bとを備えている。
【0023】
一方、スライドドア13の車両後方側の端部には、ガイドレール14上を移動するローラアッシー16が設けられ、これにより、スライドドア13はガイドレール14に沿って移動するようになっている。具体的には、ローラアッシー16がガイドレール14の直線部14aにおける車両後方側の端部に移動されると、スライドドア13は全開位置(図中実線の状態)となる。これに対し、ローラアッシー16がガイドレール14の引き込み部14bに案内されると、スライドドア13は開口部12を閉塞しつつ車室内側に引き込まれて全閉位置(図中二点鎖線の状態)となる。
【0024】
ただし、車体11の上下方向に沿う略中央部に設けたガイドレール14の他に、車体11の開口部12の上下部分(アッパー部およびロワー部)にもガイドレール(図示せず)がそれぞれ設けられている。そして、これらの図示しないガイドレールに対応して、スライドドア13の車両前方側の端部の上下部分にも、それぞれローラアッシー(図示せず)が設けられている。このように、スライドドア13は、車体11に対して合計3箇所で支持され、がたつくこと無くスムーズに開閉可能となっている。
【0025】
図1および
図2に示すように、車両10には、スライドドア13を自動的に開閉するために、開閉装置としてのパワースライドドア装置20が搭載されている。
図2は、パワースライドドア装置20を、車室内側から見た斜視図である。
【0026】
パワースライドドア装置20は、スライドドア13の開閉方向(車両前方および車両後方)に沿って配索された開側ケーブル21と閉側ケーブル22とを備えている。すなわち、パワースライドドア装置20は、所謂ケーブル式の開閉装置となっている。
【0027】
また、パワースライドドア装置20は、開側ケーブル21および閉側ケーブル22を駆動するための駆動源(駆動ユニット)23を備えており、当該駆動源23は、車体11の側部に搭載されている。つまり、パワースライドドア装置20は、車体内蔵型の開閉装置となっている。ここで、駆動源23は、ガイドレール14の延在方向に沿う略中央部分に配置され、アウターパネル15の車室内側に固定されている。
【0028】
駆動源23から車両後方側へ引き出された開側ケーブル21は、ガイドレール14の車両後方の端部に配置されたリヤ側プーリユニット24により、その移動方向、つまり開側ケーブル21の配索方向が変換されている。そして、開側ケーブル21の先端部分は、ガイドレール14の車両後方側からスライドドア13のローラアッシー16に接続されている。このように、リヤ側プーリユニット24は、駆動源23とスライドドア13との間で、開側ケーブル21の移動方向を変換している。
【0029】
一方、駆動源23から車両前方側へ引き出された閉側ケーブル22は、ガイドレール14の車両前方の端部に配置されたフロント側プーリユニット25により、その移動方向、つまり閉側ケーブル22の配索方向が変換されている。そして、閉側ケーブル22の先端部分は、ガイドレール14の車両前方側からスライドドア13のローラアッシー16に接続されている。このように、フロント側プーリユニット25は、駆動源23とスライドドア13との間で、閉側ケーブル22の移動方向を変換している。
【0030】
駆動源23と各プーリユニット24,25との間には、各ケーブル21,22のスムーズな移動を案内するための一対のアウターケーシング26,27がそれぞれ設けられている。各アウターケーシング26,27は可撓性を有する樹脂材料によりチューブ状に形成されている。そして、各ケーブル21,22は、それぞれ対応するアウターケーシング26,27に挿通され、各アウターケーシング26,27の内部において移動自在となっている。
【0031】
また、各アウターケーシング26,27の両端には、それぞれエンドキャップ26a,27aが装着されている。各アウターケーシング26,27は、各エンドキャップ26a,27aを介して、駆動源23および各プーリユニット24,25に固定されている。
【0032】
駆動源23は、モータ本体28と、当該モータ本体28の出力により各ケーブル21,22を駆動する駆動部29とを有している。モータ本体28には、例えば、ブラシレスモータ等の正逆方向に制御可能な電動モータ(詳細図示せず)が用いられる。駆動部29は、減速機構およびクラッチ機構(いずれも図示せず)を介してモータ本体28の出力が伝達されるドラム(図示せず)を備えている。そして、当該ドラムには、各ケーブル21,22の基端部分がそれぞれ固定されるとともに、各ケーブル21,22が互いに逆向きとなるように巻き掛けられている。
【0033】
これにより、ドラムが回転されると各ケーブル21,22が互いに反対方向に駆動される。具体的には、ドラムを正転駆動させると、開側ケーブル21が巻き取られるとともに閉側ケーブル22が送り出される。これによりスライドドア13が車両後方側へ牽引されて開口部12(
図1参照)が開口される。これとは逆に、ドラムを逆転駆動させると、閉側ケーブル22が巻き取られるとともに開側ケーブル21が送り出される。これによりスライドドア13が車両前方側へ牽引されて開口部12が閉塞される。なお、スライドドア13を手動で開閉する場合には、駆動部29に設けたクラッチ機構が解放されて、モータ本体28とドラムとの間の動力伝達経路が遮断されるようになっている。
【0034】
また、駆動源23には、各ケーブル21,22にそれぞれ所定の張力を付与するためのテンショナ機構(図示せず)が設けられている。これらのテンショナ機構はドラムの近傍に設けられ、テンショナ機構により各ケーブル21,22に所定の張力が付与されている。これにより、各ケーブル21,22に緩みが生じるのを防止して、スライドドア13の作動時におけるがたつきを抑えている。
【0035】
なお、本実施の形態では、それぞれ別個の開側ケーブル21および閉側ケーブル22を用いたが、1本のケーブルの略中央部をドラムに巻き掛けるようにしても良い。この場合、ドラムを中心としたケーブルの一端側が開側ケーブルとなり、ドラムを中心としたケーブルの他端側が閉側ケーブルとなる。
【0036】
リヤ側プーリユニット24は、本発明におけるプーリユニットを構成している。したがって、以下、リヤ側プーリユニット24の詳細構造について、図面を用いて説明する。ここで、
図2に示すように、フロント側プーリユニット25は、従前と同じ構造のものを採用しているため、その詳細な説明は省略する。
【0037】
図3に示すように、リヤ側プーリユニット24の車体11への取り付け方向は、車両10の前後方向(図中左右方向)となっている。つまり、リヤ側プーリユニット24を車体11のアウターパネル15に固定するための固定ボルトBTの延在方向は、車両10の前後方向となっている。具体的には、リヤ側プーリユニット24は、アウターパネル15の第2壁部15bに固定されている。ここで、アウターパネル15の形状は車種により様々であるが、本実施の形態では、アウターパネル15は、車両10の前後方向に延びる第1壁部15aと、車両10の車幅方向(図中上下方向)に延びる第2壁部15bとを備えている。
【0038】
図4および
図5に示すように、リヤ側プーリユニット24は、プラスチック等の樹脂材料を射出成形等することで所定形状に形成されたユニット本体30を備えている。ユニット本体30は、アウターパネル15の第2壁部15bに取り付けられるベース部31と、当該ベース部31に一体に設けられ、プーリ24aを回転自在に支持するプーリ軸24bを支持する支持本体32とを備えている。
【0039】
ベース部31は、
図5に示すように、略ホームベース形状の板状に形成されており、当該ベース部31には、その板厚方向に貫通するよう合計4つのボルト挿通孔31a(図示では3つのみ示す)が設けられている。それぞれのボルト挿通孔31aには、鋼管等よりなる補強カラー31bが固定されており、これにより、固定ボルトBT(
図3参照)の締め付け時において、ベース部31に亀裂等が生じるのを防止している。
【0040】
ベース部31は、取り付け対象物としてのアウターパネル15の第2壁部15b(
図3参照)に対して、合計4つの固定ボルトBTにより強固に固定される。つまり、ベース部31を第2壁部15bに固定した状態のもとで、ベース部31および第2壁部15bが拡がる方向は、いずれも車両10の車幅方向となっている。なお、
図3に示すように、ベース部31は、第2壁部15bに対して車両前方側(図中右側)から固定ボルトBTにより固定される。すなわち、リヤ側プーリユニット24は、アウターパネル15の裏側(車室内側)に固定されている。第2壁部15bには、その板厚方向に貫通するよう貫通穴(図示せず)が形成されており、これにより、リヤ側プーリユニット24のプーリ支持部PSが、第2壁部15bの貫通穴を介して、アウターパネル15の表側(車室外側)に露出される。
【0041】
図4に示すように、ベース部31は、一側面SFを有するとともにX軸方向に拡がっている(延在されている)。ベース部31には、一側面SFと交差する方向(Y軸方向)に開口、つまりベース部31の板厚方向に開口されたケーブル導入部31cが設けられている。ケーブル導入部31cには、開側ケーブル(ケーブル)21に対応したアウターケーシング26のエンドキャップ26aが装着されている。そして、
図4に示すように、ケーブル導入部31cの略真上に、プーリ24aが配置されている。このように、ケーブル導入部31cは、支持本体32の内部でかつプーリ24aに向けて、開側ケーブル21を導入している。すなわち、開側ケーブル21の先端部分は、リヤ側プーリユニット24の内部に対して、一側面SFと交差する方向(Y軸方向)から導入される。
【0042】
ベース部31のケーブル導入部31cの近傍には、
図5に示すように、第1カバー固定部31dが設けられている。第1カバー固定部31dは、ケーブル導入部31cにエンドキャップ26aを装着するために、切り欠き形状に開口されている。そして、第1カバー固定部31dには、カバー部材40の第1装着部42(
図6参照)が装着されるようになっている。ここで、第1カバー固定部31dの内側には、互いに対向する一対の第1凹部31e(図示では1つのみ示す)が設けられ、これらの第1凹部31eには、カバー部材40の第1装着部42に設けた一対の第1爪42a(
図6参照)がそれぞれ係合するようになっている。
【0043】
図4および
図5に示すように、支持本体32は、ベース部31の一側面SFの略中央部分に一体に形成されている。支持本体32は、ベース部31の一側面SFから、ベース部31が拡がる方向(X軸方向)と交差する方向(Y軸方向)で、かつ斜め上方(破線矢印α方向)に傾斜するよう突出されている。具体的には、ベース部31に対する支持本体32の傾斜角度β°、つまりX軸と破線矢印αとのなす角度は、略60°とされている(β°≒60°)。
【0044】
支持本体32は中空となっており、その内部には、プーリ24aが回転自在に収容されるとともに、当該プーリ24aに巻き掛けられた開側ケーブル21が出入りするようになっている。なお、プーリ24aは、支持本体32の延在方向に沿うベース部31側とは反対側の先端側に固定された、鋼材よりなるプーリ軸24bに回動自在に支持されている。そして、支持本体32は、ベース部31に対して傾斜角度β°で傾斜されているため、プーリ軸24bのベース部31に対する配置位置が、一側面SFと交差する方向(Y軸方向)からの平面視で、ベース部31の第1カバー固定部31d寄りの部分となっている。
【0045】
支持本体32の第1カバー固定部31d側には、
図5に示すように、本体開口部32aが形成されている。この本体開口部32aは、支持本体32の延在方向(破線矢印α方向)に沿うように、当該支持本体32の略全域に亘って設けられている。そして、本体開口部32aからは、リヤ側プーリユニット24の組み立て時において、プーリ24a,プーリ軸24b,開側ケーブル21等が、それぞれ組み付けられるようになっている。
【0046】
支持本体32の先端側には、第2カバー固定部32bが設けられている。また、支持本体32の基端側におけるベース部31には、上述のように第1カバー固定部31dが設けられている。これらの第1,第2カバー固定部32b,31dには、本体開口部32aを部分的に閉塞するとともに、プーリ24aの一部を覆うカバー部材40(
図6参照)が装着されるようになっている。ここで、第2カバー固定部32bには、プーリ軸24bの軸方向に突出された一対の第2爪32cが設けられている。そして、一対の第2爪32cには、カバー部材40の第2装着部44に設けた一対の第2凹部44a(
図6参照)がそれぞれ係合するようになっている。
【0047】
これにより、カバー部材40は、ユニット本体30に対して容易には外れないように固定される。このように、カバー部材40を設けることで、支持本体32の本体開口部32aの殆どの部分、具体的には、支持本体32の内部から開側ケーブル21を外部に引き出す部分を除いた部分を覆い、ひいては支持本体32の内部に雨水や埃等が進入するのが抑えられる。
【0048】
図4に示すように、支持本体32の基端側で、かつケーブル導入部31c側とは反対側(図中左側)には、差し込み孔32dが設けられている。この差し込み孔32dは、支持本体32およびベース部31の双方を貫通するように形成され、プーリ支持部PSの突出方向(Y軸方向)に延びている。ここで、差し込み孔32dは、本発明における第2抜け止め部を構成しており、シール部材50に設けたタブ52bが差し込まれて固定されるようになっている。つまり、差し込み孔32dは、シール部材50の抜け止めとして機能するものである。
【0049】
図4および
図6に示すように、カバー部材40は、プラスチック等の樹脂材料を射出成形等することで所定形状に形成され、略半円形状に形成された半円状本体41を備えている。半円状本体41は、カバー部材40を支持本体32(
図5参照)に装着した状態のもとで、プーリ24a(
図5参照)の一部を覆うようになっている。半円状本体41は中空となっており、その内部でプーリ24aが回動するようになっている。
【0050】
半円状本体41には、その板厚方向に対向するようにして一対のプーリ軸支持壁41aが設けられている。これらのプーリ軸支持壁41aは、カバー部材40を支持本体32に装着した状態のもとで、プーリ軸24b(
図5参照)の両端部分をそれぞれ支持するようになっている。これにより、プーリ軸24bの軸方向へのがたつきが抑えられて、リヤ側プーリユニット24の静粛性向上が図られている。
【0051】
一対のプーリ軸支持壁41aの間には、断面が略円弧形状に形成された円弧状側壁部41bが設けられ、当該円弧状側壁部41bは、プーリ24aの径方向外側に配置されている。また、円弧状側壁部41bの一部は切り欠かれており、この切り欠かれた部分は、ケーブル引き出し口41cとなっている。そして、ケーブル引き出し口41cからは、開側ケーブル21の先端側(ローラアッシー16側)が引き出されるようになっている。
【0052】
ここで、ケーブル引き出し口41cから引き出された開側ケーブル21の先端側は、カバー部材40を支持本体32に装着した状態のもとで、ベース部31がある側に向けられる。すなわち、
図4に示すように、リヤ側プーリユニット24は、開側ケーブル21の移動方向(配策方向)を、略180°変換するようになっている。また、ケーブル引き出し口41cから引き出される開側ケーブル21は、
図4に示すように、ケーブル引き出し口41cの略中央部分に配置される。そのため、ケーブル引き出し口41cの周囲にある、プーリ軸支持壁41aや円弧状側壁部41bに、開側ケーブル21が接触するようなことは無い。したがって、開側ケーブル21をスムーズに移動させることができるとともに、開側ケーブル21やカバー部材40が損傷するのを未然に防ぐことができる。
【0053】
図6に示すように、半円状本体41の径方向外側には、ベース部31の第1カバー固定部31d(
図5参照)に装着される第1装着部42が設けられている。具体的には、第1装着部42は、橋渡し部43を介して半円状本体41の径方向外側に配置されている。第1装着部42は略直方体形状に形成され、第1装着部42のプーリ軸24bの軸方向に沿う両側には、それぞれ第1爪42aが一体に設けられている。これらの第1爪42aは、第1カバー固定部31dに第1装着部42を装着した状態のもとで、一対の第1凹部31e(
図5参照)にそれぞれ引っ掛けられるようになっている。
【0054】
また、第1装着部42の各第1爪42aの間には、エンドキャップ押さえ部42bが設けられている。このエンドキャップ押さえ部42bは、
図4に示すように、カバー部材40を支持本体32に装着した状態のもとで、カバー部材40の内部に向けて突出されている。そして、エンドキャップ押さえ部42bは、ベース部31のケーブル導入部31cと協働して、アウターケーシング26のエンドキャップ26aを、抜け止め状態で支持するようになっている。
【0055】
半円状本体41の径方向外側で、かつ第1装着部42側とは反対側には、支持本体32の第2カバー固定部32b(
図5参照)に装着される第2装着部44が設けられている。第2装着部44は、半円状本体41の径方向外側に膨出した略箱形状に形成され、第2装着部44のプーリ軸24bの軸方向に沿う両側には、それぞれ第2凹部44aが設けられている。これらの第2凹部44aには、第2カバー固定部32bに第2装着部44を装着した状態のもとで、一対の第2爪32c(
図5参照)がそれぞれ引っ掛けられるようになっている。
【0056】
このように、カバー部材40は、その長手方向両側に設けられた第1,第2装着部42,44の2箇所によって、支持本体32に固定されている。したがって、カバー部材40の支持本体32に対する十分な固定強度が確保されて、ひいてはカバー部材40の支持本体32に対するがたつきが効果的に抑制される。
【0057】
また、カバー部材40の橋渡し部43には、第1抜け止め部としての係合凸部43aが一体に設けられている。この係合凸部43aは、
図4に示すように、カバー部材40を支持本体32に装着した状態のもとで、カバー部材40の外部に向けて突出されている。そして、係合凸部43aは、カバー部材40にシール部材50を装着した状態のもとで、シール部材50に設けた係合凹部51bに入り込むようになっている。
【0058】
図4および
図7に示すように、シール部材50は、ゴム等の柔軟性を有する弾性材料を射出成形等することで所定形状に形成されている。シール部材50は、互いに組み付けられた支持本体32およびカバー部材40(
図9参照)を覆う被覆本体部51と、ベース部31の一側面SFおよび第1装着部42(
図4参照)に密着される密着部52とを備えている。
【0059】
被覆本体部51には、カバー部材40のケーブル引き出し口41cから引き出された開側ケーブル21(
図4参照)を、さらにシール部材50の外部に引き出すためのケーブル引き出し部51aが一体に設けられている。このケーブル引き出し部51aは、特に柔軟性を持たせるようにするために、他の部分に比して薄肉の蛇腹状に形成され、その内側を開側ケーブル21が摺動するようになっている。これにより、シール部材50の内部と外部との間において、雨水や埃等の行き来が防止される。つまり、開側ケーブル21に付着した雨水等は、ケーブル引き出し部51aによって掻き落とされるようになっている。また、ケーブル引き出し部51aを蛇腹状に形成して柔軟性を持たせることで、開側ケーブル21の振れに対して容易に追従可能として、確実にシールされるようにしている。
【0060】
ここで、
図3に示すように、リヤ側プーリユニット24を、アウターパネル15の第2壁部15bに固定した状態のもとで、ケーブル引き出し部51aは、車体11の車室外に配置されている。したがって、
図1に示すように、スライドドア13を牽引して開口部12を開口させる際に、開側ケーブル21に付着した雨水等は、ケーブル引き出し部51aによって確実に外部に掻き落とされる。よって、リヤ側プーリユニット24の内外が密閉されて、リヤ側プーリユニット24の内部に雨水等が進入することは無い。
【0061】
ここで、
図4に示すように、支持本体32と、これに装着されるカバー部材40と、支持本体32およびカバー部材40の双方を被覆するシール部材50とは、本発明におけるプーリ支持部を構成している。すなわち、支持本体32,カバー部材40およびシール部材50よりなるプーリ支持部PSは、ベース部31の一側面SFに設けられるとともに、当該一側面SFと交差する方向(Y軸方向)に突出されており、さらには、プーリ24aを回動自在に支持するとともに、開側ケーブル21を外部に引き出すケーブル引き出し部51aを備えている。
【0062】
そして、プーリ支持部PSに設けたケーブル引き出し部51aは、一側面SFをプーリ支持部PSの突出方向(Y軸方向)から見たときに、一側面SFの投影面積AR(
図4および
図5参照)の範囲外に配置されている。これにより、ケーブル引き出し部51aから引き出された開側ケーブル21は、プーリ支持部PSの突出方向(
図4中上方)とは反対方向(
図4中下方)に向けられている。よって、移動方向(配策方向)が180°変換された開側ケーブル21の先端側は、ベース部31を介さずに、つまりベース部31を避けた状態で、ローラアッシー16(
図2参照)に導かれる。
【0063】
また、被覆本体部51におけるケーブル引き出し部51aの近傍には、第1抜け止め部としての係合凹部51bが設けられている。この係合凹部51bには、カバー部材40にシール部材50を装着した状態のもとで、カバー部材40の係合凸部43aが入り込むようになっている。ここで、
図4に示すように、カバー部材40の係合凸部43aと、シール部材50の係合凹部51bとを、互いに精度良く係合させることで、シール部材50のカバー部材40からの脱落が防止される。そして、密着部52は一側面SFおよび第1装着部42に対して確実に弾性接触され、ひいては十分なシール性が確保される。
【0064】
図7に示すように、密着部52は略長方形形状に形成され、被覆本体部51の開口部分(基端部分)に一体に設けられている。密着部52の被覆本体部51側とは反対側には、平坦な密着面(シール面)52aが形成されている。この密着面52aは、シール部材50の他の部分に比して精度良く平坦とされ、これにより、支持本体32およびカバー部材40にシール部材50を装着することで、密着面52aの全面が一側面SFおよび第1装着部42に対して均一に密着される。
【0065】
また、
図4に示すように、密着部52の長手方向に沿う係合凹部51b側とは反対側(図中左側)には、支持本体32に設けた差し込み孔32dに差し込まれるタブ52bが一体に設けられている。このタブ52bは、密着部52の密着面52aから垂直に突出するよう設けられ、タブ52bの先端側は、
図7に示すように先細り形状となっている。そして、タブ52bの先端側は、支持本体32およびカバー部材40にシール部材50を装着する際に、作業者あるいは作業ロボットによって把持されるようになっている。
【0066】
これにより、タブ52bの先端側を差し込み孔32dに差し込んで、その後、タブ52bを引っ張ることで、タブ52bは差し込み孔32dに対して差し込み状態で固定される。ここで、タブ52bの基端側には、差し込み孔32dの幅よりも大きい幅の幅広部52cが設けられている。これにより、タブ52bを所定荷重で引っ張ることにより、幅広部52cが弾性変形しつつ差し込み孔32dを通過して、その後、幅広部52cは差し込み孔32dに引っ掛けられて固定される。これにより、シール部材50の支持本体32からの脱落が防止される。なお、タブ52bは、本発明における第2抜け止め部を構成している。
【0067】
このように、支持本体32およびカバー部材40に対するシール部材50の固定箇所は、プーリ支持部PSの突出方向と交差する方向(X軸方向)に沿うケーブル引き出し部51a側の係合凹部(第1抜け止め部)51bがある部分と、プーリ支持部PSの突出方向と交差する方向(X軸方向)に沿うケーブル引き出し部51a側とは反対側のタブ(第2抜け止め部)52bがある部分との2箇所となっている。これにより、支持本体32の延在方向(
図4の破線矢印α方向)からシール部材50を装着して係合凸部43aを係合凹部51bに係合させつつ、差し込み孔32dを通過したタブ52bの先端側を引っ張るだけで、支持本体32およびカバー部材40にシール部材50を確実に装着することができる。
【0068】
次に、以上のように形成されたリヤ側プーリユニット24の組み立て手順について、図面を用いて詳細に説明する。
【0069】
図5に示すように、まず、ユニット本体30の支持本体32に、プーリ軸24bおよびプーリ24aを組み付ける。次いで、破線矢印(1)に示すように、開側ケーブル21の先端部分を、ケーブル導入部31c(
図4参照)から支持本体32の内部に導入しつつ、プーリ24aに巻き掛けて支持本体32の外部に引き出す。そして、破線矢印(2)に示すように、アウターケーシング26のエンドキャップ26aを、第1カバー固定部31dを介してケーブル導入部31cに装着する。このとき、エンドキャップ26aをケーブル導入部31cに当接するまで差し込むようにする。
【0070】
ただし、エンドキャップ26aをケーブル導入部31cに装着した後に、開側ケーブル21の先端部分をプーリ24aに巻き掛けて支持本体32の外部に引き出すようにしても良い。
【0071】
その後、
図8に示すように、カバー部材40を準備するとともに、当該カバー部材40における半円状本体41の内側に、開側ケーブル21の先端部分を通す。次いで、開側ケーブル21の先端部分を、ケーブル引き出し口41cから半円状本体41の外部に引き出す。そして、カバー部材40の第1装着部42とベース部31の第1カバー固定部31dとを対向させ、かつカバー部材40の第2装着部44と支持本体32の第2カバー固定部32bとを対向させる。次いで、当該状態のもとで破線矢印(3)に示すように、支持本体32に対してカバー部材40を臨ませる。このように、カバー部材40の支持本体32に対する装着方向は、プーリ支持部PSの突出方向と交差する方向、つまりベース部31が拡がる方向(X軸方向)となっている。
【0072】
これにより、一対の第1凹部31eに一対の第1爪42aが係合され、かつ一対の第2爪32cが一対の第2凹部44aに係合され、支持本体32に対するカバー部材40の装着が完了する。このとき、開側ケーブル21が半円状本体41の内部で折れ曲がらないようにするために、開側ケーブル21の先端部分を引っ張りながらカバー部材40を装着するのが望ましい。
【0073】
その後、
図9に示すように、シール部材50を準備するとともに、密着部52側から被覆本体部51の内部に、開側ケーブル21の先端部分を通す。次いで、開側ケーブル21の先端部分を、ケーブル引き出し部51aから被覆本体部51の外部に引き出す。このとき、開側ケーブル21の外周部分に摺動グリス等(図示せず)を塗布するようにして、開側ケーブル21のケーブル引き出し部51aに対する挿通作業性を向上させるのが望ましい。
【0074】
その後、
図9の破線矢印(4)に示すように、密着部52の密着面52a(
図7参照)を、ベース部31の一側面SFに臨ませて、支持本体32の延在方向(破線矢印α方向)から、カバー部材40が装着された支持本体32に装着する。このとき、開側ケーブル21が被覆本体部51の内部で折れ曲がらないようにするために、開側ケーブル21の先端部分を引っ張りながらシール部材50を装着するのが望ましい。
【0075】
次いで、破線矢印(4)に示すように、シール部材50の支持本体32およびカバー部材40に対する装着を進めていくと、まず、カバー部材40の係合凸部43aがシール部材50の係合凹部51bに入り込んで、
図4に示すように互いに密着して係合される。このとき、略同時にかつ自動的に、シール部材50に設けたタブ52b(
図7参照)の先細り形状の先端側が、支持本体32に設けた差し込み孔32dに差し込まれて通過する。
【0076】
その後、
図10の破線矢印(5)に示すように、作業者あるいは作業ロボットによってタブ52bの先端側を把持しつつ、プーリ支持部PSの突出方向(Y軸方向)から所定荷重で引っ張る。すると、タブ52bの幅広部52cが弾性変形しつつ差し込み孔32d(
図4参照)を通過して、タブ52bの差し込み孔32dに対する差し込み固定が完了する。これにより、リヤ側プーリユニット24の組み立てが完了する。このように、シール部材50の装着作業は、シール部材50を支持本体32およびカバー部材40に被せる作業(第1工程)と、タブ52bを引っ張る作業(第2工程)との合計2工程の作業のみで、容易かつ確実に行うことができる。
【0077】
また、シール部材50の装着作業は、
図3に示すように、ユニット本体30を、アウターパネル15の第2壁部15bに固定した状態で行うこともできる。すなわち、
図3に示すように、第1壁部15aと第2壁部15bとが連結される角部Cにリヤ側プーリユニット24を近接配置した状態のもとで、シール部材50を装着することができる。これは、比較的スペースに余裕が無い車室外側(図中上側)を、係合凸部43aと係合凹部51bとの係合により抜け止め状態とし、かつ、比較的スペースに余裕がある車室内側(図中下側)を、作業者等により引っ張られるタブ52bと差し込み孔32dとの係合により抜け止め状態としたことに依るものである。このように、リヤ側プーリユニット24においては、種々の組み立て手順にも対応可能となっている。
【0078】
以上詳述したように、本実施の形態に係るリヤ側プーリユニット24によれば、第2壁部15bに取り付けられるベース部31と、ベース部31の一側面SFに設けられ、当該一側面SFと交差する方向に突出されたプーリ支持部PSと、プーリ支持部PSに回動自在に設けられ、開側ケーブル21が巻き掛けられるプーリ24aと、プーリ支持部PSに設けられ、開側ケーブル21を外部に引き出すケーブル引き出し部51aと、を備え、ケーブル引き出し部51aを、一側面SFをプーリ支持部PSの突出方向から見たときに、一側面SFの投影面積ARの範囲外に設けた。
【0079】
これにより、ベース部31が拡がる方向とケーブル引き出し部51aからの開側ケーブル21の引き出し方向とを、互いに交差させることができる。したがって、リヤ側プーリユニット24の取り付け方向(固定ボルトBTの延在方向)を車両10の前後方向にすることができる。よって、プーリユニットのバリエーションを増やして、種々のニーズに対応することが可能となる。
【0080】
また、本実施の形態に係るリヤ側プーリユニット24によれば、カバー部材40およびシール部材50の、プーリ支持部PSの突出方向と交差する方向に沿うケーブル引き出し部51a側に、シール部材50のカバー部材40からの脱落を防止する係合凸部43aおよび係合凹部51bを設け、支持本体32およびシール部材50の、プーリ支持部PSの突出方向と交差する方向に沿うケーブル引き出し部51a側とは反対側に、シール部材50の支持本体32からの脱落を防止する差し込み孔32dおよびタブ52bを設けた。
【0081】
これにより、支持本体32およびカバー部材40に対するシール部材50の固定箇所を2箇所として装着作業性を向上させつつ、シール部材50の密着面52aの全面を一側面SFおよび第1装着部42に対して均一かつ確実に密着させることができる。
【0082】
さらに、本実施の形態に係るリヤ側プーリユニット24によれば、シール部材50の固定構造を、係合凸部43aと係合凹部51bとの係合と、差し込み孔32dに対するタブ52bの差し込み固定とで構成したので、
図3に示すように、アウターパネル15の角部Cに、リヤ側プーリユニット24を寄せて配置することができる。したがって、プーリユニットの固定スペースが小さいコンパクトカー(軽自動車等)にも、容易に適用することが可能となる。
【0083】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜、変形や改良等が可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態では、リヤ側プーリユニット24とフロント側プーリユニット25とを、それぞれ異なる構造としたが、本発明はこれに限らず、フロント側のプーリユニットを、リヤ側プーリユニット24と同様の構造としても良い。
【0084】
その他、上記実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,配置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であって、上述のものに限定されるものではない。