特許第6603145号(P6603145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603145
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】内視鏡洗浄管理システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/12 20060101AFI20191028BHJP
【FI】
   A61B1/12 510
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-12610(P2016-12610)
(22)【出願日】2016年1月26日
(65)【公開番号】特開2017-131335(P2017-131335A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】松島 大輔
【審査官】 森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−57596(JP,A)
【文献】 特開2015−87922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の洗浄情報を、洗浄作業者ごとに管理する洗浄記録管理部と、
洗浄作業者による洗浄後の残留物の測定データを受け付ける測定データ受付部と、
前記測定データ受付部が受け付けた測定データを、洗浄作業者ごとに管理する測定データ管理部と、
前記洗浄記録管理部が管理する洗浄履歴と、前記測定データ管理部が管理する測定データにもとづいて、洗浄作業者の作業習熟度を示すスキルレベルを導出する習熟度評価部と、
導出した洗浄作業者のスキルレベルを、洗浄作業者の属性情報として登録する属性設定部と、
を備えることを特徴とする内視鏡洗浄管理システム。
【請求項2】
前記習熟度評価部は、内視鏡の機種ごとに、洗浄作業者のスキルレベルを導出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡洗浄管理システム。
【請求項3】
前記習熟度評価部は、属性情報として第1スキルレベルが設定されている洗浄作業者の洗浄履歴および測定データが所定の第1条件を満たす場合に、当該洗浄作業者のスキルレベルを、第2スキルレベルに変更する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の内視鏡洗浄管理システム。
【請求項4】
前記習熟度評価部は、属性情報として第2スキルレベルが設定されている洗浄作業者の洗浄履歴および測定データが所定の第2条件を満たさない場合に、当該洗浄作業者のスキルレベルを、第1スキルレベルに変更する、
ことを特徴とする請求項3に記載の内視鏡洗浄管理システム。
【請求項5】
前記測定データ管理部が、洗浄作業者の複数回の洗浄における測定データを管理している場合に、前記習熟度評価部は、スキルレベル導出時に近い時期に測定された所定数の測定データにもとづいて、洗浄作業者のスキルレベルを導出する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の内視鏡洗浄管理システム。
【請求項6】
洗浄作業者に、作業手順情報を提供する作業手順提供部を、さらに備え、
前記作業手順提供部は、洗浄作業者の属性情報として登録されているスキルレベルに応じて、提供する作業手順情報を決定する、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の内視鏡洗浄管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡洗浄に関する管理を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
日本では1998年に日本消化器内視鏡学会が「消化器内視鏡機器洗浄・消毒法ガイドライン」を発表し、医療施設では内視鏡検査による感染を防止するために、発表されたガイドラインを遵守した洗浄、消毒が行われている。内視鏡の洗浄、消毒を効率的に行うために、内視鏡洗浄装置を利用する医療施設は多く、内視鏡洗浄装置は、内視鏡の洗浄工程、消毒工程、すすぎ工程を自動的に行う。
【0003】
特許文献1は、洗浄後の内視鏡の洗浄レベルが所定基準を満たしていないと判定した場合に、内視鏡の再洗浄を実施する内視鏡洗浄消毒装置を開示する。この内視鏡洗浄消毒装置は、内視鏡の洗浄レベルが所定基準を満たしていると判定されるまでに実施された洗浄回数に応じて内視鏡の使用可能時間を設定する。内視鏡が接続された内視鏡プロセッサは、内視鏡の洗浄が行われてからの経過時間が使用可能時間を超えている場合、内視鏡の使用を禁止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−71028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療機器は、滅菌・消毒カテゴリーによりクリティカル機器、セミクリティカル機器、ノンクリティカル機器に分類されるが、内視鏡はセミクリティカル機器に属し、滅菌もしくは高度作用消毒を要求される。そのため内視鏡洗浄装置は高度作用消毒剤であるグルタルアルデヒド(GA)等の薬液を使用する。
【0006】
洗浄作業者は、内視鏡洗浄装置の洗浄槽に内視鏡をセットする前に、吸引・鉗子チャンネルの吸引洗浄、内視鏡外表面の洗浄、吸引・鉗子チャンネルのブラッシングを義務づけられる。内視鏡洗浄装置では高度作用消毒剤が使用されるが、内視鏡に残留している蛋白残留物が、高度作用消毒剤の効果を落とすことが知られている。そのため洗浄作業者は内視鏡を洗浄槽にセットする前に、患者の粘液や血液などによる蛋白残留物をマニュアル洗浄により可能な限り除去する必要がある。
【0007】
洗浄作業者のマニュアル洗浄スキルには個人差があり、また内視鏡を使用した検査の種別によって内視鏡の汚染度は異なる。特にESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)ではナイフで病変部の周囲の粘膜を切り取るため出血を伴い、汚染度は、他の検査種別と比較して高い。また内視鏡にも様々な機種が存在し、構造の違いから汚染しやすい箇所にも違いがある。
【0008】
このような事情から、医療施設は、洗浄作業者の習熟度を把握し、全ての洗浄作業者の洗浄スキルを引き上げるように努める必要がある。そこで医療施設において、個々の洗浄作業者のマニュアル洗浄習熟度を評価する仕組みの構築が切望されている。
【0009】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、洗浄作業者の洗浄業務の習熟度を評価する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の内視鏡洗浄管理システムは、内視鏡の洗浄情報を、洗浄作業者ごとに管理する洗浄記録管理部と、洗浄作業者による洗浄後の残留物の測定データを受け付ける測定データ受付部と、測定データ受付部が受け付けた測定データを、洗浄作業者ごとに管理する測定データ管理部と、洗浄記録管理部が管理する洗浄履歴と、測定データ管理部が管理する測定データにもとづいて、洗浄作業者の作業習熟度を示すスキルレベルを導出する習熟度評価部と、導出した洗浄作業者のスキルレベルを、洗浄作業者の属性情報として登録する属性設定部と、を備える。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、洗浄作業者の洗浄業務の習熟度を評価する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例にかかる洗浄管理システムの構成を示す図である。
図2】洗浄管理サーバの構成を示す図である。
図3】洗浄作業者のマニュアル洗浄履歴を示す図である。
図4】洗浄作業者ごとの測定データの履歴を示す図である。
図5】洗浄作業者ごとの測定データの平均残留量を示す図である。
図6】属性情報記録部に登録されるスキルレベルを示す図である。
図7】上級者に提供される洗浄の作業手順情報を示す図である。
図8】中級者および初級者に提供される洗浄の作業手順情報を示す図である。
図9】出血量テーブルの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施例にかかる洗浄管理システム1の構成を示す図である。洗浄管理システム1は、内視鏡検査で使用した内視鏡の洗浄処理を管理するためのシステムであり、内視鏡処理装置3、端末装置4、洗浄管理サーバ10、洗浄室に配置される表示装置5、ID読取部6および洗浄装置7を備える。図1に示す内視鏡処理装置3、端末装置4、表示装置5、ID読取部6、洗浄装置7は、LAN(ローカルエリアネットワーク)などのネットワーク2によって洗浄管理サーバ10と通信可能に接続される。
【0015】
内視鏡処理装置3は検査室に配置され、内視鏡が接続される。内視鏡処理装置3は内視鏡が接続されると、内視鏡の識別情報(スコープID)を取得し、スコープIDおよび検査に関する情報を、洗浄管理サーバ10に送信する。検査に関する情報は、検査の種別情報を含む。検査が開始されると、内視鏡処理装置3は、内視鏡で取得した画像データを処理し、表示装置に体内画像を表示する。また内視鏡処理装置3は、内視鏡のレリーズスイッチが押されたタイミングで撮影画像を取得する。取得された撮影画像は、画像サーバ(図示せず)に送信されて記録される。
【0016】
検査終了直後、洗浄作業者は、内視鏡外表面の拭き取りと、吸引・鉗子チャンネルの吸引洗浄を行う。この洗浄工程は、ベッドサイド洗浄とも呼ばれ、洗浄作業者は、洗浄した内視鏡を専用容器に入れて、周囲に触れないように洗浄室に運ぶ。
【0017】
洗浄室において、洗浄作業者は、シンク9で内視鏡をマニュアル洗浄(用手洗浄)する。シンク9の近傍には表示装置5が配置され、表示装置5には、洗浄管理サーバ10から作業手順を示す情報が提供されて、表示されてよい。このとき洗浄作業者のスキルレベルに応じて、提供される情報が異なってよい。
【0018】
洗浄作業者は、送気・送水ボタン、吸引ボタン、鉗子栓などを取り外し、流水で内視鏡外表面を洗浄する。それから洗浄作業者は、専用のチャンネル洗浄ブラシを用いて、吸引・鉗子チャンネルをブラッシングする。また取り外した送気・送水ボタン、吸引ボタン、鉗子栓をブラシを用いて洗浄する。
【0019】
洗浄作業者は、自身を識別するための識別情報(ユーザID)を記録したIDカードを有し、マニュアル洗浄の開始前に、シンク9の脇に配置されたID読取部6にユーザIDを読み取らせる。また内視鏡には識別情報(スコープID)を印刷したテープが貼り付けられ、洗浄作業者は、マニュアル洗浄の開始前に、ID読取部6にスコープIDを読み取らせる。ID読取部6は、読み取ったユーザIDおよびスコープIDをマニュアル洗浄に関する洗浄情報として洗浄管理サーバ10に送信し、これにより洗浄管理サーバ10は、内視鏡と、内視鏡をマニュアル洗浄した作業者とを関連付けて記録する。なお洗浄作業者は、ユーザIDを記録したRFIDタグを有して、RFIDリーダであるID読取部6にユーザIDを読み取らせてもよい。このとき内視鏡もスコープIDを記録したRFIDタグを有して、ID読取部6にスコープIDを読み取らせてもよい。
【0020】
洗浄室には洗浄装置7が配置され、マニュアル洗浄された内視鏡は、洗浄装置7の洗浄槽にセットされて機械洗浄される。このときID読取部8によって、洗浄作業者のユーザIDおよび内視鏡のスコープIDが読み取られて、機械洗浄に関する洗浄情報として洗浄管理サーバ10に送信される。これにより内視鏡と、内視鏡を機械洗浄した作業者とが関連づけて記録される。
【0021】
医療施設では、マニュアル洗浄された内視鏡の残留物を測定して、適切なマニュアル洗浄が実施されているかチェックする。全数チェックが理想的であるが、チェックには一定の時間が必要なため、現実には抜取チェックを行い、内視鏡の残留物を測定する。特に内視鏡の蛋白残留物は、洗浄装置7で使用する高度作用消毒剤の効果を低減させるため、マニュアル洗浄によって蛋白残留物が十分に除去されていることは、感染防止のために重要である。そこで洗浄管理システム1では、マニュアル洗浄業務が適切に実施されているか確認するために、マニュアル洗浄された内視鏡の残留物の残留量を、洗浄装置7の洗浄槽に入れる前に測定して洗浄作業者ごとに管理し、洗浄作業者の習熟度評価に利用する。
【0022】
端末装置4はナースステーションに配置され、医療従事者により操作される。実施例において端末装置4は、マニュアル洗浄後の内視鏡の残留物測定データを入力するために利用される。入力された残留物の測定データは、洗浄管理サーバ10に送信されて、管理される。
【0023】
図2は、洗浄管理サーバ10の構成を示す。洗浄管理サーバ10は、検査情報受付部20、洗浄記録管理部22、測定データ受付部24、測定データ管理部26、習熟度評価部28、属性設定部30、作業手順提供部32、作業可否判定部34および記録部40を備える。これらの構成はハードウエア的には、任意のプロセッサ、メモリ、補助記憶装置、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0024】
洗浄記録管理部22は、内視鏡の洗浄情報を、洗浄作業者ごとに管理する。具体的に洗浄記録管理部22は、ID読取部6で読み取られたマニュアル洗浄に関する洗浄情報を取得し、洗浄作業者の洗浄履歴として管理して、洗浄情報記録部44に記録する。なお洗浄記録管理部22は、ID読取部8で読み取られた機械洗浄に関する洗浄情報を取得し、洗浄作業者の洗浄履歴として管理して、洗浄情報記録部44に記録してもよい。
【0025】
図3は、洗浄情報記録部44において管理される洗浄作業者のマニュアル洗浄履歴を示す。洗浄記録管理部22は、洗浄作業者ごとに、内視鏡機種ごとのマニュアル洗浄の回数を管理する。洗浄記録管理部22は、ID読取部6からユーザIDおよびスコープIDを取得すると、スコープIDから内視鏡の機種を特定して、当該ユーザIDの該当機種の洗浄回数を1インクリメントする。このようにして洗浄情報記録部44は、洗浄作業者ごとに、内視鏡機種ごとのマニュアル洗浄の回数を記録する。さらに洗浄情報記録部44は、洗浄作業者の機械洗浄の履歴を記録してもよい。
【0026】
なお洗浄情報記録部44には、取得した洗浄情報がそのまま記録されてよい。つまり洗浄情報記録部44には、ユーザID、スコープID、洗浄日が関連付けて記録されてよい。
【0027】
マニュアル洗浄後の内視鏡に残っている蛋白残留量は、様々な試薬や機器により測定されてよいが、ここでは残留量を定量的に測定できる手段を使用する。たとえば綿棒で内視鏡外表面を所定回数こすり、綿棒についた汚れと試薬とを反応させ、試薬を測定器に入れて蛋白残留量を測定する検査キットを使用してもよい。蛋白残留量を測定する試薬の例としてアミドブラック10B色素があるが、他の試薬を使用してもよい。なお綿棒でこする箇所は内視鏡機種ごとに定められ、測定の前提条件にばらつきが生じないようにする。
【0028】
測定結果は測定器に表示され、また測定器から印刷され、看護師は端末装置4から測定データを入力する。このとき測定データとともに、洗浄作業者のID(ユーザID)、内視鏡の機種(スコープ機種ID)、洗浄日が入力される。入力された測定データは、洗浄管理サーバ10に送信される。なお測定器がネットワーク2に接続されて、測定データが、洗浄作業者(ユーザID)、内視鏡の機種(スコープ機種ID)、洗浄日とともに洗浄管理サーバ10に送信されてもよい。
【0029】
測定データ受付部24は、洗浄作業者によるマニュアル洗浄後の残留物の測定データを受け付ける。測定データ管理部26は、測定データ受付部24が受け付けた測定データを、洗浄作業者ごとに管理する。
【0030】
図4は、測定データ記録部46において管理される洗浄作業者ごとの測定データの履歴を示す。測定データ管理部26は、洗浄作業者ごとに測定データを管理する。測定データは、内視鏡の蛋白残留量を定量的に測定した結果であり、測定データ記録部46には、ユーザID、内視鏡機種、日付および測定データが関連付けて記録される。なお図4に示す例では、洗浄作業者Aの測定データのみを示しているが、他の洗浄作業者B、Cの測定データについても同様に測定データ記録部46に記録される。
【0031】
図5は、測定データ記録部46において管理される洗浄作業者ごとの測定データの平均残留量を示す。測定データ管理部26は、図4に示す測定データの履歴をもとに、洗浄作業者ごとに、内視鏡機種ごとの平均残留量を算出し、測定データ記録部46に記録する。測定データ管理部26は、現在日時から近い時期に測定された所定数の測定データにもとづいて平均残留量を算出する。たとえば測定データ記録部46は、同一機種の直近の5つの測定データから平均残留量を算出してよい。平均残留量は、残留量に関する所定の基準値と比較するために利用され、平均残留量が少なければ、マニュアル洗浄が良好に実施されていることが評価され、平均残留量が多ければ、マニュアル洗浄が適切に実施されていないことが評価される。
【0032】
習熟度評価部28は、洗浄記録管理部22が管理する洗浄履歴と、測定データ管理部26が管理する測定データにもとづいて、洗浄作業者の作業習熟度を示すスキルレベルを導出する。習熟度評価部28は、内視鏡の機種ごとに、洗浄担当者のスキルレベルを導出する。属性設定部30は、習熟度評価部28が導出した洗浄作業者のスキルレベルを、洗浄作業者の属性情報として登録する。具体的に属性設定部30は、洗浄作業者のスキルレベルを、内視鏡機種ごとに、属性情報記録部48に記録する。
【0033】
習熟度評価部28は、2段階以上のスキルレベルを設定し、洗浄記録管理部22が管理する洗浄履歴と、測定データ管理部26が管理する平均残留量にもとづいて、洗浄作業者のスキルレベルを導出する。実施例では3段階のスキルレベルを設定し、スキルレベル1は作業習熟度が高いこと、スキルレベル2は作業習熟度が普通であること、スキルレベル3は作業習熟度が低いことを表現する。
【0034】
平均残留量に関して、習熟度評価部28は、平均残留量を第1基準値および第2基準値と比較する。たとえば第1基準値は0.5、第2基準値は1とする。平均残留量が第1基準値以下である場合、習熟度評価部28はスキルレベル1を導出し、平均残留量が第1基準値より多く、第2基準値以下である場合、習熟度評価部28はスキルレベル2を導出し、平均残留量が第2基準値より多い場合、習熟度評価部28はスキルレベル3を導出する。
【0035】
洗浄履歴に関して、習熟度評価部28は、ある内視鏡機種の洗浄回数が所定回数(たとえば100回)未満であれば、その内視鏡機種に関してスキルレベル1の設定を禁止する。したがって仮に習熟度評価部28が、平均残留量に関してスキルレベルを1と導出していても、その内視鏡機種の洗浄回数が100回未満であれば、スキルレベルを2に下げる。マニュアル洗浄の技術習得には経験が大きく影響するため、100回に到達するまでは、スキルレベル1を与えないようにする。なお平均残留量に関してスキルレベル1が導出されている場合に、洗浄回数が基準の100回に到達すると、習熟度評価部28は、当該洗浄作業者に対してスキルレベル1を導出する。
【0036】
属性設定部30は、洗浄作業者のスキルレベルを、洗浄作業者の属性情報として属性情報記録部48に記録する。
図6は、属性情報記録部48に登録されるスキルレベルを示す。ここでスキルレベル1の洗浄作業者を「上級者」、スキルレベル2の洗浄作業者を「中級者」、スキルレベル3の洗浄作業者を「初級者」と呼ぶと、洗浄作業者Aは、内視鏡機種LLL、MMM、NNNに関しては中級者であり、内視鏡機種OOOに関しては上級者と設定されている。このように実施例では、洗浄回数のみならず、蛋白残留量の測定結果も加味してスキルレベルを設定することで、洗浄作業者の洗浄作業を適切に評価できる。また内視鏡機種ごとにスキルレベルを設定することで、内視鏡機種ごとの得意、不得意も評価できる。
【0037】
習熟度評価部28は、洗浄作業者のスキルレベルを導出した後、測定データ受付部24が当該洗浄作業者についての新しい測定データを受け付けて、測定データ管理部26が、新たな平均残留量を算出すると、スキルレベルを再評価する。また洗浄記録管理部22が洗浄情報を取得し、当該洗浄情報に含まれる洗浄作業者の洗浄回数が所定回数(100回)に到達した場合も、習熟度評価部28は、スキルレベルを再評価する。
【0038】
習熟度評価部28は、属性情報として第1スキルレベルが設定されている洗浄作業者の洗浄履歴および測定データが所定の第1条件を満たす場合に、当該洗浄作業者のスキルレベルを、第2スキルレベルに変更する。第1条件は、レベルアップするための条件であり、習熟度評価部28は、スキルレベル3が設定されている洗浄作業者の平均残留量が第2基準値以下となった場合に、スキルレベルをスキルレベル2に変更する。また習熟度評価部28は、スキルレベル2、3が設定されている洗浄作業者の平均残留量が第1基準値以下となった場合に、スキルレベルをスキルレベル1に変更する。変更されたスキルレベルは、属性設定部30によって、洗浄作業者の属性情報として属性情報記録部48に登録される。
【0039】
一方で、習熟度評価部28は、属性情報として第2スキルレベルが設定されている洗浄作業者の洗浄履歴および測定データが所定の第2条件を満たさない場合に、当該洗浄作業者のスキルレベルを、第1スキルレベルに変更する。第2条件はレベルを維持するための条件であり、習熟度評価部28は、スキルレベル2が設定されている洗浄作業者の平均残留量が第2基準値以下とならず、第2基準値を上回った場合に、スキルレベルをスキルレベル3に変更する。また習熟度評価部28は、スキルレベル1が設定されている洗浄作業者の平均残留量が第1基準値以下とならず、第1基準値を上回った場合に、スキルレベルをスキルレベル2または3に変更する。
【0040】
なお、レベルを維持するための第2条件は、レベルアップするための第1条件よりも厳しい基準値によって定義されてもよい。習熟度評価部28は、スキルレベル2が設定されている洗浄作業者の平均残留量が第3基準値を上回った場合に、スキルレベルをスキルレベル3に変更してもよい。なお第2条件を第1条件よりも厳しくする場合、基準値と比較する平均残留量は、レベルアップ後の測定データから算出される平均残留量を使用する。ここで第1基準値<第3基準値<第2基準値であり、たとえば第3基準値は0.9とする。また習熟度評価部28は、スキルレベル1が設定されている洗浄作業者の平均残留量が第4基準値を上回った場合に、スキルレベルをスキルレベル2または3に変更する。ここで第4基準値<第1基準値であり、たとえば第4基準値は0.4とする。このように第2条件を第1条件よりも厳しい基準値で定義することで、レベルアップした後も、スキルレベルを維持するための緊張感をもたせられる。
【0041】
このように洗浄作業者の洗浄履歴および測定データが更新されると、習熟度評価部28は、その都度、洗浄作業者の習熟度を再評価してよい。このように習熟度を再評価することで、洗浄作業者に対して、スキルレベルをアップさせることへのモチベーションを与えられる。また長期間レベルダウンすることなく上級者であり続ける洗浄作業者は優良洗浄者として表彰し、一方でレベルダウンした洗浄作業者に対しては、再トレーニングを受講させるなどのペナルティを課すことで、日々の洗浄作業に緊張感をもたせることが可能となる。マニュアル洗浄は感染防止のために非常に重要な作業であるため、レベルアップ、レベルダウンする評価制度を導入することで、マニュアル洗浄の質を高く維持する仕組みを構築できる。
【0042】
また習熟度評価部28は、測定データ管理部26が算出する直近の所定数分の測定データの平均値を、洗浄作業者のスキルレベルの導出に利用する。習熟度評価部28が、スキルレベル導出時に近い時期に測定された所定数の測定データにもとづいて、洗浄作業者のスキルレベルを導出することで、洗浄作業者の最近の作業に応じた評価を行うことができる。
【0043】
以下、習熟度評価部28により導出されたスキルレベルの利用法を説明する。
洗浄室において、シンク9の近傍には表示装置5が配置されており、作業手順提供部32は、表示装置5から洗浄作業者に、マニュアル洗浄に関する作業手順情報を提供する。このとき作業手順提供部32は、洗浄作業者の属性情報として登録されているスキルレベルに応じて、提供する作業手順情報を決定する。
【0044】
手順データ記録部50は、洗浄の作業手順を示す表示情報を記録している。手順データ記録部50は、内視鏡機種ごとに、上級者用の作業手順情報と、中級者および初級者用の作業手順情報とを別個に有している。上級者用の作業手順情報は、作業の各工程の順番をシンプルにテキストで示すものであってよく、一方で中級者および初級者用の作業手順情報は、作業の各工程における詳細を示し、且つ図解入りで説明するものであってよい。
【0045】
図7は、上級者に提供される洗浄の作業手順情報を示す。上級者用の作業手順情報は、作業の各工程の実施事項の順番を示す。上級者は、表示装置5に表示される作業手順情報をみながら作業を進め、所定のワード(たとえば「OK」)を発声すると、上から順番に実施事項のチェックマークが点灯して、実施済みであることが入力されてよい。これにより洗浄作業者は、次に実施するべき事項を容易に確認できるようになる。
【0046】
図8は、中級者および初級者に提供される洗浄の作業手順情報を示す。中級者および初級者用の作業手順情報は、作業の各工程における詳細な実施事項を図解入りで示す。図7に示す作業手順情報と比べると、図8に示す作業手順情報は細かく、中級者および初級者は、表示装置5に表示される作業手順情報をみながら、正確且つ丁寧な洗浄作業を心がける。たとえば洗浄作業者が、所定のワード(たとえば、「次へ」)を発声すると、次のページが表示される。
【0047】
使用済み内視鏡が洗浄室に運び込まれ、ID読取部6が、読み取ったユーザIDおよびスコープIDを洗浄管理サーバ10に送信すると、洗浄記録管理部22が、ユーザIDおよびスコープIDを取得し、作業手順提供部32に提供する。作業手順提供部32は、提供されたスコープIDをもとに内視鏡機種を特定し、ユーザIDをもとに属性情報記録部48から、洗浄作業者および内視鏡機種に登録されているスキルレベルを特定する。作業手順提供部32は、特定した内視鏡機種およびスキルレベルから、手順データ記録部50に記録されている作業手順情報を読み出し、表示装置5に提供する。これにより表示装置5には、これからマニュアル洗浄する内視鏡機種および洗浄作業者のスキルレベルに応じた作業手順情報が表示される。
【0048】
なお内視鏡が使用された検査によって、内視鏡の汚染度は異なる。出血の多い検査種別では、汚染度が高くなるため、マニュアル洗浄は、特に慎重に実施される必要がある。
図9は、出血量テーブルの例を示す。出血量テーブル52は、検査種別ごとに、出血量の程度を記録しており、ランク1は出血なし、ランク2は出血量が少ない、ランク3は出血量が普通、ランク4は出血量が多い、ことを表現する。
【0049】
検査室において内視鏡処理装置3は、スコープIDおよび検査種別の情報を、洗浄管理サーバ10に送信する。検査が終了すると、使用済み内視鏡が洗浄室に運び込まれ、洗浄作業者は、ユーザIDおよびスコープIDをID読取部6に読み取らせる。
【0050】
図2に戻り、検査情報受付部20は、スコープIDおよび検査情報を、内視鏡処理装置3から受け付け、検査情報記録部42に記録する。その後、検査が終了して、使用済み内視鏡が洗浄室に運び込まれ、ID読取部6が、読み取ったユーザIDおよびスコープIDを洗浄管理サーバ10に送信すると、洗浄記録管理部22が、ユーザIDおよびスコープIDを取得し、作業手順提供部32に提供する。作業手順提供部32は、提供されたスコープIDをもとに、検査情報記録部42に記録されている検査情報を参照し、これからマニュアル洗浄する内視鏡が使用された検査種別を特定する。
【0051】
作業手順提供部32は、出血量テーブル52を参照して、特定した検査種別の出血量のランクを調べる。このとき検査種別にランク4、つまり出血量が多いことが設定されていれば、作業手順提供部32は、洗浄作業者が上級者であっても、中級者および初級者用の作業手順情報を手順データ記録部50から読み出して、表示装置5に表示させる。このように、内視鏡が出血量の多い検査で使用されていた場合には、上級者に対しても詳細な手順情報を提示して、慎重な洗浄作業を促すことが好ましい。
【0052】
なお作業手順提供部32は、上級者用の作業手順情報を表示装置5に表示させ、その際に、出血量が多い検査で使用されたため、注意して洗浄するべきことを、表示装置5に表示させてもよい。これにより洗浄作業者は、慎重に作業を行うべきことを認識できる。
【0053】
以上、本発明を複数の実施例をもとに説明した。これらの実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0054】
たとえば上級者であっても、所定期間(たとえば1月)洗浄していない内視鏡機種をマニュアル洗浄する場合には、作業手順提供部32が、中級者および初級者用の作業手順情報を手順データ記録部50から読み出して、表示装置5に表示させてもよい。実施例で説明したように、洗浄情報記録部44には、ユーザID、スコープID、洗浄日が関連付けて記録されており、作業手順提供部32は、洗浄情報記録部44の洗浄履歴を参照することで、前回の洗浄日を特定して、洗浄していない期間を算出できる。
【0055】
また作業可否判定部34は、初級者が、出血量の多い検査で使用された内視鏡を洗浄しようとする場合に、当該初級者が洗浄することを禁止してもよい。作業可否判定部34は、ID読取部6から送信されたスコープIDをもとに、検査情報記録部42に記録されている検査情報を参照し、これからマニュアル洗浄する内視鏡が使用された検査種別を特定する。作業可否判定部34は、出血量テーブル52を参照して、特定した検査種別の出血量のランクを調べる。このとき検査種別にランク4、つまり出血量が多いことが設定されていれば、作業可否判定部34は、洗浄作業者が初級者である場合に、当該洗浄担当者による洗浄を禁止する。たとえば作業可否判定部34は、作業を、中級者以上の他の作業者に変わってもらうべきことを、表示装置5に表示してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1・・・洗浄管理システム、2・・・ネットワーク、3・・・内視鏡処理装置、4・・・端末装置、5・・・表示装置、6・・・ID読取部、7・・・洗浄装置、8・・・ID読取部、9・・・シンク、10・・・洗浄管理サーバ、20・・・検査情報受付部、22・・・洗浄記録管理部、24・・・測定データ受付部、26・・・測定データ管理部、28・・・習熟度評価部、30・・・属性設定部、32・・・作業手順提供部、34・・・作業可否判定部、40・・・記録部、42・・・検査情報記録部、44・・・洗浄情報記録部、46・・・測定データ記録部、48・・・属性情報記録部、50・・・手順データ記録部、52・・・出血量テーブル。
図1
図2
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図9