(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603148
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】軒樋用吊り具及び軒先構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/072 20060101AFI20191028BHJP
【FI】
E04D13/072 501J
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-17569(P2016-17569)
(22)【出願日】2016年2月1日
(65)【公開番号】特開2017-137636(P2017-137636A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2018年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】593202069
【氏名又は名称】北恵株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松尾 浩嗣
(72)【発明者】
【氏名】塚本 憲一
(72)【発明者】
【氏名】前田 敏秀
【審査官】
前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−021272(JP,A)
【文献】
特開2009−150089(JP,A)
【文献】
実開昭63−148722(JP,U)
【文献】
特開昭63−201250(JP,A)
【文献】
実開昭63−116631(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂木上面に沿って取り付けるための第一取付部と、軒樋を取り付けるための吊り部と、上下方向に設置された破風部材の外側面に沿って取り付けるための第二取付部とを備え、第二取付部は吊り部に連結した外側部と、外側部に脱着可能な内側部と、第一取付部の一端から延設され、外側部及び内側部によって挟持される挿入部とを有する軒樋用吊り具。
【請求項2】
前記吊り部が着脱可能な構造を有する請求項1に記載の軒樋用吊り具。
【請求項3】
第一取付部は垂木上面への取り付け位置の指標を有する請求項1又は2に記載の軒樋用吊り具。
【請求項4】
第一取付部は取付用穴を少なくとも一カ所有する請求項1〜3の何れか一項記載の軒樋用吊り具。
【請求項5】
第二取付部は取付用穴を少なくとも一カ所有する請求項1〜4の何れか一項に記載の軒樋用吊り具。
【請求項6】
第二取付部は外側部、内側部及び挿入部を貫通する取付用穴を少なくとも一つ有する請求項5に記載の軒樋用吊り具。
【請求項7】
吊り部及び第二取付部の外側部を構成する部品と、第一取付部及び挿入部を構成する部品と、第二取付部の内側部を構成する部品を有する請求項1〜6の何れか一項に記載の軒樋用吊り具。
【請求項8】
垂木と、垂木の外側面に隣接して上下方向に設置された破風部材と、垂木及び破風部材の上側に設置された野地板と、野地板の上側に設置された屋根材と、請求項1〜7の何れか一項に記載の軒樋用吊り具と、軒樋とを備えた軒先構造であって、軒樋は軒樋用吊り具の吊り部に取り付けられており、軒樋用吊り具の第一取付部は垂木の上面に沿って取り付けられていると共に垂木の上面及び野地板の下面の間に挟まれており、軒樋用吊り具の第二取付部は破風部材の外側面に沿って取り付けられている軒先構造。
【請求項9】
軒樋用吊り具の破風部材の外側面に沿った取り付けは、軒樋用吊り具の第二取付部及び破風部材を貫通し、先端が垂木の内部で停止している少なくとも一本の固定用部材によって行われている請求項8に記載の軒先構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軒樋用吊り具に関する。また、本発明は建物の軒先構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の屋根の軒先には一般に、屋根面から流れ落ちる雨水を受けるための軒樋が軒先に沿って敷設されている。
図2には従来の一般的な軒先構造の例を説明する概略断面図が示されている。この軒先構造は、垂木1と、垂木1の外側面に隣接して上下方向に設置された破風部材4と、垂木1及び破風部材4の上側に設置された野地板2と、野地板2の上側に設置された屋根材3と、破風部材4の外側に配置された軒樋6と、軒樋6を支持する軒樋用吊り具50を具備している。
【0003】
軒樋の設置工事は一般的に垂木、野地板、屋根材及び破風部材などの外装工事終了後に行うことが一般的である(例えば非特許文献1のp18参照)。このため、軒樋用吊り具は破風部材の外側面、又は、破風部材がない場合には垂木の外側面にビスや釘等の固定用部材を用いて取り付けることが一般的となっている。このような軒先構造は例えば特許文献1の
図1や特許文献2の
図2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−150089号公報
【特許文献2】特開平7−269050号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】福本雅嗣著、「木造住宅・工事管理テキスト」特定非営利活動法人建築技術支援協会、2011年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、軒樋用吊り具は破風部材が存在する場合は、破風部材の外側面に取り付けることが一般的となっているため、破風部材が破損しやすい材質の場合や、破風部材が窯業系の材質などであることによって軒樋用吊り具を固定するビスや釘が抜けやすい場合は、雨、雪又は風などの影響で軒樋用吊り具が破風部材から脱落するおそれがある。
【0007】
また、破風部材が軒樋用吊り具を固定するビスや釘の固定効果を発現できない厚さの場合には、雨、雪又は風などの影響で軒樋用吊り具が脱落するおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、上記問題に着目してなされたもので、破風部材の材質及び厚さに関係なく軒先に取り付け可能な軒樋用吊り具を提供することを課題の一つとする。また、本発明は本発明に係る軒樋用吊り具を備えた軒先構造を提供することを別の課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は一側面において、垂木上面に沿って取り付けるための第一取付部と、軒樋を取り付けるための吊り部とを備えた軒樋用吊り具である。
【0010】
本発明に係る軒樋用吊り具の一実施形態においては、前記吊り部が着脱可能な構造を有する。
【0011】
本発明に係る軒樋用吊り具の別の一実施形態においては、第一取付部は垂木上面への取り付け位置の指標を有する。
【0012】
本発明に係る軒樋用吊り具の更に別の一実施形態においては、第一取付部は取付用穴を少なくとも一カ所有する。
【0013】
本発明に係る軒樋用吊り具の更に別の一実施形態においては、上下方向に設置された破風部材の外側面に沿って取り付けるための第二取付部を更に備える。
【0014】
本発明に係る軒樋用吊り具の更に別の一実施形態においては、第二取付部は取付用穴を少なくとも一カ所有する。
【0015】
本発明に係る軒樋用吊り具の更に別の一実施形態においては、第二取付部は吊り部に連結した外側部と、外側部に脱着可能な内側部と、第一取付部の一端から延設され、外側部及び内側部によって挟持される挿入部とを有する。
【0016】
本発明に係る軒樋用吊り具の更に別の一実施形態においては、第二取付部は外側部、内側部及び挿入部を貫通する取付用穴を少なくとも一つ有する。
【0017】
本発明に係る軒樋用吊り具の更に別の一実施形態においては、吊り部及び第二取付部の外側部を構成する部品と、第一取付部及び挿入部を構成する部品と、第二取付部の内側部を構成する部品を有する。
【0018】
本発明は別の一側面において、垂木と、垂木の外側面に隣接して上下方向に設置された破風部材と、垂木及び破風部材の上側に設置された野地板と、野地板の上側に設置された屋根材と、第一取付部を有する本発明に係る軒樋用吊り具と、軒樋とを備えた軒先構造であって、軒樋は軒樋用吊り具の吊り部に取り付けられており、軒樋用吊り具の第一取付部は垂木の上面に沿って取り付けられていると共に垂木の上面及び野地板の下面の間に挟まれている軒先構造である。
【0019】
本発明は更に別の一側面において、垂木と、垂木の外側面に隣接して上下方向に設置された破風部材と、垂木及び破風部材の上側に設置された野地板と、野地板の上側に設置された屋根材と、第一取付部及び第二取付部を有する本発明に係る軒樋用吊り具と、軒樋とを備えた軒先構造であって、軒樋は軒樋用吊り具の吊り部に取り付けられており、軒樋用吊り具の第一取付部は垂木の上面に沿って取り付けられていると共に垂木の上面及び野地板の下面の間に挟まれており、軒樋用吊り具の第二取付部は破風部材の外側面に沿って取り付けられている軒先構造である。
【0020】
本発明に係る軒先構造の一実施形態においては、軒樋用吊り具の破風部材の外側面に沿った取り付けは、軒樋用吊り具の第二取付部及び破風部材を貫通し、先端が垂木の内部で停止している少なくとも一本の固定用部材によって行われている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、破風部材の材質及び厚さに関係なく高い取付強度で軒先に取り付け可能な軒樋用吊り具を提供することができる。このため、本発明によれば破風部材の材質及び厚さを含めた設計自由度を高めることができ、更にはコストダウンにも貢献できる。例えば従来では外表面を構成する破風部材が薄い場合のほか、金属製や窯業系の材質の場合には、下地として厚みのある木製の破風部材を必要としていたところ、そのような下地が不要となるため、工事の簡略化及び施工費用の低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る軒先構造の一実施例の概略断面図である。
【
図2】従来の一般的な軒先構造の一実施例の概略断面図であり、破風部材の外側面に固定部材を用いて軒樋用吊り具を取り付けている様子が示されている。
【
図3】本発明に係る軒樋用吊り具の一実施例の概略断面図である。
【
図4】本発明に係る軒樋用吊り具の一実施例の概略断面図であり、吊り部が着脱可能な構造の例が示されている。
【
図5-1】本発明に係る軒樋用吊り具の第一取付部及び挿入部を構成する部品の一実施例の概略図であり、当該部材には垂木上面への取り付け位置の指標として目盛り線が設けられている。
【
図5-2】本発明に係る軒樋用吊り具の第一取付部及び挿入部を構成する部材の一実施例の概略図であり、当該部材には垂木上面への取り付け位置の指標として切り欠きが設けられている。
【
図6】本発明に係る軒樋用吊り具の軒先への固定方法の一例として、固定部材を用いて第一取付部を垂木に取り付ける方法を示す。
【
図7】本発明に係る軒先構造の一実施例の概略図であり、垂木上面に沿って位置する第一取付部及び破風部材の外側面に沿って位置する第二取付部に固定部材を挿入し、軒樋用吊り具を軒先に固定した例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳しく説明する。
【0024】
図3には本発明に係る軒樋用吊り具5の一実施例の概略断面図が示されており、
図1にはこの軒樋用吊り具5を軒先に取り付けたときの軒先構造の一実施例の概略断面図が示されている。軒樋用吊り具5は、垂木1の上面に沿って取り付けるための第一取付部51と、軒樋6を取り付けるための吊り部52とを備える。本実施例に係る軒先構造は、垂木1と、垂木1の外側面に隣接して上下方向に設置された破風部材4と、垂木1及び破風部材4の上側に設置された野地板2と、野地板2の上側に設置された屋根材3と、軒樋用吊り具5と、軒樋6とを備える。軒樋6は軒樋用吊り具5の吊り部52に取り付けられている。
【0025】
上述したように、
図2に示すような従来の軒樋用吊り具50は、ビスや釘等の固定用部材8を用いて上下方向に設置された破風部材4の外側面に固定されている。軒樋6には雨、雪又は風の力がかかる可能性があるため、破風部材4が破損しやすい材質の場合、または破風部材4が薄く、ビスや釘の固定効果を発揮できない場合は破風部材4から軒樋用吊り具50が脱落しやすい。
【0026】
これに対し、本実施例に係る軒樋用吊り具5は垂木1の上面に沿って取り付けるための第一取付部51を有しており、
図1に示すように垂木1の上面へ第一取付部51を取り付けることができる。このため、破風部材4の材質、厚さの影響を受けずに軒樋用吊り具5を軒先に固定することが可能である。また、垂木1は屋根の骨格を形成する構造材であり、屋根を支えることができる程度に十分に厚みのある部材が利用されることから、ビスや釘等の固定用部材8による固定効果も高い。更に、垂木1の上面に軒樋用吊り具5の第一取付部51を設けることで重力による固定力が得られるという利点も得られる。
【0027】
そのため、破風部材4の材質及び厚さを含めた設計自由度が高くなり、例えば破風部材4の材質を木材のみならず、樹脂や金属などとすることも厚手の木製下地を要することなく可能であり、破風部材4の厚さも軒樋用吊り具5の取付強度を気にすることなく設定可能である。
【0028】
また、本実施例に係る軒先構造において、軒樋用吊り具5の第一取付部51は垂木1の上面及び野地板2の下面の間に挟まれている。第一取付部51は外部から隠蔽されるため、雨、雪及び風の力を受けにくくなっており、このことも軒樋用吊り具5の脱落防止に貢献する。また、雨、雪及び風の影響が軽減されることにより、第一取付部51の材質は錆や劣化を起こし難いという利点も得られる。なお、軒樋用吊り具5の第一取付部51が垂木1の上面及び野地板2の下面の間に挟まれているというのは、第一取付部51が垂木1の上面及び野地板2の下面に接触した状態で直接挟まれている態様に限られず、他の部材を介して間接的に挟まれている態様も含む概念である。
【0029】
軒樋用吊り具5の第一取付部51は垂木1の上面及び野地板2の下面の間に挟まれていることから、軒樋用吊り具5の第一取付部51を垂木1の上面に取り付け、その後に野地板2を敷設する必要がある。第一取付部51は、垂木1上への取付工事を容易に行えるようにするため、更には、垂木1上への野地板2の敷設工事に与える影響を小さくするため、垂木1の上面と接する平面を有することが好ましく、典型的には平板状とすることができる。また、第一取付部51の厚さが厚い場合、軒樋用吊り具5を設置してない部分で垂木1と野地板2に隙間が生じるため、第一取付部51の厚さは薄い方が望ましい。具体的には、第一取付部51の厚さは5mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、例えば0.2〜5mmとすることができる。
【0030】
軒樋用吊り具5の材質は軒樋6を支持できる剛性、および雨、雪又は風の力がかかっても破損し難く、長期耐久性を有する材質であることが好ましい。例えば金属、ポリカーボネート、ASA樹脂、AES樹脂などが挙げられる。軒樋用吊り具5の材質を部位によって変更してもよい。ただし、軒樋用吊り具5の第一取付部51を薄くする場合、厚さに対する引張強度を考慮すると、少なくとも第一取付部51は樹脂製よりも金属製が好ましく、更に錆などの耐久性の良いステンレス、ガルバリウム等の金属または防錆剤などで表面コーティングした金属が望ましい。
【0031】
軒樋用吊り具5の第一取付部51は吊り部52まで直線状でも良いが、後の破風部材4の工事や意匠性などを考慮すると略くの字に曲げておくことが好ましい。そして、軒樋用吊り具5は、破風部材4の外側面に沿って取り付けるための第二取付部53を更に備えることがより好ましい。これにより、軒樋用吊り具5は破風部材4の外側面に沿って更に固定できるので、軒樋用吊り具5の取付強度が向上する。また、軒樋用吊り具5の第二取付部53は、積雪、落雪などの軒樋6の上方よりかかる力に対して耐え易いように、破風部材4の外側面と接する平面を有することが好ましく、典型的には略平板状とすることができる。
【0032】
軒樋用吊り具5は一体成形品でも良いが、
図1に示すとおり、第一取付部51の上には野地板2および屋根材3が工事されており、第一取付部51を簡単に取り外すことができないため、吊り部52に不具合があった場合などに簡単に交換できるよう、吊り部52を脱着可能な別部品とすることが望ましい。吊り部52の構造は軒樋6を取り付け可能であれば特に制限はなく、内吊り式及び外受け式の何れでもよいが、意匠性の観点からは内吊り式が好ましい。
【0033】
図4は吊り部52が脱着可能な軒樋用吊り具5の一実施例を説明する概略図である。本実施例に係る軒樋用吊り具5は、垂木1の上面に沿って取り付けるための第一取付部51と、軒樋6を取り付けるための吊り部52と、上下方向に設置された破風部材4の外側面に沿って取り付けるための第二取付部53を有する。第二取付部53は、吊り部52に連結した外側部53aと、外側部53aに脱着可能な内側部53bと、第一取付部51の一端から延設され、外側部53a及び内側部53bによって挟持される挿入部53cとを有する。
【0034】
また、本実施例に係る軒樋用吊り具5は、吊り部52及び第二取付部の外側部53aを構成する部品と、第一取付部51及び挿入部53cを構成する部品と、第二取付部の内側部53bを構成する部品の三つの部品を有する。
【0035】
外側部53aと内側部53bを脱着可能とする構造には特に制限はなく、例えば一方に凸部、他方に凹部を設けるなどして係着可能な構造とすることができる。本実施例においては、第二取付部53の外側部53aは破風部材4の外側面に平行な位置関係で設置される矩形板53a1と、矩形板53a1の左右端辺から立設された二つの側壁53a2とを備えた枠体構造を有し、側壁53a2に内側部53bとの脱着を可能とする凹部(又は凸部)等で構成された係着部53a3が設置されている。また、第二取付部53の内側部53bは、外側部53aの枠体構造の内面形状に対応し、外側部53aの枠体構造に収容可能な外面形状を有しており、外側部53aの側壁53a2の凹部(又は凸部)等で構成された係着部53a3と脱着可能な凸部(又は凹部)等で構成された係着部53b2を有する。なお、本実施例とは逆に、内側部53bを枠体構造とし、外側部53aを内側部53bの枠体構造に収容可能な構造としてもよい。
【0036】
また、
図4には、外側部53aの隠れている部分が点線で示されている。本実施例においては、外側部53aの矩形板53a1の内面は、内側部53bに向かって延びた一つ又は二つ以上の突起部53a4を有し、外側部53aの矩形板53a1の内面に対向する内側部53bの矩形面53b1には、外側部53aの突起部53a4と嵌合可能な一つ又は二つ以上の窪み部53b3を有する。一方、第一取付部51の一端から延設された平板状の挿入部53cには、外側部53aの突起部53a4を挿通可能な穴53c1が空いており、外側部53aの突起部53a4を挿入部53cの穴53c1に挿通して、内側部53bの窪み部53b3に嵌合することで、挿入部53cが外側部53a及び内側部53bによって挟持固定される。なお、本実施例とは逆に、53a4の箇所を窪み部とし、53b3の箇所を突起部とすることもできる。
【0037】
軒樋用吊り具5の第一取付部51を垂木1の上面に取り付ける場合、破風部材4の厚さを考慮して垂木1と吊り部52の距離を設ける必要がある。この距離を設けるにあたり第一取付部51に取り付け位置の指標を設けることが望ましい。取り付け位置の指標の例として、
図4に示す軒樋用吊り具5の第一取付部51及び挿入部53cを構成する部品において目盛り線51aを設けた例を
図5−1に、及び切り欠き51bを設けた例を
図5−2にそれぞれ示す。
図5−1及び
図5−2には、当該部品を矢印の方向から観察したときの概略図が示してある。
【0038】
従来、破風部材工事後に軒樋用吊り具を取り付ける場合は軒樋の直線性を出すために水平出しを行い、軒樋用吊り具の取り付け位置を決めていたが、取り付け位置の指標を利用することで、水平出しを行うことなく、取り付け位置を決定することができる。
【0039】
軒樋用吊り具5を垂木1へ取り付ける方法として、軒樋用吊り具5が雨、雪又は風で脱落しない取り付け方法であれば、その手法は問わないが、最も簡単な取り付け方法として釘やビスでの取り付け方法を示す概略図を
図6に示す。垂木1の上面への固定部材7は取付強度を高めるために2点以上での固定が望ましい。なお、軒樋用吊り具5を固定する釘やビスなどを総称して固定用部材という。
【0040】
図6では吊り部52を記載しているが、吊り部52が脱着可能な場合は吊り部52を外した状態で第一取付部51を垂木1の上面に取り付け、その後に吊り部52を取り付けても良い。
【0041】
固定部材7を用いて軒樋用吊り具5を垂木1の上面へ取り付ける場合を考慮すると、
図4及び
図5に記載しているように第一取付部51には垂木1への固定用穴51cを設けることが望ましい。
【0042】
このように野地板2、屋根材3、破風部材4の工事前に垂木1の工事と同時に軒樋用吊り具5を取り付けることで、工期が短縮できる。
【0043】
また、軒樋用吊り具5の取付強度を高める観点からは、破風部材4の外側面にも取り付け箇所を設けることが好ましく、この場合、
図4及び
図5に記載しているように第二取付部53には破風部材4への固定用穴54を設けることが望ましい。
図7は垂木1の上面に沿って配置された第一取付部51と破風部材4の外側面に沿って配置された第二取付部53に、固定部材7及び固定部材8をそれぞれ挿入し、軒樋用吊り具5を軒先に固定した例を示している。軒樋用吊り具5を破風部材4へ固定用部材8で固定することで、軒樋6の下方からの吹上げ風の力に対する強度が増す。垂木1の上面への固定部材7と同様に、破風部材4の外側面への固定用部材8による固定は取付強度を高めるために、固定用部材8を取り付けるスペースが許せば2点以上での固定が望ましい。更に、固定部材8は第二取付部53及び破風部材4を貫通し、先端が垂木1の内部で停止していることが取付強度確保の点で好ましい。
【0044】
特に、軒樋用吊り具5の吊り部52が
図4に示す脱着可能な構造を有している場合、雨、雪又は風の力が加わると、係着部53a3、53b2の係着が解放されて吊り部52が外れる可能性があるため、軒樋用吊り具5の破風部材4の外側面に沿った取り付けは、軒樋用吊り具5の外側部53a、挿入部53c、及び内側部53bを貫通する一つ以上、好ましくは二つ以上の固定用部材8によって行われていることが好ましい。この場合、外側部53a、挿入部53c、及び内側部53bは、破風部材4へと貫通する固定用穴54をそれぞれ有する。
【0045】
破風部材4へ固定用部材8を挿入するための固定用穴54の高さ位置は、破風部材4へ固定用部材8を水平に挿入した時に、破風部材4を貫通し、垂木1に10mm以上挿入されて先端が垂木1内部で停止することが可能な位置とすることが好ましい。固定部材8が垂木に10mm以上刺さることにより、固定部材の固定効果が発現するため、破風部材4の材質、厚さは固定効果に影響しない。
【符号の説明】
【0046】
1…垂木
2…野地板
3…屋根材
4…破風部材
5…軒樋用吊り具
51…垂木上面への取付部(第一取付部)
51a…目盛り線
51b…切り欠き
51c…垂木への固定用穴
52…吊り部
53…第二取付部
53a…外側部
53a1…矩形板
53a2…側壁
53a3…係着部
53a4…突起部
53b…内側部
53b1…矩形面
53b2…係着部
53b3…窪み部
53c…挿入部
53c1…穴
54…破風部材への固定用穴
6…軒樋
7…垂木への固定用部材
8…破風部材への固定用部材
50…従来の軒樋用吊り具