(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603164
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】NMRフローセルとして構成される監視セル
(51)【国際特許分類】
G01R 33/30 20060101AFI20191028BHJP
【FI】
G01N24/02 510D
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-68635(P2016-68635)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-197104(P2016-197104A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2018年4月17日
(31)【優先権主張番号】10 2015 206 030.6
(32)【優先日】2015年4月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】595068254
【氏名又は名称】ブルーカー バイオスピン ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Bruker BioSpin GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ホフマン
【審査官】
佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−021986(JP,A)
【文献】
米国特許第05313162(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0121712(US,A1)
【文献】
特開2005−189191(JP,A)
【文献】
特表2003−505698(JP,A)
【文献】
特開2003−139831(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0285396(US,A1)
【文献】
米国特許第05258712(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0321018(US,A1)
【文献】
特開2002−116243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC
G01N 24/00−24/14、
G01R 33/24−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NMR分光計において反応槽で生成される反応流体の測定を実行する監視セル(100)であって、
前記NMR分光計で測定される前記反応流体を受け入れる中空のNMR試料プローブ(110)と、
前記反応槽から前記反応流体を受け入れると共に、前記反応流体を前記反応槽から前記試料プローブ(110)へ移送する注入移送毛細管(112)と、
前記反応流体を前記試料プローブ(110)から前記反応槽へ戻し移送する排出移送毛細管(123)と、
温度調節流体を前記監視セル(100)に供給する供給管(306)、及び前記温度調節流体を前記監視セル(100)から戻す戻り管(358)を有し、前記供給管(306)は前記戻り管(358)内に同軸的に配置され、前記温度調節流体を前記注入移送毛細管及び前記排出移送毛細管(112,123)の周囲に導く装置と、
前記移送毛細管(112,123)が通されるアダプタ部(106)と、
前記移送毛細管(112,123)を前記試料プローブ(110)に連結するように構成され、前記注入移送毛細管(112)が前記試料プローブ(110)内に延びる前記アダプタ部(106)の試料側端部のアダプタヘッド(108)であって、前記試料プローブ(110)を前記アダプタ部(106)に着脱可能に接続するアダプタヘッド(108)とを有し、
前記移送毛細管(112,123)は前記供給管(306)内に、同軸的ではなく互いに平行に配置され、前記移送毛細管(112,123)の双方は前記アダプタヘッド(108)に流体密に取り付けられ、
前記供給管及び前記戻り管(306,358)は、前記温度調節流体用に構成され、前記アダプタ部(106)において前記温度調節流体流の反転が生じるように、前記アダプタ部(106)に取り付けられることを特徴とする監視セル(100)。
【請求項2】
前記供給管(306)及び前記戻り管(358)は、前記アダプタ部(106)において前記温度調節流体流が反転するように、前記アダプタ部(106)の中空容積を介して互いに連通することを特徴とする請求項1に記載の監視セル。
【請求項3】
前記注入移送毛細管(112)は前記排出移送毛細管(123)よりも深く前記試料プローブ(110)に浸漬し、特に、前記排出移送毛細管(123)は前記アダプタヘッド(108)で終端し、前記試料プローブ(110)に浸漬しないことを特徴とする請求項1又は2に記載の監視セル。
【請求項4】
前記アダプタ部(106)及び前記アダプタヘッド(108)は外側に断熱体を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の監視セル。
【請求項5】
前記アダプタヘッド(108)は、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))から作られることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の監視セル。
【請求項6】
前記試料プローブ(110)と前記アダプタヘッド(108)との間に、着脱容易なコネクタがあることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の監視セル。
【請求項7】
前記移送毛細管(112,123)は同一の外径を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の監視セル。
【請求項8】
前記移送毛細管(112,123)は化学的に不活性なプラスチックから作られることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の監視セル。
【請求項9】
前記排出移送毛細管(123)は、前記注入移送毛細管(112)よりも内径が大きいことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の監視セル。
【請求項10】
前記移送毛細管(112,123)の内径が0.1〜1.2mmであることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の監視セル。
【請求項11】
前記供給管(306)と前記戻り管(358)は、3〜6mの距離にわたって内径が2〜10mmであることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の監視セル。
【請求項12】
第1のY型連結部品(401)が設けられ、当該第1のY型連結部品により前記移送毛細管(112,123)が前記温度調節流体を導く装置に挿入され得ることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の監視セル。
【請求項13】
第2のY型連結部品(402)が設けられ、当該第2のY型連結部品により前記供給管(306)と前記戻り管(358)が前記温度調節流体を導く装置に挿入され得ることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の監視セル。
【請求項14】
前記Y型連結部品(401,402)の入口と出口が約45°の角度をなすことを特徴とする請求項12又は13に記載の監視セル。
【請求項15】
前記温度調節流体は液体であることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の監視セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、NMR分光法による化学反応の連続監視の分野に関する。また、本発明は、NMR分光計において反応槽で生成される反応流体の測定を実行し、特に、NMR分光法によって化学反応を監視する監視セルに関する。
【背景技術】
【0002】
この監視セルは、NMR分光計で測定する反応流体を受け入れる中空試料プローブと、反応槽から反応流体を受け入れると共に、反応流体を反応槽から試料プローブへ移送する注入移送毛細管と、反応流体を試料プローブから反応槽へ戻し移送する排出移送毛細管と、温度調節流体を監視セルに供給する供給管、及び温度調節流体を監視セルから戻す戻り管を有し、供給管は戻り管内に同軸的に配置され、温度調節流体を注入移送毛細管及び排出移送毛細管の周囲に導く装置と、移送毛細管が通されるアダプタ部と、移送毛細管を試料プローブに連結するように構成され、注入毛細管が試料プローブ内に突出するアダプタ部のプローブ端部のアダプタヘッドであって、試料プローブをアダプタ部に分離可能に接続するアダプタヘッドとを備える。NMRフローセルとして構成される監視セルは、特許文献1又はその対応特許文献2から公知である。
【0003】
NMR分光法は、化学化合物を分析することができる一般的な測定方法である。通常NMR分光法において、試料管の測定対象の試料を試料プローブ内に設け、NMR分光計で測定する。
【0004】
化学反応の監視は基本的に、反応平衡を生成物側に移動し、且つ/又は不完全な反応を抑止するために反応パラメータ(温度、圧力、溶剤、触媒…)を最適化することを含む。したがって、NMR分光法によって永続的に反応を監視し続けるために、定期的に試料を採取しなければならず、多大な費用となる。
【0005】
試料の移送時に、反応条件(例えば、温度や圧力)を維持して、測定対象の試料が変化しないようにしなければならない。この過程で、時間的要因が重要な役割を果たす。
【0006】
NMR分光計と化学反応器は空間的に離れており、反応の監視は閉鎖系で行われるので、反応混合物は連続的に反応器から試料ブローブに送り込まれ、定期的に測定される。移送システムにおける条件は、反応槽での主条件にできるだけ近くなければならない。このことは特に、反応温度にあてはまる。
【0007】
初めに引用した特許文献1又はその並行特許文献2において、いずれの場合も、NMR分光法による化学反応監視用のフローセルが記載されている。この公知の装置により、液体反応混合物は連続的に反応器から測定装置のNMR試料プローブに送り込まれ、液体反応混合物は測定される。
【0008】
この公知のシステムは、全部で4つの互いに内部に配置された同軸管によって機能し、2つの内側の毛細管は反応混合物の移送毛細管からなる。2つの外管は、温度調節流体を循環するためのものである。このシステムは、基本的に、
1.温度調節管の反転用ハウジング
2.移送毛細管を温度調節管から分離する連結部
3.移送毛細管を送りと戻りに分離するセラミックヘッド
4.反応混合物の供給毛細管のみを収容する試料プローブ(測定セル)
の4つの部分からなる。
【0009】
供給管又は戻り管からなる4つの同軸管を接続するために、いくつかの接続箇所が必要であり、添付
図3(特許文献2から引用)に示すように、システムが非常に複雑になる。
【0010】
さらに、公知の装置では連結部品(上記項目2参照)が設けられ、測定セルの毛細管を送るために、反応流の毛細管を温度調節管から分離している。これにより、反応混合物が温度調節されずに室温にさらされる比較的大きい領域が作られる。このことは、特に、細い毛細管を用いて動作する時や、反応温度が室温と大きく異なる時に問題となる。この配置において、発熱化学反応により、熱平衡が遅くなったり変わったりするおそれがある。0℃未満の温度で進む反応では、これにより、この露出箇所において試料の状態が制御不能に変化をもたらすおそれがある。
【0011】
したがって、必ず、加熱回路又は冷却回路の貫流を市販の循環サーモスタットを用いて生じさせることができ、反応に必要な温度を全長にわたって著しく低下させることなく維持できるようにしなければならない。このことは、温度調節管の抵抗器(例えばTコネクタなど)が流れを著しく減少させるため、試料供給の全長にわたって、温度が狭い範囲内で同じままであることを保証できないことを意味する。
【0012】
さらに、この公知の設計により、戻り試料毛細管の容積は試料供給毛細管より何倍も、すなわち約5倍大きくなる。このため、測定対象の試料が再び反応器に送り返されるまでの循環時間が比較的長く、再び反応器における反応に悪影響を及ぼしかねない。
【0013】
試料プローブ(NMR流管)の取り換えは、特別な工具を用いないと行うことができない。その過程で接続を不可逆的に壊さなければならない(スナップキャップ、かみそり刃で切断)。
【0014】
上記のように、温度は、化学反応の反応速度に多大な影響を及ぼす重要な要因である。ここで、特に温度に関して、化学平衡を維持するという大きな困難がある。さらに、サンプリングのシステムはできるだけ簡単に構成しなければならず、すなわち、できるだけ少ない接続及び取り付け箇所で構成しなければならない。そのような箇所は、流体の移送において弱い連結と認識されることが多く、漏れが起こる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第8,686,729号明細書
【特許文献2】欧州特許第2407796号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、流体測定試料の供給管及び戻り管における安価な技術的手段により上記種類の監視セルにおいてできるだけ均一な温度を維持することで、熱平衡に影響を及ぼさないようにし、できるだけ少なく、できるだけ規格化された接続箇所又は取り付け箇所を使用することができ、市場で簡単に入手でき、一方で既存の装置を必ず簡単にアップグレードできるように、サンプリングシステムを簡単に設計するという比較的要求が厳しい複雑な課題に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題は、移送毛細管が供給管内に、同軸的ではなく互いに平行に配置され、両移送毛細管はアダプタヘッドに流体密に取り付けられ、温度調節流体の供給管及び戻り管は、温度調節流体流の反転がアダプタ部で生じるように構成され、アダプタ部に取り付けられるという点で、本発明により驚くほど簡単で効果的な方法で達成される。
【0018】
4つの管が互いの内側に置かれる同軸設計に比べ、本発明において反応混合物の移送毛細管は別々に配置される。反応流体を反応槽から試料プローブへ供給し、反応器に戻す2つの移送毛細管は、可能であれば、試料プローブ全長にわたって、温度調節流体(一般に液体)によって囲まれることで、反応混合物を所望の温度に保つことができる。
【0019】
温度調節流体は同軸管で運ばれ、内管が供給管であり、外管が共通槽への温度調節流体の戻り管である。
【0020】
反応混合物の移送毛細管は、好ましくはY型の取り付け具により、反応槽のすぐ近傍の供給管に挿入される。さらなる、同様に好ましくはY型の取り付け具において、移送毛細管に沿う供給管が戻り管に挿入される。この設計を用いることで、温度を同じにしたままで、反応混合物をNMR分光計まで数メートルにわたって移送することができる。
【0021】
2つの温度調節管がアダプタ部品の容積を介して連通した状態で、試料プローブのすぐ前で、温度調節流はアダプタ部において反転する。
【0022】
アダプタ部品はロッキングヘッド(アダプタヘッド)により分光計側で終端し、ロッキングヘッドには移送毛細管だけが延びており、温度調節流は流れていない。
【0023】
注入移送毛細管が好ましくは排出移送毛細管よりも深く浸かっている試料プローブは、アダプタヘッドに取り付けられている。排出移送毛細管はアダプタヘッドで終端しているのが好ましい。
【0024】
反応混合物は注入毛細管から試料プローブへ流れる。プローブはこのように全測定容積まで満たされ、反応混合物が常に流される。
【0025】
反応混合物は排出毛細管の開口を通って反応器に送り返される。
【0026】
特に、以下の利点が本発明により達成される。
‐測定プローブまでの全範囲にわたる温度調節の向上が可能である。
‐先行技術の連結部が省略される。
‐取り付け具が少ないことで、弱い箇所が少なくなり、その結果システムにおいて漏れが少なくなり、設計が簡単になる。
‐唯一調節されていない領域はアダプタヘッドであるが、試料プローブの側におけるNMR分光計のガス流により部分的に調節される。
‐試料戻りの容積調節が可能である。
‐著しく少ない数の必要部品によって、また市販のサイズを用いることによって、より経済的な製造が実現される。
‐用途へのより簡単な調整が実現される。
【発明の効果】
【0027】
本発明の監視セルの特に簡単でそれゆえ好ましい実施形態において、供給管と戻り管は、温度調節媒体流がアダプタ部において反転するように、アダプタ部の中空容積を介して互いに連通する。
【0028】
本発明のさらに有利な実施形態において、注入移送毛細管は排出移送毛細管よりも試料プローブに深く浸漬しており、特に、排出移送毛細管はロッキングヘッド(アダプタヘッド)で終端し、ロッキングヘッドには移送毛細管だけが導かれ、温度調節流は導かれていない。そして、排出移送毛細管は試料プローブに入らない。反応混合物は注入毛細管から試料プローブに流出するので、試料プローブは全測定容積まで満たされ、反応混合物が常に流される。排出毛細管の開口を通って、反応混合物は反応器へ送り返される。
【0029】
好ましくは、アダプタ部とアダプタヘッドの双方は、外側に断熱体を備えた状態で設計される。これにより、温度調節流体供給全体と同じく、試料プローブ側のアダプタ部品は温度損失に対し絶縁される。
【0030】
本発明の好ましい部類の実施形態には、好ましくはグラスファイバーで強化されたポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))から作られるアダプタヘッドが含まれる。この材料は、先行技術によるセラミックよりも堅固で穴が少ないので、洗浄及び再利用、並びに化学物質に対する不活性に関して有利である。さらに、この材料ではボアホールを作ることができ、標準的な移送毛細管の取り付け具を流体密にねじ込むことができる。
【0031】
このシステムは、−40〜+120℃、特に−10〜+60℃の温度で使用することができる。
【0032】
本発明の監視セルのさらに有利な実施形態が与えられる点として、試料プローブが汚れてきた時や、用途の変更や測定範囲の容積に変更がある時に、試料プローブを簡単に素早く取り替えるために、試料プローブとアダプタヘッドとの間に、好ましくは工具を使わず、手で取り外し可能な着脱容易なコネクタ、特に再利用可能な差込みコネクタが存在する。
【0033】
好ましい実施形態において、移送毛細管は同一の外形寸法を有する。試料回路に外形寸法に関して同一寸法にした2つの毛細管を使用することで、とりわけ、戻りの試料毛細管に対しさらに良好な容積調節を与えることができる。そして内部容積に関しては自由に選択することができ、最も好ましいケースでは、試料を戻す毛細管と同一にできる。
【0034】
毛細管と取り付け具に関して市販のサイズを選択することで、製品を約50%より経済的に製造することができ、反応(内部容積)の必要条件にさらに容易に適合することができる。
【0035】
本発明の監視セルのさらに有利な実施形態において、移送毛細管は化学的に不活性なプラスチック、好ましくはPTFEで作られる。市販の化学的に不活性なPTFE毛細管を用いることで、市販の取り付け具を使用でき、管接続部を特別に製造する必要がない。
【0036】
排出移送毛細管は注入毛細管よりも内径が大きく、特に必要であれば2倍大きいのが好ましい。これは、試料プローブに生じる可能性のある沈殿物の除去に有利である。
【0037】
移送毛細管の内径は、反応の必要条件によるが、0.1〜1.2mmであり、特に好ましくは、内径は0.25〜0.5mmである。好ましくは、送り毛細管と戻り毛細管は0.5mmの内径を有することで、4〜6mの長さに沿って起こる圧力降下をできるだけ低く抑えるようにし、同時に内部システム容積を考慮に入れる。それゆえ水に対して室温で5mL/秒のポンプ吐出率に対する圧力降下は、約1bar/mである(毛細管)。
【0038】
さらなる有利な本発明の監視セルの実施形態において、3〜6mの距離にわたる温度調節流体の供給管と戻り管が2〜10mm、好ましくは供給管が約3.5mm、戻り管が約7mmの内径を有する。
【0039】
本発明のさらに好ましい実施形態において、第1のY型連結部品を設けることで、移送毛細管を装置に挿入して温度調節流体を導くことができる。
【0040】
さらに、第2のY型連結部を設けることができ、それにより供給管と戻り管を装置に挿入して温度調節流体を導くことができる。
【0041】
特に有利な実施形態において、Y型連結部品の入口と出口は約45°の角度を囲むので、市販の循環サーモスタットを使用する場合、温度調節流体の容積流を、90°の角度のT型連結部品に対して約40%増加することもできる。
【0042】
特に好ましい本発明の変形において、温度調節流体は液体である。温度調節気体による温度調節は、気体はすぐれた熱媒体ではないので、効果がはるかに低い。
【0043】
本発明の範囲にはまた、NMR分光法による化学反応の反応制御に、上記の発明的特質を持つシステムを使用することが含まれる。
【0044】
本発明のさらなる利点は、本明細書及び図面から明らかになる。同様に、上記の特徴やさらに挙げた特徴はそれ自体で個別に用いることもできるし、それぞれを組み合わせて用いることもできる。図示及び説明した例示的実施形態は、網羅的なリストとみなすべきではなく、正しくは、本発明を説明するための例である性質のものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】発明の実施の形態の監視セルの概略縦断面図である。
【
図2】側面から見た本実施の形態の概略三次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は図面に示され、例示的な実施の形態に関連してより詳細に説明される。
【0047】
図1及び
図2は、好ましい実施形態の本発明の監視セル100の概略図を示す。これは、NMR分光計において反応槽で生成される反応流体の測定を行って、特にNMR分光法によって化学反応を監視する役目をする。したがって、これはNMRによる化学反応監視用のフローセルである。本発明装置により、反応混合物が連続的に、反応器から測定部のNMR試料プローブに送り込まれ、測定される。この過程で、特に温度に対して、化学平衡を維持するのは常にとても難しい。
【0048】
監視セル100は、
NMR分光計で測定する反応流体を受け入れる中空のNMR試料プローブ110と、
反応槽から反応流体を受け入れると共に、反応流体を反応槽から試料プローブ110へ移送する注入移送毛細管112と、
反応流体を試料プローブ110から反応槽に戻し移送する排出移送毛細管123と、
監視セル100に温度調節流体を供給する供給管306、及び温度調節流体を監視セル100かを戻す戻り管358を有し、供給管306は戻り管358内に同軸的に配置され、温度調節流体を注入移送毛細管112及び排出移送毛細管123の周囲に導く装置と、
移送毛細管112及び123が通されるアダプタ部106と、
移送毛細管112及び123を試料プローブに連結するように構成され、注入移送毛細管112が試料プローブ110内に延びるアダプタ部106の試料側端部のアダプタヘッド108であって、試料プローブ110をアダプタ部106に取り外し可能に接続するアダプタヘッド108とを有する。
【0049】
本発明の監視セル100は、移送毛細管112及び123が供給管306内において、同軸的ではなく互いに平行に配置され、移送毛細管112及び123の双方がアダプタヘッド108に流体密に取り付けられることを特徴とし、また、供給管306及び戻り管358が、温度調節流体用に構成され、アダプタ部106において温度調節流体流の反転が起こるように、アダプタ部106に取り付けられることを特徴とする。
【0050】
試料プローブ110を再利用可能な差込みコネクタ(図示せず)で固定することにより、素早く簡単に交換することができる。
【0051】
温度調節流体の容積流は、主に2つの方策により向上する。
【0052】
‐(関連する)管接続部の数を以前の28から12に減らす。
【0053】
‐7つの90°の角度のT接続部の代わりに、2つの45°の角度のYコネクタ401及び402を使用する。これにより、市販の循環サーモスタットを使用する場合、温度調節流体の容積流量が約40%増加した。
【0054】
試料回路の外形寸法に関して、2つの同一寸法にした移送毛細管112及び123を使用することで、戻り試料毛細管123の容積調節を良好にすることもできる。内部容積に関しては自由に選択することができ、最も好適なケースでは、試料を供給する毛細管112と同一にできる。
【0055】
毛細管及び接続部に関して市販のサイズを選択することにより、製品を約50%より経済的に製造することができ、同時に、反応(内部容積)の必要条件にさらに容易に適合することができる。
【0056】
アダプタヘッド108は通常、グラスファイバーで強化されたテフロン(登録商標)から作られる。この材料は、先行技術で設けられるようなセラミックよりも堅固で穴が少ないので、洗浄や再利用に有利であるとともに、化学物質に対する不活性に関しても有利である。さらに、この材料ではボアホールやねじ山を作ることができ、標準的な移送毛細管の接続部を流体密にねじ込むことができる。
【0057】
このシステムは、−40〜+120℃、特に−10〜+60℃の温度で使用することができる。
【0058】
好ましくは、排出移送毛細管123は注入移送毛細管112よりも内径が大きく、好ましくは同じか、必要に応じて最大で2倍大きい。これは、試料プローブ110で生じ得る沈殿物を除去するのに有利である。移送毛細管の内径は0.1〜1.2mmであり、特に好ましくは、内径は0.25〜0.5mmである。そして水に対して室温で5mL/秒のポンプ吐出率に対する圧力降下は、約1bar/mであるのが好ましい(毛細管)。
【0059】
本発明によるシステムはさらに、第1のY型連結部品401を含み、それにより移送毛細管112,123は温度調節流体の供給管306に挿入される。
【0060】
上記システムは好ましくは第2のY型連結部402を含み、それにより温度調節流体供給管306は温度調節流体の戻り管358に連結される。
【0061】
市販の化学的に不活性のPTFE毛細管を使用することで、市販のコネクタを使用することができる。したがって、管取り付け具を特別に製作する必要がない。
【0062】
アダプタ部品106の試料プローブ側は、温度調節流体送り全体とNMRフローセル全体と同じように、温度損失に対して絶縁され得るように形成される。
【0063】
さらに、試料プローブ110は、特別な工具を使わず手で取り外せる、着脱容易なコネクタで固定して、試料プローブが汚れてきた時や、用途変更や測定範囲の容積変更がある時に、簡単に取り替えられる。
【0064】
本発明により、
図2に示すように、測定容積が異なるいくつかの試料プローブ110,110’,試料プローブ110”の挿入を可能にして、ユーザーに、用途に対する具体的な調整の選択肢と、それにより生じる試料濃度を与えるようにする。例えば、測定範囲の実容積は、460μL,130μL,又は90μLにすることができる。
【0065】
最後に、
図3は上記に詳細に説明したような、先行技術から公知のNMRフローセルを示す。
【符号の説明】
【0066】
100 監視セル
106 アダプタ部
108 アダプタヘッド
110,110’,110” NMR試料プローブ
112 注入移送毛細管
123 排出移送毛細管
306 供給管
358 戻り管
401 第1のY型連結部品
402 第2のY型連結部品