(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転シャッタは、板状に形成され、前記吸込口を塞ぐ閉鎖部と、前記吸込口を開ける開放部と、を有し、前記吸込口が形成される隔壁に対して平行に配置されることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来技術の車両用空調装置では、空調時の快適性を向上させるために改善すべき点があった。例えば、乗員が快適に感じる空調として、乗員の体を包み込むような気流が形成されることが好ましい。しかし、特許文献1に開示された従来技術のように、車両のダッシュボード等に設けられる吹出部から空気を吹き出し、乗員の体の一部分に対して冷風若しくは温風等を吹き付ける構成では、乗員の体を包み込むような快適性の高い気流を形成することができなかった。
【0007】
また、特許文献2に開示された従来技術のように、空調風を乗員の体に対し横方向に横断させる構成では、吹出口から吹き出された空気が発散してしまうため、乗員の体表面に沿ってまとわりつくような気流を形成することができなかった。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、乗員の体を包み込むような気流を形成して快適性を高めることができる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両用空調装置は、車両に配設されるシートに対して幅方向の一方側となる前記車両に配置されて前記車両の車室内に空気を吹き出す吹出部と、前記シートに対して幅方向の他方側となる前記車両に配置されて前記車室内から空気を吸い込む吸込部と、を備え、前記吸込部は、円状に配列される複数の吸込口と、回転することによって前記吸込口を順次開閉する回転シャッタと、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の車両用空調装置は、前記回転シャッタは、板状に形成され、前記吸込口を塞ぐ閉鎖部と、前記吸込口を開ける開放部と、を有し、前記吸込口が形成される隔壁に対して平行に配置されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の車両用空調装置は、前記開放部は、前記回転シャッタの回転円周上に複数形成されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の車両用空調装置は、前記吸込部は、前記車両に対して前後方向に移動自在に設けられることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の車両用空調装置は、前記吸込部は、前記シートに連動して移動することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の車両用空調装置は、前記吸込部は、前記車両のドアに設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用空調装置によれば、車両に配設されるシートに対して幅方向の一方側となる前記車両に配置されて前記車両の車室内に空気を吹き出す吹出部と、前記シートに対して幅方向の他方側となる前記車両に配置されて前記車室内から空気を吸い込む吸込部と、を備える。これにより、シートに着座する乗員の近傍において乗員の体に対して横方向に冷風若しくは温風を流すことができる。
【0016】
また、前記吸込部は、円状に配列される複数の吸込口と、回転することによって前記吸込口を順次開閉する回転シャッタと、を有する。このような構成の吸込部によって、略渦状の吸い込み気流を形成することができる。そのため、吹出部から吹き出された空調風を、指向性の高い略渦状の気流によって乗員側に吸い寄せて、空調風が乗員の体から剥離することを抑制することができる。これにより、乗員の体表面にまとわりつくような気流が形成され、その気流によって乗員の体が包み込まれ、快適な空調が実現される。
【0017】
また、本発明の車両用空調装置によれば、前記回転シャッタは、板状に形成され、前記吸込口を塞ぐ閉鎖部と、前記吸込口を開ける開放部と、を有し、前記吸込口が形成される隔壁に対して平行に配置されても良い。これにより、吸込部を薄く形成することができ、快適性の高い気流を形成しつつ車室空間を広く確保することができる。
【0018】
また、本発明の車両用空調装置によれば、前記開放部は、前記回転シャッタの回転円周上に複数形成されても良い。これにより、複数の吸込口から同時に空調風を吸い込むことができ、効果的な渦流を形成しつつ空調風の吸込量を多く確保することができる。
【0019】
また、本発明の車両用空調装置によれば、前記吸込部は、前記車両に対して前後方向に移動自在に設けられても良い。これにより、吸込部を移動させて、温風及び冷風の流れる位置を調節することができる。よって、シートに着座する乗員の体格に応じて好適な気流を形成することができる。
【0020】
また、本発明の車両用空調装置によれば、前記吸込部は、前記シートに連動して移動しても良い。これにより、乗員がシートポジションを変更した際に、変更後のシートポジションに対応して好適な気流を形成することができる。
【0021】
また、本発明の車両用空調装置によれば、前記吸込部は、前記車両のドアに設けられても良い。これにより、シートに着座する乗員の側方で、且つ乗員の胴部等に近い好適な位置に、吸込口を形成することができる。よって、乗員の近くに空調風を吸い寄せて、乗員の体にまとわりつくような好適な気流を形成することができる。また、吸込口がドア内に設けられることにより、車室内空間を広く確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る車両用空調装置を図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1が配設された車両90の概略を示す車室内の平面図である。車両用空調装置1は、略渦状の吸い込み気流を形成し、乗員Pの体を包み込むような空気流れによって空調を行う空調装置である。なお、本説明では、車両90内に設けられる複数のシートの内、運転席のシート7近傍に吹出部6及び吸込部5が設けられる例についての説明を行う。同様に構成可能な助手席シート近傍や後部シート近傍については、その説明を省略する。
【0025】
図1に示すように、車両90の内部には、シート7の内部若しくはその下方またはダッシュボード2の内部等に配置される空調ユニット10が設けられる。空調ユニット10には、夫々車室内につながる送風ダクト11及び吸込ダクト12が接続される。即ち、吸込ダクト12、空調ユニット10及び送風ダクト11によって空調風の循環風路が形成される。また、空調ユニット10に代えて現存のHVAC(暖房換気空調装置)を用いると共に、前記HVACにつながるダクトをシート7まで延長することにより循環風路を形成しても良い。
【0026】
空調ユニット10は、空気を冷却する冷却手段及び加熱する加熱手段を有する。空調ユニット10に送られた空気は、冷却若しくは加熱され、或いは、その温度状態のまま、送風ダクト11へと送風される。
【0027】
送風ダクト11は、運転席のシート7と助手席のシートの間、即ち車両90の車幅方向の略中央に設けられるセンターコンソール45に形成される吹出部6に接続される。吹出部6は、送風ダクト11から車室内につながる開口であり、センターコンソール45のシート7側の側面等に形成される。即ち、吹出部6は、シート7に着座している乗員Pを向くように配置される。空調ユニット10から送風される空気は、送風ダクト11を経由して吹出部6からシート7に着座している乗員Pの大腿部近傍に吹き出される。
【0028】
吸込ダクト12は、ドア40に設けられる吸込部5に接続される。吸込部5は、ドア40のドアトリム41に形成され、シート7に着座している乗員Pを向くように配設される。車両90の車室内の空気は、吸込部5から吸い込まれ、吸込ダクト12を経由して空調ユニット10に帰還する。
【0029】
上記のように、吹出部6がセンターコンソール45に形成され、吸込部5がドア40に形成されることにより、乗員Pに対して横方向、即ちシート7の幅方向に冷風若しくは温風を流すことができる。
【0030】
また、吹出部6から吹き出されて乗員Pの体に沿って流れる空調風は、大部分が直ぐに吸込部5から吸い込まれる。このように、車室内の空調風が主に乗員Pの近傍を循環することにより、車室内の全体に空調風を循環させて冷却若しくは加熱する従来技術の空調と比べて、空調ユニット10の負荷が低減される。これにより、車両90における快適且つ省エネルギな空調が実現される。
【0031】
なお、空調ユニット10には、車両90の外部から空気を取り入れるための図示しない外気取り込み用ダクトや図示しない後部シート等につながる図示しない送風ダクト及び吸込ダクト等が接続されても良い。また、空調ユニット10には、ダッシュボード2等に設けられる図示しない吹出口等につながる図示しない送風ダクト等が接続されても良い。
【0032】
図2は、車両用空調装置1の構成を示す概略図である。
図2に示すように、吸込部5は、詳しくは後述するが、隔壁31、回転シャッタ32及びモータ37を有する。
【0033】
空調ユニット10は、主に、制御部23と、チャンバ14と、ブロア15と、エバポレータ16と、ヒータコア17と、日射センサ18、室温センサ19、外気温センサ20等の各種センサと、操作スイッチ21と、を有している。
【0034】
制御部23は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有して構成され、車両空調制御のための各種の演算等を実行する電子制御ユニット(ECU)である。そして、制御部23は、例えば、日射センサ18、室温センサ19、外気温センサ20等の各種センサから検出された情報に基づき各種の演算等を行うことで、車室内の室温状況等の現状を判別し、各構成機器の制御を行う。
【0035】
空調ユニット10は、チャンバ14によって形成される循環風路を有する。チャンバ14の上流側には、吸込ダクト12が接続され、チャンバ14の下流側には、送風ダクト11が取り付けられる。チャンバ14内には、その上流側から冷却手段としてのエバポレータ16と、加熱手段としてのヒータコア17とが配設されている。
【0036】
エバポレータ16はチャンバ14の略全断面に対して配置され、ヒータコア17はチャンバ14の約半分の断面に対して配置されている。そして、エバポレータ16とヒータコア17との間には風路調整ダンパが配設され、風路調整ダンパによりヒータコア17を通過する風量が調整されている。例えば、風路調整ダンパは制御部23により制御され、モータ駆動により風路調整ダンパがチャンバ14のヒータコア17側を多く塞ぎ、ヒータコア17を通過する風量が減少することで、車室内へと吹き出される空調風の温度は低くなる。
【0037】
日射センサ18、室温センサ19、外気温センサ20等の各種センサは、車両90に配設され、制御部23に接続される。日射センサ18は太陽からの日射量を検出するセンサであり、室温センサ19は車室内の空気温度を検出するセンサであり、外気温センサ20は車室外の空気温度を検出するセンサである。
【0038】
制御部23は、各センサ18、19、20等から検出された情報に基づき各種の演算等を行い、例えば、ブロア15や風路調整ダンパ、回転シャッタ32に接続されるモータ37等を制御し、空調温度や吸込部5の吸込量等を調節する。
【0039】
操作スイッチ21は、押しボタン、回転ボタンやタッチパネル等から構成され、例えば、インストルメントパネル等に配設されている。乗員P(
図1参照)は、操作スイッチ21を操作することで、空調モードや空調温度、風向や風量等を調整することができる。そして、操作スイッチ21は制御部23に接続され、乗員Pによる操作スイッチ21の操作に応じて、制御部23が各種制御を行い、吸込部5からの吸込量や空調風の温度等が調整される。
【0040】
図3は、車両用空調装置1の吸込部5が設けられるドア40を車室側から見た図である。
図3に示すように、ドア40の車室側には、合成樹脂等により形成されるドアトリム41が設けられ、ドアトリム41に、吸込部5が配置される。
【0041】
吸込部5が配置される位置は、シート7に着座する乗員Pの体型を基準として決定される。上記位置を決定する際の乗員Pの体型として、規格化された体型モデルAM50、AM95等を適宜に採用して基準とする。
【0042】
具体的には、吸込部5は、乗員Pの大腿部若しくは腰部近傍の高さ、またはそれらよりも上方のドアトリム41に配置される。シート7を基準として換言すれば、吸込部5は、シートクッション7Aの座面よりも上方でシートバック7Bの上端よりも下方のドアトリム41に配置される。
【0043】
また、吸込部5が設けられる前後方向の位置は、乗員Pの胴部またはそれよりも前方で乗員Pの膝よりも後方が望ましい。換言すれば、シート7を基準にすると、吸込部5は、シートバック7Bの前面よりも前方で、シートクッション7Aの前端部よりも後方のドアトリム41に配置される。これにより、乗員Pの大腿部の上部に沿って温風若しくは冷風を流すことができる。
【0044】
また、吸込部5につながる吸込ダクト12には、車両90の前後方向に延在して吸込部5の移動を許容する空間であるスライド部13が形成される。そして、吸込部5は、車両90の前後方向に移動可能にドアトリム41に取り付けられる。これにより、吸込部5を吸込ダクト12のスライド部13に沿って前後方向にスライドさせて、吸い込み位置を変えることができる。例えば、シート7に着座する乗員Pの体格に合わせて吸込部5の位置を前後させることにより、シート7に着座する乗員Pの体格に応じた好適な気流を形成することができる。
【0045】
また、吸込部5は、シート7に連動して前後方向に移動するよう構成されても良い。吸込部5の移動をシート7に連動させることにより、シートポジションが変更され、乗員Pの位置が前後方向に変化した場合であっても、吸込部5の位置を乗員Pに対して好適な位置に保つことができる。
【0046】
なお、上記の例では、吸込部5は、吸込ダクト12に形成されるスライド部13に沿ってスライドするとしたが、これに代えて、例えば、ドアトリム41に対して前後方向に移動可能に設けられる吸込部5に、可撓性を有する吸込ダクト12が接続される構成でも良い。このような構成によっても、吸込部5を前後方向に移動させて吸い込み位置を変更することができる。
【0047】
また、車両90の車幅方向の中央側に設けられる吹出部6(
図1参照)についても、吸込部5と同様に、車両90の前後方向に移動可能に構成されても良い。これにより、乗員Pの着座位置や体格に応じて好適な空調風を形成することができる。
【0048】
図4は、車両用空調装置1の吸込部5の分解斜視図である。
図4に示すように、吸込部5は、隔壁31と、回転シャッタ32と、を有し、隔壁31と回転シャッタ32とが略平行に重なることにより形成される。
【0049】
隔壁31は、例えば、略板状に形成される。なお、隔壁31の外周形状は、特に限定されるものではなく、例えば、ドアトリム41(
図3参照)と一体的に形成されても良いし、ドアトリム41に対してスライド可能に組み付けられる略矩形状若しくは略帯状等の形状でも良い。
【0050】
隔壁31には、一方の主面から他方の主面に貫通する複数の吸込口33が形成される。吸込口33は、車室内の空気を吸い込むための開口であり、複数の吸込口33は、隔壁31の主面上に略同心円状に配置される。
【0051】
なお、吸込口33の形状や個数、配置パターン等については種々の変形形態を採用可能である。例えば、吸込口33は、直径の異なる複数の同心円上に多環状に配列されても良い。また、例えば、吸込口33の大きさを小さく、個数を多くして、略環状に略メッシュ状の小孔が配列される構成でも良い。
【0052】
回転シャッタ32は、例えば、略円板状に形成される。このように、吸込部5は、互いに略平行に配設される略円板状の回転シャッタ32と略板状の隔壁31とによって形成されるため、回転軸方向の寸法が小さい。このように、吸込部5は薄いので、例えば、吸込部5をドア40(
図3参照)の内部等に配置することができる。また、吸込部5が薄く形成されることにより、快適性の高い気流を形成しつつ、車室空間を広く確保することができる。
【0053】
回転シャッタ32には、一方の主面から他方の主面に貫通する略切り欠き状の開放部34が形成される。回転シャッタ32が回転して開放部34が隔壁31の吸込口33と重なることにより、吸込口33が開かれる。なお、開放部34の形状はこれに限定されず、例えば、回転シャッタ32に、一方の主面から他方の主面に貫通する各種形状の貫通孔等を形成し、それら貫通孔等を開放部34としても良い。
【0054】
また、回転シャッタ32の開放部34以外の部分、即ち回転シャッタ32の略板状の部材は、閉鎖部35となる。回転シャッタ32が回転して閉鎖部35が吸込口33と重なることにより、吸込口33が閉じられる。
【0055】
また、吸込部5は、モータ37を有する。モータ37は、回転軸36を介して回転シャッタ32に接続されており、モータ37が稼働することにより、回転シャッタ32が回転する。なお、モータ37の配置や、モータ37と回転シャッタ32との連結については、種々の形態を採用可能であり、例えば、モータ37と回転シャッタ32とを連結するベルトや歯車等の動力伝達機構が設けられても良い。
【0056】
図5(A)ないし(C)は、車両用空調装置1の回転シャッタ32の動作を示す吸込部5の図であり、
図5(A)は、開放部34と吸込口33aとが重なった状態を示し、
図5(B)は、
図5(A)に示す状態から回転シャッタ32が回転して開放部34と吸込口33bとが重なった状態を示し、
図5(C)は、回転シャッタ32が更に回転して開放部34と吸込口33cとが重なった状態を示している。
【0057】
図5(A)に示すように、回転シャッタ32が回転して、回転シャッタ32に形成される開放部34と、隔壁31に形成される吸込口33aと、が重なることにより、吸込口33aが開放される。また、吸込口33bないし吸込口33jは、回転シャッタ32の閉鎖部35と重なり、閉じられる。そのため、吸込部5は、吸込口33aから車室内の空気の吸い込み、他の吸込口33b〜33jからは空気を吸い込まない。即ち、吸込部5は、吸込口33aのみから車室内の空気を吸い込む。
【0058】
図5(B)に示すように、
図5(A)の状態から回転シャッタ32が右周りに回転することにより、開放部34が移動し、開放部34と吸込口33bとが重なり、吸込口33bが開放される。また、
図5(A)の時に開放されていた吸込口33aは、
図5(B)において、回転シャッタ32の閉鎖部35と重なり、閉じられる。その結果、吸込部5は、吸込口33bのみから吸い込みを行う。
【0059】
図5(C)に示すように、回転シャッタ32が更に回転することにより、開放部34が移動し、開放部34と吸込口33cとが重なり、吸込口33cが開放される。また、吸込口33bは、回転シャッタ32の閉鎖部35と重なり、閉じられる。その結果、吸込部5は、吸込口33cのみから吸い込みを行う。
【0060】
このように、回転シャッタ32が回転することにより、吸込部5の吸い込みを行う位置は、
図5(A)に示すように吸込口33aから
図5(B)に示すように円周方向隣の吸込口33bへ移り、そして吸込口33bから
図5(C)に示すように円周方向隣の吸込口33cへと移動する。そして、回転シャッタ32が更に回転することにより、吸込部5の吸い込み位置は、吸込口33d、吸込口33e、吸込口33f、吸込口33g、吸込口33h、吸込口33i、吸込口33j、吸込口33a、と順次移動する。即ち、吸込部5の吸い込み位置は、吸込口33の配置円周上を回転シャッタ32の回転方向に変化する。
【0061】
このように、吸込部5は、吸い込み位置を略円状に回転移動させつつ、車室内の空気を吸い込むことができる。これにより、指向性の高い略渦状の吸い込み気流が形成され、車室内の空気流れを所望の位置に引き寄せて好適な空調風を形成することができる。
【0062】
なお、回転シャッタ32の回転方向については、特に限定されるものではなく、
図5(A)ないし(C)に示す如く車室側から見て右回りでも良いし、これとは逆に左回りでも良い。
【0063】
なお、上記の説明では、回転シャッタ32に1つの開放部34が形成される例を示したが、開放部34の個数はこれに限定されず、例えば、回転シャッタ32の回転円周上に複数の開放部34が形成されても良い。これにより、複数の吸込口33から同時に空調風を吸い込むことができ、効果的な渦流を形成しつつ空調風の吸込量を多く確保することができる。
【0064】
図6(A)は、車両用空調装置1による空気の流れを示すシート7近傍の正面図であり、
図6(B)は、同シート7近傍の平面図である。
図6(A)に示すように、吹出部6は、センターコンソール45に形成され、吹出部6が形成される高さは、乗員Pの大腿部若しくは腰部近傍の高さである。換言すれば、吹出部6は、シートクッション7Aの座面近傍の高さに形成される。なお、吹出部6は、シートクッション7Aの高さまたはそれよりも下方に設けられても良い。
【0065】
空調運転において、車室内に供給される空調風は、センターコンソール45に形成される吹出部6から吹き出される。具体的には、吹出部6から吹き出される空調風は、乗員Pの大腿部の側方から、大腿部の上方に向かって斜め上方に吹き出される。そして、吹出部6から吹き出された空調風は、ドアトリム41に形成される吸込部5に吸い込まれる。これにより、乗員Pの胴部の前方を横方向に、乗員Pの大腿部に沿って下半身を包み込むように冷風若しくは温風を流すことができる。
【0066】
ここで、前述のとおり、吸込部5は、指向性の高い略渦状の気流を形成しながら車室内の空気を吸い込む。これにより、吹出部6から吹き出されて斜め上方に向かう冷風若しくは温風は、吸込部5に向かう略渦状の気流に引き寄せられて、斜め下方にその向きを変え、吸込部5へと吸い込まれる。即ち、吸込部5に向かう略渦状の気流が形成されることによって、空調風が乗員Pの体表面から剥離することが抑制される。そのため、吹出部6から吹き出された空調風を乗員Pの大腿部の上面に沿って流すことができ、乗員Pの体を包み込むような快適な気流を形成することができる。
【0067】
図6(B)に示すように、吸込部5及び吹出部6は、乗員Pの着座位置に対して、乗員Pの胴部またはそれよりも前方で乗員Pの膝よりも後方に配置される。吹出部6から吹き出される空調風は、乗員Pの大腿部の上方となる、乗員Pの胴部よりも前方に向かって吹き出される。つまり、吹出部6からは、斜め前方に向かって空調風が吹き出され、その空調風は、乗員Pに近づいた後、乗員Pの体から前方に離れる方向に流れ易い。
【0068】
ここで、前述のとおり、吸込部5は、指向性の高い略渦状の気流を形成しつつ車室内の空気を吸い込むので、乗員Pから離れる方向に流れる空調風を乗員P側に引き寄せることができる。その結果、乗員Pの胴部にまとわりつくような気流が形成され、乗員Pの快適感を高めることができる。これにより、快適且つ高効率な空調が実現される。
【0069】
以上、本発明の実施形態を示したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、吸込部5がセンターコンソール45に形成され、吹出部6がドアトリム41に形成されても良い。即ち、吸込部5と吹出部6との位置を左右反転させても良い。
【0070】
また、例えば、吸込部5及び吹出部6にルーバ等の風向を調整する手段等が設けられても良い。これにより、乗員Pの着座位置や体格等の変化に対応して好適な空調風を形成することができ、空調時の快適性を高めることができる。その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。