(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも2枚の戸板が並設されてそれぞれ開閉方向へ移動する引き戸装置に用いられ、前記戸板を移動させる際に利用者が前記戸板で指を挟むのを防止するための引戸用指挟み防止具であって、
一方の前記戸板に設けられた取付穴に埋め込まれる態様で取り付けられるベースと、
前記ベースに対して移動可能に取り付けられ、他方の前記戸板と当接するための当接部を有するストッパーと、を備え、
前記ストッパーは、前記ベースに対して軸を介して回転移動し、非動作時には前記取付穴の内部に収容されており、動作時には前記ベースに対して移動して、前記当接部が前記取付穴から他方の前記戸板に向けて突出するとともに、前記当接部が前記取付穴の縁部よりも開閉方向の外側まで移動するようになっており、
前記ストッパーには、前記当接部の反対側に突出し、回転移動したときに一方の前記戸板に当接する突起状受け部が設けられていることを特徴とする引戸用指挟み防止具。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る引戸用指挟み防止具10について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る引戸用指挟み防止具10を備えた引き戸装置1を奥側(キャビネット2の内側)から見た斜視図である。また、
図2は、
図1の引き戸装置1を手前側(キャビネット2の外側)から見た斜視図である。さらに、
図3は、引戸用指挟み防止具10を戸板3に取り付ける状態を示す分解斜視図である。
【0018】
なお、以下の説明で使用する「左側」「右側」「手前側」「奥側」「上側」「下側」とは、
図2に示すように、引き戸装置1をキャビネット2の外側から見た方向(利用者側から見た方向)をいうものとする。また、「開閉方向」とは、戸板が移動する左右方向をいうものとする。
【0019】
引き戸装置1は、
図1および
図2に示すように、2枚の戸板3、4が前後に2枚並べて配置されている。キャビネット2の開口部の左半分を塞ぐ戸板3は、手前側に位置し、右側にスライド移動することで開かれるようになる。同様に、右半分を塞ぐ戸板4は、奥側に位置し、左側にスライド移動することで開かれるようになる。なお、本実施例では戸板は2枚であるが、3枚或いはそれ以上で構成してあっても構わない。
【0020】
戸板3、4は、シンプルな事務用のデザインのものや、洒落たデザインを醸し出すために種々の形状、デザインを施したものなどが使用される。
図1および
図2で示す戸板3、4は、キャビネット2の意匠性を高めるべく、取手部分を特殊な形状にしたものが使用されている。
【0021】
戸板3は、中央部に設けられたガラス3aと、このガラス3aの4方の外周を囲う戸枠3bと、この戸枠3bの左側部に位置し、上下方向に亘って連続する取手3cとで構成されている。この取手3cは、その厚みの内部が中空形状になっており、かつ、その手前側の部分が上下に連続してスリット状に切り欠かれている(
図1、
図2、および、詳細は後述する
図10参照)。利用者は、このスリット状に切り欠かれた部分から指を入れて取手3cを持つことができるようになっている。
なお、戸板4も戸板3と同じ構造を有しており、ガラス4a、戸枠4b、および、戸枠4bの右側部に位置する取手4cとで構成されている。
【0022】
一方、手前側の戸板3の裏面には、
図1に示すように、引戸用指挟み防止具10が取り付けられている。すなわち、この引戸用指挟み防止具10は、キャビネット2の手前側からは見えない位置に取り付けられている。これにより、利用者から見たデザイン性を高め、キャビネットの外観を損なわないようにしている。
【0023】
この引戸用指挟み防止具10は、
図1および
図3に示すように、戸枠3bに取り付けられる。より詳細に説明すると、戸枠3bには、ざぐり加工によって丸形にくり抜かれた取付穴5が設けられ、この取付穴5内に引戸用指挟み防止具10のベース20(詳細は後述する)が埋め込まれる態様で取り付けられる。
【0024】
上述した取付穴5は、ガラス3aには当然に加工できない。また、内部が中空形状の取手3cの位置にも、ざぐり穴加工を施すことはできない。そのため、唯一の選択肢として戸枠3bに取付穴5が設けられるようになり、引戸用指挟み防止具10もこの取付穴5の位置にしか取り付けられないことになる。
【0025】
図4は、引戸用指挟み防止具10の非動作時の状態を示す斜視図、
図5は、動作時の状態を示す斜視図、
図6は、
図5の分解斜視図である。また、
図7は、
図5の紙面逆側から見た斜視図である。さらに、
図8は、引戸用指挟み防止具10のベース20を単体で示す斜視図、
図9は、引戸用指挟み防止具10のストッパー30を単体で示す斜視図である。
【0026】
引戸用指挟み防止具10は、
図4〜
図7(特に
図6参照)に示すように、ベース20と、このベース20内に収容されるストッパー30と、このストッパー30をベース20に取り付けるための軸40とで構成されている。
【0027】
ベース20は、
図8(A)に示すように、中央部が手前側に向けて窪んだ形状に形成されており、この中央部にストッパー30が収容される。ベース20は、上下で対称な形状であり、上側および下側には、戸板3の裏面と平行に設置される取付部21、21が設けられている。この取付部21、21には、取付ねじ11(
図3参照)が挿通される取付用穴21aが形成されており、戸板3の取付穴5(
図3参照)の周辺に設けられたねじ穴6の位置と対応するようになっている。
【0028】
また、ベース20は、
図8(A)に示すように、上下の取付部21、21から手前側に向けて延びる側壁部22、22と、この側壁部22、22の奥側を上下に連結する底面部23とを備えている。上述した中央部が窪んだ形状は、この側壁部22、22および底面部23とで形成されている。
【0029】
上下の側壁部22には、その左側に軸挿通穴22aがそれぞれ形成されている。この軸挿通穴22aには、詳細は後述する軸40が挿通されるようになる。また、軸挿通穴22aを挟んだ左右側には、凸部22b、22cが形成されている。この凸部22b、22cには、詳細は後述するストッパー30の凹部31bが嵌合するようになる。
【0030】
底面部23は、取付部21と略平行な面で形成されている。この底面部23は、
図8(A)および
図8(B)に示すように、軸挿通穴22aの付近まで左側に延びている。また、この底面部23の左側には、底面部23の左側端部から奥側に向けて斜めに傾斜する傾斜面部24が形成されている。
【0031】
ベース20は、
図3に示すように、側壁部22、底面部23、および傾斜面部24が取付穴5内に埋め込まれるようにして取り付けられる。また、取付部21、21は、取付穴5の外側であって、戸枠3bの裏面でねじ11を用いて固定される。
【0032】
また、ベース20は、板金をプレス加工で折り曲げることで一体に形成されている。なお、樹脂材料を用いて一体成形で製作することもできる。
【0033】
ストッパー30は、樹脂材料で一体に成形されたものであり、左右方向に長尺なブロック状に形成されている。このストッパー30は、
図9(A)および
図9(B)に示すように、手前側に形成された平面部31と、この平面部31の逆側(奥側)に形成された平面受け部35とを備えている。また、ストッパー30の左側には、上下方向に貫通する軸挿通穴31aが設けられている。さらに、この軸挿通穴31aの右側には、ベース20の凸部22b、22cと嵌合する凹部31bが、上下の両側で窪む態様でそれぞれ設けられている。
なお、ベース20の凸部22b、22cと、ストッパー30の凹部31bとは、それぞれの凹凸が逆に構成されていてもよい。
【0034】
平面受け部35の右側には、平面受け部35よりも前側に向けて窪んだ溝部32が形成されている。この溝部32は上下方向に連続して設けられている。また、溝部32のさらに右側には、奥側に向けて突出する突起状受け部34が形成されている。さらに、平面部31の右側には、この平面部31よりも前側に向けて突出する当接部33が設けられている。これらの突起状受け部34および当接部33は、上下方向に亘って連続して設けられている。
【0035】
このストッパー30は、
図6に示すように、軸40を介してベース20に回動自在に取り付けられる。引戸用指挟み防止具10が非動作時の状態では、
図4に示すように、ストッパー30は軸40を中心にして右側へと回動しており、ベース20の内部(側壁部22および底面部23で囲まれた部分)に収容されている。一方、引戸用指挟み防止具10が動作時の状態では、
図5および
図7に示すように、ストッパー30は軸40を中心にして左側へと回動しており、ストッパー30がベース20の左側端部からさらに左側へ飛び出すような状態になる。
【0036】
次に、本発明の実施の形態に係る引戸用指挟み防止具10の動作・作用について、
図10および
図11を用いて説明する。
図10は、引き戸装置を上側から見た図であって、(A)は引戸用指挟み防止具の動作時の状態、(B)は非動作時の状態を示す平面図である。また、
図11は、
図10(A)のX部の拡大断面図であって、動作時のストッパー30を実線で示し、非動作時のストッパー30を点線で示したものである。
【0037】
引き戸装置1は、通常使用時には、
図10(A)に示すように、引戸用指挟み防止具10を動作させた状態にする。この状態では、奥側に位置する戸板4を左側に移動させたときに(或いは、手前側に位置する戸板3を右側に移動させたときに)、奥側の戸板4の左側の端部がストッパー30の当接部33に突き当たり、
図10(A)で示す状態よりも戸板4(戸板3)が移動しないようにすることができる。そのため、奥側の戸板4の取手4cを掴んでいた利用者は、手前側の戸板3によって指が挟まれることがなくなる。
【0038】
このときの引戸用指挟み防止具10の状態は、
図11に示すように、実線で示すストッパー30が軸40を中心にしてR方向に沿って左側に回動している。このとき、ストッパー30の当接部33は、取付穴5の縁部5aよりも左側の外側にせり出した位置にあるので、奥側の戸板4をできるだけ左側まで移動させた状態で当接部33に突き当たるようになる。そのため、従来技術のように、取付穴5の位置でストッパーを突出・収納させる構造のものと比較して、奥側の戸板4をより大きく開くことができるようになる。
【0039】
また、引戸用指挟み防止具10が動作している状態では、
図11に示すように、ストッパー30の平面受け部35は、ベース20の傾斜面部24と面で接触している。また、ストッパー30の凹部31bとベース20の左側の凸部22bは、動作位置で勘合するようになっている。さらに、ストッパー30の突起状受け部34は、戸板3の裏面に突き当たるようになっている。これにより、動作状態でのストッパー30の位置が規制されるようになる。また、奥側の戸板4が当接部33に突き当たったときの衝撃をこれらの構造で受けることにより、ストッパー30が破損するのを防止している。
【0040】
また、ストッパー30がより大きく左側へ回動できるように、ストッパー30に溝部32を設け、この溝部32の内側に取付穴5の縁部5aが入り込むようにしている(
図11参照)。これにより、当接部33をさらに外側の位置に移動させることができる。
【0041】
一方、引戸用指挟み防止具10が非動作時の状態では、
図10(B)に示すように、ストッパー30は突出していないため、戸板3、4は自由に開閉方向へと移動することができる。このとき、
図11に点線で示すストッパー30は、軸40を中心にしてR方向に沿って右側に回動している。
【0042】
このとき、ストッパー30の平面部31は、ベース20の底面部23と面で接するようになる。また、ストッパー30の凹部31bとベース20の右側の凸部22cは、非動作位置で勘合するようになっている。これにより、非動作状態でのストッパー30の位置が規制されるようになる。
【0043】
引戸用指挟み防止具10の動作/非動作の切替は、利用者が戸板3の裏面側に手を入れて、ストッパー30を回動させることにより行われる。また、利用者は、手の感触でストッパー30が突出しているか否かを容易に認識することができる。なお、凸部22b、22cと凹部31bの嵌合は、利用者が手でストッパー30を回動させられる程度のものである。
【0044】
本発明の実施の形態に係る引戸用指挟み防止具10によれば、一方の戸板3に設けられた取付穴5に埋め込まれる態様で取り付けられるベース20と、ベース20に対して移動可能に取り付けられ、他方の戸板4と当接するための当接部33を有するストッパー30とを備え、ストッパー30は、非動作時には取付穴5の内部に収容されており、動作時にはベース20に対して移動して、当接部33が取付穴5から他方の戸板4に向けて突出するとともに、当接部33が取付穴5の縁部5aよりも開閉方向の外側まで移動するようにしているので、取付穴5の外側の位置まで戸板4を移動することができる。そのため、戸板4をより大きく開くことができる。また、引戸用指挟み防止具10を戸板3の端部に取り付けることができなくても、キャビネットの開口をより広く確保することができるので、種々の形状・構造の戸板に対してもこの引戸用指挟み防止具10を使用することができる。
【0045】
また、ストッパー30は、ベース20に対して軸40を介して回転移動するようになっているので、簡単な構造で当接部33を取付穴5の縁部5aよりも外側の位置に移動させることができる。
【0046】
また、ストッパー30には、動作時に取付穴5の縁部5aが入り込む溝部32が形成されているので、ストッパー30をより大きく回動できるようになる。そのため、当接部33を取付穴5の縁部5aよりもさらに外側の位置に移動させることができる。
【0047】
さらに、ベース20には、回転移動したストッパー30と当接して、ストッパー30の動作時の位置を規制する傾斜面部24が設けられているので、動作時のストッパー30の位置がずれることがなくなる。また、当接部33に戸板4が突き当たったときに、その衝撃を傾斜面部24で面によって受けることができるので、ストッパー30が破損するのを防止することができる。
【0048】
また、ストッパー30には、当接部33の反対側に突出し、回転移動したときに一方の戸板3に当接する突起状受け部34が設けられているので、動作時のストッパー30の位置がずれることがなくなる。また、当接部33に戸板4が突き当たったときに、その衝撃を突起状受け部34を介して戸板3の裏面で受けることができるので、ストッパー30が破損するのを防止することができる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態に係る引戸用指挟み防止具について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、本実施の形態では、ストッパー30が軸40を中心に回動する構造になっているが、回動する構造に限定されるものではない。
【0050】
図12および
図13の引戸用指挟み防止具110は、本実施例の変形例を示すものである。なお、上述した実施例で使用した構造と同一のものは、同一の符号を付すことによって、その詳細な説明を省略する。
【0051】
この引戸用指挟み防止具110は、ストッパー30が、ベース120の側壁部22に形成されたスライド穴122bに沿ってスライド移動するものである。より詳細には、スライド穴122bは、右側から左側に向かうに従い手前側から奥側へ斜めに傾斜する態様で形成されている。ストッパー30の当接部33は、
図13に示すように、動作状態において、左側の奥側に向けて斜めにせり出すように移動する。これによっても、本実施例の回動動作と同様に、当接部33を取付穴5の縁部5aよりも開閉方向の外側まで移動することができる。