特許第6603183号(P6603183)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603183
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】信号解析装置及び信号解析方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/16 20150101AFI20191028BHJP
   H04J 99/00 20090101ALI20191028BHJP
   H04B 7/0413 20170101ALI20191028BHJP
【FI】
   H04B17/16
   H04J99/00
   H04B7/0413
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-145954(P2016-145954)
(22)【出願日】2016年7月26日
(65)【公開番号】特開2018-19151(P2018-19151A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2018年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(72)【発明者】
【氏名】松尾 亮二
(72)【発明者】
【氏名】呉 志輝
(72)【発明者】
【氏名】稲童丸 桃子
【審査官】 佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−318254(JP,A)
【文献】 特開2015−095832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/16
H04B 7/0413
H04J 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ出力ポート(#0〜#101)を有する被測定装置(1)の出力信号を解析する信号解析装置(10)であって、
前記複数のアンテナ出力ポートのいずれか1つを切り替えて選択する選択手段(20)と、
前記選択手段によって選択されたアンテナ出力ポートからの出力信号を記憶する出力信号記憶手段(42)と、
前記出力信号記憶手段によって記憶された前記出力信号を解析する信号解析手段(43)と、
を備え、
前記選択手段は、前記複数のアンテナ出力ポートのいずれか1つを選択した状態において出力する選択時出力信号と、前記複数のアンテナ出力ポートを切り替える切替時において出力する切替時出力信号と、を出力するものであって、前記複数のアンテナ出力ポートの各ポートから順次出力される前記出力信号を前記選択時出力信号と前記切替時出力信号とが交互に現れてなるデータ(60)で出力するものであり、
前記出力信号記憶手段は、前記データを記憶するものであり、
前記信号解析手段は、前記出力信号記憶手段によって記憶された前記選択時出力信号を解析するものであることを特徴とする信号解析装置。
【請求項2】
前記被測定装置は、無線周波数の信号を送信する送信装置であって、
前記選択手段と前記出力信号記憶手段との間において前記無線周波数の信号をベースバンド周波数の信号に周波数変換する周波数変換手段(30)をさらに備えたことを特徴とする請求項に記載の信号解析装置。
【請求項3】
複数のアンテナ出力ポート(#0〜#101)を有する被測定装置(1)の出力信号を解析する信号解析装置(10)を用いた信号解析方法であって、
前記複数のアンテナ出力ポートのいずれか1つを切り替えて選択する選択ステップ(S15)と、
前記選択ステップにおいて選択されたアンテナ出力ポートからの出力信号を記憶する出力信号記憶ステップ(S18)と、
前記出力信号記憶ステップにおいて記憶された前記出力信号を解析する信号解析ステップ(S21)と、
を含み、
前記選択ステップでは、前記複数のアンテナ出力ポートのいずれか1つを選択した状態において出力する選択時出力信号と、前記複数のアンテナ出力ポートを切り替える切替時において出力する切替時出力信号と、を出力するものであって、前記複数のアンテナ出力ポートの各ポートから順次出力される前記出力信号を前記選択時出力信号と前記切替時出力信号とが交互に現れてなるデータ(60)で出力し、
前記出力信号記憶ステップでは、前記データを記憶し、
前記信号解析ステップでは、前記出力信号記憶ステップにおいて記憶された前記選択時出力信号を解析する、
ことを特徴とする信号解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、MIMO(Multiple Input Multiple Output)方式の端末装置から送信される信号を解析する信号解析装置及び信号解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、縦方向と横方向に2次元配置した多数のアンテナ素子を基地局に搭載し、水平方向に加えて垂直方向にビームを形成する三次元MIMO(3D−MIMO)方式が検討されている。3D−MIMO方式のうち、送信アンテナが8より大きい場合はFD−MIMO(Full Dimension-MIMO)方式と呼ばれている。FD−MIMO方式の中には送信アンテナ数が100を超えるものもある。
【0003】
従来、MIMO方式の被測定装置に対して測定を行うものとしては、測定対象となっている被測定装置の測定中に、測定が終了した被測定装置を新たな被測定装置に交換できる測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の従来のものは、複数の被測定装置がそれぞれ備えた2つのアンテナに接続可能な複数の端子(アンテナ出力ポート)を有する接続部と、複数の被測定装置の2つのアンテナのうちの1つと信号生成部及び信号解析部とを選択的に接続する切替部と、切替部の切替動作を制御する制御部と、を有する構成となっている。
【0005】
この構成により、従来のものは、被測定装置のアンテナの切り替えを容易にすることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−183269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のものでは、被測定装置のアンテナ出力ポート数が2つ程度の場合はアンテナ出力ポートの切り替えは容易であったが、被測定装置のアンテナ出力ポート数が増加するほどアンテナ出力ポートの切り替えが困難となるという課題があった。
【0008】
具体的には、従来のものでは、例えば、FD−MIMO方式に対応させるため、被測定装置が多数のアンテナ出力ポート(例えば64個以上)を有する場合には、被測定装置の送信タイミング制御が煩雑となってアンテナ出力ポートの切り替えが困難となり、高速な信号解析を行うことができなかった。
【0009】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであり、被測定装置が多数のアンテナ出力ポートを有する場合でも、簡易な構成で高速な信号解析を行うことができる信号解析装置及び信号解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る信号解析装置は、複数のアンテナ出力ポート(#0〜#101)を有する被測定装置(1)の出力信号を解析する信号解析装置(10)であって、前記複数のアンテナ出力ポートのいずれか1つを切り替えて選択する選択手段(20)と、前記選択手段によって選択されたアンテナ出力ポートからの出力信号を記憶する出力信号記憶手段(42)と、前記出力信号記憶手段によって記憶された前記出力信号を解析する信号解析手段(43)と、を備え、前記選択手段は、前記複数のアンテナ出力ポートのいずれか1つを選択した状態において出力する選択時出力信号と、前記複数のアンテナ出力ポートを切り替える切替時において出力する切替時出力信号と、を出力するものであって、前記複数のアンテナ出力ポートの各ポートから順次出力される前記出力信号を前記選択時出力信号と前記切替時出力信号とが交互に現れてなるデータ(60)で出力するものであり、前記出力信号記憶手段は、前記データを記憶するものであり、前記信号解析手段は、前記出力信号記憶手段によって記憶された前記選択時出力信号を解析するものである構成を有している。
【0011】
この構成により、本発明の請求項1に係る信号解析装置は、複数のアンテナ出力ポートのいずれか1つを切り替えて選択し、各アンテナ出力ポートから出力される出力信号を記憶し、記憶された出力信号を解析するので、被測定装置が多数のアンテナ出力ポートを有する場合でも、簡易な構成で高速な信号解析を行うことができる。また、本発明の請求項1に係る信号解析装置は、出力信号の捕捉が一括で完了し捕捉データが1つにまとまるので、捕捉データの取り扱いの容易化を図ることができる。
【0014】
本発明の請求項に係る信号解析装置は、前記被測定装置は、無線周波数の信号を送信する送信装置であって、前記選択手段と前記出力信号記憶手段との間において前記無線周波数の信号をベースバンド周波数の信号に周波数変換する周波数変換手段(30)をさらに備えた構成を有している。
【0015】
この構成により、本発明の請求項に係る信号解析装置は、無線周波数の信号を送信する送信装置が多数のアンテナ出力ポートを有する場合でも、簡易な構成で高速な信号解析を行うことができる。
【0016】
本発明の請求項に係る信号解析方法は、複数のアンテナ出力ポート(#0〜#101)を有する被測定装置(1)の出力信号を解析する信号解析装置(10)を用いた信号解析方法であって、前記複数のアンテナ出力ポートのいずれか1つを切り替えて選択する選択ステップ(S15)と、前記選択ステップにおいて選択されたアンテナ出力ポートからの出力信号を記憶する出力信号記憶ステップ(S18)と、前記出力信号記憶ステップにおいて記憶された前記出力信号を解析する信号解析ステップ(S21)と、を含み、前記選択ステップでは、前記複数のアンテナ出力ポートのいずれか1つを選択した状態において出力する選択時出力信号と、前記複数のアンテナ出力ポートを切り替える切替時において出力する切替時出力信号と、を出力するものであって、前記複数のアンテナ出力ポートの各ポートから順次出力される前記出力信号を前記選択時出力信号と前記切替時出力信号とが交互に現れてなるデータ(60)で出力し、前記出力信号記憶ステップでは、前記データを記憶し、前記信号解析ステップでは、前記出力信号記憶ステップにおいて記憶された前記選択時出力信号を解析する、構成を有している。
【0017】
この構成により、本発明の請求項に係る信号解析方法は、複数のアンテナ出力ポートのいずれか1つを切り替えて選択し、各アンテナ出力ポートから出力される出力信号を記憶し、記憶された出力信号を解析するので、被測定装置が多数のアンテナ出力ポートを有する場合でも、簡易な構成で高速な信号解析を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、被測定装置が多数のアンテナ出力ポートを有する場合でも、簡易な構成で高速な測定を行うことができるという効果を有する信号解析装置及び信号解析方法を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る信号解析装置の一実施形態におけるブロック構成図である。
図2】本発明に係る信号解析装置の一実施形態におけるスイッチボックスのブロック構成図である。
図3】本発明に係る信号解析装置の一実施形態におけるスイッチボックスから出力されるキャプチャデータの模式図である。
図4】本発明に係る信号解析装置の一実施形態におけるフローチャートである。
図5】本発明に係る信号解析装置の一実施形態及び従来のものによる各処理を比較して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0021】
まず、本発明に係る信号解析装置の一実施形態における構成について説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態における信号解析装置10は、被測定装置(以下「DUT」という)1の出力信号をキャプチャ(捕捉)して解析するものである。このDUT1は、多数のアンテナ出力ポートを有し、例えばMIMO方式に従った信号を出力するものである。例えば、DUT1は、携帯電話システムの基地局のマルチアンテナに接続されるアンテナ出力ポートを有し、MIMO方式に従った無線周波数の信号を送信する送信装置である。以下の説明において、DUT1は、102個のアンテナ出力ポートを有するものとする。
【0023】
信号解析装置10は、スイッチボックス20、RF部30、信号解析部40、表示装置50、操作部11、制御部12を備えている。信号解析装置10は、CPU、ROM、RAM、各種インタフェースが接続される入出力回路等を備えたマイクロコンピュータを含む。信号解析装置10は、ROMに予め格納された制御プログラムを実行させることにより、マイクロコンピュータを信号解析装置10の各機能部として機能させるようになっている。
【0024】
スイッチボックス20は、DUT1の出力信号のキャプチャ開始を示す信号(以下「トリガ信号」という)を制御部12から受信したことを契機として、DUT1が有する複数のアンテナ出力ポートのいずれか1つを所定の順序で切り替えて選択し、各アンテナ出力ポートからの出力信号をキャプチャしてキャプチャデータをRF部30に出力するようになっている。このスイッチボックス20は、選択手段の一例である。
【0025】
RF部30は、ATT(アッテネータ)31、局部発振器32、ミキサ33、BPF(バンドパスフィルタ)34、ADC(アナログデジタルコンバータ)35を備え、無線周波数の信号(以下「RF信号」という)をベースバンド周波数の信号に周波数変換するものである。このRF部30は、周波数変換手段の一例である。
【0026】
ATT31は、スイッチボックス20から入力したRF信号を所定のレベルに減衰し、ミキサ33に出力するようになっている。
【0027】
局部発振器32は、所定周波数の局部発振信号を生成してミキサ33に出力するようになっている。
【0028】
ミキサ33は、ATT31が出力するRF信号と局部発振器32からの局部発振信号とを混合してベースバンド周波数の信号に周波数変換し、BPF34に出力するようになっている。
【0029】
BPF34は、入力信号のフィルタリングを行って、所定周波数領域の信号を取り出してADC35に出力するようになっている。
【0030】
ADC35は、BPF34の出力信号をアナログ値からデジタル値に変換し、信号解析部40に出力するようになっている。
【0031】
信号解析部40は、IQ変換部41、メモリ部42、解析部43を備え、ADC35が出力する信号の波形データをキャプチャして解析するものである。
【0032】
IQ変換部41は、ADC35の出力信号をI相成分(同相成分)及びQ相成分(直交成分)のベースバンドデータ(以下「I/Qデータ」という)に変換し、メモリ部42に出力するようになっている。
【0033】
メモリ部42は、制御部12からトリガ信号を受信したことを契機として、IQ変換部41が変換したI/Qデータを記憶するようになっている。このメモリ部42は、出力信号記憶手段の一例である。
【0034】
解析部43は、メモリ部42が記憶したI/Qデータに対し、所定の解析を行うようになっている。例えば、解析部43は、送信電力、変調精度(Error Vector Magnitude、EVM)、隣接チャネル漏洩電力比(Adjacent Channel Leakage Ratio、ACLR)、位相誤差(Phase Error)、振幅誤差(Magnitude Error)等を求めることができる。この解析部43は、信号解析手段の一例である。
【0035】
表示装置50は、表示制御部51、表示部52を備えている。表示制御部51は、表示部52に表示する情報の表示制御を行うようになっている。表示部52は、表示制御部51の表示制御に基づいて所定の情報を表示するようになっている。
【0036】
操作部11は、被測定信号を解析する解析項目や解析条件、判定条件等を設定するためユーザが操作するものである。例えば、操作部11は、各種条件を設定するための設定画面を表示するディスプレイや、キーボード、ダイヤル又はマウスのような入力デバイス、これらを制御する制御回路やソフトウェア等で構成され、各解析項目や解析条件の入力や、表示部52の表示内容を設定するものである。
【0037】
制御部12は、操作部11によって入力された各種情報を信号解析装置10の各部及びDUT1に設定するようになっている。また、制御部12は、DUT1の出力信号のキャプチャを開始する際に、スイッチボックス20及びメモリ部42にトリガ信号を出力するようになっている。また、制御部12は、DUT1の出力信号をアンテナ出力ポートごとに所定のタイミングでキャプチャするため、スイッチボックス20にスイッチ切替信号を出力するようになっている。
【0038】
次に、スイッチボックス20の詳細な構成について図2を用いて説明する。図2は、DUT1のアンテナ出力ポートと、スイッチボックス20の構成例を示す図である。この構成例のスイッチボックス20は、6つの入力側端子と1つの出力側端子とを有する6回路1接点の切替スイッチを複数備えている。なお、各切替スイッチの入力側端子のうち図中一番上を1番目、一番下を6番目と呼ぶ。
【0039】
図2に示すように、DUT1は、アンテナ出力ポート#0〜#101を有している。なお、アンテナ出力ポート#12〜#89の図示は省略している。
【0040】
スイッチボックス20は、第1の切替スイッチ群200と、第2の切替スイッチ群220と、切替スイッチ21と、を備えている。
【0041】
第1の切替スイッチ群200は、17個の切替スイッチ201〜217を備え、制御部12からのスイッチ切替信号に基づいて切替動作を行うようになっている。なお、切替スイッチ203〜215の図示は省略している。切替スイッチ201は、DUT1のアンテナ出力ポート#0〜#5のいずれか1つを選択可能である。切替スイッチ202は、DUT1のアンテナ出力ポート#6〜#11のいずれか1つを選択可能である。切替スイッチ216は、DUT1のアンテナ出力ポート#90〜#95のいずれか1つを選択可能である。切替スイッチ217は、DUT1のアンテナ出力ポート#96〜#101のいずれか1つを選択可能である。
【0042】
第2の切替スイッチ群220は、3個の切替スイッチ221〜223を備え、制御部12からのスイッチ切替信号に基づいて切替動作を行うようになっている。切替スイッチ221は、第1の切替スイッチ群200を介して、DUT1のアンテナ出力ポート#0〜#35のいずれか1つを選択可能である。切替スイッチ222は、第1の切替スイッチ群200を介して、DUT1のアンテナ出力ポート#36〜#71のいずれか1つを選択可能である。切替スイッチ223は、第1の切替スイッチ群200を介して、DUT1のアンテナ出力ポート#72〜#101のいずれか1つを選択可能である。なお、切替スイッチ223は、入力側端子として1番目から5番目までの5つを使用するようになっている。
【0043】
切替スイッチ21は、1番目から3番目までの3つの入力側端子が第2の切替スイッチ群220の切替スイッチ221〜223の各出力側端子にそれぞれ接続されている。この切替スイッチ21は、制御部12からのスイッチ切替信号に基づいて、切替スイッチ221〜223のいずれか1つの出力側端子を選択するようになっている。
【0044】
以上の構成により、スイッチボックス20は、第1の切替スイッチ群200、第2の切替スイッチ群220及び切替スイッチ21の切替動作により、DUT1のアンテナ出力ポート#0〜#101のいずれか1つを選択可能である。
【0045】
制御部12は、スイッチボックス20の第1の切替スイッチ群200、第2の切替スイッチ群220及び切替スイッチ21にスイッチ切替信号を出力し、DUT1のアンテナ出力ポート#0〜#101からの出力信号をスイッチボックス20に順次入力させるようになっている。例えば、制御部12は、DUT1のアンテナ出力ポート#0の出力信号を選択する場合には、切替スイッチ201の1番目の入力側端子と、切替スイッチ221の1番目の入力側端子と、切替スイッチ21の1番目の入力側端子と、を選択させるようスイッチ切替信号をスイッチボックス20に出力する。また、例えば、制御部12は、DUT1のアンテナ出力ポート#101の出力信号を選択する場合には、切替スイッチ217の6番目の入力側端子と、切替スイッチ223の5番目の入力側端子と、切替スイッチ21の3番目の入力側端子と、を選択させるようスイッチ切替信号をスイッチボックス20に出力する。
【0046】
次に、スイッチボックス20から出力されるキャプチャデータについて図3を用いて説明する。
【0047】
図3に示すように、スイッチボックス20から出力されるキャプチャデータ60は、「Port#0」〜「Port#101」で示されたアンテナ出力ポート#0〜#101の出力信号と、各出力信号の間に「ガードタイム」として示されたガードタイム信号と、を含む。
【0048】
各出力信号は、スイッチボックス20内の各切替スイッチが所定の位置に設定された状態で出力される信号である。すなわち、各出力信号は、スイッチボックス20が複数のアンテナ出力ポート#0〜#101のいずれか1つを選択した状態において出力する選択時出力信号の一例である。
【0049】
各ガードタイム信号は、スイッチボックス20内の各切替スイッチの切り替え中に出力される信号である。すなわち、ガードタイム信号は、スイッチボックス20が複数のアンテナ出力ポート#0〜#101を切り替える切替時において出力する切替時出力信号の一例である。
【0050】
すなわち、スイッチボックス20は、選択時出力信号と切替時出力信号とが交互に現れるデータを1つのキャプチャデータ60(捕捉データ)として出力するものであり、選択手段の一例である。
【0051】
各出力信号及び各ガードタイム信号の時間長は、それぞれ、スイッチボックス20の切替時間及び解析部43の解析時間に応じて設定でき、例えば共に20ミリ秒とすることができる。この場合には、キャプチャデータ60は、4.08秒という短時間のデータで構成されることとなる。
【0052】
スイッチボックス20から出力されるキャプチャデータ60は、前述のように構成され、RF部30及びIQ変換部41による処理の後、メモリ部42に記憶される。解析部43は、アンテナ出力ポート#0〜#101の出力信号(選択時出力信号)をメモリ部42から順次又は任意の順序で読み出すことにより、所定の解析を行うことができる。
【0053】
なお、メモリ部42に記憶されたキャプチャデータ60を1つのファイルとして信号解析装置10の外部に出力し、外部の装置(例えばサーバ)によりキャプチャデータ60を解析する構成とすれば、より高速な解析処理が行えて好ましい。
【0054】
次に、本実施形態における信号解析装置10の動作について図4を用いて説明する。
【0055】
制御部12は、DUT1のアンテナ出力ポートの番号を示す変数nを初期化する(ステップS11)。
【0056】
制御部12は、所定の測定を行うための測定パラメータを操作部11から入力し、DUT1、RF部30、信号解析部40及び表示装置50に設定する(ステップS12)。
【0057】
制御部12は、所定の制御信号をDUT1に出力し、DUT1の各アンテナ出力ポートからの信号出力を開始させる(ステップS13)。これ以降、DUT1は、各アンテナ出力ポートから解析対象の信号を出し続ける状態となる。
【0058】
制御部12は、DUT1の出力信号のキャプチャを開始するため、トリガ信号をスイッチボックス20及びメモリ部42に出力する(ステップS14)。
【0059】
制御部12は、DUT1のアンテナ出力ポートnをスイッチボックス20に選択させるためのスイッチ切替信号を出力し、アンテナ出力ポートnをスイッチボックス20に選択させる(ステップS15)。
【0060】
RF部30は、アンテナ出力ポートnからの無線周波数の信号をベースバンド周波数の信号に周波数変換する(ステップS16)。具体的には、ATT31は、スイッチボックス20から入力したRF信号を所定のレベルに減衰し、ミキサ33に出力する。局部発振器32は、所定周波数の局部発振信号を生成してミキサ33に出力する。ミキサ33は、ATT31が出力するRF信号と局部発振器32からの局部発振信号とを混合してベースバンド周波数の信号に周波数変換し、BPF34に出力する。BPF34は、入力信号のフィルタリングを行って、所定周波数領域の信号を取り出してADC35に出力する。ADC35は、BPF34の出力信号をアナログ値からデジタル値に変換し、IQ変換部41に出力する。
【0061】
IQ変換部41は、ADC35の出力信号であるアンテナ出力ポートnの出力信号をI/Qデータに変換する(ステップS17)。
【0062】
メモリ部42は、アンテナ出力ポートnのI/Qデータを所定のメモリ領域に記憶する(ステップS18)。
【0063】
制御部12は、変数nをインクリメントする(ステップS19)。
【0064】
制御部12は、変数nがアンテナ出力ポート数の101を超えたか否かを判断する(ステップS20)。
【0065】
ステップS20において、変数nが101を超えたと判断された場合には、解析部43は所定の信号解析を行うことが可能となり(ステップS21)、表示装置50は信号解析結果を表示する(ステップS22)。
【0066】
一方、ステップS20において、変数nが101を超えたと判断されなかった場合には、ステップS15の処理に戻る。
【0067】
次に、本実施形態における信号解析装置10及び従来のものによる各処理を図5に基づき比較説明する。
【0068】
まず、従来のものは、図5(a)に示すように、アンテナ出力ポートごとに、DUT制御、信号キャプチャ及び信号解析を行っていた。そのため、従来のものでは、アンテナ出力ポートが増加するに従って多大な処理時間を要していた。また、従来のものでは、キャプチャデータがアンテナ出力ポートごとに存在することとなるので、アンテナ出力ポートが増加するに従ってキャプチャデータが増大し、キャプチャデータの扱いが容易ではなかった。
【0069】
なお、DUT制御は、例えば、アンテナ出力ポート#1を使用する場合には、アンテナ出力ポート#1を使用し、他のアンテナ出力ポートは使用しない出力ポート設定や、出力ポート設定が終了したか否かの確認、信号キャプチャを開始する通知等を含む制御である。
【0070】
これに対し、本実施形態では、図5(b)に示すように、アンテナ出力ポート#0〜nをまとめてDUT制御、信号キャプチャ及び信号解析を行うものである。したがって、本実施形態では、以下に示す効果が得られる。
(1)DUTの出力信号のキャプチャが一括で完了するので、DUTに対する制御が容易となるとともに、アンテナ出力ポートが増加しても従来よりも高速に信号解析が可能となる。
(2)キャプチャデータの取得時にはDUTから解析対象の信号を出し続ければよいので、従来のものとは異なり、DUTのアンテナ出力ポートごとに信号のオン、オフ制御が不要となる。
(3)キャプチャデータが1つにまとまるので、キャプチャデータの取り扱いが容易となる。特に、信号解析装置10の外部にキャプチャデータを送信する際には、キャプチャデータを含むファイルが1つとなり、ファイルの送受信や解析等が容易となる。
【0071】
以上のように、本実施形態における信号解析装置10は、DUT1の複数のアンテナ出力ポート#0〜#101とメモリ部42との間の接続を切り替えて、各アンテナ出力ポートから出力される出力信号を記憶し、記憶された出力信号を解析する構成としたので、DUT1が多数のアンテナ出力ポートを有する場合でも、簡易な構成で高速な信号解析を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように、本発明に係る信号解析装置及び信号解析方法は、被測定装置が多数のアンテナ出力ポートを有する場合でも、簡易な構成で高速な測定を行うことができるという効果を有し、MIMO方式の端末装置から送信される信号を解析する信号解析装置及び信号解析方法として有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 DUT(被測定装置)
10 信号解析装置
20 スイッチボックス(選択手段)
30 RF部(周波数変換手段)
40 信号解析部
41 IQ変換部
42 メモリ部(出力信号記憶手段)
43 解析部(信号解析手段)
60 キャプチャデータ(捕捉データ)
#0〜#101 アンテナ出力ポート
図1
図2
図3
図4
図5