特許第6603195号(P6603195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603195
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】PONシステムおよび伝送方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/44 20060101AFI20191028BHJP
【FI】
   H04L12/44 200
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-222184(P2016-222184)
(22)【出願日】2016年11月15日
(65)【公開番号】特開2018-82260(P2018-82260A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2018年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】西 直也
(72)【発明者】
【氏名】難波 忍
(72)【発明者】
【氏名】猪原 涼
(72)【発明者】
【氏名】西村 公佐
【審査官】 大石 博見
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−120883(JP,A)
【文献】 特開2010−193232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
OLT(Optical Line Terminal)と複数のONU(Optical Network Unit)とが光分岐器を介して接続され、光ファイバ伝送を実現するPON(Passive Optical Network)システムであって、
前記OLTは、
いずれのONUであってもReportのみを送信できる時間帯である帯域要求専用時間帯を設定すると共に、すべてのONUに対し、前記帯域要求専用時間帯を設定したことを、専用Gateを用いて通知し、
前記帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、前記Reportを送信したONUに対し、前記受信したReportに基づいて、DBA(Dynamic Bandwidth Allocation)に基づく帯域割当を行なって、帯域割当情報を、Gateを用いて前記ONUに通知し、
前記ONUは、
前記Gateに従って、通常時間帯に前記OLTにデータを送信することを特徴とするPONシステム。
【請求項2】
前記OLTは、
前記帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、前記Reportを送信したONUに対し、直ちに受領信号を送信することを特徴とする請求項1記載のPONシステム。
【請求項3】
前記帯域要求専用時間帯に複数のONUが送信したReportが同じタイミングで前記OLTに到着した場合、前記OLTは、衝突が発生したとして前記受領信号を送信せず、
前記帯域要求専用時間帯にReportを送信した各ONUは、所定時間内に前記OLTから受領信号を受信しなかった場合、前記帯域要求専用時間帯が終了するまではReportを前記OLTに対してランダムに再送することを特徴とする請求項2記載のPONシステム。
【請求項4】
前記帯域要求専用時間帯に複数のONUが送信したReportが同じタイミングで前記OLTに到着した場合、前記OLTは、衝突が発生したことを示す衝突通知を前記各ONUに対して送信し、
前記帯域要求専用時間帯にReportを送信した各ONUは、前記衝突通知を受信した場合、前記帯域要求専用時間帯が終了するまではReportを前記OLTに対してランダムに再送することを特徴とする請求項1記載のPONシステム。
【請求項5】
前記OLTは、
前記帯域要求専用時間帯にいずれか1台以上の前記ONUからReportを受信した場合、即時にまたは一定時間経過後に、前記帯域要求専用時間帯が満了する前に終了する旨の終了通知をすべてのONUに通知し、
前記受信したReportに基づいて、DBA(Dynamic Bandwidth Allocation)に基づく帯域割当を行なって、帯域割当情報を、Gateを用いて前記ONUに通知し、
前記ONUは、
前記Gateに従って、通常時間帯に前記OLTにデータを送信することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のPONシステム。
【請求項6】
前記OLTは、
複数の前記帯域要求専用時間帯を設定すると共に、各ONUに対して、各帯域要求専用時間帯を割り当てて、割り当てた帯域要求専用時間帯にそれぞれ対応する専用Gateを用いて、各ONUに前記帯域要求専用時間帯を設定したことを通知し、
前記ONUは、
前記OLTから受信した専用Gateに基づいて、自装置に割り当てられた帯域要求専用時間帯でReportを送信し得ることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のPONシステム。
【請求項7】
前記OLTは、
前記設定した帯域要求専用時間帯を複数のタイムスロットに分割し、前記各ONUから送信されたReportを、各スロットでReport毎に受信することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のPONシステム。
【請求項8】
前記各ONUが前記帯域要求専用時間帯に送信するReportのフレームサイズは、必要最低限のサイズであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のPONシステム。
【請求項9】
OLT(Optical Line Terminal)と複数のONU(Optical Network Unit)とが光分岐器を介して接続され、光ファイバ伝送を実現するPON(Passive Optical Network)システムの伝送方法であって、
前記OLTにおいて、
いずれのONUであってもReportのみを送信できる時間帯である帯域要求専用時間帯を設定すると共に、すべてのONUに対し、前記帯域要求専用時間帯を設定したことを、専用Gateを用いて通知するステップと、
前記帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、前記Reportを送信したONUに対し、前記受信したReportに基づいて、DBA(Dynamic Bandwidth Allocation)に基づく帯域割当を行なって、帯域割当情報を、Gateを用いて前記ONUに通知するステップと、
前記ONUにおいて、
前記Gateに従って、通常時間帯に前記OLTにデータを送信するステップと、を少なくとも含むことを特徴とする伝送方法。
【請求項10】
前記OLTにおいて、
前記帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、前記Reportを送信したONUに対し、直ちに受領信号を送信するステップをさらに含むことを特徴とする請求項9記載の伝送方法。
【請求項11】
前記帯域要求専用時間帯に複数のONUが送信したReportが同じタイミングで前記OLTに到着した場合、前記OLTにおいて、衝突が発生したことを示す衝突通知を前記各ONUに対して送信するステップと、
前記帯域要求専用時間帯にReportを送信した各ONUにおいて、前記衝突通知を受信した場合、前記帯域要求専用時間帯が終了するまではReportを前記OLTに対してランダムに再送するステップと、を更に含むことを特徴とする請求項9記載の伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OLT(Optical Line Terminal)と少なくとも一つのONU(Optical Network Unit)とが光分岐器を介して接続され、光ファイバ伝送を実現する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動通信網が提供する無線アクセスネットワークの高速化に伴って、基地局装置がカバーする領域(セル)が狭くなり、その結果、移動通信網を構成するために設置すべき基地局装置数が増大している。このため、複数の基地局装置を収容するためのネットワークとして、1本の光伝送路を複数の加入者で共有する受動光網(PON:Passive Optical Network)システムが検討されている。
【0003】
PONシステムでは、通信事業者の局に設置された1つの光伝送路終端装置(OLT:Optical Line Terminal)が光分岐器を介して複数の加入者側宅内端末(ONU:Optical Network Unit)と接続されている。OLTは、複数のONU、例えば、64台のONUに対して時分割多重方式により動的に上り帯域を割り当てることで、高い帯域の利用効率を実現している。
【0004】
特許文献1には、低遅延が求められる信号に対応する光ネットワークシステムが開示されている。
【0005】
この光ネットワークシステムでは、ONUからOLTへ上り信号を送信する際に、帯域割当周期内または特定の任意の帯域割当周期に、自由に信号を送信可能な時間帯(特許文献1では「CAP」と呼称されている。)と、動的に帯域を割り当てる時間(特許文献1では「CFP」と呼称されている。)を設け、複合的に上り送信手段を運用する。これにより、低遅延が要求される上りデータを送信するために、ReportやGateを不要とし、またはタイムスロット待ちを不要として低遅延での通信を実現しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−165558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
今後想定されている基地局装置や、M2M(Machine-to-Machine)等のアプリケーションでは、アクセス網における伝送遅延を1ミリ秒以内に収めることが要求されている。しかしながら、上り伝送がTDMA(Time Division Multiple Access)ベースのPONシステムでは、OLTとONU間の動的帯域割当(DBA :Dynamic Bandwidth Allocation)の制御により、最大でポーリング周期相当の遅延が生じてしまうため、上記アプリケーションの適用が困難であった。
【0008】
図11は、従来のPONシステムのシーケンスチャートである。ここでは、ONU21がBBU(Base Band Unit)/RRH(Remote Radio Head)29からデータを受信してから、そのデータをOLT15に送信するまでのPON伝送遅延が示されている。図11において、PONシステムにおけるポーリング周期は、通常、数ミリ秒程度である。このポーリング周期が短いと、制御フレームが通信帯域を圧迫してしまう。なお、図11において、「Gate」とは、OLT15が、ONU21に対し、いつからいつまでデータを送ってよいかを指示するフレームである。ONU21から要求がなければ、Report分のみを指示する。「Report」とは、ONU21からOLT15へどれだけのデータを送りたいのかを帯域要求として送信するフレームである。すなわち、ONU21が配下のBBU/RRH29から取得するデータ量を通知する機能を有する。
【0009】
図12は、特許文献1に開示されている光ネットワークシステムのシーケンスチャートである。図12において、「CAP」とは、ONU21がOLT15に対して自由に信号を送信できるように設定された時間帯であり、「CFP」とは、OLT15がONU21に対して、動的に帯域を割り当てる時間帯を示す。特許文献1に開示されている技術では、CAPの時間帯で、任意のONUがデータを送信することができるため、データが同じタイミングでOLTに到着すると、衝突が発生する。CFPの時間帯にデータを再送することにより遅延が生ずる場合がある。また、CAPの時間帯での衝突の影響を軽減するためにはCAPの時間帯を大きくしなければならず、他のONUにおける帯域効率が低下する恐れがある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、PONシステムにおける帯域効率を維持しつつ、特定のONUから送信されるデータの低遅延化を図ることができるPONシステムおよび伝送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明のPONシステムは、OLT(Optical Line Terminal)と複数のONU(Optical Network Unit)とが光分岐器を介して接続され、光ファイバ伝送を実現するPON(Passive Optical Network)システムであって、前記OLTは、いずれのONUであってもReportのみを送信できる時間帯である帯域要求専用時間帯を設定すると共に、すべてのONUに対し、前記帯域要求専用時間帯を設定したことを、専用Gateを用いて通知し、前記帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、前記Reportを送信したONUに対し、前記受信したReportに基づいて、DBA(Dynamic Bandwidth Allocation)に基づく帯域割当を行なって、帯域割当情報を、Gateを用いて前記ONUに通知し、前記ONUは、前記Gateに従って、通常時間帯に前記OLTにデータを送信することを特徴とする。
【0012】
このように、OLTは、いずれのONUであってもReportのみを送信できる時間帯である帯域要求専用時間帯を設定すると共に、すべてのONUに対し、帯域要求専用時間帯を設定したことを、専用Gateを用いて通知し、帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、Reportを送信したONUに対し、受信したReportに基づいて、DBAに基づく帯域割当を行なって、帯域割当情報を、Gateを用いてONUに通知し、ONUは、Gateに従って、通常時間帯にOLTにデータを送信するので、帯域要求専用時間帯でデータを送信することによる衝突の可能性を排除し、上り伝送の低遅延化を図ることが可能となる。
【0013】
(2)また、本発明のPONシステムにおいて、前記OLTは、前記帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、前記Reportを送信したONUに対し、直ちに受領信号を送信することを特徴とする。
【0014】
このように、OLTは、帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、Reportを送信したONUに対し、直ちに受領信号を送信するので、ONUは、帯域要求専用時間帯で送信されたReportがOLTで受信できたことを即座に把握することが可能となる。その結果、OLTがReportを受信できなかった場合でも、短時間で再送を実行することが可能となる。
【0015】
(3)また、本発明のPONシステムは、前記帯域要求専用時間帯に複数のONUが送信したReportが同じタイミングで前記OLTに到着した場合、前記OLTは、衝突が発生したとして前記受領信号を送信せず、前記帯域要求専用時間帯にReportを送信した各ONUは、所定時間内に前記OLTから受領信号を受信しなかった場合、前記帯域要求専用時間帯が終了するまではReportを前記OLTに対してランダムに再送することを特徴とする。
【0016】
このように、帯域要求専用時間帯に複数のONUが送信したReportが同じタイミングでOLTに到着した場合、OLTは、衝突が発生したとして受領信号を送信せず、帯域要求専用時間帯にReportを送信した各ONUは、所定時間内にOLTから受領信号を受信しなかった場合、帯域要求専用時間帯が終了するまではReportをOLTに対してランダムに再送するので、ONUは、帯域要求専用時間帯で送信されたReportがOLTで受信できなかった場合でも、短時間で再送を実行することが可能となる。
【0017】
(4)また、本発明のPONシステムは、前記帯域要求専用時間帯に複数のONUが送信したReportが同じタイミングで前記OLTに到着した場合、前記OLTは、衝突が発生したことを示す衝突通知を前記各ONUに対して送信し、前記帯域要求専用時間帯にReportを送信した各ONUは、前記衝突通知を受信した場合、前記帯域要求専用時間帯が終了するまではReportを前記OLTに対してランダムに再送することを特徴とする。
【0018】
このように、帯域要求専用時間帯に複数のONUが送信したReportが同じタイミングでOLTに到着した場合、OLTは、衝突が発生したことを示す衝突通知を各ONUに対して送信するので、ONUは、OLTがReportを受信できなかったことを即座に把握することが可能となる。その結果、ONUは、帯域要求専用時間帯で送信されたReportがOLTで受信できなかった場合でも、短時間で再送を実行することが可能となる。また、ONUは、Gateに従って、通常時間帯にOLTにデータを送信するので、帯域要求専用時間帯でデータを送信することによる衝突の可能性を排除し、上り伝送の低遅延化を図ることが可能となる。
【0019】
(5)また、本発明のPONシステムにおいて、前記OLTは、前記帯域要求専用時間帯にいずれか1台以上の前記ONUからReportを受信した場合、即時にまたは一定時間経過後に、前記帯域要求専用時間帯が満了する前に終了する旨の終了通知をすべてのONUに通知し、前記受信したReportに基づいて、DBA(Dynamic Bandwidth Allocation)に基づく帯域割当を行なって、帯域割当情報を、Gateを用いて前記ONUに通知し、前記ONUは、前記Gateに従って、通常時間帯に前記OLTにデータを送信することを特徴とする。
【0020】
このように、OLTは、帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、即時にまたは一定時間経過後に、帯域要求専用時間帯が満了する前に終了する旨の終了通知をすべてのONUに通知し、受信したReportに基づいて、DBAに基づく帯域割当を行なって、帯域割当情報を、Gateを用いてONUに通知するので、Reportのみを送信可能な帯域専用時間帯を短縮し、データを送信できる通常時間帯に早期に移行するため、データの低遅延化を図ることが可能となる。
【0021】
(6)また、本発明のPONシステムにおいて、前記OLTは、複数の前記帯域要求専用時間帯を設定すると共に、各ONUに対して、各帯域要求専用時間帯を割り当てて、割り当てた帯域要求専用時間帯にそれぞれ対応する専用Gateを用いて、各ONUに前記帯域要求専用時間帯を設定したことを通知し、前記ONUは、前記OLTから受信した専用Gateに基づいて、自装置に割り当てられた帯域要求専用時間帯でReportを送信し得ることを特徴とする。
【0022】
このように、OLTは、複数の帯域要求専用時間帯を設定すると共に、各ONUに対して、各帯域要求専用時間帯を割り当てて、割り当てた帯域要求専用時間帯にそれぞれ対応する専用Gateを用いて、各ONUに帯域要求専用時間帯を設定したことを通知するので、帯域要求専用時間帯におけるReportの衝突の可能性を低くすることが可能となる。その結果、データ伝送の低遅延化を図ることが可能となる。
【0023】
(7)また、PONシステムにおいて、前記OLTは、前記設定した帯域要求専用時間帯を複数のスロットに分割し、前記各ONUから送信されたReportを、各スロットでReport毎に受信することを特徴とする。
【0024】
このように、OLTは、設定した帯域要求専用時間帯を複数のスロットに分割し、各ONUから送信されたReportを、各スロットでReport毎に受信するので、帯域要求専用時間帯に複数のONUから送信されたReportフレームの一部が重なることによる衝突を回避することができる。その結果、データ伝送の低遅延化を図ることが可能となる。
【0025】
(8)また、本発明のPONシステムにおいて、前記各ONUが前記帯域要求専用時間帯に送信するReportのフレームサイズは、必要最低限のサイズであることを特徴とする。
【0026】
このように、各ONUが帯域要求専用時間帯に送信するReportのフレームサイズは、必要最低限のサイズであるので、帯域要求専用時間帯に複数のReportが衝突する可能性が低くなると共に、帯域要求専用時間帯にデータを送信する場合よりも帯域要求専用時間帯を短くすることができる。その結果、低遅延化を図ることが可能となる。
【0027】
(9)また、本発明の伝送方法は、OLT(Optical Line Terminal)と複数のONU(Optical Network Unit)とが光分岐器を介して接続され、光ファイバ伝送を実現するPON(Passive Optical Network)システムの伝送方法であって、前記OLTにおいて、いずれのONUであってもReportのみを送信できる時間帯である帯域要求専用時間帯を設定するステップと、すべてのONUに対し、前記帯域要求専用時間帯を設定したことを、専用Gateを用いて通知するステップと、前記帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、前記Reportを送信したONUに対し、前記受信したReportに基づいて、DBA(Dynamic Bandwidth Allocation)に基づく帯域割当を行なって、帯域割当情報を、Gateを用いて前記ONUに通知するステップと、前記ONUにおいて、前記Gateに従って、通常時間帯に前記OLTにデータを送信するステップと、を少なくとも含むことを特徴とする。
【0028】
このように、OLTは、いずれのONUであってもReportのみを送信できる時間帯である帯域要求専用時間帯を設定すると共に、すべてのONUに対し、帯域要求専用時間帯を設定したことを、専用Gateを用いて通知し、帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、Reportを送信したONUに対し、受信したReportに基づいて、DBAに基づく帯域割当を行なって、帯域割当情報を、Gateを用いてONUに通知し、ONUは、Gateに従って、通常時間帯にOLTにデータを送信するので、帯域要求専用時間帯でデータを送信することによる衝突の可能性を排除し、上り伝送の低遅延化を図ることが可能となる。
【0029】
(10)また、本発明の伝送方法は、前記OLTにおいて、前記帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、前記Reportを送信したONUに対し、直ちに受領信号を送信するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0030】
このように、OLTは、帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、Reportを送信したONUに対し、直ちに受領信号を送信するので、ONUは、帯域要求専用時間帯で送信されたReportがOLTで受信できたことを即座に把握することが可能となる。その結果、OLTがReportを受信できなかった場合でも、短時間で再送を実行することが可能となる。
【0031】
(11)また、本発明の伝送方法は、前記帯域要求専用時間帯に複数のONUが送信したReportが同じタイミングで前記OLTに到着した場合、前記OLTにおいて、衝突が発生したことを示す衝突通知を前記各ONUに対して送信するステップと、前記帯域要求専用時間帯にReportを送信した各ONUにおいて、前記衝突通知を受信した場合、前記帯域要求専用時間帯が終了するまではReportを前記OLTに対してランダムに再送するステップと、を更に含むことを特徴とする。
【0032】
このように、帯域要求専用時間帯に複数のONUが送信したReportが同じタイミングでOLTに到着した場合、OLTは、衝突が発生したことを示す衝突通知を各ONUに対して送信するので、ONUは、OLTがReportを受信できなかったことを即座に把握することが可能となる。その結果、ONUは、帯域要求専用時間帯で送信されたReportがOLTで受信できなかった場合でも、短時間で再送を実行することが可能となる。また、ONUは、Gateに従って、通常時間帯にOLTにデータを送信するので、帯域要求専用時間帯でデータを送信することによる衝突の可能性を排除し、上り伝送の低遅延化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、PONシステムにおける帯域効率を維持しつつ、特定のONUから送信されるデータの低遅延化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本実施形態に係るPONシステムの概要を示す図である。
図2】TDM−PONシステムにおける上り伝送のシーケンスチャートである。
図3】実施例1のシーケンスチャートである。
図4】実施例1において、ROP(Reservation Only Period:帯域要求専用時間帯)時間帯に複数のONUから送信されたReportが衝突した場合のシーケンスチャートである。
図5】実施例2のシーケンスチャートである。
図6】実施例2において、ROP時間帯に複数のONUから送信されたReportが衝突した場合のシーケンスチャートである。
図7A】実施例3において、OLTが低遅延化のためのReportを受領する前のシーケンスチャートを示す図である。
図7B】実施例3のシーケンスチャートである。
図8】実施例4のシーケンスチャートである。
図9】ROP時間帯におけるReportの衝突を示す図である。
図10】実施例5のシーケンスチャートである。
図11】従来のPONシステムのシーケンスチャートである。
図12】特許文献1に開示されている光ネットワークシステムのシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明者らは、TDM−PONは、OLT−ONU間の帯域割当制御(DBA)において、上り方向に最大でミリ秒オーダの遅延が生じるため、厳しい低遅延が求められるシステムへの適用が困難となっている点に着目し、通常の通信時間帯の他に、いずれのONUであってもReportのみを送信できる時間帯である帯域要求専用時間帯を設定し、OLTが帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、ONUに対し、直ちに受領信号を送信することによって、ONUが通常時間帯にデータをOLTに送信することができることを見出し、本発明に至った。
【0036】
すなわち、本発明のPONシステムは、OLT(Optical Line Terminal)と複数のONU(Optical Network Unit)とが光分岐器を介して接続され、光ファイバ伝送を実現するPON(Passive Optical Network)システムであって、前記OLTは、いずれのONUであってもReportのみを送信できる時間帯である帯域要求専用時間帯を設定すると共に、すべてのONUに対し、前記帯域要求専用時間帯を設定したことを、専用Gateを用いて通知し、前記帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、前記Reportを送信したONUに対し、直ちに受領信号を送信すると共に、前記受信したReportに基づいて、DBA(Dynamic Bandwidth Allocation)に基づく帯域割当を行なって、帯域割当情報を、Gateを用いて前記ONUに通知し、前記ONUは、前記Gateに従って、通常時間帯に前記OLTにデータを送信することを特徴とする。
【0037】
これにより、本発明者らは、ONUが、帯域要求専用時間帯で送信されたReportがOLTで受信できたことを即座に把握することを可能とした。その結果、OLTがReportを受信できなかった場合でも、ONUが短時間で再送を実行することを可能とした。また、帯域要求専用時間帯でデータを送信することによる衝突の可能性を低くし、上り伝送の低遅延化を図ることを可能とした。以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0038】
本明細書において、「帯域要求専用時間帯(ROP :Reservation Only Period)」とは、任意のONUが帯域要求としてのReportをOLTに送信することができる時間帯のことである。以下、帯域要求専用時間帯を「ROP時間帯」と呼称する。また、「A−Gate」とは、「Allocated Gate」の略称であり、帯域要求専用時間帯を各ONUに通知するための信号である。
【0039】
図1は、本実施形態に係るPONシステムの概要を示す図である。このPONシステム1は、上位ネットワーク(NW)であるインターネット11に接続されるBBU13にOLT15が接続されている。OLT15には、光ファイバ17および光分岐器19を介して、複数のONU21−1〜21−4が接続されている。ONU21−1は、HGW(Home Gateway)23と接続され、UE25と通信を行なう。ONU21−2は、RRH27と接続され、ONU21−3は、BBU〜RRH29と接続され、それぞれ配下の端末装置と通信を行なう。また、ONU21−4は、UE31と接続され、通信を行なう。本実施形態に係るPONシステムは、低遅延を必要とするサービスについて適用可能であるためONU21−1〜21−4の配下には、どんな通信装置が接続されてもよい。
【0040】
図2は、TDM−PONシステムにおける上り伝送のシーケンスチャートである。UEからONUにフレーム(データ)が送信される(ステップS1)。次に、OLTからONUへGate(送信許可)が送信されると(ステップS2)、ONUは、OLTに対して、Report(バッファ量通知)を送信する(ステップS3)。次に、OLTは、ONUから受信したReportに基づいて、ONUに対して、Gate(送信タイミング通知)を送信する(ステップS4)。ONUは、ステップS4で受信したGateに基づいて、Report(バッファ量通知)(ステップS5)とUEから受信したフレーム(データ)をOLTに送信する(ステップS6)。本実施形態は、このような基本的なシーケンスチャートに新たな手順を追加するものである。
【実施例1】
【0041】
図3は、実施例1のシーケンスチャートである。図3において、任意のONU21がReport送信できる通信時間帯として、ROP時間帯を設ける。OLT15は、ROP時間帯を設けたことを、対象となるONU(すべてのONU)に「A−Gate」で通知する。ONU21は、ROP時間帯はReportを任意のタイミングで送信することができる。OLT15は、ROP時間帯にReportを受領した場合、直ちに「受領信号」をONU21に対して送信する。
【0042】
OLT15は、ROP時間帯に受領したReportについて、DBAを演算し、ONU21の送信帯域を割り当て、ONU21に対してGateで通知する。ONU21は、OLT15から受領したGateに従って、通常時間帯にDataを送信する。
【0043】
このように、OLT15がROP時間帯にReportを受信すると、直ちに「受領信号」をONU21に送信するので、ONU21は、ROP時間帯に送信したReportがOLT15に受信されたことを把握することができる。そして、ONU21は、通常時間帯に早期にデータを送信することが可能となる。なお、ROP時間帯に送信するReportフレームサイズは、必要最低限の最小フレームサイズとする。
【0044】
図4は、実施例1において、ROP時間帯に複数のONUから送信されたReportが衝突した場合のシーケンスチャートである。OLT15にはONU21AおよびONU21Bが接続されており、ONU21Aの配下にはUE33Aが接続され、ONU21Bの配下にはUE33Bが接続されている。OLT15は、ROP時間帯に複数のONU21AおよびONU21Bが送信したReportが同じタイミングでOLT15に届いた場合、衝突が発生したとして、OLT15は「受領信号」をONU21AおよびONU21Bに送信しない。ONU21AおよびONU21Bは、受領信号が一定時間来なかった場合に、ROP時間帯の間であれば、Reportを再送する。ここで、受領信号を待機するための一定時間は、ランダムに定められ、再衝突を避けることができる。
【0045】
このように、ROP時間帯にReportを送信したONU21AおよびONU21Bは、所定時間内にOLT15から受領信号を受信しなかった場合、ROP時間帯が終了するまではReportをOLT15に対してランダムに再送するので、ONU21AおよびONU21Bは、ROP時間帯で送信されたReportがOLT15で受信できなかった場合でも、短時間で再送を実行することが可能となる。
【実施例2】
【0046】
図5は、実施例2のシーケンスチャートである。図5において、任意のONU21がReport送信できる通信時間帯として、ROP時間帯を設ける。OLT15は、ROP時間帯を設けたことを、対象となるONU(すべてのONU)に「A−Gate」で通知する。ONU21は、ROP時間帯はReportを任意のタイミングで送信することができる。
【0047】
OLT15は、ROP時間帯に受領したReportについて、DBAを演算し、ONU21の送信帯域を割り当て、ONU21に対してGateで通知する。ONU21は、OLT15から受領したGateに従って、通常時間帯にDataを送信する。
【0048】
この構成により、ONU21は、通常時間帯に早期にデータを送信することが可能となる。なお、ROP時間帯に送信するReportフレームサイズは、必要最低限の最小フレームサイズとする。
【0049】
図6は、実施例2において、ROP時間帯に複数のONUから送信されたReportが衝突した場合のシーケンスチャートである。OLT15にはONU21AおよびONU21Bが接続されており、ONU21Aの配下にはUE33Aが接続され、ONU21Bの配下にはUE33Bが接続されている。OLT15は、ROP時間帯に複数のONU21AおよびONU21Bが送信したReportが同じタイミングでOLT15に届いた場合、衝突が発生したとして、OLT15は「衝突通知」をONU21AおよびONU21Bに送信する。
【0050】
ONU21AおよびONU21Bは、OLT15から衝突通知を受領した場合、ROP時間帯の間であれば、ランダムの時間だけ待機し、Reportを再送する。
【0051】
このように、ROP時間帯にReportを送信したONU21AおよびONU21Bは、衝突通知を受領したときは、ROP時間帯が終了するまではReportをOLT15に対してランダムの時間だけ待機した後に再送するので、ONU21AおよびONU21Bは、ROP時間帯で送信されたReportがOLT15で受信できなかった場合でも、短時間で再送を実行することが可能となる。
【実施例3】
【0052】
実施例3では、OLT15は、ROP時間帯にReportを受領した場合、即時に、または一定時間経過後にROP時間を終了させる。その他については、実施例1または実施例2と同様に構成することができる。すなわち、ROP時間帯にOLT15がReportを正しく受領したときは「受領信号」を送信する一方、ROP時間帯にOLT15がReportを正しく受領しなかったときは「受領信号」を送信しないようにしてもよい(実施例1)。また、ROP時間帯にOLT15がReportを正しく受領したときはなにも送信せず、ROP時間帯にOLT15がReportを正しく受領しなかったときは「衝突通知」を送信するようにしてもよい(実施例2)。なお、ここでは、実施例1を適用し、ROP時間帯にOLT15がReportを正しく受領したときは「受領信号」を送信する場合について説明する。
【0053】
図7Aは、実施例3において、OLTが低遅延化のためのReportを受領する前のシーケンスチャートを示す図であり、図7Bは、実施例3のシーケンスチャートを示す図である。図7Aにおいて、OLT15は、任意のONU21が送信できる通信時間帯であるROP時間帯を設ける。ROP時間帯情報は、OLT15から対象ONUに「A−Gate」を用いて通知される。図7Bに示すように、ONU21は、ROP時間帯においては、Reportを任意のタイミングで送信することができる。OLT15は、ROP時間帯にReportを受領した場合、すぐに受領信号を送出する。
【0054】
OLT15は、ROP時間帯にReportを受領した場合、即時に、または一定時間後に、終了通知としての「ROP時間帯終了通知」を対象ONU21に送信する。ROP時間帯終了通知は、「受領信号」と同じフレーム内に記載してもよい。OLT15は、ROP時間帯に受領したReportについて、DBAを演算し送信帯域を割り当て、ONU21にGateで通知する。ONU21は、Gateに従って、通常時間帯にDataを送信する。
【0055】
このように、OLT15は、ROP時間帯にいずれかのONU21からReportを受信した場合、即時にまたは一定時間経過後に、ROP時間帯が満了する前に終了する旨の終了通知(ROP時間帯終了通知)を、対象となるすべてのONUに通知し、受信したReportに基づいて、DBAに基づく帯域割当を行なって、帯域割当情報を、Gateを用いてONUに通知するので、Reportのみを送信可能なROP時間帯を短縮し、データを送信できる通常時間帯に早期に移行することができる。その結果、データの低遅延化を図ることが可能となる。
【実施例4】
【0056】
図8は、実施例4のシーケンスチャートである。実施例4では、一定周期内に、複数のROP時間帯を、複数(分割して)割り当てることが可能である。また、一つのROP時間帯に送信できるONUを、任意に制限できるものとする。制限方法としては、「ONUの数」、「ONU IDの奇数・偶数」、「OLT〜ONU間の伝送距離」などに基づいて、任意に設定することができる。図8では、ONU21AおよびONU21Bについては、「ROP1」のROP時間帯に割り当て、ONU21Cについては、「ROP2」のROP時間帯に割り当てている。なお、ONU21Dについては、ROP時間帯の割当てはないことを示している。
【0057】
このように、実施例4では、OLT15は、分割された複数のROP時間帯を設定すると共に、各ONUに対して、ROP1またはROP2のROP時間帯を割り当てて、割り当てたROP時間帯にそれぞれ対応する専用Gateを用いて、各ONUにROP時間帯を設定したことを通知するので、ROP時間帯におけるReportの衝突の可能性を低くすることが可能となる。その結果、データ伝送の低遅延化を図ることが可能となる。
【実施例5】
【0058】
実施例5では、ROP時間帯におけるReportの衝突を回避するための方法を示す。図9は、ROP時間帯におけるReportの衝突を示す図である。ONU21AとONU21Bからそれぞれ送信されたReportのフレームの一部の到着時間が、ROP時間帯で重なってしまっている。この場合、両方のReportは衝突のため、フレーム損失となってしまう。実施例5では、このような衝突を回避するため、ROP時間帯を複数のスロットで区切り、各ONUにスロットを割り当てる手法を採る。
【0059】
図10は、実施例5のシーケンスチャートである。ROP時間帯は、任意のONUが送信可能であるが、ROP時間帯に届くReportについて、到着時間をslot単位に分割する。これにより、一部のフレームが衝突するような事象を回避する。
【0060】
以上説明したように、本実施形態によれば、TDM−PONの上り伝送遅延を低遅延化し、低遅延SLA(Service Level Agreement:サービス品質保証)を持つトラヒックに対しても適用することができる。また、TDM−PONと他のシステムを連携することなく、TDM−PON単体で低遅延化を実現することができる。さらに、低遅延対象トラヒックを制限することで、低遅延が必要なもののみ優先させることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 PONシステム
11 インターネット
13 BBU
15 OLT
17 光ファイバ
19 光分岐器
21−1〜21−4 ONU
21A、21B、21C、21D ONU
23 HGW
25 UE
29(27) 基地局装置
31 UE
33 UE
33A、33B UE
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12