【発明が解決しようとする課題】
【0007】
今後想定されている基地局装置や、M2M(Machine-to-Machine)等のアプリケーションでは、アクセス網における伝送遅延を1ミリ秒以内に収めることが要求されている。しかしながら、上り伝送がTDMA(Time Division Multiple Access)ベースのPONシステムでは、OLTとONU間の動的帯域割当(DBA :Dynamic Bandwidth Allocation)の制御により、最大でポーリング周期相当の遅延が生じてしまうため、上記アプリケーションの適用が困難であった。
【0008】
図11は、従来のPONシステムのシーケンスチャートである。ここでは、ONU21がBBU(Base Band Unit)/RRH(Remote Radio Head)29からデータを受信してから、そのデータをOLT15に送信するまでのPON伝送遅延が示されている。
図11において、PONシステムにおけるポーリング周期は、通常、数ミリ秒程度である。このポーリング周期が短いと、制御フレームが通信帯域を圧迫してしまう。なお、
図11において、「Gate」とは、OLT15が、ONU21に対し、いつからいつまでデータを送ってよいかを指示するフレームである。ONU21から要求がなければ、Report分のみを指示する。「Report」とは、ONU21からOLT15へどれだけのデータを送りたいのかを帯域要求として送信するフレームである。すなわち、ONU21が配下のBBU/RRH29から取得するデータ量を通知する機能を有する。
【0009】
図12は、特許文献1に開示されている光ネットワークシステムのシーケンスチャートである。
図12において、「CAP」とは、ONU21がOLT15に対して自由に信号を送信できるように設定された時間帯であり、「CFP」とは、OLT15がONU21に対して、動的に帯域を割り当てる時間帯を示す。特許文献1に開示されている技術では、CAPの時間帯で、任意のONUがデータを送信することができるため、データが同じタイミングでOLTに到着すると、衝突が発生する。CFPの時間帯にデータを再送することにより遅延が生ずる場合がある。また、CAPの時間帯での衝突の影響を軽減するためにはCAPの時間帯を大きくしなければならず、他のONUにおける帯域効率が低下する恐れがある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、PONシステムにおける帯域効率を維持しつつ、特定のONUから送信されるデータの低遅延化を図ることができるPONシステムおよび伝送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明のPONシステムは、OLT(Optical Line Terminal)と複数のONU(Optical Network Unit)とが光分岐器を介して接続され、光ファイバ伝送を実現するPON(Passive Optical Network)システムであって、前記OLTは、いずれのONUであってもReportのみを送信できる時間帯である帯域要求専用時間帯を設定すると共に、すべてのONUに対し、前記帯域要求専用時間帯を設定したことを、専用Gateを用いて通知し、前記帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、前記Reportを送信したONUに対し、前記受信したReportに基づいて、DBA(Dynamic Bandwidth Allocation)に基づく帯域割当を行なって、帯域割当情報を、Gateを用いて前記ONUに通知し、前記ONUは、前記Gateに従って、通常時間帯に前記OLTにデータを送信することを特徴とする。
【0012】
このように、OLTは、いずれのONUであってもReportのみを送信できる時間帯である帯域要求専用時間帯を設定すると共に、すべてのONUに対し、帯域要求専用時間帯を設定したことを、専用Gateを用いて通知し、帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、Reportを送信したONUに対し、受信したReportに基づいて、DBAに基づく帯域割当を行なって、帯域割当情報を、Gateを用いてONUに通知し、ONUは、Gateに従って、通常時間帯にOLTにデータを送信するので、帯域要求専用時間帯でデータを送信することによる衝突の可能性を排除し、上り伝送の低遅延化を図ることが可能となる。
【0013】
(2)また、本発明のPONシステムにおいて、前記OLTは、前記帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、前記Reportを送信したONUに対し、直ちに受領信号を送信することを特徴とする。
【0014】
このように、OLTは、帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、Reportを送信したONUに対し、直ちに受領信号を送信するので、ONUは、帯域要求専用時間帯で送信されたReportがOLTで受信できたことを即座に把握することが可能となる。その結果、OLTがReportを受信できなかった場合でも、短時間で再送を実行することが可能となる。
【0015】
(3)また、本発明のPONシステムは、前記帯域要求専用時間帯に複数のONUが送信したReportが同じタイミングで前記OLTに到着した場合、前記OLTは、衝突が発生したとして前記受領信号を送信せず、前記帯域要求専用時間帯にReportを送信した各ONUは、所定時間内に前記OLTから受領信号を受信しなかった場合、前記帯域要求専用時間帯が終了するまではReportを前記OLTに対してランダムに再送することを特徴とする。
【0016】
このように、帯域要求専用時間帯に複数のONUが送信したReportが同じタイミングでOLTに到着した場合、OLTは、衝突が発生したとして受領信号を送信せず、帯域要求専用時間帯にReportを送信した各ONUは、所定時間内にOLTから受領信号を受信しなかった場合、帯域要求専用時間帯が終了するまではReportをOLTに対してランダムに再送するので、ONUは、帯域要求専用時間帯で送信されたReportがOLTで受信できなかった場合でも、短時間で再送を実行することが可能となる。
【0017】
(4)また、本発明のPONシステムは、前記帯域要求専用時間帯に複数のONUが送信したReportが同じタイミングで前記OLTに到着した場合、前記OLTは、衝突が発生したことを示す衝突通知を前記各ONUに対して送信し、前記帯域要求専用時間帯にReportを送信した各ONUは、前記衝突通知を受信した場合、前記帯域要求専用時間帯が終了するまではReportを前記OLTに対してランダムに再送することを特徴とする。
【0018】
このように、帯域要求専用時間帯に複数のONUが送信したReportが同じタイミングでOLTに到着した場合、OLTは、衝突が発生したことを示す衝突通知を各ONUに対して送信するので、ONUは、OLTがReportを受信できなかったことを即座に把握することが可能となる。その結果、ONUは、帯域要求専用時間帯で送信されたReportがOLTで受信できなかった場合でも、短時間で再送を実行することが可能となる。また、ONUは、Gateに従って、通常時間帯にOLTにデータを送信するので、帯域要求専用時間帯でデータを送信することによる衝突の可能性を排除し、上り伝送の低遅延化を図ることが可能となる。
【0019】
(5)また、本発明のPONシステムにおいて、前記OLTは、前記帯域要求専用時間帯にいずれか1台以上の前記ONUからReportを受信した場合、即時にまたは一定時間経過後に、前記帯域要求専用時間帯が満了する前に終了する旨の終了通知をすべてのONUに通知し、前記受信したReportに基づいて、DBA(Dynamic Bandwidth Allocation)に基づく帯域割当を行なって、帯域割当情報を、Gateを用いて前記ONUに通知し、前記ONUは、前記Gateに従って、通常時間帯に前記OLTにデータを送信することを特徴とする。
【0020】
このように、OLTは、帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、即時にまたは一定時間経過後に、帯域要求専用時間帯が満了する前に終了する旨の終了通知をすべてのONUに通知し、受信したReportに基づいて、DBAに基づく帯域割当を行なって、帯域割当情報を、Gateを用いてONUに通知するので、Reportのみを送信可能な帯域専用時間帯を短縮し、データを送信できる通常時間帯に早期に移行するため、データの低遅延化を図ることが可能となる。
【0021】
(6)また、本発明のPONシステムにおいて、前記OLTは、複数の前記帯域要求専用時間帯を設定すると共に、各ONUに対して、各帯域要求専用時間帯を割り当てて、割り当てた帯域要求専用時間帯にそれぞれ対応する専用Gateを用いて、各ONUに前記帯域要求専用時間帯を設定したことを通知し、前記ONUは、前記OLTから受信した専用Gateに基づいて、自装置に割り当てられた帯域要求専用時間帯でReportを送信し得ることを特徴とする。
【0022】
このように、OLTは、複数の帯域要求専用時間帯を設定すると共に、各ONUに対して、各帯域要求専用時間帯を割り当てて、割り当てた帯域要求専用時間帯にそれぞれ対応する専用Gateを用いて、各ONUに帯域要求専用時間帯を設定したことを通知するので、帯域要求専用時間帯におけるReportの衝突の可能性を低くすることが可能となる。その結果、データ伝送の低遅延化を図ることが可能となる。
【0023】
(7)また、PONシステムにおいて、前記OLTは、前記設定した帯域要求専用時間帯を複数のスロットに分割し、前記各ONUから送信されたReportを、各スロットでReport毎に受信することを特徴とする。
【0024】
このように、OLTは、設定した帯域要求専用時間帯を複数のスロットに分割し、各ONUから送信されたReportを、各スロットでReport毎に受信するので、帯域要求専用時間帯に複数のONUから送信されたReportフレームの一部が重なることによる衝突を回避することができる。その結果、データ伝送の低遅延化を図ることが可能となる。
【0025】
(8)また、本発明のPONシステムにおいて、前記各ONUが前記帯域要求専用時間帯に送信するReportのフレームサイズは、必要最低限のサイズであることを特徴とする。
【0026】
このように、各ONUが帯域要求専用時間帯に送信するReportのフレームサイズは、必要最低限のサイズであるので、帯域要求専用時間帯に複数のReportが衝突する可能性が低くなると共に、帯域要求専用時間帯にデータを送信する場合よりも帯域要求専用時間帯を短くすることができる。その結果、低遅延化を図ることが可能となる。
【0027】
(9)また、本発明の伝送方法は、OLT(Optical Line Terminal)と複数のONU(Optical Network Unit)とが光分岐器を介して接続され、光ファイバ伝送を実現するPON(Passive Optical Network)システムの伝送方法であって、前記OLTにおいて、いずれのONUであってもReportのみを送信できる時間帯である帯域要求専用時間帯を設定するステップと、すべてのONUに対し、前記帯域要求専用時間帯を設定したことを、専用Gateを用いて通知するステップと、前記帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、前記Reportを送信したONUに対し、前記受信したReportに基づいて、DBA(Dynamic Bandwidth Allocation)に基づく帯域割当を行なって、帯域割当情報を、Gateを用いて前記ONUに通知するステップと、前記ONUにおいて、前記Gateに従って、通常時間帯に前記OLTにデータを送信するステップと、を少なくとも含むことを特徴とする。
【0028】
このように、OLTは、いずれのONUであってもReportのみを送信できる時間帯である帯域要求専用時間帯を設定すると共に、すべてのONUに対し、帯域要求専用時間帯を設定したことを、専用Gateを用いて通知し、帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、Reportを送信したONUに対し、受信したReportに基づいて、DBAに基づく帯域割当を行なって、帯域割当情報を、Gateを用いてONUに通知し、ONUは、Gateに従って、通常時間帯にOLTにデータを送信するので、帯域要求専用時間帯でデータを送信することによる衝突の可能性を排除し、上り伝送の低遅延化を図ることが可能となる。
【0029】
(10)また、本発明の伝送方法は、前記OLTにおいて、前記帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、前記Reportを送信したONUに対し、直ちに受領信号を送信するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0030】
このように、OLTは、帯域要求専用時間帯にいずれかのONUからReportを受信した場合、Reportを送信したONUに対し、直ちに受領信号を送信するので、ONUは、帯域要求専用時間帯で送信されたReportがOLTで受信できたことを即座に把握することが可能となる。その結果、OLTがReportを受信できなかった場合でも、短時間で再送を実行することが可能となる。
【0031】
(11)また、本発明の伝送方法は、前記帯域要求専用時間帯に複数のONUが送信したReportが同じタイミングで前記OLTに到着した場合、前記OLTにおいて、衝突が発生したことを示す衝突通知を前記各ONUに対して送信するステップと、前記帯域要求専用時間帯にReportを送信した各ONUにおいて、前記衝突通知を受信した場合、前記帯域要求専用時間帯が終了するまではReportを前記OLTに対してランダムに再送するステップと、を更に含むことを特徴とする。
【0032】
このように、帯域要求専用時間帯に複数のONUが送信したReportが同じタイミングでOLTに到着した場合、OLTは、衝突が発生したことを示す衝突通知を各ONUに対して送信するので、ONUは、OLTがReportを受信できなかったことを即座に把握することが可能となる。その結果、ONUは、帯域要求専用時間帯で送信されたReportがOLTで受信できなかった場合でも、短時間で再送を実行することが可能となる。また、ONUは、Gateに従って、通常時間帯にOLTにデータを送信するので、帯域要求専用時間帯でデータを送信することによる衝突の可能性を排除し、上り伝送の低遅延化を図ることが可能となる。