特許第6603202号(P6603202)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603202
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】火花点火式多気筒エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02D 13/06 20060101AFI20191028BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20191028BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20191028BHJP
   F02D 41/34 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   F02D13/06 B
   F02D45/00 345Z
   F02D43/00 301A
   F02D43/00 301J
   F02D45/00 301D
   F02D41/34 L
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-250462(P2016-250462)
(22)【出願日】2016年12月26日
(65)【公開番号】特開2018-105170(P2018-105170A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2018年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】大野 雅治
(72)【発明者】
【氏名】中島 英伸
(72)【発明者】
【氏名】井上 直樹
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 達介
(72)【発明者】
【氏名】木本 清治
(72)【発明者】
【氏名】高崎 峰夫
【審査官】 佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−093732(JP,A)
【文献】 特開2008−223525(JP,A)
【文献】 米国特許第05555871(US,A)
【文献】 特開昭57−193737(JP,A)
【文献】 特開2012−246764(JP,A)
【文献】 特開2011−132888(JP,A)
【文献】 特開平03−164548(JP,A)
【文献】 特開2002−364505(JP,A)
【文献】 特開昭60−222543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00−45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットルバルブ(1)と、スロットルバルブ(1)を制御するメカニカルガバナ(2)と、吸気量検出装置(3)と、燃料インジェクタ(I1)(I2)と、吸気量検出装置(3)で検出された吸気量に応じて燃料インジェクタ(I1)(I2)からの燃料噴射量を制御する電子制御装置(4)を備えている火花点火式多気筒エンジンにおいて、
エンジン異常を検出する異常検出装置(5)を備え、異常検出装置(5)による所定の異常検出に基づいて、電子制御装置(4)で、運転制御モードがリンプホーム運転モード(S3)とされ、リンプホーム運転モード(S3)では、特定の気筒(C1)の燃焼のみが実施され、他の気筒(C2)への燃料インジェクタ(I2)による燃料噴射が停止されて、その気筒(C2)の燃焼が停止される減筒運転がなされるように構成され、
空冷の2気筒エンジンに適用され、電子制御装置(4)の制御により、減筒運転がなされるリンプホーム運転モード(S3)では、通風上流側にある特定の一方の気筒(C1)の燃焼のみが実施され、通風下流側にある他方の気筒(C2)の燃焼が停止されるように構成されている、ことを特徴とする火花点火式多気筒エンジン。
【請求項2】
請求項1に記載された火花点火式多気筒エンジンにおいて、
異常検出装置(5)は、機関壁温度を検出する機関温度検出センサ(5a)、エンジン冷却風温度を検出する冷却風温度検出センサ(5b)、エンジンオイルの温度を検出する油温度検出センサ(5c)、吸気温度を検出する吸気温度検出センサ(5d)、エンジンオイルの循環油圧を検出する油圧検出センサ(5e)の1種以上のセンサを備え、
上記いずれかのセンサの検出に基づいて、電子制御装置(4)で、前記所定の異常検出がなされるように構成されている、ことを特徴とする特徴とする火花点火式多気筒エンジン。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された火花点火式多気筒エンジンにおいて、
電子制御装置(4)の制御により、減筒運転がなされるリンプホーム運転モード(S3)では、燃焼が実施される気筒(C1)で、等間隔のクランク角度毎に点火がなされるように構成されている、ことを特徴とする火花点火式多気筒エンジン。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された火花点火式多気筒エンジンにおいて、
電子制御装置(4)の制御により、減筒運転がなされるリンプホーム運転モード(S3)では、燃焼が停止される気筒(C2)への燃料噴射が停止されることに加え、その気筒(C2)での点火プラグ(P2)からの火花の発生も停止されるように構成されている、ことを特徴とする火花点火式多気筒エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火花点火式多気筒エンジンに関し、詳しくは、エンジン異常時にエンストや回転異常が起こりにくいリンプホーム運転を実現することができる火花点火式多気筒エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スロットルバルブと、スロットルバルブを制御するメカニカルガバナと、吸気量検出装置と、燃料インジェクタと、吸気量検出装置で検出された吸気量に応じて燃料インジェクタからの燃料噴射量を制御する電子制御装置を備えている火花点火式多気筒エンジンがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種のエンジンによれば、メカニカルガバナによるスロットバルブの制御で、電子制御装置による電子制御の負担軽減を図ることができる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−223525号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
《問題点》 リンプホーム運転でエンストや回転異常が起こりやすい。
特許文献1には、リンプホーム運転に対する言及はないが、エンジン異常時のリンプホーム運転で、出力制限のため、燃料噴射量を減少させる電子制御を行った場合、メカニカル制御のスロットルバルブでは、燃料噴射量の減少に合わせて吸気量を減少させることができず、空燃比が適正範囲から外れ、エンストや回転異常が起こりやすい。
【0006】
本発明の課題は、エンジン異常時にエンストや回転異常が起こりにくいリンプホーム運転を実現することができる火花点火式多気筒エンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の発明特定事項は、次の通りである。
図1に例示するように、スロットルバルブ(1)と、スロットルバルブ(1)を制御するメカニカルガバナ(2)と、吸気量検出装置(3)と、燃料インジェクタ(I1)(I2)と、吸気量検出装置(3)で検出された吸気量に応じて燃料インジェクタ(I1)(I2)からの燃料噴射量を制御する電子制御装置(4)を備えている火花点火式多気筒エンジンにおいて、
図1に例示するように、エンジン異常を検出する異常検出装置(5)を備え、異常検出装置(5)による所定の異常検出に基づいて、電子制御装置(4)で、図5に例示するように、運転制御モードがリンプホーム運転モード(S3)に設定され、リンプホーム運転モード(S3)では、図1図3に例示する特定の気筒(C1)の燃焼のみが実施され、他の気筒(C2)への燃料インジェクタ(I2)による燃料噴射が停止されて、その気筒(C2)の燃焼が停止される減筒運転がなされるように構成され、
図1図4に例示するように、空冷の2気筒エンジンに適用され、電子制御装置(4)の制御により、減筒運転がなされるリンプホーム運転モード(S3)では、通風上流側にある特定の一方の気筒(C1)の燃焼のみが実施され、通風下流側にある他方の気筒(C2)の燃焼が停止されるように構成されている、ことを特徴とする火花点火式多気筒エンジン。
【発明の効果】
【0008】
本願発明は、次の効果を奏する。
《効果》 エンジン異常時にエンストや回転異常が起こりにくいリンプホーム運転を実現することができる。
本願発明では、図5に例示するように、所定の異常検出に基づいて、運転モードがリンプホーム運転モード(S3)とされ、リンプホーム運転モード(S3)では、図1図3に例示する特定の気筒(C1)の燃焼のみが実施され、他の気筒(C2)への燃料インジェクタ(I2)による燃料噴射が停止されて、その気筒(C2)の燃焼が停止される減筒運転で出力制限がなされるため、空燃比が適正な範囲から外れる不具合がなく、エンストや回転異常が起こりにくいリンプホーム運転を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るエンジンの縦断正面図である。
図2図1のエンジンの縦断側面図で、燃料噴射装置を省略した図である。
図3図1のエンジンの平面図で、メカニカルガバナと燃料噴射装置と上カバーを省略した図である。
図4図1のエンジンの正面図である。
図5図1のエンジンの電子制御装置による制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1図5は本発明の実施形態に係る火花点火式多気筒エンジンを説明する図で、この実施形態では、この実施形態では、燃料噴射式で火花点火式の空冷V形2気筒エンジンについて説明する。
【0011】
このエンジンの概要は、次の通りである。
図2に示すように、クランク軸(10)の架設方向を前後方向、その一方を前、他方を後、図1に示すように、前後方向と直交する水平方向を左右方向、後方から見て、左手側を左、右手側を右とする。
図1に示すように、このエンジンは、クランク軸(10)の架設方向と平行な向きに見て、クランクケース(11)の上部左右位置からそれぞれ左右斜め上に左右の気筒(C1)(C2)を突出させたシリンダブロック(12)と、左右の気筒(C1)(C2)の突出端にそれぞれ取り付けられた左右のシリンダヘッド(13)(13)と、左右のシリンダヘッド(13)(13)の上部にそれぞれ取り付けられた左右のシリンダヘッドカバー(14)(14)と、図2に示すシリンダブロック(12)の前方に配置されたエンジン冷却ファン(15)と、図1図4に示すエンジン冷却ファン(15)を覆うファンカバー(16)と、図1図3に示す吸気装置(17)と、図1に示すメカニカルガバナ(2)と、燃料噴射装置(18)と、吸気装置(17)の前部及び燃料噴射装置(18)の前部を上方から覆う図1図4に示す上カバー(19)を備えている。エンジン冷却ファン(15)で起こされたエンジン冷却風は、左右の気筒(C1)(C2)の間と、左右の気筒(C1)(C2)の横外側を通過して、各気筒(C1)(C2)を空冷する。
【0012】
図1図3に示すように、吸気装置(17)は、スロットルボディ(20)と、スロットルボディ(20)に吸気を導入する吸気導入パイプ(21)と、スロットルボディ(20)から左右の気筒(C1)(C2)に吸気を分配する吸気マニホルド(22)を備えている。
メカニカルガバナ(2)は、エンジン回転数と負荷に応じ、ガバナウェイト(図示せず)のガバナ力とガバナスプリング(図示せず)のバネ力との不釣合い力で揺動するガバナレバー(図示せず)のメカニカル制御で、図1に示すスロットルボディ(20)のスロットルバルブ(1)のバルブ開度を調節する。
【0013】
図1に示すように、燃料噴射装置(18)は、吸気量検出装置(3)と、燃料供給ポンプ(23)と、燃料供給ポンプ(23)からの燃料を分配するデリバリパイプ(24)と、デリバリパイプ(24)で分配された燃料を左右の気筒(C1)(C2)にそれぞれ噴射する左右の燃料インジェクタ(I1)(I2)と、吸気量検出装置(3)の検出に基づく吸入空気量に対応させて左右の燃料インジェクタ(I1)(I2)から噴射する燃料噴射量を調量制御する電子制御装置(4)を備えている。
電子制御装置(4)は、エンジンECUである。エンジンECUはエンジン電子制御ユニットの略称で、マイコンである。吸気量検出装置(3)は、エアフローセンサの検出値を電子制御装置(4)で演算して、吸気量を検出するものである。吸気量検出装置(3)は、吸気圧センサ(図示せず)とエンジン回転数検出センサ(26)の検出値を電子制御装置(4)で演算して、吸気量を検出するものであってもよい。
【0014】
図1に示すように、電子制御装置(4)は、左右の気筒(C1)(C2)の点火プラグ(P1)(P2)に高圧電流を供給する左右の点火コイル(25)(25)も制御し、エンジン回転数や負荷に応じた点火タイミングを設定する。
左右の点火コイル(25)(25)は、デリバリパイプ(24)に取り付けられている。
【0015】
図1に示すように、このエンジンは、スロットルバルブ(1)と、スロットルバルブ(1)を制御するメカニカルガバナ(2)と、吸気量検出装置(3)と、燃料インジェクタ(I1)(I2)と、吸気量検出装置(3)で検出された吸気量に応じて燃料インジェクタ(I1)(I2)からの燃料噴射量を制御する電子制御装置(4)を備えている。
【0016】
図1に示すように、このエンジンは、エンジン異常を検出する異常検出装置(5)を備え、異常検出装置(5)による所定の異常検出に基づいて、電子制御装置(4)で、図5に示すように、運転制御モードがリンプホーム運転モード(S3)とされ、リンプホーム運転モード(S3)では、図1図3に示す特定の気筒(C1)の燃焼のみが実施され、他の気筒(C2)への燃料インジェクタ(I2)による燃料噴射が停止されて、その気筒(C2)の燃焼が停止される減筒運転がなされるように構成されている。
【0017】
図5に示すように、上記構成によれば、所定のエンジン異常検出に基づいて、運転モードがリンプホーム運転モード(S3)とされ、リンプホーム運転モード(S3)では、特定の気筒(C1)の燃焼のみが実施され、他の気筒(C2)への燃料インジェクタ(I2)による燃料噴射が停止されて、その気筒(C2)の燃焼が停止される減筒運転による出力制限がなされるため、空燃比が適正な範囲から外れる不具合がなく、エンストや回転異常が起こりにくいリンプホーム運転を実現することができる。
【0018】
この実施形態では、リンプホーム運転モード(S3)の減筒運転で燃焼が実施される特定の気筒(C1)は前側の第1気筒、燃焼が停止される他の気筒(C2)は後側の第2気筒、第1気筒(C1)の燃料インジェクタ(I1)は第1燃料インジェクタ、第2気筒(C2)の燃料インジェクタ(I2)は第2燃料インジェクタである。
【0019】
図1に示すように、このエンジンでは、異常検出装置(5)は、機関壁温度を検出する機関壁温度検出センサ(5a)、エンジン冷却風温度を検出する冷却風温度検出センサ(5b)、エンジンオイルの温度を検出する油温度検出センサ(5c)、吸気温度を検出する吸気温度検出センサ(5d)、エンジンオイルの循環油圧を検出する油圧検出センサ(5e)を備え、いずれかのセンサの検出に基づいて、電子制御装置(4)で、前記所定の異常検出がなされる。
機関壁温度検出センサ(5a)は、シリンダブロック(12)やシリンダヘッド(13)の壁の温度を検出する。
【0020】
上記構成により、エンジン機関温度の異常上昇や循環油圧の異常低下によるエンジン異常時にエンジン運転モードがリンプホーム運転モード(S3)とされ、出力制限により、オーバーヒートや摺動部の焼き付き等によるエンジンの致命的な損傷を抑制することができる。
【0021】
この実施形態では、エンジン異常検出条件は、図1に示す各温度センサ(5a)〜(5d)のいずれかの検出値が所定の基準値を超え、または、油圧検出センサ(5e)の検出値が所定の基準値値未満となった場合である。
図5に示すリンプホーム運転モード(S3)の設定は、図1に示す所定のセンサ(5a)〜(5e)の値がエンジン異常検出条件を満たし、かつ、エンジン異常検出条件を満たした値が、所定の値域に入るリンプホーム設定条件を満たした場合になされる。
エンジン異常検出条件を満たした値が、所定の値域よりも異常側に大きくずれている場合には、図5に示すエンジン停止処理(S6)がなされ、正常側にずれている場合には、警告処理(S7)がなされ、エンジン運転モードが通常運転モードとされ、全筒運転がなされる。
【0022】
上記設定により、エンジン異常時に適正なリンプホーム運転が実現され、図5に示すように、リンプホーム運転モード(S3)でもエンジンが致命的損傷を受けるおそれがある程の異常である場合には、エンジン停止処理(S6)がなされ、エンジン異常ではあるが、緊急にリンプホーム運転モードを設定する程ではない小さい異常の場合には、警告処理(S7)がなされ、エンジン運転モードが通常運転モードとされる。
【0023】
各種条件の具体例は、次の通りである。
温度がT1,T2,T3の順に高くなる場合に、エンジン異常検出の基準値をT1とし、リンプホーム設定の値域をT2〜T3の範囲とする。
この場合、図1に示すいずれかの温度検出センサ(5a)〜(5d)の検出温度Tが基準温度T1を超えたことに基づいて、エンジン異常検出条件が満たされ、前記検出温度Tが更にT2〜T3の範囲に入っている場合には、図5に示すリンプホーム運転モード(S3)の設定条件が満たされる。
前記検出温度TがT3を超えている場合には、エンジン停止処理条件が満たされ、図5に示すエンジン停止処理(S6)がなされ、T1〜T2の範囲に入っている場合には、警告処理条件が満たされ、警告処理(S7)がなされる。
【0024】
また、圧力がP3,P2,P1の順に低くなる場合に、エンジン異常検出の基準値をP3とし、リンプホーム設定の値域をP2〜P1の範囲とする。
この場合、図1に示す油圧検出センサ(5e)の検出圧力Pが基準温度P3未満となったことに基づいて、エンジン異常検出条件が満たされ、前記検出圧力Pが更にP2〜P1の範囲に入っている場合には、図5に示すリンプホーム運転モード(S3)の設定条件が満たされる。
前記検出圧力PがP1未満となっている場合には、エンジン停止処理条件が満たされ、図5に示すエンジン停止処理(S6)がなされ、P3〜P2の範囲に入っている場合には、警告処理条件が満たされ、警告処理(S7)がなされる。
【0025】
図5に示す警告処理(S7)の場合には、警告報知装置(図示せず)による報知がなされる。リンプホーム運転モード(S3)の設定、エンジン停止(S6)の処理の場合にも、エンジン停止報知装置(図示せず)や運転モード報知装置(図示せず)で、その旨の報知がなされる。これらの報知装置は、エンジン搭載機械のダッシュボードに設けたランプであり、ランプの点灯により、情報の報知を行う。これらの報知装置ダッシュボード等に設けた表示灯、LED、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、警報ブザー等を用いることができる。LEDは発光ダイオード、ELはエレクトロルミネッセンスの略称である。
【0026】
電子制御装置(4)の制御により、図5に示す減筒運転がなされるリンプホーム運転モード(S3)では、図1図3に示す燃焼が実施される気筒(C1)で、等間隔のクランク角度毎に点火がなされるように構成されている。このエンジンでは、クランク角度720°毎に点火がなされる。
このため、爆発間隔が等間隔になり、振動が少なくなる。
【0027】
このエンジンは、エンジン回転数を検出する回転数検出センサ(26)と、クランク角度を検出するクランク角度検出センサ(27)を備え、電子制御装置(4)は、回転数検出センサ(26)で検出したエンジン回転数と、吸気量検出装置(3)で検出した吸気量と、クランク角度検出センサ(27)で検出したクランク角度に基づいて、各気筒(C1)(C2)の燃料インジェクタ(I1)(I2)を所定のタイミングで所定時間開弁し、各気筒(C1)(C2)に所定の時期に所定量の燃料噴射を行うとともに、所定のタイミングで各気筒(C1)(C2)の点火プラグ(P1)(P2)に火花を発生させる。
【0028】
図1図4に示すように、このエンジンは、2気筒エンジンであり、電子制御装置(4)の制御により、図5に示す減筒運転がなされるリンプホーム運転モード(S3)では、図1図3に示す特定の一方の気筒(C1)の燃焼のみが実施され、他方の気筒(C2)の燃焼が停止されるように構成されている。
【0029】
図1図4に示すように、このエンジンは、空冷エンジンであり、電子制御装置(4)の制御により、図5に示す減筒運転がなされるリンプホーム運転モード(S3)では、図3に示す通風上流側の第1気筒(C1)の燃焼のみが実施され、通風下流側の第2気筒(C2)の燃焼が停止されるように構成されている。
このため、リンプホーム運転モード(S3)でのエンジン空冷効率が高い。
【0030】
図1に示す電子制御装置(4)の制御により、図5に示す減筒運転がなされるリンプホーム運転モード(S3)では、図1図3に示す燃焼が停止される気筒(C2)への燃料噴射が停止されることに加え、その気筒(C2)での点火プラグ(P2)からの火花の発生も停止される。
このため、無駄な火花の発生が停止され、点火プラグ(P2)の耐久性が高まる。
【0031】
この実施形態では、リンプホーム運転モード(S3)の減筒運転で燃焼が実施される第1気筒(C1)の点火プラグ(P1)は第1点火プラグ、燃焼が停止される第2気筒(C2)の点火プラグ(P2)は第2点火プラグである。
【0032】
電子制御装置(4)の制御により、図5に示す減筒運転がなされるリンプホーム運転モード(S3)では、図3に示す通風下流側の第2気筒(C2)の燃焼のみが実施され、通風上流側の第1気筒(C1)の燃焼が停止されるように構成してもよい。
【0033】
この実施形態での電子制御装置(4)による制御の流れは次の通りである。
図5に示すように、ステップ(S1)ではエンジンの異常検出条件が満たされたかされたか否かが判定される。判定が肯定された場合には、ステップ(S2)に移行する。
ステップ(S2)では、リンプホーム運転モードの設定条件が満たされたか否かが判定される。判定が肯定された場合には、ステップ(S3)に移行する。
ステップ(S3)ではエンジン運転モードがリンプホーム運転モードとされ、減筒運転がなされ、ステップ(S1)に戻る。
【0034】
ステップ(S1)での判定が否定された場合には、ステップ(S4)に移行する。
ステップ(S4)では、エンジン運転モードが通常運転モードとされ、全筒運転がなされ、ステップ(S1)に戻る。
ステップ(S2)の判定が否定された場合には、ステップ(S5)に移行する。
ステップ(S5)ではエンジン停止条件が満たされたか否かが判定され、判定が肯定された場合には、ステップ(S6)に移行する。
ステップ(S6)ではエンジン停止処理がなされ、制御は終了される。
ステップ(S5)での判定が否定された場合、すなわち警告処理条件が満たされた場合には、ステップ(S7)に移行する。
ステップ(S7)では警告処理がなされ、ステップ(S4)に移行する。
【符号の説明】
【0035】
(1)…スロットルバルブ、(2)…メカニカルガバナ、(3)…吸気量検出装置、(I1)…第1燃料インジェクタ、(I2)…第2燃料インジェクタ、(4)…電子制御装置、(5)…異常検出装置、(5a)…機関壁温度検出センサ、(5b)…冷却風温度検出センサ、(5c)…油温検出センサ、(5d)…吸気温度検出センサ、(5e)…油圧検出センサ、(C1)…第1気筒、(C2)…第2気筒、(S3)…リンプホーム運転モード、(P2)…第2点火プラグ。
図1
図2
図3
図4
図5