特許第6603226号(P6603226)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6603226睡眠時無呼吸を治療するための方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603226
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】睡眠時無呼吸を治療するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20191028BHJP
   A61N 1/04 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   A61N1/36
   A61N1/04
【請求項の数】35
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-544600(P2016-544600)
(86)(22)【出願日】2015年1月6日
(65)【公表番号】特表2017-500986(P2017-500986A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】US2015010367
(87)【国際公開番号】WO2015105811
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2018年1月5日
(31)【優先権主張番号】14/149,689
(32)【優先日】2014年1月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516197159
【氏名又は名称】インヴィクタ メディカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Invicta Medical, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ケント,スティーヴン トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ハーター,ローレンス ワイリー
(72)【発明者】
【氏名】ケント,ハロルド バイロン
(72)【発明者】
【氏名】プルドン,カレナ ヤディラ
【審査官】 寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−158607(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0173893(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0069626(US,A1)
【文献】 米国特許第05792067(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36
A61N 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の口腔に電気刺激を与える装置であって、
それぞれ自由端で終わる第1及び第2の横アームを有する本体を備える器具と、
前記第1の横アームの前記自由端の舌側に直接取り付けられる第1の電極、及び前記第2の横アームの前記自由端の舌側に直接取り付けられる第2の電極を含み、前記第1及び第2の電極が前記舌の側面で向き合うように前記患者の口底部に対して角度配向されて構成され、前記第1及び第2の電極の各々の少なくとも一部が、前記装置が前記口腔内に挿入される際に前記患者の臼歯位置の近傍に配置される、複数の電極と、
前記器具及び前記複数の電極に取り付けられた制御回路であって、前記器具が前記口腔内に挿入されると前記口腔内に位置し、少なくとも前記第1及び第2の電極を介して前記舌を横断して横方向に電流を誘導し、前記電気刺激を生じる、制御回路と、
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記複数の電極が、前記舌を横断して電圧差を与えることによって、前記電流を誘導することを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記電気刺激が、前記患者の口蓋舌筋を対象とすることを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の電極が、前記器具が前記口腔内に挿入される際に口蓋舌筋が前記舌に入る側面の点の近傍で前記患者の舌の両側に接触することを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記電極が、前記制御回路により生成される1つ以上の信号に応答することを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記器具に実装され、前記制御回路に電力を供給するための電源を更に備えたことを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記器具、前記電極、前記制御回路、及び前記電源が、前記患者の口腔内に完全に収まるように構成された単一の装置を構成することを特徴とする、請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記誘導された電流が、前記舌を横断して、1つ以上の実質的に横方向に流れる、1つ以上の可逆電流を含むことを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記可逆電流の少なくとも1つが、ゼロサム波形を含むことを特徴とする、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記可逆電流の少なくとも1つのパルス長が、前記舌に関連する抵抗−容量(RC)時定数モデルに従って構成されることを特徴とする、請求項8記載の装置。
【請求項11】
前記誘導された電流が、前記患者の舌下神経を対象とせずに、該患者の口蓋舌筋を短縮することを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項12】
前記誘導された電流が、前記患者の口蓋舌弓を、前記舌の付け根に向けて、下方向に引き寄せる大きさであることを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項13】
前記誘導された電流が、前記舌を前方向に動かすことなく、前記舌の体積を減じるよう構成されることを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項14】
前記電極の1つ以上が、前記患者の舌内又はそれに関連付けられる筋肉の電気的活動を検出する筋電図(EMG)センサを含むことを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項15】
患者の口腔内に少なくとも部分的に適合し、該患者の口腔に電気刺激を与える器具であって、
それぞれ自由端で終わる第1及び第2の横アームを有する本体と、
前記第1の横アームの前記自由端の舌側に直接取り付けられる第1の電極、及び前記第2の横アームの前記自由端の舌側に直接取り付けられる第2の電極を含み、前記第1及び第2の電極が、口蓋舌筋が前記舌に入る側面の点の近傍で前記舌の向き合う舌下側に接触するように前記患者の口底部に対して角度配向されて構成され、前記第1及び第2の電極の各々の少なくとも一部が、前記器具が前記口腔内に挿入される際に前記患者の臼歯位置の近傍に配置される、複数の電極と、
前記器具及び前記複数の電極に取り付けられた制御回路であって、前記器具が前記口腔内に挿入されると前記口腔内に位置し、少なくとも前記第1及び第2の電極を介して前記舌を横断して横方向に電流を誘導し、前記電気刺激を生じる、制御回路と、
を備えたことを特徴とする器具。
【請求項16】
前記第1及び第2の電極が、前記口腔内に挿入されたとき前記舌の側面で実質的に向き合うことを特徴とする、請求項15に記載の器具。
【請求項17】
前記電気刺激が、前記患者の口蓋舌筋を対象とすることを特徴とする、請求項15記載の器具。
【請求項18】
前記誘導された電流が、可逆電流を含むことを特徴とする、請求項15に記載の器具。
【請求項19】
前記可逆電流が、前記舌の体積を減じる大きさであることを特徴とする、請求項18記載の器具。
【請求項20】
前記電気刺激が、前記患者のオトガイ舌筋を対象としないことを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項21】
前記電気刺激が、前記患者の舌下神経を対象としないことを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項22】
前記装置が取り外し可能であることを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項23】
前記電気刺激が、前記患者のオトガイ舌筋を対象としないことを特徴とする、請求項15記載の器具。
【請求項24】
前記電気刺激が、前記患者の舌下神経を対象としないことを特徴とする、請求項15記載の器具。
【請求項25】
前記可逆電流が、ゼロサム波形を含むことを特徴とする、請求項18記載の器具。
【請求項26】
前記可逆電流のパルス長が、前記舌に関連する抵抗−容量(RC)時定数モデルに従って構成されることを特徴とする、請求項18記載の器具。
【請求項27】
前記器具が取り外し可能であることを特徴とする、請求項15記載の器具。
【請求項28】
前記電極の少なくとも1つがさらに、前記患者における呼吸障害を検出することを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項29】
前記電極の少なくとも1つが、前記患者の呼吸作用を感知することを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項30】
前記制御回路がさらに、
第1のモード中に、前記電流を誘導するよう構成される1つ以上の第1の信号を前記電極の少なくとも1つに与え、
第2のモード中に、前記患者の呼吸作用を示す第2の信号を前記電極の少なくとも1つから受け取ることを特徴とする、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記制御回路がさらに、前記第2の信号に応じて前記1つ以上の第1の信号を動的に調整するものであることを特徴とする、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記電極の少なくとも1つがさらに、前記患者における呼吸障害を検出するものであることを特徴とする、請求項15記載の器具。
【請求項33】
前記電極の少なくとも1つが、前記患者の呼吸作用を感知することを特徴とする、請求項15記載の器具。
【請求項34】
前記制御回路がさらに、
第1のモード中に、前記電流を誘導する1つ以上の第1の信号を前記電極の少なくとも1つに与え、
第2のモード中に、前記患者の呼吸作用を示す第2の信号を前記電極の少なくとも1つから受け取ることを特徴とする、請求項33に記載の器具。
【請求項35】
前記制御回路がさらに、前記第2の信号に応じて前記1つ以上の第1の信号を動的に調整することを特徴とする、請求項34に記載の器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、概して、睡眠時無呼吸に関し、具体的には、睡眠時無呼吸の1つ以上の根本的な原因を治療するための非侵襲的手法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、睡眠中に患者の上気道が、繰り返し閉塞される疾患である。このような繰り返される上気道の閉塞が、睡眠の断片化の原因になり、ひいては、睡眠不足、日中の疲労、及び倦怠感をもたらす可能性がある。更に深刻な場合には、OSAによって、患者が、脳卒中、心臓不整脈、高血圧、及び/又はその他の障害を引き起こす危険性が増す虞がある。
【0003】
OSAは、睡眠中に、上気道の軟組織が落ち込む傾向があり、それによって上気道が閉塞されることに特徴がある。より具体的には、OSAは、一般に、患者の軟口蓋の落ち込み及び/又は患者の舌の(例えば、咽頭の奥への)落ち込みによって生じ、ひいては正常な呼吸が妨げられる可能性があるものである。
【0004】
OSAには、例えば、外科手術、持続的気道陽圧(CPAP)装置、及び舌を動かす筋肉に対する電気刺激を含む、多くの利用可能な治療がある。外科技術には、気管開口手術、患者の舌及び/又は軟口蓋の一部を切除する手術、及び舌が咽頭の奥に落ち込むのを防止しようとする、その他の手術が含まれる。これ等の外科技術は非常に侵襲的である。CPAP装置は、患者の鼻及び口に正の空気圧を加えて、上気道の開存性を維持しようとするものである。しかし、これらの装置は不快であり、着用順守率が低い可能性がある。
【0005】
一部の電気刺激法は、睡眠中、舌を前方(例えば、前方向)に突出させて、舌が咽頭の奥に落ち込むのを防止しようとするものである。一例として、特許文献1は、患者のオトガイ舌筋を刺激して、舌を前方(例えば、咽頭の奥から離れる方向)に動かす神経の上又は近傍に、電極を埋め込む侵襲的な方法を開示している。別の例として、特許文献2は、口腔装置に実装された電極で、オトガイ舌筋を電気的に刺激して、呼吸における吸気の間、舌を前方に動かす非侵襲的な手法を開示している。更に、特許文献3は、舌下神経に電気刺激を与えてオトガイ舌筋を収縮させ、前述のように、睡眠中に舌を前方に動かすことによって舌が落ち込むことを防止することができる口腔装置を教示している。
【0006】
睡眠中、患者の舌を前方に動かすことは、患者を覚醒させる恐れがあり、望ましくない。また、舌下神経及び/又はオトガイ舌筋を電気的に刺激する既存の手法は、不快感及び/又は苦痛を与える恐れがあり、望ましくない。更に、舌下神経及び/又はオトガイ舌筋を電気的に刺激する侵襲的手法は、望ましくない手術が必要であり、また患者の組織に異物が取り込まれるため望ましない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,830,008号明細書(Meer)
【特許文献2】米国特許第7,711,438号明細書(Lattner)
【特許文献3】米国特許第8,359,108号明細書(McCreery)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、使用中、患者を妨害又は目覚めさせることがない、OSAの非侵襲的な治療の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この「課題を解決するための手段」は、以下の「発明を実施するための形態」において更に説明する、選択された概念を簡略化した形態で紹介するためのものである。この「課題を解決するための手段」は、特許請求した主題の主要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、又特許請求した主題の範囲を限定することを意図したものでもない。
【0010】
OSA等の呼吸障害の発生を低減すると共に/又は重度を軽減するための方法及び装置がここに開示される。本実施の形態によれば、睡眠中、患者を妨害する(例えば、覚醒させる)ことなく、患者の口腔(口)の横方向及び/又は舌下部分に電気刺激を与えて、患者の舌及び/又は軟口蓋の落ち込みを防止することができる、非侵襲的且つ取り外し可能な口腔器具が開示される。少なくとも一部の実施の形態において、口腔器具によって誘導された電流により、口蓋舌筋が硬化及び短縮するように、口蓋舌筋を刺激することができ、それによって軟口蓋の落ち込み及び/又は患者の喉の奥に対するバタつきが防止されるように、患者の舌の付け根に向けて、患者の軟口蓋及び/又は口蓋弓を下方に引き寄せることができる。口蓋舌筋の硬化及び/又は短縮によって、後方向に(例えば、患者の咽頭に向けて)舌が落ち込むのが防止されるように、患者の舌を収縮及び/又は硬化させることもできる。更に、本明細書に開示の手法を用いて口蓋舌筋を刺激することによって、舌Tの上面を下げることができ、それによって、患者の上気道の閉塞が防止されるように、舌が下方に(例えば、「潜める」ように)締め付けられる。患者の軟口蓋及び舌の落ち込みを同時に防止することにより、非侵襲的に、患者の上気道の開存性を維持することができる。一部の実施の形態では、患者の舌を前方向に動かすことなく、器具によって患者の口蓋舌筋を刺激することができる。少なくとも1つの実施の形態では、患者の口蓋舌筋を刺激することによって、患者の舌の後方部分を隆起させることもでき、それによって、舌が患者の咽頭の奥に落ち込むのを更に防止することができる。
【0011】
本発明の実施の形態を例として示すが、全体を通して、対応する部品には同じ参照番号を付した、添付図面の図に限定されることを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】患者の上気道を示す側断面図。
図1B】患者の口腔の正平面図。
図1C】患者の舌の立断面図。
図1D】患者の舌の側断面図。
図2A】一部の実施の形態による、患者の歯の上部に配置された口腔器具の上平面図。
図2B図2Aの口腔器具の立面斜視図。
図2C】他の実施の形態による、患者の歯の上部に配置された口腔器具の上平面図。
図2D図2Cの口腔器具の立面斜視図。
図3A】呼吸障害時における患者の上気道を示す側断面図。
図3B】本発明の実施の形態に従って提供された電気刺激に応答した、患者の上気道を示す側断面図。
図4図2A〜2Bに示す口腔器具の電気部品のブロック図。
図5】患者の舌の電気モデルを示す回路図。
図6】一部の実施の形態による例示的な動作を示す、例示的なフローチャート。
図7A】他の実施の形態による口腔器具の立面斜視図。
図7B】患者の歯の上部に配置された図7Aの口腔器具の立面斜視図。
図7C】患者の歯の上部に配置された図7Aの口腔器具の背平面図。
図7D】患者の歯の上部に配置された図7Aの口腔器具の正平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)及び/又はいびき等の睡眠障害を治療するための、非侵襲的な方法及び装置が本明細書に開示されている。以下の説明において、本開示の十分な理解を得るために、多くの具体的詳細が記述されている。また、以下の説明において、本発明の実施の形態の十分な理解を得るために、特定の用語が説明のために記述されている。しかし、これ等の具体的詳細を必要とせずに、本発明の実施の形態を実施できることは当業者にとって明らかであろう。別の例において、本開示が不明瞭にならないようにするため、周知の回路及び装置はブロック図の形態で示してある。本明細書において、「結合」という用語は直接接続されている、又は1つ以上の介在要素、回路、又は生理的な物質を介して接続されていることを意味する。本明細書に記載の様々なバスを介して提供される信号は、すべて他の信号と時分割多重することができ、1つ以上の共通バスを介して提供される。更に、回路素子間又はソフトウェアブロック間の相互接続は、バス又は単一の信号線として示すことができる。バスの各々は、代替として、単一の信号線であってよく、単一の信号線の各々は、代替として、バスであってよく、単一の線又はバスは、構成要素間の通信のための無数の物理的又は論理的メカニズムの、任意の1つ以上を表すことができる。更に、以下に説明する各種信号に割り当てられた、論理レベル及びタイミングは任意及び/又は概算であるため、所望に応じて改変することができる(例えば、極性の反転、タイミングの修正等)。
【0014】
本明細書において、「実質的に横方向」という用語は、方向の横成分が、方向の前後成分より大きい、患者の口腔を横断する方向を意味する(例えば、実質的に横方向とは、添付図面の図に関して以下に規定するように、横方向から約45度未満の任意の方向を指すことができる)。更に、本明細書において、「可逆電流」という用語は、制御可能な2つの電位間において、その時々に極性を変更又は反転する電流を意味する。
【0015】
本実施の形態をより完全に理解するために、まず、(例えば、患者の鼻腔、口腔、及び咽頭を含む)患者の上気道の解剖学的要素を示す、図1A〜1Dに示す患者の口腔のイラスト100を参照して、OSAの動力学について説明する。まず、図1A〜1Bを参照して、硬口蓋HPが舌Tの上方に位置し、口腔OC(例えば、口)の屋根を形成している。硬口蓋HPは骨支持体BSを含んでいるため、一般に、呼吸時に変形しない。軟口蓋SPは、膜、繊維状物質、脂肪組織、筋肉組織等の軟質材料から成り、硬口蓋HPから咽頭PHRの後方に(例えば、後方向)に延びている。より具体的には、軟口蓋SPの前端部1が硬口蓋HPの後端部に固定され、軟口蓋SPの後端部2がどこにも固定されていない。軟口蓋SPは骨や硬い軟骨を含んでいないため、柔軟であり、(例えば、特に睡眠中に)咽頭PHRの奥に落ち込む、及び/又は前後にバタつく可能性がある。
【0016】
咽頭PHRは、口腔OC及び鼻腔NCから気管TRに空気を送るもので、鼻腔の下方(下)、口腔OCの後方(背後)、かつ食道ESの上方(上)に位置する喉の一部である。咽頭PHRは、両側を舌Tの付け根に向けて下方に延びる、口蓋舌弓PGAによって口腔OCから分離されている。
【0017】
簡略化のために図示省略しているが、咽頭PHRは鼻咽頭、中咽頭、及び咽喉頭を含んでいる。鼻咽頭は軟口蓋SPの上面と喉の壁(即ち、口腔OCの上方)との間に位置している。中咽頭は口腔OC背後に位置し、口蓋垂Uから舌骨HBの高さに延びている。中咽頭は前方に向けて口腔OCに開放している。中咽頭の横壁は口蓋扁桃から成り、口蓋舌弓PGAと口蓋咽頭弓との間に位置している。中咽頭の前壁は舌Tの付け根及び喉頭蓋谷から成っている。中咽頭の上壁は、軟口蓋SPの下面及び口蓋垂Uから成っている。食物と空気の両方が咽頭PHRを通過するため、食物が飲み込まれたとき、喉頭蓋EPと呼ばれる結合組織の蓋が声門(簡略化のために図示せず)を覆って誤嚥を防止する。咽喉頭は食道ESにつながる喉の一部であり、喉頭蓋EPの下方に位置している。
【0018】
図1C〜1Dも参照して、舌Tは、固有筋又は外因性筋のいずれかに分類できる、複数の筋肉を有している。固有筋は完全に舌T内に存在し、(例えば、話したり飲み込んだりするために)舌Tの形状を変化させる役割を果たすものであって、上縦舌筋SLM、下縦舌筋ILM、縦筋VM、及び横筋TMを含んでいる。上縦舌筋SLMは、舌Tの上面SSに沿って粘膜の下を延び、舌Tの先端を持ち上げたり、後退させたり、そらせたりすることに使用することができる。下縦舌筋ILMは舌Tの両側に並び、茎突舌筋SGMに接続されている。縦筋VMは舌Tの中心線に沿って存在し、上縦舌筋と下縦舌筋とを接続している。横筋TMは中心で舌を分割し、舌Tの側面に沿って延びる粘膜に接続されている。
【0019】
舌Tを別の構造体に接続し、舌を再配置(例えば、移動)させる役割を果たす、外因性筋は、オトガイ舌筋GGM、舌骨舌筋HGM、茎突舌筋SGM、及び口蓋舌筋PGMを含んでいる。オトガイ舌筋GGMを用いて、舌Tを突出させたり、舌Tの中央部を押下したりすることができる。舌骨舌筋HGMを用いて、舌Tを押下することができる。茎突舌筋SGMを用いて、舌Tを隆起させたり、後退させたりすることができる。口蓋舌筋PGMを用いて、軟口蓋SPを押下すると共に/又は舌Tの奥(後方部分)を隆起させることができる。図1A〜1Bも参照して、口蓋舌筋PGMは、舌Tを口蓋舌弓PGAの両側に接続し、舌Tの付け根の側面後方領域101に挿入している。
【0020】
口蓋舌筋PGMを除き、舌Tのすべての筋肉は、舌下神経(簡略化のために図示せず)によって神経支配され、口蓋舌筋PGMは、迷走神経の咽頭枝(簡略化のために図示せず)によって神経支配されている。
【0021】
目が覚めている間は、上気道の筋肉(及び舌下神経)が活動的且つ刺激を受けて、軟口蓋SPの落ち込みを防止及び/又は舌Tの咽頭PHRの奥への逸脱を防止することによって、上気道の開存性を維持することができる。しかし、睡眠中は、軟口蓋SPの比較的弛緩した状態により、軟口蓋SPが落ち込んで正常な呼吸を妨げる可能性がある一方、舌Tの比較的弛緩した状態により、舌Tが後方向(例えば、咽頭PHRの奥)に動いて、正常な呼吸を妨げる可能性がある。
【0022】
従って、従来のOSAの電気刺激治療は、一般に、無呼吸時に舌Tが後方向に落ち込まないように、舌Tを前方向に前進させることを含んでいる。より具体的には、一部の従来の技法(例えば、米国特許第5,190,053号明細書及び第6,212,435号明細書に開示される)では、無呼吸症状の発現時、オトガイ舌筋を電気的に刺激して、舌Tを前方向に前進させる一方、(例えば、米国特許第8,359,108号明細書に開示される)別の従来の技法では、舌下神経を電気的に刺激することにより、オトガイ舌筋を神経支配して、舌を前方向に前進させている。
【0023】
残念ながら、舌が咽頭PHRの奥に落ち込むのを防止するために、舌Tを繰り返し前方(例えば、前方向)に動かすことは、不必要に患者を覚醒させ、OSAの治療目的そのものを無にすると共に、歯で舌を擦り減らす可能性がある。事実、比較的大きなオトガイ舌筋を電気的に刺激することは、不快又は苦痛の原因となり得る。更に、舌下神経は、口蓋舌筋PGMを除き、舌のすべての筋肉を神経支配しているため、舌下神経を電気的に刺激すると、オトガイ舌筋GGMだけでなく、上縦舌筋SLM、下縦舌筋ILM、縦筋VM、横筋TM、舌骨舌筋HGM、及び/又は茎突舌筋SGMも刺激する。無呼吸症状の発現時、舌を前方に動かそうとして、舌の多くの筋肉を同時に刺激すると、患者の舌の筋肉に刺激を与え過ぎる可能性があるだけでなく、舌Tが不規則に振る舞う(突出と後退を繰り返す)原因にもなり得る。例えば、オトガイ舌筋GGM及び茎突舌筋SGMを同時に刺激すると、各々の刺激により、舌Tが突出及び後退を繰り返す原因になる可能性があり、これにより患者の睡眠パターンを乱したり、時には患者を覚醒させたりする虞がある。
【0024】
出願人は、電気刺激の対象を(オトガイ舌筋GGMや舌下神経ではなく)口蓋舌筋PGMとすることで、より効果的にOSAを治療することができることを発見した。より具体的には、出願人は、患者の横又は舌下組織の選択した部分の両端に1つ以上の電圧差を与えると、舌を横断して電流が誘導され、口蓋舌筋PGMが短縮する(例えば、長さを短くする)ように、口蓋舌筋PGMを電気的に刺激することができることを発見した。少なくとも一部の実施の形態では、誘導電流は患者の舌の付け根部分(例えば、口蓋舌筋が舌Tに入る側面の点の近傍)を横断して、横方向に流れることができる。本明細書に記載の技法を用いて、口蓋舌筋を短縮すると、(1)舌Tを硬化させ体積を減じることができ、また(2)口蓋舌弓PGAを舌Tの付け根に向けて(例えば、下方向に)引き寄せることができる。
【0025】
以下に、更に詳細に説明するように、本明細書に記載の技法を用いて、舌Tの体積を減じることにより、舌Tが咽頭PHRの奥に逸脱するのが防止され、本明細書に記載の技法を用いて、口蓋舌弓PGAを引き下げることにより、軟口蓋SPが咽頭PHRの奥に落ち込むのが防止される。更に、本明細書に記載の技法を用いて、口蓋舌筋PGMを刺激することにより、舌Tの上面SSを下げることもでき、それによって、患者の上気道の閉塞が更に防止されるように、舌が下方に(例えば、「潜める」ように)締め付けられる。
【0026】
同等に重要と思われるのは、本発明の実施の形態は、舌下神経及びオトガイ舌筋GGMのいずれも電気刺激の対象としていないため、電気刺激が与えられているとき、舌Tが前方向に前進することがないことであり、これにより患者を不必要に覚醒させる可能性を低下させることができる。事実、少なくとも一部の実施の形態では、患者の舌を実質的に静止させた状態で、患者の舌下組織を横断して電圧差を与えて、患者の口蓋舌筋PGMを短縮することができる。このように、本発明の実施の形態は、微妙ではあるが癒す力がある方法で、患者の上気道の開存性を維持することができる。本明細書に記載の手法を用いた口蓋舌筋PGMに対する電気刺激は、オトガイ舌筋GGMを刺激することを意図するものではないが、オトガイ舌筋GGMに対する不用意な刺激は比較的小さく、最大でも舌Tを実質的に静止位置に維持できる程度である。
【0027】
図2A〜2Bは、少なくとも一部の実施の形態に従って、口蓋舌筋PGMに対する電気刺激を利用して、舌T及び軟口蓋SPの咽頭PHRの奥への落ち込みを防止することによって、OSAの治療に用いることができる、取り外し可能な口腔器具200を示す図である。図2A〜2Bに示す器具200は、概して患者の口腔OC内に収まることができる、単一且つ取り外し可能な装置が形成されるように(図1A〜1Bも参照)、複数の電極210(1)〜210(2)、制御回路220、及び電源230が実装された(又は取り付けられた)器具本体205を有している。このような実施の形態では、患者の身体外部に構成部品がないため、器具200は患者の口又は身体から突出する線又はその他のコネクタを伴うことがない。一部の実施の形態では、口腔器具200は、図2Aに示すように、患者の下側の歯の上部に嵌着して、患者の口腔OCの舌下部分内に収まるように配置することができる。他の実施の形態では、器具200は、別の適切な構成又は構造を成すことができ、電極210(1)〜210(2)は、別の適切な位置に設けることができる。一部の実施の形態では、唇又は口から僅かに突出する口腔器具のマイナーな部分が存在する場合がある。
【0028】
図2A〜2Bには、2つの電極210(1)〜210(2)のみが示してあるが、他の実施の形態においては、器具200はこれより多い又は少ない電極を含むことができることが理解されるべきである。例えば、他の実施の形態において、器具200は、患者の舌下組織に対して対向する(例えば、「X」)パターンに配置された、4つ又は別の数の電極210を有することができ、患者の舌下組織を横断して2つ以上の電流を交互に誘導するように、電極対を選択的に有効又は無効にすることができる。このような他の実施の形態では、このような電極の各々を、他の電極とは独立してオン及び/又はオフして、例えば、患者の特定の瞬間における、最適な電気刺激に関連付ける1つの(又はそれ以上の)電極対を決定することができる。決定した電極対は(1)電気刺激と即時呼吸応答とを直接関連付けるか、又は(2)口腔器具200を用いて、インピーダンスが最も低い電極の「対又は複数の対」を「探して」間接的に関連付けることにより、動的に選択することができる。決定した電極は「X」パターンの末端にあってもなくてもよく、互いに対向していてよい。
【0029】
適切な任意の材料を用いて形成することができ、任意の適切な大きさ及び/又は形状を有することができる、第1の電極210(1)及び第2の電極210(2)は、ワイヤ221によって制御回路220に接続されている。制御回路220及び電極210(1)〜210(2)は、ワイヤ221を介して、電源230に電気的に結合されている。ワイヤ221は器具本体205内部又は外表面のいずれかに配置することができるため、患者の舌又は口腔組織に突出又は接触することはない。電源230は、幾つかの位置のいずれかに実装することができ、制御回路220及び/又は電極210(1)〜210(2)に電力を供給する任意の適切な電源(例えば、バッテリー)であってよい。双方向ゲート技術を用いて、例えば、ワイヤ221によって、電極210(1)〜210(2)に対する電力供給と、電極240(1)〜240(2)と制御回路220との間の電気信号(センサ信号)の交換とが交互に行えるように、ワイヤ221の電圧及び/又は電流を制御することができる。
【0030】
図2A〜2Bの例示的な実施の形態では、第1の電極210(1)は、センサ240(1)を含むか又はセンサ240(1)の機能も果たすことができ、第2の電極210(2)は、センサ240(2)を含むか又はセンサ240(2)の機能も果たすことができ、これ等のセンサは呼吸又はその他関心のある作用を感知するものである。換言すれば、一部の実施の形態では、電極210(1)〜210(2)の一方又は両方が、呼吸センサ等のセンサとして機能することもできる。そのような実施の形態では、双方向ゲート技術を用いて、電極210(1)〜210(2)の活性機能を制御することができる。例えば、第1の電極210(1)が駆動電極として機能する場合、双方向ゲート技術により、(例えば、制御回路220の内部に含まれた又は制御回路220に関連付けられた)電圧/又は電流ドライバ等の回路の出力に、第1の電極210(1)を接続して、例えば、第1の電位を第1の電極210(1)に供給し;代わって、第1の電極210(1)が呼吸センサ又はその他のセンサ240(1)として機能する場合、双方向ゲート技術により、(例えば、制御回路220の内部に含まれた又は制御回路220に関連付けられた)増幅器及び/又はACD(アナログデジタル)変換器等の回路の入力に、センサ240(1)を接続して、例えば、患者の呼吸作用を感知することができる。同様に、第2の電極210(2)が駆動電極として機能する場合、双方向ゲート技術により、(例えば、制御回路220の内部に含まれた又は制御回路220に関連付けられた)電圧/又は電流ドライバ等の回路の出力に、第2の電極210(2)を接続して、例えば、第2の電位を第2の電極210(2)に供給し;代わって、第2の電極210(2)が呼吸センサ又はその他のセンサ240(2)として機能する場合、双方向ゲート技術により、(例えば、制御回路220の内部に含まれた又は制御回路220に関連付けられた)増幅器及び/又はACD(アナログデジタル)変換器等の回路の入力に、センサ240(2)を接続して、例えば、患者の呼吸作用を感知することができる。
【0031】
電極210(1)〜210(2)の内部に設けられた、又は関連付けられた、呼吸センサ又はその他のセンサ240(1)〜240(2)は、呼吸障害の有無を示す又は特定することができる、患者の任意の物理的、化学的、機械的、電気的、神経学的、及び/又はその他の特性を計測する、任意の適切なセンサであってよい。これ等の呼吸センサ240(1)〜240(2)は、いびきの検出にも使用することができる。少なくとも一部の実施の形態では、電極210(1)〜210(2)の一方又は両方が、例えば、接続されているか若しくは関連付けられている、患者の舌T内の筋肉の電気的活動を検出する、筋電図(EMG)センサを含むことができる。少なくとも1つの実施の形態では、電極210(1)〜210(2)の一方又は両方が、患者の呼吸行動を検出するためのマイクロフォン(又は、音響及び/又は振動エネルギーを感知する任意の他のセンサ)を含むことができる。他の実施の形態では、電極210(1)〜210(2)の一方又は両方が、加速度計、圧電計、静電容量近接検出器、静電容量検知素子、光学系、EMGセンサ等を含む、以下の非包括的なセンサリストの1つ以上を含むことができる。
【0032】
他の実施の形態では、電極210(1)〜210(2)は、センサを全く含んでいなくてもよい。これ等の他の実施の形態の少なくとも1つでは、電極210(1)〜210(2)は、患者の口蓋舌筋PGMに対し、舌下組織を介して連続的に電気刺激を与えることができる。これに代わる実施の形態では、器具本体205又は制御回路220にタイマー(簡略化のため図示せず)を備え、例えば、所定の刺激スケジュールに基づいて、電極210(1)〜210(2)を選択的に有効/無効にするように構成することができる。別の閉ループの実施の形態において、患者からのセンサフィードバックの1つ以上の情報源に基づいて、電極210(1)〜210(2)を選択的に有効/無効にすることができる。
【0033】
図2A〜2Bの例示的な実施の形態では、器具200が、患者の口腔OCの舌下部分に配置されたとき、第1及び第2の電極210(1)〜210(2)が、患者の口腔OCの舌下後方領域207を挟んで配置されるように、器具200の本体205のそれぞれの横アーム205(1)及び205(2)に、第1及び第2の電極210(1)〜210(2)を実装することができる。他の実施の形態では、第1及び第2の電極210(1)〜210(2)を器具本体205から分離し、例えば、患者の舌Tの真下又は両側に「浮く」ように、又は舌Tの上面を挟んで配置されるように配向して、それぞれの横アーム205(1)及び205(2)に接続することができる。一部の実施の形態では、第1及び第2の電極210(1)〜210(2)の各々の少なくとも一部が、患者の臼歯209に近接するように、第1及び第2の電極210(1)〜210(2)が、口腔OCの舌下後方領域207に配置される。このように、第1及び第2の電極210(1)〜210(2)は、口蓋舌筋PGMが舌Tに入る(図1A〜1Bも参照)、側面後部領域101近傍の患者の舌下組織と物理的に接触することができる。更に、図2A〜2Bに示すように、口蓋舌筋PGMが舌Tに入る(図1A〜1Bも参照)舌Tを挟んだ側面後部領域101近傍において、第1及び第2の電極210(1)〜210(2)が実質的に向き合う、及び/又は接触するように、第1及び第2の電極210(1)〜210(2)を口底部に対して角度配向することができる。他の実施の形態では、第1及び第2の電極210(1)〜210(2)を、1つ以上の別の位置及び/又は向きに設けることができる。
【0034】
制御回路220は、第1及び第2の電極210(1)〜210(2)に対し、1つ以上の信号を供給して、患者の舌下組織を横断して(例えば、舌の付け根を横断して)、横方向に電圧差を生じさせることができる。ここで、説明のために、第1の電極210(1)が第1の電位V1を与え、第2の電極210(2)が第2の電位V2を与えることができるものとする。第1の電極210(1)と第2の電極210(2)との間の電圧差(例えば、V2−V1)によって、患者の舌下組織を横断して、実質的に横方向に電流201を誘導することができる。一部の実施の形態では、電流201は、患者の舌を横断して、実質的に横方向に誘導される。一部の実施の形態では(以下に、更に詳細に説明するように)可逆電流とすることができる、電流201によって、患者の口蓋舌筋PGMが短縮するように、口蓋舌筋PGMが電気的に刺激される。
【0035】
第1及び第2の電極210(1)〜210(2)によって誘導された電流201に応答して、口蓋舌筋PGMが刺激を受け及び/又は短縮されると、口蓋舌筋PGMによって、舌の体積が減少するように舌Tが硬化し、それによって舌Tの一部が口腔OCの床に近づくように僅かに締め付けることもできる。舌の体積を減じること及び口腔OCの床に向けて舌Tを下方に僅かに締め付けることの一方又は両方によって、舌Tが咽頭PHRの奥に逸脱するのを防止することができ、それによって、(例えば、舌を前方向に前進させることなく)患者の上気道の開存性が維持される。口蓋舌筋PGMが短縮されることにより、患者の口蓋舌弓PGAを舌Tの付け根に向けて下方に引き寄せることもでき、それによって、患者の軟口蓋SPの落ち込み及び上気道の閉塞を防止することができる。
【0036】
例えば、図3Aは、呼吸障害時における、患者の舌T及び軟口蓋SPの咽頭PHRの奥に向けた、後方向への落ち込みを示す患者の側面図300Aを示す。図3Aに示すように、咽頭PHRの後壁に逸脱している舌T及び/又は咽頭PHRの後壁に落ち込んでいる軟口蓋SPによって患者の上気道が閉塞されている。
【0037】
対照的に、図3Bは、本発明の実施の形態によって与えられる電気刺激に対する、患者の上気道応答を示す、患者の側面図300Bを示す。より具体的には、器具200の1つ以上の実施の形態によって与えられる電気刺激によって、口蓋舌筋PGMを硬化短縮することができ、それによって、患者の軟口蓋SP及び/又は口蓋弓を下方に引き寄せることができ、それによって軟口蓋SPが咽頭PHRの後壁に落ち込むのが防止される。更に、口蓋舌筋PGMの硬化及び/又は短縮によって、舌Tを実質的に前方向に前進させることなく、舌Tが咽頭PHRの奥に向けて落ち込むのが防止されるように、患者の舌Tを収縮及び/又は下方に締め付けることができる。
【0038】
制御回路220は、電極210(1)〜210(2)を介して、患者の舌Tの付け根の近傍領域に、電気刺激エネルギーを与えることができる、任意の適切な回路又は装置(例えば、プロセッサ)であってよい。より具体的には、制御回路220は、信号及び/又は駆動信号として、第1及び第2の電極210(1)〜210(2)に供給されたとき、患者の口蓋舌筋PGMが短縮するように、患者の舌Tの舌下部分を横断して(例えば、実質的に横方向に)主に電流を誘導する、1つ以上の電圧波形を発生することができる。制御回路220によって供給される波形は、連続電圧波形、一連のパルス、又は両方の組み合わせを含むことができる。制御回路220は、デジタル部品、アナログ部品、又はアナログ部品とデジタル部品とを組み合わせて形成することができる。
【0039】
一部の実施の形態では、制御回路220は、患者の舌Tの舌下部分(例えば、舌の付け根)を横断して、可逆電流が誘導されるように、波形を変化させるか、又は修正することができる。出願人は、舌Tの舌下部分を横断して、可逆電流を誘導することによって、(例えば、定電流又は単一方向の電流を供給する場合と比較して)患者が不快に感じる可能性を減じることができることを発見した。より具体的には、出願人は、患者の舌下組織に電流を誘導したとき、舌下組織にキャリア枯渇が生じる可能性があり、それによって、口蓋舌筋PGMに対する望ましいレベルの電気刺激を維持するためには、より大きな電圧差及び/又はより大きな電流量が必要であることに気づいた。しかし、キャリア枯渇の増大するレベルを相殺するために、より大きな電圧及び/又は電流量を誘導すると、患者が不快に感じる可能性がある。従って、患者の舌下組織のキャリア枯渇を防止するために、制御回路220は、舌下組織を横断して電流201を誘導するパルスの幅を制限する、及び/又は患者の舌下組織を横断して誘導される電流201の方向(例えば、極性)を反転することができる。
【0040】
一部の実施の形態では、制御回路220は、患者の呼吸行動を示す1つ以上の入力信号、及び/又は他の特性及び感知方法からの入力に応答して、第1及び第2の電極210(1)〜210(2)に供給される波形を生成及び/又は動的調整し、及び/又は波形を駆動することができる。入力信号は、それぞれの電極210(1)〜210(2)の内部に統合された、センサ240(1)〜240(2)の1つ以上によって提供することができる。
【0041】
他の実施の形態では、それぞれの電極210(1)〜210(2)の内部に統合された、センサ240(1)〜240(2)以外のセンサを用いて、入力信号を生成することができる。例えば、図2C〜2Dは、他の実施の形態による、取り外し可能な口腔器具270を示す図である。器具270は、図2A〜2Bに示す器具200のすべての要素を含むことができ、併せてセンサ240(3)〜240(4)も更に含んでいる。図2C〜2Dの例示的な実施の形態では、センサ240(3)は、患者の酸素飽和レベルを示す信号を提供する酸素飽和(Osat)センサであってよく、センサ240(4)は、(患者の口腔内で検出される振動によって測定される)患者の呼吸活性を示す信号を提供する振動センサであってよい。他の実施の形態では、センサ240(3)〜240(4)は、例えば、空気組成(特にO及びCO)、心拍数、呼吸、温度、頭部位置、いびき、pH値等を測定するセンサを含む、別の種類のセンサであってよい。
【0042】
図4は、図2A〜2Bの器具200の1つの実施の形態である、器具400の電気部品のブロック図である。図示の器具400は、プロセッサ410、複数の電極210(1)〜210(n)、電源230、センサ240、及び光トランシーバ420を含んでいる。プロセッサ410は、図2A〜2Bの制御回路220の1つの実施の形態であり、波形発生器411、メモリ412、及びパワーモジュール413を含んでいる。電源230は、前述のように任意の適切な電源(例えば、バッテリー)であってよく、プロセッサ410に電力(PWR)を供給する。一部の実施の形態では、プロセッサ410は、パワーモジュール413を用いて、例えば、センサ240が動作すべき期間のみ(例えば、センサ240から入力信号を受信したいときのみ)、センサ240に対して選択的に電力を供給することができる。センサ240に選択的に電力を供給することによって、消費電力が低下する(これにより、電源230のバッテリー寿命が延びる)のみならず、ワイヤ221に沿ってプロセッサに410に送信される、電気信号を最小限にすることもできる。他の実施の形態では、電源230が、センサ240に直接電力を供給することができる。
【0043】
センサ240は、図2A〜2Bのセンサ240(1)〜240(2)及び/又は図2C〜2Dのセンサ240(3)〜240(4)を含むことができ、プロセッサ410に入力信号を提供することができる。入力信号は患者の呼吸行動又はその他の作用を示すことができ、例えば、図2A〜2Dに関連して説明した、呼吸障害の有無の検出に用いることができる。
【0044】
プロセッサ410は、センサ240又は他の場所に配置されたセンサから、1つ以上の入力信号を受信し、受信信号に応答して、複数の電極210(1)〜210(n)に対し、信号及び/又は駆動信号(DRV)を与えることができる。前述のように、波形発生器411によって生成された信号、及び/又は駆動信号(例えば、電圧及び/又は電流波形)は、電極210(1)〜210(n)の1つ以上によって、患者の口蓋舌筋PGMが短縮するように、患者の口腔OCの舌下部分を電気的に刺激させることができる。電極210(1)〜210(n)の1つ以上によって与えられた、電気刺激に応答した口蓋舌筋PGMの短縮により(1)舌Tを硬化させ体積を減じること、(2)舌を下方に締め付けること、及び(3)口蓋舌弓PGAを舌Tの付け根に向けて(例えば、下方向に)引き寄せることができる。このように、1つ以上の電極210(1)〜210(n)によって与えられる電気刺激によって、舌Tが咽頭PHRの奥に逸脱するのを防止することができ、及び/又は軟口蓋SPが咽頭PHRの奥に落ち込むのを防止することができる。
【0045】
前述のように、波形発生器411によって生成された波形が、信号及び/又は駆動信号として、電極210(1)〜210(n)に与えられると、患者の口蓋舌筋PGMが短縮するように、患者の舌下組織を横断して主に電流が誘導される。波形発生器411によって生成される波形は、連続(アナログ)電圧波形、パルス列としての形状及び幅が可変の任意の数のパルスを含むことができ、パルスを組み合わせて疑似アナログ波形を生成するか、又は両方を組み合わせることができると共に、波形発生器411によって動的に変更することができる。
【0046】
光トランシーバ420を用いて、適切な有線又は無線接続を介して、外部装置に対し、制御情報(CTL)及び/又はデータを送受信することができる。外部装置(簡略化のため図示せず)は、任意の適切な表示装置、記憶装置、配信システム、伝送システム等であってよい。1つの例では、外部装置は(例えば、患者の呼吸行動又はパターンの表示、電気刺激期間の注意喚起、呼吸が停止したときの警報表示等を行うための)ディスプレイであってよい。
【0047】
別の実施例では、外部装置は、器具200によって生成された、患者の呼吸行動、器具200によって与えられた電気刺激、波形発生器411によって与えられた波形、及び/又は上記の2つ以上の間の関係等を含む、全てのデータを記憶する記憶装置であってよい。より具体的には、一部の実施の形態では、外部装置は、例えば、患者に与えた電気刺激とそのような電気刺激に対する患者の呼吸応答との関係を含む、複数の患者のデータを保存することができると共に、その他の情報を含むことができる。多数の患者のこのような関係データを集約して、様々な人口層にわたるOSAの傾向及び共通の要素を特定することができる。記憶装置は局所の記憶装置、又は(例えば、広域ネットワーク(WAN)、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)、仮想プライベートネットワーク(VPN)、及び又はインターネットを含み、これに限定されない、1つ以上の手段及び/又はネットワークを介してアクセス可能な)遠隔地の記憶装置であってよい。データ及び情報を局所的及び/又は遠隔的に利用及び/又は操作することができると共に、直ちに利用することができ、及び/又は後日利用及び/又は操作するために保存することができる。
【0048】
メモリ412は、以下のソフトウェアモジュール及び/又は情報を記憶することができる、非一時的なコンピュータ可読媒体(例えば、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、ハードドライブ等の1つ以上の不揮発性記憶素子)を含むことができる:
・ 電極210の活性機能を(例えば、電極210の1つ以上によって提供される)電極モードと(センサ240の1つ以上によって提供される)センサモードとの間で、選択的に切り替えるための機能選択モジュール、
・ 電極210に対し、信号及び/又は駆動信号を選択的に与えて、本発明の実施の形態に従って、例えば、患者の口腔の一部を横断して電流を誘導、及び/又はセンサ240から入力信号を受信するための制御モジュール、及び
・ 患者の呼吸又はその他の行動を示すデータを記録及び/又はこのようなデータを外部装置に送信するためのデータ収集モジュール。
【0049】
各々のソフトウェアモジュールは、プロセッサ410によって実行されると、器具400に、対応する機能を実行させる命令を含むことができる。従って、メモリ412の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、図6を参照して、以下に説明する動作の全部又は一部を実行させるための命令を含むことができる。プロセッサ410は、器具400(例えば、メモリ412内)に記憶されている、1つ以上のソフトウェアプログラムの、命令のスクリプトを実行することができる、任意の適切なプロセッサであってよい。少なくとも一部の実施の形態では、メモリ412は、例えば、患者の呼吸作用に対応するデータ、及び/又は器具200によって与えられた電気刺激に対応するデータを記憶するための、適切な揮発性メモリを包含する又はそれに関連付けられていてもよい。
【0050】
前述のように、制御回路220は、患者の舌下組織を横断して電流201を誘導するパルスの幅を制御して、例えば、患者の舌下組織のキャリア枯渇を最小化する、及び/又は誘導電流201の方向を時々反転し、(例えば、電気化学的作用を最小化する又は生じないようにする、及び/又は患者による口腔器具200に関連した、あらゆる電気的活動の感知を最小化するために)例えば、ゼロサムの駆動波形を与えることができる。少なくとも1つの実施の形態では、制御回路220は、患者の舌Tの抵抗−容量(RC)時定数モデルに基づいて、パルス長を選択することができる。例えば、図5は患者の舌TのRC時定数モデル500を示す図である。図示のモデル500は、コンデンサCと2つの抵抗R1及びR2を含んでいる。例示的な実施の形態では、コンデンサCは約0.5μF、抵抗R1は約600オーム、及び抵抗R2は約4,000オームであってよい。従って、例示的な実施の形態では、時定数τ=R1*Cの値は、約300μsに等しい。抵抗R2は、5時定数を超えた後、又は電極にDCが印加されたとき、モデル中を流れる小さいがゼロにならない値を安定させる微小「DC電流」を表している。
【0051】
より具体的には、出願人は、典型的な患者の舌Tはτ=R1*C≒300μsに約等しい時間周期以下の電流「パルス幅」に対し、最も受容的であることを発見した。時間周期3τ≒1msを経過すると、患者の舌Tのインピーダンスが更に大きな増加を示す可能性があるか、又は、恐らくキャリア枯渇が生じる可能性があり、ひいては、患者の舌下組織を横断して、電流201の誘導を継続するために、より大きな電圧レベルが必要となる。前述のように、患者の舌下組織を横断して、電流201の誘導を継続するために、電圧レベルを増大させると、バッテリー又は有線電源が浪費されるだけでなく、患者に不快感(あるいは痛み)を与える可能性がある。事実、負荷インピーダンスが増加する、又は実効駆動電圧が低下すると、電流調整器は、一般に、電圧「ヘッドルーム」を用いて、駆動電圧を増大して定電流を維持するため、電極210(1)〜210(2)によって提供される実効駆動電圧を動的に管理することが重要である。
【0052】
患者の舌のインピーダンスが増大する、又は恐らくキャリア枯渇が生じると、実効駆動電圧が低下する可能性があり、また、電極210(1)〜210(2)の一方(又は両方)が患者の舌下組織との接触を失うと、駆動抵抗が増大する可能性があり、一般に制御回路220が、所定の電流フローを維持しようとして、供給駆動電圧を増大させる。従って、少なくとも一部の実施の形態では、駆動インピーダンスが異常に高くなっても、患者にとって安全且つ快適であると知られているレベルに、駆動電圧及び/又は電流を制限するように、制御回路220を構成することができる。更に、時々誘導電流201の極性又は方向を反転するように、制御回路220を構成することができる。電流201はいつでも反転することができる。患者の舌下組織を横断して、正味の電荷移動がないように(例えば、ゼロサム波形となるように)電流201を反転するタイミングを選択することができる。
【0053】
図6は、本発明の実施の形態に従って、患者に対し電気刺激を与えるための例示的な動作を示すフロー図600である。フロー図600は、図2A〜2Bの器具200に関して以下に説明するものであるが、フロー図600は本明細書に記載の他の実施の形態にも等しく適用できるものである。器具200は、動作の前に、例えば、電極210(1)〜210(2)が、患者の舌を挟んだ、口蓋舌筋PGMが舌Tに付着する側面後部領域101近傍に配置されるように(図1A〜1Bも参照)、患者の口腔の舌下部分に配置される。器具200が患者の口腔内に適切に装着された後、器具200は、器具200に設けられた又は関連付けられた、複数の感知回路を用いて、ゼロ以上の入力信号を受け付ける(601)。前述のように、入力信号は患者の呼吸状態、又はその他の行動を示すことができ、任意の適切なセンサから取得又は生成できるものである。入力信号に基づいて、制御回路220が、複数の制御信号及び/又は駆動信号を生成する(602)。
【0054】
制御信号及び/又は駆動信号に応答して、電極210(1)〜210(2)が、患者の舌の舌下部分を横断して、横方向に電流を誘導する(603)。患者の舌の舌下部分を横断して、横方向に誘導された電流によって、患者の口蓋舌筋が電気的に刺激される(604)。前述のように、患者の口蓋舌筋を電気的に刺激することによって、口蓋舌筋を短縮することができ(604A)、患者の軟口蓋を舌の付け根に向けて引き寄せることができ(604B)、舌の体積を減じることができ(604C)、及び/又は舌の前方向への動きを防止することができる(604D)。
【0055】
一部の実施の形態では、誘導電流は可逆電流であってよい。少なくとも1つの実施の形態では、可逆電流はゼロサム波形であってよい。このような実施の形態では、制御回路220は、時々可逆電流の極性反転(605)、及び/又は患者の舌のRC時定数モデルに基づいて、電圧及び/又は電流パルス及び/又は波形の幅及び/又は振幅を調整することができる(606)。
【0056】
図7A〜7Dは、他の実施の形態による、取り外し可能な口腔器具700を示す図である。口蓋舌筋が短縮するように、患者の舌下組織に対して電気刺激を与えることによって、OSAの治療に用いることができる、図示の口腔器具700は、患者の口腔OC内に完全に収まることができる、単一且つ取り外し可能な装置が形成されるように(図1A〜1Bも参照)、電極210(1)〜210(2)、制御回路220、及び電源230を実装する(又は取り付ける)ことができる、器具本体705(図示のように、部分705(1)〜705(3)を含む)を有している。図2A〜2Bの口腔器具200と同様に動作することができる口腔器具700は、図2A〜2Bの器具本体205に代えて、器具本体705を有している。具体的には、器具本体705は、2つのアンカー部705(1)〜705(2)及び支持ワイヤ705(3)を有している。アンカー部705(1)〜705(2)は、支持ワイヤ705(3)をアンカー部705(1)〜705(2)の間に接続して患者の歯肉線に沿って延ばし、対向又は略対向する患者の臼歯の上部に嵌着することがでる。
【0057】
より具体的には、本明細書に記載の例示的な実施の形態では、第1の電極210(1)は、第1のアンカー部705(1)に取り付けるか、関連付けることができ、第2の電極210(2)は、第2のアンカー部705(2)に取り付けるか、関連付けることができる。制御回路220は、支持ワイヤ705(3)及び/又は第2のアンカー部705(2)に取り付けることができ、電源230は、支持ワイヤ705(3)、及び/又は第1のアンカー部705(1)、及び/又は第2のアンカー部705(2)に取り付けることができる。ワイヤ221(簡略化のため図7A〜7Dに図示せず)は支持ワイヤ705(3)に取り付けるか、内部に設けることができる。
【0058】
前述の明細書において、特定の例示的な実施の形態を参照しながら、本発明の実施の形態について説明してきた。しかし、特許請求の範囲に記載の本開示のより広い範囲を逸脱せずに、本発明の実施の形態に対し、様々な改良及び変更が可能であることは明らかであろう。従って、本明細書及び図面は、限定的な意味ではなく、例示的な意味で捉えられるべきである。
【符号の説明】
【0059】

HP 硬口蓋
T 舌
OC 口腔
SP 軟口蓋
PHR 咽頭
TR 気管
PGA 口蓋舌弓
EP 喉頭蓋
GGM オトガイ舌筋
PGM 口蓋舌筋
ILM 下縦舌筋
HGM 舌骨舌筋
200、270、400、700 口腔器具
205、705 器具本体
210(1)〜210(2) 電極
220 制御回路
221 ワイヤ
230 電源
240(1)〜240(2) センサ
410 プロセッサ
411 波形発生器
412 メモリ
413 パワーモジュール
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D