(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603249
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】車高制御システム
(51)【国際特許分類】
B60G 17/015 20060101AFI20191028BHJP
B60G 17/052 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
B60G17/015 C
B60G17/052
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-21520(P2017-21520)
(22)【出願日】2017年2月8日
(65)【公開番号】特開2018-127102(P2018-127102A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2018年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】特許業務法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 渉悟
(72)【発明者】
【氏名】大橋 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】徳満 淳
(72)【発明者】
【氏名】神田 亮
(72)【発明者】
【氏名】汐▲崎▼ 裕和
(72)【発明者】
【氏名】中村 友之
【審査官】
上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−105016(JP,A)
【文献】
特開昭59−130718(JP,A)
【文献】
特開2001−225627(JP,A)
【文献】
特開昭59−130716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 17/015
B60G 17/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を吸引するコンプレッサと、前記流体を供給するタンクとを備えた流体給排装置と、
その流体給排装置に接続されたアクチュエータ側通路と、
前記アクチュエータ側通路に設けられ、前記アクチュエータ側通路の流体の圧力である通路圧を検出する通路圧センサと、
車輪に対応して設けられ、前記アクチュエータ側通路に車高制御弁を介して接続された車高制御アクチュエータと、
前記流体給排装置と前記車高制御弁とを制御することにより、前記車高制御アクチュエータにおける前記流体の供給と排出とを制御して、前記車輪についての車高を制御する車高制御部と
を含む車高制御システムであって、
前記車高制御部が、前記車高の制御の開始時に、前記車高制御弁の閉状態において、前記タンクと前記コンプレッサとの少なくとも一方と、前記アクチュエータ側通路とを連通させ、その後に、前記車高制御弁を開とする開始時制御部を含み、
前記流体給排装置が、前記タンクと前記アクチュエータ側通路とを接続するタンク圧供給通路と、前記タンク圧供給通路に設けられた少なくとも1つのタンク圧供給弁を備えた電磁弁装置を含み、
前記車高制御部が、前記車高を高くするアップ制御を行うものであり、
前記開始時制御部が、前記アップ制御の開始時に、前記車高制御弁の閉状態において、前記少なくとも1つのタンク圧供給弁を開として、前記アクチュエータ側通路を前記タンクに連通させるとともに、前記車高制御弁が閉、前記少なくとも1つのタンク圧供給弁が開である状態において、前記通路圧センサによって検出された前記通路圧がアップ開始時設定圧より高くなった場合に、前記車高制御弁を開とするものである車高制御システム。
【請求項2】
流体を吸引するコンプレッサと、前記流体を供給するタンクとを備えた流体給排装置と、
前記タンクに蓄えられた流体の圧力であるタンク圧を検出するタンク圧センサと、
前記流体給排装置に接続されたアクチュエータ側通路と、
車輪に対応して設けられ、前記アクチュエータ側通路に車高制御弁を介して接続された車高制御アクチュエータと、
前記流体給排装置と前記車高制御弁とを制御することにより、前記車高制御アクチュエータにおける前記流体の供給と排出とを制御して、前記車輪についての車高を制御する車高制御部と
を含む車高制御システムであって、
前記車高制御部が、前記車高の制御の開始時に、前記車高制御弁の閉状態において、前記タンクと前記コンプレッサとの少なくとも一方と、前記アクチュエータ側通路とを連通させ、その後に、前記車高制御弁を開とする開始時制御部を含み、
前記流体給排装置が、前記タンクと前記アクチュエータ側通路とを接続するタンク圧供給通路と、前記タンク圧供給通路に設けられた少なくとも1つのタンク圧供給弁を備えた電磁弁装置とを含み、
前記車高制御部が、前記車高を高くするアップ制御を行うものであり、
前記開始時制御部が、前記アップ制御の開始時に、前記車高制御弁の閉状態において、前記少なくとも1つのタンク圧供給弁を開として、前記アクチュエータ側通路を前記タンクに連通させるとともに、前記車高制御弁が閉、前記少なくとも1つのタンク圧供給弁が開である状態において前記タンク圧センサによって検出された前記タンク圧の減少量が設定減少量より大きくなった場合に、前記車高制御弁を開とするものである車高制御システム。
【請求項3】
流体を吸引するコンプレッサと、前記流体を供給するタンクとを備えた流体給排装置と、
その流体給排装置に接続されたアクチュエータ側通路と、
車輪に対応して設けられ、前記アクチュエータ側通路に車高制御弁を介して接続された車高制御アクチュエータと、
前記流体給排装置と前記車高制御弁とを制御することにより、前記車高制御アクチュエータにおける前記流体の供給と排出とを制御して、前記車輪についての車高を制御する車高制御部と
を含む車高制御システムであって、
前記車高制御部が、前記車高の制御の開始時に、前記車高制御弁の閉状態において、前記タンクと前記コンプレッサとの少なくとも一方と、前記アクチュエータ側通路とを連通させ、その後に、前記車高制御弁を開とする開始時制御部を含み、
前記流体給排装置が、前記コンプレッサの吸引側部と前記アクチュエータ側通路とを接続する吸引通路と、前記吸入通路に設けられた少なくとも1つの吸引側電磁弁を備えた電磁弁装置とを含み、
前記車高制御部が、前記車高を低くするダウン制御を行うものであり、
前記開始時制御部が、前記ダウン制御の開始時に、前記車高制御弁が閉である状態において、前記少なくとも1つの吸引側電磁弁を開とするとともに前記コンプレッサを始動させるものである車高制御システム。
【請求項4】
前記流体給排装置が、さらに、前記コンプレッサの吐出側部と前記タンクを接続する吐出通路とを含み、
前記電磁弁装置が、さらに、前記吐出通路に設けられた少なくとも1つの吐出側電磁弁を含み、
前記開始時制御部が、前記車高制御弁を閉、前記少なくとも1つの吸引側電磁弁および前記少なくとも1つの吐出側電磁弁を開とし、前記コンプレッサを始動させるものである請求項3に記載の車高制御システム。
【請求項5】
当該車高制御システムが、前記アクチュエータ側通路に設けられ、前記アクチュエータ側通路の流体の圧力である通路圧を検出する通路圧センサと、前記タンクに蓄えられた流体の圧力であるタンク圧を検出するタンク圧センサとを含み、
前記開始時制御部が、前記車高制御弁が閉、前記少なくとも1つの吸引側電磁弁および前記少なくとも1つの吐出側電磁弁が開であり、かつ、前記コンプレッサの作動状態において、前記通路圧センサによって検出された前記通路圧がダウン開始時設定圧より低くなった場合と前記タンク圧センサによって検出されたタンク圧の増加量が設定増加量より大きくなった場合との少なくとも一方の場合に、前記車高制御弁を開とするものである請求項4に記載の車高制御システム。
【請求項6】
前記開始時制御部が、前記車高制御弁が閉、かつ、前記タンクと前記コンプレッサとの少なくとも一方と、前記アクチュエータ側通路とが連通させられた状態を設定時間以上保持した後に、前記車高制御弁を開とするものである請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車高制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車高制御アクチュエータにおける流体の給排の制御により車高を制御する車高制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の車高制御システムは、 (1)タンク22と、(2)排気バルブ34と、(3)タンク22に接続された通路L1および通路L1に設けられた電磁弁21と、(4)排気バルブ34に接続された通路L2および通路L2に設けられた電磁弁32と、(5)通路L1および通路L2に車高制御弁15〜18を介して接続されたエアばね装置11〜14とを含む車高制御システムが記載されている。この車高制御システムにおいて、車高を高くするアップ制御が行われる場合には、電磁弁21と、車高制御弁15〜18のうちの制御対象輪に対応するもの(例えば、車高制御弁15とする)とが開とされる(特許文献1の第3図のステップ216)。車高を低くするダウン制御が行われる場合には、排気弁34、電磁弁32および車高制御弁15が開とされる(特許文献1の第5図のステップ402)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−70615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、車高制御システムにおいて、車高制御開始時の意図しない車高の変化を抑制することである。
【0005】
本発明に係る車高制御システムにおいては、タンクとコンプレッサとを備えた流体給排装置にアクチュエータ側通路が接続されるとともに、車高制御アクチュエータが、アクチュエータ側通路に車高制御弁を介して接続されている。そして、車高制御の開始時において、アクチュエータ側通路がエア給排装置に連通させられた後に、車高制御弁が閉から開に切り換えられる。
【0006】
特許文献1に記載の車高制御システムにおいて、アップ制御が行われる場合には、電磁弁21と車高制御弁15とが開とされるため、通路L1の電磁弁21が設けられた部分よりエアばね装置側の部分のエアの圧力であるエア圧が、エアばね装置11のエア圧より低い場合には、エアばね装置11から通路L1にエアが排出し、車高が低くなる。また、ダウン制御が行われる場合において、電磁弁32,34と車高制御弁15とが開とされるため、通路L2の電磁弁32が設けられた部分よりエアばね装置側の部分のエア圧が、エアばね装置11のエア圧より高い場合には、通路L2からエアばね装置11へエアが供給され、車高が高くなる。このように、特許文献1に記載の車高制御システムにおいては、車高制御の開始時に意図しない車高変化が生じる場合がある。
【0007】
それに対して、本車高制御システムにおいては、アップ制御の開始時に、車高制御弁の閉状態において、アクチュエータ側通路が流体給排装置のタンクに連通させられる。それにより、アクチュエータ側通路の流体の圧力である流体圧が高くされる。その結果、その後、車高制御弁が閉から開に切り換えられた場合に、車高制御アクチュエータからアクチュエータ側通路に流体が排出され難くすることができ、車高の低下を抑制することができる。また、ダウン制御の開始時に、アクチュエータ側通路が流体給排装置のコンプレッサの吸引側部に連通させられ、コンプレッサが作動させられる。それにより、アクチュエータ側通路の流体圧が低くされる。その結果、その後、車高制御弁が開に切り換えられた場合に、アクチュエータ側通路から車高制御アクチュエータに流体が供給され難くすることができ、車高の上昇を抑制することができる。以上のように、本車高制御システムにおいては、車高制御開始時の意図しない車高の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例1に係る車高制御システムを示す回路図である。
【
図2】上記車高制御システムの車高制御ECUの周辺を示す概念図である。
【
図3】上記車高制御システムにおいてアップ制御が行われる状態を示す図である。
【
図4】上記車高制御システムにおいてダウン制御が行われる状態を示す図である。
【
図5】上記車高制御システムにおいてアップ開始時制御が行われる状態を示す図である。
【
図6】上記車高制御システムにおいてダウン開始時制御が行われる状態を示す図である。
【
図7】上記車高制御ECUの記憶部に記憶された車高制御プログラムを表すフローチャートである。
【
図8】上記車高制御プログラムの一部(S9)を表すフローチャートである。
【
図9】上記車高制御プログラムの別の一部(S12)を表すフローチャートである。
【
図10】上記車高制御システムにおいてアップ制御が行われる場合の作動を示す図である。
【
図11】上記車高制御システムにおいてダウン制御が行われる場合の作動を示す図である。
【
図12】従来の車高制御システムにおいてアップ制御が行われる場合の作動を示す図である。
【
図13】従来の車高制御システムにおいてダウン制御が行われる場合の作動を示す図である。
【
図14】上記車高制御プログラムの一部(S9)の別の態様を示すフローチャートである。
【
図15】上記車高制御プログラムの別の一部(S12)の別の態様を示すフローチャートである。
【0009】
以下、本発明の一実施形態である車高制御システムについて図面に基づいて詳細に説明する。本車高制御システムにおいては、流体としてのエアが利用される。
【実施例】
【0010】
実施例に係る車高制御システムにおいては、
図1に示すように、車両に設けられた左右前後の車輪の各々に対応して、図示しない車輪側部材と車体側部材との間に、車高制御アクチュエータとしてのエアシリンダ2FL,FR,RL,RRと、ショックアブソーバ4FL,FR,RL,RRとが、互いに並列に設けられる。
ショックアブソーバ4FL,FR,RL,RRは、それぞれ、車輪側部材に設けられたアブソーバ本体と、車体側部材に設けられたアブソーバピストンとを含む。
以下、本明細書において、エアシリンダ2等について、車輪の位置で区別する必要がある場合には、車輪の位置を表す符号FL,FR,RL,RRを付して区別するが、車輪の位置で区別する必要がない場合、総称を表す場合等には車輪の位置を表す符号FL,FR,RL,RR等を省略して記載する。
エアシリンダ2は、それぞれ、車体側部材に設けられたシリンダ本体10と、シリンダ本体10に固定されたダイヤフラム12と、ダイヤフラム12およびショックアブソーバ2のアブソーバ本体に上下方向に相対移動不能に設けられたエアピストン14とを含み、これらの内部が圧力媒体室としてのエア室19とされる。
エア室19におけるエアの給排によりエアピストン14がシリンダ本体10に対して上下方向に相対移動させられ、それにより、ショックアブソーバ4においてアブソーバ本体とアブソーバピストンとが上下方向に相対移動させられるのであり、車輪側部材と車体側部材との間の距離である車高が変化させられる。
【0011】
エアシリンダ2のエア室19には、それぞれ、個別通路20および共通通路22を介して流体給排装置としてのエア給排装置24が接続される。個別通路20には、それぞれ、車高制御弁26が設けられる。車高制御弁26は常閉の電磁弁であり、開状態において、双方向のエアの流れを許容し、閉状態において、エア室19から共通通路22へのエアの流れを阻止するが、共通通路22の圧力がエア室19の圧力より設定圧以上高くなると共通通路22からエア室19へのエアの流れを許容するものである。
【0012】
エア給排装置24は、コンプレッサ装置30、排出弁としての排気弁32、タンク34、切換え装置36、吸気弁44、リリーフ弁46等を含む。
コンプレッサ装置30は、コンプレッサ40と、コンプレッサ40を駆動する電動モータ42とを含み、電動モータ42の駆動によりコンプレッサ40が作動させられる。コンプレッサ40の吐出圧が高くなると、リリーフ弁46を経てエアが大気へ放出される。
タンク34は、エアを加圧した状態で収容するものであり、収容されるエアの量が多くなると、その収容されたエアの圧力であるタンク圧が高くなる。
【0013】
切換え装置36は、共通通路22、タンク34、コンプレッサ装置30の間に設けられ、これらの間のエアの流れる方向等を切り換えるものである。
図1に示すように、共通通路22と、タンク34が接続されたタンク通路48とが、互いに並列に設けられた第1通路50と第2通路52とによって接続され、第1通路50に、直列に2つの回路弁61,62が設けられ、第2通路52に、直列に2つの回路弁63,64が設けられる。また、第1通路50の2つの回路弁61,62の間に第3通路65が接続され、コンプレッサ40の吸気側部40aに接続され、第2通路52の2つの回路弁63,64の間に、コンプレッサ40の吐出側部40bに接続された第4通路66が接続される。
回路弁61〜64は常閉弁であり、開状態において双方向のエアの流れを許容し、閉状態において、一方の側から他方の側へのエアの流れを阻止するが、他方の側の圧力が一方の側の圧力より設定圧以上高くなると、他方の側から一方の側へのエアの流れを許容するものである。
回路弁61,63は、閉状態においてタンク34からのエアの流出を阻止するものであり、回路弁62は、閉状態において、共通通路22からのエアの流出を阻止するものであり、回路弁64は、閉状態において共通通路22へのエアの供給を阻止するものである。
【0014】
第3通路65の接続部65sと大気との間には吸気弁44が設けられる。吸気弁44は、接続部65sのエアの圧力が大気圧以上の場合に閉、大気圧より低い場合に開とされる逆止弁である。コンプレッサ40の作動により接続部65sのエアの圧力が大気圧より低くなると、フィルタ43、吸気弁44を経て大気からエアが吸い込まれる。
第4通路66の接続部66sには排気弁32が接続される。排気弁32は常閉の電磁弁であり、開状態において、第4通路66から大気へのエアの排出が許容され、閉状態において、第4通路66から大気へのエアの排出が阻止されるが、第4通路66のエアの圧力が大気圧より設定圧以上低くなると大気から第4通路66へのエアの供給が許容される。
また、第4通路66の接続部66sより第2通路側の部分には、ドライヤ70と流れ抑制機構72とが直列に設けられる。流れ抑制機構72は、互いに並列に設けられた、差圧弁72vと絞り72sとを含む。差圧弁72vは、第2通路側からコンプレッサ側へのエアの流れを阻止し、コンプレッサ側の圧力が第2通路側の圧力より設定圧以上高くなると、コンプレッサ40から第2通路52へのエアの流れを許容する。
【0015】
本実施例において、車高制御システムは、コンピュータを主体とする車高制御ECU80によって制御される。車高制御ECU80はCAN(Controller Area Network)82を介してECU等との間で通信可能とされている。車高制御ECU80は、
図2に示すように、実行部80c、記憶部80m、入出力部80i、タイマ80t等を含み、入出力部80iには、車高切換えスイッチ88、タンク圧センサ90、通路圧センサ91、車高センサ93、乗降関連動作検出装置95等が接続されるとともに、通信装置96、イグニッションスイッチ98等がCAN82を介して接続される。また、電動モータ42が駆動回路100を介して接続されるとともに、排気弁32、車高制御弁26、回路弁61〜64が接続される。
【0016】
車高切換えスイッチ88は、運転者によって操作されるものであり、車高をL(Low),N(Normal),H(High)のうちのいずれかへの変更を指示する場合に操作される。タンク圧センサ90は、タンク圧を検出するものであり、通路圧センサ91は、共通通路22に設けられ、すべての車高制御弁26の閉状態において共通通路22(厳密に言えば、共通通路22および個別通路20の車高制御弁26が設けられた部分より共通通路側の部分)のエアの圧力である通路圧(以下、通路圧、または、共通通路22の通路圧と略称する)を検出する。車高センサ93は、前後左右の各車輪に対応してそれぞれ設けられ、車体側部材の車輪側部材からの距離である車高を検出する。乗降関連動作検出装置95は、乗降に関連する動作の有無を検出するものであり、車両に設けられた複数のドアの各々に対応して設けられ、そのドアの開閉を検出するドア開閉センサ(カーテシランプセンサ)102、複数のドアの各々のロック、アンロックを検出するドアロックセンサ103等を含むものとすることができる。ドアの開閉、ドアロック、アンロックの動作の有無等に基づいて乗車、降車、発進の意図等が推定される。通信装置96は、予め定められた通信可能領域内において、運転者等が所持する携帯機104との間で通信を行うものであり、通信により、ドアのロック、アンロックが行われる場合もある。
また、本実施例における車高制御システム等は、バッテリ110の電力により作動可能なものである。バッテリ110の電圧は電圧モニタ112によって検出されるが、電圧モニタ112は車高制御ECU80に接続される。
【0017】
本実施例に係る車高制御システムにおいて、車両の走行状態に基づいて前後左右の各輪の各々について目標車高が求められ、実際の車高である実車高が、それぞれ、目標車高に近づくようにエア給排装置24、車高制御弁26が制御される。また、車高切換えスイッチ88が操作された場合、人が乗降すると推定された場合、降車後設定時間が経過した場合等の予め定められた条件が成立した場合にも車高制御が行われる。そして、例えば、実車高と走行状態に基づいて決まる目標車高との差である偏差が設定値以上の場合、車高切換えスイッチ88により指示された車高と実車高との偏差が設定値以上の場合等には、車高制御(アップ制御、ダウン制御)の開始条件が成立したとされ、車高制御が開始される。
【0018】
例えば、車高を高くする車高制御(以下、アップ制御と称する場合がある)が行われる場合には、
図3に示すように、回路弁61,62が閉、回路弁63,64が開とされ制御対象輪(
図3においては前後左右の4輪が制御対象輪である場合について記載した)に対応する車高制御弁26が開とされる。タンク34に蓄えられたエアは、制御対象輪のエアシリンダ2のエア室19に供給される。それにより、制御対象輪についての車高が高くなる。また、アップ制御時に、
図3に示すように、回路弁63,64が開とされる場合と、図示は省略するが、回路弁61〜64が開とされる場合とが考えられるが、前者の場合には後者の場合よりタンク34から共通通路22に供給されるエアの流量が小さくなる。そのため、速やかに車高を高くする要求がある場合に回路弁61〜64が開とされ、速やかに車高を高くする要求がない場合には
図3に示すように回路弁63,64が開とされるようにすることができる。
【0019】
車高を低くする車高制御(以下、ダウン制御と称する場合がある)が行われる場合には、
図4に示すように、電動モータ42の駆動によりコンプレッサ40が作動させられ、回路弁61、64が閉、回路弁62,63が開とされ、制御対象輪に対応する車高制御弁26が開される。制御対象輪のエアシリンダ2のエア室19から、エアが排出されてタンク34に供給される。それにより、制御対象輪についての車高が低くなる。
【0020】
一方、
図12に示すように、アップ制御の開始条件が成立した場合(時間ts)に、回路弁63,64が開とされ、車高制御弁26が開とされた場合において、エアシリンダ2のエア室19のエアの圧力であるチャンバ圧Pcが通路圧Psより高い場合には、エア室19から共通通路22にエアが排出されて、車高が低くなる。アップ制御の開始時に、意図に反して車高が低くなるのである。
【0021】
速やかに車高を高くする要求がない場合には、アップ制御において、
図3に示すように、回路弁63,64が開とされる。しかし、回路弁63,64が開とされた場合には、回路弁61〜64が開とされる場合より、タンク34から共通通路22に供給されるエアの流量が小さくなるため、通路圧Psの増加が遅れる。そのため、アップ制御開始時に、通路圧Psがチャンバ圧Pcに対して低くなり易く、意図しない車高の低下が生じ易くなる。
【0022】
また、タンク圧は、予め定められた設定範囲内にあるように制御されるのが普通であるが、タンク圧が過大である場合にはタンク34からエアを大気に排出させる排気制御が行われる。排気制御においては、回路弁63、排気弁32が開とされ、タンク34が第4通路66を経て大気に連通させられる。そのため、第4通路66のエア圧が低くなる。そして、排気制御が行われた後にアップ制御の開始条件が成立して、回路弁63,64が開にされた場合には、タンク圧が第4通路66に流れ、共通通路22にエアが供給され難くなる。そのため、アップ制御開始時に、通路圧Psがチャンバ圧Pcに対して低くなり易く、意図しない車高の低下が起き易くなるのである。
【0023】
また、
図13に示すように、ダウン制御の開始条件が成立した場合(時間ts)に、回路弁62,63が開とされ、電動モータ42がONとされることによりコンプレッサ40が作動させられるとともに、車高制御弁26が開とされた場合において、通路圧Psがチャンバ圧Pcより高い場合には、共通通路22からエア室19へエアが供給され、車高が高くなる。ダウン制御の開始時に、車高が高くなるのであり、意図しない車高の上昇が起き易くなる。
例えば、右前輪についてアップ制御が行われた後に、左前輪についてダウン制御が行われる場合には、通路圧Psが左前輪のエアシリンダ2FLのチャンバ圧Pcより高くなっている場合がある。そのため、ダウン制御の開始時に、共通通路22からエア室19FLにエアが供給されて、意図しない車高の上昇が起きる場合があるのである。
【0024】
そこで、本実施例においては、車高制御の開始条件が成立した場合に開始時制御が行われる。アップ制御の開始時制御であるアップ開始時制御においては、
図5に示す状態とされ、車高制御弁26の閉状態において、共通通路22にタンク34が連通させられる。それにより、通路圧Psを高くすることができる。また、ダウン制御の開始時制御であるダウン開始時制御においては、
図6に示す状態とされ、車高制御弁26の閉状態において、共通通路22がコンプレッサ40の吸引側部41aに連通させられ、コンプレッサ40が作動させられる。それにより、通路圧Psを低くすることができる。
【0025】
図7のフローチャートで表される車高制御プログラムは予め定められた設定時間毎に実行される。
ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、車高センサ93によって前後左右の各々の車輪についての実車高H*が検出される。また、S2において、目標車高Hrefが取得され、S3,4において、アップ制御中であるか否か、ダウン制御中であるか否かが判定される。いずれでもない場合には、S5,6において、目標車高Hrefから実車高H*を引いた値である偏差e1がしきい値ethより大きいか否か、すなわち、アップ制御の開始条件が成立するか否かが判定され、S7,8において、実車高H*から目標車高Hrefを引いた値である偏差e2がしきい値ethより大きいか否か、すなわち、ダウン制御の開始条件が成立するか否かが判定される。アップ制御についてもダウン制御についても開始条件が成立しない場合には、S1〜8が繰り返し実行される。
【0026】
そのうちに、例えば、アップ制御の開始条件が成立した場合には、S6の判定がYESとなり、S9において、アップ開始時制御が行われる。アップ開始時制御において、
図8のフローチャートで表されるように、S21において、回路弁61,62が閉、回路弁63,64が開とされる。
図5に示すように、車高制御弁26の閉状態において、共通通路22がタンク34に連通させられる。それにより、共通通路22にタンク34からエアが供給されて、通路圧Psが高くされる。そして、S22において、
図5に示す状態に切り換えられてからの経過時間が設定時間Taに達したか否かが判定され、判定がYESになった場合に、S23において、制御対象輪に対応する車高制御弁26が開とされる。
図3に示す状態に切り換えられるのであり、エア室19にタンク34からエアが供給されることにより、制御対象輪の車高が高くなる。
【0027】
アップ開始時制御において、
図5に示す状態が設定時間Taの間保持されることにより、通路圧Psは、チャンバ圧Pc以上になると推定される。換言すれば、設定時間Taは、タンク34から共通通路22にエアが供給されることにより、通路圧Psがチャンバ圧Pc以上になると推定し得る時間とすることができる。また、アップ制御(アップ開始時制御も含む。)においては、回路弁63,64が開とされるため、タンク34のエアは、共通通路22のみならず第4通路66にも供給される。そのため、設定時間Taは、タンク34のエアが供給される通路等の容積を考慮して設定することが望ましい。
【0028】
また、アップ制御において、回路弁61,62が開とされるようにすることもできるが、回路弁61,62が開とされた場合には、タンク圧が、第3通路65、コンプレッサ40、第4通路66に供給される。それに対して、回路弁63,64が開とされた場合には、コンプレッサ40の吐出弁により、タンク圧は第4通路66に供給されるが、コンプレッサ40や第3通路65に供給されることがない。そのため、回路弁63,64が開とされる方が、設定時間Taを短くすることができる。
【0029】
アップ開始時制御が行われた場合には、アップ制御中であるため、S3の判定がYESとなり、S10において、アップ制御の終了条件が成立するか否かが判定される。実車高H*が目標車高Hrefに近づいたか否か、すなわち、実車高H*が目標車高Hrefと不感帯幅ΔHとで決まる範囲内に達したか否かが判定されるのであり、実車高H*が目標車高Hrefと不感帯幅ΔHとで決まる範囲内に入った場合には、終了条件が成立したと判定されて、S10の判定がYESとなる。S11において、回路弁63,64が閉、車高制御弁26が閉とされる。
【0030】
それに対して、ダウン制御の開始条件が成立した場合には、S8の判定がYESとなり、S12において、ダウン開始時制御が行われる。
図9のフローチャートで表されるように、S31,32において、車高制御弁26の閉状態において、回路弁61,64が閉、回路弁62,63が開とされるともに、コンプレッサ装置30が始動させられる。
図6に示すように、共通通路22がコンプレッサ40の吸引側部42aに連通させられ、コンプレッサ40により、共通通路22のエアが吸引され、タンク34に供給される。それにより、通路圧Psが低くされる。S33において、
図6に示す状態に切り換えられてから設定時間Tdが経過したか否かが判定され、判定がYESになった場合には、S34において、制御対象輪に対応する車高制御弁26が開とされる。
図4に示す状態に切り換えられるのであり、エア室19からエアが排出されることにより、制御対象輪の車高が低くなる。
【0031】
ダウン開始時制御において、
図6に示す状態が設定時間Tdの間保持されることにより、通路圧Psは、チャンバ圧Pc以下になると推定される。換言すれば、設定時間Tdは、コンプレッサ装置30の作動により、通路圧Psがチャンバ圧Pc以下になると推定し得る時間とされる。
【0032】
ダウン開始時制御が終了した場合には、ダウン制御中であるため、S13において、実車高H*が目標車高Hrefに近づいたか否か、すなわち、実車高H*が目標車高Hrefと不感帯幅ΔHとで決まる範囲内に達したか否かが判定される。判定がYESとなると、車高制御としてのダウン制御の終了条件が成立したとされて、S14において、回路弁62,63が閉、コンプレッサ装置30が停止、車高制御弁26が閉とされる。
【0033】
以上のように、本実施例においては、
図10に示すように、アップ制御の開始条件が成立した場合(時間ts)に、アップ開始時制御が行われる。
図5に示すように、車高制御弁26の閉状態において、共通通路22がタンク34に連通させられるため、通路圧Psが高くなる。そのため、設定時間Taが経過して(時間tp)、制御対象輪の車高制御弁26が開とされた場合に、エアシリンダ2のエア室19から共通通路22にエアが流出し難くすることができ、意図しない車高の低下を抑制することができる。なお、時間teにおいて、アップ制御の終了条件が成立した場合には、車高制御弁26が閉とされ、回路弁63、64が閉とされる。
【0034】
また、
図11に示すように、ダウン制御の開始条件が成立した場合(時間ts)にダウン開始時制御が行われる。
図6に示すように、車高制御弁26の閉状態において、共通通路22がコンプレッサ40の吸入側部40aに連通させられ、コンプレッサ40が作動させられるため、通路圧Psが低くなる。そのため、設定時間Tdが経過して(時間tq)、車高制御弁26が開とされた場合に、共通通路22からエア室19にエアが供給され難くすることができ、意図しない車高の上昇を抑制することができる。
【0035】
なお、設定時間Ta、設定時間Tdは、それぞれ、予め定められた固定値であっても、その都度決まる可変値であってもよい。例えば、車高制御の開始条件が成立した時点において、車高センサ93によって検出された実車高H*に基づいて推定されるチャンバ圧Pcと、通路圧センサ91によって検出された実際の通路圧Psとの差圧が大きい場合は小さい場合より、長い時間とすることができる。
また、設定時間Taと設定時間Tdとは同じ長さであっても異なる長さであってもよい。
【0036】
以上、本実施例においては、共通通路22等によりアクチュエータ側通路が構成され、第3通路65、第1通路50の第3通路65の接続部より共通通路側の部分等により吸引通路が構成され、第4通路66、第2通路52の第4通路66の接続部よりタンク側の部分、タンク通路48等により吐出通路が構成され、タンク通路48、第2通路52等によりタンク圧供給通路が構成される。また、回路弁61〜64等により電磁弁装置が構成され、回路弁62が吸引側電磁弁に対応し、回路弁63が吐出側電磁弁に対応し、回路弁63,64がタンク圧供給弁に対応する。車高制御ECU80の
図7のフローチャートで表される車高制御プログラムを記憶する部分、実行する部分等により車高制御部が構成され、そのうちの、S9,12を記憶する部分、実行する部分等により開始時制御部が構成される。
【0037】
なお、上記実施例においては、アップ開始時制御において、
図5に示す状態が設定時間Taの間保持された後に、車高制御弁26が開に切り換えられるようにされていたが、通路圧センサ91によって検出された通路圧Psがアップ開始時設定圧Psaより高くなった場合、または、タンク圧センサ90によって検出されたタンク圧PTの減少量ΔPTが設定減少量ΔPTdより大きくなった場合に、車高制御弁26が開に切り換えられるようにすることができる。
アップ開始時設定圧Psaは、例えば、アップ制御の開始条件が成立した場合の、制御対象輪の実車高H*に基づいて推定されるチャンバ圧Pch以上の値とすることができる。また、車高が標準車高にあり、かつ、荷重が標準荷重である場合の、チャンバ圧Pcである標準チャンバ圧Pcs以上の値とすること等もできる。
設定減少量ΔPTdは、例えば、アップ制御の開始条件が成立した場合にタンク圧センサ90によって検出されたタンク圧PTから、制御対象輪の車高センサ93によって検出された実車高H*に基づいて推定されるチャンバ圧Pchを引いた値(PT−Pch)に基づいて決まる値とすることができる。
【0038】
その場合の一例を
図14のフローチャートで表す。S41において、回路弁61,62が閉、回路弁63,64が開とされて、
図5に示す状態とされる。S42において、通路圧センサ91によって検出された通路圧Psがアップ開始時設定圧Psaより高くなったか否か、S43において、タンク圧センサ90によって検出されたタンク圧の減少量ΔPTが設定減少量ΔPTaより大きくなったか否かが判定される。いずれか一方の判定がYESになった場合には、S44において、車高制御弁26が開とされる。
【0039】
このように、本実施例においては、アップ制御の開始時に、より一層、エア室19から共通通路22へエアが排出され難くすることができる。そのため、意図しない車高の低下を良好に抑制することができ、スムーズなアップ制御が行われるようにすることができる。
【0040】
ダウン開始時制御についても同様に、
図6の状態において、通路圧センサ91によって検出された通路圧Psがダウン開始時設定圧Psdより低くなった場合、または、タンク圧センサ90によって検出されたタンク圧の増加量ΔPTが設定増加量ΔPTdより大きくなった場合に、車高制御弁26が開に切り換えられるようにすることができる。
ダウン開始時設定圧Psdは、例えば、ダウン制御の開始条件が成立した場合の、制御対象輪のチャンバ圧Pch以下の値としたり、標準チャンバ圧Pcs以下の値としたりすること等もできる。
設定増加量ΔPTdは、例えば、ダウン制御の開始条件が成立した場合のタンク圧センサ90によって検出されたタンク圧PTから、制御対象輪の実車高H*に基づいて推定されるチャンバ圧Pchを引いた値(PT−Pch)に基づいて決まる値とすることができる。
【0041】
その場合の一例を
図15のフローチャートで表す。S51,52において、回路弁61,64が閉、回路弁62,63が開とされ、コンプレッサ装置30が始動させられて、
図6に示す状態とされる。S53において、通路圧Psがダウン開始時設定圧Psdより低くなったか否か、S54において、タンク圧の増加量ΔPTが設定増加量ΔPTdより大きくなったか否かが判定される。いずれか一方の判定がYESになった場合には、S55において、車高制御弁26が開とされる。
【0042】
このように、本実施例においては、ダウン制御の開始時に、より一層、共通通路22からエア室19にエアが供給され難くすることができる。そのため、意図しない車高の上昇を良好に抑制することができ、スムーズなダウン制御が行われるようにすることができる。
【0043】
なお、設定減少量ΔPTaと設定増加量ΔPTdとは、それぞれ、固定値であっても可変値であってもよい。また、互いに同じ値であっても異なる値であってもよい。
また、アップ制御時には、回路弁61〜64のすべてが開とされるようにしたり、回路弁63,64が閉、回路弁61,62が開とされるようにしたりすることができる。また、回路弁62,63が閉、回路弁61,64が開とされるとともに、コンプレッサ装置30が作動させられるようにすることができる。アップ開始時制御についても同様に、回路弁61〜64のすべてが開とされるようにしたり、回路弁63,64が閉、回路弁61,62が開とされるようにしたりすることができる。また、回路弁62,63が閉、回路弁61,64が開とされるとともに、コンプレッサ装置30が作動させられるようにすることができる。この場合には、共通通路22にタンク40とコンプレッサ40とが連通させられることになる。
その他、本発明は、上述に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0044】
2:エアシリンダ 4:ショックアブソーバ 19:チャンバ 22:共通通路 24:エア給排装置 30:コンプレッサ装置 34:タンク 40:コンプレッサ 80:車高制御ECU 90:タンク圧センサ 91:通路圧センサ 93:車高センサ
【0045】
以下の各項に、特許請求可能な発明について説明する。
(1)流体を吸引するコンプレッサと、前記流体を収容するタンクとを備えた流体給排装置と、
その流体給排装置に接続されたアクチュエータ側通路と、
車輪に対応して設けられ、前記アクチュエータ側通路に車高制御弁を介して接続された車高制御アクチュエータと、
前記流体給排装置と前記車高制御弁とを制御することにより、前記車高制御アクチュエータにおける前記流体の供給と排出とを制御して、前記車輪についての車高を制御する車高制御部と
を含む車高制御システムであって、
前記車高制御部が、前記車高の制御の開始時に、前記車高制御弁の閉状態において、前記タンクと前記コンプレッサとの少なくとも一方と、前記アクチュエータ側通路とを連通させ、その後に、前記車高制御弁を開とする開始時制御部を含む車高制御システム。
【0046】
(2)前記開始時制御部が、前記車高制御弁が閉、かつ、前記タンクと前記コンプレッサとの少なくとも一方と、前記アクチュエータ側通路とが連通させられた状態を設定時間以上保持した後に、前記車高制御弁を開とするものである(1)項に記載の車高制御システム。
車高を高くするアップ制御が行われる場合の設定時間と車高を低くするダウン制御が行われる場合の設定時間とは同じ長さであっても異なる長さであってもよい。
【0047】
(3)前記流体給排装置が、前記タンクと前記コンプレッサとの少なくとも一方と、前記アクチュエータ側通路との間に設けられた1つ以上の電磁弁を備えた電磁弁装置を含み、
前記開始時制御部が、前記車高制御弁が閉である状態で、前記電磁弁装置に含まれる前記1つ以上の電磁弁のうちの少なくとも1つを開とするものである(1)項または(2)項に記載の車高制御システム。
【0048】
(4)前記車高制御部が、前記車高を高くするアップ制御を行うものであり、
前記流体給排装置が、前記タンクと前記アクチュエータ側通路とを接続するタンク圧供給通路を含み、
前記電磁弁装置が、前記タンク圧供給通路に設けられた少なくとも1つのタンク圧供給弁を含み、
前記開始時制御部が、前記アップ制御の開始時に、前記車高制御弁の閉状態において、前記少なくとも1つのタンク圧供給弁を開として、前記アクチュエータ側通路を前記タンクに連通させるものである(3)項に記載の車高制御システム。
【0049】
(5)当該車高制御システムが、前記アクチュエータ側通路に設けられ、前記アクチュエータ側通路の流体の圧力である通路圧を検出する通路圧センサを含み、
前記開始時制御部が、前記車高制御弁が閉、前記少なくとも1つのタンク圧供給弁が開である状態において、前記通路圧センサによって検出された前記通路圧がアップ開始時設定圧より高くなった場合に、前記車高制御弁を開とするものである(4)項に記載の車高制御システム。
【0050】
(6)当該車高制御システムが、前記タンクに蓄えられた流体の圧力であるタンク圧を検出するタンク圧センサを含み、
前記開始時制御部が、前記車高制御弁が閉、前記少なくとも1つのタンク圧供給弁が開である状態において前記タンク圧センサによって検出された前記タンク圧の減少量が設定減少量より大きくなった場合に、前記車高制御弁を開とするものである(4)項または(5)項に記載の車高制御システム。
【0051】
(7)前記車高制御部が、前記車高を低くするダウン制御を行うものであり、
前記流体給排装置が、前記コンプレッサの吸引側部と前記アクチュエータ側通路とを接続する吸引通路を含み、
前記電磁弁装置が、前記吸入通路に設けられた少なくとも1つの吸引側電磁弁を含み、
前記開始時制御部が、前記ダウン制御の開始時に、前記車高制御弁の閉状態において、前記少なくとも1つの吸引側電磁弁を開とするとともに前記コンプレッサを始動させるものである(3)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の車高制御システム。
アクチュエータ側通路は、コンプレッサの吸入側に接続される。アクチュエータ側通路の車高制御弁より流体給排装置側の部分の流体はコンプレッサにより吸引され、流体圧が低くなる。コンプレッサに吸引された流体はタンクに戻されても排気されてもよい。
【0052】
(8)当該車高制御システムが、前記アクチュエータ側通路に設けられ、前記アクチュエータ側通路の流体の圧力である通路圧を検出する通路圧センサを含み、
前記開始時制御部が、前記車高制御弁が閉、前記少なくとも1つの吸引側電磁弁が開、前記コンプレッサの作動状態において、前記通路圧センサによって検出された前記通路圧がダウン開始時設定圧より低くなった場合に、前記車高制御弁を開とするものである(7)項に記載の車高制御システム。
【0053】
(9)前記流体給排装置が、前記コンプレッサの吸引側部と前記アクチュエータ側通路とを接続する吸引通路と、前記コンプレッサの吐出側部と前記タンクとを接続する吐出通路とを含み、
前記電磁弁装置が、前記吸入通路に設けられた少なくとも1つの吸引側電磁弁と、前記吐出通路に設けられた少なくとも1つの吐出側電磁弁とを含み、
前記開始時制御部が、前記車高制御弁を閉、前記少なくとも1つの吸引側電磁弁および前記少なくとも1つの吐出側電磁弁を開とし、前記コンプレッサを始動させるものである(7)項または(8)項に記載の車高制御システム。
【0054】
(10)当該車高制御システムが、前記タンクに蓄えられた流体の圧力であるタンク圧を検出するタンク圧センサを含み、
前記開始時制御部が、前記車高制御弁が閉、前記少なくとも1つの吸引側電磁弁および前記少なくとも1つの吐出側電磁弁が開、前記コンプレッサの作動状態において、前記タンク圧センサによって検出された前記タンク圧の増加量が設定増加量より大きくなった場合に、前記車高制御弁を開とするものである(9)項に記載の車高制御システム。
【0055】
(11)前記車高制御部が、前記車高を高くするアップ制御を行うものであり、
前記流体給排装置が、前記コンプレッサの吐出側と前記アクチュエータ側通路とを接続するコンプレッサ圧供給通路と、前記タンクと前記コンプレッサの吸引側とを接続するタンク圧吸引通路とを含み、
前記電磁弁装置が、前記コンプレッサ圧供給通路に設けられた少なくとも1つのコンプレッサ圧供給弁と、前記タンク圧吸引通路に設けられた少なくとも1つのタンク圧吸引側電磁弁とを含み、
前記開始時制御部が、前記アップ制御の開始時に、前記車高制御弁の閉状態において、前記少なくとも1つのコンプレッサ圧供給弁を開、前記少なくとも1つのタンク圧吸引側電磁弁を開として、前記アクチュエータ側通路を前記タンクと前記コンプレッサの吐出側とに連通させるものである(3)項に記載の車高制御システム。
コンプレッサ圧供給通路が、第4通路66、第2通路52の第4通路66との接続部より共通通路側の部分等により構成され、タンク圧吸引通路が、タンク通路48、第3通路65、第1通路50の第3通路65のタンク側の部分等により構成される。また、コンプレッサ圧供給弁が、回路弁64に対応し、タンク圧吸引側電磁弁が回路弁61に対応する。本項に記載の車高制御システムには、(5)項に記載の技術的特徴を採用することができる。
【0056】
(12)当該車高制御システムが、前記車高制御アクチュエータを複数含み、
前記アクチュエータ側通路が、共通通路を含み、
前記複数の車高制御アクチュエータが、それぞれ、前記個別通路を介して前記共通通路に接続され、
前記車高制御弁が、前記個別通路にそれぞれ設けられた(1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載の車高制御システム。
アクチュエータ側通路は、共通通路を含むものであると考えたり、共通通路と、個別通路の車高制御弁が設けられた部分より共通通路側の部分とを含むものであると考えたりすること等ができる。