特許第6603255号(P6603255)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファナック株式会社の特許一覧

特許6603255ロボットシステムおよびロボット制御方法
<>
  • 特許6603255-ロボットシステムおよびロボット制御方法 図000002
  • 特許6603255-ロボットシステムおよびロボット制御方法 図000003
  • 特許6603255-ロボットシステムおよびロボット制御方法 図000004
  • 特許6603255-ロボットシステムおよびロボット制御方法 図000005
  • 特許6603255-ロボットシステムおよびロボット制御方法 図000006
  • 特許6603255-ロボットシステムおよびロボット制御方法 図000007
  • 特許6603255-ロボットシステムおよびロボット制御方法 図000008
  • 特許6603255-ロボットシステムおよびロボット制御方法 図000009
  • 特許6603255-ロボットシステムおよびロボット制御方法 図000010
  • 特許6603255-ロボットシステムおよびロボット制御方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603255
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】ロボットシステムおよびロボット制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20191028BHJP
【FI】
   B25J19/06
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-47454(P2017-47454)
(22)【出願日】2017年3月13日
(65)【公開番号】特開2018-149627(P2018-149627A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2018年4月12日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】山本 知之
(72)【発明者】
【氏名】大島 尚
【審査官】 稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−208002(JP,A)
【文献】 特開2010−052114(JP,A)
【文献】 特開2014−006577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットと、該ロボットを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置が、
前記ロボットおよび該ロボットに取り付けられた付属部材を包含し前記ロボットと共に動作する前記ロボットの立体モデルからなり前記ロボットの速度が高いほど大きくなるロボット包含領域、前記ロボットの周辺に配置される進入禁止領域および該進入禁止領域の前記ロボット側を覆う位置に配置される速度制限領域を生成する領域生成部と、
該領域生成部により生成された前記ロボット包含領域が、前記進入禁止領域または前記速度制限領域に進入したか否かを検出する進入検出部と、
該進入検出部により前記ロボット包含領域が前記速度制限領域に進入したことが検出された場合に、前記ロボットの動作速度を低下させる速度制限部と、
前記進入検出部により前記ロボット包含領域が前記進入禁止領域に進入したことが検出された場合に、前記ロボットを直ちに停止させる動力遮断部とを備えるロボットシステム。
【請求項2】
前記領域生成部が、ロボット停止指令が入力された場合の推定停止位置を前記ロボットの位置および速度に基づいて推定する停止位置推定部と、該停止位置推定部により推定された前記推定停止位置を含むように前記ロボット包含領域の大きさを調整する包含領域調整部とを備える請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
ロボットと、該ロボットを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置が、
前記ロボットの現在位置および現在速度に基づいて、所定時間後の推定未来速度および推定未来位置を推定する未来位置速度推定部と、
前記ロボットおよび該ロボットに取り付けられた付属部材を包含し前記ロボットと共に動作する前記ロボットの立体モデルからな前記現在位置および前記推定未来位置の各々におけるロボット包含領域と、前記ロボットの周辺に配置される進入禁止領域を生成する領域生成部と、
前記領域生成部により生成された前記現在位置および前記推定未来位置の各々における前記ロボット包含領域が、前記進入禁止領域に進入したか否かを検出する進入検出部と、
該進入検出部により前記現在位置における前記ロボット包含領域が前記進入禁止領域に進入したことが検出された場合に、前記ロボットを直ちに停止させる動力遮断部と、
前記進入検出部により前記推定未来位置における前記ロボット包含領域が前記進入禁止領域に進入することが検出された場合に前記ロボットの動作速度を低下させる速度制限部とを備え、
前記領域生成部が、
ロボット停止指令が入力された場合の現在および前記所定時間後の各々における推定停止位置を前記ロボットの現在位置および現在速度に基づいて、または前記推定未来位置および前記推定未来速度に基づいて、推定する停止位置推定部と、
該停止位置推定部により推定された前記推定停止位置を含むように、前記現在位置および前記推定未来位置の各々における前記ロボット包含領域の大きさを調整する包含領域調整部とを備えるロボットシステム。
【請求項4】
前記制御装置が動作プログラムに従って前記ロボットを動作させ、
前記未来位置速度推定部が、前記動作プログラムから前記推定未来速度および前記推定未来位置を算出する請求項3に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記速度制限部が、所定の割合で前記ロボットの動作速度を低下させる請求項1から請求項4のいずれかに記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記速度制限部は、前記進入検出部により、前記推定未来位置に基づいて前記停止位置推定部により推定された前記推定停止位置を含む前記ロボット包含領域が前記進入禁止領域に進入したことが検出された場合に、前記推定未来位置における前記ロボット包含領域が前記進入禁止領域に進入しない上限速度以下の速度に前記ロボットの動作速度を低下させる請求項3または請求項4に記載のロボットシステム。
【請求項7】
ロボットおよび該ロボットに取り付けられた付属部材を包含し前記ロボットと共に動作する前記ロボットの立体モデルからなり前記ロボットの速度が高いほど大きくなるロボット包含領域、前記ロボットの周辺に配置される進入禁止領域および該進入禁止領域の前記ロボット側を覆う位置に配置される速度制限領域を生成する領域生成ステップと、
該領域生成ステップにより生成された前記ロボット包含領域が、前記進入禁止領域または前記速度制限領域に進入したか否かを検出する進入検出ステップと、
該進入検出ステップにより前記ロボット包含領域が前記速度制限領域に進入したことが検出された場合に、前記ロボットの動作速度を低下させる速度制限ステップと、
前記進入検出ステップにより前記ロボット包含領域が前記進入禁止領域に進入したことが検出された場合に、前記ロボットを直ちに停止させる動力遮断ステップとを含むロボット制御方法。
【請求項8】
ロボットの現在位置および現在速度に基づいて、所定時間後の推定未来速度および推定未来位置を推定する未来位置速度推定ステップと、
前記ロボットおよび該ロボットに取り付けられた付属部材を包含し前記ロボットと共に動作する前記ロボットの立体モデルからな前記現在位置および前記推定未来位置の各々におけるロボット包含領域と、前記ロボットの周辺に配置される進入禁止領域を生成する領域生成ステップと、
前記領域生成ステップにより生成された前記現在位置および前記推定未来位置の各々における前記ロボット包含領域が、前記進入禁止領域に進入したか否かを検出する進入検出ステップと、
該進入検出ステップにより前記現在位置における前記ロボット包含領域が前記進入禁止領域に進入したことが検出された場合に、前記ロボットを直ちに停止させる動力遮断ステップと、
前記進入検出ステップにより前記推定未来位置における前記ロボット包含領域が前記進入禁止領域に進入することが検出された場合に前記ロボットの動作速度を低下させる速度制限ステップとを含み、
前記領域生成ステップが、
ロボット停止指令が入力された場合の現在および前記所定時間後の各々における推定停止位置を前記ロボットの現在位置および現在速度に基づいて、または前記推定未来位置および前記推定未来速度に基づいて、推定する停止位置推定ステップと、
該停止位置推定ステップにより推定された前記推定停止位置を含むように、前記現在位置および前記推定未来位置の各々における前記ロボット包含領域の大きさを調整する包含領域調整ステップとを含むロボット制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットシステムおよびロボット制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットのアームや手首に備えたワークやツールを含めたアーム占有領域をロボットの周囲に定義しておき、ロボットを緊急停止した場合の惰走予測位置を求めて、惰走予測位置におけるアーム占有領域と仮想安全防護柵とが接触した場合に直ちにロボットを停止するロボットシステムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−212831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ロボットの速度が高くなるとロボットの惰走距離が大きくなるので、ロボットの速度が高いほど、アーム占有領域が仮想安全防護柵と接触する可能性が高くなり、ロボットを緊急停止させてしまうので、ロボットを高速動作させる場合には、ロボットの動作範囲を広く確保することが困難であるという不都合がある。これを回避するために仮想安全防護柵の近傍におけるロボットの動作速度を低くするようにプログラムを記述する場合には、プログラムが複雑となり、確認にも時間がかかるという不都合がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、プログラムを複雑にすることなく、ロボットの動作範囲を広く確保しながら、ロボットを効率よく動作させることができるロボットシステムおよびロボット制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、ロボットと、該ロボットを制御する制御装置とを備え、前記制御装置が、前記ロボットおよび該ロボットに取り付けられた付属部材を包含し前記ロボットと共に動作する前記ロボットの立体モデルからなり前記ロボットの速度が高いほど大きくなるロボット包含領域、前記ロボットの周辺に配置される進入禁止領域および該進入禁止領域の前記ロボット側を覆う位置に配置される速度制限領域を生成する領域生成部と、該領域生成部により生成された前記ロボット包含領域が、前記進入禁止領域または前記速度制限領域に進入したか否かを検出する進入検出部と、該進入検出部により前記ロボット包含領域が前記速度制限領域に進入したことが検出された場合に、前記ロボットの動作速度を低下させる速度制限部と、前記進入検出部により前記ロボット包含領域が前記進入禁止領域に進入したことが検出された場合に、前記ロボットを直ちに停止させる動力遮断部とを備えるロボットシステムを提供する。
【0007】
本態様によれば、制御装置に備えられた領域生成部により、ロボットおよび付属部材を包含するロボット包含領域と、ロボットの周辺に配置される進入禁止領域と、該進入禁止領域のロボット側を覆う速度制限領域が生成される。そして、制御装置によるロボットの動作中に、進入検出部によりロボット包含領域が進入禁止領域または速度制限領域に進入したか否かが監視される。
【0008】
進入検出部によりロボット包含領域が進入禁止領域に進入したことが検出された場合には動力遮断部の作動によりロボットが直ちに停止させられる。ロボットの動作速度が高いほど、ロボット包含領域が大きく生成されるので、早い段階で進入禁止領域への進入を検出することができる。また、進入検出部によりロボット包含領域が速度制限領域に進入したことが検出された場合には速度制限部によってロボットの動作速度が低下させられる。これにより、領域生成部により生成されるロボット包含領域が縮小されるので、進入禁止領域への進入が回避される。そして、これにより、プログラムを複雑にすることなく、ロボットの動作範囲を広く確保しながら、ロボットを停止させる頻度を低減して効率よく動作させることができる。
【0009】
上記態様においては、前記領域生成部が、ロボット停止指令が入力された場合の推定停止位置を前記ロボットの位置および速度に基づいて推定する停止位置推定部と、該停止位置推定部により推定された前記推定停止位置を含むように前記ロボット包含領域の大きさを調整する包含領域調整部とを備えていてもよい。
このようにすることで、ロボットの速度が高くなると現在位置から推定停止位置までの距離が長くなるので、包含領域調整部により推定停止位置を含むように調整されるロボット包含領域の大きさを、ロボットの速度が高くなるほど拡大することができ、ロボット停止指令に基づくロボットの停止位置が進入禁止領域に進入しないようにすることができる。
【0010】
また、本発明の他の態様は、ロボットと、該ロボットを制御する制御装置とを備え、前記制御装置が、前記ロボットの現在位置および現在速度に基づいて、所定時間後の推定未来速度および推定未来位置を推定する未来位置速度推定部と、前記ロボットおよび該ロボットに取り付けられた付属部材を包含し前記ロボットと共に動作する前記ロボットの立体モデルからな前記現在位置および前記推定未来位置の各々におけるロボット包含領域と、前記ロボットの周辺に配置される進入禁止領域を生成する領域生成部と、前記領域生成部により生成された前記現在位置および前記推定未来位置の各々における前記ロボット包含領域が、前記進入禁止領域に進入したか否かを検出する進入検出部と、該進入検出部により前記現在位置における前記ロボット包含領域が前記進入禁止領域に進入したことが検出された場合に、前記ロボットを直ちに停止させる動力遮断部と、前記進入検出部により前記推定未来位置における前記ロボット包含領域が前記進入禁止領域に進入することが検出された場合に前記ロボットの動作速度を低下させる速度制限部とを備え、前記領域生成部が、ロボット停止指令が入力された場合の現在および前記所定時間後の各々における推定停止位置を前記ロボットの現在位置および現在速度に基づいて、または前記推定未来位置および前記推定未来速度に基づいて、推定する停止位置推定部と、該停止位置推定部により推定された前記推定停止位置を含むように、前記現在位置および前記推定未来位置の各々における前記ロボット包含領域の大きさを調整する包含領域調整部とを備えるロボットシステムを提供する。
【0011】
本態様によれば、制御装置に備えられた領域生成部により、ロボットおよび付属部材を包含するロボット包含領域と、ロボットの周辺に配置される進入禁止領域とが生成される。そして、制御装置によるロボットの動作中に、進入検出部によりロボット包含領域が進入禁止領域に進入したか否かが監視される。
【0012】
進入検出部により現在位置のロボット包含領域が進入禁止領域に進入したことが検出された場合には動力遮断部の作動によりロボットが直ちに停止させられる。ロボットの速度が高くなると現在位置から推定停止位置までの距離が長くなるので、包含領域調整部により推定停止位置を含むように調整されるロボット包含領域の大きさを、ロボットの速度が高くなるほど拡大することができ、ロボット停止指令に基づくロボットの停止位置が進入禁止領域に進入しないようにすることができる。
【0013】
また、未来位置速度推定部により推定された推定未来速度および推定未来位置に基づいて、停止位置推定部により推定された推定未来位置における推定停止位置を含むロボット包含領域が進入禁止領域に進入したことが進入検出部により検出された場合には、速度制限部によってロボットの動作速度が低下させられる。これにより、ロボット包含領域が縮小されるので、進入禁止領域への進入の確率を低減することができ、プログラムを複雑にすることなく、ロボットの動作範囲を広く確保しながら、ロボットを停止させる頻度を低減して効率よく動作させることができる。
【0014】
上記態様においては、前記制御装置が動作プログラムに従って前記ロボットを動作させ、前記未来位置速度推定部が、前記動作プログラムから前記推定未来速度および前記推定未来位置を算出してもよい。
このようにすることで、ロボットの推定速度および推定位置を動作プログラムから精度よく推定することができる。
【0015】
また、上記態様においては、前記速度制限部が、所定の割合で前記ロボットの動作速度を低下させてもよい。
このようにすることで、簡易に動作速度を低下させて、プログラムを複雑にすることなく、ロボットの動作範囲を広く確保しながら、ロボットを停止させる頻度を低減して効率よく動作させることができる。
【0016】
また、上記態様においては、前記速度制限部は、前記進入検出部により、前記推定未来位置に基づいて前記停止位置推定部により推定された前記推定停止位置を含む前記ロボット包含領域が前記進入禁止領域に進入したことが検出された場合に、前記推定未来位置における前記ロボット包含領域が前記進入禁止領域に進入しない上限速度以下の速度に前記ロボットの動作速度を低下させてもよい。
【0017】
このようにすることで、速度制限部による減速後のロボットの動作速度を上限速度に近接させることにより、ロボットの動作速度を必要以上に低下させずに、プログラムを複雑にすることなく、ロボットの動作範囲を最大限に広く確保しながら、ロボットを停止させる頻度を低減して効率よく動作させることができる。
【0018】
また、本発明の他の態様は、ロボットおよび該ロボットに取り付けられた付属部材を包含し前記ロボットと共に動作する前記ロボットの立体モデルからなり前記ロボットの速度が高いほど大きくなるロボット包含領域、前記ロボットの周辺に配置される進入禁止領域および該進入禁止領域の前記ロボット側を覆う位置に配置される速度制限領域を生成する領域生成ステップと、該領域生成ステップにより生成された前記ロボット包含領域が、前記進入禁止領域または前記速度制限領域に進入したか否かを検出する進入検出ステップと、該進入検出ステップにより前記ロボット包含領域が前記速度制限領域に進入したことが検出された場合に、前記ロボットの動作速度を低下させる速度制限ステップと、前記進入検出ステップにより前記ロボット包含領域が前記進入禁止領域に進入したことが検出された場合に、前記ロボットを直ちに停止させる動力遮断ステップとを含むロボット制御方法を提供する。
【0019】
また、本発明の他の態様は、ロボットの現在位置および現在速度に基づいて、所定時間後の推定未来速度および推定未来位置を推定する未来位置速度推定ステップと、前記ロボットおよび該ロボットに取り付けられた付属部材を包含し前記ロボットと共に動作する前記ロボットの立体モデルからな前記現在位置および前記推定未来位置の各々におけるロボット包含領域と、前記ロボットの周辺に配置される進入禁止領域を生成する領域生成ステップと、前記領域生成ステップにより生成された前記現在位置および前記推定未来位置の各々における前記ロボット包含領域が、前記進入禁止領域に進入したか否かを検出する進入検出ステップと、該進入検出ステップにより前記現在位置における前記ロボット包含領域が前記進入禁止領域に進入したことが検出された場合に、前記ロボットを直ちに停止させる動力遮断ステップと、前記進入検出ステップにより前記推定未来位置における前記ロボット包含領域が前記進入禁止領域に進入することが検出された場合に前記ロボットの動作速度を低下させる速度制限ステップとを含み、前記領域生成ステップが、ロボット停止指令が入力された場合の現在および前記所定時間後の各々における推定停止位置を前記ロボットの現在位置および現在速度に基づいて、または前記推定未来位置および前記推定未来速度に基づいて、推定する停止位置推定ステップと、該停止位置推定ステップにより推定された前記推定停止位置を含むように、前記現在位置および前記推定未来位置の各々における前記ロボット包含領域の大きさを調整する包含領域調整ステップとを含むロボット制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、プログラムを複雑にすることなく、ロボットの動作範囲を広く確保しながら、ロボットを効率よく動作させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施形態に係るロボットシステムを示すブロック図である。
図2図1のロボットシステムを示す平面図である。
図3図2のロボットシステムにおいてロボット包含領域が速度制限領域に進入した状態を示す平面図である。
図4】速度制限領域が生成されていない場合のロボットシステムの参考例を示す平面図である。
図5図1のロボットシステムによるロボット制御方法を説明するフローチャートである。
図6】本発明の第2の実施形態に係るロボットシステムを示すブロック図である。
図7図6のロボットシステムにおいて未来位置におけるロボット包含領域が進入禁止領域に進入した状態を示す平面図である。
図8図7のロボットシステムにおいて速度制限後の状態を示す平面図である。
図9図6のロボットシステムによるロボット制御方法を説明するフローチャートである。
図10図6のロボットシステムの変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係るロボットシステム1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るロボットシステム1は、図1に示されるように、ロボット2と、該ロボット2を制御する制御装置3とを備えている。
【0023】
ロボット2は1以上のリンクと該リンクを駆動するモータ4とを備え、各モータ4には回転角度位置を検出するエンコーダ5が備えられている。
制御装置3は、ユーザが入力を行う入力部6と、該入力部6への入力に基づいて領域を生成する領域生成部(領域生成部、包含領域調整部)7とを備えている。
【0024】
領域生成部7は、図2に示されるように、ロボット2およびロボット2に取り付けたハンドあるいはワーク等の付属部材を包含するロボット包含領域X、ロボット2の周辺に配置されロボット2が進入できない領域である進入禁止領域Yおよび進入禁止領域Yのロボット2側に隣接する範囲を覆うように配置される速度制限領域Zとを生成するようになっている。
【0025】
ロボット包含領域Xは、例えば、図2に示すような直方体、あるいは円柱、球等の単純な形状の立体モデルおよびそれらを組み合わせた立体モデルにより構成される。図2においては、立体モデルは直方体を例示している。ユーザが使用する立体モデルを選択し、該立体モデルが固定されるロボット2上の座標を指定することにより、ロボット2および付属部材を包含し、ロボット2と共に動作するロボット包含領域Xを簡易に生成することができるようになっている。
【0026】
また、選択された立体モデルからなるロボット包含領域Xは、ロボット2の動作速度に応じてその大きさが変動するようになっている。ロボット2の動作速度が高いほど、ロボット包含領域Xの大きさは大きく、ロボット2の動作速度が低いほど、ロボット包含領域Xの大きさが小さくなるように生成される。
【0027】
進入禁止領域Yは、作業者が作業をする領域、あるいは、周辺装置が配置されている領域のように、ロボット2の進入を禁止すべき領域であり、ユーザが座標設定することにより生成することができるようになっている。
速度制限領域Zは、例えば、図2にハッチングで示されるように、進入禁止領域Yが生成されたときに、進入禁止領域Yからロボット2側に所定の厚さ寸法にわたって自動的に設けられるようになっている。
【0028】
制御装置3には、エンコーダ5により検出された回転角度位置に基づいて、ロボット2の現在位置、速度および移動方向を算出する位置速度算出部8と、該位置速度算出部8により算出されたロボット2の現在位置における速度および移動方向に基づいて、ロボット停止指令が入力された場合の推定停止位置を算出する停止位置推定部(領域生成部)9とを備えている。推定停止位置は、ロボット2の惰走距離によって変化するので、ロボット2の動作速度が高いほど現在位置から離れた位置に算出されるようになっている。
【0029】
領域生成部7は、停止位置推定部9により算出された推定停止位置が含まれるようにロボット包含領域Xを生成するようになっている。上述したように、現在位置から推定停止位置間での距離はロボット2の動作速度が高いほど長くなるので、ロボット包含領域Xはロボット2の動作速度が高いほど大きくなるように調整して生成される。
【0030】
また、制御装置3には、領域生成部7により生成されたロボット包含領域Xが、進入禁止領域Yまたは速度制限領域Zに進入したか否かを検出する進入検出部10と、該進入検出部10により、ロボット包含領域Xが進入禁止領域Yに進入したことが検出された場合にモータ電源11からサーボアンプ12への動力の供給を遮断する動力遮断部13と、進入検出部10により、ロボット包含領域Xが速度制限領域Zに進入したことが検出された場合に、ロボット2の動作速度を低下させる速度制限部14とを備えている。
【0031】
図中符号15は制御装置3に設けられて、教示された動作プログラムに従ってロボット2の各軸のモータ4を駆動する動作指令信号を出力する動作指令部である。
【0032】
このように構成された本実施形態に係るロボットシステム1におけるロボット制御方法について以下に説明する。
本実施形態に係るロボット制御方法は、図5に示されるように、領域生成部7によりロボット包含領域Xおよび進入禁止領域Yを設定する領域設定ステップ(領域生成ステップ)S1と、設定された進入禁止領域Yに基づいて速度制限領域Zを生成する領域生成ステップ(領域生成ステップ)S2とを含んでいる。
【0033】
また、本実施形態に係るロボット制御方法は、エンコーダ5により検出されたモータ4の回転角度位置から、位置速度算出部8によりロボット2の位置および速度を算出するステップS3と、算出された位置および速度に基づいて停止位置推定部9により推定停止位置を算出する停止位置推定ステップ(領域生成ステップ)S4とを含んでいる。
【0034】
また、本実施形態に係るロボット制御方法は、停止位置推定部9により推定された推定停止位置に基づいてロボット包含領域Xの大きさを調整する包含領域調整ステップ(領域生成ステップ)S5と、調整されたロボット包含領域Xが進入禁止領域Yに進入したか否かを検出する第1の進入検出ステップ(進入検出ステップ)S6と、進入禁止領域Yに進入したことが検出された場合に動力遮断部13によりサーボアンプ12への動力供給を遮断する動力遮断ステップS7とを含んでいる。
【0035】
さらに、本実施形態に係るロボット制御方法は、第1の進入検出ステップS6において、進入禁止領域Yに進入していないことが検出された場合に、ロボット包含領域Xが速度制限領域Zに進入したか否かを検出する第2の進入検出ステップ(進入検出ステップ)S8と、速度制限領域Zに進入したことが検出された場合に速度制限部14によりロボット2の動作速度を低下させる速度制限ステップS9とを含んでいる。そして、速度制限が実施された場合、および、速度制限領域Zにも進入していない場合には、終了するか否かが確認されて(ステップS10)、終了しない場合にはステップS2からの工程が繰り返される。
【0036】
例えば、図2に示す例において、ロボット2がA地点からB地点にワークを搬送する場合において、A地点とB地点との間でロボット2の動作速度が高くなるため、停止位置推定部9により推定される推定停止位置が現在位置から遠くなり、ロボット包含領域Xが比較的大きく生成される。この場合において、図4に示されるように、速度制限領域Zが生成されていない状態で高い動作速度のままB地点近傍まで移動した場合には、ロボット包含領域Xが進入禁止領域Yに進入し、ロボット2が緊急停止させられる。
【0037】
これに対して、本実施形態に係るロボットシステム1およびロボット制御方法によれば、ロボット包含領域XはA地点からB地点に至る手前で、進入禁止領域Yを覆うように生成された速度制限領域Zに進入するので、ロボット2の動作速度が低下させられる。その結果、図3に示されるように、ロボット包含領域Xは、動作速度の低下に伴って小さくなるので、図4と同じ位置まで移動しても進入禁止領域Yに進入することがなく、ロボット2の緊急停止を回避することができる。
【0038】
このように本実施形態に係るロボットシステム1およびロボット制御方法によれば、ロボット2の頻繁な緊急停止を回避することができて、ロボット2による作業効率を向上することができるという利点がある。この場合に、ロボット2が進入禁止領域Yに進入しないように動作プログラムの教示等によってロボット2の動作速度を設定していく必要がなく、教示プログラムの複雑化を防止できるとともに、教示作業を容易にすることができるという利点がある。
また、ロボット2を進入禁止領域Yのより近くまで移動させることができ、動作範囲を拡大して作業性を向上することができるという利点がある。
【0039】
次に、本発明の第2の実施形態に係るロボットシステム16について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係るロボットシステム1と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0040】
本実施形態に係るロボットシステム16は、図6に示されるように、位置速度算出部8により算出されたロボット2の現在位置および速度に基づいて、所定時間後の未来位置および未来速度を推定する未来位置速度推定部17を備えている。
そして、停止位置推定部9は、図7に示されるように、ロボット2の現在位置および未来位置のそれぞれについて推定停止位置を算出するようになっている。
【0041】
本実施形態においては、領域生成部7は、進入禁止領域Yとロボット包含領域X1,X2とを生成するようになっている。ロボット包含領域X1,X2は、停止位置推定部9により算出されたロボット2の現在位置および未来位置における推定停止位置に基づいて、それぞれ生成されるようになっている。
【0042】
そして、進入検出部10は、領域生成部7により生成された現在位置のロボット包含領域X1が進入禁止領域Yに進入したか否かおよび領域生成部7により生成された未来位置のロボット包含領域X2が進入禁止領域Yに進入したか否かを検出するようになっている。
進入検出部10は、現在位置のロボット包含領域X1が進入禁止領域Yに進入したことが検出された場合に、動力遮断部13によってモータ電源11からの動力を遮断することは第1の実施形態と同様である。
【0043】
本実施形態においては、進入検出部10が、未来位置のロボット包含領域X2が進入禁止領域Yに進入したことが検出された場合に、速度制限部14によりロボット2の動作速度を低下させるようになっている。
【0044】
このように構成された本実施形態に係るロボットシステム16におけるロボット制御方法について以下に説明する。
本実施形態に係るロボット制御方法は、図9に示されるように、第1の実施形態における速度制限領域Zを生成する領域生成ステップS2がなく、代わりに、未来位置および未来速度を算出する未来位置速度推定ステップS11を含んでいる。
【0045】
また、ロボット包含領域が進入禁止領域Yに進入したか否かを検出する第1の進入検出ステップS6および速度制限領域Zに進入したか否かを検出する第2のステップS8に代えて、現在位置のロボット包含領域X1が進入禁止領域Yに進入したか否かを検出する第3の進入検出ステップ(進入検出ステップ)S12と、未来位置のロボット包含領域X2が進入禁止領域Yに進入したか否かを検出する第4の進入検出ステップ(進入検出ステップ)S13とを含んでいる。
【0046】
このように構成された本実施形態に係るロボットシステム16およびロボット制御方法によれば、ロボット2の動作中の各現在位置において、所定時間後の未来位置が算出されるとともに、未来位置におけるロボット包含領域X2が進入禁止領域Yに進入することが検出された場合に、未来位置におけるロボット2の動作速度を低下させる。これにより、図8に示されるように、未来位置におけるロボット2の動作速度を低下させない場合と比較して、未来位置におけるロボット包含領域X2を小さくして、進入禁止領域Yへの進入を回避し、ロボット2による作業効率を向上することができるという利点がある。
【0047】
この場合においても、ロボット2が進入禁止領域Yに進入しないように動作プログラムの教示等によってロボット2の動作速度を設定していく必要がなく、教示プログラムの複雑化を防止できるとともに、教示作業を容易にすることができるという利点がある。
また、ロボット2を進入禁止領域Yのより近くまで移動させることができ、動作範囲を拡大して作業性を向上することができるという利点がある。
【0048】
なお、本実施形態においては、エンコーダ5により検出されたモータ4の回転角度位置に基づいて、所定時間後の未来位置および未来速度を推定することとしたが、これに代えて、図10に示されるように、動作指令部15から出力される動作プログラムの情報から推定することにしてもよい。
【0049】
また、上記各実施形態においては、速度制限部14が、単に速度を低下させることとして説明したが、速度の低下のさせ方は、予め設定しておいた比率(例えば、50%等)で低下させることにしてもよいし、未来位置におけるロボット包含領域X2が進入禁止領域Yに進入しない上限速度を算出し、該上限速度まで速度を低下させることにしてもよい。
【0050】
所定の比率で低下させる場合には、処理が簡易であるという利点があり、上限速度まで低下させる場合には、ロボット2の動作速度を最大限に確保して作業効率を向上することができるという利点がある。
【符号の説明】
【0051】
1,16 ロボットシステム
2 ロボット
3 制御装置
7 領域生成部(領域生成部、包含領域調整部)
9 停止位置推定部(領域生成部)
10 進入検出部
13 動力遮断部
14 速度制限部
17 未来位置速度推定部
S1 領域設定ステップ(領域生成ステップ)
S2 領域生成ステップ(領域生成ステップ)
S4 停止位置推定ステップ(領域生成ステップ)
S5 包含領域調整ステップ(領域生成ステップ)
S6 第1の進入検出ステップ(進入検出ステップ)
S7 動力遮断ステップ
S8 第2の進入検出ステップ(進入検出ステップ)
S9 速度制限ステップ
S11 未来位置速度推定ステップ
S12 第3の進入検出ステップ(進入検出ステップ)
S13 第4の進入検出ステップ(進入検出ステップ)
X,X1,X2 ロボット包含領域
Y 進入禁止領域
Z 速度制限領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10