(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
23℃、相対湿度50%の環境下において、前記基材に対して100Vの電圧を10秒間印加したときの、前記基材における前記粘着剤層とは反対側の面の表面抵抗率が、1×107Ω/sq以上、5×1011Ω/sq以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の保護シート。
23℃、相対湿度50%の環境下において、前記剥離シートに対して100Vの電圧を10秒間印加したときの、前記剥離シートにおける前記粘着剤層側の面の表面抵抗率が、1×107Ω/sq以上、1×1011Ω/sq以下であることを特徴とする請求項4に記載の保護シート。
23℃、相対湿度50%の環境下において、前記剥離シートに対して100Vの電圧を10秒間印加したときの、前記剥離シートにおける前記粘着剤層とは反対側の面の表面抵抗率が、1×107Ω/sq以上、1×1011Ω/sq以下であることを特徴とする請求項4に記載の保護シート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る保護シートは、主としてデバイスの加工、組立、検査などの工程中、デバイスにおける表面の傷付き等を防止するために、デバイスを保護するのに用いられる。
【0024】
本実施形態に係る保護シートは、基材と、粘着剤層とを備えている。基材は、プラスチックフィルムと、当該プラスチックフィルムの少なくとも一方の面側に形成された帯電防止層とを有しており、粘着剤層は、その帯電防止層に接するように基材に積層されている。上記粘着剤層は、シリコーン系粘着剤からなる。
【0025】
本実施形態に係る保護シートでは、少なくともプラスチックフィルムと粘着剤層との間に帯電防止層を有することにより、剥離帯電圧を低く抑えることができる。したがって、粘着剤層から剥離シートを剥離して保護シートをデバイスに貼着するときや、当該保護シートをデバイスから剥離した時に、静電気に起因して空気中のゴミや塵がデバイスに付着することを抑制することができる。また、被着体であるデバイスがフレキシブルOLEDデバイスの場合でも上記の効果が得られ、さらには当該フレキシブルOLEDデバイスに静電気による損傷を与えることを防止することができる。
【0026】
また、シリコーン系粘着剤は、微粘着性にすることが容易であり、再剥離性に優れる。したがって、本実施形態に係る保護シートは、フレキシブルOLEDデバイス等の柔軟なフレキシブルデバイスからもスムーズに剥離することができる。
【0027】
さらに、シリコーン系粘着剤は、アクリル系粘着剤と比較して、高温下でも粘着力が安定しており、耐熱性に優れる。したがって、粘着剤層がシリコーン系粘着剤からなる本実施形態に係る保護シートは、当該保護シートが貼着されたOLEDデバイス等のデバイスが高温下(例えば90〜150℃)で検査されたときでも、粘着力が著しく高くなることが抑制され、保護シートを問題なく被着体から剥離することができる。
【0028】
また、本実施形態に係る保護シートは、上記のようにプラスチックフィルムと粘着剤層との間に帯電防止層を有することにより帯電防止性に優れるため、粘着剤層に帯電防止剤を添加する必要がない。シリコーン系粘着剤に一般的な帯電防止剤を添加してなる粘着剤層は、基材密着性が低くなるが、本実施形態に係る保護シートではそのような問題を回避し、粘着剤層の良好な基材密着性を確保することができる。したがって、本実施形態に係る保護シートは、製品としての安定性・信頼性が高く、また、被着体から保護シートを剥離したときに、被着体側に粘着剤が残存することを抑制することができる。
【0029】
以下、図面を参照して本実施形態の一例である保護シートを説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る保護シート1は、基材2と、粘着剤層3と、剥離シート4とを備えている。基材2は、プラスチックフィルム21と、プラスチックフィルム21における粘着剤層3側の面(
図1では下側の面)に形成された第1の帯電防止層22aとを有しており、プラスチックフィルム21における粘着剤層3とは反対の面(
図1では上側の面)に形成された第2の帯電防止層22bをさらに有することが好ましい。また、剥離シート4は、支持体41と、支持体41における粘着剤層3側の面(
図1では上側の面)に形成された第3の帯電防止層42aとを有することが好ましく、支持体41における粘着剤層3とは反対の面(
図1では下側の面)に形成された第4の帯電防止層42bをさらに有することが特に好ましい。粘着剤層3は、基材2の第1の帯電防止層22aに接するように基材2に積層されている。本実施形態における剥離シート4は、当該剥離シート4の第3の帯電防止層42aが粘着剤層3に接するように当該粘着剤層3に積層されている。
【0030】
なお、上記剥離シート4は、保護シート1の使用時まで粘着剤層3を保護するためのものであり、保護シート1の使用時に剥離除去される。本実施形態に係る保護シート1において、剥離シート4は省略されてもよい。
【0031】
また、本実施形態では、基材2の第1の帯電防止層22aは必須の要素であるのに対し、基材2の第2の帯電防止層22b、剥離シート4の第3の帯電防止層42aおよび第4の帯電防止層42bは、必ずしも必要ではなく、それぞれ独立して省略されてもよい。ただし、基材2の第2の帯電防止層22b、剥離シート4の第3の帯電防止層42aおよび第4の帯電防止層42bの1層または2層以上が存在することにより、保護シート1の帯電防止性がより優れたものとなる。
【0032】
なお、保護シート1の好ましい使用態様の1つとして、保護シート1の巻回ロールから保護シート1が繰り出され、剥離シート4が剥がされ、露出した粘着剤層3上にフレキシブルOLEDデバイスが設置され、搬送、加工等される態様が挙げられる。上記の繰り出し工程において帯電防止を図るには、第2の帯電防止層22bおよび第4の帯電防止層42bの少なくともいずれか1つが設けられていることが好ましく、両方が設けられていることがより好ましい。また、上記の剥離シート4の剥離工程において帯電防止を図るには、第1の帯電防止層22aに加え、粘着剤層3と接する第3の帯電防止層42aも設けられていることが好ましい。
【0033】
1.各部材
(1)基材
(1−1)プラスチックフィルム
プラスチックフィルム21としては特に限定されないが、被着体がOLEDデバイスの場合、プラスチックフィルム21は透明性が高いものであることが好ましい。OLEDデバイスの発光検査では、液晶デバイスの発光検査よりも厳しいレベルで検査が行われ、保護シート1には高い透明性が要求されるからである。その場合、プラスチックフィルム21は、フィラーを含有しないものであることが好ましい。また、被着体がOLEDデバイスの場合、プラスチックフィルム21は、OLEDデバイスの検査で印加される高温(例えば90〜150℃)に対する耐熱性を有するものが好ましい。
【0034】
かかるプラスチックフィルム21としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー等の樹脂からなるプラスチックフィルムが好ましく、単層からなるフィルムであってもよいし、同種又は異種の複数層を積層したフィルムであってもよい。上記の中でも、透明性、耐熱性およびコストの面から、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0035】
なお、上記プラスチックフィルムは、本実施形態の前述した効果を損なわない範囲で、フィラー、耐熱性向上剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0036】
上記プラスチックフィルム21においては、第1の帯電防止層22aおよび/または第2の帯電防止層22bとの密着性を向上させる目的で、所望により、酸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられる。これらの表面処理法は、プラスチックフィルム21の種類に応じて適宜選ばれる。
【0037】
プラスチックフィルム21の厚さは、耐熱性および貼付・剥離の作業性を考慮すると、25μm以上であることが好ましく、38μm以上であることがより好ましく、さらには50μm以上であることが好ましい。保護対象であるデバイスがフレキシブルデバイスの場合には、貼付・剥離の作業性の観点から、特に50μm以上であることが好ましい。一方、貼付・剥離の作業性およびコストを考慮すると、当該厚さは、150μm以下であることが好ましく、特に125μm以下であることが好ましく、さらには100μm以下であることが好ましい。
【0038】
プラスチックフィルム21における粘着剤層3側(第1の帯電防止層22a側)の面の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)として10nm以下であることが好ましく、7nm以下であることがより好ましく、特に5nm以下であることが好ましく、さらには3nm以下であることが好ましい。これにより、プラスチックフィルム21のヘイズ値、特に外部ヘイズが小さくなり、透明性がより高いものとなる。なお、本明細書における表面粗さは、JIS B0601:2001に準拠して、光干渉顕微鏡を用いて測定される粗さ曲線より求められるものとする。具体的には、試験例に示す通りである。また、本明細書におけるプラスチックフィルムの表面粗さは、プラスチックフィルム単体のみの表面粗さだけでなく、易接着層等を有するプラスチックフィルムの表面粗さについても含むものとする。
【0039】
なお、算術平均粗さ(Ra)の下限値は特に限定されないが、1nm以上であることが好ましく、特に1.5nm以上であることが好ましく、さらには2nm以上であることが好ましい。
【0040】
また、プラスチックフィルム21における粘着剤層3側(第1の帯電防止層22a側)の面の表面粗さは、最大山高さ(Rp)として200nm以下であり、最大高さ(Rz)として300nm以下であり、最大断面高さ(Rt)として500nm以下であることが好ましい。プラスチックフィルム21が上記の要件を満たすことにより、粘着剤層3の粘着面(粘着剤層が被着体に接触する面)がゆず肌になることが抑制され、被着体に貼着した保護シート1の透視性が非常に高くなる。したがって、例えば、当該プラスチックフィルム21を有する保護シート1が貼着されたOLEDデバイスの発光検査をより精確に行うことができる。
【0041】
最大山高さ(Rp)は、ゆず肌抑制の観点から、200nm以下であることが好ましく、特に150nm以下であることが好ましく、さらには100nm以下であることが好ましい。最大高さ(Rz)は、ゆず肌抑制の観点から、300nm以下であることが好ましく、特に200nm以下であることが好ましく、さらには100nm以下であることが好ましい。最大断面高さ(Rt)は、ゆず肌抑制の観点から、500nm以下であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましく、特に300nm以下であることが好ましく、さらには200nm以下であることが好ましい。なお、最大山高さ(Rp)の下限値は特に限定されないが、5nm以上であることが好ましく、特に10nm以上であることが好ましく、さらには20nm以上であることが好ましい。最大高さ(Rz)の下限値も特に限定されないが、5nm以上であることが好ましく、特に10nm以上であることが好ましく、さらには20nm以上であることが好ましい。最大断面高さ(Rt)の下限値も特に限定されないが、5nm以上であることが好ましく、特に20nm以上であることが好ましく、さらには40nm以上であることが好ましい。
【0042】
(1−2)帯電防止層
第1の帯電防止層22aおよび第2の帯電防止層22bは、いずれも、プラスチックフィルム21に所望の帯電防止性を付与することができ、透明性を有する材料からなれば、特に限定されない。このような帯電防止層22a,22bとしては、例えば、導電性高分子とバインダー樹脂とを含有する帯電防止層用組成物からなる層であることが好ましい。
【0043】
導電性高分子としては、従来公知の導電性高分子の中から、任意のものを適宜選択して用いることができるが、中でも、ポリチオフェン系、ポリアニリン系またはポリピロール系の導電性高分子が好ましい。導電性高分子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
ポリチオフェン系の導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリ(3−チオフェン−β−エタンスルホン酸)、ポリアルキレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホネート(PSS)との混合物(ドープされたものを含む)等が挙げられる。これらの中でも、ポリアルキレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホネートとの混合物が好ましい。上記ポリアルキレンジオキシチオフェンとしては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリプロピレンジオキシチオフェン、ポリ(エチレン/プロピレン)ジオキシチオフェン等が挙げられ、中でもポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が好ましい。すなわち、上記の中でも、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホネートとの混合物(PSSをドープしたPEDOT)が特に好ましい。
【0045】
ポリアニリン系の導電性高分子としては、例えば、ポリアニリン、ポリメチルアニリン、ポリメトキシアニリン等が挙げられる。ポリピロール系の導電性高分子としては、例えば、ポリピロール、ポリ3−メチルピロール、ポリ3−オクチルピロール等が挙げられる。
【0046】
帯電防止層用組成物中における導電性高分子の含有量は、0.1〜30質量%であることが好ましく、特に0.2〜20質量%であることが好ましく、さらには0.3〜10質量%であることが好ましい。導電性高分子の含有量が上記範囲内であれば、良好な帯電防止性能が得られ、また、当該帯電防止層用組成物から形成される帯電防止層の強度が十分なものとなる。
【0047】
上記帯電防止層用組成物に用いられるバインダー樹脂としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分として含有することが好ましい。これらの樹脂は、熱硬化性化合物であってもよく、紫外硬化性化合物であってもよいが、紫外硬化性にするには溶媒を水系から有機溶剤系に置換することが必要であるため、工程数やコストの観点から、熱硬化性化合物であることが好ましい。上記の中でも、プラスチックフィルムへの密着性の高さから、熱硬化性のポリエステル樹脂が好ましく、架橋剤と反応する反応性基、例えば水酸基等を有するポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0048】
帯電防止層用組成物は、上記成分以外にも、架橋剤、レベリング剤、防汚剤等を含有してもよい。
【0049】
架橋剤としては、上記の樹脂を架橋することのできるものであればよい。例えば、上記樹脂が反応性基として水酸基を有するものであれば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤等を使用することが好ましい。
【0050】
架橋剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましく、特に5〜40質量部であることが好ましく、さらには10〜30質量部であることが好ましい。
【0051】
レベリング剤としては、例えば、ジメチルシロキサン系化合物、フッ素系化合物、界面活性剤等を使用することができる。第1の帯電防止層22aにおいては、粘着剤層3との密着性の観点から、界面活性剤を使用することが好ましい。帯電防止層用組成物がレベリング剤を含有することにより、帯電防止層22a,22bの平滑性を向上させることができ、基材2の透視性がより高いものとなる。
【0052】
帯電防止層用組成物中におけるレベリング剤の含有量は、0.1〜10質量%であることが好ましく、特に0.2〜5質量%であることが好ましく、さらには0.5〜3質量%であることが好ましい。
【0053】
第1の帯電防止層22aおよび第2の帯電防止層22bの厚さは、帯電防止性能を考慮すると、それぞれ、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、さらには30nm以上であることが好ましい。また、第1の帯電防止層22aおよび第2の帯電防止層22bの厚さは、強度およびコストの観点から、200nm以下であることが好ましく、特に150nm以下であることが好ましく、さらには100nm以下であることが好ましい。
【0054】
(1−3)基材の物性
(1−3−1)表面抵抗率
23℃、相対湿度50%の環境下において、基材2に対して100Vの電圧を10秒間印加したときの、基材2における粘着剤層3側の面(第1の帯電防止層22aにおけるプラスチックフィルム21とは反対側の面)の表面抵抗率は、上限値として、1×10
9Ω/sq以下であることが好ましく、特に5×10
8Ω/sq以下であることが好ましく、さらには1×10
8Ω/sq以下であることが好ましい。上記表面抵抗率の上限値が上記であることにより、剥離帯電圧を効果的に低く抑えることができる。したがって、粘着剤層3から剥離シート4を剥離した時や、保護シート1をデバイスから剥離した時に、静電気が発生することを効果的に抑制することができる。また、上記表面抵抗率の下限値は特に限定されないが、通常は、1×10
5Ω/sq以上であることが好ましく、特に5×10
5Ω/sq以上であることが好ましく、さらには1×10
6Ω/sq以上であることが好ましい。
【0055】
また、23℃、相対湿度50%の環境下において、基材2に対して100Vの電圧を10秒間印加したときの、基材2における粘着剤層3とは反対側の面(第2の帯電防止層22bにおけるプラスチックフィルム21とは反対側の面)の表面抵抗率は、上限値として、5×10
11Ω/sq以下であることが好ましく、特に1×10
11Ω/sq以下であることが好ましく、さらには5×10
10Ω/sq以下であることが好ましい。上記表面抵抗率の上限値が上記であることにより、保護シート1の巻回ロールから保護シート1が繰り出される時に、静電気が発生することをより効果的に抑制することができる。また、上記表面抵抗率の下限値は特に限定されないが、通常は、1×10
7Ω/sq以上であることが好ましく、特に5×10
7Ω/sq以上であることが好ましく、さらには1×10
8Ω/sq以上であることが好ましい。
【0056】
なお、上記表面抵抗率は、JIS K6911に準拠して測定した値であり、当該表面抵抗率の測定方法の詳細は、後述する試験例に示す通りである。
【0057】
(1−3−2)ヘイズ値
基材2のヘイズ値は、5%以下であることが好ましく、特に3%以下であることが好ましく、さらには1%以下であることが好ましい。基材2のヘイズ値が上記であることにより、被着体に貼着される保護シート1の透明度が高いものとなる。プラスチックフィルム21がフィラーを含有しないプラスチックフィルムからなることにより、上記のヘイズ値が達成され易い。また、プラスチックフィルム21の算術平均粗さ(Ra)が前述した範囲であると、上記のヘイズ値がより達成され易い。なお、上記ヘイズ値の下限値は特に限定されず、0%であることが特に好ましい。ここで、本明細書におけるヘイズ値は、JIS K7136:2000に準じて測定した値とする。
【0058】
(2)粘着剤層
(2−1)材料
粘着剤層3は、シリコーン系粘着剤からなる。シリコーン系粘着剤としては、保護対象である被着体(デバイス)への貼着および被着体からの剥離に適するものを選択することが好ましい。例えば、被着体がOLEDデバイス等のフレキシブルデバイスの場合には、フレキシブルデバイスから保護シート1が剥離し易いように、再剥離性に特に優れた微粘着性のシリコーン系粘着剤を選択することが好ましい。
【0059】
シリコーン系粘着剤としては、縮合型シリコーン系粘着剤であってもよいし、付加反応型シリコーン系粘着剤であってもよいが、再剥離性の観点から、付加反応型シリコーン系粘着剤が好ましい。
【0060】
付加反応型シリコーン系粘着剤は、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する第1のポリジメチルシロキサンおよび1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する第2のポリジメチルシロキサンから得られる付加反応型シリコーン樹脂を主剤として含有するものが好ましく、さらにシリコーンレジンを含有するものが特に好ましい。
【0061】
第1のポリジメチルシロキサンに含まれるアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等の1価炭化水素基が挙げられ、中でもビニル基が特に好ましい。
【0062】
第1のポリジメチルシロキサン中におけるアルケニル基の含有量(珪素原子に結合するメチル基の数に対するアルケニル基の数の割合)は、0.005〜0.1モル%であることが好ましく、特に0.01〜0.05モル%であることが好ましい。アルケニル基は、分子鎖の両末端に有することが好ましく、側鎖に有してもよい。第1のポリジメチルシロキサン1分子中にアルケニル基が少なくとも2つ含まれ、さらにアルケニル基の含有量が上記範囲にあることで、架橋密度の高い架橋構造が形成され、再剥離性に優れた粘着剤層3を得ることができる。
【0063】
第1のポリジメチルシロキサンの重合度(シロキサン結合の数)は、200〜5,000であることが好ましく、特に500〜3,000であることが好ましい。また、第2のポリジメチルシロキサン中におけるヒドロシリル基の含有量は、1分子中に2〜300個であることが好ましく、特に4〜200個であることが好ましい。第2のポリジメチルシロキサンの重合度は、50〜2,000であることが好ましく、特に100〜1,500であることが好ましい。さらに、第1のポリジメチルシロキサン100質量部に対する第2のポリジメチルシロキサンの配合比は、0.01〜20質量部であることが好ましく、特に0.1〜10質量部であることが好ましい。各官能基の含有量および第1のポリジメチルシロキサンに対する第2のポリジメチルシロキサンの配合比が上記の範囲内にあることで、第1のポリジメチルシロキサンと第2のポリジメチルシロキサンとの付加反応が良好に行われる。
【0064】
なお、第1のポリジメチルシロキサンは、ヒドロシリル基を有しないことが好ましく、第2のポリジメチルシロキサンは、アルケニル基を有しないことが好ましい。
【0065】
第1のポリジメチルシロキサンの重量平均分子量は、2万〜130万であることが好ましく、特に30万〜120万であることが好ましい。また、第2のポリジメチルシロキサンの重量平均分子量は、300〜1400であることが好ましく、特に500〜1200であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0066】
シリコーンレジンとしては、例えば、一官能シロキサン単位[(CH
3)
3SiO
1/2]であるM単位と、四官能シロキサン単位[SiO
4/2]であるQ単位とから構成されるMQレジンを使用することができる。M単位/Q単位のモル比は、0.6〜1.7であることが好ましい。このシリコーンレジンは、シリコーン系粘着剤に粘着性を付与する役割を有する。
【0067】
付加反応型シリコーン樹脂100質量部に対するシリコーンレジンの配合量は、下限値として、1質量部以上であることが好ましく、特に3質量部以上であることが好ましく、さらには5質量部以上であることが好ましい。シリコーンレジンの配合量の下限値が上記であることにより、所望の粘着力を得ることができ、保護シート1が被着体(デバイス)から意図せず剥離することを防止することができる。また、上記配合量は、上限値として、40質量部以下であることが好ましく、特に30質量部以下であることが好ましく、さらには20質量部以下であることが好ましい。シリコーンレジンの配合量の上限値が上記であることにより、粘着力が高くなり過ぎることを防止し、保護シート1の再剥離性を確保することができる。
【0068】
上記付加反応型シリコーン系粘着剤は、触媒を含有することが好ましい。触媒としては、上記付加反応型シリコーン樹脂を硬化(第1のポリジメチルシロキサンと第2のポリジメチルシロキサンとを付加反応)させることができるものであれば特に限定されないが、中でも白金族金属系化合物が好ましい。白金族金属系化合物としては、例えば、微粒子状白金、炭素粉末担体上に吸着された微粒子状白金、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、パラジウム、ロジウム等が挙げられる。かかる触媒を含有することで、付加反応型シリコーン樹脂の硬化反応をより効率良く進行させることができる。
【0069】
上記付加反応型シリコーン樹脂100質量部に対する触媒の配合量は、白金分が0.01〜3質量部であることが好ましく、特に0.05〜2質量部であることが好ましい。
【0070】
上記シリコーン系粘着剤は、架橋剤、反応抑制剤、シランカップリング剤等の各種添加剤を含有してもよい。一方、上記シリコーン系粘着剤は、帯電防止剤を含有しないことが好ましい。一般的な帯電防止剤をシリコーン系粘着剤に添加すると、得られる粘着剤層3の基材密着性が低下し、また、相溶性の低さから、粘着剤層3の透明性が低くなるからである。ただし、かかる不具合の生じない帯電防止剤であれば、シリコーン系粘着剤に添加してもよい。
【0071】
(2−2)厚さ
粘着剤層3の厚さは、粘着性の観点から、15μm以上であることが好ましく、特に20μm以上であることが好ましく、さらには25μm以上であることが好ましい。また、粘着剤層3の厚さは、剥離性の観点から、75μm以下であることが好ましく、特に50μm以下であることが好ましく、さらには30μm以下であることが好ましい。
【0072】
(3)剥離シート
(3−1)支持体
支持体41としては、粘着剤層3に悪影響を与えないものであれば、特に限定されることはなく、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。上記の中でも、ハンドリング性に優れたポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0073】
支持体41の厚さについては特に制限はないが、通常15〜100μmであることが好ましく、特に25〜75μmであることが好ましい。
【0074】
(3−2)帯電防止層
第3の帯電防止層42aおよび第4の帯電防止層42bは、いずれも、プラスチックフィルム21に所望の帯電防止性を付与することができる材料からなれば、特に限定されない。このような帯電防止層42a,42bの材料としては、前述した基材2の帯電防止層22a,22bと同様の材料を使用することが好ましい。また、帯電防止層42a,42bの厚さも、基材2の帯電防止層22a,22bと同様の厚さとすることが好ましい。
【0075】
ここで、前述した通り、本実施形態に係る保護シート1において、第3の帯電防止層42aおよび第4の帯電防止層42bは、一方のいずれか又は両方を省略することができる。ただし、一方を省略する場合は、第4の帯電防止層42bを省略することが好ましい。粘着剤層3に接触する第3の帯電防止層42aが存在すると、粘着剤層3から剥離シート4を剥離するときの帯電防止性を効果的に高めることができる。
【0076】
(3−3)剥離シートの物性
(3−3−1)表面抵抗率
23℃、相対湿度50%の環境下において、剥離シート4に対して100Vの電圧を10秒間印加したときの、剥離シート4における粘着剤層3側の面(第3の帯電防止層42aにおける支持体41とは反対側の面)の表面抵抗率は、上限値として、1×10
11Ω/sq以下であることが好ましく、特に5×10
10Ω/s以下であることが好ましく、さらには1×10
10Ω/s以下であることが好ましい。上記表面抵抗率の上限値が上記であることにより、粘着剤層3から剥離シート4を剥離する時に、静電気が発生することを良好に抑制することができ、保護シート1をデバイスに貼着するときに、空気中のゴミや塵がデバイスに付着することをより効果的に抑制することができる。また、上記表面抵抗率の下限値は特に限定されないが、通常は、1×10
7Ω/sq以上であることが好ましく、特に5×10
7Ω/s以上であることが好ましく、さらには1×10
8Ω/s以上であることが好ましい。
【0077】
23℃、相対湿度50%の環境下において、剥離シート4に対して100Vの電圧を10秒間印加したときの、剥離シート4における粘着剤層3とは反対側の面(第4の帯電防止層42bにおける支持体41とは反対側の面)の表面抵抗率は、上限値として、1×10
11Ω/sq以下であることが好ましく、特に5×10
10Ω/s以下であることが好ましく、さらには1×10
10Ω/s以下であることが好ましい。上記表面抵抗率の上限値が上記であることにより、保護シート1の巻回ロールから保護シート1が繰り出される時に、静電気が発生することをより効果的に抑制することができる。また、上記表面抵抗率の下限値は特に限定されないが、通常は、1×10
7Ω/sq以上であることが好ましく、特に5×10
7Ω/s以上であることが好ましく、さらには1×10
8Ω/s以上であることが好ましい。
【0078】
(3−3−2)表面粗さ
剥離シート4における粘着剤層3側(第3の帯電防止層42a側)の面の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)として100nm以下であり、最大山高さ(Rp)として1500nm以下であり、最大高さ(Rz)として1500nm以下であり、最大断面高さ(Rt)として2000nm以下であることが好ましい。剥離シート4が上記の要件を満たすことにより、当該剥離シート4に密着する粘着剤層3の粘着面がゆず肌になることがより効果的に抑制され、被着体に貼着した保護シート1の透視性がより高くなる。したがって、例えば、当該プラスチックフィルム21を有する保護シート1が貼着されたOLEDデバイスの発光検査をより精確に行うことができる。
【0079】
粘着剤層3のゆず肌抑制の観点から、算術平均粗さ(Ra)は、100nm以下であることが好ましく、特に75nm以下であることが好ましく、さらには50nm以下であることが好ましい。最大山高さ(Rp)は、1500nm以下であることが好ましく、特に1250nm以下であることが好ましく、さらには1000nm以下であることが好ましい。最大高さ(Rz)は、1500nm以下であることが好ましく、特に1250nm以下であることが好ましく、さらには1000nm以下であることが好ましい。最大断面高さ(Rt)は、2000nm以下であることが好ましく、特に1750nm以下であることが好ましく、さらには1500nm以下であることが好ましい。なお、算術平均粗さ(Ra)の下限値は特に限定されないが、5nm以上であることが好ましく、特に10nm以上であることが好ましく、さらには20nm以上であることが好ましい。最大山高さ(Rp)の下限値も特に限定されないが、50nm以上であることが好ましく、特に100nm以上であることが好ましく、さらには200nm以上であることが好ましい。最大高さ(Rz)の下限値も特に限定されないが、50nm以上であることが好ましく、特に100nm以上であることが好ましく、さらには200nm以上であることが好ましい。最大断面高さ(Rt)の下限値も特に限定されないが、200nm以上であることが好ましく、特に300nm以上であることが好ましく、さらには400nm以上であることが好ましい。
【0080】
(3−4)その他
なお、本実施形態における剥離シート4の粘着剤層3と接する面には、剥離処理が施されていない、すなわち剥離剤層が存在しないことが好ましい。粘着剤層3がシリコーン系粘着剤からなる場合、剥離剤層には通常フッ素系剥離剤が使用されるが、フッ素系剥離剤からなる剥離剤層を設けた場合、フッ素成分が粘着剤層3に移行し、粘着剤層3の帯電防止性や粘着力が安定しなくなるおそれがあるからである。
【0081】
2.保護シートの製造方法
(1)基材の製造
本実施形態における基材2を製造するには、一例として、プラスチックフィルム21の一方の面に、帯電防止層用組成物および所望により溶媒を含有する塗布液を塗布した後、乾燥し、硬化させることにより、第1の帯電防止層22aを形成する。また、プラスチックフィルム21の他方の面に、帯電防止層用組成物および所望により溶媒を含有する塗布液を塗布した後、乾燥し、硬化させることにより、第2の帯電防止層22bを形成する。
【0082】
上記溶媒としては特に制限はなく、様々なものを用いることができる。例えば、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、アルコール系溶媒と精製水との混合溶媒等が使用される。
【0083】
帯電防止層用組成物の塗布液の塗布は、常法によって行えばよく、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法等によって行えばよい。
【0084】
上記塗布液を塗布したら、塗膜を加熱乾燥させることが好ましい。加熱乾燥の加熱温度は70〜140℃であることが好ましく、加熱時間は30〜60秒程度であることが好ましい。
【0085】
(2)剥離シートの製造
本実施形態における剥離シート4は、基材2の製造方法と同様の方法によって製造することができる。すなわち、剥離シート4を製造するには、一例として、支持体41の一方の面に、帯電防止層用組成物および所望により溶媒を含有する塗布液を塗布した後、乾燥し、硬化させることにより、第3の帯電防止層42aを形成する。また、支持体41の他方の面に、帯電防止層用組成物および所望により溶媒を含有する塗布液を塗布した後、乾燥し、硬化させることにより、第4の帯電防止層42bを形成する。
【0086】
(3)保護シートの製造
本実施形態に係る保護シート1を製造するには、一例として、基材2における第1の帯電防止層22a側の面に、シリコーン系粘着剤および所望により希釈剤を含有する塗布液を塗布した後、乾燥し、硬化させることにより、粘着剤層3を形成する。
【0087】
上記希釈剤としては特に制限はなく、様々なものを用いることができる。例えばトルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素化合物をはじめ、アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびこれらの混合物等が用いられる。
【0088】
シリコーン系粘着剤の塗布液の塗布は、常法によって行えばよく、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等によって行えばよい。上記塗布液を塗布したら、塗膜を加熱乾燥させることが好ましい。
【0089】
シリコーン系粘着剤の主剤が付加反応型シリコーン系粘着剤である場合、上記塗膜を熱硬化させることが好ましい。この場合の加熱温度は80〜180℃であることが好ましく、加熱時間は10〜90秒程度であることが好ましい。
【0090】
上記のようにして粘着剤層3を形成したら、当該粘着剤層3に、第3の帯電防止層42aが接するように剥離シート4を貼合し、保護シート1を得る。
【0091】
なお、上記の製造方法では、粘着剤層3は基材2に対して形成したが、剥離シート4に対して形成し、その後、粘着剤層3に基材2を貼合してもよい。
【0092】
3.物性
(1)ヘイズ値
本実施形態に係る保護シート1における剥離シート4以外の積層体(本実施形態では、基材2および粘着剤層3の積層体)のヘイズ値は、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、特に2%以下であることが好ましく、さらには1%以下であることが好ましい。上記ヘイズ値が上記であることにより、保護シート1の透視性がより高くなり、例えば、当該保護シート1が貼着されたOLEDデバイスの発光検査を問題なく行うことができる。なお、上記ヘイズ値の下限値は特に限定されず、0%であることが特に好ましい。
【0093】
本実施形態に係る保護シート1においては、プラスチックフィルム21がフィラーを含有しないプラスチックフィルムからなることにより、上記のヘイズ値が達成され易い。また、プラスチックフィルム21の算術平均粗さ(Ra)が前述した範囲であると、上記のヘイズ値がより達成され易い。
【0094】
(2)粘着剤層帯電圧
23℃、相対湿度50%の環境下において、本実施形態に係る保護シート1における剥離シート4以外の積層体(本実施形態では、基材2および粘着剤層3の積層体)に対して、粘着剤層3が露出した状態でターンテーブルに設置し、ターンテーブルを回転させながら、粘着剤層3から距離2.0cmの位置から+10kVの電圧を印加したときの、帯電圧(粘着剤層帯電圧)は、2kV以下であることが好ましく、特に1.5kV以下であることが好ましく、さらには1kV以下であることが好ましい。粘着剤層帯電圧が上記であることにより、粘着剤層3から剥離シート4を剥離して保護シート1をデバイスに貼着するときや、デバイスから剥離した時に静電気が発生し難く、静電気に起因して空気中のゴミや塵がデバイスに付着することを効果的に抑制することができる。上記粘着剤層帯電圧の下限値は特に限定されないが、0Vであることが好ましい。なお、粘着剤層帯電圧の測定方法の詳細は、後述する試験例に示す通りである。
【0095】
(3)剥離帯電圧
23℃、相対湿度50%の環境下において、本実施形態に係る保護シート1における粘着剤層3から剥離シート4を手作業により2.0m/minの剥離速度で剥離したときの、剥離5秒後に測定した粘着剤層の露出面から2.0cmの位置の静電電位(剥離帯電圧)は、200V以下であることが好ましく、特に150V以下であることが好ましく、さらには100V以下であることが好ましい。剥離帯電圧が上記であることにより、粘着剤層3から剥離シート4を剥離した時に静電気が発生し難く、静電気に起因して空気中のゴミや塵がデバイスに付着することを効果的に抑制することができる。上記剥離帯電圧の下限値は特に限定されないが、0Vであることが好ましい。なお、剥離帯電圧の測定方法の詳細は、後述する試験例に示す通りである。
【0096】
4.用途
本実施形態に係る保護シート1は、主としてデバイスの加工、組立、検査などの工程中、デバイスにおける表面の傷付き等を防止するために、デバイスを保護するのに用いられる。ただし、かかる用途に限定されるものではない。
【0097】
保護シート1が保護対象とするデバイスとしては、例えば、光学部材や電子部材等が挙げられるが、本実施形態では、フレキシブルデバイスであることが好ましく、また、保護シート1が貼付された状態で発光検査や高温条件が要求されるデバイスであることが好ましい。それらの中でも、OLEDデバイスが好ましく、特にフレキシブルOLEDデバイスが好ましい。
【0098】
本実施形態に係る保護シート1は、第1の帯電防止層22aを備えており、さらに第2〜第4の帯電防止層22b,42a,42bも備えているため、剥離帯電圧を低く(特にVオーダーで)抑えることができ、優れた帯電防止性を有する。これにより、粘着剤層3から剥離シート4を剥離して保護シート1をデバイスに貼着するときや、デバイスから剥離した時に静電気が発生し難く、静電気に起因して空気中のゴミや塵がデバイスに付着することを抑制することができる。また、本実施形態に係る保護シート1は、第2の帯電防止層22bおよび第4の帯電防止層42bを備えているため、保護シート1の巻回ロールから保護シート1が繰り出される時にも、静電気が発生することを抑制することができる。一方、シリコーン系粘着剤から形成される粘着剤層3は再剥離性に優れるため、OLEDデバイス等のフレキシブルデバイスからも容易に剥離することができる。さらに、シリコーン系粘着剤から形成される粘着剤層3は耐熱性に優れるため、保護シート1が貼着されたOLEDデバイス等が高温下で検査されたときでも、粘着力が著しく高くなることが抑制され、保護シート1を問題なくOLEDデバイス等から剥離することができる。さらにまた、本実施形態に係る保護シート1では、帯電防止性を得るために、シリコーン系粘着剤から形成される粘着剤層3に帯電防止剤を添加する必要がないため、粘着剤層3の基材2に対する密着性(基材密着性)に優れる。これにより、製品としての安定性・信頼性が高く、また、被着体から保護シート1を剥離したときに、被着体側に粘着剤層3または粘着剤が残存するおそれがない。
【0099】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0100】
例えば、プラスチックフィルム21には帯電防止層22a,22b以外の層がさらに形成されていてもよい。
【実施例】
【0101】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0102】
〔実施例1〕
1.基材の製造(帯電防止層の形成)
水溶性の水酸基含有ポリエステル樹脂と、PSSをドープしたPEDOTとを、ジメチルスルホキシドおよび水で希釈してなる希釈液(中京油脂社製,製品名「S−495」,固形分8.2質量%)に対して、水溶性メチロールメラミンおよび水からなるメラミン化合物溶液(中京油脂社製,製品名「P−795」,固形分70.0質量%)と、レベリング剤として界面活性剤および水からなるレベリング剤水溶液(中京油脂社製,製品名「R−438」,固形分10.0質量%)とを混合し、そこへさらに、水およびイソプロピルアルコールの混合溶媒(質量比1:1)を加えて、固形分0.6質量%となるように希釈して、帯電防止層用組成物の塗布液を得た。
【0103】
プラスチックフィルムとしてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ社製,製品名「PET75U48」,厚さ:75μm,フィラー非含有)の一方の面(粘着剤層側に位置する面)に、上記帯電防止層用組成物の塗布液をナイフコーターで塗布したのち、130℃で60秒間加熱処理して、厚さ50nmの第1の帯電防止層を形成した。また、上記帯電防止層用組成物の配合比を変更する以外、上記と同様にして、上記PETフィルムの他方の面に、厚さ50nmの第2の帯電防止層を形成し、第1の帯電防止層/プラスチックフィルム/第2の帯電防止層からなる基材を得た。
【0104】
2.保護シートの製造
シリコーン系粘着剤の主剤としての付加反応型シリコーン樹脂(信越化学工業社製,製品名「KS−847H」)100質量部と、シリコーンレジン(東レ・ダウコーニング社製,製品名「SD−4584」)10質量部と、白金触媒(東レ・ダウコーニング社製,製品名「SRX 212 CATALYST」)2質量部とを混合し、メチルエチルケトンで希釈して、これをシリコーン系粘着剤の塗布液とした。
【0105】
上記工程1で得られた基材における第1の帯電防止層側の面に、上記シリコーン系粘着剤の塗布液をナイフコーターで塗布したのち、130℃で1分間加熱処理して、厚さ25μmの粘着剤層を形成した。次いで、PETフィルム(支持体)の両面に帯電防止層(第3の帯電防止層及び第4の帯電防止層)が形成されてなる剥離シート(三菱樹脂社製,製品名「PET25T−100(WJ)」,厚さ:25μm)を、当該剥離シートの第3の帯電防止層側の面が粘着剤層に接するように上記粘着剤層に貼合し、保護シートを得た。
【0106】
〔実施例2〜6,比較例1〜2〕
プラスチックフィルムおよび剥離シートを表1に示すものに変更する以外、実施例1と同様にして保護シートを製造した。なお、比較例1および2の基材としては、帯電防止層のないPETフィルム(プラスチックフィルム)を使用し、実施例3および比較例1の剥離シートとしては、帯電防止層のないPETフィルム(支持体)を使用した。
【0107】
〔試験例1〕(表面抵抗率の測定)
実施例および比較例で使用した基材の粘着剤層側の面およびその反対側(保護シートの表面側)の面、ならびに剥離シートの粘着剤層側の面およびその反対側(保護シートの裏面側)の面について、JIS K6911に準拠して、表面抵抗率を測定した。具体的には、23℃、相対湿度50%の環境下において、抵抗率測定器(三菱アナリテック社製,製品名「ハイレスタUP MCP−HT450型」)を使用して、基材または剥離シート(100mm×100mm)に対して100Vの電圧を10秒間印加した後の各表面の表面抵抗率(Ω/sq)を測定した。結果を表1に示す。なお、比較例1および2で使用した基材(帯電防止層なし)の
粘着剤層側の表面抵抗率、ならびに実施例3および比較例1で使用した剥離シート(帯電防止層なし)の両面の表面抵抗率は、いずれも測定限界を超える値だった。
【0108】
〔試験例2〕(ヘイズ値の測定)
実施例および比較例で使用した基材のヘイズ値(%)を、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH7000」)を用いて、JIS K7136:2000に準じて測定した。結果を表1に示す。また、実施例および比較例で製造した保護シートから剥離シートを剥離し、得られた積層体のヘイズ値(%)を、同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0109】
〔試験例3〕(表面粗さの測定)
実施例および比較例で使用したプラスチックフィルムの粘着剤層側の面(119.8μm×91.2μm)および剥離シートの粘着剤層側の面(119.8μm×91.2μm)の、算術平均表面粗さ(Ra;単位nm)、最大山高さ(Rp;単位nm)、最大高さ(Rz;単位nm)および最大断面高さ(Rt;単位nm)を、JIS B601:2001に準拠して、光干渉顕微鏡(Veeco社製,製品名「表面形状測定装置WYKO NT110」)を用いて測定した。このとき、測定条件PSI、倍率50倍とし、測定ポイント10箇所の平均値を表面粗さの値とした。結果を表1に示す。
【0110】
〔試験例4〕(粘着面の評価)
実施例および比較例で製造した保護シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層が露出した状態で当該保護シートを固定した。
【0111】
上記粘着剤層(粘着面)の表面形状(50mm×50mm)を、光干渉顕微鏡(Veeco社製,製品名「表面形状測定装置 WYKO NT110」)を用いて、JIS B601:2001に準拠して測定した。このとき、測定条件VSI、倍率2.5倍とした。得られた測定画像に基づいて、
図2に示す画像を基準にして、粘着面(ゆず肌)の評価を行った。なお、〇と×との間の測定画像については△と評価した。結果を表2に示す。
【0112】
〔試験例5〕(粘着剤層帯電圧)
実施例および比較例で製造した保護シートを45mm×45mmに裁断し、剥離シートを剥離したものをサンプルとした。23℃、相対湿度50%の環境下において、帯電電荷減衰度測定器(シシド静電気社製,製品名「STATIC HONESTMETER」)のターンテーブル上に、上記サンプルを粘着剤層側が上になるように設置した。次いで、上記ターンテーブルを1550rpmで回転させ、粘着剤層の露出面から2.0cmの位置に10kVの電圧を印加して、印加60秒後における粘着剤層の露出面から2.0cmの位置の帯電圧(粘着剤層帯電圧;V)を測定した。結果を表2に示す。
【0113】
〔試験例6〕(剥離帯電圧)
実施例および比較例で製造した保護シートを25mm×100mmに裁断し、これをサンプルとした。23℃、相対湿度50%の環境下において、サンプルから剥離シートを手作業により2.0m/minの剥離速度で剥離し、剥離5秒後に、静電気測定器(シムコジャパン社製,製品名「FMX−003」)を使用して、粘着剤層の露出面から2.0cmの位置の静電電位(剥離帯電圧;V)を測定した。測定結果から、以下の基準に基づいて、粘着剤層表面における剥離帯電圧を評価した。結果を表2に示す。
5…剥離帯電圧が50V未満
4…剥離帯電圧が50V以上、100V未満
3…剥離帯電圧が100V以上、150V未満
2…剥離帯電圧が150V以上、200V未満
1…剥離帯電圧が200V以上、1000V未満
【0114】
〔試験例7〕(基材密着性の評価)
実施例および比較例で製造した保護シートから剥離シートを剥離し、粘着剤層に対してカッターナイフで十字の切り込み(30mm×30mm)を入れた。そして、切り込みを入れた部位の粘着剤層を指の腹で擦り、粘着剤層の脱落度合いを確認し、以下の基準で基材密着性を評価した。結果を表2に示す。
○…粘着剤層が基材から脱着せず、良好な密着性を維持
△…粘着剤層の一部が基材から脱着するが、ある程度の密着性を維持
×…粘着剤層全体が基材から脱着し、密着性不足
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
表2から明らかなように、実施例で製造した保護シートは、帯電防止性に優れるとともに、粘着剤層の基材密着性にも優れるものであった。