(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603274
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】医療デバイス用のアクチュエータ抑止アセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20191028BHJP
A61M 25/01 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
A61M25/00 540
A61M25/01
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-158256(P2017-158256)
(22)【出願日】2017年8月18日
(62)【分割の表示】特願2016-539933(P2016-539933)の分割
【原出願日】2014年12月17日
(65)【公開番号】特開2017-221716(P2017-221716A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2017年8月29日
(31)【優先権主張番号】61/919,095
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511177374
【氏名又は名称】セント・ジュード・メディカル,カーディオロジー・ディヴィジョン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナットソン アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ボワーズ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ミラー ステファン ピー.
【審査官】
鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−55848(JP,A)
【文献】
特開2011−55847(JP,A)
【文献】
特開2011−234977(JP,A)
【文献】
特表2007−524439(JP,A)
【文献】
特開2001−178828(JP,A)
【文献】
国際公開第93/04724(WO,A1)
【文献】
実開平5−33736(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61M 25/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端、および、曲げ可能な遠位領域を有する細長い本体と、
前記細長い本体の前記近位端に連結されるハンドルであって、前記ハンドルに対して移動可能なアクチュエータを含む、前記ハンドルと、
前記アクチュエータに隣接した抵抗アセンブリと、を備え、
前記抵抗アセンブリは圧縮リングを備え、前記圧縮リングの一方の表面は空洞部を含み、前記圧縮リングの反対側の表面は実質的に平坦であり、前記圧縮リングは前記空洞部内へと変形可能であり、
前記抵抗アセンブリは、前記アクチュエータが前記ハンドルに対して移動している方向に応じて変化する力を、前記アクチュエータに加えるように構成され、
前記抵抗アセンブリによって加えられる前記力は、前記アクチュエータが前記ハンドルに対して前記細長い本体の前記遠位領域を中立位置から曲げる方向に移動している場合に、より小さくなり、前記アクチュエータが前記ハンドルに対して前記細長い本体の前記遠位領域を中立位置の方へ戻す方向に移動している場合に、より大きくなる、
医療デバイス。
【請求項2】
近位端、および、曲げ可能な遠位領域を有する細長い本体と、
前記細長い本体の前記近位端に連結されるハンドルであって、前記ハンドルに対して移動可能なアクチュエータを含む、前記ハンドルと、
前記アクチュエータに隣接した抵抗アセンブリと、を備え、
前記抵抗アセンブリは圧縮リングを備え、前記圧縮リングの一方の表面は空洞部を含み、前記圧縮リングの反対側の表面は実質的に平坦であり、前記圧縮リングは前記空洞部内へと変形可能であり、
前記抵抗アセンブリは、前記アクチュエータが前記ハンドルに対して移動している方向に応じて変化する力を、前記アクチュエータに加えるように構成されるとともに、異方性摩擦特性を有する材料で作製されている部材を備える、
医療デバイス。
【請求項3】
近位端、および、曲げ可能な遠位領域を有する細長い本体と、
前記細長い本体の前記近位端に連結されるハンドルであって、前記ハンドルに対して移動可能なアクチュエータを含む、前記ハンドルと、
前記アクチュエータに隣接した抵抗アセンブリと、を備え、
前記抵抗アセンブリは圧縮リングを備え、前記圧縮リングの一方の表面は空洞部を含み、前記圧縮リングの反対側の表面は実質的に平坦であり、前記圧縮リングは前記空洞部内へと変形可能であり、
前記抵抗アセンブリは、前記アクチュエータが前記ハンドルに対して移動している方向に応じて変化する力を、前記アクチュエータに加えるように構成され、
前記抵抗アセンブリに対向している前記アクチュエータの表面、および前記アクチュエータに対向している前記抵抗アセンブリの表面のうちの少なくとも1つが、方向依存性の摩擦力を生み出す仕上げを含む、
医療デバイス。
【請求項4】
近位端、および、曲げ可能な遠位領域を有する細長い本体と、
前記細長い本体の前記近位端に連結されるハンドルであって、前記ハンドルに対して移動可能なアクチュエータを含む、前記ハンドルと、
前記アクチュエータに隣接した抵抗アセンブリと、を備え、
前記抵抗アセンブリは圧縮リングを備え、前記圧縮リングの一方の表面は空洞部を含み、前記圧縮リングの反対側の表面は実質的に平坦であり、前記圧縮リングは前記空洞部内へと変形可能であり、
前記抵抗アセンブリは、前記アクチュエータが前記ハンドルに対して移動している方向に応じて変化する力を、前記アクチュエータに加えるように構成されるとともに、前記アクチュエータの周囲に配置される環状部材を備え、前記環状部材は、第1の表面と第2の表面とを含み、前記環状部材の前記第1の表面は、空洞部を含む、
医療デバイス。
【請求項5】
前記抵抗アセンブリは、前記環状部材の前記第1の表面に隣接して、かつ前記空洞部内において、前記アクチュエータの周囲に配置される圧縮性部材をさらに備え、
第1の方向における前記アクチュエータの移動が、前記圧縮性部材を前記環状部材の前記第1の表面から離し、それにより前記第1の方向における前記アクチュエータの移動に対する抵抗を最小にし、
前記第1の方向とは反対の第2の方向における前記アクチュエータの移動が、前記圧縮性部材を前記環状部材の前記第1の表面に当接するように駆動し、それにより前記第2の方向における前記アクチュエータの移動に対する抵抗を最大にする、請求項4に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記抵抗アセンブリによって加えられる前記力は、前記アクチュエータが前記ハンドルに対して前記細長い本体の前記遠位領域を中立位置から第1の曲げ方向へ曲げる方向に移動している場合に、より小さくなり、前記アクチュエータが前記ハンドルに対して前記細長い本体の前記遠位領域を中立位置から前記第1の曲げ方向とは反対の第2の曲げ方向へ曲げる方向に移動している場合に、より大きくなる、請求項1から5のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2013年12月20日に出願された米国仮出願第61/919,095号の利益を主張する。当該米国仮出願は、本明細書に完全に説明されているかのように、参照により本明細書に援用されている。
【0002】
本開示は、医療デバイス用のアクチュエータに関する。具体的には、本開示は、そのようなアクチュエータを特定の位置に保持し、ならびに/または、そのようなアクチュエータを一方向およびその逆方向へ移動させることをより容易にする抑止アセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
カテーテル(電気生理学カテーテルを含む)は、心房性不整脈などの病気を診断および/または治療するための様々な診断手法および治療手法において使用される。通常、カテーテルは、患者の血管系を通して、患者の心臓内部の部位などの、目的とされる部位に配備され、操作される。
【0004】
身体内部の所望の部位にカテーテルを配置するためには、カテーテル(または、それ自体がカテーテル様医療デバイスの一種である導入器シース)内に組み込まれている機械的操縦機能を使用するなどの、何らかのタイプのナビゲーションが使用されなければならない。いくつかの例では、医療関係者が、これらの機械的操縦機能を使用して、カテーテルを手動で操作および/または動作させ得る。
【0005】
患者の血管系を通したカテーテルの前進を促すために、カテーテルの近位端におけるトルクと、所望の方向にカテーテルの遠位先端部を選択的に曲げる能力と、を同時に付与することにより、医療関係者が、手術中に、カテーテルの遠位端の前進の方向を調節すること、およびカテーテルの遠位部を選択的に配置することが可能になり得る。カテーテルの近位端は、患者の血管系を通してカテーテルを案内するように操作され得る。カテーテルの遠位先端部は、引張ワイヤまたは他の引張部材により曲げられることができ、引張ワイヤまたは他の引張部材は、カテーテルの遠位端に取り付けられ、または固定され、引張ワイヤへの張力の付与を制御する制御ハンドル内のアクチュエータの近くまで延在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カテーテルの遠位先端部の曲がりを達成するために、施術者がアクチュエータに加えなければならない力を最小限にしつつ、反対方向へのアクチュエータの移動に対する(すなわち、カテーテルの遠位先端部の中立位置の方への戻りを起こさせるためのアクチュエータの移動に対する)十分な摩擦を与えることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書においては、近位端、および、曲げ可能な遠位領域を有する本体と、本体の近位端に取り付けられるハンドルであって、ハンドルの長手方向軸に沿ってハンドルに対して移動可能なアクチュエータを含む、ハンドルと、アクチュエータに隣接して配置されている抵抗アセンブリと、を含む医療デバイスであって、抵抗アセンブリは、アクチュエータがハンドルの長手方向軸に沿って第1の方向に移動する場合に、アクチュエータに第1の摩擦力を加え、アクチュエータがハンドルの長手方向軸に沿って第2の方向に移動する場合に、アクチュエータに第2の摩擦力を加え、第2の方向は、第1の方向と
は反対であり、第2の摩擦力は、第1の摩擦力より大きい、医療デバイスが開示される。
【0008】
ある態様では、抵抗アセンブリは、アクチュエータの周囲に配置される環状摩擦アセンブリを含み得る。環状摩擦アセンブリは、異方性摩擦特性を有する材料で作製されることができる。代替的にまたは追加的に、環状摩擦アセンブリは、方向依存性の摩擦力を生み出す表面仕上げまたは表面処理を含み得る。
【0009】
環状摩擦アセンブリは、面取りされた第1の表面と、第1の表面の反対側の第2の表面とを有する圧縮リングを含んでもよく、第1の表面は、第1の方向に向けられている。
【0010】
他の実施形態では、環状摩擦アセンブリは、傾斜した第1の表面、および、第1の表面の反対側の第2の表面を有する環状ディスクであって、第1の表面は、第1の方向に向けられている、環状ディスクと、環状ディスクの第1の表面に隣接して配置されるOリングと、を含む。Oリングは、非円形横断面形状を有し得る。
【0011】
抵抗アセンブリは抑制ハウジングも含み得ると考えられる。この場合、環状摩擦アセンブリは、抑制ハウジング内に配置される。
【0012】
引張ワイヤが、本体を通って延在してもよく、本体の遠位領域に連結されて、アクチュエータを第1の方向に移動させることにより、中立位置から第1の曲げ方向への本体の曲げが生じるように、遠位領域の曲げを生じさせることが可能である。アクチュエータを第2の方向に移動させることにより、本体の中立位置への戻りを生じさせるか、または中立位置から第2の曲げ方向への本体の曲げを生じさせることができる。
【0013】
本明細書には、近位端、および、曲げ可能な遠位領域を有する細長い本体と、細長い本体の近位端に連結されるハンドルであって、ハンドルに対して移動可能なアクチュエータを含む、ハンドルと、アクチュエータに隣接した抵抗アセンブリと、を含む医療デバイスであって、抵抗アセンブリは、アクチュエータがハンドルに対して移動している方向に応じて変化する力を、アクチュエータに加えるように構成されている。
【0014】
ある態様では、抵抗アセンブリによって加えられる力は、アクチュエータがハンドルに対して細長い本体の遠位領域を中立位置から曲げる方向に移動している場合に、より小さくなり(ゼロであるかまたはそれに近い可能性があり)、アクチュエータがハンドルに対して移動している場合に、細長い本体の遠位領域を中立位置の方へ戻す方向に、より大きくなる。
【0015】
他の態様では、抵抗アセンブリにより加えられる力は、アクチュエータがハンドルに対して細長い本体の遠位領域を中立位置から第1の曲げ方向へ曲げる方向に移動している場合に、より小さくなり(ゼロまたはほとんどゼロになる可能性があり)、アクチュエータがハンドルに対して細長い本体の遠位領域を中立位置から第1の曲げ方向と
は反対の第2の曲げ方向へ曲げる方向に移動している場合に、より大きくなる。
【0016】
抵抗アセンブリは、異方性摩擦特性を有する材料で作製されている部材を含み得る。代替的にまたは追加的に、抵抗アセンブリは、方向依存性の摩擦力を生み出す表面処理または表面仕上げ(例えば、鱗模様)を有する部材を含み得る。さらなる代替案または追加として、表面処理または表面仕上げはアクチュエータ上に存在し得る。抵抗アセンブリ上に存在する場合、表面処理または表面仕上げは、アクチュエータに対向する表面上に存在し得る。アクチュエータ上に存在する場合、表面処理または表面仕上げは、抵抗アセンブリに対向する表面上に存在し得る。
【0017】
抵抗アセンブリは、アクチュエータの周囲に配置される環状部材を含むことができ、環状部材は、第1の表面と第2の表面とを含み、環状部材の第1の表面は、空洞部を含む。抵抗アセンブリは、環状部材の第1の表面に隣接して、かつ空洞部内において、アクチュエータの周囲に配置される圧縮性部材をさらに含むことができ、第1の方向におけるアクチュエータの移動が、圧縮性部材を環状部材の第1の表面から離し、それにより第1の方向におけるアクチュエータの移動に対する抵抗を最小にし、第1の方向と
は反対の第2の方向におけるアクチュエータの移動が、環状部材の第1の表面に当接するように圧縮性部材を駆動し、それにより第2の方向におけるアクチュエータの移動に対する抵抗を最大にする。
【0018】
別の実施形態では、医療デバイス用のアクチュエータの移動に対して抵抗を与える抵抗アセンブリが、抑制ハウジングと、このハウジング内に配置される環状摩擦アセンブリとを含み、アクチュエータに第1の方向において環状摩擦アセンブリを通過させるのに、アクチュエータに第2の方向において環状摩擦アセンブリを通過させるよりも小さい(ゼロまたはほとんどゼロを含む)力が必要とされる。
【0019】
環状摩擦アセンブリは、異方性摩擦特性を有する材料を含み得る。代替的にまたは追加的に、環状摩擦アセンブリは、方向依存性の摩擦力を生み出す表面処理または表面仕上げを有し得る。
【0020】
環状摩擦アセンブリは、第1の表面と第2の表面とを有する環状の圧縮リングを含むことができ、第1の表面は、圧縮リングの第1の表面と抑制ハウジングとの間に、圧縮リングの第2の表面と抑制ハウジングとの間より長い間隔が存在するように、空洞部を含む。
【0021】
別の態様では、環状摩擦アセンブリは、第1の表面および第2の表面を有する環状ディスクであって、第1の表面は、楔形部分を含む、環状ディスクと、楔形部分上に載った圧縮性部材と、を含み、アクチュエータが、第1の方向において環状摩擦アセンブリを通過する場合、圧縮性部材は、環状ディスクから離れ、アクチュエータが、第2の方向において環状摩擦アセンブリを通過する場合、圧縮性部材は、アクチュエータと環状ディスクとの間に押し込まれるようになっている。圧縮性部材は、Oリングとすることができる。
【0022】
本発明の上述および他の態様、特徴、詳細、実用性、および利点は、以下の記載および特許請求の範囲を読むことにより、また、添付の図面を概観することにより、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【0024】
【
図2】
図1に示されているプランジャタイプのカテーテルの遠位端を曲げる引張ワイヤの使用の図である。
【0025】
【
図3】本明細書における教示による抵抗アセンブリの第1の例示的な実施形態の断面図である。
【0026】
【
図4】本明細書における教示による抵抗アセンブリの第2の例示的な実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、曲げられていない状態、すなわち中立位置にあるプランジャタイプのカテーテル10を示す。カテーテル10は、一般に、近位端14、及び、曲げ可能な遠位領域16を有する細長い本体12と、本体12の近位端14に取り付けられるハンドル18と、を含む。ハンドル18は、アクチュエータ20を含む。
図1に示されている通り、アクチュエータ20は、プランジャであって、そのプランジャは、遠位領域16を、中立位置から矢印Aに沿った第1の方向に(例えば、遠位に)曲げさせるとともに、遠位領域16を、矢印Bに沿った第2の(反対)方向に(例えば、近位に)戻すように移動可能である。例えば、カテーテル10は、本明細書に完全に記載されているかのように、参照により本明細書に援用されている、2013年9月30日に出願された米国仮出願第61/884,897号に開示されているタイプとすることができる。
【0028】
図2は、カテーテル10の付加構成要素、すなわち、本体12を通って延在する引張ワイヤ23を含む付加構成要素を示す。引張ワイヤは、本体12の遠位領域16に連結されている。これにより、矢印Aに沿った第1の方向におけるアクチュエータ20の移動が、遠位領域16を、第1の曲げ方向(例えば、矢印C)に沿って、中立位置から曲げさせ、矢印Bに沿った第2の方向におけるアクチュエータ20の移動が、遠位領域16を中立位置の方へ(例えば、矢印Dに沿って)戻させる。当業者がカテーテルにおける引張ワイヤの使用を理解する限りにおいて、本開示の本態様の詳細な説明は不要であり、したがって、本明細書においては与えられていない。
【0029】
説明の目的で、単方向カテーテルを参照しつつ、本明細書に種々の実施形態が開示されている。しかし、開示されている原理は、双方向カテーテルを含むが、これに限定されない、他の文脈においても等しく適用可能であることが理解されるべきである。したがって、例えば、矢印Aに沿った第1の方向におけるアクチュエータ20の移動が、遠位領域16を、第1の曲げ方向(例えば、
図2の矢印C)に沿って、中立位置から曲げることができると考えられる一方で、第2の方向におけるアクチュエータ20の移動が、遠位領域16を、第2の曲げ方向に沿って、中立位置から曲げることができると考えられる。第1の曲げ方向および第2の曲げ方向は、どちらも同一平面内に存在する。
【0030】
ハンドル18は、抵抗アセンブリを含む。抵抗アセンブリは、遠位領域16にどのような移動が生じる場合であっても(例えば、中立位置からの曲げ、中立位置への戻り、のいずれであっても)、施術者が矢印Aに沿って第1の方向にアクチュエータ20を移動させることを相対的により容易にし、かつ、施術者が矢印Bに沿って第2の方向にアクチュエータ20を移動させるのを相対的により難しくするように動作する。通常、抵抗アセンブリによって加えられる力は、アクチュエータ20と抵抗アセンブリとの間に生じる摩擦力である。つまり、抵抗アセンブリは、ハンドル18に対するアクチュエータ20の移動に対して摩擦抵抗をもたらし、この摩擦抵抗は、アクチュエータ20が移動している方向によって異なる。
【0031】
図3は、アクチュエータ20に隣接して配置され、抑制ハウジング26と、アクチュエータ20を取り巻いて配置される圧縮リング28とを含む、第1の例示的な抵抗アセンブリ24を示す。圧縮リング28は、第1の表面30と、第1の表面30の反対側の第2の表面32とを含む。第1の表面30が面取り部34を含むのに対し、第2の表面32は概して平坦である(つまり、第2の表面は、該して、抑制ハウジング26の輪郭に従う)。面取り部34は、第1の表面30内に空洞部36を形成しており、これにより、第1の表面30と抑制ハウジング26との間に、第2の表面32と抑制ハウジング26との間よりも長い間隔が存在する。
【0032】
第1の表面30は、アクチュエータ20の移動に対して、より小さい抵抗が所望される方向に、例えば、遠位領域16を中立位置から曲げる方向である第1の(例えば、遠位の)方向に向けられている。したがって、アクチュエータ20が、矢印Aに沿って第1の方向に駆動されると、圧縮リング28は、面取り部34により作り出される空間(すなわち、空洞部36)内へ変形し、それにより、圧縮リング28がアクチュエータ20に加える垂直抗力と、第1の方向におけるアクチュエータ20の移動に対する摩擦抵抗との両方を低減する。逆に、アクチュエータ20が、矢印Bに沿って第2の方向に駆動された場合、圧縮リング28は、抑制ハウジング26に当接するように駆動され、圧縮リング28がアクチュエータ20に加える垂直抗力と、第2の方向におけるアクチュエータ20の移動に対する摩擦抵抗との両方を増大させる。結果として、施術者にとっては、アクチュエータ20を抵抗アセンブリ24を通して第2の方向に移動させるよりも、第1の方向に移動させる方が容易となる。
【0033】
さらに、抵抗アセンブリ24は、遠位領域16を中立位置の方へ移動させる傾向があると考えられる、任意の内部で生じる復元力(例えば、矢印Aの方向におけるアクチュエータ20の移動により、引張ワイヤ23が引張状態で配置されている場合に生じるばね力)に対して、十分な摩擦抵抗を与える。この点に関して、抵抗アセンブリ24を、カテーテル10のための自動ロック式アセンブリと見なすこともできる。
【0034】
図4は、アクチュエータ20に隣接して配置される第2の例示的な抵抗アセンブリ38を示す。抵抗アセンブリ38は、抑制ハウジング26を同様に含み、かつ、アクチュエータ20の周囲に、環状ディスク40のような環状摩擦アセンブリと、Oリング42などの圧縮性部材とをさらに含む。
【0035】
圧縮リング28と同様に、環状ディスク40は、第1の表面44と、第1の表面44の反対側の第2の表面46とを含む。第1の表面44は、空洞部50の形成という結果をもたらす、傾斜した/楔形の縁部48を含む一方で、第2の表面46は、概して平坦である。Oリング42は、空洞部50内で第1の表面44に隣接して配置される(例えば、傾斜した/楔形の縁部48上に載っている)。
【0036】
第1の表面44は、アクチュエータ20の移動に対して、より小さい抵抗が所望される方向に向けられている。したがって、アクチュエータ20が、矢印Aに沿った第1の方向に駆動されると、Oリング42が、環状ディスク40から離れ、それにより、Oリング42がアクチュエータ20に加える垂直抗力と、第1の方向におけるアクチュエータ20の移動に対する摩擦抵抗との両方を低減する。逆に、アクチュエータ20が、矢印Bに沿った第2の方向に駆動された場合、Oリング42が、環状ディスク40とアクチュエータ20との間に挟まれるまで、Oリング42は、傾斜した/楔形の縁部48を下方に駆動され、Oリング42がアクチュエータ20に加える垂直抗力と、第2の方向におけるアクチュエータ20の移動に対する摩擦抵抗との両方を増大させる。結果として、施術者にとっては、アクチュエータ20を抵抗アセンブリ38を通して第2の方向に移動させるよりも、第1の方向に移動させる方が容易となる。
【0037】
さらに、抵抗アセンブリ38は、遠位領域16を中立位置の方へ移動させる傾向があると考えられる、任意の内部で生じる復元力(例えば、矢印Aの方向におけるアクチュエータ20の移動により、引張ワイヤ23が引張状態で配置されている場合に生じるばね力)に対して、十分な摩擦抵抗を与える。この点に関して、抵抗アセンブリ38は、カテーテル10のための自動ロック式アセンブリと見なすこともできる。
【0038】
上記の通り、本発明のいくつかの実施形態が、ある程度の特殊性を伴って説明されてきたが、当業者は、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に対する多数の変更を施すことができる。
【0039】
例えば、上記の実施形態では、アクチュエータ20の移動に対する方向依存性の抵抗は、アクチュエータ20が移動している方向に応じてアクチュエータ20に対して加えられる垂直抗力(および、したがって、摩擦力)の差異に起因する。しかし、例えば(例えば、圧縮リング28、環状ディスク40、またはOリング42としての)抵抗アセンブリの内部に異方性摩擦特性を有する材料を使用することにより、アクチュエータ20と抵抗アセンブリ(例えば、抵抗アセンブリ24および/または抵抗アセンブリ38)との間の摩擦係数が方向依存性となり得ることが考えられる。
【0040】
他の態様では、アクチュエータ20の表面および/または抵抗アセンブリ(例えば、圧縮リング28、環状ディスク40、および/またはOリング42)の表面は、方向依存性の摩擦力を生み出す、魚の鱗模様のような処理または仕上げを含む。
【0041】
そのような材料および/または表面処理は、方向依存性の垂直抗力を生み出す、
図3および
図4に示され、かつ前述された面取りした/傾斜した/楔形の縁部34、48の代替として、または、それらに付加して使用され得る。
【0042】
同様に、Oリング42は、アクチュエータ20が移動するにつれてOリング42がアクチュエータ20に加える垂直抗力をさらに変更するように、トロイダル形状から変形されてもよい。例えば、Oリング42は、アクチュエータ20が矢印Bに沿った第2の方向に移動するとOリング42がアクチュエータ20に加える垂直抗力を増大させる扁平部分、面取り部、スリット、および他の変形例も含み得る。
【0043】
さらなる例として、本明細書における教示は、カテーテルおよび他の医療デバイス用のアクチュエータの文脈において説明されているが、本原理は、例えば、電子線形アクチュエータおよび/または油圧線形アクチュエータを含む、他のアクチュエータにも適用され得る。
【0044】
全ての方向に関する言及(例えば、上部、下部、上方、下方、左、右、左側、右側、最上部、底部、上、下、垂直、水平、時計回り、および半時計回り)は、読者による本発明の理解を助ける同定目的のために用いられているに過ぎず、詳細には、本発明の位置、向き、または使用に関して、限定を設けない。結合に関する言及(例えば、取り付けられる、連結される、接続されるなど)は広義に解釈されるべきものであり、要素の接続間の中間部材および要素間の相対移動を含み得る。したがって、結合に関する言及は、必ずしも、2つの要素が直接接続され、互いに固定された状態にあることを示すとは限らない。
【0045】
上記の記載に含まれ、または添付の図面に示される全ての事物は、例示的なものに過ぎず、限定的でないと解釈されるべきことが意図される。詳細または構造における変更は、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の精神から逸脱することなく施され得る。