特許第6603276号(P6603276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6603276パーキングロックを油圧作動させるためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603276
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】パーキングロックを油圧作動させるためのシステム
(51)【国際特許分類】
   F16H 63/34 20060101AFI20191028BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20191028BHJP
   B60T 17/02 20060101ALI20191028BHJP
   B60T 15/36 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   F16H63/34
   B60T1/06 G
   B60T17/02
   B60T15/36 Z
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-163116(P2017-163116)
(22)【出願日】2017年8月28日
(65)【公開番号】特開2018-44672(P2018-44672A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2018年1月25日
(31)【優先権主張番号】10 2016 115 925.5
(32)【優先日】2016年8月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517175116
【氏名又は名称】ジーケイエヌ・オートモーティブ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100117411
【弁理士】
【氏名又は名称】串田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ラインハルト・モールマン
(72)【発明者】
【氏名】サッシャ・ミエバヒ
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0306431(US,A1)
【文献】 特開2003−074606(JP,A)
【文献】 特表2015−525862(JP,A)
【文献】 特開2000−272486(JP,A)
【文献】 特開2005−282483(JP,A)
【文献】 特開2014−134243(JP,A)
【文献】 特開2005−180620(JP,A)
【文献】 特開2009−227022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/34
B60T 1/06
B60T 15/36
B60T 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のパーキングロックを作動させるための油圧作動システムであって、
− 前記パーキングロックを解放位置からロック位置におよび前記ロック位置から解放位置に移動させるためのアクチュエータ(5)と、
− 前記パーキングロックを前記ロック位置および前記解放位置に移動させる油圧を生成するためのポンプ装置(1)と、
− それを介して前記ポンプ装置(1)が前記アクチュエータ(5)に接続される、油圧回路であって、第1の管路区間(3)および第2の管路区間(4)が設けられ、前記管路区間(3、4)が、前記アクチュエータ(5)に通じる圧力送り管路としておよび前記アクチュエータから離れる方向に通じる帰還管路として、前記作動システムの作動に応じる形で少なくとも各区間において機能する、油圧回路と、を備える油圧作動システムにおいて、
前記ポンプ装置(1)が、ロックする送達方向(S)および解放する送達方向(L)を有して双方向的に動作することができるポンプ装置であり、逆止め弁(14、15)が、前記ロックする送達方向(S)に前記ポンプ装置(1)を作動させた場合に前記パーキングロックが前記ロック位置に移動し、前記解放する送達方向(L)に前記ポンプ装置(1)を作動させると前記パーキングロックが前記解放位置に移動するように、前記油圧回路内に配置され
前記解放する送達方向(L)に前記ポンプ装置(1)を作動させると、前記第1の管路区間(3)が圧力をかけられて圧力送り管路として機能し、前記ロックする送達方向(S)に前記ポンプ装置(1)を作動させると、前記第2の管路区間(4)が圧力をかけられて圧力送り管路として機能し、
前記システムに割り当てられた組立体の組立構成要素に冷却油および/または潤滑油を供給するために、前記第1の管路区間(3)に接続される供給区間(13)が設けられることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記ポンプ装置(1)が、双方向的に動作することができるジロータポンプであることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の管路区間(3)内に第1の逆止め弁(14)が配置され、前記第2の管路区間(4)内に第2の逆止め弁(15)が配置されることを特徴とする、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記逆止め弁(14、15)が、受動的逆止め弁であることを特徴とする、請求項2または3に記載のシステム。
【請求項5】
前記逆止め弁(14、15)が、シート弁として構成されることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の逆止め弁(14)および前記第2の逆止め弁(15)が、いずれの場合も、貫通流れ方向および閉鎖方向を有し、かつ、前記ポンプ装置(1)によるそれぞれの前記管路区間(3、4)の圧力負荷に応じてそれぞれの前記逆止め弁(14、15)が前記閉鎖方向に負荷をかけられるように、それぞれの前記管路区間(3、4)に配置されることを特徴とする、請求項2に記載のシステム、または請求項2に従属する請求項からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記供給区間(13)内に少なくとも1つの制御弁(11)が配置され、前記制御弁(11)を介して、前記供給区間の少なくとも一部が、閉鎖され得るかまたは貫通流れに切り換えられ得ることを特徴とする、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記供給区間(13)内に主オリフィス(11’)が配置されることを特徴とする、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記供給区間(13)内に、前記冷却油および/または潤滑油の流れの定められた制限のための注油オリフィス(18)が配置されることを特徴とする、請求項またはに記載のシステム。
【請求項10】
制御論理手段を有し、前記制御論理手段において、前記ポンプ装置(1)によって生成される前記油圧を検出および/または設定するために、ポンプ制御電流が使用されることを特徴とする、請求項またはに記載のシステム。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のパーキングロックを作動させるための油圧作動システムを有する、自動車。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載の自動車のパーキングロックを作動させるための油圧作動システムを作動させる方法であって、
− 前記パーキングロックを前記アクチュエータ(5)により前記解放位置に移動させるために、前記ポンプ装置(1)が、前記第1の管路区間(3)の圧力負荷のための解放する送達方向(L)に作動され、
− 前記パーキングロックを前記アクチュエータ(5)により前記ロック位置に移動させるために、前記ポンプ装置(1)が、前記第2の管路区間(4)の圧力負荷のための前記ロックする送達方向(S)に作動され
前記ポンプ装置(1)が、前記解放する送達方向(L)に作動されるときに、請求項1に記載のシステムに割り当てられた組立体の組立構成要素に、前記第1の管路区間(3)に接続される供給区間(13)によって、冷却油および/または潤滑油を供給する
ことを特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項7に記載の自動車のパーキングロックを作動させるための油圧作動システムを作動させる方法であって、
前記パーキングロックを前記アクチュエータ(5)により前記解放位置に移動させるために、前記ポンプ装置(1)が、前記第1の管路区間(3)の圧力負荷のための解放する送達方向(L)に作動され、
前記パーキングロックを前記アクチュエータ(5)により前記ロック位置に移動させるために、前記ポンプ装置(1)が、前記第2の管路区間(4)の圧力負荷のための前記ロックする送達方向(S)に作動され、
前記ポンプ装置(1)が、前記解放する送達方向(L)に作動されるときに、請求項1に記載のシステムに割り当てられた組立体の組立構成要素に、前記第1の管路区間(3)に接続される供給区間(13)によって、冷却油および/または潤滑油を供給し、
前記供給区間(13)を閉鎖するかまたは前記供給区間(13)を貫通流れに切り換えるために、前記解放する送達方向(L)に前記ポンプ装置を作動させると、前記制御弁(11)が作動されることを特徴とする、方法。
【請求項14】
前記ポンプ制御電流が、前記ポンプ装置によって生成される前記油圧を設定および/または検出するために使用されることを特徴とする、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から10のいずれか一項に記載のパーキングロックを作動させるための油圧作動システムを制御するための電子制御ユニットに、コンピュータプログラム製品のプログラムコードに格納されたプログラムルーチンを前記電子制御ユニットが実行したときに、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法に従って、自動車のパーキングロックを作動させるための油圧作動システムを作動させる、コンピュータプログラム製品。
【請求項16】
請求項15に記載のコンピュータプログラム製品が書かれたプログラムメモリを用いて請求項12から14のいずれか一項に記載の方法に従って請求項1から10のいずれか一項に記載の自動車のパーキングロックを作動させるための油圧作動システムを制御するための、電子制御ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のパーキングロックを作動させるための油圧作動システムであって、
− パーキングロックを解放位置からロック位置におよび/またはロック位置から解放位置に移動させるためのアクチュエータと、
− パーキングロックをアクチュエータによりロック位置または解放位置に移動させる油圧を生成するためのポンプ装置と、
− それを介してポンプ装置がアクチュエータに接続される、油圧回路であって、第1の管路区間および第2の管路区間が設けられ、管路区間が、アクチュエータに通じる圧力送り管路として、またはアクチュエータから離れる方向に通じる帰還管路として、作動システムの作動に応じる形で少なくとも各区間において機能する、油圧回路と、
を備える、油圧作動システムに関する。
【0002】
このタイプの油圧作動システムを有する自動車、このタイプのシステムを作動させるための方法、このタイプのシステムを作動させる電子制御ユニットのためのコンピュータプログラム製品、および、対応する電子制御ユニットも同様に、本発明に属すると見なされる。
【背景技術】
【0003】
パーキングロックを作動させるための油圧作動システムは、一般に知られている。図1は、慣例から本出願人に知られているシステムを示す。このタイプのシステムの欠点は、アクチュエータに通じる異なる管路区間が圧力送り管路としてまたは帰還管路として目標とされた態様で使用されることを可能にするために、比較的高価な4/2方滑り弁が設けられなければならないことである。さらに、その設計の結果として、設けられるべき滑り弁は、管路区間内の汚染の影響を受けやすい。さらに、予応力下にあるアクチュエータがロック位置に戻されるのを防ぐ、制御装置を介して作動されるロッキングラッチング手段(locking latching means)が設けられるが、このロッキングラッチング手段は、追加的に作動される必要があり、かつ、追加的な構成要素および設置スペースの要求を生じさせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような背景を踏まえ、本発明の目的は、自動車のパーキングロックを作動させるための油圧作動システムを提供することであり、この油圧作動システムは、単純で、頑丈で、不良の影響を比較的受けにくく、かつ安価で、同時に要求する設置スペースが少ない、可能な限り少数の構成要素で間に合わせ、また、この油圧作動システムの油圧配置は、パーキングロックをロックおよびロック解除するための単純な作動および単純な移動を可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
油圧作動システムに関しては、この目的は、ポンプ装置が、ロックする送達方向および解放する送達方向を有して双方向的に動作することができるポンプ装置であり、また、逆止め弁が、ロックする送達方向へのポンプ装置の作動によりパーキングロックがロック位置に移動し、解放する送達方向へのポンプ装置の作動によりパーキングロックが解放位置に移動するように、油圧回路内に配置されるという事実により、達成される。
【0006】
方法に関しては、この目的は、パーキングロックをアクチュエータにより解放位置に移動させるために、ポンプ装置が、第1の管路区間の圧力負荷のための解放する送達方向に作動され、また、パーキングロックをアクチュエータによりロック位置に移動させるために、ポンプ装置が、第2の管路区間の圧力負荷のためのロックする送達方向に作動されるという事実により、達成される。
【0007】
具体的には、ロックする送達方向にポンプ装置を作動させると、第2の管路区間に独占的に圧力がかかってアクチュエータへの圧力送り管路として機能する一方で、第1の管路区間が帰還管路として機能し、また、解放する送達方向にポンプ装置を作動させると、第1の管路区間に独占的に圧力がかかってアクチュエータへの圧力送り管路として機能する一方で、第2の管路区間が帰還管路として機能することが、規定され得る。
【0008】
これらの手段の結果として、汚れの影響を受けやすい高価な4/2方滑り弁を省くことができる。油圧アクチュエータの作動、ならびに圧力送り管路または帰還管路としての第1の管路区間または第2の管路区間の目標とされた作動および利用、したがって解放位置またはロック位置へのパーキングロックの移動は、単にポンプ装置の送達方向の選択を介して行われ得る。油圧アクチュエータは、厳密に言えば、パーキングロックの制御された解放および制御された係合の両方のために、ポンプ装置によって生成される圧力および/または前述のポンプ装置の回転速度を介して制御され得る。
【0009】
好ましくは電気モータによって駆動されるポンプ装置は、具体的には、双方向的に作動することができる回転ポンプ、特にジロータポンプとすることができる。すると、ロックする送達方向および解放する送達方向は、それぞれポンプのロックする回転方向および解放する回転方向と機能的に同一と見なされる。
【0010】
1つの有利な改良形では、第1の管路区間内に第1の逆止め弁が配置され、第2の管路区間内に第2の逆止め弁が配置される。逆止め弁は、好ましくは、受動的逆止め弁(passive check valve)として構成される。この文脈において、「受動的」とは、それらの逆止め弁が電子制御ユニットによる能動的な(電気的な)作動を必要とせず、むしろ、言うなれば単に油圧回路内の圧力状況によって自動的に制御されることを意味する。逆止め弁はまた、純粋に圧力制御される逆止め弁と呼ばれ得る。
【0011】
さらに、このタイプの受動的なまたは純粋に圧力制御される逆止め弁の提供は、逆止め弁をシート弁(seat valve)(「シート型弁」)として構成することを可能にする。そのような逆止め弁は、例えば、電磁的に作動される滑り弁(「スプール型弁」)と比較して、汚れの影響を受けにくく、より高い負荷をかけられることができ、漏れの影響を受けにくく、かつ、より単純な構成のものであるので、費用が相当に少なくなる。
【0012】
第1の逆止め弁および第2の逆止め弁は、いずれの場合も、貫通流れ方向および閉鎖方向を有し、かつ、その逆止め弁が配置された管路区間の圧力負荷に基づきそれぞれの逆止め弁がポンプ装置により閉鎖方向に負荷をかけられるように、それぞれの管路区間内に配置されることが、規定されている。結果として、ポンプ装置の送達方向に応じる形での第1の管路区間または第2の管路区間の任意選択の圧力負荷は、さらなる制御介入が必要とされることなしに、自動的に調節される。
【0013】
パーキングロックの作動のためだけではなくさらなる構成要素への冷却油および/または潤滑油の供給のためにもシステムを利用するために、油圧作動システムは、油圧作動システムに割り当てられた組立体の組立構成要素(例えば、動力取出しユニット(PTU:power takeoff unit)、差動、伝達、または類似の動力伝達装置組立体)に冷却油および/または潤滑油を供給するために、第1の管路区間に接続された油圧供給区間を備えることができる。供給区間が好ましくは油圧回路の第1の管路区間にだけ接続されて第2の管路区間には接続されないという事実により、第1の管路区間にも圧力がかけられ(ポンプ装置は、解放する方向に送達する)、したがってパーキングロックが解放位置に位置しているときにのみ、供給区間に圧力がかけられるかまたは圧力がかけられ得ることが確実とされ、解放位置では、この位置でのみ車両がともあれ駆動され得るので、冷却油または潤滑油の要求が、特定の組立構成要素においてともあれ生じ得る。対照的に、第2の管路区間に圧力がかけられて(ポンプ装置はロックする方向に送達する)、前述の第2の管路区間がアクチュエータへの圧力送り管路として機能した場合、パーキングロックは、ロック位置に押しやられる。パーキングロックがロック位置に位置している場合、車両は必然的に停止し、軸受または歯車などの任意の組立構成要素に対する明らかな冷却油または潤滑油の要求は、初めから存在しない。
【0014】
1つの有利な改良形では、供給区間内に制御弁が追加的に配置されてもよく、この制御弁を介して、供給区間の少なくとも一部、しかし好ましくは供給区間全体が、閉鎖され得るかまたは貫通流れに切り換えられ得る。これにより、第1の管路区間が加圧された場合でも、したがってパーキングロックが解放位置に位置する場合でも、供給区間を介して行われる冷却油または潤滑油の供給を停止することが可能になり、かつ/または、冷却油または潤滑油の要求が実際にある場合にのみ前述の冷却油または潤滑油の供給を使用することが可能になる。
【0015】
冷却油および/または潤滑油の流れの定められた制限のための注油オリフィスが、好ましくは供給区間内に配置される。貫通流れオリフィスの通路断面の寸法決めは、第1に、動作中に行き渡る圧力状況において構成要素の十分な注油が確実とされるほどの大きさとされかつ注油される構成要素に対して適合され、第2に、パーキングロックを解放位置に押しやるかまたはパーキングロックを解放位置に保持するために、供給区間が貫通流れに切り換えられた場合でもポンプ装置が十分な圧力を高めることができるほどの小ささとされかつポンプ装置に対して適合されるようなものである。
【0016】
1つの好ましい実施形態では、ポンプ装置によって提供される油圧を制御するために電気ポンプ制御電流(ポンプ装置を駆動する電気モータに供給される電流)が使用されることが規定されている。ポンプ制御電流およびポンプトルクの大部分に基づいて、したがってポンプ制御電流およびポンプ装置によって提供される油圧の大部分に基づいて、システム内に行き渡る前述の油圧は、ポンプ制御電流を使用することによって示され得る。したがって、ポンプ制御電流を検出するセンサシステムが、圧力センサとして間接的に機能し得る。
【0017】
システムは、具体的には、システムを制御するためおよび/またはシステム状態を検出もしくは監視するためにポンプ制御電流を使用する、制御論理手段を有することができる。それに加えて、さらにポンプの回転速度および/または回転方向が、システムによって検出され、かつ、システム状態の電子的判定のために評価されることが、規定され得る。この目的のために、ポンプ装置、またはポンプ装置を駆動する動力伝達装置は、回転速度および/または回転方向の検出手段を有することが好ましい。前述の変数の検出により、対応する計算作業が行われたときに、システム状態に関する結論が導き出され得る。例えば、回転速度の検出とポンプ装置の送達容積ならびに圧力チャンバおよび関連する管路区間の容積に関する知識とにより、アクチュエータの位置に関する結論が導き出され得る。
【0018】
本発明のさらなる特徴および利点は、従属請求項および図面を使用して以下に説明する好ましい例示的な実施形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】従来技術による、自動車のパーキングロックを油圧作動させるための作動システムの図である。
図2】双方向的に動作することができるポンプ装置を用いる、車両のパーキングロックを油圧作動させるための作動システムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、自動車のパーキングロックを油圧作動させるための概念を示し、この概念は、従来技術から一般に知られている。
油圧は、電気モータMを使用して駆動されるポンプ装置1を介して、圧力管路2内で高められる。圧力管路は、電磁的に作動可能な4/2方滑り弁6(4/2方「スプール型ソレノイド弁」)に接続され、この4/2方滑り弁6を切り換えることにより、第1の管路区間3または第2の管路区間4をアクチュエータ5につながる圧力送り管路として選択的に使用することができ、一方で、それぞれの他方の管路区間は、ほとんど圧力のかからない帰還管路として機能する。
【0021】
第1の管路区間3に油圧がかけられると(これは、図1に示されている滑り弁6のその位置に対応する)、パーキングロックは、アクチュエータ5により、解放位置に移動される。前述の解放位置では、ばねを介して予め圧迫されたパーキングロックの係合レバー7が、ここでは例としてロックリング9である、対応する相対部品(counterpiece)から係合解除されるが、このロックリング9は、係合レバー7がロックリング9と係合している場合にはパーキングロックが作動されるように、図示されていない方法で、動力伝達経路の一部と相互作用する。
【0022】
図1に示された位置を発端とした場合、4/2方滑り弁6は、切り換えられ、第2の管路区間4は、圧力をかけられる。アクチュエータは、作動カム8を図1に示された位置から係合レバー7に逆らって引っ張り、その結果、係合レバー7は、ロックリング9と確実にロッキング係合する(パーキングロックのロック位置)。すると、第1の管路区間3は、ほとんど圧力のかからない帰還管路として機能し、一方で、第2の管路区間4は、アクチュエータ5への圧力送り管路として機能する。
【0023】
パーキングロックを図1に示された解放位置に保持するために、制御装置(ECU)を介して作動され得るロッキングラッチング手段12が設けられ、このロッキングラッチング手段12は、パーキングロックの解放位置を確実とする位置にアクチュエータ5を保持するために、アクチュエータ5に作用することができる。
【0024】
油圧制御弁11が圧力管路2に接続され、この油圧制御弁11の切り換えを介して、加圧された油を、図1に示された油圧回路から除去することができ、かつ、供給区間13を介して他の組立構成要素に送ることができる。
【0025】
図2は、本発明による、自動車のパーキングロックを作動させるための油圧作動システムを示す。図2では、図1で既に使用されている参照番号は、機能的に同一の構成要素に前述の参照番号が割り当てられている限りにおいて、維持されている。
【0026】
図2では、ポンプ装置1が、モータMを用いることにより、電気モータによって駆動される。ポンプ装置1は、双方向的に動作することができ、つまり、ポンプ装置1は、2つの回転方向、すなわち、ロックする回転方向および解放する回転方向に駆動されることができ、また、ポンプ装置1が動作される回転方向に従って、ロックする送達方向「S」に、または解放する送達方向「L」に、油圧液を送達することができる。
【0027】
ポンプ装置1が油圧液をロックする送達方向「S」に送達した場合、第2の管路区間4が、圧力をかけられて、アクチュエータ5への圧力送り管路として働く。前述の送達方向「S」の場合、アクチュエータ5は、作動カム8を図に示された位置から係合レバー7に逆らって押すことにより、パーキングロックを図2に示された解放位置からロック位置に移動させるように、圧力をかけられ、その結果、係合レバー7は、ロックリング9と確実にロッキング係合する(図1に関して既に説明したような、パーキングロックのロック位置)。すると、第1の管路区間3は、ほとんど圧力のかからない帰還管路として機能し、油圧液は、アクチュエータに別の作用の方向に圧力をかけるために、アクチュエータの第1の圧力チャンバKからポンプ装置1を介してアクチュエータの第2の圧力チャンバKに圧送され、したがって、アクチュエータに送り返される。
【0028】
ポンプ装置1が油圧液を解放する送達方向「L]に送達した場合、第1の管路区間3は、圧力をかけられて、アクチュエータ5への圧力送り管路として働く。前述の送達方向「L]の場合、アクチュエータは、パーキングロックを図2に示された解放位置に移動させるように、圧力をかけられる。すると、第2の管路区間4は、ほとんど圧力のかからない帰還管路として機能し、アクチュエータ5の第2の圧力チャンバKから外へ移動される油圧液体積は、アクチュエータ作動中にポンプ装置を介して圧力下で第1の管路区間3に供給され、第1の管路区間3から、第1の圧力チャンバKに供給され得る。
【0029】
いずれの場合でも、ポンプ装置1と油圧液貯槽10との間で、第1の管路区間3および第2の管路区間4の両方に、1つの逆止め弁が配置される。第1の逆止め弁14が、第1の管路区間3から油圧液貯槽10内への油圧液の帰還流または帰還送達を防止し、第2の逆止め弁15が、第2の管路区間4から油圧液貯槽10内への油圧液の帰還流または帰還送達を防止する。それぞれに関連付けられた管路区間に圧力がかけられると、2つの逆止め弁14、15は、閉位置に配置される。それと同時に、2つの逆止め弁14および15は、前述のポンプ装置1がアクチュエータのチャンバ体積を超える油圧液体積を搬送するものである場合に、ポンプ装置1が前述のポンプ装置1の送達方向に関わらず油圧液を油圧液貯槽10から吸引できることを可能にする。したがって、逆止め弁14、15の配置により、油圧液を貯槽10からポンプ装置1の両送達方向「L」および「S」に吸引することが可能になる。
【0030】
供給区間13または供給管路が、第1の管路区間3だけに接続される。図2が示すように、好ましくはVBS(「Variable Bleed Solenoid:可変ブリードソレノイド」)である制御弁11が、供給区間13内に設けられてもよく、供給管路は、この制御弁11を介して、閉じられるかまたは貫通流れに切り換えられ得る。制御弁11が供給管路13を貫通流れに切り換えた場合、構成要素(歯車、軸受、等)に注油するための注油点17に、有利には中間に接続された油冷却器16を用いて、冷却および/または潤滑用の油が供給され得る。注油点は注油オリフィス18を備え、注油オリフィス18の有効径は、注油要求および優勢な圧力状況に適応している。
【0031】
図1に示された作動システムの場合と異なり、供給区間13が第1の管路区間3だけに接続されているという事実により、供給区間は、第1の管路区間3にも圧力がかけられたとき、つまり、ポンプ装置1が解放する送達方向「L」に送達し、解放位置に位置するパーキングロックにより車両がともあれ移動され得るときにのみ、同様に圧力をかけられる。
【0032】
図2に示された制御弁11ではなく、油圧オリフィス(hydraulic orifice)11’が代わりに設けられてもよく、この油圧オリフィス11’により、供給管路13’の通路断面が、定められた態様で減少される。図2では、オリフィス11’および供給管路13’は、制御弁の使用に対する代替実施形態として、破線を使用して示されている。オリフィス11’は、注油オリフィス18の上流に位置する主オリフィスを形成し、その絞り作用を通じて、下流の注油オリフィス18に供給される油体積流量が、好ましくは供給区間全体のために設定され得る。絞り作用は、主オリフィス11’により恒久的に貫通流れに設定された供給区間にもかかわらず、ポンプ装置がパーキングロックの作動に十分な圧力を高めることができるように、設定される。
【0033】
供給管路13’にオリフィス11’を使用することは、例えば、冷却油または潤滑油の体積流量の調整範囲が狭いこと、および、ポンプ装置が解放する送達方向Lに送達するが供給区間が完全には閉鎖されていない場合にこのタイプのオリフィス11’では注油を必要とする構成要素の連続的な注油のみが可能とされることといった、供給管路13に制御弁11を使用することに劣るいくつかの欠点を有するが、ポンプ装置によって提供される圧力の変化の可能性は、供給管路13’を介して送達される冷却油または潤滑油の体積流量の多くの適用に対する十分な設定選択肢を提供する。さらに、オリフィスが使用される場合、制御弁に対応する制御電子装置システムを省くことができ、システムは、全体的に相当に安価になりかつ複雑さが減少する。
以上説明したように、本発明は以下の形態を有する。
形態1
自動車のパーキングロックを作動させるための油圧作動システムであって、
− 前記パーキングロックを解放位置からロック位置におよび/または前記ロック位置から解放位置に移動させるためのアクチュエータ(5)と、
− 前記パーキングロックを前記ロック位置または前記解放位置に移動させる油圧を生成するためのポンプ装置(1)と、
− それを介して前記ポンプ装置(1)が前記アクチュエータ(5)に接続される、油圧回路であって、第1の管路区間(3)および第2の管路区間(4)が設けられ、前記管路区間(3、4)が、前記アクチュエータ(5)に通じる圧力送り管路としてまたは前記アクチュエータから離れる方向に通じる帰還管路として、前記作動システムの作動に応じる形で少なくとも各区間において機能する、油圧回路と、を備える油圧作動システムにおいて、
前記ポンプ装置(1)が、ロックする送達方向(S)および解放する送達方向(L)を有して双方向的に動作することができるポンプ装置であり、逆止め弁(14、15)が、前記ロックする送達方向(S)に前記ポンプ装置(1)を作動させた場合に前記パーキングロックが前記ロック位置に移動し、前記解放する送達方向(L)に前記ポンプ装置(1)を作動させると前記パーキングロックが前記解放位置に移動するように、前記油圧回路内に配置されることを特徴とする、システム。
形態2
前記解放する送達方向(L)に前記ポンプ装置(1)を作動させると、前記第1の管路区間(3)が圧力をかけられて圧力送り管路として機能し、前記ロックする送達方向(S)に前記ポンプ装置(1)を作動させると、前記第2の管路区間(4)が圧力をかけられて圧力送り管路として機能することを特徴とする、形態1に記載のシステム。
形態3
前記ポンプ装置(1)が、双方向的に動作することができるジロータポンプであることを特徴とする、形態1または2に記載のシステム。
形態4
前記第1の管路区間(3)内に第1の逆止め弁(14)が配置され、前記第2の管路区間(4)内に第2の逆止め弁(15)が配置されることを特徴とする、形態1から3のいずれか一項に記載のシステム。
形態5
前記逆止め弁(14、15)が、受動的逆止め弁であることを特徴とする、形態3または4に記載のシステム。
形態6
前記逆止め弁(14、15)が、シート弁として構成されることを特徴とする、形態1から5のいずれか一項に記載のシステム。
形態7
前記第1の逆止め弁(14)および前記第2の逆止め弁(15)が、いずれの場合も、貫通流れ方向および閉鎖方向を有し、かつ、前記ポンプ装置(1)によるそれぞれの前記管路区間(3、4)の圧力負荷に応じてそれぞれの前記逆止め弁(14、15)が前記閉鎖方向に負荷をかけられるように、それぞれの前記管路区間(3、4)に配置されることを特徴とする、形態3に関連する、形態1から6のいずれか一項に記載のシステム。
形態8
形態1に記載のシステムに割り当てられた組立体の組立構成要素に冷却油および/または潤滑油を供給するために、前記第1の管路区間(3)に接続される供給区間(13)が設けられることを特徴とする、形態1から7のいずれか一項に記載のシステム。
形態9
前記供給区間(13)内に少なくとも1つの制御弁(11)が配置され、前記制御弁(11)を介して、前記供給区間の少なくとも一部が、閉鎖され得るかまたは貫通流れに切り換えられ得ることを特徴とする、形態8に記載のシステム。
形態10
前記供給区間(13)内に主オリフィス(11’)が配置されることを特徴とする、形態9に記載のシステム。
形態11
前記供給区間(13)内に、前記冷却油および/または潤滑油の流れの定められた制限のための注油オリフィス(18)が配置されることを特徴とする、形態8に関連する、形態9または10に記載のシステム。
形態12
制御論理手段を有し、前記制御論理手段において、前記ポンプ装置(1)によって生成される前記油圧を検出および/または設定するために、ポンプ制御電流が使用されることを特徴とする、形態10または11に記載のシステム。
形態13
形態1から12のいずれか一項に記載のパーキングロックを作動させるための油圧作動システムを有する、自動車。
形態14
形態1から12のいずれか一項に記載の自動車のパーキングロックを作動させるための油圧作動システムを作動させる方法であって、
− 前記パーキングロックを前記アクチュエータ(5)により前記解放位置に移動させるために、前記ポンプ装置(1)が、前記第1の管路区間(3)の圧力負荷のための解放する送達方向(L)に作動され、
− 前記パーキングロックを前記アクチュエータ(5)により前記ロック位置に移動させるために、前記ポンプ装置(1)が、前記第2の管路区間(4)の圧力負荷のための前記ロックする送達方向(S)に作動されることを特徴とする、方法。
形態15
前記供給区間(13)を閉鎖するかまたは前記供給区間(13)を貫通流れに切り換えるために、前記解放する送達方向(L)に前記ポンプ装置を作動させると、制御弁(11)が作動されることを特徴とする、形態9に関連する、形態14に記載の方法。
形態16
前記ポンプ制御電流が、前記ポンプ装置によって生成される前記油圧を設定および/または検出するために使用されることを特徴とする、形態14または15に記載の方法。
形態17
形態1から11のいずれか一項に記載のパーキングロックを作動させるための油圧作動システムを制御するための電子制御ユニットに、コンピュータプログラム製品のプログラムコードに格納されたプログラムルーチンを前記電子制御ユニットが実行したときに、形態13から16のいずれか一項に記載の方法に従って、自動車のパーキングロックを作動させるための油圧作動システムを作動させる、コンピュータプログラム製品。
形態18
形態17に記載のコンピュータプログラム製品が書かれたプログラムメモリを用いて形態13から16のいずれか一項に記載の方法に従って形態1から12のいずれか一項に記載の自動車のパーキングロックを作動させるための油圧作動システムを制御するための、電子制御ユニット。
【符号の説明】
【0034】
1 ポンプ装置
2 圧力管路
3 第1の管路区間
4 第2の管路区間
5 アクチュエータ
6 4/2方滑り弁
7 係合レバー
8 作動カム
9 ロックリング
10 貯槽
11 制御弁
11’ 主オリフィス
12 ロッキングラッチング手段
13 供給区間
13’ 主オリフィスを含む代替的な供給管路
14 第1の逆止め弁
15 第2の逆止め弁
16 油冷却器
17 注油点
18 注油オリフィス
図1
図2