(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも一つの前記第1反射部材は、前記第1の位置にある時の当該第1反射部材の重心が、当該第1反射部材が前記第2の位置にある時の当該第1反射部材の重心よりも上方にある、請求項1〜8のいずれか1項に記載のファイバセレクタ。
【背景技術】
【0002】
レーザダイオードからのレーザ光を励起光源とする固体レーザ装置やファイバレーザ装置、あるいは、レーザダイオードからのレーザ光をそのままレーザ光源とするダイレクトダイオードレーザ装置等のレーザ装置において、レーザ装置から出射されるレーザ光は、光ファイバの中を伝搬させて、例えば加工ヘッドまで導くようにすることが多い。ところが、用途によっては、一つの加工ヘッドからレーザ光を出射してレーザ加工を行う時間の割合(デューティ)が低く、1台のレーザ装置からのレーザ光を切換えて複数の加工ヘッドで使用することが必要になる。例えば、ロボットアームに加工ヘッドを取り付けてレーザ溶接を行う場合、レーザ溶接のために加工ヘッドからレーザ光を出射する時間に比べて、ロボットアームを動かして、加工ヘッドを次のレーザ溶接のための所定の位置まで移動する時間の方が長くなる。この場合、加工ヘッドの移動中に、他の加工ヘッドからレーザ光を出射させてレーザ溶接を行うことができるようにするため、1台のレーザ装置からのレーザ光を、複数の加工ヘッドに繋がった複数の光ファイバのいずれに入射させるかを選択できるファイバセレクタが必要になる。この必要性は、レーザ装置が高価であるということだけでなく、限られた工場敷地面積を有効活用するために、できるだけ少ないレーザ装置で所定のレーザ加工を行えるようにするために生じるものである。
【0003】
上記の用途を考えると、ファイバセレクタには以下のような条件が要求される。
・レーザ光パワーの損失が少なく、結合効率(=ファイバセレクタから出力されるレーザ光パワー/ファイバセレクタに入力されるレーザ光パワー)が高いこと。
・選択する光ファイバが高速で切替えられること。
・レーザ装置内に設置されることが多いので、レーザ装置内に設置しても、できるだけレーザ装置の大型化を招かないこと。
・高い結合効率を得る上で欠かせないファイバセレクタ内の光学系の光軸調整等の調整作業が容易に行えること。
・ファイバセレクタを構成する一部の部品が壊れた場合に短時間の内に容易に交換等の保守作業ができること等。
【0004】
このようなファイバセレクタは、ビーム分配器等の名称も使用されている。ファイバセレクタは、複数の回転式モータの各シャフトに固定された反射部材を備え、回転式モータの回転により、コリメートされたレーザ光を反射する反射部材を切換えて、レーザ光の伝搬方向を変える構造が一般的である。しかし、レーザ光の結合効率を上げるには、選択した光ファイバの微細なコアにレーザ光を精度良く集光させることが不可欠であり、反射部材が固定された回転式モータのシャフトの角度の高精度な調整、集光光学系の焦点位置や光軸角度の高精度な調整が必要である。しかし、従来のファイバセレクタは、このような調整を一方向から行える構造になっておらず、調整用スペースの確保を含めて、ファイバセレクタのために、レーザ装置内に大きなスペースを確保することが必要であった。また、従来のファイバセレクタは、部品の一部交換や、部品交換後の再調整等が容易な構造にはなっておらず、ファイバセレクタ全体を交換するのが前提の構造になっている。
【0005】
非常にサイズの小さい出力用光ファイバのコアに、レーザ光をできるだけロスが無いように入射させることと、レーザ光を出射させる出力用光ファイバを高速で切替えられることを両立できる従来からの技術は、回転式モータのシャフトに、シャフトに対して垂直な反射面を備えた反射部材を固定し、シャフトの回転によって、レーザ光を反射する状態にするか、反射せずに透過させる状態にするかを切換える技術に限定される。反射部材の反射面をシャフトに垂直にする理由は、回転式モータの回転が所定の角度で完全に止まっていなくても、反射面で反射したレーザ光の光軸の方向は変化せず、安定しているからである。仮に、反射部材の反射面がシャフトに垂直でない場合、回転式モータの回転が所定の角度で完全に止まるまで、反射面で反射したレーザ光の光軸の方向が定まらないため、集光光学系で集光されたレーザ光が焦点を結ぶ位置も安定せず、出力用光ファイバのコアにレーザ光をロスなく入射させることができず、レーザ光の光路を高速で切り替えることができなくなる。
【0006】
従来、回転式モータのシャフトに、該シャフトに対して垂直な反射面を備えた反射部材を固定し、シャフトの回転によって、レーザ光を反射する反射部材を切換えるファイバセレクタが、特許文献1〜3に開示されている。
【0007】
特許文献1には、レーザ発振器と、レーザ発振器で発振されたレーザ光を定められた周期で複数の光路に時分割するように構成された光路切換器と、被加工物を搬送や位置決めする各光路の搬送・位置決め部と、光路切換器の切換え状態を基にレーザ発振器や各搬送・位置決め部の演算制御を行う制御部とで構成されたレーザ加工装置が開示されている。更に、この特許文献1には、回転軸に固定されかつ回転角によってレーザ光の反射と透過を変更可能に構成された反射部材と、反射部材の固定されている回転軸を駆動する回転式モータと、光路の切換え状態を検出するための反射部材の回転角の角度センサからなる光路切換器とが開示されている、しかし、特許文献1は、反射部材の反射面が、回転式モータの配置方向とは逆方向に向いた構造しか示しておらず、後述の本発明のように、レーザ光を反射する反射面が回転式モータ側を向いている構造は開示されていない。
【0008】
特許文献2には、レーザビームが入射する入射口、レーザビームが通過して出射する出射口、及び、レーザビームが分配されて射出する分配口を有する筐体と、筐体内に設けられた反射面領域と通過孔領域を有する回動可能なミラーと、ミラーの駆動制御器と、レーザビームのパルスタイミングを検知して信号を発生する検知器を備えたレーザビーム分配装置が開示されている。ミラーは、筐体の中で、レーザビームが反射面領域に照射したときにはレーザビームを分配口に到達させ、通過孔領域に照射したときは出射口に到達させるように配設されている。駆動制御器は、検知器からの信号に基づいてミラーを回動させることにより、反射面領域と通過孔領域を選択してレーザビームの軸上に位置するように制御し、レーザパルスを出射口と分配口に配分する。更に、特許文献2には、ミラーが駆動制御器により回転し、レーザパルスを出射口と分配口に配分するレーザビーム分配装置を直列に複数接続し、上流から供給されるレーザビームを随意に各段の分配口に配分するレーザビーム分配装置も開示されている。しかし、特許文献2は、平面ミラーの反射面が、ミラー駆動制御器(回転式モータ)の配置方向とは逆方向に向いた構造しか示しておらず、後述の本発明のように、レーザ光を分岐するためにレーザ光を反射する反射面が回転式モータ側を向いている構造は開示されていない。
【0009】
また、特許文献3には、レーザ加工用のレーザ光を非同時に第1及び第2の分岐光路に分岐させるためのレーザ光分岐装置及びこのレーザ光分岐装置を用いたレーザ装置が開示されている。このレーザ光分岐装置は、回転中心と、回転中心の径方向外側に設けられ、所定のビーム入射位置でレーザ光の全部または大部分を第1の分岐光路側へ反射させる反射部と、反射部と周回方向に並んで回転中心の径方向外側に設けられ、ビーム入射位置でレーザ光の全部または大部分を第2の分岐光路側へ透過させる透過部とを一体的に有する回転分岐部材と、回転分岐部材の回転中心に結合された回転軸を有し、回転軸を介して回転分岐部材を回転させる回転機構と、レーザ光を第1の分岐光路側に分岐させるときは、反射部をビーム入射位置に合わせ、レーザ光を第2の分岐光路側に分岐させるときは、透過部をビーム入射位置に合わせるように、回転機構を通じて回転分岐部材の回転角度を制御する制御部とを有する。しかし、特許文献3も、回転分岐部材の反射部の反射面が回転式モータの方向とは逆方向に向いた構造しか示しておらず、やはり、後述の本発明のように、レーザ光を分岐するためにレーザ光を反射する反射面が回転式モータ側を向いている構造は開示されていない。
【0010】
即ち、特許文献1〜3に記載されているレーザ光分岐装置は、回転式モータや反射部材の位置関係は大同小異である。ファイバセレクタに適用するために、コリメータ光学系や集光光学系に言及していない従来技術についても、コリメータ光学系と集光光学系を付け加えると、上記の従来技術は、
図47に示した構造を示していることになる。
【0011】
図47に示すファイバセレクタ100は、矩形状のケース101の一側面に、コネクタ102を介して、入力用光ファイバ103が取り付けられている。また、この入力用光ファイバ103が取り付けられた側面に隣接するケース101の他の一側面に、それぞれコネクタ104を介して複数の出力用光ファイバ105が取り付けられている。
【0012】
入力用光ファイバ103から出射されたレーザ光Lは、コリメート光学系106によって平行光に変換される。ケース101内には、コリメート光学系106を経由したレーザ光Lの光路上に、複数の反射部材107が配置されている。反射部材107は、ケース101の外部から内部に延びる回転式モータ108のシャフト109に垂直に固定され、回転式モータ108のシャフト109の回転に伴い、レーザ光Lを反射する第1の位置(
図47中の右側の反射部材107の位置)とレーザ光Lを遮らない第2の位置(
図47中の左側の反射部材107の位置)との間を回転移動するようになっている。各回転式モータ108は、出力用光ファイバ105とは反対側のケース101の外部に配置されている。各反射部材107は、レーザ光Lを反射させる第1の位置にある時に、レーザ光Lの伝搬方向を入射方向に対して直角に変えるように配置されている。
【0013】
このようなファイバセレクタ1は、各回転式モータ108のシャフト109を回転させて各反射部材107を第1の位置又は第2の位置に移動させ、入力用光ファイバ103からのレーザ光Lを、第1の位置に在位する反射部材107によって反射させることにより、その反射部材107に対応する集光光学系110を介して、選択された出力用光ファイバ105の入射端面に入射させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前述のように、入力用光ファイバの出射端のコアから出射したレーザ光が出力用光ファイバの入射端のコアに入射し、入射端のコアに入射できないレーザ光パワーの割合ができるだけ小さくなるようにして、高い結合効率を実現するには、コリメート光学系の光軸角度や焦点位置の調整、反射部材の反射面の光軸角度の調整、集光光学系の光軸角度や焦点位置の調整の各調整を非常に高精度に行うことが必要である。しかし、従来のファイバセレクタは、少なくとも、反射部材の反射面の光軸角度の調整のための回転式モータのシャフトの角度調整と、集光光学系の焦点位置調整や光軸角度調整を、逆方向から行うことが必要な構造である。このため、ファイバセレクタをレーザ装置内に設置すると、調整がやり難くなるという問題がある。
【0016】
また、出力用光ファイバは、コネクタの部分で外して交換する機会が多いため、集光光学系はファイバセレクタの手前側に配置される。その場合、集光光学系はレーザ装置の正面あるいはメンテナンス面側から見て手前に配置されるので、集光光学系の焦点位置調整や光軸角度調整は容易に行える。しかし、回転式モータのシャフトの角度調整等による反射部材の反射面の光軸角度調整は、レーザ装置の正面あるいはメンテナンス面側から行うことができず、レーザ装置の正面やメンテナンス面側の反対側から行うことが必要になる。この場合、調整を容易にかつ短時間で行うことが困難であるだけでなく、調整のためにレーザ装置を移動したり、レーザ装置周辺に予め広いスペースを確保したりする必要が生じる問題がある。
【0017】
更に、従来のファイバセレクタは、前述のように、回転式モータが故障した場合の交換も容易ではないだけでなく、回転式モータや光学部品を交換した場合、その部分の調整をやり直すことが必要になる。このため、調整に時間を要して、その間はレーザ装置が使用できないという問題がある。その結果、ファイバセレクタ等の一部でも故障するとファイバセレクタ全体を交換することが多く、レーザ装置のランニングコストが高くなる問題がある。
【0018】
また、レーザ装置は、できるだけ小型であることが望まれる。ファイバセレクタを設置することによるレーザ装置のサイズアップを最小限に抑えるため、ファイバセレクタ自体のサイズをできるだけ小さくすると共に、レーザ装置内に確保する必要があるファイバセレクタの調整のためのスペースもできるだけ小さくすることが望ましい。
【0019】
以上要するに、従来から次のようなファイバセレクタが要望されている。
・出力用光ファイバが高速で切替え可能である。
・高い結合効率が得られる。
・反射部材の反射面の光軸角度調整と集光光学系の焦点位置調整や光軸角度調整とが、同時に、容易に且つ短時間に調整可能である。
・回転式モータや光学部品が何からの原因で損傷した場合に、損傷を受けた部分だけが容易に且つ短時間で交換可能である。
・損傷を受けた部分を交換した後の焦点位置調整や光軸角度調整の再調整が、容易に且つ短時間に行える。
・できれば交換した後の再調整が不要である。
・従来のファイバセレクタよりもサイズが小さい。
【0020】
また、ファイバセレクタを備えるレーザ装置としては、従来から次のようなレーザ装置が要望されている。
・レーザ装置の正面あるいはメンテナンス面から、ファイバセレクタに必要な調整やファイバセレクタの主要部品の交換が、容易に且つ短時間で実施可能である。
・主要部品の交換後の再調整が、容易にかつ短時間で行える。
・望ましくは、主要部品の交換後の再調整が不要である。
・保守性に優れ、ランニングコストが抑えられる。
・ファイバセレクタを備えることによるサイズアップが最小限に抑えられる。
【0021】
本発明は、以上の状況を鑑みてなされたものであり、出力用光ファイバを高速で切替えられ、高い結合効率が得られるだけではなく、反射部材の反射面の光軸角度調整、集光光学系の焦点位置調整や光軸角度調整を、同時に調整可能なことも含めて、容易に短時間に調整でき、また、回転式モータや光学部品等を容易に短時間で交換できると共に、従来よりも小型化可能なファイバセレクタを提供することを目的とする。
【0022】
また、本発明は、装置の正面あるいはメンテナンス面から、ファイバセレクタに必要な調整やファイバセレクタの主要部品の交換を容易に短時間で実施でき、交換後の再調整を容易に短時間で行えると共に、保守性に優れ、ランニングコストを抑えることができ、ファイバセレクタを備えることによるサイズアップも最小限に抑えることができるレーザ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
(1) 本発明に係るファイバセレクタは、入力用光ファイバ(例えば、後述の入力用光ファイバ3)から出射されたレーザ光(例えば、後述のレーザ光L)を平行光に変換するコリメート光学系(例えば、後述のコリメート光学系31)と、前記レーザ光を出力用光ファイバ(例えば、後述の出力用光ファイバ4)に集光する複数の集光光学系(例えば、後述の集光光学系41)と、複数の前記集光光学系に対応して設けられ、前記コリメート光学系からの前記レーザ光を前記集光光学系に向けて反射可能な反射面(例えば、後述の反射面6a)を備えた複数の第1反射部材(例えば、後述の第1反射部材6)と、複数の前記第1反射部材に対応して設けられ、前記第1反射部材を、前記レーザ光が前記反射面で反射して前記集光光学系に向かう第1の位置と前記レーザ光を遮らない第2の位置との間で回転移動させる回転式モータ(例えば、後述の回転式モータ5)と、を備え、前記回転式モータにより、複数の前記第1反射部材のそれぞれを前記第1の位置と前記第2の位置とで回転移動させることにより、前記コリメート光学系から入射した前記レーザ光の伝搬方向を複数の前記集光光学系のいずれかに入射する方向に選択的に切り替えるファイバセレクタ(例えば、後述のファイバセレクタ1)であって、前記第1反射部材の前記反射面は、当該第1反射部材が固定されるシャフト(例えば、後述するシャフト51、第2シャフト61)の回転軸に対して垂直な平面であると共に、当該第1反射部材を回転させる前記回転式モータの方向を向くように配置されている。
【0024】
(2) (1)に記載のファイバセレクタであって、前記回転式モータは、第1シャフト(例えば、後述のシャフト51)を有し、複数の前記第1反射部材は、それぞれ前記第1シャフトと異なる第2シャフト(例えば、後述の第2シャフト61)に取り付けられ、前記第2シャフトは、回転運動を伝達する伝動機構(例えば、後述の伝動機構62)を介して前記第1シャフトに連結し、前記第1シャフトの回転に連動して回転するように構成されていてもよい。
【0025】
(3) (2)に記載のファイバセレクタにおいて、前記伝動機構の少なくとも一部は、自己潤滑性を有する樹脂により構成されていてもよい。
【0026】
(4) (2)又は(3)に記載のファイバセレクタにおいて、前記集光光学系の光軸と、当該集光光学系に対応した前記第1反射部材を回転移動させる前記回転式モータの前記第1シャフトの前記回転軸とが平行に配置されていてもよい。
【0027】
(5) (2)〜(4)のいずれかに記載のファイバセレクタにおいて、隣接する2つの前記集光光学系の各光軸から、少なくとも一つの前記回転式モータの前記第1シャフトの前記回転軸が等距離になるように配置されていてもよい。
【0028】
(6) (2)〜(5)のいずれかに記載のファイバセレクタにおいて、前記第2シャフトの両端部をそれぞれ回転可能に支持する軸受(例えば、後述の軸受641、642)と、前記第2シャフトを、いずれかの前記軸受に対して押し付ける押付機構(例えば、後述の押付機構65)と、を更に備えていてもよい。
【0029】
(7) (6)に記載のファイバセレクタにおいて、前記押付機構は、弾性部材(例えば、後述の弾性部材651)又はソレノイドアクチュエータ(例えば、後述の第2シャフト61とソレノイドコイル652)により構成されていてもよい。
【0030】
(8) (1)〜(7)のいずれかに記載のファイバセレクタにおいて、前記第1反射部材の前記反射面の煽り角度を含む光軸角度を調整する第1角度調整機構(例えば、後述の第1角度調整機構50、80)を更に備え、前記第1角度調整機構は、前記集光光学系から前記第1反射部材に向かう方向から前記ファイバセレクタを見た場合に見える前記ファイバセレクタの面を前記ファイバセレクタの前面と定義した時、前記ファイバセレクタの前記前面から、前記回転式モータの交換と前記第1角度調整機構の調整とのうちの少なくとも一方が可能に構成されていてもよい。
【0031】
(9) (1)〜(8)のいずれかに記載のファイバセレクタにおいて、少なくとも1枚の前記第1反射部材と、当該第1反射部材を回転移動させる前記回転式モータと、当該第1反射部材に対応する前記集光光学系とを含む集光光学系ユニット(例えば、後述の集光光学系ユニットU1)が構成され、前記集光光学系から前記第1反射部材に向かう方向から前記ファイバセレクタを見た場合に見える前記ファイバセレクタの面を前記ファイバセレクタの前面と定義した時、前記集光光学系ユニットが、前記ファイバセレクタの前記前面から交換可能に設けられていてもよい。
【0032】
(10) (1)〜(9)のいずれかに記載のファイバセレクタにおいて、少なくとも一つの前記第1反射部材は、前記第1の位置にある時の当該第1反射部材の重心が、当該第1反射部材が前記第2の位置にある時の当該第1反射部材の重心よりも上方にあってもよい。
【0033】
(11) (1)〜(10)のいずれかに記載のファイバセレクタにおいて、前記第1反射部材の回転角度範囲を制限するストッパー(例えば、後述のストッパー601、602)と、前記回転式モータ以外に前記第1反射部材を回転移動させる力を発生する弾性部材(例えば、後述のぜんまいバネ603)と、を備え、前記第1反射部材は、前記回転式モータが前記第1反射部材を回転移動させる力を発生していない時、前記弾性部材によって回転移動範囲の一端まで回転移動して、当該第1反射部材が前記第2の位置に移動するように構成されていてもよい。
【0034】
(12) (1)〜(11)のいずれかに記載のファイバセレクタにおいて、前記コリメート光学系からの前記レーザ光を前記第1反射部材に向けて反射させる反射面(例えば、後述の反射面7a)を有する第2反射部材(例えば、後述の第2反射部材7)を更に備え、第2反射部材は、前記コリメート光学系から前記第2反射部材に向かうレーザ光の光軸と、前記第1反射部材から前記集光光学系に向かうレーザ光の光軸とが平行で、且つ、前記コリメート光学系から前記第2反射部材に向かうレーザ光の伝搬方向が、前記第1反射部材から前記集光光学系に向かうレーザ光の伝搬方向に対して逆方向になるように配置されていてもよい。
【0035】
(13) (12)に記載のファイバセレクタにおいて、前記第2反射部材の前記反射面の煽り角度を含む光軸角度を調整する第2角度調整機構を更に備え、前記集光光学系から前記第1反射部材に向かう方向から前記ファイバセレクタを見た場合に見える前記ファイバセレクタの面を前記ファイバセレクタの前面と定義した時、前記第2角度調整機構は、前記ファイバセレクタの前記前面から調整可能に設けられていてもよい。
【0036】
(14) (12)又は(13)に記載のファイバセレクタにおいて、少なくとも前記第2反射部材と前記コリメート光学系とを含むコリメート光学系ユニット(例えば、後述のコリメート光学系ユニットU2)が構成され、前記集光光学系から前記第1反射部材に向かう方向から前記ファイバセレクタを見た場合に見える前記ファイバセレクタの面を前記ファイバセレクタの前面と定義した時、前記コリメート光学系ユニットが、前記ファイバセレクタの前記前面から交換可能に設けられているものであってもよい。
【0037】
(15) 本発明に係るレーザ装置は、筐体(例えば、後述の筐体14)内部に、(1)〜(14)のいずれかに記載のファイバセレクタを備え、レーザ発振器(例えば、後述のレーザ発振器11)から出力されたレーザ光(例えば、後述のレーザ光L)を、前記入力用光ファイバを介して前記ファイバセレクタに入力し、前記ファイバセレクタから出力される前記レーザ光を、複数の前記出力用光ファイバから選択的に出射するレーザ装置であって、前記筐体は、開閉可能な前面パネル(例えば、後述の前面パネル15)を有し、前記ファイバセレクタは、前記操作面パネル又は前記メンテナンス面パネルを開いた際に、前記ファイバセレクタの前記第1反射部材よりも前記回転式モータが手前に位置するように設置されている。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、出力用光ファイバを高速で切替えられ、高い結合効率が得られるだけではなく、反射部材の反射面の光軸角度調整、集光光学系の焦点位置調整や光軸角度調整を、同時に調整可能なことも含めて、容易に短時間に調整でき、また、回転式モータや光学部品等を容易に短時間で交換できると共に、従来よりも小型化可能なファイバセレクタを提供することができる。
【0039】
また、本発明によれば、装置の正面あるいはメンテナンス面から、ファイバセレクタに必要な調整やファイバセレクタの主要部品の交換を容易に短時間で実施でき、交換後の再調整を容易に短時間で行えると共に、保守性に優れ、ランニングコストを抑えることができ、ファイバセレクタを備えることによるサイズアップも最小限に抑えることができるレーザ装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明に係るファイバセレクタ及びレーザ装置の実施の形態を、図面を参照して説明する。以下に示す各図面において、同じ部材には同じ参照符号を付している。また、異なる図面において同じ参照符号が付されたものは同じ機能を有する構成要素であることを意味するものとする。なお、これらの図面は見易くするために、縮尺を適宜変更している。また、図面に示される形態は本発明を実施するための一つの例であり、本発明は図示された形態に限定されるものではない。
【0042】
[ファイバセレクタの第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るファイバセレクタ1の平面図であり、
図2は、本発明の第1実施形態に係るファイバセレクタの正面図である。
図2は、ファイバセレクタを集光光学系側から見た状態を示している。また、
図3は、本発明の第1実施形態に係るファイバセレクタを示す斜視図であり、
図4は、本発明の第1実施形態に係るファイバセレクタを他の方向から見た斜視図であり、
図5は、本発明の第1実施形態に係るファイバセレクタに使用されているケースを示す斜視図である。
【0043】
なお、以下の各実施形態に示す各図面において、X軸方向は、ファイバセレクタ1の長さ方向(横方向ともいう。)を示す。また、X軸方向におけるX1方向は、ファイバセレクタ1の右方向を示し、X2方向は、ファイバセレクタ1の左方向を示す。Y軸方向は、ファイバセレクタ1の前後方向を示す。また、Y軸方向におけるY1方向は、ファイバセレクタ1の前方向を示し、Y2方向は、ファイバセレクタ1の後方向を示す。Z軸方向は、ファイバセレクタ1の上下方向を示す。また、Z軸方向におけるZ1方向は、ファイバセレクタ1の上方向を示し、Z2方向は、ファイバセレクタ1の下方向を示す。
【0044】
ファイバセレクタ1は、横長の略直方体形状のケース2を備える。ケース2は、レーザ光Lが入射する1つの入射口21と、レーザ光Lが出射する複数の出射口22とを有する。1つの入射口21と複数の出射口22は、ケース2の同一面である前面板2aに、ケース2の長さ方向(X軸方向)に沿って一直線状に配列されている。本実施形態では、2つの出射口22を例示しているが、本発明における出射口22は2つに限定されない。出射口22の数は、レーザ光Lを選択的に出射させるための後述する出力用光ファイバ4の接続数に対応するものである。従って、出射口22は、ケース2に3つ以上設けることもできる。
【0045】
なお、
図1ではファイバセレクタ1のケース2の内部が見えるように、ケース2の天板を非表示としている。また、
図1では、レーザ光Lを細線で示している。外部から見えないレーザ光や、図示されている状態ではレーザ光を反射していない反射部材で反射された反射光については破線で示している。また、
図3では、ケース2の内部が見えるように、ケース2の前面板2a及び底面板2bを除いてケース2は全て非表示としている。
【0046】
入射口21には、コリメート光学系31を介して入力用光ファイバ3が接続される。具体的には、入射口21に円筒状の鏡筒32が接続され、この鏡筒32内にコリメート光学系31が配置されている。入力用光ファイバ3は、コネクタ33を介して鏡筒32に接続されている。従って、入力用光ファイバ3の出射端面から出射されたレーザ光Lは、コリメート光学系31によって平行光に変換され、入射口21を通ってケース2内に入射するようになっている。
【0047】
各出射口22には、それぞれ集光光学系41を介して出力用光ファイバ4が接続されている。具体的には、各出射口22にそれぞれ円筒状の鏡筒42が接続され、この鏡筒42内に集光光学系41がそれぞれ配置されている。各出力用光ファイバ4は、コネクタ43を介して鏡筒42に接続されている。従って、レーザ光Lは、いずれかの集光光学系41によって、対応する出力用光ファイバ4の入射端面に集光され、その出力用光ファイバ4を介してケース2の外部に出射するようになっている。
【0048】
ケース2の外面には、一直線状に配列される1つの入射口21及び2つの出射口22よりも下方(Z2方向)に、各出射口22に対応する2つの回転式モータ5が、交換可能に取り付けられている。具体的には、ケース2の前面板2aにおいて、入射口21とそれに隣接する出射口22との間の下方及び2つの出射口22の間の下方に、それぞれV字状に窪んだ2つのモータ取付け凹部23が形成されている。各モータ取付け凹部23は、前面板2aに対して45°の角度で斜めに交差するように窪んでおり、直角の底部を有している。
図5に示すように、各モータ取付け凹部23のV字状に交差する面のうちのケース2のX1方向側に、モータ取付け面23aが配置されている。各モータ取付け面23aには、矩形状のモータ取付け孔23bが形成されている。各回転式モータ5は、モータ取付け凹部23のモータ取付け面23aに、ケース2の前方(Y1方向)から取り付けられている。
【0049】
各回転式モータ5のシャフト51は、モータ取付け孔23bからケース2内に延びている。シャフト51は、回転式モータ5のシャフトである。各回転式モータ5のシャフト51は、ケース2の前面板2aに対して45°の角度で傾斜している。各シャフト51の先端に、それぞれ第1反射部材6が固定されている。第1反射部材6は、一方の面に、平面からなる反射面6aを有する。第1反射部材6は、シャフト51の軸方向に対して、それぞれの反射面6aが垂直となるように取り付けられている。このため、各第1反射部材6の反射面6aは、
図1に示すように、ケース2の前面板2aに対して45°で傾斜している。
【0050】
なお、「反射面が垂直」とは、必ずしも反射面がシャフトの軸方向に対して厳密に垂直に取り付けられていることを意味するものではなく、設計上垂直となるように取り付けられることを意味する。従って、「反射面が垂直」とは、部品精度や取付け精度のばらつき等によって完全な垂直とはならない場合、即ち、略垂直の場合も含む。このため、本明細書における具体的な角度(45°、直角)も、上記同様の理由から、必ずしも厳密な意味での角度を表しているものではない。
【0051】
回転式モータ5はそれぞれ角度センサ52を備えている。ファイバセレクタ1の図示しない制御部が、角度センサ52からの信号出力を受取って、回転式モータ5のシャフト51の回転角度を制御する。このシャフト51の回転により、第1反射部材6は所定角度の範囲で回転移動する。具体的には、第1反射部材6は、回転式モータ5のシャフト51の回転に伴い、レーザ光Lを遮って反射面6aで反射する第1の位置と、レーザ光Lを遮らない第2の位置との間で回転移動する。
図1の右側の第1反射部材6は、第1の位置に回転移動した状態を示し、
図1の左側の第1反射部材6は、第2の位置に回転移動した状態を示している。第1反射部材6の反射面6aは、第1の位置に回転移動した時、対応する出射口22に接続された集光光学系41の光軸上に、45°の角度で斜めに交差するように配置される。
【0052】
なお、回転式モータ5等を制御するファイバセレクタ1の制御部は、ファイバセレクタ1の内部に設置されていてもよいし、ファイバセレクタ1の外部に設置されていてもよい。また、後述のレーザ装置10の制御部13がファイバセレクタ1の制御部の機能を兼ね備えていてもよい。
【0053】
各第1反射部材6のそれぞれの反射面6aは、当該第1反射部材6が固定されているシャフト51を回転させる各回転式モータ5の方向を向くように配置されている。換言すれば、各回転式モータ5は、第1反射部材6の反射面6aを含む平面を境にして、レーザ光Lが反射する側と同一側に配置されている。この構成により、各回転式モータ5は、コリメート光学系31を備える鏡筒32及び集光光学系41をそれぞれ備える各鏡筒42と同様に、ケース2の前面側(Y1方向に面する側)に配置されている。
【0054】
入射口21の近傍のケース2の内部に、第2反射部材7が設置されている。本実施形態に示す第2反射部材7は、
図3に示すように、底面板2bに固定されている。第2反射部材7は、一方の面に、平面からなる反射面7aを有している。第2反射部材7の反射面7aは、
図1に示すように、ケース2の前面板2aに対して45°で斜めに傾斜している。従って、入射口21を経由して入射したコリメートされたレーザ光Lは、第2反射部材7の反射面7aで直角に伝搬方向を変え、ケース2内をX1方向に伝搬する。
【0055】
各第1反射部材6の反射面6aは、当該第1反射部材6が回転移動してレーザ光Lを反射する第1の位置に在位した時、ケース2内をX1方向に伝搬するレーザ光Lの光路上に、45°の角度で交差するように配置される。従って、第2反射部材7で反射されたレーザ光Lは、第1の位置となるように選択されたいずれかの第1反射部材6(
図1では右側の第1反射部材6)の反射面6aで直角に伝搬方向を変え、その第1反射部材6に対応する出射口22に向かう。第1反射部材6で反射したレーザ光Lは、出射口22に接続された鏡筒42内の集光光学系41で集光され、出力用光ファイバ4の入射端面に入射する。即ち、このファイバセレクタ1は、回転式モータ5のシャフト51の回転によって、第1反射部材6のそれぞれを第1の位置と第2の位置とで回転移動させることにより、入射口21から入射したレーザ光Lの伝搬方向を、各出射口22にそれぞれ接続される出力用光ファイバ4のうちのいずれかに向かう方向に切り替え、複数の出力用光ファイバ4から選択的にレーザ光を出射させるようになっている。
【0056】
以上のように、本実施形態に示すファイバセレクタ1によれば、集光光学系41を備えた鏡筒42と回転式モータ5を、第1反射部材6に対してケース2の同じ側(前面板2a側)に配置することができる。従って、各集光光学系41の光軸角度調整や焦点位置調整、回転式モータ5を介する各第1反射部材6の反射面6aの煽り角度を含む光軸角度調整、各回転式モータ5の交換等を、ファイバセレクタ1の前面側から行うことが可能になる。このため、これらの同時調整も可能になる等、調整に要する時間を短縮することができると共に、調整のために確保すべきスペースも小さくて済む。なお、ここでは焦点位置調整や光軸角度調整のための機構は図示していない。これら焦点位置調整機構や光軸角度調整機構(第1角度調整機構)の具体的構成については後述する。
【0057】
また、
図3において第1の位置に在位している左側の第1反射部材6を見ると分かるように、第1反射部材6の反射面6aは、レーザ光Lを反射させるために、シャフト51からある程度離れた位置に配置されるので、この第1反射部材6は、第1の位置に在位している時、Z1方向に立ち上がった状態になる。このため、ファイバセレクタ1のケース2は、Z軸方向に沿ってある程度の高さを必要とする。しかし、本実施形態に示すファイバセレクタ1によれば、複数の鏡筒42と複数の回転式モータ5を、第1反射部材6に対して同じ側に配置しても、ファイバセレクタ1の高さを僅かに増やすだけで済む。このため、フットプリント面積はかなり縮小できるので、ファイバセレクタ1のサイズ(包括容積)を小さく抑えることができる。例えば、回転式モータ5のシャフト51に垂直な断面が40mm角で、レーザ光Lのビーム径がφ20mmである場合、ファイバセレクタ1のケース2のZ軸方向の高さは、
図47に示す従来のファイバセレクタ100の構造と比べて、10〜15mm程度高くするだけで充分である。
【0058】
一方、複数の鏡筒42と複数の回転式モータ5を、第1反射部材6に対して同じ側に配置すると、ファイバセレクタ1の設置面積はかなり縮小できるので、ファイバセレクタ1のサイズ(包括容積)はかなり小さくでき、コンパクトになる。本実施形態に示す図は、理解を容易にするため、各鏡筒42のピッチを比較的広く描いているが、このピッチはもっと詰めてもよい。
【0059】
第2反射部材7は、コリメート光学系31から入射して第2反射部材7に向かうレーザ光Lの光軸と、第1反射部材6の反射面6aで反射して集光光学系41に向かうレーザ光Lの光軸とが平行で、且つ、コリメート光学系31から入射して第2反射部材7に向かうレーザ光Lの伝搬方向(Y2方向)が、第1反射部材6の反射面6aで反射して集光光学系41に向かうレーザ光Lの伝搬方向(Y1方向)に対して逆方向になるように配置されている。この構成により、コリメート光学系31を備える鏡筒32も、
図1〜
図5に示すように、集光光学系41を備える鏡筒42や回転式モータ5と同様、ケース2の前面板2a側に配置される。従って、コリメート光学系31の光軸角度調整や焦点位置調整も、ファイバセレクタ1の前面側から行うことが可能である。
【0060】
なお、「光軸が平行」とは、必ずしも光軸同士が厳密に平行に配置されることを意味するものではなく、設計上平行となるように配置されることを意味する。従って、「光軸が平行」とは、部品精度や取付け精度のばらつき等によって完全な平行とはならない場合、即ち、略平行の場合も含む。
【0061】
[ファイバセレクタの第2実施形態]
図6は、本発明の第2実施形態に係るファイバセレクタの平面図であり、
図7は、本発明の第2実施形態に係るファイバセレクタの正面図である。また、
図8は、本発明の第2実施形態に係るファイバセレクタを示す斜視図であり、
図9は、本発明の第2実施形態に係るファイバセレクタを他の方向から見た斜視図である。
図10は、本発明の第2実施形態に係るファイバセレクタに使用されているケースを示す斜視図である。
図6では、ファイバセレクタ1のケース2の内部が見えるようにケース2の天板を非表示としている。また、
図6では、レーザ光Lは細線で示している。外部から見えないレーザ光や、図示されている状態ではレーザ光Lを反射していない第1反射部材6の反射面6aによる反射光については破線で示している。また、
図8では、内部が見えるようにケース2の前面板2a及び底面板2bを除いてケース2は全て非表示としている。
【0062】
この第2実施形態に示すファイバセレクタ1が第1実施形態に示すファイバセレクタ1と最も異なる点は、ケース2が、V字状に窪んだモータ取付け凹部23を有していない点である。
図8及び
図10に示すように、本実施形態のケース2の前面板2aは平坦面であり、回転式モータ5が配置されるべき部位に、2つの矩形状のモータ取付け孔24が形成されている。回転式モータ5に対応してモータ取付け部材53が設けられ、回転式モータ5とモータ取付け部材53とでモータユニットが構成されている。モータ取付け部材53は、回転式モータ5のシャフト51がケース2の前面板2aに対して45°の角度で交差するように、回転式モータ5を傾斜させて取り付けている。
【0063】
各回転式モータ5は、モータユニット単位で、ケース2の前方側(Y1方向側)から各モータ取付け孔24に対して交換可能に取り付けられている。即ち、回転式モータ5の取付け面は、ケース2の前面板2aと同一面であり、且つ、各鏡筒32、42の取付け面と同一面である。その結果、
図10に示すように、ケース2の形状は、
図5に示すケース2に比べて非常に簡単になり、製造コストの低減が可能となる。
【0064】
図11は、本発明の第2実施形態に係るファイバセレクタに使用される集光光学系ユニットを示す斜視図である。
集光光学系ユニットU1は、シャフト51に第1反射部材6が取り付けられた回転式モータ5とモータ取付け部材53とで構成されるユニットと、集光光学系41を備えた鏡筒42とを有して構成される。これらは1枚の共通のユニット基板8の表側(Y1方向に面する側)に取り付けられている。回転式モータ5のシャフト51はユニット基板8を貫通し、ユニット基板8の裏側(Y2方向に面する側)から突出している。第1反射部材6は、ユニット基板8の裏側に配置されている。この集光光学系ユニットU1は、ケース2に対して前面側から交換可能に取り付けられている。第1反射部材6は、モータ取付け孔24に対してケース2の前面側から挿入され、ケース2内の所定の位置に配置されている。
【0065】
このような集光光学系ユニットU1を使用することによる効果は次の通りである。
集光光学系ユニットU1は、図示しない標準ファイバセレクタ等に組込み、予めユニット単体で第1反射部材6の反射面6aの煽り角度を含む光軸角度調整や、集光光学系41の焦点位置調整や光軸角度調整を済ませておくことができる。そして、調整済みの集光光学系ユニットU1は、ファイバセレクタ1の複数の集光光学系ユニットU1のうちのいずれかの部品が損傷したり、不調になったりした時に、そのユニットU1を、現場で、予め調整済みの予備の集光光学系ユニットU1と交換することができる。これにより、ファイバセレクタ1は、調整無し、あるいは最低限の調整で速やかに復旧可能となる。従って、このような集光光学系ユニットU1を使用することにより、調整作業も含めた交換保守作業時間は大幅に短縮可能となる。また、ファイバセレクタ1全体を交換する必要もないため、保守費用も含めたランニングコストを大幅に下げることができる。
【0066】
図12は、本発明の第2実施形態に係るファイバセレクタに使用されているコリメート光学系ユニットを示す斜視図である。
コリメート光学系ユニットU2は、コリメート光学系31を備えた鏡筒32と第2反射部材7とを有して構成される。これら鏡筒32と第2反射部材7は、1枚の共通のユニット基板9に取り付けられている。鏡筒32は、ユニット基板9の表側(Y1方向に面する側)に取り付けられている。ユニット基板9は、鏡筒32内のコリメート光学系31からのレーザ光を第2反射部材7の反射面7aに入射させるための貫通穴9aを有している。第2反射部材7は、ユニット基板9の裏側(Y2方向に面する側)に、第2反射部材支持部品91によって取り付けられている。
【0067】
図8、
図10に示すように、ケース2の前面板2aには、入射口21と繋がった第2反射部材取付け孔25が形成されている。このコリメート光学系ユニットU2も、ケース2に対して前面側から交換可能に取り付けられている。
【0068】
コリメート光学系ユニットU2の第2反射部材支持部品91は、第2反射部材7のユニット基板9に対する角度を調整するための図示しない角度調整機構(第2角度調整機構)を有していてもよい。これにより、ファイバセレクタ1の前面側から、第2反射部材7の反射面7aの煽り角度を含む光軸角度の調整を行うことが可能になる。第2反射部材7の反射面7aの光軸角度調整もファイバセレクタ1の前面側から可能になると、全ての調整や保守がファイバセレクタ1の前面側から実施できるようになる。この角度調整機構については後述する。
【0069】
このコリメート光学系ユニットU2がユニット単位で交換可能であるメリットは、集光光学系ユニットU1がユニット単位で交換可能であるメリットと同様である。但し、この第2実施形態に係るファイバセレクタ1は、第1実施形態に係るファイバセレクタ1に比べて、
図1と
図6を比較しても分かるように、回転式モータ5のシャフト51の長さを長くする必要がある。このため、必要に応じて、回転式モータ5のシャフト51は延長される。延長されたシャフト51のブレを防ぐために、シャフト51の先端近傍に、図示しない軸受を設けてもよい。
【0070】
なお、本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係るいずれのファイバセレクタ1においても、全ての第1反射部材6が、レーザ光Lを遮らない第2の位置に在位している場合、第1反射部材6と干渉せずに直進したレーザ光Lは、安全上の観点からも、アドソーバで吸収される必要がある。しかし、ケース2の内部を示す各図において、図を簡単にするために、アドソーバの図示は省略した。
【0071】
また、その他の安全対策が第1反射部材6に施されてもよい。例えば、第1反射部材6が第1の位置に在位している時の第1反射部材6の重心の位置が、第1反射部材6が第2の位置に在位している時の第1反射部材6の重心の位置よりも上方(Z1方向)にあるように構成してもよい。これにより、回転式モータ5が故障した場合等の非常時に、第1反射部材6はレーザ光Lを遮らない第2の位置に自重によって回転移動することができる。従って、第1反射部材6で反射したレーザ光Lが、意図しない出力用光ファイバ4に入射したり、意図しない場所に照射されたりする事態を防ぐことができる。
【0072】
第1実施形態及び第2実施形態に係るファイバセレクタ1のように、回転式モータ5が集光光学系41よりも下方(Z2方向)側に配置される場合、上記のように第1反射部材6が自重によって回転移動することによる効果はより顕著となる。この場合、各集光光学系41の光軸を含む平面より、第1反射部材6を固定している各シャフト51を含む平面の方が低くなるので、第1反射部材6が自重によって第2の位置に回転移動する状況を作り出し易いからである。第1反射部材6の重心位置は、必要に応じて、第1反射部材6に錘を取り付けることによって調整可能である。従って、このような自重による第1反射部材6の回転移動を促進するために、第1反射部材6に必要に応じて錘を付加してもよい。
【0073】
また、その他の安全対策が、第1反射部材6を固定しているシャフト(シャフト51又は後述する第2シャフト61)に施されてもよい。
図13は、第2実施形態に係るファイバセレクタ1の集光光学系ユニットU1において、第1反射部材6の回転角度範囲を制限するストッパー601、602と、ぜんまいバネ603とをシャフト(第1シャフト)51に設けた例を示している。ぜんまいバネ603は、回転式モータ5以外に回転方向の付勢力を発生する弾性部材の一例である。
【0074】
ストッパー601は、第1反射部材6が第2の位置から第1の位置に向けて回転移動した際に、第1反射部材6と当接し、第1反射部材6が第1の位置で停止するように規制する。また、ストッパー602は、第1反射部材6が第1の位置から第2の位置に向けて回転移動した際に、第1反射部材6と当接し、第1反射部材6が第2の位置で停止するように規制する。従って、第1反射部材6は、ストッパー601、602で規制された第1の位置と第2の位置との間でしか回転移動することができない。
【0075】
ぜんまいバネ603は、シャフト51の回りに巻かれている。ぜんまいバネ603の一端は、バネ固定部604に固定され、他端は、第1反射部材6に固定されている。シャフト51は、バネ固定部604に対して回転可能に貫通している。ぜんまいバネ603は、予めある程度の巻き上げられた状態でセットアップされている。回転式モータ5のトルクが掛かっていない時、第1反射部材6は、ぜんまいバネ603が戻ろうとする力によって、ストッパー602に押し付けられた状態とされ、第2の位置に在位するようになっている。
【0076】
従って、このようなストッパー601、602と弾性部材としてのぜんまいバネ603とを有する安全対策により、上記同様、回転式モータ5が故障した場合等の非常時に、第1反射部材6は、ぜんまいバネ603の弾性復帰力によって、レーザ光Lを遮らない第2の位置に自動的に回転移動することができるので、第1反射部材6で反射したレーザ光Lが、意図しない出力用光ファイバ4に入射したり、意図しない場所に照射されたりする事態を防ぐことができる。
なお、ストッパー603、602及びバネ固定部604は、モータ取付け部材53に固定されたアーム600によって支持されている。ストッパー601は必ずしも設けなくてもよいが、より安全を期すために設けておくことが望ましい。
【0077】
第1反射部材6には、この構成に、前述した自重によって回転移動する構成が更に付加されてもよい。また、第1反射部材6は、ストッパー901、902とぜんまいバネ903を備えることにより、自重によって回転移動する構成に頼らずに第2の位置まで回転移動することができるので、回転式モータ5を集光光学系41よりも上方(Z1方向)に配置することもできる。これより、回転式モータ5の交換はより容易となる。
【0078】
[ファイバセレクタの第3実施形態]
図14は、本発明の第3実施形態に係るファイバセレクタを示す平面図である。
図14では、ファイバセレクタ1のケース2の内部が見えるように、ケース2の天板を非表示としている。また、
図13では、レーザ光Lは細線で示している。外部から見えないレーザ光Lや、図示されている状態ではレーザ光Lを反射していない第1反射部材6の反射面6aによる反射光については破線で示している。また、
図15は、本発明の第3実施形態に係るファイバセレクタを示す斜視図である。
図15では、内部が見えるようにケース2の前面板2a及び底面板2bを除いてケース2は全て非表示としている。また、
図16は、本発明の第3実施形態に係るファイバセレクタに使用されているケースを示す斜視図であり、
図17は、本発明の第3実施形態に係るファイバセレクタに使用されている集光光学系ユニットを示す斜視図である。なお、この第3実施形態に係るファイバセレクタ1の正面図と、ケース2の前面板2aの斜め下方から見た斜視図は、第2実施形態の
図2及び
図9と同じになるので省略している。
【0079】
第3実施形態のファイバセレクタ1が第2実施形態のファイバセレクタ1と異なっている点は、第1反射部材6が固定される回転軸が、回転式モータ5のシャフト51とは異なることである。即ち、第1反射部材6は、回転式モータ5のシャフト(第1シャフト)51とは別の回転軸である第2シャフト61に固定されている。第2シャフト61は、回転運動を伝達する伝動機構62を介して、シャフト51に連結している。これにより、第2シャフト61は、回転式モータ5のシャフト51の回転に連動して回転し、第1反射部材6を回転移動させることができる。本実施形態において、伝動機構62は、
図17に示すように、シャフト51に取り付けられた第1平歯車621と、第2シャフト61に取り付けられた第2平歯車622とで構成されている。しかし、伝動機構62の具体的構成は平歯車に限らず、例えば、プーリーやチェーン、ベルト等であってもよい。
【0080】
回転式モータ5のシャフト51に直接的に第1反射部材6を固定した場合は、ケース2の前面板2a上で鏡筒42と回転式モータ5とが干渉しないようにするため、集光光学系41の光軸と回転式モータ5のシャフト51は、従来よりも10〜15mm程度離れている必要がある。このため、第1反射部材6のサイズはその分大きくなってしまう。しかし、本実施形態に示す第2シャフト61は、集光光学系41の光軸に対して従来よりも離す必要はない。第1反射部材6は、従来同様小さいサイズでよく、慣性モーメントを減少させることができる。これにより、第1反射部材6を第1の位置又は第2の位置に切換えるのに要する時間が短縮でき、より高速な切換えが可能になる。また、第1反射部材6のサイズはより小さくなるので、
図14〜
図16に示すように、ファイバセレクタ1のケース2の奥行き寸法Dは減少する。このため、ファイバセレクタ1は更に小型化される。
【0081】
図17に示すように、第3実施形態に係るファイバセレクタ1の集光光学系ユニットU1のユニット基板8は、第2シャフト軸受支持部品81を有している。第2シャフト軸受支持部品81は、ユニット基板8の裏面に配置されている。第2シャフト61は、この第2シャフト軸受支持部品81によって、ユニット基板8に回転可能に支持されている。また、ユニット基板8は、第1反射部材6の反射面6aで反射したレーザ光を、鏡筒42内の集光光学系41に入射させるための貫通穴8aと、平歯車621を有する回転式モータ5のシャフト51を挿通させるための貫通穴8bを有している。
【0082】
第2シャフト軸受支持部品81は、第2シャフト61のユニット基板8に対する角度を調整するための図示しない角度調整機構(第1角度調整機構)を有していてもよい。これにより、第1反射部材6の反射面6aの煽り角度を含む光軸角度の調整を行うことが可能になる。この角度調整機構については後述する。
【0083】
この集光光学系ユニットU1によれば、回転式モータ5の設置は、平歯車621が平歯車622と噛み合わせるだけでよく、シャフト51の角度を高精度に調整する必要がない。このため、回転式モータ5単体を交換しても、第1反射部材6の反射面6aの光軸を再調整する必要がないというメリットが生じる。また、集光光学系ユニットU1がユニット単位で交換可能であるメリットは、第2実施形態の場合と同様である。
【0084】
本実施形態に示すケース2の前面板2aは、
図16に示すように、1つのコリメート光学系ユニットU2を取り付けるための1つの逆L字型の開口部211と、2つの集光光学系ユニットU1を取り付けるための2つのクランク型の開口部221とを有している。各ユニットU1、U2は、このケース2の前面板2aに対して前面側から交換可能に取り付けられる。開口部211はレーザ光の入射口と第2反射部材取付け孔とを兼用し、開口部221はレーザ光の出射口とモータ取付け孔とを兼用している。
【0085】
[ファイバセレクタの第4実施形態]
図18は、本発明の第4実施形態に係るファイバセレクタ1の平面図であり、
図19は、本発明の第4実施形態に係るファイバセレクタ1の正面図である。
図18では、ファイバセレクタ1のケース2の内部が見えるように、ケース2の天板を非表示としている。また、
図18では、レーザ光Lを細線で示している。外部から見えないレーザ光Lや、図示されている状態ではレーザ光Lを反射していない第1反射部材6の反射面6aによる反射光については破線で示している。また、
図20と
図21は、本発明の第4実施形態に係るファイバセレクタ1の斜視図である。
図20は、ファイバセレクタ1を後面側の斜め上方から見た斜視図であり、内部が見えるようにケース2の前面板2aと底面板2bを除いてケース2は全て非表示としている。
図21は、ケース2の前面板2a側の斜め下方から見た斜視図である。更に、
図22は、第4実施形態に係るファイバセレクタ1のケース2だけを前面板2a側の斜め上方から見た斜視図である。
図23は、第4実施形態に係るファイバセレクタ1の集光光学系ユニットU1の斜視図である。
【0086】
第4実施形態に係るファイバセレクタ1が、第3実施形態に係るファイバセレクタ1と異なっている点は、第1反射部材6が固定された第2シャフト61を回転させるための伝動機構62に、傘歯車623、624を使用していることである。即ち、回転式モータ5のシャフト51の先端に、第1傘歯車623が取り付けられている。
【0087】
一方、第2シャフト軸受支持部品81は下方(Z2方向)に延長され、第2シャフト61と平行に配置される第3シャフト63を有している。第3シャフト63は、第1傘歯車623に噛合する第2傘歯車624と、第2シャフト61に取り付けられた第2平歯車622に噛合する第3平歯車625とを有している。これにより、回転式モータ5のシャフト51と、第1反射部材6が固定されている第2シャフト61の関係は、第3実施形態のように平行な関係から、
図18に示すように、ファイバセレクタ1の上面から見て、45°の角度で斜めに交差する関係に変わっている。その結果、回転式モータ5のシャフト51は、集光光学系41の光軸と平行に配置される。集光光学系41の光軸と回転式モータ5のシャフト51が平行になると、回転式モータ5の取付け面が、ケース2の前面板2aと平行になるので、
図19や
図21から明らかなように、回転式モータ5の交換がより容易になり、保守による時間も短縮できる効果がある。
【0088】
なお、「光軸とシャフトが平行」とは、必ずしも光軸とシャフトが厳密に平行に配置されることを意味するものではなく、設計上平行となるように配置されることを意味する。従って、「光軸とシャフトが平行」とは、部品精度のばらつきや取付け誤差等によって完全な平行とはならない場合、即ち、略平行の場合も含む。
【0089】
本実施形態に示すように、回転式モータ5のシャフト51と第1反射部材6の第2シャフト61とを斜めに交差させるための伝動機構は、以上の傘歯車623、624に代えて、図示しないが、自在継手等を使用してもよい。
【0090】
本実施形態に示すケース2の前面板2aは、
図22に示すように、1つのコリメート光学系ユニットU2を取り付けるための1つの矩形状の開口部212と、2つの集光光学系ユニットU1を取り付けるための2つの矩形状の開口部222とを有している。各ユニットU1、U2は、このケース2の前面板2aに対して前面側から交換可能に取り付けられる。開口部212はレーザ光の入射口と第2反射部材取付け孔とを兼用し、開口部222はレーザ光の出射口を兼用しており、2つの開口部222の下方は、それぞれモータ取付け孔24と繋がっている。
【0091】
[ファイバセレクタの第5実施形態]
図24は、本発明の第5実施形態に係るファイバセレクタ1の平面図であり、
図25は、本発明の第5実施形態に係るファイバセレクタ1の正面図である。
図24ではファイバセレクタ1のケース2の内部が見えるように、ケース2の天板を非表示としている。また、
図24では、レーザ光Lを細線で示している。外部から見えないレーザ光Lや、図示されている状態ではレーザ光Lを反射していない第1反射部材6の反射面6aによる反射光については破線で示している。また、
図26と
図27は、本発明の第5実施形態に係るファイバセレクタ1の斜視図である。
図26は、ファイバセレクタ1を後面側の斜め上方から見た斜視図であり、内部が見えるようにケース2の前面板2aと底面板2bを除いてケース2は全て非表示としている。
図27は、ファイバセレクタ1をケース2の前面板2a側の斜め下方から見た斜視図である。また、
図28は、第5実施形態に係るファイバセレクタ1のケース2だけを前面板2a側の斜め上方から見た斜視図である。
図29は、第5実施形態に係るファイバセレクタ1におけるユニット単位で交換が可能な集光光学系ユニットU1の斜視図である。
【0092】
第5実施形態に係るファイバセレクタ1が、第4実施形態に係るファイバセレクタ1と異なっている点は、少なくとも一つの回転式モータ5のシャフト51が、当該回転式モータ5に隣接する2つの出力用光ファイバ4に入射するレーザ光Lの各光軸に対して、等距離になるように配置されていることである。即ち、
図25から明らかなように、ファイバセレクタ1を前面側から見た場合、各回転式モータ5は、鏡筒32、42に可及的に近接するように、隣接する鏡筒32と鏡筒42の間及び隣接する2つの鏡筒42の間に配置されている。
図25に示す左側の回転式モータ5は、鏡筒32とこれに隣接する鏡筒42に対してそれぞれ等距離に配置され、右側の回転式モータ5は、2つの鏡筒42に対してそれぞれ等距離に配置される。
【0093】
回転式モータ5のシャフト51の軸方向に垂直な断面形状も集光光学系41の光軸に垂直な断面形状も基本的には円に近いため、上記の構成により、
図25からも分かるように、複数の回転式モータ5のシャフト51を含む平面と、コリメート光学系31と複数の集光光学系41の光軸を含む平面との距離を縮めることができる。従って、
図25〜
図28に示すように、ファイバセレクタ1の高さHは縮小され、ファイバセレクタ1は更に小型化可能となる。
【0094】
なお、「等距離」とは、必ずしも距離が完全に一致していることを意味するものではなく、設計上等距離となるように配置されることを意味する。従って、「等距離」とは、部品精度のばらつきや取付け誤差等によって距離が完全に一致しない場合、即ち、略等距離の場合も含む。
【0095】
本実施形態に示すケース2の前面板2aは、
図28に示すように、1つのコリメート光学系ユニットU2を取り付けるための1つの開口部211と、2つの集光光学系ユニットU1を取り付けるための2つの開口部221とを有している。開口部211は略三角形状に形成され、開口部221は、Z軸方向に沿って斜めに大きく切りかかれている。各ユニットU1、U2は、このケース2の前面板2aに対して前面側から交換可能に取り付けられる。開口部211はレーザ光の入射口と第2反射部材取付け孔とを兼用し、開口部221はレーザ光の出射口とモータ取付け孔とを兼用している。
【0096】
第2シャフト61を備えた第4実施形態と第5実施形態の各ファイバセレクタ1において、
図30、
図31に示すように、第2シャフト61の不確定性(がたつき)を低減させるための押付機構65が備えられてもよい。具体的には、押付機構65は、第2シャフト61の両端に、それぞれ軸受641、642を有する。
図30、
図31では詳細には示されていないが、軸受641、642は、第2シャフト軸受支持部品81等によって所定の位置に支持される。押付機構65は、第2シャフト61をいずれかの軸受641又は642に対して押し付けるように構成される。これにより、第2シャフト61の軸方向の位置の不確定性(がたつき)が低減できるので、第2シャフト61に固定された第1反射部材6で反射したレーザ光Lが集光光学系41によって焦点を結ぶ位置(焦点位置)の制御精度が向上する。その結果、レーザ光Lが出力用光ファイバ4の入射端面のコアに確実に入射するようになり、ファイバセレクタ1における結合効率が向上する効果が得られる。
【0097】
図30に示す押付機構65は、第2シャフト61の外周に装着されたコイルばね等の弾性部材651で構成されている。弾性部材651は、一方の軸受641と第2シャフト61に固定される第2平歯車622との間で、第2平歯車622を介して第2シャフト61を他方の軸受642の方向に押し付けている。また、
図31に示す押付機構65は、ソレノイドコイル652を有している。この場合、第2シャフト61は磁化されており、ソレノイドコイル652が第2シャフト61の外周に装着されることにより、ソレノイドアクチュエータが構成される。ソレノイドコイル652は、図示しないが、支持部材等によってケース2内の所定の位置に固定されている。ソレノイドコイル652が通電されると、第2シャフト61は、例えば軸受642の方向に磁力によって押し付けられる。
【0098】
押付機構65がコイルばね等の弾性部材651である場合は、低コストで上述の効果を実現できる。一方、押付機構65がソレノイドアクチュエータである場合は、必要な時だけ第2シャフト61を一方の軸受641又は642に押し付けることができる。このため、第2シャフト61の回転中は軸受641又は642に押し付けないように押付機構65を制御することもできる。ソレノイドアクチュエータからなる押付機構65は、押し付けに伴う軸受641、642での摩擦抵抗の増加が発生せず、第2シャフト61の回転速度が低下することがないため、第1反射部材6を高速で回転移動させることができる。従って、ソレノイドアクチュエータからなる押付機構65は、レーザ光Lを出射させる出力用光ファイバ4を、より高速で切換えることが可能である。
【0099】
伝動機構62や軸受641、642等の少なくとも摩擦が発生する部分には、自己潤滑性を有する樹脂を使用してもよい。オイルミストが発生するおそれのある潤滑油を使用しなくても、歯車間の焼付きや歯車の摩耗、軸受の摩擦や摩耗等を防止あるいは低減することができるので、周辺の空気の清浄度を維持することができる。このため、同じ空間で使用されるコリメート光学系31や集光光学系41、第1反射部材6等の光学部品のオイルミストによる汚染を防ぐことができる。自己潤滑性を有する樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリアセタール等のエンジニアリング・プラスチックやポリクロロトリフルオロエチレン(三弗化塩化エチレン)等のスーパーエンジニアリング・プラスチック等の樹脂を使用することができる。
【0100】
[焦点位置及び光軸角度の調整機構]
ここで、コリメート光学系31や集光光学系41の焦点位置や光軸角度の調整機構について、具体的な例を挙げて説明する。なお、コリメート光学系31と集光光学系41の焦点位置や光軸角度の調整機構は同じ構造であってもよいので、ここではコリメート光学系31における調整機構の例について記載する。
図32〜
図35は、コリメート光学系31における調節機構の例を示している。
図32は、焦点位置と光軸角度の調整機構を備えたコリメート光学系を示す斜視図であり、
図33は、焦点位置と光軸角度の調整機構を備えたコリメート光学系を示す正面図である。
図34は、焦点位置と光軸角度の調整機構を備えたコリメート光学系を示す縦断面図であり、
図35は、焦点位置と光軸角度の調整機構を備えたコリメート光学系を示す横断面図である。
【0101】
図34、
図35に示すように、鏡筒32内に筒状の摺動部品311が収容されている。摺動部品311は、中央にレンズ312が取り付けられたレンズホルダ313を支持している。具体的には、レンズホルダ313は、摺動部品311の内部にレーザ光Lの光軸方向に延びるように配置される4本のガイドピン314と係合し、このガイドピン314の外周に装着されたコイルばね315によって弾性的に支持されている。レンズホルダ313の外周面は球面313aとなっている。レンズホルダ313は、この球面313aによって摺動部品311の内面と接触して支持されている。
【0102】
摺動部品311と鏡筒32の出射開口部32aとの間に、コイルばね316が配置されている。コイルばね316は、摺動部品311を鏡筒32の前方側(Y1方向側)に向けて付勢している。鏡筒32の前方側は、コネクタ33のフランジ部331によって閉鎖されている。
【0103】
コネクタ33のフランジ部331の上部に、焦点位置調節ネジ34が取り付けられている。焦点位置調節ネジ34は、フランジ部331を貫通し、摺動部品311の上側端面に当接している。焦点位置調節ネジ34が正方向に回転すると、摺動部品311に対し、コイルばね316の付勢力に抗して押す方向(Y2方向)の力を作用させる。また、焦点位置調節ネジ34が逆方向に回転すると、摺動部品311は、コイルばね316に押されて前方(Y1方向)に移動する。このように摺動部品311がY軸方向に移動することにより、レンズ312の焦点位置が変化する。従って、コリメート光学系31の焦点位置は、焦点位置調節ネジ34を操作することによって、ファイバセレクタ1の前面側から調整可能である。
【0104】
また、コネクタ33のフランジ部331には、
図33に示すように、焦点位置調節ネジ34から時計回りに90°離れた位置に、第1の光軸角度調節ネジ35が取り付けられている。第1の光軸角度調節ネジ35は、フランジ部331を貫通し、レンズホルダ313の右側端面に当接している。また、同様にして、コネクタ33のフランジ部331には、
図33に示すように、焦点位置調節ネジ34から時計回りに180°離れた位置に、第2の光軸角度調節ネジ36が取り付けられている。第2の光軸角度調節ネジ36は、フランジ部331を貫通し、レンズホルダ313の下側端面に当接している。
【0105】
第1の光軸角度調節ネジ35を回すと、レンズホルダ313の球面313aによる球面滑りによって、レンズ312がZ軸に平行な直線を中心軸として回転する。これにより、レンズ312の光軸は、Y軸に対して横方向(X軸方向)に変化する。一方、第2の光軸角度調節ネジ36を回すと、レンズホルダ313の球面313aによる球面滑りによって、レンズ312がX軸に平行な直線を中心軸として回転する。これにより、レンズ312の光軸は、Y軸に対して上下方向(Z軸方向)に変化する。従って、コリメート光学系31の光軸角度は、第1の光軸角度調節ネジ35及び第2の光軸角度調節ネジ36を操作することによって、ファイバセレクタ1の前面側から調整可能である。
【0106】
なお、レンズ312の焦点位置及び光軸角度の調整後は、各調節ネジ34、35、36に設けられたロック用ネジ341、351、361を締めることによって、各調節ネジ34、35、36が回らないようにロックすることができる。ロック用ネジ341、351、361は、L型六角レンチ等を使用して、ファイバセレクタ1の前面側から容易に回すことができる。
【0107】
また、
図33において、第1の光軸角度調節ネジ35及び第2の光軸角度調節ネジ36とレーザ光Lの光軸を対称線として対称な位置にあるネジ37、38は、光軸角度調整時の支点となるネジである。これらのネジ37、38にはそれぞれコイルばね371、381が装着され、レンズホルダ313を弾性的に支持している。ネジ37、38は、レンズホルダ313から少し離れた状態で固定しておいて、通常は光軸角度調整時に回す必要はない。
【0108】
[第1反射部材の角度調整機構]
次に、回転式モータ5のシャフト51に固定された第1反射部材6の反射面6aの煽り角度を含む光軸角度を調整するための角度調整機構(第1角度調整機構)について
図36〜
図39を用いて説明する。
図36〜
図39は、回転式モータのシャフトの回転軸の角度調整機構とその関連部品を示す図であり、
図36は斜視図、
図37は正面図、
図38は縦断面図、
図39は横断面図である。なお、
図36〜
図39において、回転式モータ5を取り付けているユニット基板8は、説明を簡単にするため、単純な四角形で示している。
【0109】
回転式モータ5のシャフト51に固定された第1反射部材6の反射面6aの煽り角度を含む光軸角度を調整するための第1角度調整機構50は、回転式モータ5の基台部54と、3本の角度調節ネジ55、56、57と、コイルばね551、561、571とを有して構成される。回転式モータ5の基台部54は、3本の角度調節ネジ55、56、57によって、ユニット基板8に取り付けられている。
【0110】
角度調節ネジ55、56は、基台部54の右側端部(X1方向の端部)において、上下方向(Z軸方向)に離れて配置されている。また、角度調節ネジ57は、基台部54の左側端部(X2方向の端部)において、上下方向(Z軸方向)の中央部に配置されている。コイルばね551、561、571は、各角度調節ネジ55、56、57の外周にそれぞれ装着されている。各コイルばね551、561、571は、回転式モータ5をユニット基板8から遠ざける方向の力を発揮している。
【0111】
角度調節ネジ55、56、57を回すことによって、回転式モータ5とユニット基板8との間の距離が調整される。具体的には、
図37における左側の角度調節ネジ57を回すと、回転式モータ5はZ軸に平行な直線を中心軸として回転する。これにより、シャフト51の軸方向はY軸に対して横方向(X軸方向)に変化し、これに伴って、シャフト51に固定された第1反射部材6の反射面6aの光軸角度が変化する。また、
図37における右側の2本の角度調節ネジ55、56を互いに反対方向に回すと、回転式モータ5は、X軸に平行な直線を中心軸として回転する。これにより、シャフト51の軸方向は、Y軸に対して上下方向(Z軸方向)に変化し、これに伴って、シャフト51に固定された第1反射部材6の反射面6aの光軸角度が変化する。更に、3本の角度調節ネジ55、56、57を同じ方向に同じ角度回すと、回転式モータ5は、Y軸方向に沿って平行移動する。
【0112】
以上のように、回転式モータ5のシャフト51に固定されている第1反射部材6の反射面6aの煽り角度を含む光軸角度は、第1角度調整機構50の角度調節ネジ55、56、57を操作することにより、ファイバセレクタ1の前面側から調整可能である。なお、調整後は、L型六角レンチ等を使用して、ロック用ネジ552、562、572を締めることによって、角度調節ネジ55、56、57が回らないようにロックする。
【0113】
次に、第2シャフト61に固定された第1反射部材6の反射面6aの煽り角度を含む光軸角度調整のための第1角度調整機構の例について、
図40〜
図43を用いて説明する。
図40〜
図43は、第2シャフトに固定された反射部材の反射面の光軸角度調整機構とその関連部品を示し、
図40は斜視図、
図41は正面図、
図42は縦断面図、
図43は横断面図である。なお、
図40〜
図43において、第2シャフト61を支持している第2シャフト軸受支持部品81を取り付けているユニット基板8は、説明を簡単にするため、単純な四角形で示している。
【0114】
第2シャフト61に固定された第1反射部材6の反射面6aの煽り角度を含む光軸角度を調整するための第1角度調整機構80は、横向きT字型の基台部82と、3本の角度調節ネジ83、84、85と、コイルばね831、841、851とを有して構成される。第2シャフト軸受支持部品81は、基台部82に一体に形成されている。この基台部82は、3本の角度調節ネジ83、84、85によって、ユニット基板8に取り付けられている。このうちの角度調節ネジ83、84は、基台部82の横方向の一方端部(X1方向の端部)において、上下方向(Z軸方向)に離れて配置されている。また、角度調節ネジ85は、基台部82の横方向の他方端部(X2方向の端部)に配置されている。コイルばね831、841、851は、各角度調節ネジ83、84、85の外周にそれぞれ装着されている。各コイルばね831、841、851は、第2シャフト軸受支持部品81に対し、基台部82を介して、ユニット基板8から遠ざける方向の力を発揮している。
【0115】
角度調節ネジ83、84、85を回すことによって、第2シャフト軸受支持部品81のユニット基板8に対する取付け角度が調整される。具体的には、
図41における左側の角度調節ネジ85を回すと、第2シャフト軸受支持部品81は、Z軸に平行な直線を中心軸として回転する。これにより、ユニット基板8に対する第2シャフト軸受支持部品81の取付け角度は、横方向(X軸方向)に変化し、これに伴って、第2シャフト61に固定された第1反射部材6の反射面6aの光軸角度が変化する。また、
図41における右側の2本の角度調節ネジ83、84を互いに反対方向に回すと、第2シャフト軸受支持部品81は、X軸に平行な直線を中心軸として回転する。これにより、ユニット基板8に対する第2シャフト軸受支持部品81の取付け角度は、上下方向(Z軸方向)に変化し、これに伴って、第2シャフト61に固定された第1反射部材6の反射面6aの光軸角度が変化する。更に、3本の角度調節ネジ83、84、85を同じ方向に同じ角度回すと、第2シャフト軸受支持部品81は、Y軸方向に沿って平行移動する。
【0116】
以上のように、第2シャフト61に固定された第1反射部材6の反射面6aの煽り角度を含む光軸角度は、第1角度調整機構80の角度調節ネジ83、84、85を操作することによって、ファイバセレクタ1の前面側から調整可能である。なお、調整後は、L型六角レンチ等を使用して、ロック用ネジ832、842、852を締めることによって、角度調節ネジ83、84、85が回らないようにロックする。
図40〜
図43では、ロック用ネジ852のみが示されている。
【0117】
第2反射部材7の角度調整機構(第2角度調整機構)も、上記第1反射部材6のいずれかの角度調整機構(第1角度調整機構50、80)と同様に構成することができる。なお、以上の実施形態として記載した調整機構はあくまで一例であって、本発明において、調整機構は以上の実施形態に限定されない。
【0118】
[レーザ装置の実施形態]
図44は、本発明に係るレーザ装置の概念的な構成を示すブロック図である。
図45は、本発明に係るレーザ装置におけるファイバセレクタの設置例を示す図であり、
図46は、本発明に係るレーザ装置におけるファイバセレクタの他の設置例を示す図である。
レーザ装置10は、
図44に示すように、上記の第1実施形態から第5実施形態として記載したファイバセレクタ1と、レーザ発振器11と、1本の入力用光ファイバ3と、複数の出力用光ファイバ4と、レーザ電源12と、制御部13を備える。
【0119】
レーザ発振器11は、少なくとも1台以上設けられる。入力用光ファイバ3は、レーザ発振器11から出力されたレーザ光をファイバセレクタ1に入力する。複数の出力用光ファイバ4は、ファイバセレクタ1から出力されたレーザ光を複数のレーザ光出射端に向けて伝搬する。レーザ電源12は、レーザ発振器11に駆動電力を供給する。制御部13は、ファイバセレクタ1の回転式モータ5の回転を制御し、レーザ電源12に対してレーザ発振器11への駆動電力の供給を指令する出力指令値を出力する。このレーザ装置10は、レーザ発振器11から出力されたレーザ光を、入力用光ファイバ3を介してファイバセレクタ1に入力し、ファイバセレクタ1から出力されるレーザ光を、複数の出力用光ファイバ4のうちのいずれかから選択的に出射するものである。
【0120】
図45、
図46に示すように、本実施形態に示すレーザ装置10において、ファイバセレクタ1は、レーザ装置10の筐体14内に設置される。具体的には、ファイバセレクタ1は、筐体14に開閉可能に設けられる前面パネル15を開いてレーザ装置10の外側からファイバセレクタ1を見た時に、第1反射部材6よりも回転式モータ5が手前に見える方向、即ち、ファイバセレクタ1の前面側(前面板2a)が手前に見える方向に設置される。開閉可能な前面パネル15は、レーザ装置10の筐体14を構成する操作面パネルあるいはメンテナンス面パネルであってもよい。
【0121】
ファイバセレクタ1は、以上説明したいずれかの実施形態に係るファイバセレクタ1であるため、コリメート光学系31や集光光学系41の光軸角度調整や焦点位置調整、第1反射部材6の反射面6aや第2反射部材7の反射面7aの光軸角度調整、また、これらの光学部品や回転式モータ5の部品単位の交換、これらの光学部品や回転式モータ5等を含むユニット単位での交換等、全ての調整作業や保守作業が、ファイバセレクタ1の前面側から行うことが可能である。このため、ファイバセレクタ1をレーザ装置10に設置したまま、レーザ装置10を移動しないで、ファイバセレクタ1の調整作業や保守作業を行うことが可能になる。
【0122】
また、ファイバセレクタ1は、後面側(前面板2aの反対面側)からの調整作業や保守作業を必要としないだけでなく、ファイバセレクタ1の後面は、光学系の清浄度を保つための密閉されたケース2以外には部品の設置を必要としないので、
図45、
図46に示すように、ファイバセレクタ1は、後面をレーザ装置10の内壁や、レーザ装置10内の仕切り壁等に近接又は当接して配置することができる。従って、レーザ装置10内の各種の調整や保守のためのスペースは、ファイバセレクタ1の前方にだけ確保されればよいため、レーザ装置10内にファイバセレクタ1を設置したことによるレーザ装置10のサイズアップは最小限に抑えられる。
【0123】
図45、
図46においては、レーザ装置10内におけるファイバセレクタ1の設置状態が見えるように、レーザ装置10の側面パネルは非表示としており、ファイバセレクタ1以外のレーザ発振器やレーザ電源等の他の構成品も図示していない。また、制御部13がファイバセレクタ1の回転式モータ5の回転を制御し、その制御に同期して、レーザ電源12に対してレーザ発振器11への駆動電力の供給を指令する出力指令値を出力するので、このレーザ装置10は、より高速で、レーザ光を出射する出力用光ファイバ4の切換えを行うことができる。更に、切換えが完了した瞬間に遅延なく出力用光ファイバ4の出射端からレーザ光を出射できる。従って、本発明に係るレーザ装置10を使用すると、効率良くレーザ加工を行うことができる。
【0124】
制御部13は、レーザ装置10内に設置されている必要はない。例えば、レーザ光出射端がロボットハンドに装備された加工ヘッドである場合は、制御部13はロボットコントローラ内に設置された制御部であってもよい。この場合、制御部13は、ロボットコントローラの制御部を兼用することができ、このロボットコントローラ内の制御部からの指令で、ファイバセレクタ1の回転式モータ5やレーザ電源12等が制御される。
【0125】
なお、本発明の各実施形態に係るファイバセレクタ1おいて、第1反射部材6は、レーザ光Lをタイムシェアリングするものに限らない。ファイバセレクタ1は、レーザ光Lの一部を透過する半透明な反射率の異なる第1反射部材6を備えることにより、レーザ光Lのパワーシェアリングが可能となるように構成されてもよい。例えば、
図1の左側の第1反射部材6に反射率50%の反射部材を使用し、右側の第1反射部材6に反射率100%の反射部材を使用して、両方の第1反射部材6が反射面6aでレーザ光Lを反射する第1の位置に在位するように回転式モータ5を制御することにより、2つの出力用光ファイバ4に50:50の割合でレーザ光のパワーを分割できる。
【0126】
また、本発明の各実施形態に係るファイバセレクタ1において、第1反射部材6は、制御部からの指令通り、第1反射部材6がレーザ光Lを遮らない第2の位置に在位している否かを確認するための図示しない在位確認センサを備えてもよい。
【0127】
更に、本発明の各実施形態に係るファイバセレクタ1において、レーザ光Lによるファイバセレクタ1の各部の温度上昇を抑えるために、必要に応じて、各部を冷却水等の冷媒で冷却する構造を備えてもよいし、温度上昇を監視するための温度センサを配置してもよい。