特許第6603283号(P6603283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6603283エンジンの回転を中断させるための方法、コントローラ、システム、車輌、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603283
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】エンジンの回転を中断させるための方法、コントローラ、システム、車輌、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20191028BHJP
   F02D 17/00 20060101ALI20191028BHJP
   F02D 13/02 20060101ALI20191028BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20191028BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   F02D29/02 321C
   F02D29/02 321A
   F02D17/00 Q
   F02D13/02 H
   F02D41/04 310H
   F02D9/02 325Z
   F02D41/04 320
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-193267(P2017-193267)
(22)【出願日】2017年10月3日
(62)【分割の表示】特願2016-541180(P2016-541180)の分割
【原出願日】2014年12月18日
(65)【公開番号】特開2018-21561(P2018-21561A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2017年10月3日
(31)【優先権主張番号】1322591.7
(32)【優先日】2013年12月19日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512308720
【氏名又は名称】ジャガー ランド ローバー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Jaguar Land Rover Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】イアン・エディントン
(72)【発明者】
【氏名】アダム・ムーアクロフト
【審査官】 戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−072280(JP,A)
【文献】 特開2013−113160(JP,A)
【文献】 特開2003−278516(JP,A)
【文献】 特開2004−169646(JP,A)
【文献】 特表2013−537272(JP,A)
【文献】 特表2013−541663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/02
F02D 9/02
F02D 13/02
F02D 17/00
F02D 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4ストローク内燃エンジンの回転を中断させる方法であって、
前記エンジンへの燃料供給を中断するステップと、
第1のシリンダに前記燃料供給の中断後に生じる第1吸気行程において第1の空気充填量の空気が与えられ、
膨張行程で停止する予定の第2のシリンダには、前記第1吸気行程の一行程後に生じる第2吸気行程で、第2の空気充填量の空気が与えられ、且つ、
圧縮行程で停止する予定の第3のシリンダには、前記第2吸気行程の一行程後に生じる第3吸気行程で、第3の空気充填量が与えられるように、エンジン吸気口からシリンダへの空気充填量を制御するステップとを有し、
前記第1、第2、および第3のシリンダは、それぞれの空気充填量を前記エンジンの吸気マニホールドから受け、
前記それぞれの空気充填量は、前記吸気マニホールドのマニホールド圧力に依存し、各シリンダの、能動的タペットを介して制御される吸気ポペットバルブの、上昇量又は開口時間若しくはそれらの両方、及び/又は、開口タイミング又は閉口タイミング若しくはそれらの両方を調整することにより制御され、
前記能動的タペットは、
第1の空気充填のための前記第1のシリンダの吸気ポペットバルブの上昇量又は開口時間若しくはそれらの両方が、第2の空気充填のための前記第2のシリンダの吸気ポペットバルブの上昇量又は開口時間若しくはそれらの両方よりも大きいように、且つ
第3の空気充填のための前記第3のシリンダの吸気ポペットバルブの上昇量又は開口時間若しくはそれらの両方が、第2の空気充填のための前記第2のシリンダの吸気ポペットバルブの上昇量又は開口時間若しくはそれらの両方よりも大きいように制御され、
その結果、前記第2の空気充填量が前記第1および前記第3の空気充填量に比して少なく、前記第2の空気充填量と比較すると前記第1および前記第3の空気充填量は比較的十分であり、
前記第1および前記第3吸気行程は、それぞれ前記第2吸気行程の一行程前および一行程後に生じることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記シリンダへの空気充填量は、前記エンジンの回転が燃料供給の中断からクランクの3回転以内に停止するように制御されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記能動的タペットが、油圧制御されることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の空気充填量の空気が、吸気バルブの上昇量又は開口時間を小さくすることにより最小化された空気充填量であり、前記第1および前記第3の空気充填量が、前記吸気バルブの上昇量又は開口時間を大きくすることにより最大化された空気充填量であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の方法。
【請求項5】
エンジン再スタートに備えてマニホールド圧力を維持するために、前記マニホールド圧力を制御するための前記吸気マニホールド内のスロットルが燃料供給の中断からエンジン回転停止までの間、開いたままになることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の方法
【請求項6】
前記燃料供給の中断の後であって、且つ前記第1吸気行程の前の、1つの吸気行程において、前記第2の空気充填量に比して比較的十分な空気充填量が前記エンジンの少なくとも第3のシリンダに供給されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の方法。
【請求項7】
前記第3吸気行程の一行程後に生じる吸気行程で停止する予定の第4のシリンダには、前記膨張行程で停止する予定のシリンダに前記第2吸気行程で与えられる空気充填量に比して比較的十分な空気充填量が前記吸気行程で与えられるように、前記エンジン吸気口からシリンダへの空気充填量を制御するステップを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記吸気ポペットバルブはそれぞれ、カムによって前記能動的タペットを動作することで制御されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1に記載の方法。
【請求項9】
前記能動的タペットは、流量を変えることによって前記吸気ポペットバルブの上昇特性を調整又は制御するものであり、
前記吸気ポペットバルブの上昇特性は前記カムによって定義されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記内燃エンジンがガソリンエンジンで、前記方法が前記吸気マニホールドのマニホールドスロットルを実質的に開くステップを有する、又は
前記内燃エンジンがディーゼルエンジンで、前記方法が前記マニホールドスロットルを閉鎖方向に移動するステップを有する、請求項1〜4のいずれか1に記載の方法。
【請求項11】
前記内燃エンジンに請求項1〜10のいずれか1に記載の方法を実施させるように構成された内燃エンジンのためのコントローラ。
【請求項12】
前記内燃エンジンと少なくとも1つのコントローラを有し、前記少なくとも1つのコントローラは前記内燃エンジンに請求項1〜10のいずれか1に記載の方法を実施させるように構成されている、システム。
【請求項13】
請求項12のシステムを備えた車両。
【請求項14】
コントローラ上で実行され、請求項1〜10のいずれか1に記載の方法をエンジンに実行させる、内燃エンジンのための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの停止および再始動に対する改善に関する。本発明に係る実施形態は、内燃エンジンを備えた車両のスタートストップ機能を最適化する方法、この方法を実行するコントローラ、およびこうしたコントローラを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
「スタートストップ」機能を有する4ストローク内燃エンジンを備えた車両が知られている。この機能によれば、たとえば車両が停止している間、車両の内燃エンジン(ICE)を回転させる必要がない場合に、燃料効率性を改善し、不必要な排気ガスを低減するために、所定の条件が合致したときに、エンジンを自動的に停止させることができる。こうした停止時条件は、多くの場合、車両が停止していること、およびブレーキシステムがドライバの操作により動作していることである。これは、上記機能の「ストップ」部分である。これに付随する「スタート」機能によれば、たとえば車両のドライバがブレーキシステムを解放した場合、および空調システム等の車両の別のシステムのためのパワーを生成するためにトルクを出力させる必要がある場合等、さまざまな条件に変化があった場合、車両のエンジンを再始動させることができる。さまざまな条件によりスタートストップ事象を起動するシステムおよびさまざまな手段が知られており、本願では詳細には説明しない。
【0003】
スタートストップ事象は、たとえば一連の信号機において、もしくは車両が短い距離だけ走って、数秒間停止し、また短い距離だけ走るといった交通渋滞状況において、車両走行が一時的に停止するような走行過程中の所定のポイントで生じる場合が多い。こうした状況において、スタートストップシステムの条件付き使用に付随する「エンジン停止」指令と、その後の「エンジン再始動」指令との間が比較的に短い期間である場合、エンジンをできるだけ迅速に停止させ、再始動させられることは、スタートストップシステムに関連するエンジンの優先的な特性である。このとき、エンジンが停止していて、エンジンが燃料をまったく消費しない期間を最大にし、排気ガスの低減の観点からシステムの利便性を最大にすることができる。
【0004】
円滑かつ迅速な停止および再始動が望ましい。しかしながら、いくつかの状況において、停止の際にクランクシャフトの回転が停止するとき、たとえばクランクシャフトがわずかに逆回転して、加速度または減速度の大きな変化に起因して、エンジンは振動または揺動することがある。
【0005】
エンジンは、停止事象時に再始動させる必要があり、上述の逆回転は、始動モータの回転とは相反するものであり、ピニオンがクラッシュ(破損)することがある。こうした事象が、たとえば400rpm(分/回転)未満で起こった場合、ピニオン破損を回避するために0.4秒間、モータ始動を遅延させる必要があり、この遅延は、容易に感知されるものであり、可能ならば排除すべきである。
【0006】
同様に、回転を停止させるまでの時間は、クランクシャフトの停止位置およびシリンダ内圧に依存して変化する。再始動時間は、エンジンシリンダ内の空気の容量、および圧縮行程(ストローク)時にシリンダからのシリンダ内圧の漏れに影響される。また再始動時間は、クランクシャフト位置に関連する燃料噴射タイミング、とりわけ上死点(TDC)に接近したシリンダに影響される。
【0007】
従来技術に係る方法および装置は、シリンダ内への空気の充填量を制御するために、エンジン停止中のスロットル位置を調整することを提案してきたが、比較的に大きい容量を有する吸気マニホールドに対してはあまり効率的ではない。いずれにせよ、従来技術に係る解決手段は、エンジン特性、再始動性能、およびエンジン排気ガス制御の中で妥協して得られたものである傾向がある。
【0008】
1つの先行技術に係るシステムでは、エンジンへの燃料供給を停止し、スロットルを閉じることにより、吸気マニホールドに吸気される空気の容量を制御して、エンジンを停止させる。別の方法は、スロットルを開いたまま、エンジンへの燃料供給を停止する。これらの各手法により、停止特性が異なるものとなる。
【0009】
「スロットルを閉じて」停止させた場合、「スロットルを開いたまま」停止させた場合より比較的に良好なNVH(ノイズ、振動、ハーシュネス)特性が得られる傾向がある。その理由は、スロットルの閉タイミング、およびシリンダならびに吸気マニホールドのそれぞれの容量により依存して、シリンダ内の圧縮が低減されると、停止振動を低減することができるためである。
【0010】
エンジン停止の際、スロットルを閉じることにより、最終的にエンジンが停止するまで、エンジンを引き続き回転させ、吸入ストローク時にシリンダ上のバルブが引き続きシリンダ内に吸気することができる。これは、潜在的には、吸気マニホールド内の圧力を下げることになる。したがって、エンジンが再始動の指令を受けたとき、吸気マニホールド内の圧力は低く、この圧力に戻るまで、比較的に少量の外気がエンジンシリンダ内に流入する。これは、点火するまでに不必要に長い期間クランクを回し、利用可能な正味のトルク出力を遅延させるといった、品位の劣る特性で再始動することにもなる。スロットルを閉じた停止に伴うエンジンの回転停止のために要する時間は、スロットルを開いた停止に伴うエンジンの回転停止のために要する時間より長くなることがある。
【0011】
「スロットルを開いたままの」停止(開スロットルシャットダウン)の場合、吸気マニホールドの圧力は維持され、エンジンが回転すると増大する。比較的に大容量の外気がエンジンシリンダ内に入り、スロットルを開いたままで停止させたときの時間は、特定のエンジン内のポンピングロスおよび圧縮ロスに依存して、スロットルを閉じて停止させたときの時間とは異なる場合がある。
【0012】
スロットルを開いたままの停止させることの利点は、一旦エンジンが停止すると、少なくとも1つのシリンダには、比較的に通常の十分な圧力の空気が充填される傾向がある点にある。また吸気マニホールドが依然として十分な圧力に維持されている。これは、再始動の指令があったとき、再始動特性が比較的に良好であり、再始動時間、すなわち正味のトルクが出力できるようになるまでの時間がより短くなることを意味する。エンジンが回転停止する前に、再始動が指令された場合も同様の利点が得られ、ピニオンの破損を回避することができる。
【0013】
しかしながら、開スロットルシャットダウンは、停止時のNVH性能があまり良好でない傾向がある。エンジンが減速している際、エンジンシリンダ内における比較的に大容量の充填空気の吸入、圧縮、および膨張による効果は、とりわけエンジンが最終的に停止するとき、クランクシャフトの回転が不規則に、または「波打つ」ようになる。シリンダ内の空気の圧力の比較的に大きな変化に起因して、速度のふらつきは大きくなる。最終的にエンジンが停止する直前のポイントまで到達し、このとき1つのシリンダ内のピストンが上死点(TDC)を通過し、十分に圧縮された空気が充填され、エンジンの回転を継続するように作用し、他方、別のシリンダは下死点(BDC)を通過し、十分な空気が充填され、継続する回転を圧縮し、回転を抑制するように作用する。この時点で、2つのシリンダは、互いに対抗するように作用し、この作用により動きが「固定」され、クランクシャフトは、回転が止まるまで、前方または後方に回転して「跳ねる」ようになる。これは、エンジンの揺れまたは振動としてドライバに知覚される。とりわけ快適性および静寂性が求められる高価格帯のまたは高級な動力車両において、クランクシャフトの波打った不規則な回転と、エンジンの減速が組み合わさることにより、好ましくないNVH特性が生じる。
【0014】
つまり先行技術においては、スタートストップのために、「スロットルを閉じた」停止(閉スロットルシャットダウン)と「スロットルを開いたままの」停止(開スロットルシャットダウン)との間で妥協点(トレードオフ)を見出す必要があり、いずれにせよ、1つの選択肢は他方の選択肢に対して利点を有するが、他方では相対的な問題を有する。
【0015】
車両がスタートストップ動作を実行しているとき、先行技術に係る方法より多くの利点を提供しつつ、NVHが低減され、迅速で効率的な再始動を実現する停止(シャットダウン)の処理または方法が求められている。
【0016】
より最近では、「可変バルブ」システムがエンジンに採用されるようになっており、可変バルブシステムによれば、カムシャフトまたは他のバルブ制御デバイスとは少なくとも半ば独立して、能動的なタペットが関連バルブの動作を、ストロークごとに実質的に瞬間的に変更することができる。こうした能動的タペットは、エンジンの電子制御ユニット(ECU)からの指令に応答して、ブリードバルブ等の電子式に操作されるバルブを用いて容量を制御することができる油圧チャンバを有してもよい。こうしたタペットは、ソレノイドを有するものであってもよい。
【0017】
典型的には、こうした可変バルブシステムは、能動的タペットを用いて、それぞれのバルブの各ストロークにおいて、燃焼チャンバへ空気を取り込むための吸気開口部の大きさならびに/もしくは取込タイミング、および/または燃焼チャンバから空気もしくは燃焼ガスを排気するための排気開口部の大きさならびに/もしくは排気タイミングを変更するものである。先行技術では、これは、典型的には、エンジンが回転中に、燃焼チャンバ内の空気および/または燃焼ガスを必要な量だけ供給して、トルクを制御し、および/または燃費ならびに/もしくはエンジンの排気ガス特性を改善するために行なわれるものである。
【0018】
典型的な標準的な先行技術による応用例では、能動的タペットを用いて、1つまたはそれ以上の以下の技術に基づいて、空気充填量が制御される。
・1回の燃焼サイクル中のポペットバルブの最大開口量を増減させるためにバルブリフト(バルブ上昇量)を変更する。開閉タイミングが変更されない場合、(バルブがスロットル範囲内にあるとき)バルブ上昇量が増大すると、取り込まれる空気の量が増大し、バルブ上昇量が低減すると、取り込まれる空気の量が低減する。
・バルブの開タイミングを再設定するか、バルブの閉タイミングを再設定するか、またはそれらの両方を行うことにより、バルブ開期間を変更する。バルブリフトが変更されない場合、より長い開期間を用いると、取り込まれる空気の量が増大し、より短い開期間を用いると、取り込まれる空気の量が低減する。
・たとえば吸気バルブの開タイミングを再設定して、排気バルブの動作と重複する期間を増減させるように、吸気バルブおよび排気バルブの重複タイミングを変更する。
【0019】
重複期間が低減すると、燃焼に利用できる空気の容量が増大し、重複期間が増大すると、燃焼に利用できる空気の容量が低減する傾向がある。
【0020】
外気充填容量を直接的に低減することにより、または燃焼チャンバ内の燃焼ガスの比率をより高く維持するように(こうしたガスは不活性であり、燃焼に寄与することができない)バルブ重複期間を制御することにより、燃焼に利用できる空気の容量を低減してもよい。
【0021】
能動的タペットを燃焼チャンバの排気バルブに設けた場合、バルブ重複期間は、吸気バルブ、排気バルブ、またはその両方を用いて変更してもよい。
【0022】
スタートストップ事象中、エンジンの停止および始動を処理する装置および方法は、好適にも、ディーゼルエンジンおよびガソリンエンジンの両方の態様に適用可能であるため、異なる停止/始動特性に適合するように容易に変形することができる。
【発明の概要】
【0023】
有利なことに、本発明の実施形態として本願で開示されるように、上記説明した可変バルブシステムを用いることで、4ストローク内燃エンジンのスタートストップ機能が改善されることが確認された。本発明の態様は、内燃エンジンのシャットダウンを調整する方法、コントローラ、エンジン、および車両に関する。「シャットダウン」の用語は、エンジン動作の停止を指令した時からエンジン動作の停止までの期間を意味する。
【0024】
本発明の1つの態様によれば、4ストローク内燃エンジンの回転を停止させる方法が提供され、この方法は、
燃料供給を中断するステップと、
膨張行程で停止する予定のシリンダが各吸入行程で低減された空気充填量を有し、圧縮行程で停止する予定のシリンダが各吸入行程で比較的に十分な空気充填量を有するように、エンジン吸気口からのシリンダ充填量を制御するステップとを有する。
【0025】
理解されるように、各シリンダのそれぞれの吸入行程は、停止する予定のエンジンの行程前のシリンダの最後の吸入行程を意味する。また理解されるように、膨張行程で停止する予定のシリンダの各吸入行程において低減された空気充填量とは、シリンダのその前の吸入行程における空気充填量に対して低減されることを意味する。圧縮行程で停止する予定の各吸入行程における空気充填量は、比較的に十分なものである。たとえば膨張行程で停止する予定のシリンダ内の空気充填量に比して増大されたものであってもよい。択一的または追加的には、圧縮行程で停止する予定のシリンダの吸入行程における空気充填量は、膨張行程で停止する予定のシリンダが吸入行程に入る直前の吸入行程の空気充填量と実質的に同等か、それ以上であってもよい。
【0026】
シリンダへの空気充填は、吸入行程で停止しつつあるシリンダに比較的に十分な空気充填量を供給してもよい。
【0027】
理解されるように、吸入行程で停止する予定のシリンダの吸入行程における空気充填量は比較的に十分なものである。たとえば膨張行程で停止する予定のシリンダの各吸入行程における空気充填量に比して増大されたものであってもよい。択一的または追加的には、その空気充填量は、吸入行程で停止する予定のシリンダの各吸入行程の直前の吸入行程の空気充填量と実質的に同等か、それ以上であってもよい。
【0028】
シリンダへの空気充填量は、各シリンダのポペットバルブの上昇量ならびに/もしくは期間、および/または開口時間ならびに/もしくは閉口時間を調整することにより制御されるものであってもよい。
【0029】
シリンダへの充填量は、エンジン吸気口のスロットルを調整することにより制御されてもよい。
【0030】
シリンダへの充填量は、各吸気ポペットバルブの上昇量ならびに/もしくは開口期間、および/または開口時間ならびに/もしくは閉口時間を調整することにより制御されるものであってもよい。
【0031】
吸気ポペットバルブは、能動的タペットを用いて制御してもよい。
【0032】
本発明の1つの態様において、マルチシリンダエンジンの個々のシリンダへの空気充填量を、たとえばそれぞれの能動的タペットを用いて変化させ、シリンダへの空気充填量をアンバランス(不均衡)なものとなるように制御される。これにより、比較的に迅速で円滑に回転を停止させることができる。
【0033】
各シリンダへの充填量を個別に制御することにより、クランクシャフトの振動を実質的に解消して、逆回転または「ロッキング(後方揺動)」に付随する振動を取り除くことができる。
【0034】
たとえば再現可能なクランクシャフト角度における回転の予定可能な停止により、ピニオンの破損のリスクを負うことなく、スタータモータを再起動させることができる。したがって、再加速要求(気変わり加速要求)に対して比較的に迅速に応答することができる。特に、上死点(TDC)を超える慣性を有さない圧縮行程を取り除くために、クランクシャフトの回転の最終部分を無くすることができる。これにより、エンジンの回転を停止させるための時間を短縮することができる。
【0035】
個々のシリンダを制御することにより、回転が停止する時に、吸入行程または圧縮行程にあるシリンダに比較的に十分な空気充填量を供給することができ、すなわち吸気マニホールド内のスロットルを閉じることにより、空気が十分に充填されないシリンダに比較して、良好な再始動性能を実現することができる。
【0036】
シリンダへの空気充填量が不均衡となるように制御することにより、回転が停止する時のクランクシャフトを所定位置に配置し、漏れが少なく、シリンダ内の空気充填量を十分に維持するように最適な充填を実現することができる。したがって、良好な再始動性能を維持しつつ、エンジンが停止している期間をより長くすることができる。
【0037】
再始動要求があったときに点火すべき第1のシリンダを適当に充填し、燃料を供給したときに実質的に完全に燃焼させるように配置することにより、排気ガス特性もより良好に制御することができる。
【0038】
本発明に係る態様によれば、4ストローク内燃エンジンの回転を停止させる方法が提供され、この方法は、
燃料供給を中断するステップと、
膨張行程で停止する予定のない第2のシリンダの各吸入行程における空気充填量に比して、膨張行程で停止する予定のシリンダが各吸入行程で低減された空気充填量を有するように、エンジン吸気口からシリンダへの充填量を制御するステップとを有する。
【0039】
1つの実施形態では、第2のシリンダは、圧縮行程で停止する予定のシリンダであってもよい。したがって、膨張行程で停止する予定のシリンダは、低減された空気充填量を有し、膨張行程で停止する予定のシリンダは、比較的に十分な空気充填量を有してもよい。
【0040】
本発明の態様によれば、内燃エンジンを動作させる方法が提供され、
内燃エンジンは、可変スロットルを含む吸気マニホールドと、少なくとも2つの燃焼チャンバと、各燃焼チャンバに付随する1つまたはそれ以上のバルブとを有し、1つまたはそれ以上のバルブは、その上昇特性を調整または制御する能動的タペットを有し、
この方法は、
a)燃焼チャンバへの燃料供給を実質的に中断するステップと、
b)各燃焼チャンバへの空気充填量を調整してエンジンの回転動作を迅速に減速させるように、能動的タペットおよび付随するバルブを制御するステップとを有する。
【0041】
本発明の態様によれば、内燃エンジンを動作させる方法が提供され、
内燃エンジンは、可変スロットルを含む吸気マニホールドと、2つまたはそれ以上の燃焼チャンバと、各燃焼チャンバに付随する1つまたはそれ以上のバルブとを有し、1つまたはそれ以上のバルブは、その上昇特性を調整または制御する能動的タペットを有し、
この方法は、
a)燃焼チャンバへの燃料供給を実質的に中断するステップと、
b)各燃焼チャンバへの空気充填量を調整してエンジンが減速または停止するときの不規則な回転動作を低減または最小限に抑えるように、能動的タペットおよび付随するバルブを制御するステップとを有する。
【0042】
エンジンが回転停止に近づくにつれて、この方法は、たとえばマニホールド内の空気圧力が大気圧未満になった場合、およびシリンダ内の空気充填量が低減した場合、スロットルの開口を増大させるステップを有してもよい。反対に、いくつかの状況では、スロットルを閉じる方向に動作させて、ディーゼルエンジンのシリンダの圧縮時圧力を低減して、再始動を支援するために十分な空気充填量をシリンダ内に維持しつつ、円滑にエンジンを停止させることは有利である。
【0043】
本発明の態様によれば、内燃エンジンを動作させる方法が提供され、
内燃エンジンは、可変スロットルを含む吸気マニホールドと、2つまたはそれ以上の燃焼チャンバと、各燃焼チャンバに付随する1つまたはそれ以上のバルブとを有し、1つまたはそれ以上のバルブは、その上昇特性を調整または制御する能動的タペットを有し、
この方法は、
a)燃焼チャンバへの燃料供給を実質的に中断するステップと、
b)エンジンの動作が停止するときに燃焼チャンバが十分な空気充填量を有することによりエンジンの再始動を支援するように、能動的タペットおよび付随するバルブを制御するステップとを有する。
【0044】
本明細書において、「空気充填量」とは、充填される空気の所望量を意味し、本発明のこの態様は、たとえばシリンダ内に取り込まれる空気の増加量(最大実現可能な最大利用可能な空気充填量まで)であって、吸入行程または圧縮行程にある動作を停止させるものである。したがって、シリンダ内に取り込まれる空気の量がバルブリフト特性により調整されることなくエンジンがシャットダウンされるときにシリンダに取り込まれる空気の量と実質的に同等か、またはそれ以上である場合、空気充填量は「十分なもの(フルである)」と考えてもよい。
【0045】
エンジンが回転停止に近づくにつれて、この方法は、たとえばマニホールド内の空気圧力が大気圧未満になった場合、およびシリンダ内の空気充填量が低減した場合、スロットルの開口を増大させるステップを有してもよい。反対に、いくつかの状況では、スロットルを閉じる方向に動作させて、ディーゼルエンジンのシリンダの圧縮時圧力を低減して、再始動を支援するために十分な空気充填量をシリンダ内に維持しつつ、円滑にエンジンを停止させることは有利である。
【0046】
1つの実施形態では、この方法は、膨張行程(パワー行程)で停止するシリンダの吸気バルブを閉口するステップと、圧縮行程で停止するシリンダの吸気バルブを開口するステップとを有する。この方法は、吸入行程で停止する各シリンダの吸気バルブを開口するステップを有してもよい。停止とは、シリンダ内のピストンが止まり、クランクシャフトが回転しなくなることを意味する。
【0047】
本発明に係る態様によれば、内燃エンジンを動作させる方法が提供され、
内燃エンジンは、可変スロットルを含む吸気マニホールドと、2つまたはそれ以上の燃焼チャンバと、各燃焼チャンバに付随する1つまたはそれ以上のバルブとを有し、1つまたはそれ以上のバルブは、その上昇特性を調整または制御する能動的タペットを有し、
この方法は、
a)燃焼チャンバへの燃料供給を実質的に中断するステップと、
b)シャットダウンの前半段階で空気充填量を調整してエンジン減速度を最大化するように、能動的タペットおよび付随するバルブを制御するステップと、
c)シャットダウンの後半段階で空気充填量を調整してエンジンの振動を最小化するように、能動的タペットを制御するステップとを有する。
【0048】
エンジンが回転停止に近づくにつれて、この方法は、たとえばマニホールド内の空気圧力が大気圧未満になった場合、およびシリンダ内の空気充填量が低減した場合、スロットルの開口を増大させるステップを有してもよい。反対に、いくつかの状況では、スロットルを閉じる方向に動作させて、ディーゼルエンジンのシリンダの圧縮時圧力を低減して、再始動を支援するために十分な空気充填量をシリンダ内に維持しつつ、円滑にエンジンを停止させることは有利である。
【0049】
本発明の態様によれば、内燃エンジンのシャットダウン中に内燃エンジンを動作させる方法が提供され、
内燃エンジンは、可変スロットルを含む吸気マニホールドと、2つまたはそれ以上の燃焼チャンバと、各燃焼チャンバに付随する1つまたはそれ以上のバルブとを有し、1つまたはそれ以上のバルブは、その上昇特性を調整または制御する能動的タペットを有し、
この方法は、
a)燃焼チャンバへの燃料供給を実質的に中断するステップと、
b)再始動要求を受けて、吸気マニホールドから十分な空気充填量が各燃焼チャンバ内に供給されるように、能動的タペットおよび付随するバルブを制御するステップとを有する。
【0050】
エンジンが回転停止に近づくにつれて、この方法は、たとえばマニホールド内の空気圧力が大気圧未満になった場合、およびシリンダ内の空気充填量が低減した場合、スロットルの開口を増大させるステップを有してもよい。反対に、いくつかの状況では、スロットルを閉じる方向に動作させて、ディーゼルエンジンのシリンダの圧縮時圧力を低減して、再始動を支援するために十分な空気充填量をシリンダ内に維持しつつ、円滑にエンジンを停止させることは有利である。
【0051】
本発明の上記実施形態において、各バルブはポペットバルブまたはこれに類似のものを有してもよい。
【0052】
本発明の態様によれば、4ストローク内燃エンジンの回転を停止させる方法が提供され、この方法は、燃料供給を中断するステップと、膨張行程で停止する予定のシリンダが先の吸入行程で低減された充填量を有し、圧縮行程で停止する予定のシリンダが先の吸入行程で比較的に十分な充填量を有するように、エンジン吸気口からのシリンダ充填量を制御するステップとを有する。
【0053】
シリンダ充填量は、圧縮行程で停止しつつあるシリンダに比較的に十分な充填量を供給するように制御されてもよい。
【0054】
シリンダ充填量は、各シリンダの吸気ポペットバルブの上昇量ならびに/もしくは期間、および/または開口時間ならびに/もしくは閉口時間を調整することにより制御してもよい。
【0055】
シリンダ充填量は、エンジン吸気口のスロットルを調整することにより制御してもよい。
【0056】
本発明に係る実施形態によれば、エンジンがシャットダウンしているときに、燃焼サイクルまたは行程サイクルのさまざまな時点で1つまたはそれ以上の燃焼チャンバ内の充填(量)を制御する機能を提供するものである。たとえば一連のシリンダの吸気バルブのそれぞれを、所望のシャットダウン特性が得られるように個別に制御してもよい。こうして、シャットダウンの迅速性、NVH、再始動の容易可能状態等のシャットダウン特性が得られる。
【0057】
1つの実施形態において、エンジンは、シリンダ/内燃チャンバ内のピストンの少なくとも吸入行程および圧縮行程を含む行程サイクルを有し、付随する能動的タペットおよびポペットバルブを備える。制御されるポペットバルブが吸気バルブである場合、たとえば燃焼チャンバの第1の吸入行程等の吸入行程において、エンジンのシャットダウンが開始された後(燃料供給は中断されるが、吸気マニホールド内の吸気スロットルは開いており)、ポペットバルブの上昇量および/または開口時間が増大され、より大容量の充填空気量がシリンダ内に取り込まれる。この充填空気量は、エンジンが回転しているときに燃焼チャンバ内に通常取り込まれる充填空気量より大容量であってもよい。したがって圧縮行程において、シリンダ(内燃チャンバ)内のピストンは、上死点(TDC)に向かって移動するとき、より大きな抵抗力を受ける。こうして、エンジンの回転に大きな抵抗が負荷され、そのシリンダの上死点(TDC)に達する前にエンジンの回転を止めることができる。したがって、対応する能動的タペットを用いて、ポペットバルブ(この場合、吸気バルブ)を制御することにより、上述のように、より迅速なエンジンシャットダウンに寄与し、再始動要求(COM)に対してより迅速に応答することができる。
【0058】
エンジン速度が依然として比較的に大きく、車両乗客がNVHの影響をわずかでも感知しがちである場合に、この技術をシャットダウンの前半段階で応用してもよい。
【0059】
1つの実施形態において、制御されるポペットバルブは、4ストロークエンジンシリンダの排気バルブであってもよい。エンジンシャットダウンを開始し、シリンダへの燃料供給を中断する。すなわちピストンの排気行程は、シリンダから排気ガスを排気する必要がない。この状況において、排気行程が実際にはシリンダの追加的な圧縮行程となるように、排気ポペットバルブの上昇量および/または上昇開口時間を低減または省略してもよい。こうして、エンジンの回転に対する追加的な抵抗力を与え、エンジンの回転をより迅速に減速させることができる。このように、能動的タペットを用いた排気ポペットバルブの制御は、より迅速なエンジンシャットダウンに寄与することができる。
【0060】
エンジン速度が依然として比較的に大きく、車両乗客がNVHの影響をわずかでも感知しがちである場合に、この技術をシャットダウンの前半段階で応用してもよい。
【0061】
1つの実施形態では、制御されるポペットバルブは排気バルブであり、エンジンはマルチシリンダエンジンであってもよい。エンジンシャットダウンが開始されると、燃料供給は中断され、吸気マニホールド内の吸気スロットルは開いたままの状態にある。
第1のシリンダ内の第1のピストンがちょうど上死点(TDC)を通過し、圧縮された十分な充填空気量を有するといった状況にあるとき、エンジンのクランクシャフトの回転を継続させるように作用するが、他方、第2のシリンダの第2のピストンは、下死点(BDC)を通過し、圧縮された十分な充填空気量を有し、継続する回転は充填空気を圧縮するように作用する。本願の明細書で示唆されているように、この時点で2つのピストンは、クランクシャフトを介して互いに対抗するように作用し、先行技術では、これは「ロッキング(後方揺動)」動作をもたらし、2つの空気充填シリンダが均衡するまで、クランクシャフトは、前後方向の「飛び跳ね」を起こす。
【0062】
択一的には、第2のシリンダが上死点(TDC)に近づくにつれて、エンジンの回転を低減させて、第2のシリンダが上死点を通過した後、エンジンの回転を増大させ、新たに取り込まれた充填空気がクランクシャフトを回転させるように機能してもよく、このとき回転の特定の範囲でクランクシャフトの不規則または「波打った」回転が生じる。しかしながら、本発明に係る態様によれば、第2のシリンダの排気ポペットバルブは、下死点(BDC)を通過したところで、上昇して、シリンダ内のいくらかの充填空気が排気されるように制御することができる。こうして、回転の減速またはクランクシャフトの「弾む」動きを防止もしくは緩和することができる。
【0063】
1つの実施形態において、下死点を通過した第2のシリンダからの充填空気の流出を制御し、付随する不規則な回転動作を低減して、クランクシャフトの回転動作を「減衰」させるように、排気ポペットバルブの上昇量を精緻に制御することができる。1つの実施形態において、こうした排気バルブを精緻に制御することにより、クランクシャフトを「減衰」させるように、迅速に減速させ、弾み特性を排除するように停止させることができる。実際、いくつかのまたはすべての圧縮エネルギは、排気管に解放される。
【0064】
エンジン速度が比較的に小さいか、もしくはエンジン停止が切迫している場合、または先行技術におけるNVHの影響が最大となり得る場合、この技術をエンジンシャットダウンの後半段階で適用することができる。
【0065】
1つの実施形態では、エンジンクランクシャフトの回転が停止しつつあり、第1および第2のシリンダ内の加圧充填空気が互いに対抗することにより、「飛び跳ね」が起こりそうな状況において、関連する能動的タペットを用いて、第1のシリンダの吸気バルブまたは排気バルブを制御しながら上昇させて、第1のシリンダ内の圧力を低減させ、エンジンの動作を「減衰」させることができる。
【0066】
理解されるように、第1のピストンおよび第2のピストンは例示的なものであり、複数のピストンを同様に制御してもよく、あるいは上記説明した手法と類似の手法を用いて、エンジンの複数のピストンの動作を制御してもよい。
【0067】
1つの実施形態において、ポペットバルブは、吸気バルブであってもよい。エンジンシャットダウンが開始されると、燃料供給が中断され、吸気マニホールド内の吸気スロットルが開いたままの状態となる。先行技術に係る実施形態によれば、エンジンが回転し続けているとき、吸気マニホールド内の圧力は維持され、十分な圧力の充填空気がシリンダ内に取り込まれる。しかしながら、これは、特に回転速度が最も小さく、および/またはエンジン停止が差し迫ったシャットダウンの後半段階において、上述のように「波打った」シャットダウン特性をもたらし得る。1つの実施形態において、吸気バルブは、吸入行程において、より少量の充填空気をシリンダ内に取り込むように、吸気バルブの上昇量または上昇時間を短縮することにより吸気サイクルを変更することができる。このように、シリンダ内に取り込むことができる充填空気を低減または排除することができる。これは、個々のシリンダに対する効果が、「閉口スロットル」シャットダウンと同一のもの、またはより類似するものであり、より少量の充填空気がシリンダ内に取り込まれることを意味する。実際のところ、能動的にバルブを制御することにより、この効果を強調することができる。しかしながら、シャットダウン中の吸気マニホールド内の圧力は維持されるため、再始動時、良好な再始動特性が可能である。このように、能動的タペットを用いることにより、先行技術に係る「閉口スロットル」シャットダウンのような良好なNVH特性が得られ、十分な圧力が吸気マニホールド内で維持されるので、先行技術に係る「開口スロットル」シャットダウンのような良好な再始動特性を実現することができる。
【0068】
これは、エンジンシャットダウン中に、エンジンの再始動がドライバまたは車両内のいくつかの自動システムにより所望もしくは要求される「再加速要求(気変わり、COM)」始動時にも有用である。これは、たとえば「スタートストップ」システムがサイクルを開始していて、車両が停止しつつあるときに起こり得る。たとえば交差点で車両を止めて停車させたとき、「スタートストップ」システムは、車両の停止状態を判断し、エンジンを停止させる機会を得る。しかしながら、エンジンがシャットダウンするとき、ドライバが前方車両との間に間隔が空いているのに気付き、エンジンに対するトルク要求を開始する。エンジンは、シャットダウンしているタイミングで再始動するように要求される。先行技術に係る状況によれば、特に、マニホールド内のスロットルが閉じており、エンジン内に充填空気を供給するのに利用可能なマニホールド内の圧力が低い場合、再始動は最適なものではない。ただし、スロットルが閉じていると、良好なNVH特性をもってシャットダウンすることができる。圧力を再び増大させる必要がある。本発明において、マニホールド内のスロットルがシャットダウンに際して開いているとき、マニホールド内の圧力は維持され、燃焼事象ごとに、シリンダごとに能動的タペットシステムを用いて、バルブを個別に制御して、シャットダウン中にエンジンに取り込まれる充填空気を最小化することができる。したがって、再加速要求(COM)があった場合、マニホールド内の圧力の増大を待つタイムラグがなく、適当な吸気バルブの上昇量および/または開口時間により、大容量の充填空気をその次のシリンダ吸入行程で取り込むことができるため、再始動特性を実質的に改善し、より迅速に正味のトルクを生成することができるとともに、上記概説したように交差点から離れるためにドライバがトルクを要求した場合、交差点からより迅速に「疾走」することができる。理解されるように、空調ユニットまたは車両内の他のシステム等、トルクまたはパワーを要求する車両内の他のシステムからのトルク要求に基づいて、再加速要求(COM)が行われる場合もある。
【0069】
1つの実施形態において、本発明に係る態様を組み合わせてもよい。1つの態様または実施形態で説明した技術は、吸気バルブの上昇量および/またはタイミングを増大させて、大容量の充填空気を少なくとも1つのシリンダ内に取り込み、すなわちエンジンシャットダウンの前半段階において、所定のエンジン回転速度に達するまで、エンジンに負荷されるトルク抵抗力を増大させてもよい。この点において、別の態様または実施形態で上記説明した択一的な技術を用いて、たとえば吸気バルブの上昇量および/または開口時間を低減して、より少量の充填空気をシリンダ内に取り込んでもよい。理解されるように、これらの技術を組み合わせると、シャットダウン前半段階において、先行技術に係る「開口スロットル」シャットダウンのプラスの効果(より迅速な回転低減)が得られ、むしろ先行技術よりシャットダウンをさらに迅速なものとするように改善される一方、シャットダウン後半段階において、先行技術に係る「閉口スロットル」シャットダウンのプラスの効果(たとえば良好なNVH特性)が得られ、さらに良好な再始動に有利な十分なマニホールド圧力を維持することができる。
【0070】
本発明に係る態様および/または実施形態は、マルチシリンダエンジンに適用することができ、2ストロークまたは4ストローク燃焼サイクルの連続する段階または行程のそれぞれにおいて、各燃焼チャンバの2つまたはそれ以上のバルブのうちの少なくとも1つが独立して制御される。こうしたバルブは、吸気バルブまたは排気バルブであってもよい。これらの実施形態において、エンジンの任意のまたはすべてのシリンダの任意のまたはすべての能動的タペット(およびバルブ)を制御することかできるエンジンの電子制御ユニット(ECU)等のコントローラを設けてもよい。これは、本発明に係る任意の方法を実行することできる。任意の時点でエンジンのシリンダ内の正確な圧力を判断するためのセンサを設けてもよい。圧力センサは、各シリンダ内に設けてもよい。択一的には、エンジン内の他のポイントで収集された測定値またはエンジンの他の特性値(たとえば吸気マニホールド内の圧力、エンジン温度、エンジン速度、参照テーブル、またはコントローラが参照できる同様の記録されたエンジン特性)から数学的モデルを用いて圧力を推定してもよい。こうしたコントローラは、特定のシリンダに対して、シャットダウンサイクルの任意の時点において、本発明に係る任意の方法、態様、または実施形態を適用して、シャットダウン速度、NVH最小化、迅速な再始動の容易性、またはこれらの組み合わせ等のエンジンのシャットダウン特性を最適化するものであってもよい。コントローラが参照または作用することができる任意のまたはすべてのシリンダ内の既知の圧力または計算された圧力に応答して、任意の特定のバルブ制御方法を特定のタイミングにおいて適用することができる。本発明に係る態様による方法に基づいて、スタートストップサイクルのために最適化されたエンジンシャットダウンを実行するために、任意のバルブ上昇変化量の正確な頻度とタイミングを決定する上で、コントローラは、周囲圧力ならびに周囲温度、またはエンジンに加わる任意の負荷等の別の要因を参照するように構成してもよい。
【0071】
コントローラは、車両内に搭載されるものであってもよい。コントローラは、特定のモジュール、システム、または制御プログラムを実行するコンピュータであってもよいし、もしくは車両の構成装置のより大きなモジュール、システム、またはプログラムを実行するコンピュータの一部であってもよい。
【0072】
理解されるように、特定のエンジンの個々の特性は、エンジンの種類および所望の結果に応じて本発明の適用に影響を与える。すなわち、たとえば吸気マニホールド内の可変スロットルの使用タイミングは、エンジンがガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンであるか、エンジンが従来式のオットーサイクルまたはディーゼルサイクルで動作するか、アトキンソンサイクルのような変形サイクルで動作するか、エンジンのシリンダの数、エンジンの固有の停止特性、およびエンジンの固有の始動特性に依存し得る。
【0073】
本発明に係る停止要求は、迅速かつ円滑な手法で回転を停止させ、1つまたはそれ以上のシリンダが十分な充填空気を有して、迅速な回転再始動を実現しようとすることを意図したものであってもよい。円滑なシャットダウンおよび適時の再始動のために最適な特性を選択するためには、特定のエンジンまたは車両のために必要とされる改良レベルに基づいて、スロットルを開閉する必要がある。
【0074】
本発明に係る態様によれば、振動または揺動することなく、最小の実行時間で、予測可能なエンジンシャットダウンを提供することができ、後方揺動または逆回転を実質的に解消することができる。
【0075】
再加速要求(COM)があった場合、ピニオン破損のリスクを回避して、スタータモータを起動させてもよい。
【0076】
本発明に係る態様によれば、吸入行程または圧縮行程で回転停止するシリンダが大容量の充填空気を有し、マルチシリンダエンジンの停止位置を最適に再始動させるように選択することができる。本発明に係る態様によれば、(回転が停止する前に)再加速要求(COM)があった場合、迅速で着実な応答を提供することができる。能動的吸気バルブを制御することにより、大容量の充填空気を実質的な期間維持することができる。スタータモータの介入なしに、大容量の充填空気を用いて、燃料を噴射し点火することにより、エンジンを再始動してもよい。
【0077】
エンジンの停止しつつある回転をよりうまく制御することにより、再始動のための燃料噴射を最適化し、排気ガスとりわけ未燃焼燃料の排気ガスを低減することができる。
【0078】
保護を求める本発明に係る別の態様によれば、内燃エンジンのシャットダウンを調整する方法が提供され、内燃エンジンは、スロットルを含む吸気マニホールドと、少なくとも2つの燃焼チャンバと、各燃焼チャンバに付随する少なくとも1つのポペットバルブとを有し、少なくとも1つのポペットバルブは、その上昇特性を調整または制御する能動的タペットを有し、
この方法は、
a)チャンバへの燃料供給を中断するステップと、
b)吸気マニホールド内のスロットルを実質的に開くステップと、
c)少なくとも1つの燃焼チャンバ内の充填空気量を調整してエンジンの回転動作を迅速に減速させるように、能動的タペットおよび少なくとも1つのポペットバルブを制御するステップとを有する。
【0079】
1つの実施形態において、充填空気量の調整は、チャンバ内に取り込まれる充填空気量の最大化を含んでもよい。任意的には、充填空気量の調整は、吸気バルブの開口時間を増大させることによりチャンバ内に取り込まれる充填空気量の最大化を含んでもよい。さらに任意的には、吸気バルブの上昇量を増大させることによりチャンバ内に取り込まれる充填空気量の最大化を含んでもよい。
【0080】
1つの実施形態において、充填空気量の調整は、燃焼チャンバから排気される空気充填量の制限を含んでもよい。任意的には、空気充填量の調整は、排気バルブの開口時間を低減させることにより、燃焼チャンバから排気される空気充填量の制限を含んでもよい。さらに任意的には、排気バルブの上昇量を低減させることにより、燃焼チャンバから排気される空気充填量の制限を含んでもよい。
【0081】
保護を求める本発明に係る別の態様によれば、内燃エンジンのシャットダウンを調整する方法が提供され、内燃エンジンは、スロットルを含む吸気マニホールドと、少なくとも2つの燃焼チャンバと、各燃焼チャンバに付随する少なくとも1つのポペットバルブとを有し、少なくとも1つのポペットバルブは、その上昇特性を調整または制御する能動的タペットを有し、
この方法は、
a)チャンバへの燃料供給を中断するステップと、
b)吸気マニホールド内のスロットルを実質的に開くステップと、
c)少なくとも1つの燃焼チャンバ内の充填空気量を調整してエンジンが減速または停止するときの不規則な回転動作を最小限に抑えるように、能動的タペットおよび少なくとも1つのポペットバルブを制御するステップとを有する。
【0082】
1つの実施形態において、充填空気量の調整は、燃焼チャンバ内に取り込まれる空気充填量の制限を含んでもよい。任意的には、空気充填量の調整は、排気バルブの開口時間を低減させることにより、燃焼チャンバ内に取り込まれる空気充填量の制限を含んでもよい。さらに任意的には、空気充填量の調整は、排気バルブの上昇量を低減させることにより、燃焼チャンバ内に取り込まれる空気充填量の制限を含んでもよい。
【0083】
1つの実施形態において、充填空気量の調整は、燃焼チャンバから排気される空気充填量の最大化を含んでもよい。任意的には、空気充填量の調整は、排気バルブの開口時間を増大させることにより、燃焼チャンバから排気される空気充填量の最大化を含んでもよい。さらに任意的には、排気バルブの上昇量を増大させることにより、燃焼チャンバから排気される空気充填量の最大化を含んでもよい。
【0084】
保護を求める本発明に係る別の態様によれば、内燃エンジンのシャットダウンを調整する方法が提供され、内燃エンジンは、スロットルを含む吸気マニホールドと、少なくとも2つの燃焼チャンバと、各燃焼チャンバに付随する少なくとも1つのポペットバルブとを有し、少なくとも1つのポペットバルブは、その上昇特性を調整または制御する能動的タペットを有し、
この方法は、
a)チャンバへの燃料供給を中断するステップと、
b)吸気マニホールド内のスロットルを実質的に開くステップと、
c)エンジンの動作が停止する時に最大可能な充填空気量が少なくとも1つの燃焼チャンバ内に供給されるように、能動的タペットおよび少なくとも1つのポペットバルブを制御するステップとを有する。
【0085】
1つの実施形態において、この方法は、少なくとも1つの燃焼チャンバの最後の吸入行程において吸気バルブの開口時間を増大させるステップを有してもよい。
【0086】
別の実施形態において、この方法は、少なくとも1つの燃焼チャンバの最後の吸入行程において吸気バルブの上昇量を増大させるステップを有してもよい。
【0087】
さらに別の実施形態において、この方法は、燃焼チャンバに付随するピストンの最後の上方への動作を低減するか、ゼロにするステップを有してもよい。
【0088】
保護を求める本発明に係る1つの態様によれば、内燃エンジンのシャットダウンを調整する方法が提供され、内燃エンジンは、スロットルを含む吸気マニホールドと、少なくとも2つの燃焼チャンバと、各燃焼チャンバに付随する少なくとも1つのポペットバルブとを有し、少なくとも1つのポペットバルブは、その上昇特性を調整または制御する能動的タペットを有し、
この方法は、
a)チャンバへの燃料供給を中断するステップと、
b)吸気マニホールド内のスロットルを実質的に開くステップと、
c)上記説明した内燃エンジンのシャットダウンを調整する方法に基づくシャットダウンの前半段階で空気充填量を調整してエンジン減速度を最大化するように能動的タペットおよび少なくとも1つのポペットバルブを制御するステップと、
d)上記説明した内燃エンジンのシャットダウンを調整する方法に基づくシャットダウンの後半段階で空気充填量を調整してエンジンの振動を最小化するように、能動的タペットおよび少なくとも1つのポペットバルブを制御するステップとを有する。
【0090】
保護を求める本発明に係る1つの態様によれば、内燃エンジンのシャットダウン中に内燃エンジンを再始動させる方法が提供され、
内燃エンジンは、スロットルを含む吸気マニホールドと、少なくとも2つの燃焼チャンバと、各燃焼チャンバに付随する少なくとも1つのポペットバルブとを有し、
少なくとも1つのポペットバルブは、その上昇特性を調整または制御する能動的タペットを有し、
この方法は、
a)シャットダウン開始時、燃焼チャンバへの燃料供給を中断するステップと、
b)シャットダウン中に吸気マニホールド内のスロットルを実質的に開くステップと、
c)再始動要求を受けたとき、吸気マニホールドからの大容量の空気充填量を少なくとも1つの燃焼チャンバに供給するように、能動的タペットおよび少なくとも1つのポペットバルブを制御するステップとを有する。
【0091】
保護を求める本発明に係る1つの態様によれば、上記説明した任意の方法を実行するように構成された、内燃エンジンのための制御ユニット、システム、またはプログラムが提供される。
【0092】
保護を求める本発明に係る1つの態様によれば、上記説明した制御ユニット、システム、またはプログラムを備えたエンジンが提供される。
【0093】
保護を求める本発明に係る1つの態様によれば、上記説明した制御ユニット、システム、プログラム、またはエンジンを備えた車両が提供される。
【0094】
本願の範疇において、上記段落、クレーム、および/または以下の明細書および図面に記載された、さまざまな態様、実施形態、実施例、および択一例、特に個々の特徴物は、独立してまたは組み合わせて採用することができる。たとえば1つの実施形態に関連して説明された特徴物は、その特徴物が矛盾するものでなければ、すべての実施形態に適用することができる。出願人は、当初に提出されたクレームまたはファイルを新たなクレームに変更する権利、すなわち当初に提出されたクレームに、当初には特許請求の範囲としなかった他の任意のクレームの特徴物を引用および/または追加する権利を留保する。
【図面の簡単な説明】
【0095】
添付図面を参照しながら、単なる具体例として、本発明に係る1つまたはそれ以上の実施形態について以下説明する。
図1】吸気ポペットバルブならびに排気ポペットバルブ、吸気ポペットバルブを開口するためのカム、および吸気ポペットバルブの動作を調整するためのソレノイド駆動式ブリードバルブを含む油圧タペットを備えた内燃エンジンのレシプロピストンの概略図である。
図2】先行技術に係るエンジンのシャットダウン特性(停止特性)を示すグラフであって、エンジンがシャットダウンした際、マニホールドスロットルは閉じている(ケースA)。
図3】先行技術に係るエンジンのシャットダウン特性(停止特性)を示すグラフであって、エンジンがシャットダウンした際、マニホールドスロットルは開口している(ケースB)。
図4】本発明に係る実施形態によるエンジンのシャットダウン特性(停止特性)を示すグラフであって、エンジンがシャットダウンした際、マニホールドスロットルは開口したままであり、シャットダウンの前半期間では連続的に可変可能なバルブリフト(CVVL)が作動して空気充填量が増大し、シャットダウンの後半期間ではCVVLが作動して空気充填量が低減し、エンジンが停止する時の最後の空気充填量がCVVLを用いることにより最大化される(ケースC)。
図5図2図4のそれぞれの条件に基づくエンジンのシャットダウン特性(停止特性)を示すグラフであって、比較するために、同一スケールで表されたものである。
図6】従来式のシリンダ充填空気を用いて転を停止させるためのクランクシャフトの回転を示す比較図である。
図7】本発明の態様に係るシリンダ充填空気を用いて転を停止させるためのクランクシャフトの回転を示す比較図である。
図8】異なるスタートストップ条件に対する、本発明の態様に係るエンジンの停止および再始動の比較例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0096】
添付図面を参照しながら、本発明に係る実施形態による方法について以下説明する。
【0097】
図1を参照すると、内燃エンジンの構成部品が概略的に示されている。シリンダ(1)は、その内部を往復移動するピストン(2)を備え、ピストンの上方にある空間には、吸気バルブ(5)および排気バルブ(11)が設けられた内燃チャンバが画定されている。空気は、バタフライバルブの形態を有するスロットル(4)が配設された吸気マニホールド(3)から、吸気ポート(13)を介してチャンバ内に取り込まれる。ガスは、排気ポート(14)を介して排気マニホールド(12)へ排気される。吸気ポート(13)内のポペットバルブ(5)は、主として、カムシャフト(図示せず)上を回転するカム(7)により駆動され、ばね(図示せず)により閉じられる。ポペットバルブ(5)の動作は、カムとバルブの間にある能動的タペット(6)により調整される。タペット(6)は、加圧された一定量のオイルを受容する油圧チャンバ(15)を有し、油圧チャンバの容量は、矢印(9)で示すように流体を流出させることが可能なブリードバルブ(8)の制御により決定される。ブリードバルブの開口度を変更することにより、オイルの量を瞬間的に変更して、バルブ上昇量、吸気バルブの動作期間および動作タイミングを調整する。理解されるように、能動的タペットは、カムによる駆動に応じて吸気バルブの動作を増進し、制限し、または相殺してもよい。本発明に関連して用いられる能動的タペットの種類は重要ではなく、単なる具体例として以下説明する。(どのようなタイプであれ)用いられるタペットは、燃焼事象ごとにバルブリフトを迅速に変更することができる点が重要であり、理解されるように、もし必要ならばマルチシリンダエンジンの各シリンダに対して、バルブが連続して開口するごとにバルブ上昇量を変更してもよい。この実施例では、電子制御ユニット(ECU)(10)が、能動的タペットに指令を出力する。
【0098】
図1には付属カムおよびタペットが図示されていないが、この実施例では、排気バルブ(11)も同様の構成により制御される。
【0099】
理解されるように、いくつかの種類の能動的タペットは、カムローブを介してポペットバルブが能動的に上昇している間のみ動作するので、バルブ開口上昇量およびバルブ開口期間のばらつきは抑制される。
【0100】
使用時、エンジン内の空気の取り込みは、通常、スロットルバルブ(4)を用いて制御され、スロットルバルブはアクセルペダル位置、標高、および空気温度等の従来式の制御パラメータに従ってECU(10)により指令される。理解されるように、スロットルバルブ(4)の位置を変えると、空気流入速度が変わるが、吸気マニホールド(3)および吸気ポート(13)に含まれる空気の容量に起因して、燃焼チャンバ内に取り込まれる空気量が直ちに影響を受けない。
【0101】
図2は、先行技術に係るエンジンのシャットダウン特性(停止特性)を示し、時刻Tでエンジンシャットダウン(エンジン停止)が始まった直後の時刻TMTCLOSEで完全に閉じる。時間(t)とともに変化する空気充填量(Q)およびエンジン速度(N)が図示されている。図2から明らかなように、シリンダ燃焼チャンバ内に取り込まれる空気充填量が低減する事に伴い、マニホールド内の空気の圧力は、時間とともに低減し、時刻TPMINで最小となる。その結果、この具体例では、エンジンシャットダウン(エンジン停止)は、時刻TSTOPA(比較のため図3参照)までの比較的に長い時間をかけるが、比較的に円滑に行われ、すなわち全体的なエンジン速度が時刻TSTPOAでゼロとなるように減速しているときの瞬間的なエンジン速度に比較的に小さい揺動Pが生じる。同様に理解されるように、エンジンシャットダウン中の大部分およびエンジンシャットダウン後においてマニホールド内の空気の圧力がより小さくなるため、エンジンを再始動するためにはより長い時間を必要とする。「スタートストップ」ルーチンに従って、エンジンが停止しかけているときに、ドライバまたは車両システムがトルクを増大するように指令した場合が「再加速要求(気変わり、change of mind)」始動として知られているが、マニホールド内の空気圧力および潜在的な空気充填の圧力ならびに量がもとに戻るまでに、時刻TSTPOAでエンジンが停止した後の時刻TR1から時刻TR2までの期間として図2に示す有限の期間が存在するため、このタイプのシャットダウンでは、再加速要求始動は、一般に困難であるか、または不可能である
【0102】
図2は、エンジンの減速は長い時間を要するが、比較的に円滑に推移する特性を示している。停止時のエンジンの振動は比較的に小さいが、再始動特性は、時刻TR1における空気充填量が小さいため、最適なものではない。
【0103】
図3は、エンジンシャットダウン中、マニホールド圧力が時刻TPMAXで最大となり、より大きい圧力および/または空気充填量のためにより大きな空気圧力が利用できるように、時刻TMTOPENにおいて、スロットルバルブ(4)が開いたまま、可能性としては部分的に開いた状態から完全に開いた状態にした先行技術に係るエンジンのエンジンシャットダウン(エンジン停止)特性を示す。いくつかの場合では、十分にシリンダ充填するために、開口を少しだけ増大させる必要がある。シリンダ燃焼チャンバ内の充填空気を圧縮するために必要な仕事量と、より大容量の空気を送出する際にエンジンに掛かる他の損失に起因して、図3から明らかなように、時刻TSTPOBまでのシャットダウンは、比較的により迅速である。ただし、圧縮時のシリンダ内の充填空気の抵抗に起因して、明らかに、エンジン速度における瞬間的な揺動Pが比較的に大きくなり、これは車両乗客が感じる振動および/または揺動をもたらす傾向があり、こうした乗客にNVHが伝わらないように、振動を実質的に減衰させる必要がある。この具体例では、特にエンジンが時刻TREVで完全に停止する直前で、少なくとも1つのシリンダ内のピストンが上死点(TDC)に到達する直前に圧縮された充填空気がピストンに力を与え、エンジンの回転が反転する瞬間がある。理解されるように、これはマルチシリンダ−4ストロークエンジンの少なくとも1つのシリンダが圧縮行程にあって、エンジン速度がゼロに近づいているか、達した時点で生じやすい。しかしながら、このタイプのシャットダウンの望ましくないNVHの作用とは対照的に、迅速に行うことができるとともに、シャットダウン中、(スロットルバルブが開放されたままであることに起因して)マニホールド圧力が維持されるため、充填空気の圧力もより高く、エンジンシャットダウン後の再始動が比較的に良好に実施され、および/または「スタートストップ」サイクル中の「再加速要求(気変わり、COM:charge-of-mind)」始動はよりいっそう迅速に促進される。
【0104】
すなわち図3において、エンジン減速はより迅速であり、エンジン振動はより大きくなり、再始動性能は良好であるが、瞬間的なエンジン反転が起こる可能性があり、再加速要求(COM)始動は比較的に良好である。
【0105】
図4は、本発明に係る態様および実施形態によるエンジンシャットダウンを示す。シャットダウンの開始時点Tにおいて、マニホールドスロットルは、完全に開き、利用可能なマニホールド圧力TMTOPENを最大化する。エンジンは、吸気バルブを用いて調整してもよい。その後のシャットダウン期間の時刻T〜Tの第1の段階において、本発明に係る態様および実施形態による独立したバルブ制御に基づいて、たとえば吸気バルブリフト(バルブ上昇量)の最大化および/または吸気バルブ開口時間の最大化等により、シリンダ内に充填される空気が最大化される。択一的には、考慮されるエンジンにおいて同様の効果を実現することができる場合、排気バルブリフト(バルブ上昇量)の最小化および/または排気バルブ開口時間の最大化を調整してもよい。択一例として、上記説明した任意の技術を用いてもよい。このように、このシャットダウン期間中にできるだけ迅速にエンジン速度を減速させる。その効果として、この期間のシャットダウンは、図3に示す「開スロットル」シャットダウンを反映し、「開スロットル」シャットダウンの拡張形態であってもよい。
【0106】
シャットダウン期間の時刻T〜Tの第2の段階において、本発明に係る態様/実施形態に基づいてバルブを調整することにより、たとえば吸気バルブ上昇量または吸気バルブ開口時間等を低減させることにより、シリンダ内の充填空気量が低減される。択一的には、排気バルブ開口時間もしくは排気バルブ上昇量を増大させてもよい。このように、エンジンシャットダウン期間のこの段階は、図2に示す「閉スロットル」シャットダウンの特性につながり、図4の符号Pで示すように、時刻T2移行の揺動が少なく、エンジン減速が比較的に円滑であるとき、NVH特性は大幅に改善される。
【0107】
しかしながら、エンジンが停止する直前のシャットダウン期間の時刻T〜TSTOPCの最終段階において、最後の、または最後から2つもしくは3つの吸入ストローク(吸入行程)は、エンジン特性、および膨張ストローク(膨張行程)でクランクシャフトの回転を継続させる圧縮エネルギのリスクを考慮して、エンジンを決定的かつ迅速に停止させるために、充填空気量を最大化する。上記説明したように、シリンダをバランス調整し、バルブを正確に制御して、このようにエンジンの「跳ね(揺れ)」を低減する。また、少なくとも1つのシリンダに最大空気を充填し、その後エンジンが再始動要求を受けた場合、比較的に迅速にトルク要求を満たすことができる。理解されるように、完全に空気が充填される吸気バルブの正確な数は、シリンダの数、充填空気量を「バランス調整」する能力等に左右される。
【0108】
図4において、充填空気量は、シャットダウンの開始時点で増大されるが、エンジン停止に近づくにつれて低減される。その後、エンジン停止時のピストン反転を防止するように、充填空気量を増大させる。その後の再始動および再加速要求(COM)性能は良好である。
【0109】
図5は、停止時間を比較して示すために、図2図4のグラフを共通の座標スケールで示すグラフである。このグラフから明らかように、先行技術に係る「閉スロットル」シャットダウン(図2)の場合、停止時間(TSTOPA)は、「開スロットル」シャットダウン(図3)の場合の停止時間(TSTOPB)よりも相当に長い。本発明に係る態様の具体例によれば、停止時間(TSTOPC)は、「完全開スロットル」を採用し、能動的なバルブ制御により空気充填量を制御するといった手法に起因してさらに短くなる。
【0110】
4ストローク・4シリンダエンジンの停止を制御する具体例において、電子制御ユニット(ECU)は、パワー行程(膨張行程)で停止させるピストンを決定し、これに付随する吸気バルブを直後の吸入行程時に閉じて、反転または「ロッキング(後方揺動)」のリスクを回避しつつ、エンジンを確実に減速させる。このシリンダが吸入行程から、圧縮行程を経て、膨張行程に移行するとき、他の2つのシリンダは吸入行程を実行し、エンジンが回転を停止したとき、1つのシリンダは圧縮行程にあり、もう1つのシリンダは吸入行程にある。これらの他のシリンダにおいて、十分な充填空気量が得られるように、それぞれの吸気バルブが制御され、換言すると、各吸気バルブは、必要とされる実質的に最大の開口度で開き、バルブリフトの開口タイミング、上昇量、および期間が適当に設定される。必要ならば、再始動シリンダの充填量を妥協しない(十分なものとする)ように、可変スロットルバルブの位置を調整する。スロットルバルブを開口方向に移動させて、再始動シリンダの充填量を制限することを回避する。いくつかの実施形態では、スロットルバルブを閉口方向に移動させて、再始動シリンダの充填量を妥協することなく(十分なものとして)、より円滑な、および/またはより迅速な回転停止を実現する。
【0111】
すなわち本発明に係るこの態様は、回転停止に近づくときに吸気バルブを開き、4シリンダエンジンが停止する前のクランクシャフトの最後の回転時に吸気バルブを閉じて、開くことを特徴とするものである。最後の回転時の回転停止が迅速であり、再始動が最初に求められるシリンダが十分な空気充填量が提供されることを意図するものであるとき、異なる数のシリンダを有するエンジンに対して、同様の技術を適用することができる。
【0112】
再加速要求(COM)があった場合、圧縮行程で停止するシリンダ内への燃料噴射は、十分に有効である。これは、そのシリンダが十分な充填空気量を含み、上死点(TDC)に近づいているためである。さらに次に点火するシリンダは(吸入行程にあるが)、同様に十分な充填空気量を含む。
【0113】
迅速に回転停止させることにより、スタータモータが破損(クラッシュ)するリスクを極力抑え、スタータモータが起動する前に「ロッキング(後方揺動)」を停止させるようにする必要がある。
【0114】
上記説明したように、各シリンダが共通のカム形状で動作するポペットバルブを有する場合、停止指令により、回転が停止する際、クランクシャフトが振動する。この効果は、圧縮行程時のピストンが上死点(TDC)を通過するのに十分な慣性力を有さず、下死点(BDC)に向かって押し戻される空気ばねに例えることができる。
【0115】
図6は、時計まわり方向のクランクシャフト回転図110を示し、充填空気の圧縮行程は180°〜0°の間で行われ、膨張行程は0°〜180°の間で行われる。点火は、火花アイコン111で図示されている。圧縮行程にある最後のシリンダ内の振動は、矢印112,113で図示されている。
【0116】
1つの実施形態において、本発明は、パワー行程(膨張行程)で停止する予定のシリンダの吸気バルブの吸気を閉じ、または実質的に絞り、他方、圧縮行程で停止する予定のシリンダの吸気バルブを開く。このアンバランス(不均衡)が4シリンダエンジンにおいてロッキング(後方揺動)させることなく、停止させる1つの方法を提供する。
【0117】
図7は、本発明の効果を示すものであって、パワー行程(膨張行程)114で空気が十分に充填されないシリンダ、および圧縮行程115で空気が十分に充填されたシリンダが矢印116,117で示すように実質的に振動を抑制することを示す。
【0118】
図8は、連続する一定の時間間隔t〜t15において点火順序が1,3,4,2である4シリンダ直列4ストロークガソリンエンジンのための4つの例示的な停止条件を示すものである。4ストローク(4つの行程)は、吸入行程(I)、圧縮行程(C)、パワー行程(膨張行程)(P)、および排気行程(E)として図示されている。
【0119】
各ダイアグラムにおいて、シンボルを用いて、吸気バルブ動作あり121、吸気バルブ動作なし122、燃料噴射123、遅延燃料噴射124、および点火スパーク125を示す。
【0120】
ダイアグラムAは、アイドリング速度600rpm(回転/分)からの停止事象を図示するものである。期間t〜tにおいて、通常の4ストローク動作を示し、各シリンダで1回ずつ点火されている。
【0121】
期間tの間の時刻Tにおいて、たとえば市街走行中のスタートストップ事象のために停止指令がなされる。期間tにおいて燃料噴射が中止され、期間tにおいて点火スパークが中止される。期間tにおいてエンジン速度は500rpmまで低減する。期間t〜t18において吸気バルブが作動し、シリンダ内へ空気が充填されるが、期間tでは吸気バルブは作動しない。エンジン速度は引き続き低減する。期間t10〜t11において吸気バルブは再び作動し、シリンダ内へ空気が充填され、期間t11においてエンジンは停止する。
【0122】
シリンダ内への空気充填のアンバランス(不均衡)により、期間tにおいて吸気バルブが動作しないことに起因して、実質的にロッキング(後方揺動)させることなく、回転を停止させることができる。期間t10,t11において吸気バルブが動作することにより、吸入行程および圧縮行程においてシリンダ内に実質的に十分な空気が充填され、良好な再始動特性を支援することができる。
【0123】
ダイアグラムBは、期間t〜tにおいてはダイアグラムAと同一である。期間tにおいて、エンジンが再びトルクを出力するように再加速(COM)が要求される。したがって期間tにおいて、吸入行程において、吸気バルブが動作し、燃料が噴射される。さらに期間tでは、圧縮行程にあるシリンダに対して遅延燃料噴射が行われ、点火も再び行われる結果、期間t10では、エンジン速度は500rpmまで増大する。通常のエンジン動作が再開され、期間t13では、エンジンの通常のアイドリング速度の600rpmに達する。
【0124】
ダイアグラムBは、期間tの前に再加速指令の効果を示し、この期間においてダイアグラムAではシリンダ1の吸気バルブは動作しない。
【0125】
ダイアグラムCは、期間tにおいて再加速(COM)が要求されたときの効果を示し、このときエンジンは減速し、通常の燃料噴射も遅延燃料噴射も行われない。この場合、スタータモータSが期間t10において作動し、吸入行程にあるシリンダに対して直ちに吸気バルブが動作し、燃料が噴射される。すなわち期間t11において、同じシリンダが圧縮行程にあり、点火スパークに反応して、パワーを出力する。通常の動作が再開され、期間t13では、エンジン速度は600rpmまで増大する。
【0126】
ダイアグラムDは、期間t10で回転減速した後、再開指令またはきわめて遅い再加速(COM)指令が要求されたときの効果を示す。スタータモータSが作動し、圧縮行程にあるシリンダに対して遅延燃料噴射および点火スパークが行われ、吸入行程にあるシリンダに対して吸気バルブの動作が再開され、燃料が噴射される。通常のエンジン動作が再開され、期間t14までに通常のアイドリング速度に戻る。
【0127】
図8は、本発明に係る1つの動作モードを示し、複数のシリンダへのアンバランス(不均衡)な空気充填と、異なるタイミングで再加速(COM)要求されたときの効果を示す。動作原理は、他のエンジン構成、特により数多くのシリンダを有するエンジンにも拡張して適用して、圧縮行程および吸入行程で停止する予定のシリンダの良好な空気充填に起因し、さらには膨張行程で停止する予定のシリンダの限定的な空気充填に起因して、ロッキング(後方揺動)させることなく、エンジンの回転を迅速に停止させ、良好な再始動特性を実現することができる。
【0128】
本発明に係る態様は、以下の番号付けされた段落から明らかである。
【0129】
態様1:
4ストローク内燃エンジンの回転を停止させる方法であって、
燃料供給を中断するステップと、
膨張行程で停止する予定のシリンダが各吸入行程で低減された充填量を有し、圧縮行程で停止する予定のシリンダが各吸入行程で比較的に十分な充填量を有するように、エンジン吸気口からのシリンダ充填量を制御するステップとを有する、方法。
【0130】
態様2:
シリンダ充填量は、吸入行程で停止しつつあるシリンダに比較的に十分な充填量を供給するように制御される、態様1に記載の方法。
【0131】
態様3:
シリンダ充填量は、各シリンダのポペットバルブの上昇量ならびに/もしくは期間、および/または開口時間ならびに/もしくは閉口時間を調整することにより制御される、態様1に記載の方法。
【0132】
態様4:
シリンダ充填量は、エンジン吸気口のスロットルを調整することにより制御される、態様1に記載の方法。
【0133】
態様5:
シリンダ充填量は、各吸気ポペットバルブの上昇量、および/または開口時間ならびに/もしくは閉口時間を調整することにより決定される、態様1に記載の方法。
【0134】
態様6:
各吸気ポペットバルブは、能動的タペットを用いて制御される、態様1に記載の方法。
【0135】
態様7:
内燃エンジンのシャットダウンを調整する方法であって、
内燃エンジンは、スロットルを含む吸気マニホールドと、少なくとも2つの燃焼チャンバと、各燃焼チャンバに付随する少なくとも1つのポペットバルブとを有し、
少なくとも1つのポペットバルブは、その上昇特性を調整または制御する能動的タペットを有し、
この方法は、
a)燃焼チャンバへの燃料供給を中断するステップと、
b)エンジンの動作が停止する時に少なくとも1つの燃焼チャンバに十分な空気充填量が供給されるように、能動的タペットおよび少なくとも1つのポペットバルブを制御するステップとを有する、方法。
【0136】
態様8:
少なくとも1つの燃焼チャンバの最後の吸入行程において吸気バルブの開口時間を増大させるステップを有する、態様7に記載の方法。
【0137】
態様9:
少なくとも1つの燃焼チャンバの最後の圧縮行程において吸気バルブの開口時間を増大させるステップを有する、態様7に記載の方法。
【0138】
態様10:
内燃エンジンのシャットダウンを調整する方法であって、
内燃エンジンは、スロットルを含む吸気マニホールドと、少なくとも2つの燃焼チャンバと、各燃焼チャンバに付随する少なくとも1つのポペットバルブとを有し、
少なくとも1つのポペットバルブは、その上昇特性を調整または制御する能動的タペットを有し、
この方法は、
a)チャンバへの燃料供給を中断するステップと、
b)態様14−17に基づいて、シャットダウンの前半段階で空気充填量を調整してエンジン減速度を最適化するように、能動的タペットおよび少なくとも1つのポペットバルブを制御するステップと、
c)態様18に基づいて、シャットダウンの後半段階で空気充填量を調整してエンジンの振動を最小化するように、能動的タペットおよび少なくとも1つのポペットバルブを制御するステップとを有する、方法。
【0139】
態様11:
d)態様1〜6に基づいて、エンジンの動作が停止する時に十分な空気充填量が供給されるように、能動的タペットおよび少なくとも1つのポペットバルブを制御するステップを有する、態様10に記載の方法。
【0140】
態様12:
エンジンの回転を停止する前であって、エンジンをシャットダウンする指令の後に、スロットルの位置を調整するステップを有する、態様10に記載の方法。
【0141】
態様13:
内燃エンジンのシャットダウン中に内燃エンジンを再始動させる方法であって、
内燃エンジンは、スロットルを含む吸気マニホールドと、少なくとも2つの燃焼チャンバと、各燃焼チャンバに付随する少なくとも1つのポペットバルブとを有し、
少なくとも1つのポペットバルブは、その上昇特性を調整または制御する能動的タペットを有し、
この方法は、
a)シャットダウン開始時、燃焼チャンバへの燃料供給を中断するステップと、
b)再始動要求に対する準備として、吸気マニホールドからの大容量の空気充填量を少なくとも1つの燃焼チャンバに供給するように、能動的タペットおよび少なくとも1つのポペットバルブを制御するステップとを有する、方法。
【0142】
態様14:
内燃エンジンのシャットダウンを調整する方法であって、
内燃エンジンは、スロットルを含む吸気マニホールドと、少なくとも2つの燃焼チャンバと、各燃焼チャンバに付随する少なくとも1つのポペットバルブとを有し、
少なくとも1つのポペットバルブは、その上昇特性を調整または制御する能動的タペットを有し、
この方法は、
a)燃焼チャンバへの燃料供給を中断するステップと、
b)少なくとも1つの燃焼チャンバ内の空気充填量を調整して、エンジンの回転動作の減速を最適化するように、能動的タペットおよび少なくとも1つのポペットバルブを制御するステップとを有する、方法。
【0143】
態様15:
空気充填量の調整は、燃焼チャンバへ吸気される空気充填量の最大化を含む、態様14に記載の方法。
【0144】
態様16:
空気充填量の調整は、吸気バルブの開口時間を増大させることにより、燃焼チャンバへ吸気される空気充填量の最大化を含む、態様15に記載の方法。
【0145】
態様17:
空気充填量の調整は、吸気バルブの上昇量を増大させることにより、燃焼チャンバへ吸気される空気充填量の最大化を含む、態様15に記載の方法。
【0146】
態様18:
内燃エンジンのシャットダウンを調整する方法であって、
内燃エンジンは、スロットルを含む吸気マニホールドと、少なくとも2つの燃焼チャンバと、各燃焼チャンバに付随する少なくとも1つのポペットバルブとを有し、
少なくとも1つのポペットバルブは、その上昇特性を調整または制御する能動的タペットを有し、
この方法は、
a)燃焼チャンバへの燃料供給を中断するステップと、
b)少なくとも1つの燃焼チャンバ内の空気充填量を調整してエンジンが減速または停止するときの不規則な回転動作を最小限に抑えるように、能動的タペットおよび少なくとも1つのポペットバルブを制御するステップとを有する、方法。
【0147】
態様19:
態様1〜18のいずれか1に記載の方法を実行するように構成された内燃エンジンのための制御ユニット、システム、またはプログラム。
【0148】
態様20:
態様19に記載の制御ユニット、システム、またはプログラムを備えた車両。
【符号の説明】
【0149】
1…シリンダ、2…ピストン、3…吸気マニホールド、4…スロットル、5…吸気バルブ、6…能動的タペット、7…カム、8…ブリードバルブ、10…電子制御ユニット(ECU)、11…排気バルブ、12…排気マニホールド、13…吸気ポート、14…排気ポート、15…油圧チャンバ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8