特許第6603302号(P6603302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6603302少なくとも1つの機能的装飾層を含む粘着防止コーティングおよびこのようなコーティングを含む物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603302
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】少なくとも1つの機能的装飾層を含む粘着防止コーティングおよびこのようなコーティングを含む物品
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20191028BHJP
   A47J 36/02 20060101ALI20191028BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20191028BHJP
   C09D 5/26 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   C09D201/00
   A47J36/02 B
   C09D7/61
   C09D5/26
【請求項の数】13
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-501258(P2017-501258)
(86)(22)【出願日】2015年7月6日
(65)【公表番号】特表2017-527652(P2017-527652A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】FR2015051868
(87)【国際公開番号】WO2016005694
(87)【国際公開日】20160114
【審査請求日】2018年5月22日
(31)【優先権主張番号】1456590
(32)【優先日】2014年7月8日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】594034072
【氏名又は名称】セブ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー ル ブリ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−リュック ペリオン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ワク
(72)【発明者】
【氏名】ヘレン シリー−ブロー
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ ジョビック
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−527734(JP,A)
【文献】 特表2015−505111(JP,A)
【文献】 特表2014−506817(JP,A)
【文献】 実開昭53−021663(JP,U)
【文献】 特開2006−104319(JP,A)
【文献】 特開2005−017013(JP,A)
【文献】 特開2005−166967(JP,A)
【文献】 特開2005−265654(JP,A)
【文献】 特開平04−049546(JP,A)
【文献】 米国特許第06200628(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの機能的装飾層(20)を含む粘着防止コーティング(2)であって、前記装飾層(20)が、前記コーティング(2)が部分的にまたは全体的に低温と高温との間の温度変化にさらされ、前記低温が0℃から40℃、前記高温が80℃から400℃である場合に、光学および/または比色特性の可逆変化を有する顔料組成物を含むこと、ならびに前記顔料組成物が、粒子の形態の少なくとも1種の式(I)
(I) Y(3-x)xFe(5-y)y12
(式中、
Mは、ランタニド、アルカリ金属、アルカリ土類金属および酸化度が+3のメタロイドからなる群から選択され、
Qは、ランタニド、酸化度が+4の非金属、酸化度が+3または+4の金属、酸化度が+2または+4の遷移金属、アルカリ土類金属およびアルカリ金属からなる群から選択され、
xは、0から0.3であり、
yは、0から3である)
の化合物を含むことを特徴とする、コーティング(2)。
【請求項2】
Mは、La、Ce、CaおよびSr、およびその組合せからなる群から選択され、
Qは、Si、Al、Ga、Ge、Ti、Cr、Ca、SrおよびLa、およびその組合せからなる群から選択される
ことを特徴とする、請求項1に記載のコーティング(2)。
【請求項3】
前記式(I)の化合物は、ガーネット型構造を有していることを特徴とする、前記請求項1または2のいずれかに記載のコーティング(2)。
【請求項4】
前記式(I)の化合物は、以下の化合物:
3Fe512
3Fe4.75Ga0.2512
2.85La0.15Fe512
2.75Sr0.25Fe4.75Ge0.2512
2.9Sr0.1Fe4.9Ge0.112
2.75Sr0.25Fe4.75Si0.2512
2.9Sr0.1Fe4.9Si0.112
2.9Sr0.1Fe4.9Ti0.112
2.85Sr0.15Fe4.85Ti0.1512
2.75Ca0.25Fe4.75Ge0.2512
2.75Ca0.25Fe4.75Si0.2512
3Fe4.5Al0.512
3Fe4.75Al0.2512
3Fe4.4Al0.5Cr0.112
3Fe4.65Al0.25Cr0.112
3Fe4.75Ge0.2512
3Fe4.75Si0.2512
3Fe4.85Cr0.1512
3Fe3Al212
3Al3Fe212
の中から選択されることを特徴とする、前記請求項1〜3のいずれか一項に記載のコーティング(2)。
【請求項5】
yは、0〜0.5であることを特徴とする、前記請求項1〜4のいずれか一項に記載のコーティング(2)。
【請求項6】
前記高温は、120℃〜240℃であることを特徴とする、前記請求項1〜5のいずれか一項に記載のコーティング(2)。
【請求項7】
前記装飾層(20)は、熱安定性結合剤を含まないことを特徴とする、前記請求項1〜6のいずれか一項に記載のコーティング(2)。
【請求項8】
前記装飾層(20)は、前記顔料組成物に加えて、少なくとも1種の熱安定性結合剤を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のコーティング(2)。
【請求項9】
前記熱安定性結合剤は、エナメル、フルオロカーボン樹脂(単独または混合物で)、ゾル−ゲルプロセスによって合成された無機ポリマーまたは有機−無機ハイブリッドポリマー、シリコーン、シリコーン−ポリエステル、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンスルフィド(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリアミド−イミド(PAI)、フルオロシリコーンおよびポリベンゾイミダゾール(PBI)、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項8に記載のコーティング(2)。
【請求項10】
前記顔料組成物は、少なくとも1種の他のサーモクロミック化合物をさらに含むことを特徴とする、前記請求項1〜9のいずれか一項に記載のコーティング(2)。
【請求項11】
前記顔料組成物は、酸化ビスマスをさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載のコーティング(2)。
【請求項12】
2つの対向面(31、32)を有する基材(3)を含み、対向面の少なくとも1つ(31)が請求項1〜11のいずれか一項によって定義されたコーティング(2)で覆われていることを特徴とする物品(1)。
【請求項13】
前記基材(3)が、前記物品(1)内に食物を入れる可能性がある側に配置されるよう意図される凹形の内面(31)と、熱源に向かって配置されるよう意図される凸形の外面(32)とを有する料理道具であることを特徴とする、請求項12に記載の物品(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、少なくとも1つの機能的装飾層を含む粘着防止コーティング、およびこのようなコーティングを含む物品に関連する。
【0002】
本発明において、用語「機能的装飾」は、物品の使用者をその使用時に誘導する装飾を意味する。
【0003】
関連分野は、まず第一に、料理道具の分野であるが、本発明は、アイロンの底面、ストレートヘアアイロンのプレート、またはさらには家庭電化製品のカバーなど任意の他のタイプの表面に関連し得る。
【0004】
本発明の範囲内で使用できる料理道具の例には、フライパン、ソテーパン、ソースパン、中華鍋、クレープパン、ストックポット、スープポット、ダッチオーブン、エッグクッカーおよびグリルパンがある。
【背景技術】
【0005】
そのような物品の使用者には、物品が加熱されているときに使用中の物品の温度変化を見ることができることが不可欠である。料理道具の場合、食品が調理されている間の適切な温度制御は、健康および風味の目的(例えば、グリル上またはフライパン中でステーキに焦げ目をつけるため)に必要であるが、料理道具のコーティングを弱める断続的な過熱を制限するためにも必要である。過熱されていない材料ほど、寿命がより長くなる。低い温度で調理された食品ほど、健康的な官能特性を有する。さらに、ちょうど必要な温度で調理することにより、消費されるエネルギーおよびしたがって環境影響が制限される。
【0006】
既存の特許文献(例えば、特許文献1参照)には、可逆的な形で温度によって色が変化する感熱体からなるヒートインジケーターを備えた調理用具が記載されており、このヒートインジケーターは、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)でできた粘着防止コーティングに配合されている。熱安定性顔料(所与の温度範囲内で温度上昇を受けたときに、非常に僅かな色の変化、またはさらには色の変化がないことを示す鉱物または有機化合物である)は、ヒートインジケーターの相対的な色の変化、したがって温度の変化を評価することを可能にするために、インジケーターとして調理用具に組み込んでもよい。しかしながら、熱安定性顔料と感熱性顔料の簡単な組合せでは、温度の変化を明確に識別することが可能にならない。
【0007】
特許文献(例えば、特許文献2参照)に記載されているように、これらの問題を改善するために、サーモクロミック顔料系ヒートインジケーターがその後開発された。このヒートインジケーターは、少なくとも2つのパターンを含む装飾であり、一方は温度の上昇と共に暗くなる酸化鉄タイプのサーモクロミック顔料に基づくものであり、他方は温度の上昇と共に非常に僅かに明るくなる、ペリレンレッドとスピネルブラックの混合物を含む、サーモクロミック顔料に基づくものである。所定の温度(160℃から220℃に設定できる)では、2つのパターンの色はもはや互いに区別できず、それはこの所定の温度に達したときを特定する1つの方法ということになる。
【0008】
装飾の隣接領域でこれらのサーモクロミック顔料を同時に使用することにより、加熱物品の調理面の温度変化の視知覚を効果的に改善することが可能になる。しかしながら、このタイプのヒートインジケーターは、2つの領域がそれぞれ室温で類似の色度値(chromatic value)をもつ赤色を有しているので、使用者が一目で識別するのは依然として困難である。さらに、パターンの色の間の識別可能性の欠如は、熱振幅が少なくとも50℃である領域で生じる。特に特定のトレーニングを受けていない使用者の場合、温度変化を読み取って評価することは、容易ではないということになる。その結果、使用者は、このヒートインジケーターによってもたらされる情報を無視する傾向がある。
【0009】
したがって、例えば、着色されたヒートインジケーターの場合には、明確に異なる色を示すことにより(例えば、緑色から赤色への変化)、温度変化によって色および/または光学的性質を明確に変化させるヒートインジケーターを提供できるという利点がある。
【0010】
このタイプの顔料は、特許文献(例えば、特許文献3参照)に記載されており、その中で、CuMoW酸化物は、温度変化の影響下および/または少なくとも105Paの圧力などの機械的応力の影響下で可逆的な色の変化を示した。しかしながら、色の変化が相変化の結果であるこれらの酸化物は、サイクル性に特に敏感である。その結果、最大5サイクル後、低温での緑色着色の原因である準安定なα相に戻ることはもはやできない。このような顔料を着色されたヒートインジケーターとして使用する利点は、したがって、調理中などの繰返し使用のためには実際には存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】仏国特許発明第1388029号明細書
【特許文献2】欧州特許第1121576号明細書
【特許文献3】仏国特許発明第2891844号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、先行技術の機能的コーティングの問題を改善するために、少なくとも1つの機能的装飾層を含む粘着防止コーティングであって、このコーティングが塗布された物品の使用者を補助および誘導し得る、粘着防止コーティングを使用者に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
より詳細には、本発明の目的は、少なくとも1つの機能的装飾層を含む粘着防止コーティングであって、
装飾層が、コーティングが部分的にまたは全体的に低温と高温との間の温度変化にさらされ、低温が0℃から40℃、高温が80℃から400℃である場合に、光学および/または比色特性の可逆変化を有する顔料組成物を含むこと、ならびに
顔料組成物が、粒子の形態の少なくとも1種の式(I)
(I) Y(3-x)xFe(5-y)y12
(式中、
Mは、ランタニド、アルカリ金属、アルカリ土類金属および酸化度が+3のメタロイドからなる群から選択され
Qは、ランタニド、酸化度が+4の非金属、酸化度が+3または+4の金属、酸化度が+2または+4の遷移金属、アルカリ土類金属およびアルカリ金属からなる群から選択され、
xは、0から0.3であり、
yは、0から3である)
の化合物を含むこと
を特徴とする、粘着防止コーティングである。
【0014】
有利には、Mは、La、Ce、CaおよびSr、ならびにその組合せからなる群から選択することができ、Qは、Si、Al、Ga、Ge、Ti、Cr、Ca、SrおよびLa、ならびにその組合せからなる群から選択される。
【0015】
有利には、式(I)の化合物は、ガーネット型の構造を有していてよい。
【0016】
本発明において、用語「ガーネット構造をもつ化合物」は、それぞれ配位部位12、6(八面体配位)および4(四面体配位)を占有するX、TおよびKカチオンから構成される一般式X32312の化合物を意味する:
・X:8個の酸素原子に囲まれた二価の遷移元素、
・T:八面体配位の、6個の酸素原子に囲まれた三価の遷移元素、および
・K:四面体配位の、4個の酸素原子に囲まれた第3の構成基(constitutional group)。
【0017】
これらの異なる部位に位置する元素は、1つの相から別の相へ酸化度(DO)が異なる、非常に異なる化学的性質を有していてよく、電荷の平衡が明らかに常に維持されていなければならない。したがって、Xカチオンは、ただ単にアルカリ土類金属であってよく、またはDOが+3またはさらには+2もしくは+4の希土類金属のような、DOが+2の遷移金属であってもよい。Tカチオンは、従来のDOが+3の遷移金属またはメタロイドであり、一方、Kカチオンは、好ましくはDOが+3もしくは+4のメタロイドまたは遷移金属(例えば、Fe3+、Ti4+など)である。したがってこのガーネット構造は、多くの置換を可能にする典型的な可撓性をもっており、したがって広い範囲の物理的性質をもつことが明らかである。
【0018】
例えば、式Y3Fe512のイットリウム鉄ガーネットの場合、各鉄八面体は、6個の鉄四面体と6個のイットリウム原子に囲まれており、各鉄四面体は、4個の鉄八面体と6個のイットリウム原子に囲まれており、最後に各イットリウム原子は、4個の鉄八面体と4個の鉄四面体に囲まれている。
【0019】
ガーネット型構造の式(I)の化合物は、連続的なサーモクロミック特性およびはっきりした色の変化、有利には、低温と高温の間で緑色から赤色への色の変化を示し、低温は、0℃から40℃であり、高温は、80℃から400℃である。ガーネット構造を有するこれらの化合物は、鉄またはイットリウム原子の全部または一部を容易に置換して、化合物(結晶)、およびその結果その比色特性を変更することができるので、かなりの可撓性を提供する。これらの化合物はまた、優れた耐熱性および耐薬品性をもつ。
【0020】
有利には、式(I)の化合物は、以下の化合物の中から選択することができる:
3Fe512
3Fe4.75Ga0.2512
2.85La0.15Fe512
2.75Sr0.25Fe4.75Ge0.2512
2.9Sr0.1Fe4.9Ge0.112
2.75Sr0.25Fe4.75Si0.2512
2.9Sr0.1Fe4.9Si0.112
2.9Sr0.1Fe4.9Ti0.112
2.85Sr0.15Fe4.85Ti0.1512
2.75Ca0.25Fe4.75Ge0.2512
2.75Ca0.25Fe4.75Si0.2512
3Fe4.5Al0.512
3Fe4.75Al0.2512
3Fe4.4Al0.5Cr0.112
3Fe4.65Al0.25Cr0.112
3Fe4.75Ge0.2512
3Fe4.75Si0.2512
3Fe4.85Cr0.1512
3Fe3Al212
3Al3Fe212
【0021】
有利には、式(I)の化合物は、yが0から0.5であるようなものであってよい。
【0022】
本発明による粘着防止コーティングの装飾層は、コーティングが、部分的にまたは全体的に低温(0℃から40℃)と高温(80℃から400℃)の間の温度変化にさらされる場合に、光学および/または比色特性の可逆変化を有する顔料組成物を含む。
【0023】
有利には、この高温は、120℃から240℃であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明によるフライパンの例示的な一実施形態の概略的断面図である。
図2】本発明による単層コーティングを備えた、図1のフライパンの概略的断面図である。
図3】本発明による多層粘着防止コーティングを備えた、図1のフライパンの概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明による粘着防止コーティングの第1の実施形態では、装飾層は、熱安定性結合剤を含んでいなくてもよい。
【0026】
本発明による粘着防止コーティングの第2の実施形態では、装飾層は、顔料組成物に加えて、少なくとも1種の熱安定性結合剤を含むことができる。
【0027】
この熱安定性結合剤は、エナメル、フルオロカーボン樹脂(単独または混合物で)、ゾル−ゲルプロセスによって合成された無機ポリマーまたはハイブリッド有機−無機ポリマー、シリコーン、シリコーン−ポリエステル、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンスルフィド(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリアミド−イミド(PAI)、フルオロシリコーンおよびポリベンゾイミダゾール(PBI)、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0028】
有利には、本発明による粘着防止コーティングの装飾層は、式(I)の化合物の粒子が異方性形状を有し、装飾層の平均平面に対して20°から90°の角度αで大部分が傾斜している少なくとも1つの領域を含んでいてよい。
【0029】
粒子が装飾層の平均平面に対して傾斜しているこの領域では、反射率が、装飾の残りの表面(粒子が本質的に水平である場所)で観察されるものよりも小さいことを発明者らは観察している。
【0030】
本発明において、用語「異方性形状を有する粒子」は、繊維(本質的に一次元の形状)またはフレーク(本質的に二次元または平らな形状)など、その特徴的な寸法が全ての方向で同じではない粒子を意味する。
【0031】
異方性粒子のこのような配向は、使用する異方性粒子のタイプに応じて異なる方法で得ることができる。
【0032】
したがって、機械的手段によって配向させることができる粒子(繊維など)の場合、コーティング層に対する本質的に垂直な配向は、例えば、マイクロノズルのような一方向性アプリケーターに通した配向など、コーティング塗布プロセスに関連する位置決定の結果であってよい。
【0033】
物理的手段(電気または磁気など)によって配向させることができる粒子の場合、コーティング層に対する異方性粒子の本質的に垂直な配向は、磁界の影響下で磁化可能な粒子または電界の影響下で帯電可能な粒子の配向など、コーティングの塗布と連続してまたは同時に起こる位置決定の結果であってもよい。
【0034】
有利には、異方性形状を有する粒子の66%超、好ましくは80%超が、薄膜の平均平面に対して20°から90°の角度αで傾斜していてよい。
【0035】
薄膜の平均平面に対して20°から90°の角度αで傾斜している粒子の割合が高いと、スケーリング前にクラックの伝播を制限することによって装飾層の機械的強化を改善することが可能になる。
【0036】
磁化可能な粒子は、異なる性質であってもよい。
【0037】
それらは、本質的に均質であってよく、すなわち式(I)の化合物だけから構成されており、または複合的な性質であり、すなわち磁化可能な粒子はコア−シェル(core−and−shell)構造を有し、その粒子のコアおよび/またはシェル中に式(I)の化合物がある。
【0038】
有利には、磁化可能な粒子は、複合粒子であり、その粒子のシェル中に式(I)の化合物があり、一方異方性コアは、非磁性(例えば、雲母またはアルミニウムからなる)、磁性または強磁性(例えば、酸化鉄またはステンレス鋼からなる)である。
【0039】
有利には、本発明によるコーティングはまた、少なくとも1つの下層および/または少なくとも1つの仕上げ層を含んでいてもよい。
【0040】
有利には、本発明による粘着防止コーティングの装飾層の顔料組成物はまた、少なくとも1種の他のサーモクロミック化合物、好ましくは酸化ビスマス(Bi23)を含んでいてもよい。
【0041】
本発明の別の目的は、2つの対向面を有する基材を含み、対向面の少なくとも1つが本発明による粘着防止コーティングで覆われていることを特徴とする物品である。
【0042】
物品の基材の性質に関するものでは、物品は、金属、ガラス、セラミックスおよびプラスチック材料から選択される材料で作ることができる。好ましくは、基材が、陽極酸化もしくは非陽極酸化アルミニウム(またはアルミニウム合金)で作られた、または研磨、ブラシ研磨、マイクロビーズブラスト、サンドブラストもしくは化学処理されたアルミニウム(またはアルミニウム合金)で作られた金属基材であり、または研磨、ブラシ研磨もしくはマイクロビーズブラストされたステンレス鋼基材であり、または鋳鉄基材であり、または鍛造または研磨された銅基材である物品である。
【0043】
本発明による物品は、有利には、食物を保持できる凹形の内面および熱源に向かって配置されるよう意図される凸形の外面をもつ基材を有する料理道具であってよい。
【0044】
本発明による粘着防止コーティングは、内面および外面の少なくとも一方に存在する。有利には、本発明による粘着防止コーティングは、物品の内面の上に存在する。
【0045】
本発明の別の目的は、粒子の形態の式(I)
(I) Y(3-x)xFe(5-y)y12
(式中、
Mは、ランタニド、アルカリ金属、アルカリ土類金属および酸化度が+3のメタロイドからなる群から選択され、
Qは、ランタニド、酸化度が+4の非金属、酸化度が+3または+4の金属、酸化度が+2または+4の遷移金属、アルカリ土類金属およびアルカリ金属からなる群から選択され、
xは、0から0.3の範囲であり、
yは、0から3の範囲である)
の化合物を固体プロセスによって合成する第1の方法であって、
a)式(I)の化合物を構成する元素の酸化物粉末をアルコール溶媒中で共粉砕するステップと、
b)ステップ(a)の生成物を1200℃から1500℃の温度で4から10時間加熱するステップと、
c)ステップ(b)の生成物を室温まで冷却するステップと
を含む、方法である。
【0046】
有利には、アルコール溶媒は、エタノール系である。
【0047】
本発明の別の目的は、粒子の形態の式(I)
(I) Y(3-x)xFe(5-y)y12
(式中、
Mは、ランタニド、アルカリ金属、アルカリ土類金属および酸化度が+3のメタロイドからなる群から選択され、
Qは、ランタニド、酸化度が+4の非金属、酸化度が+3または+4の金属、酸化度が+2または+4の遷移金属、アルカリ土類金属およびアルカリ金属からなる群から選択され、
xは、0から0.3の範囲であり、
yは、0から3の範囲である)
の化合物をゾル−ゲルプロセスによって合成する第2の方法であって、
a)式(I)の化合物を構成する元素の塩と少なくとも1種の有機酸を混合してゲルを形成するステップと、
b)ステップ(a)からのゲルを乾燥するステップと、
c)ステップ(b)の生成物を500℃から700℃の温度で焼成するステップと、
d)ステップ(c)の生成物を800℃から1000℃の温度で少なくとも4時間再焼成するステップと、
e)ステップ(d)の生成物を室温まで冷却するステップと
を含む、方法である。
【0048】
有利には、この第2の合成方法では、硝酸塩は、該塩として使用される。
【0049】
有利には、この第2の合成方法では、クエン酸は、該有機酸として使用される。
【0050】
本発明の別の目的は、基材の少なくとも1つの表面上に本発明による粘着防止コーティングを調製する第1の方法であって、
a)式(I)の化合物を用意するステップと、
b)式(I)の化合物を含む顔料組成物を生成するステップと、
c)顔料組成物および熱安定性結合剤を含む装飾層組成物を生成するステップと、
d)装飾層組成物を基材の表面に塗布して、機能的装飾層を形成するステップと、
e)焼成ステップと
を含むことを特徴とする、方法である。
【0051】
本発明の別の目的は、基材の少なくとも1つの表面上に本発明による粘着防止コーティングを調製するための第2の方法であって、
a)式(I)の化合物を用意するステップと、
b)式(I)の化合物を含む顔料組成物を生成するステップと、
c)顔料組成物を含む装飾層組成物を生成するステップと、
d)装飾層組成物を基材の表面に塗布して、機能的装飾層を形成するステップと、
e)少なくとも1つの仕上げ層を装飾層に塗布するステップと、
f)焼成ステップと
を含むことを特徴とする、方法である。
【0052】
本発明の別の目的は、基材の少なくとも1つの表面上に本発明による粘着防止コーティングを調製するための第3の方法であって、
a)式(I)の化合物を用意するステップと、
b)式(I)の化合物を含む顔料組成物を生成するステップと、
c)顔料組成物を含む装飾層組成物を生成するステップと、
d)装飾層組成物を、少なくとも1つの下層をあらかじめコーティングした基材の表面に塗布して、機能的装飾層を形成するステップと、
e)焼成ステップと
を含むことを特徴とする、方法である。
【0053】
有利には、粘着防止コーティングを調製するこの方法はまた、有利には、ステップ(d)と(e)の間に少なくとも1つの仕上げ層を装飾層上に塗布することを含んでいてもよい。
【0054】
有利には、装飾層組成物は、少なくとも1種の熱安定性結合剤をさらに含む。
【0055】
前述の本発明による粘着防止コーティング調製方法の全てに関して、式(I)の化合物は、式(I)の化合物の本発明による合成方法のいずれかに基づいて有利に得ることができる。
【0056】
前述の本発明による粘着防止コーティング調製方法の全てに関して、装飾層の少なくとも1つの領域は、異方性形状を有する式(I)の化合物の粒子を含み、方法はまた、焼成ステップの前に、異方性形状を有する式(I)の化合物の粒子を、領域内の物理的または機械的手段によって配向させるためのステップを含む。
【0057】
好ましくは、異方性形状を有する式(I)の化合物の粒子は、磁化可能であってよく、磁化可能な粒子の配向ステップは、次いで、装飾層組成物を塗布するステップの間、または装飾層組成物を塗布するステップの後および焼成ステップの前に、磁界または電界を加えることによって行なうことができる。
【0058】
本発明の他の有利な点および特質は、非限定的な実施例として、添付の図面を参照して示す以下の説明から明らかになるであろう。
【0059】
図1では、本発明による料理道具の実施例としての、偏平ドーム形状の基材(3)および取っ手(4)を含むフライパン(1)の描写がある。基材(3)は、フライパン(1)内に食物を入れることができる側に向けられた表面である内面(31)と、外部熱源に向かって配置されるように設計された外面(32)を含む。基材(3)は、その内面(31)の上に発明による粘着防止コーティング(2)を含む。
【0060】
図2は、単層粘着防止コーティング(2)を備えた、図1のフライパンの概略的断面図を示す。粘着防止コーティング(2)は、少なくとも1種の式(I)の化合物を含む装飾層(20)を含む。
【0061】
図3は、本発明による多層粘着防止コーティング(2)を備えた、図1のフライパンの概略的断面図を示す。粘着防止コーティング(2)は、下層(22)、仕上げ層(21)および少なくとも1種の式(I)の化合物を含む装飾層(20)を含む。
【0062】
本発明は、以下の実施例においてより詳細に例示されている。
【実施例】
【0063】
実施例1:固体プロセスによる、本発明による顔料組成物の調製(PG1からPG16)
【0064】
エタノールの存在下で、酸化物を粉末形態で、表1に示す割合で(求める式(I)の化合物の化学量論と一致させて)機械的粉砕機に入れる。
【0065】
粉砕を、使用する酸化物粉末の粒径に依存し、平均凝集体粒径が約2μmの分散液を得るのに十分長い継続時間にわたって行なう。
【0066】
分散液を、るつぼに注ぎ込み、乾燥させて、エタノールを除去し、次いで約2℃/分の速度で加熱することにより1350℃にする。
【0067】
得られたそれぞれの粉末(PG1からPG16)を、1350℃で6時間保持して、固体プロセスによる酸化物の相互拡散によって式(I)の化合物を生成する。
【0068】
得られたそれぞれの粉末(PG1からPG16)は、約2μmの平均粒径を有する。
【0069】
得られたそれぞれの粉末(PG1からPG16)の組成を、次いでX線回折(XRD)測定を用いて分析し、表1に報告する。
【0070】
得られたそれぞれの粉末(PG1からPG16)中の式(I)の化合物の質量による含有量は、95%以上である。
【0071】
これらの粉末(PG1からPG16)はそれぞれ、表1に示す比色特性の可逆変化を示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
実施例2:本発明による顔料組成物のゾル−ゲルプロセスによる調製(PG17からPG20)
【0075】
表2に示す割合で、硝酸塩、脱イオン水およびクエン酸を一緒に混合することによって水溶液を調製する(硝酸塩については、求める式(I)の化合物の化学量論と一致させる)。
【0076】
25%アンモニア溶液を加えることによって溶液のpHを2に調節する。
【0077】
溶液を120℃まで徐々に加熱して、水を除去し、ゲルを得る。
【0078】
乾燥を30分間行なって、ほぼ全ての水を確実に除去する。
【0079】
ゲルを550℃で1時間焼成し、次いで900℃で6時間再焼成する。
【0080】
得られたそれぞれの粉末(PG17からPG20)は、約2μmの平均粒径を有する。
【0081】
得られたそれぞれの粉末(PG17からPG20)の組成を、X線回折(XRD)測定を用いて分析し、以下の表2に報告する。
【0082】
得られたそれぞれの粉末中の式(I)の化合物の質量による含有量は、95%以上である。
【0083】
これらの粉末(PG17からPG20)はそれぞれ、以下の表2に示す可逆的な比色変化を有する。
【0084】
【表3】
【0085】
実施例3:結合剤を含まない装飾層組成物の調製(SGD1)
【0086】
以下の成分を粉砕機に加え、次いで粉砕し、撹拌して、装飾層組成物を生成する。
【0087】
【表4】
【0088】
実施例4:装飾層ゾル−ゲル組成物の調製(SGD2)
【0089】
パートAの化合物を粉砕機に加え、次いで粉砕し、撹拌して、ペーストを生成する。
【0090】
パートBの化合物を単に一緒に混合して合わせる。
【0091】
別々の形態では、パートAおよびBを数週間保存することができる。
【0092】
使用する前に、パートAおよびBを合わせる。
【0093】
混合物を少なくとも6時間置いておいて、装飾層ゾル−ゲル組成物を生成する。この形態では、ゾル−ゲル組成物は、数日間保存することができる。
【0094】
【表5】
【0095】
実施例5:表面層ゾル−ゲル組成物の調製(SGS)
【0096】
パートAの化合物をミキサーに加え、撹拌する。
【0097】
パートBおよびCのそれぞれについても同じ手順に従う。
【0098】
別々の形態では、パートA、BおよびCは、数カ月間保存することができる。
【0099】
使用する前に、パートA、BおよびCを合わせる。
【0100】
混合物を少なくとも6時間置いておいて、表面層ゾル−ゲル組成物を生成する。この形態では、ゾル−ゲル組成物は、数日間保存することができる。
【0101】
【表6】
【0102】
実施例6:底層ゾル−ゲル組成物の調製(SGF)
【0103】
パートAの化合物を粉砕機に加え、次いで粉砕し、撹拌して、ペーストを生成する。
【0104】
パートBの化合物を単に一緒に混合して合わせる。別々の形態では、パートAおよびBを数週間保存することができる。
【0105】
使用する前に、パートAおよびBを合わせる。
【0106】
混合物を少なくとも6時間置いておいて、底層ゾル−ゲル組成物を生成する。この形態では、ゾル−ゲル組成物は、数日間保存することができる。
【0107】
【表7】
【0108】
実施例7:結合剤を含まない装飾層組成物の調製(FFD1)
【0109】
以下の化合物を粉砕機に加え、次いで粉砕し、撹拌して、装飾層組成物を生成する。この装飾層はそのまま使用でき、数時間保存することができる。
【0110】
【表8】
【0111】
実施例8:装飾層フッ素化組成物の調製(FFD2)
【0112】
異なる化合物を単に一緒に混合することによって組成物を得る。そのまま、組成物を数日間保存することができる。
【0113】
【表9】
【0114】
実施例9:装飾層フッ素化組成物の調製(FFD3)
【0115】
異なる化合物を単に一緒に混合することによって組成物を得る。そのまま、組成物を数日間保存することができる。
【0116】
【表10】
【0117】
実施例10:底層フッ素化組成物の調製(FFF)
【0118】
異なる化合物を単に一緒に混合することによって組成物を得る。そのまま、組成物を数日間保存することができる。
【0119】
【表11】
【0120】
実施例11:表面層フッ素化組成物の調製(FFS)
【0121】
異なる化合物を単に一緒に混合することによって組成物を得る。そのまま、組成物を数日間保存することができる。
【0122】
【表12】
【0123】
実施例12:本発明による装飾層を組み込んだ物品の調製
【0124】
アルミニウム合金ディスクを脱脂し、ブラシをかけて、ディスクの表面から任意の油脂状の表面物質および酸化物を除去する。
【0125】
顔料組成物PG1を用いて調製した装飾層フッ素化組成物(FFD3)を、ディスクの表面の1つにセリグラフィーによって塗布する。
【0126】
乾燥後、コーティングされたディスクを415℃で7分間焼成して、単層フッ素化粘着防止コーティングを含むディスクを得る。
【0127】
次いでディスクを型押しして、その内面がコーティングされたドームを形成する。
【0128】
得られたコーティングは、室温(20℃)で色が緑色である。
【0129】
コーティングされたドームを220℃まで加熱し、最初の緑色から赤色まで、コーティングのゆるやかな色の変化が加熱中に観察される。
【0130】
ドームを室温まで冷まし、赤色から最初の緑色まで、コーティングのゆるやかな色の変化が冷却中に観察される。
【0131】
上述のように、一連の10回の加熱および冷却サイクルを行ない、コーティングは、毎回同じ比色特性の変化を示す。
【0132】
実施例13:本発明による装飾層を組み込んだ物品の調製
アルミニウム合金ディスクを脱脂し、ブラシをかけて、ディスクの表面から任意の油脂状の表面物質および酸化物を除去する。
【0133】
底層フッ素化組成物(FFF)を、セリグラフィーによってディスクの表面の1つに塗布し、次いで乾燥させる。
【0134】
顔料組成物PG15から調製した装飾層フッ素化組成物(FFD1)を、底層でコーティングされたディスクの表面の一部にタンポグラフィーによって塗布する(直径が50mmある円形インプリント)。次いで装飾層を乾燥させる。
【0135】
次いで表面層フッ素化組成物(FFS)を、底層および装飾層でコーティングされたディスクの表面にセリグラフィーによって塗布し、次いで乾燥させる。
【0136】
コーティングされたディスクを415℃で7分間焼成して、多層フッ素化粘着防止コーティングを含むディスクを得る。次いでディスクを型押しして、その内面がコーティングされたドームを形成する。
【0137】
得られたコーティングは、黒色背板(background)(底層に相当する)上に室温(20℃)で色が緑色である装飾を示す。
【0138】
コーティングされたドームを220℃まで加熱し、最初の緑色から茶緑色まで、装飾層のゆるやかな色の変化が加熱中に観察されるが、黒色背板の比色特性は変化しない。
【0139】
ドームを室温まで冷まし、茶緑色から最初の緑色まで、装飾のゆるやかな色の変化が冷却中に観察されるが、黒色背板の比色特性は変化しない。
【0140】
上述のように、一連の10回の加熱および冷却サイクルを行ない、装飾は、毎回同じ比色特性の変化を示す。
【0141】
実施例14:本発明による装飾層を組み込んだ物品の調製
【0142】
アルミニウム合金ディスクを脱脂し、ブラシをかけて、ディスクの表面から任意の油脂状の表面物質および酸化物を除去する。
【0143】
底層フッ素化組成物(FFF)を、セリグラフィーによってディスクの表面の1つに塗布し、次いで乾燥させる。
【0144】
顔料組成物PG16から調製した装飾層フッ素化組成物(FFD1)を、底層でコーティングされたディスクの表面の一部にタンポグラフィーによって塗布する(直径が50mmある円形インプリント)。次いで装飾層を乾燥させる。
【0145】
次いで表面層フッ素化組成物(FFS)を、底層および装飾層でコーティングされたディスクの表面にセリグラフィーによって塗布し、次いで乾燥させる。
【0146】
コーティングされたディスクを415℃で7分間焼成して、多層フッ素化粘着防止コーティングを含むディスクを得る。次いでディスクを型押しして、その内面がコーティングされたドームを形成する。
【0147】
得られたコーティングは、黒色背板(底層に相当する)上に室温(20℃)で薄緑色の装飾を示す。
【0148】
コーティングされたドームを220℃まで加熱し、最初の薄緑色から暗緑色まで、装飾のゆるやかな色の変化が加熱中に観察されるが、黒色背板の比色特性は変化しない。
【0149】
ドームを室温まで冷まし、暗緑色から最初の薄緑色まで、装飾のゆるやかな色の変化が冷却中に観察されるが、黒色背板の比色特性は変化しない。
【0150】
上述のように、一連の10回の加熱および冷却サイクルを行ない、装飾は、毎回同じ比色特性の変化を示す。
【0151】
実施例15:本発明による装飾層を組み込んだ物品の調製
【0152】
アルミニウム合金ディスクを脱脂し、ブラシをかけて、ディスクの表面から任意の油脂状の表面物質および酸化物を除去する。
【0153】
底層フッ素化組成物(FFF)を、セリグラフィーによってディスクの表面の1つに塗布し、次いで乾燥させる。
【0154】
顔料組成物PG18から調製した装飾層フッ素化組成物(FFD2)を、底層でコーティングされたディスクの表面にセリグラフィーによって塗布して、一辺が4mmある正方形のチェッカーボードパターンを生成する。次いで装飾層を乾燥させる。
【0155】
次いで表面層フッ素化組成物(FFS)を、底層および装飾層でコーティングされたディスクの表面にセリグラフィーによって塗布し、次いで乾燥させる。
【0156】
コーティングされたディスクを415℃で7分間焼成して、多層フッ素化粘着防止コーティングを含むディスクを得る。
【0157】
次いでディスクを型押しして、その内面がコーティングされたドームを形成する。
【0158】
得られたコーティングは、黒色背板(底層に相当する)上に室温(20℃)で色が緑色である装飾を示す。
【0159】
コーティングされたドームを220℃まで加熱し、最初の緑色から赤色まで、装飾のゆるやかな色の変化が加熱中に観察されるが、黒色背板の比色特性は変化しない。
【0160】
ドームを室温まで冷まし、赤色から最初の緑色まで、装飾のゆるやかな色の変化が冷却中に観察されるが、黒色背板の比色特性は変化しない。
上述のように、一連の10回の加熱および冷却サイクルを行ない、装飾は、毎回同じ比色特性の変化を示す。
【0161】
実施例16:本発明による装飾層を組み込んだ物品の調製
【0162】
ステンレス鋼ドームを脱脂し、ブラシをかけて、ディスクの表面から任意の油脂状の表面物質および酸化物を除去する。
【0163】
顔料組成物PG1を用いて調製した装飾層ゾル−ゲル組成物(SGD2)をドームの内面にスプレーによって塗布する。
【0164】
次いで装飾層を乾燥させ、280℃で15分間焼成する。
【0165】
得られたコーティングは、室温(20℃)で色が緑色である。コーティングされたドームを220℃まで加熱し、最初の緑色から赤色まで、コーティングのゆるやかな色の変化が加熱中に観察される。
【0166】
ドームを室温まで冷まし、赤色から最初の緑色まで、コーティングのゆるやかな色の変化が冷却中に観察される。
【0167】
上述のように、一連の10回の加熱および冷却サイクルを行ない、コーティングは、毎回同じ比色特性の変化を示す。
【0168】
実施例17:本発明による装飾層を組み込んだ物品の調製
【0169】
アルミニウムドームを脱脂、ブラシをかけて、ドームの表面から任意の油脂状の表面物質および酸化物を除去する。
【0170】
底層ゾル−ゲル組成物(SGF)をドームの内面にスプレーによって塗布し、次いで乾燥させる。
【0171】
顔料組成物PG19を用いて調製した装飾層ゾル−ゲル組成物(SGD1)を、底層でコーティングされたディスクの表面の一部にタンポグラフィーによって塗布する(直径が50mmある円形インプリント)。
【0172】
次いで表面層ゾル−ゲル組成物(SGS)を、底層および装飾層でコーティングされたディスクの表面にスプレーによって塗布し、次いで乾燥させ、最後に280℃で20分間焼成する。
【0173】
得られたコーティングは、灰色背板(底層に相当する)上に室温(20℃)で緑色の装飾を有する。
【0174】
コーティングされたドームを220℃まで加熱し、最初の緑色から赤色まで、装飾のゆるやかな色の変化が加熱中に観察されるが、灰色背板の比色特性は変化しない。
【0175】
ドームを室温まで冷まし、赤色から最初の緑色まで、装飾のゆるやかな色の変化が冷却中に観察されるが、灰色背板の比色特性は変化しない。
【0176】
上述のように、一連の10回の加熱および冷却サイクルを行ない、装飾は、毎回同じ比色特性の変化を示す。
【0177】
実施例18:先行技術による装飾層を組み込んだ物品の調製
【0178】
アルミニウム合金ディスクを脱脂し、ブラシをかけて、ディスクの表面から任意の油脂状の表面物質および酸化物を除去する。
【0179】
底層フッ素化組成物(FFF)を、セリグラフィーによってディスクの表面の1つに塗布し、次いで乾燥させる。
【0180】
以下に記載されている化合物を粉砕機に加え、次いでそれらを粉砕し、撹拌することによって装飾層組成物を調製する。
【0181】
【表13】
【0182】
装飾層組成物を、底層でコーティングされたディスクの表面の一部にタンポグラフィーによって塗布する(直径が50mmある円形インプリント)。次いで装飾層を乾燥させる。
【0183】
次いで表面層フッ素化組成物(FFS)を、底層および装飾層でコーティングされたディスクの表面にセリグラフィーによって塗布し、次いで乾燥させる。
【0184】
コーティングされたディスクを415℃で7分間焼成して、多層フッ素化粘着防止コーティングを含むディスクを得る。
【0185】
次いでディスクを型押しして、その内面がコーティングされたドームを形成する。
【0186】
得られたコーティングは、黒色背板(底層に相当する)上に室温(20℃)で色が茶赤色である装飾を示す。
【0187】
コーティングされたドームを220℃まで加熱し、最初の茶赤色からやや暗い茶赤色まで、装飾のゆるやかな色の変化が加熱中に観察されるが、黒色背板の比色特性は変化しない。
【0188】
ドームを室温まで冷まし、やや暗い茶赤色から最初の茶赤色まで、装飾のゆるやかな色の変化が冷却中に観察されるが、黒色背板の比色特性は変化しない。
【0189】
基準色がなければ、高温に達していることを見ることができない。したがって、フライパンが熱いかまたは冷たいかどうかを一目で識別することは不可能であり、したがって安全性の問題が生じる。
図1
図2
図3