(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好適な実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。
図1は部品実装システム1の全体構成を示す説明図である。なお、本実施形態において、左右方向(X軸)、前後方向(Y軸)及び上下方向(Z軸)は、
図1に示した通りとする。
【0014】
部品実装システム1は、部品実装装置10と、管理コンピュータ80とを備えている。
【0015】
部品実装装置10は、
図1に示すように、基台12に搭載された基板搬送装置14と、XY平面を移動可能なヘッドユニット20と、ヘッドユニット20に着脱可能に取り付けられたロータリーヘッド30と、基板Sを上方から撮影するマークカメラ56と、ノズル32aに吸着された部品を下方から撮影するパーツカメラ58と、基板Sへ装着する部品を供給する部品供給装置60と、各種制御を実行するコントローラ70とを備えている。
【0016】
基板搬送装置14は、前後一対の支持板16,16にそれぞれ取り付けられたコンベアベルト18,18(
図1では片方のみ図示)により基板Sを左から右へと搬送する。
【0017】
ヘッドユニット20は、X軸スライダ22に取り付けられ、X軸スライダ22がガイドレール24,24に沿って左右方向に移動するのに伴って左右方向に移動し、Y軸スライダ26がガイドレール28,28に沿って前後方向に移動するのに伴って前後方向に移動する。このため、ヘッドユニット20は、XY平面を移動可能である。各スライダ22,26は、それぞれ図示しないサーボモータによって駆動される。また、各スライダ22,26は、図示しないリニアエンコーダを有しており、リニアエンコーダの出力パルスに基づいて各スライダ22,26の位置を認識できるようになっている。
【0018】
ロータリーヘッド30は、外形が略円筒形の部材であり、円周方向に沿って複数のノズル32aを有している。このロータリーヘッド30は、自転可能且つ着脱可能にヘッドユニット20に取り付けられている。ロータリーヘッド30は、ヘッドユニット20に装着されていない状態では基台12の上面右側に設けられたヘッド収納エリア13に収納される。
【0019】
マークカメラ56は、X軸スライダ22の下面に取り付けられている。マークカメラ56は、下方が撮影領域であり、基板Sに付されたマークを読み取るカメラである。このマークは、基板S上の基準位置を示すものである。この基準位置は、ノズル32aに吸着された部品を基板S上の所望の位置に装着する際に利用される。マークカメラ56は、各種ヘッドに付された2次元バーコードを読み取るバーコードリーダの機能も有している。
【0020】
パーツカメラ58は、基板搬送装置14の前側に配置されている。パーツカメラ58は、部品を吸着したノズル32aがパーツカメラ58の上方を通過する際、ノズル32aに吸着された部品の状態を撮影する。パーツカメラ58によって撮影された画像は、例えば部品が正常に吸着されているか否かを判定するのに用いられる。また、パーツカメラ58は、ロータリーヘッド30を保持していないヘッド保持体54(
図3参照)の底面を撮影したり、ヘッド保持体54に保持されたロータリーヘッド30の底面を撮影したりする。
【0021】
部品供給装置60は、部品実装装置10の前方に取り付けられている。この部品供給装置60は、複数のスロットを有しており、各スロットにはフィーダ62が差し込み可能となっている。フィーダ62には、テープが巻き付けられたリール64が取り付けられている。テープの表面には、部品がテープの長手方向に沿って並んだ状態で保持されている。これらの部品は、テープの表面を覆うフィルムによって保護されている。こうしたテープは、図示しないスプロケット機構によって後方へ送り出され、フィルムが剥がされて部品が露出した状態で所定の部品供給位置に配置される。部品供給位置とは、ノズル32aがその部品を吸着可能な位置である。この部品供給位置で部品を吸着したノズル32aは、基板S上の定められた位置にその部品を実装する。
【0022】
コントローラ70は、各種制御を実行するCPU72、制御プログラム等を記憶するROM74、作業領域として利用されるRAM76及び大容量のデータを記憶するHDD78を備え、これらは図示しないバスによって接続されている。コントローラ70は、基板搬送装置14、X軸スライダ22、Y軸スライダ26、ヘッドユニット20、マークカメラ56、パーツカメラ58及び部品供給装置60と信号のやり取りが可能なように接続されている。
【0023】
管理コンピュータ80は、基板Sの生産ジョブを管理するコンピュータであり、オペレータが作成した生産ジョブデータを記憶している。生産ジョブデータには、部品実装装置10においてどのスロット位置のフィーダからどの部品をどういう順番でどの基板種の基板Sへ実装するか、また、そのように実装した基板Sを何枚作製するかなどが定められている。管理コンピュータ80は、部品実装装置10のコントローラ70やフィーダ62の図示しないコントローラなどと双方向通信可能に接続されている。
【0024】
ここで、ヘッドユニット20について、詳細に説明する。
図2は、カバーを外した状態のヘッドユニット20の斜視図であり、詳しくは、ヘッド保持体54のR軸54fにロータリーヘッド30を取り付ける際の斜視図である。
図3は、ヘッド保持体54を下から斜め上向きに見たときの斜視図、
図4は、保持体中心P0をパーツカメラ58の中心と一致させたときのパーツカメラ58の撮像画像、
図5は、ロータリーヘッド30を下から斜め上向きに見たときの斜視図である。なお、
図5はノズル32aを省略した。
【0025】
ヘッドユニット20は、
図2に示すように、ヘッド保持体54とロータリーヘッド30とを備えている。ロータリーヘッド30は、オートツールとも呼ばれる部材である。
【0026】
ヘッド保持体54は、X軸スライダ22(
図1参照)に、図示しない昇降機構によって昇降可能に取り付けられている。このヘッド保持体54は、
図2に示すように、上部にリング状の2つのギア、R軸ギア54a及びQ軸ギア54cを有し、下部に円柱状のR軸54fを有している。R軸ギア54aは、R軸モータ54bによって回転駆動され、R軸54fと一体的に回転する。Q軸ギア54cは、Q軸モータ54dによって回転駆動され、Q軸ギア54cの下面に設けられたリング状のクラッチ部材54e(
図3参照)と一体的に回転する。Q軸ギア54cは、R軸ギア54aと独立して回転可能である。
図3に示すように、R軸54fは、下部に筒状突起54gを有している。この筒状突起54gの円筒面には、円周方向に沿って等間隔に4つの穴54hが設けられている。各穴54hには、穴径よりも大きな径のクランプボール54iが穴54hから突出・没入可能に取り付けられている。筒状突起54gの内部には、エア圧によって上下動するピストン54jが配置されている。このピストン54jは、クランプボール54iと接する位置にテーパ面を有している。ピストン54jの上下位置が変化すると、クランプボール54iがテーパ面によって押圧される度合いが変化する。そのため、ピストン54jの上下位置を制御することにより、クランプボール54iを穴54hから突出させてロータリーヘッド30とR軸54fとを係合させたり、クランプボール54iを穴54hへ没入させてロータリーヘッド30とR軸54fとの係合を解除したりすることができる。また、筒状突起54gのリング状の底面には、円周方向に沿って等間隔に4つのR軸マーク54kが設けられている。保持体中心P0は、この4つのR軸マーク54kのうち対角関係にある2つを結んだ線(
図3の一点鎖線)の交点である。
【0027】
ここで、保持体中心P0について説明する。コントローラ70は、ヘッド保持体54にロータリーヘッド30が装着されていない状態で、
図4に示すように保持体中心P0がパーツカメラ58の中心と一致するようにX軸及びY軸スライダ22,26を制御する。コントローラ70は、両者が一致したときの各スライダ22,26の図示しないリニアエンコーダのパルス値を基準パルス値としてHDD78に保存しておく。コントローラ70は、その後、X軸及びY軸スライダ22,26のリニアエンコーダから出力されるパルス値が基準パルス値と一致するようにX軸及びY軸スライダ22,26を制御すれば、保持体中心P0をパーツカメラ58の中心と一致させることができる。そのため、ヘッド保持体54がロータリーヘッド30を保持していてR軸マーク54kがパーツカメラ58に写らない場合であっても、保持体中心P0をパーツカメラ58の中心と一致させることができる。
【0028】
ロータリーヘッド30は、
図2に示すように、複数(ここでは12本)のノズル32aを有している。ノズル32aは、上下方向に延びるノズルホルダ32と一体化されている。ノズルホルダ32は、上端付近にノズル操作レバー39を有し、スプリング40によって上方へ付勢されて所定の定位置(上方位置)に位置決めされている。ノズル操作レバー39は、ヘッドユニット20に設けられた図示しない押圧機構によって押下されたり押下が解除されたりする。この押圧機構は、コントローラ70によって制御される。ノズル操作レバー39が押下されると、スプリング40の弾性力に抗してノズルホルダ32及びノズル32aが下降し、ノズル操作レバー39の押下が解除されると、ノズルホルダ32及びノズル32aはスプリング40の弾性力によって定位置に戻る。ノズルホルダ32は、ノズルホルダ32と同軸の小ギア34を有している。円筒ギア33は、小ギア34の並んだ円周よりも内側に配置され、側面にギアを有し、各小ギア34と噛み合わされている。また、円筒ギア33は、R軸54fを挿入できるような寸法に設計され、R軸54fとは独立して回転可能となっている。この円筒ギア33の上端には、ヘッド保持体54のクラッチ部材54e(
図3参照)と嵌まり合うクラッチ部材52が設けられている。また、ロータリーヘッド30は、ノズル32aごとに、ノズル先端に負圧を供給するか大気圧を供給するかを切り替える圧力操作レバー35を有している。圧力操作レバー35は、ヘッドユニット20に設けられた図示しない切替機構によって位置決めされる。この切替機構は、コントローラ70によって制御される。圧力操作レバー35は、上方に位置決めされるとノズル先端に負圧を供給し、下方に位置決めされるとノズル先端に大気圧を供給する。ロータリーヘッド30のリング状の底面には、
図5に示すように、円周方向に沿って等間隔に4つのヘッドマーク30kが設けられている。ヘッド中心PHは、この4つのヘッドマーク30kのうち対角関係にある2つを結んだ線(
図5の一点鎖線)の交点である。
【0029】
こうしたロータリーヘッド30は、以下の手順でヘッド保持体54に装着される。まず、コントローラ70は、ヘッド保持体54にロータリーヘッド30が保持されておらず、ヘッド収納エリア13にロータリーヘッド30が収納されている状態で、ヘッドユニット20をロータリーヘッド30の直上に移動させる。続いて、コントローラ70は、ヘッド保持体54を下降させてR軸54fを円筒ギア33に挿入し、円筒ギア33のクラッチ部材52をヘッド保持体54のクラッチ部材54eと噛み合わせる。続いて、コントローラ70は、ヘッド保持体54のクランプボール54iが穴54hから半径外方向に突出するようにピストン54jを作動する。これにより、クランプボール54iを介してヘッド保持体54とロータリーヘッド30とが係合され、ロータリーヘッド30はヘッド保持体54に保持される。この状態でヘッド保持体54のR軸ギア54aが回転するとロータリーヘッド30の全体が回転し、Q軸ギア54cが回転すると円筒ギア33及び小ギア34を介してノズル32が独立して軸回転する。
【0030】
また、ロータリーヘッド30は、以下の手順でヘッド保持体54から解除される。まず、コントローラ70は、ヘッドユニット20にロータリーヘッド30が保持されており、ヘッド収納エリア13にロータリーヘッド30の収納スペースが空いている状態で、ロータリーヘッド30をその収納スペースの直上に移動させる。続いて、コントローラ70は、ヘッド保持体54を下降させてロータリーヘッド30を収納スペースに収納し、ヘッド保持体54のクランプボール54iが穴54hから半径内方向に没入するようにピストン54jを作動する。これにより、ヘッド保持体54とロータリーヘッド30との係合は解除される。
【0031】
次に、部品実装装置10のコントローラ70のCPU72によって実行されるヘッド位置補正ルーチンについて、
図6のフローチャートを用いて説明する。ヘッド位置補正ルーチンは、ヘッド保持体54にロータリーヘッド30が装着されるごとにCPU72によって実行されるルーチンである。なお、ロータリーヘッド30は、同じ構造であってロットの異なるものが複数存在する。また、ノズル32aが12本のロータリーヘッド30以外にノズルが4本や8本のロータリーヘッドも存在する。各ロータリーヘッドには、個別の識別符号を示す二次元バーコードが所定のノズル操作レバーの上面に付されている。以下では、ロータリーヘッド30を装着する場合について説明するが、その他のロータリーヘッドを装着する場合についても同様である。
【0032】
まず、CPU72は、今回装着しようとしているロータリーヘッド30の識別符号を取得する(S110)。識別符号は、ロータリーヘッド30に付された図示しない二次元バーコードをマークカメラ56で撮像し、その撮像した画像から取得してもよいし、管理コンピュータ80から今回のロータリーヘッド30の識別符号を取得してもよい。
【0033】
次に、CPU72は、HDD78の位置補正テーブル78a(
図1参照)に、今回の識別符号にキャリブレーションデータ(位置補正データ)が対応づけられているか否かを判定する(S120)。CPU72がキャリブレーションを実行するたびに、そのときのロータリーヘッド30の識別符号とヘッド中心PHa(キャリブレーション実行時のヘッド中心PH)のXY座標とキャリブレーションデータとが対応づけられて位置補正テーブル78aに保存される。そのため、ステップS120で肯定判定だったならば、今回の識別符号のロータリーヘッド30はキャリブレーションがすでに実行済みということになり、否定判定だったならば、キャリブレーションがまだ実行されていないということになる。
【0034】
ステップS120で否定判定だったならば、CPU72は、まず、パーツカメラ58の中心(XY座標の原点(0,0)とする)に保持体中心P0が一致するようにX軸及びY軸スライダ22,26を制御する(ステップS130)。これにより、保持体中心P0が原点(0,0)と一致する。続いて、CPU72は、ロータリーヘッド30のヘッド中心PHaのXY座標(xa,ya)を求める(ステップS140)。
図7に、このときのパーツカメラ58の撮像画像を示す。このXY座標(xa,ya)は例えば得られた画像の画素を利用して求めることができる。続いて、CPU72は、キャリブレーションを実行し(ステップS150)、得られたキャリブレーションデータを今回の識別符号とヘッド中心PHaのXY座標(xa,ya)とに対応づけて位置補正テーブル78aに書き込み、その位置補正テーブル78aを更新する(ステップS160)。部品実装装置10では、予め設計値通りに各部材が製造されたり取り付けられたりしているとした上で、基板Sの目標位置へ部品を実装する部品実装プログラムが作成されている。しかし、実際には、設計値通りに各部材が製造されたり取り付けられたりしていることは希で、実際には設計値からずれている。そのため、そのずれを較正するために部品実装装置10のキャリブレーションを実行するのである。CPU72は、その後の部品実装時には、今回のキャリブレーションの結果を反映させて実行する。なお、キャリブレーションの具体例については、例えばWO2015/049721を参照されたい。
【0035】
一方、ステップS120で肯定判定だったならば、CPU72は、まず、パーツカメラ58の中心に保持体中心P0が一致するようにX軸及びY軸スライダ22,26を制御する(ステップS170)。これにより、保持体中心P0が原点(0,0)と一致する。続いて、CPU72は、ロータリーヘッド30のヘッド中心PHbのXY座標(xb,yb)を求める(ステップS180)。
図8に、このときのパーツカメラ58の撮像画像を示す。続いて、CPU72は、ヘッド保持体54に保持されたロータリーヘッド30が所定の基準から許容範囲を超えてずれているか否かを判定する(ステップS190)。具体的には、今回のヘッド中心PHbが、位置補正テーブル78aで今回の識別符号に対応するヘッド中心PHaから許容範囲を超えてずれているか否かを判定する。ここでは、XY座標の差分、つまりΔx=|xb−xa|,Δy=|yb−ya|を求め、Δx及びΔyとも予め定めた閾値Xth,Ythを超えているか否かを判定する。閾値Xth,Ythは、Δx及びΔyが種々異なる条件で実際に部品実装を行ったときの部品実装精度を測定し、その測定結果に基づいて決定される。差分Δx,Δyが大きくなると、ヘッド保持体54に対するロータリーヘッド30の保持状態が、キャリブレーションを実行した際と大きく異なり、ヘッド保持体54に対してロータリーヘッド30が傾いている可能性が高くなる。そうした場合、単に差分Δx,Δyを補正するだけでは、その傾きの影響によって部品実装の精度が維持できなくなると考えられる。
【0036】
ステップS190で肯定判定だったならば、つまりヘッド保持体54に保持されたロータリーヘッド30が所定の基準から許容範囲を超えてずれていたならば、CPU72は、ヘッド保持体54が現在のロータリーヘッド30の保持を一旦解除したあと再び保持し直す(つまり掴み直す)ようにX軸及びY軸スライダ22,26やヘッドユニット20を制御し(ステップS200)、再びS170以降の処理を実行する。
【0037】
一方、ステップS190で否定判定だったならば、つまりヘッド保持体54に保持されたロータリーヘッド30が所定の基準から許容範囲内だったならば、CPU72は、XY座標の差分Δx、ΔyをHDDに保存し(ステップS210)、このルーチンを終了する。その後、CPU72は後述する部品実装プログラムを実行する。その際、CPU72は、位置補正テーブル78aから今回の識別符号に対応するキャリブレーションデータを読み出して利用する際、そのキャリブレーションデータに上述したXY座標の差分Δx、Δyに基づく補正値を加えて利用する。
【0038】
次に、上述したヘッド位置補正ルーチンの実行後、コントローラ70によって実行される部品実装処理について説明する。コントローラ70のCPU72は、HDD78から部品実装プログラムを読み出し、管理コンピュータ80から受信した生産ジョブデータに基づいて部品実装処理を実行する。ここでは、12本のノズル32aは1番目から12番目まで序列が付けられているものとする。
【0039】
まず、CPU72は、12本のノズル32aへ部品を吸着させる。具体的には、CPU72は、X軸スライダ22及びY軸スライダ26を制御して1番目のノズル32aを所望の部品の真上に配置する。その後、CPU72は、図示しない押圧機構を制御して1番目のノズル32aのノズル操作レバー39をスプリング40の力に抗して下方へ押圧する。すると、1番目のノズル32aは下方へ移動する。これと共に、CPU72は、図示しない切替機構で圧力操作レバー35を操作して1番目のノズル32aへ負圧を供給する。これにより、1番目のノズル32aに所望の部品が吸着される。次に、CPU72は、ヘッド保持体4と共にロータリーヘッド30を回転させながら、図示しない押圧機構を制御して、1番目のノズル32aをスプリング40の力によって定位置に戻す。続いて、CPU72は、2番目のノズル32aのノズル操作レバー39をスプリング40の力に抗して下方へ押圧すると共に、図示しない切替機構を制御して2番目のノズル32aへ負圧を供給する。このとき、CPU72は、2番目のノズル32aが所望の部品を吸着するように制御する。3番目以降のノズル32aについても、これと同様の動作を繰り返す。これにより、1番目から最終番目のノズル32aのすべてに部品を吸着させることができる。
【0040】
その後、CPU72は、部品が基板Sの目標位置へ実装されるよう各スライダ22,24やヘッドユニット20を制御する。具体的には、CPU72は、ロータリーヘッド30をパーツカメラ58の直上に移動させ、その位置でパーツカメラ58が撮像した画像を解析して1番目のノズル32aから12番目のノズル32aにそれぞれ吸着された部品の位置ずれ量を認識する。続いて、CPU72は、部品の位置ずれ量、キャリブレーションデータ、XY座標の差分Δx、Δyに基づく補正値に基づいて、1番目のノズル32aを基板Sの1番目の部品の目標位置の直上に移動させる。続いて、CPU72は、図示しない押圧機構を制御して1番目のノズル32aのノズル操作レバー39を下降させ、その後、図示しない切替機構で圧力操作レバー35を操作して1番目のノズル32aへ大気圧を供給する。これにより、1番目のノズル32aに吸着されていた部品が1番目の部品の目標位置に装着される。2番目以降のノズル32aに吸着されていた部品についても、同様にして基板S上に装着していく。
【0041】
なお、CPU72が基板Sへ部品を実装する動作を行っている途中で、ロータリーヘッドを自動交換することがある。ロータリーヘッドを自動交換する必要のある場合としては、例えば、基板Sへ実装すべき部品の大きさが多種類存在して一つのロータリーヘッドでは対応しきれない場合などが挙げられる。こうしたロータリーヘッドの自動交換を行ったときには、上述したヘッド位置補正ルーチンを実行し、その後、再び部品実装処理を実行する。
【0042】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のロータリーヘッド30が本発明のヘッドに相当し、ヘッド保持体54がヘッド保持手段に相当し、CPU72が制御手段に相当する。また、ステップS200のヘッドの掴み直しが保持異常に対する処理に相当する。
【0043】
以上説明した本実施形態の部品実装装置10では、CPU72は、ヘッド保持体54に保持されたロータリーヘッド30が所定の基準から大きくずれていたならば、保持異常に対する処理を実行する。ロータリーヘッド30が所定の基準から大きくずれていたときには、そのまま部品実装処理を実行すると部品実装時の精度不良が発生するおそれがある。そのため、CPU72は、部品実装処理を実行するのではなく、保持異常に対する処理を実行する。これにより、ロータリーヘッド30が所定の基準から大きくずれたときに部品実装時の精度不良が発生するのを防止する。
【0044】
また、保持異常に対する処理として、ヘッド保持体54がロータリーヘッド30を掴み直すようヘッド保持体54を制御する処理を実行する。この掴み直しによりロータリーヘッド30のずれが許容範囲内に収まることがある。ずれが許容範囲内に収まれば、その後部品実装処理を実行したとしても精度不良が発生することはない。
【0045】
更に、ずれを測定するときの基準として、ヘッド位置補正データを作成したときにヘッド保持体54に保持されていたロータリーヘッド30のヘッド中心PHaのXY座標(xa,ya)を用いた。そのため、CPU72は、そのヘッド中心PHaのXY座標(xa,ya)に対する今回のヘッド中心PHbのXY座標(xb,yb)のずれを把握することができる。
【0046】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0047】
例えば、上述した実施形態では、保持異常に対する処理として、ロータリーヘッド30の掴み直しを行ったが、それに代えて又は加えて、保持異常が発生したことをコントローラ70のディスプレイに画像で出力したりスピーカから音声で出力したり管理コンピュータ80へ送信したりしてもよい。こうすれば、オペレータはこの報知によって保持異常が発生したことを知るため、保持異常に対する対策を適切に講じることができる。
【0048】
上述した実施形態では、ロータリーヘッド30を掴み直す回数に特に制限を加えなかったが、回数に制限を加えてもよい。例えば、ステップS200の手前にロータリーヘッド30の掴み直しの回数が所定回数に達したか否かを判定するステップを設けてもよい。その場合、CPU72は、掴み直しの回数が所定回数に達していなければステップS200へ進み、所定回数に達したならば、保持異常が発生したことを外部へ報知し、このルーチンを終了してもよい。こうすれば、ヘッド保持体54がロータリーヘッド30を何度掴み直してもずれが解消されない場合に、このルーチンから抜けられなくなるのを防止することができる。
【0049】
上述した実施形態では、ヘッド保持体54に保持されたロータリーヘッド30が許容範囲を超えてずれているか否かの判定を、ヘッド中心PHのXY座標の差分Δx,Δyが許容範囲を超えてずれているか否かによって行ったが、特にこれに限定されない。ヘッド保持体54のR軸54fが回転したときにはロータリーヘッド30も回転するが、そのときのロータリーヘッド30のヘッド中心PHが描く円軌道の半径が許容範囲を超えて大きいと、振れ回りの影響が大きくなり、部品実装の精度が低下する。例えば、
図9に示すヘッド中心PHbとヘッド中心PHcとは、どちらもキャリブレーション実行時のヘッド中心PHaのXY座標(xa,ya)からの差分Δx,Δyが同じだとする。しかし、振れ回りの半径については、ヘッド中心PHcの半径rcの方がヘッド中心PHbの半径rbよりも大きい。そのため、ヘッド中心PHcは、キャリブレーション実行時のヘッド中心PHaとのXY座標との差分Δx,Δyが許容範囲内だったとしても、振れ回りの半径は許容範囲外ということがある。こうしたことから、CPU72は、ステップS190において、差分Δx,Δyが許容範囲内だった場合、更に振れ回りの半径も許容範囲を超えて大きいか否かを判定し、それも許容範囲内だったならば、ステップS190で否定判定してステップS210へ進み、振れ回りの半径が許容範囲を超えて大きかったならば、ステップS200へ進んでもよい。この場合の基準は、ヘッド保持体54の保持体中心P0になり、CPU72は、ヘッド保持体54に対するロータリーヘッド30のずれを把握することができる。なお、振れ回りの半径は、保持体中心P0(=パーツカメラ58の中心)からヘッド中心PHまでの距離を求めてもよいし、R軸54fを1回転させたときのヘッド中心PHの軌道から求めてもよい。また、ステップS190では、振れ回りの半径が許容範囲を超えて大きいか否かのみを判定してもよい。
【0050】
上述した実施形態では、ヘッド保持体54に保持されたロータリーヘッド30が許容範囲を超えてずれているか否かをXY座標の差分Δx,Δyによって判定したが、これに限らない。例えば、2点間の距離つまり{(xb−xa)
2+(yb−ya)
2)}
1/2によって判定してもよい。
【0051】
上述した実施形態では、部品供給装置60としてフィーダ62及びリール64を備えたリールユニットを例示したが、特にリールユニットに限定されるものではない。例えば、リールユニットの代わりに、周知のトレイユニット(例えば特開2011−060816号公報参照)を採用し、トレイが載っているパレットをマガジンから引き出してパレット引き出しテーブルにより所定の部品供給位置に移動させ、その部品供給位置で部品をノズルに吸着させるようにしてもよい。
【0052】
上述した実施形態では、ロータリーヘッド30について説明したが、ロータリーヘッドではない1つのノズルを有するヘッドを用いてもよい。