特許第6603322号(P6603322)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603322
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】携帯時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/00 20060101AFI20191028BHJP
   G04B 29/02 20060101ALI20191028BHJP
   G04B 33/08 20060101ALI20191028BHJP
   G04B 45/00 20060101ALI20191028BHJP
   G04C 3/00 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   G04B19/00 C
   G04B29/02 Z
   G04B33/08
   G04B45/00 A
   G04C3/00 H
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-541436(P2017-541436)
(86)(22)【出願日】2016年1月28日
(86)【国際出願番号】JP2016052493
(87)【国際公開番号】WO2017051547
(87)【国際公開日】20170330
【審査請求日】2018年11月12日
(31)【優先権主張番号】特願2015-188338(P2015-188338)
(32)【優先日】2015年9月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 泰夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕之
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 恭兵
(72)【発明者】
【氏名】内藤 雄一
【審査官】 榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第90/12347(WO,A1)
【文献】 特開昭57−6380(JP,A)
【文献】 特開昭51−88064(JP,A)
【文献】 特開平9−21891(JP,A)
【文献】 実開昭57−41193(JP,U)
【文献】 特開昭57−173781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/00
G04B 29/02
G04B 33/08
G04B 45/00
G04C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に回転軸を有する指針、輪列及び駆動源を含む第1の駆動機構と、
前記第1の方向と異なる第2の方向に回転軸を有する指針、輪列及び駆動源を含む第2の駆動機構と、
互いに向きの異なる第1の取付面及び第2の取付面を備えた地板と、を有し、
前記第1の駆動機構と前記第2の駆動機構は、別々に設けられ、
前記第1の駆動機構は、その基準面が前記第1の取付面に接するように固定され、
前記第2の駆動機構は、その基準面が前記第2の取付面に接するように固定される、
携帯時計。
【請求項2】
前記第1の方向及び前記第2の方向は、それぞれ、前記指針の回転軸が設けられる位置における文字板の法線方向に沿った方向である、
請求項1に記載の携帯時計。
【請求項3】
前記第1の駆動機構及び前記第2の駆動機構は、それぞれ独立して、一体的に取付け及び取外しが可能である、
請求項1又は2に記載の携帯時計。
【請求項4】
前記地板は、少なくとも第1の凹部及び第2の凹部を有し、前記第1の凹部の底面が前記第1の取付面であり、前記第2の凹部の底面が前記第2の取付面である、
請求項1乃至3のいずれかに記載の携帯時計。
【請求項5】
前記第1の凹部及び前記第2の凹部は、共通の一の方向に対して、平行又はテーパ状となる壁面を有する、
請求項に記載の携帯時計。
【請求項6】
前記第1の凹部と前記第2の凹部は、前記地板の互いに反対の面に設けられている、
請求項又はに記載の携帯時計。
【請求項7】
前記地板は、凹部である電池収容部をさらに有し、
前記電池収容部に収容される電池は、前記携帯時計の厚さ方向に対し、傾斜した姿勢で固定される、
請求項1乃至のいずれかに記載の携帯時計。
【請求項8】
前記地板は、凹部である電池収容部をさらに有し、
前記電池収容部に収容される電池は、前記携帯時計の厚さ方向に対し、傾斜した姿勢で固定され、
前記電池収容部は、前記共通の一の方向に対して、平行又はテーパ状となる壁面を有する、
請求項又はに記載の携帯時計。
【請求項9】
前記電池の上面を、前記電池収容部の開口側から見て手前となる外周位置において支持する第1の電池押さえと、
前記電池の側面を、前記電池収容部の開口側から見て奥側となる位置において押圧する第2の電池押さえをさらに有する、
請求項又はに記載の携帯時計。
【請求項10】
延伸方向に対して斜めとなる直線状の先端が前記電池の下面に弾性的に接触する舌状の電極をさらに有する、
請求項乃至のいずれかに記載の携帯時計。
【請求項11】
前記第1の駆動機構及び前記第2の駆動機構は、それぞれ回路基板を有し、
前記第1の駆動機構の回路基板と、前記第2の駆動機構の回路基板は、FPC(Flexible Printed Circuit)により接続される、
請求項1乃至10のいずれかに記載の携帯時計。
【請求項12】
前記第1の駆動機構の回路基板及び前記第2の駆動機構の回路基板は、それぞれ接地端子を有する、
請求項11に記載の携帯時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、湾曲した文字板と、複数の指針軸とを有する携帯時計が知られている。
【0003】
下記特許文献1には、主針の指針軸と副針の指針軸が平行に設けられ、湾曲した文字板と副針が平行でない腕時計が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】スイス国特許発明第197634号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の腕時計では、湾曲したケースによって独特の美観が生み出されているものの、指針の回転面と盤面が平行でなく、不自然な印象を与える場合もあった。ここで、指針の回転軸の方向を盤面に従って傾斜させることは不可能ではないが、傾きの異なる回転軸に動力を伝達する機構を狭いスペースで構成することは極めて困難であり、仮に実現したとしても製品の製造コストが著しく増大してしまう。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、容易に製造でき、指針の回転軸の方向が盤面に従って傾斜した携帯時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく本出願において開示される発明は種々の側面を有しており、それら側面の代表的なものの概要は以下の通りである。
【0008】
(1)携帯時計は、第1の方向に回転軸を有する指針、輪列及び駆動源を含む第1の駆動機構と、前記第1の方向と異なる第2の方向に回転軸を有する指針、輪列及び駆動源を含む第2の駆動機構と、を有し、前記第1の駆動機構と前記第2の駆動機構は、別々に設けられる。
【0009】
(2)(1)において、前記第1の方向及び前記第2の方向は、それぞれ、前記指針の回転軸が設けられる位置における文字板の法線方向に沿った方向である、携帯時計。
【0010】
(3)(1)又は(2)において、前記第1の駆動機構及び前記第2の駆動機構は、それぞれ独立して、一体的に取付け及び取外しが可能である、携帯時計。
【0011】
(4)(3)において、互いに向きの異なる第1の取付面及び第2の取付面を備えた地板をさらに有し、前記第1の駆動機構は、その基準面が前記第1の取付面に接するように固定され、前記第2の駆動機構は、その基準面が前記第2の取付面に接するように固定される、携帯時計。
【0012】
(5)(4)において、前記地板は、少なくとも第1の凹部及び第2の凹部を有し、前記第1の凹部の底面が前記第1の取付面であり、前記第2の凹部の底面が前記第2の取付面である、携帯時計。
【0013】
(6)(5)において、前記第1の凹部及び前記第2の凹部は、共通の一の方向に対して、平行又はテーパ状となる壁面を有する、携帯時計。
【0014】
(7)(5)又は(6)において、前記第1の凹部と前記第2の凹部は、前記地板の互いに反対の面に設けられている、携帯時計。
【0015】
(8)(1)乃至(5)のいずれかにおいて、前記地板は、凹部である電池収容部をさらに有し、前記電池収容部に収容される電池は、前記携帯時計の厚さ方向に対し、傾斜した姿勢で固定される、携帯時計。
【0016】
(9)(6)又は(7)において、前記地板は、凹部である電池収容部をさらに有し、前記電池収容部に収容される電池は、前記携帯時計の厚さ方向に対し、傾斜した姿勢で固定され、前記電池収容部は、前記共通の一の方向に対して、平行又はテーパ状となる壁面を有する、携帯時計。
【0017】
(10)(8)又は(9)において、前記電池の上面を、前記電池収容部の開口側から見て手前となる外周位置において支持する第1の電池押さえと、前記電池の側面を、前記電池収容部の開口側から見て奥側となる位置において押圧する第2の電池押さえをさらに有する、携帯時計。
【0018】
(11)(8)乃至(10)のいずれかにおいて、延伸方向に対して斜めとなる直線状の先端が前記電池の下面に弾性的に接触する舌状の電極をさらに有する、携帯時計。
【0019】
(12)(1)乃至(11)のいずれかにおいて、前記第1の駆動機構及び前記第2の駆動機構は、それぞれ回路基板を有し、前記第1の駆動機構の回路基板と、前記第2の駆動機構の回路基板は、FPC(Flexible Printed Circuit)により接続される、携帯時計。
【0020】
(13)(12)において、前記第1の駆動機構の回路基板及び前記第2の駆動機構の回路基板は、それぞれ接地端子を有する、携帯時計。
【発明の効果】
【0021】
上記本発明の(1)の側面によれば、容易に製造でき、指針の回転軸の方向が盤面に従って傾斜した携帯時計が得られる。
【0022】
また、上記本発明の(2)の側面によれば、指針と文字板の干渉が防止され、指針のデザインや配置の自由度が向上した携帯時計が得られる。
【0023】
また、上記本発明の(3)の側面によれば、ユニット化された駆動機構を組み合わせることで容易に製造できる携帯時計が得られる。
【0024】
また、上記本発明の(4)の側面によれば、駆動機構の傾斜角度が正確に合わせられた携帯時計が得られる。
【0025】
また、上記本発明の(5)の側面によれば、薄型であり、組み立てが容易な携帯時計が得られる。
【0026】
また、上記本発明の(6)の側面によれば、射出成形が容易な地板を有する携帯時計が得られる。
【0027】
また、上記本発明の(7)の側面によれば、巻真と重畳する位置に副針を有する携帯時計が得られる。
【0028】
また、上記本発明の(8)の側面によれば、地板の湾曲に沿って地板の内部に電池を収めることができ、腕時計を薄型化することができる。
【0029】
また、本発明の(9)の側面によれば、地板の湾曲に沿って地板の内部に電池を収めることができ、腕時計を薄型化することができるだけでなく、さらに射出成形が容易な地板を有する携帯時計が得られる。
【0030】
また、本発明の(10)の側面によれば、傾斜した盤面を持つ携帯時計において、電池を安定して固定するとともに、電池との導通を確実にする携帯時計が得られる。
【0031】
又、本発明の(11)の側面によれば、傾斜した姿勢で収容された電池に対して電極が線接触し、安定した導通が得られるとともに、ねじれ方向の近さに起因する損傷を防止できる携帯時計が得られる。
【0032】
また、上記本発明の(12)の側面によれば、駆動機構が安定して固定され、湾曲面に容易に配置することのできる回路基板を有する携帯時計が得られる。
【0033】
また、上記本発明の(13)の側面によれば、駆動機構それぞれに安定した接地電位が供給された携帯時計が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施形態に係る腕時計の外観の一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る腕時計の断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る腕時計の内部構成を文字板側から示す平面図である。
図4】本発明の実施形態に係る第1の駆動機構の一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る腕時計の内部構成を裏蓋側から示す平面図である。
図6】本発明の実施形態に係る第2の駆動機構の一例を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る腕時計の内部構成を裏蓋側から示す平面図である。
図8図7のA−A線による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0036】
図1は、本発明の実施形態に係る腕時計1の外観の一例を示す図である。同図には、腕時計1の胴6内に配置された文字板2と、時刻を示す指針である時針3a及び分針3bと、第1の副針4a、第2の副針4b、第3の副針4c及び第4の副針4dとが示されている。ここで、第1の副針4aは12時方向に設けられる副針であり、第2の副針4bは6時方向に設けられる副針であり、第3の副針4cは3時方向に設けられる副針であり、第4の副針4dは9時方向に設けられる副針である。第1の副針4a、第2の副針4b、第3の副針4c及び第4の副針4dは、時刻の24時間表示や、クロノグラフ計時の表示に用いられる。また、胴6の側面には、腕時計1の使用者が種々の操作を行うための竜頭5a及びプッシュボタン5bが配置されている。
【0037】
腕時計1には、文字板2を覆うようにガラス等の透明材料により形成された風防が胴6に取り付けられている。また、風防の反対側においては裏蓋が胴6に取り付けられている。本明細書では、以降、腕時計1の風防が配置される方向を表側、裏蓋が配置される方向を裏側と呼ぶ。
【0038】
本実施形態に係る文字板2は、表側に向かって凸となるように緩やかに湾曲している。胴6も、文字板2と同様に湾曲しており、腕に装着された場合に腕の湾曲に沿う形状となっている。図1では、時針3a及び分針3bの回転軸Aと、第1の副針4aの回転軸Bと、第2の副針4bの回転軸Cと、第3の副針4cの回転軸Dと、第4の副針4dの回転軸Eとを示している。回転軸A、回転軸B、回転軸C、回転軸D及び回転軸Eは、それぞれ文字板2の法線方向を向いている。ここで、回転軸B及び回転軸Cは、それぞれ回転軸Aと平行でなく、回転軸Aと回転軸Bの間の角度と、回転軸Aと回転軸Cの間の角度はθである。角度θは、0°より大きく90°より小さい角度であればよく、本実施形態に係る腕時計1においては数度程度である。本明細書では、回転軸Aの方向を第1の方向、回転軸Bの方向を第2の方向と称する。なお、本実施形態に係る腕時計1では、回転軸Aと回転軸Bの間の角度と、回転軸Aと回転軸Cの間の角度は、共にθであるが、これらの角度は異なっていてもよい。回転軸Aと回転軸Bの間の角度と、回転軸Aと回転軸Cの間の角度とを異ならせることで、より多様なデザインを実現することができる。
【0039】
図1に示した腕時計1のデザインは一例である。ここで示したもの以外にも、例えば、胴6を丸型でなく角型にしてもよいし、角度θを増減するように文字板2の湾曲を変更してもよく、竜頭5aやプッシュボタン5bの有無、数、配置は任意である。また、本実施形態では、指針を時針3a及び分針3bの2本としているが、これに限定されず、秒針を追加してもよい。また、第1の副針4a、第2の副針4b、第3の副針4c及び第4の副針4dは、曜日、電池の残量、各種の表示を行う指針であってよい。副針の数は増減させてもよく、配置を変えてもよい。
【0040】
図2は、本発明の実施形態に係る腕時計1の断面図である。同図では、地板30に収められた第1の駆動機構10及び第2の駆動機構20と、第1の駆動機構10を表側から押さえつけるように固定する第1の支持板40と、第2の駆動機構20を裏側から押さえつけるように固定する第2の支持板41及び第3の支持板42が図示されている。第1の駆動機構10は、第1の指針軸11を有し、第2の駆動機構20は、第2の指針軸21を有する。
【0041】
本実施形態に係る腕時計1は、第1の方向に回転軸Aを有する指針、輪列及び駆動源を含む第1の駆動機構10と、第1の方向と異なる第2の方向に回転軸Bを有する指針、輪列及び駆動源を含む第2の駆動機構20と、を有する。ここで、第1の駆動機構10と第2の駆動機構20は、別々に設けられる。第1の駆動機構10は、時針3a及び分針3bの指針軸である第1の指針軸11を含み、第1の指針軸11は、輪列を介して駆動源によって駆動される。また、第2の駆動機構20は、第1の副針4aの指針軸である第2の指針軸21を含み、第2の指針軸21は、輪列を介して、第1の駆動機構10の駆動源とは独立した第2の駆動機構20の駆動源によって駆動される。第1の駆動機構10の指針(時針3a及び分針3b)と、第2の駆動機構20の指針(第1の副針4a)とは、同一盤面上に設けられる。すなわち、第1の駆動機構10の指針と第2の駆動機構20の指針は、複数の盤面にそれぞれ設けられる指針ではなく、同一盤面上に設けられて、同時にユーザの視界に入る指針である。
【0042】
このように、時針3a及び分針3bを駆動する第1の駆動機構10と、第1の副針4aを駆動する第2の駆動機構20とを別体で設けることで、向きの異なる複数の指針軸に動力を伝達する機構を設ける必要がなくなり、製造の容易性を確保しつつ、指針の回転軸の方向が盤面に従って傾斜した携帯時計を得ることができる。複数の指針軸について駆動機構を分離する構成は、複数の駆動源を搭載することが困難な機械式携帯時計においては採用が難しい構成であり、電子式携帯時計において特に有効な構成となる。
【0043】
前述のように、第1の方向(回転軸Aの方向)及び第2の方向(回転軸Bの方向)は、それぞれ、指針の回転軸が設けられる位置における文字板2の法線方向に沿った方向である。なお、図2では、文字板2を取り外した状態での断面図を示しているが、文字板2は地板30及び第1の支持板40を覆うように、地板30及び第1の支持板40の湾曲に沿って設けられる。第1の方向(回転軸Aの方向)及び第2の方向(回転軸Bの方向)は、それぞれ、指針の回転軸が設けられる位置における第1の支持板40の法線方向に沿った方向であるともいえる。ここで、法線方向に沿った方向とは、法線方向と一致する方向はもとより、法線方向を中心に一定の範囲内、例えば±5°の範囲内、に収まる方向をいうものとする。なお、当該一定の範囲は±5°以外の範囲であってもよく、指針と文字板の干渉回避や、指針を駆動する輪列の配置可能性といった観点から定められてよい。
【0044】
第1の方向及び第2の方向が、それぞれ、指針の回転軸が設けられる位置における文字板の法線方向に沿った方向であることにより、指針軸が文字板とおおよそ直交する方向に設けられることとなり、複数の指針はそれぞれ文字板に対しておおよそ平行に設けられることとなる。そのため、指針と文字板が干渉することが防止され、指針のデザインや配置の自由度が向上する。
【0045】
本実施形態に係る腕時計1において、第1の駆動機構10及び第2の駆動機構20は、それぞれ独立して、一体的に取付け及び取外しが可能である。第1の駆動機構10及び第2の駆動機構20は、それぞれ独立して駆動するユニット部品であり、本実施形態に係る腕時計1は、ユニット化された駆動機構を組み合わせることで容易に製造できる。この点について、後に図3〜6を参照して詳細に説明する。
【0046】
本実施形態に係る腕時計1は、互いに向きの異なる第1の取付面31a及び第2の取付面32aを備えた地板30を有する。第1の駆動機構10は、その基準面が第1の取付面31aに接するように固定される。ここで、第1の駆動機構10の基準面とは、第1の指針軸11が突出する側の反対側に広がる平坦面である。また、第2の駆動機構20は、その基準面が第2の取付面32aに接するように固定される。ここで、第2の駆動機構20の基準面とは、第2の指針軸21が突出する側に広がる平坦面である。
【0047】
本実施形態に係る地板30の第1の取付面31aと第1の駆動機構10の基準面及び第2の取付面32aと第2の駆動機構20の基準面は、それぞれ互いに平坦面であり、両面が接するように第1の駆動機構10及び第2の駆動機構20を地板30に取り付けることで、第1の駆動機構10及び第2の駆動機構20の傾斜角度を正確に合わせられる。ここで、第1の取付面31aと第2の取付面32aは、互いにθだけ傾いた面として地板30に設けられているため、第1の取付面31aと第1の駆動機構10の基準面とが接するように第1の駆動機構10を固定し、第2の取付面32aと第2の駆動機構20の基準面とが接するように第2の駆動機構20を固定することで、回転軸Aと回転軸B及び回転軸Cとの間の角度がそれぞれθとなる。仮に、このような第1の取付面31a及び第2の取付面32aを設けることなく、組み立て工程において第1の駆動機構10及び第2の駆動機構20の取付け角度を逐一調整する場合、第1の指針軸11及び第2の指針軸21が文字板2(又は第1の支持板40)に対してそれぞれ直交し、回転軸Aと回転軸B及び回転軸Cとの間の角度がそれぞれθとなるように、第1の駆動機構10及び第2の駆動機構20を取付けなければならず、組み立てが煩雑となる。この点、本実施形態に係る腕時計1では、第1の駆動機構10及び第2の駆動機構20の取付けに際して取付け角度の調整が不要であり、組み立てが容易である。なお、第1の取付面31aと第1の駆動機構10の基準面及び第2の取付面32aと第2の駆動機構20の基準面は、それぞれ平坦面でなくてもよく、互いにかみ合うように凹凸が設けられた面であってもよい。
【0048】
本実施形態に係る地板30は、少なくとも第1の凹部31及び第2の凹部32を有し、第1の凹部31の底面が第1の取付面31aであり、第2の凹部32の底面が第2の取付面32aである。第1の駆動機構10は、地板30の第1の凹部31に収めるようにして取付けられ、第2の駆動機構20は、第2の凹部32に収めるようにして取付けられる。第1の駆動機構10を第1の凹部31に収めることで、第1の駆動機構10の基準面と第1の凹部31の底面(第1の取付け面31a)が接することとなる。また、第2の駆動機構20を第2の凹部32に収めることで、第2の駆動機構20の基準面と第2の凹部32の底面(第2の取付け面32a)が接することとなる。
【0049】
第1の駆動機構10及び第2の駆動機構20を、それぞれ、第1の凹部31及び第2の凹部32に収めることで、第1の駆動機構10及び第2の駆動機構20を平坦な地板に取り付ける場合よりも厚みが抑えられ、腕時計1全体の厚みを抑えることができる。また、第1の凹部31及び第2の凹部32によって、地板30における第1の駆動機構10及び第2の駆動機構20の取付け位置と取付け方向が示されることとなり、組み立てが容易となる。
【0050】
第1の凹部31及び第2の凹部32は、共通の一の方向に対して、平行又はテーパ状となる壁面を有する。より具体的には、第1の凹部31は、第1の方向(回転軸Aの方向)に対して、テーパ状となる第1の壁面31bを有する。また、第2の凹部32は、第1の方向(回転軸Aの方向)に対して、テーパ状となる第2の壁面32bを有する。第1の壁面31bは表側に向かって広がるテーパを有し、第2の壁面32bは裏側に向かって広がるテーパを有している。
【0051】
仮に、第1の凹部31の壁面と第2の凹部32の壁面が、その取付面(第1の取付面31a及び第2の取付面32a)に対して垂直に設けられる場合、地板30を射出成形により製造することを考えると、成形された地板30を型から抜くことが難しくなり製造困難となる。この点、本実施形態に係る地板30のように、第1の凹部31及び第2の凹部32が、共通の一の方向に対して、平行又はテーパ状となる壁面を有することで、成形された地板30を当該一の方向に型から抜くことができるから、地板30を射出成形で製造することができ、地板30の生産性が向上し、より短時間に、安価に地板30を製造することができる。また、第1の凹部31及び第2の凹部32が、共通の一の方向に対して、いわゆる抜き勾配をもったテーパ状の壁面を有することで、射出成形がより容易となる。
【0052】
本実施形態に係る地板30において、第1の凹部31と第2の凹部32は、地板30の互いに反対の面に設けられる。より具体的には、第1の凹部31は地板30の表側に設けられ、第2の凹部32は地板30の裏側に設けられる。この点について、図3を参照してより詳しく説明する。
【0053】
図3は、本発明の実施形態に係る腕時計1の内部構成を文字板2側から示す平面図である。同図では、3時方向を上に向けた腕時計1の内部構造を文字板2側から図示している。第1の駆動機構10は、巻真12を有する。巻真12は、主に第1の指針軸11に関する時刻合わせに用いられる。図3においては図示していないが、巻真12の先端には、図1に示す竜頭5aが取付けられる。
【0054】
図3に示すように、第1の駆動機構10は巻真12を有し、巻真12は外側に突出する。また、図2に示す第1の支持板40は、第1の駆動機構10を均等に押さえるため、平面視において、第1の駆動機構10の外形から外側にはみ出る場合がある。ここで、仮に、全ての駆動機構を地板30の同じ側から取り付けることとすると、各駆動機構の外形から外側に突出したり、はみ出たりする部材との干渉を避けるため、駆動機構間に余裕を持たせて配置する必要が生じて、腕時計を大きくしなければならなくなる。この点、本実施形態に係る腕時計1のように、第1の凹部31が表側に設けられ、第2の凹部32が裏側に設けられて、第1の駆動機構10を表側から取付け、第2の駆動機構20を裏側から取り付けるようにすることで、駆動機構間の距離を最小にすることができ、腕時計1をコンパクトにすることができる。
【0055】
図4は、本発明の実施形態に係る第1の駆動機構10の一例を示す図である。第1の駆動機構10は、第1の指針軸11、巻真12、第1のステップモータ13及び第1の輪列14を有する。第1の指針軸11は第1の方向に回転軸Aを有し、時針3a及び分針3bの指針軸である。また、第1の輪列14は、第1の駆動機構10が有する輪列であり、第1のステップモータ13は、第1の駆動機構10の駆動源である。第1のステップモータ13の駆動力は、第1の輪列14により第1の指針軸11に伝達される。
【0056】
第1の駆動機構10を独立したユニットとすることで、他の時計について駆動機構を転用することができる。また、第1の駆動機構10単体で動作確認を行って、製品に組み込む前に不良品を排除することができるため、製品歩留まりを効率良く向上させることができる。
【0057】
図5は、本発明の実施形態に係る腕時計1の内部構成を裏蓋側から示す平面図である。同図は、3時方向を上に向けた腕時計1の内部構造を裏蓋側から図示している。同図では、第2の駆動機構20の配置を示すため、第2の支持板41及び第3の支持板42は図示していない。本実施形態において、第2の駆動機構20は、12時方向、3時方向及び6時方向にそれぞれ配置される。すなわち、第2の駆動機構20は、第1の副針4a、第2の副針4b、第3の副針4c及び第4の副針4dに対応する位置にそれぞれ配置される。また、同図には、第1の駆動機構10及び第2の駆動機構20の電力源となる電池が収容される電池収容部26が図示されている。電池収容部26は、第2の駆動機構20と同じ角度又は近似する角度で設けられている。なお、本実施形態に係る腕時計1では、電池収容部26に収容される電池は一次電池であるが、これを二次電池として、さらに太陽電池により発電できるようにしてもよい。また、本実施形態では電池収容部26に収容される電池はボタン型電池であり、電池は、電池収容部26に収容された状態でその表面の刻印が視認できる向きに収容される。通常、ボタン型電池の刻印は正極面になされるので、収容された電池は図5の奥側(表側)が負極となり、同図の手前側(裏側)及び側面が正極となる。
【0058】
電池収容部26の奥側には、負極電極26aが設けられる。負極電極26aは、電池収容部26に収容された電池の負極面に接触することにより電気的な接続を取るものであるが、本実施形態では、舌状の金属板を、電池収容部26の奥側から手前側に向けて角度をつけて折り曲げて形成されており、電池収容部26に電池を収容した際に、その負極に押し付けられて弾性的に接触する。そして、負極電極26aの先端は、負極電極26aの延伸方向に対して垂直ではなく、斜めとなる直線状である。
【0059】
この理由は、本実施形態のように、腕時計1自体が湾曲しているため、電池が腕時計1の厚さ方向(表側と裏側を結ぶ方向)に対し、傾斜した姿勢で電池収容部26に収容されることにある。図5に示した例では、電池は、概ね6時と9時の間に配置されるが、図1より明らかな通り、この位置では電池は表側から見て、6時方向が下がるように傾斜することになる。そして、負極電極26aの延びる向きは、図5に示されるように、必ずしも電池の傾斜方向と一致せず、また負極電極26aは、製造の都合上、手前側に向けて(すなわち、腕時計1の厚さ方向裏側に向けて)折り曲げられ、電池の傾斜方向に合致したものではない。そのため、単純に負極電極26aの先端を、その延伸方向に対し垂直となる直線形状とすると、負極電極26aの先端は電池の負極面と、その角で点接触し、接触が不安定であったり、負極電極26aにねじれ方向の力が作用することによる損傷が生じたりすることが懸念される。そのため、負極電極26aの先端を適切な角度で斜めとなる直線状に加工し、負極電極26aが電池の負極と接触した際に、負極電極26aの先端が線接触するようにしている。なお、本実施形態では、負極電極26aの先端は、12時−6時方向と平行とされているが、これは、電池の傾斜方向が、表側から見て6時方向に下がる向きであるためである。
【0060】
第1の駆動機構10及び第2の駆動機構20は、それぞれ第1の回路基板15及び第2の回路基板22を有し、第1の回路基板15と、第2の回路基板22は、FPC(Flexible Printed Circuit)23により接続される。ここで、第1の回路基板15及び第2の回路基板22は、いわゆるリジット基板であり、剛性を有し、力を加えてもほとんど歪まない。一方、FPC23は可撓性を有し、折り曲げることが出来る。第1の回路基板15、第2の回路基板22及びFPC23は、一体でいわゆるリジットフレキシブル基板(rigid flexible printed wiring board)を構成する。
【0061】
仮に、一枚のリジット基板により第1の駆動機構10及び第2の駆動機構20の回路基板を構成することとすると、湾曲した胴6の内部に隙間なく回路基板を収めることが困難となり、胴6の内部に活用されない空間が生じてしまい、時計の厚みが不必要に増してしまう。一方、第1の回路基板15と第2の回路基板22の全体を可撓性の回路で構成すると、互いに傾斜して配置される第1の駆動機構10及び第2の駆動機構20が安定して固定されなくなり、組み立てが煩雑となる。この点、本実施形態に係る腕時計1のように、FPC23で接続された第1の回路基板15と第2の回路基板22を用いることで、湾曲した胴6内に回路基板を隙間無く配置でき、第1の駆動機構10及び第2の駆動機構20をそれぞれ正しい傾斜角度で安定して固定することができる。
【0062】
第1の回路基板15及び第2の回路基板22は、それぞれ接地端子24を有する。接地端子24が駆動機構毎、すなわちステップモータ毎に複数箇所に設けられることで、駆動機構それぞれに安定した接地電位が供給される。これにより、第1の回路基板15及び第2の回路基板22に設けられたモータ駆動ICへの供給電位が安定し、静電気等に対する耐性が向上する。また、第1の回路基板15及び第2の回路基板22がそれぞれ有する接地端子24の裏側(接地端子24が設けられる面と対向する面側)には、ステップモータへ信号を送る接続端子が設けられる(不図示)。接地端子24による接地は、第2の支持板41が地板30にネジ止めされることで確保され、この際に回路基板がステップモータに押し付けられ、ステップモータと接続端子の接続も確保されることとなる。このような構成により、ステップモータと回路基板の接続及び接地の確保を同時に行うことができる。
【0063】
図6は、本発明の実施形態に係る第2の駆動機構20の一例を示す図である。第2の駆動機構20は、第2の指針軸21、第2のステップモータ27及び第2の輪列28を有する。第2の指針軸21は第2の方向に回転軸Bを有し、第1の副針4aの指針軸である。また、第2の輪列28は、第2の駆動機構20が有する輪列であり、第2のステップモータ27は、第2の駆動機構20の駆動源である。第2のステップモータ28の駆動力は、第2の輪列28により第2の指針軸21に伝達される。
【0064】
第2の駆動機構20を独立したユニットとすることで、他の時計について駆動機構を転用することができる。また、第2の駆動機構20単体で動作確認を行って、製品に組み込む前に不良品を排除することができるため、製品歩留まりを効率良く向上させることができる。
【0065】
本実施形態に係る腕時計1は、以下の工程により組み立てられる。はじめに、地板30の第1の凹部31に第1の駆動機構10を収める。そして、第1の駆動機構10を押さえるように、第1の支持板40を地板30に対して仮止めする。ここで、第1の支持板40はフックを有してよく、当該フックを地板30に掛けることで仮止めが行なわれてよい。これにより、第1の駆動機構10が第1の凹部31から脱落することがなくなり、地板30を裏返して次の作業に移ることができる。
【0066】
次に、地板30の第2の凹部32に第2の駆動機構20を収める。そして、第1の回路基板15、第2の回路基板22及びFPC23を取付け、それらを覆って、第2の駆動機構20を押さえるように、第2の支持板41を地板30にネジ止めする。その後、仮止めされていた第1の支持板40を地板30にネジ止めする。また、第2の支持板41を覆うように、内部構造を隠す第3の支持板42を地板30にネジ止めする。
【0067】
図7は、本発明の実施形態に係る腕時計1の内部構成を裏蓋側から示す平面図である。同図では、電池収容部26に電池26bを収容し、第2の支持板41及び第3の支持板42を取り付けた状態における内部構成を裏蓋側から示している。ただし、図7では第2の支持板41は第3の支持板42に隠れて見えない。また、図8は、図7のA−A線による断面図である。
【0068】
電池26bは、前述したとおり、表側から見て6時方向が下がるように傾いた状態で電池収容部26内に配置される。この時の電池26bの平坦面(負極面又は正極面)に対する垂線は、概ね回転軸Cと平行である。電池26bが傾斜して配置されることで、地板30の湾曲に沿って地板30の内部に電池26bを収めることができ、腕時計1を薄型化することができる。例えば、本実施形態のように、地板30が12時−6時方向について湾曲しており、第1の駆動機構10を腕時計1の3時方向から9時方向にかけてまたがるように設ける場合においては、電池26bを第1の駆動機構10と干渉しない位置に配置することが、腕時計1の薄型化の観点からは望ましいが、かかる位置は地板30がその湾曲により、腕時計1の厚さ方向に対し傾斜することになるから、電池26bを地板30の傾斜に合わせて傾いた状態で配置することにより、腕時計1が薄型化されることになる。さらに、本実施形態のように、腕時計1の12時方向及び6時方向に第2の駆動機構20が設けられている場合には、電池26bは、これら第2の駆動機構とも干渉しない位置に配置することが望ましく、その配置は、12時と3時の間の位置、3時と6時の間の位置、6時と9時の間の位置及び9時と12時の間の位置のいずれかとなるが、本実施形態では、6時と9時の間の位置としている。
【0069】
電池26bは、電池収容部26内に第1の電池押さえ26c及び第2の電池押さえ26dにより脱離することが無いよう弾性的に固定される。第1の電池押さえ26cは、電池26bの正極面の外周の一部を正極面側から支持する金属板であり、本実施形態では、図7で見て電池26bの左上側(すなわち、電池26bの中心から見て4時から5時の方向)を支持している。第2の電池押さえ26dは、電池26bの側面を第1の電池押さえ26cに向かう向きに弾性的に押し付ける。第2の電池押さえ26dは、概ね、電池26bの中心に対して第1の電池押さえ26cの反対側に設けられることが望ましく、本実施形態では、図7で見て電池26bの右下側(すなわち、電池26bの中心から見て10時から11時の方向)に設けられている。ここでは、電池押え26dは適宜の形状の金属板に曲げ加工を施すことにより作成されており、腕時計1の厚さ方向に平行な舌状の金属板が、その弾性により、図中白抜き矢印に示した方向に電池26bの側面を押圧するものである。電池押え26dには、電池26bの脱離を防ぐために、部分的に電池26bの正極面にひっかかるように突出す突起26gが設けられている。この第1の電池押さえ26c及び第2の電池押さえ26dの配置は、電池26bを安定して固定するとともに、正極における導通を確実にするよう工夫されており、その配置については後述する。
【0070】
電池収容部26は、地板30に設けられた凹部であり、共通の一の方向に対して、平行又はテーパ状となる収容部壁面26eを有する。ここでいう共通の一の方向は、前述した、第1の凹部31及び第2の凹部32における共通の一の方向と同一であり、本実施形態では、第1の方向(回転軸Aの方向)を指している。したがって、電池収容部26は、第1の方向(回転軸Aの方向)に対して、テーパ状となる収容部壁面26eを有する。電池収容部26は、裏側に向かって開口しているため、収容部壁面26eがテーパを有する場合には、その向きは、電池収容部26が裏側に向かって広がる向きとなる。このテーパは、先の第1の凹部31及び第2の凹部32の場合と同じく、地板30を射出成型する際のいわゆる抜き勾配であり、電池収容部26が、共通の一の方向に対して、テーパ状の収容部壁面26eを有することで、地板30の射出成形がより容易となる。
【0071】
電池収容部26は、収容部底面26fを有する。電池26bは、その負極面(平坦面)が収容部底面26fに接するように固定される。電池26bの負極面及び収容部底面26fは、それぞれ互いに平坦面であり、電池26bは電池収容部26に収容されるにあたり、その負極面が収容部底面26fに接するように固定される。そのため、電池26bの傾斜角度は収容部底面26fの傾斜角度に一致する。この時、第2の電池押さえ26dは、電池26bの傾斜に対し、裏側(電池収容部26の開口側)から見て奥側となる位置(表側から見て、手前となる位置)において、電池26bの側面を押圧し、第1の電池押え26cは、電池26bの傾斜に対し、裏側から見て手前となる位置(表側から見て、奥側となる位置)において、電池26bの正極を支持する位置に配置することが望ましい。
【0072】
この理由を、図8を参照して説明する。同図に示すように、第2の電池押え26dは、電池26bを、裏側から見て奥側となる位置から、白抜き矢印で示すように横方向に押圧する。このとき、収容部底面26fは、押圧方向に対し、裏側から見て手前に上がるように傾斜しているから、この押圧力は、電池26bを裏側に向けて押し上げる作用を持つ。すなわち、電池26bの第2の電池押え26dと反対側の位置には、裏側に向かって、電池収容部26から抜け出そうとする方向の力が働くが、かかる位置には、第1の電池押え26cが設けられているから、結局、第2の電池押え26dによる押圧力は、電池26bを第1の電池押え26cに強く押し付け、電池26bを安定して固定する働きをもつことになる。さらに、これにより、電池26bの正極は、第1の電池押え26cと、第2の電池押え26dの2カ所において強い力で接触するから、第1の電池押え26cと第2の電池押え26dの両方を電池26bに対する正極端子として使用することで、導通を確実に取ることができる。
【0073】
本実施形態の例では、裏側から見て電池26bの12時の位置が最も奥側となるから、第2の電池押え26dを配置するべき位置は、電池26bの12時側の半周であり、9時の位置から12時の位置を通り、3時の位置までの外周である。第2の電池押え26dの位置が12時の位置により近いほど、電池26bを安定して固定し、正極との導通を確実に取る効果は高くなる。また、第1の電池押え26cを配置するべき位置は、電池26bの6時側の半周であり、3時の位置から6時の位置を通り、9時の位置までの外周である。本実施形態では、先に述べたように、第2の電池押え26dは10時から11時の位置に、第1の電池押え26cはその反対側となる4時から5時の位置に設けられている。
【0074】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、この実施形態に示した具体的な構成は一例として示したものであり、本発明の技術的範囲をこれに限定することは意図されていない。例えば、本実施形態に係る腕時計1において、胴6や文字板2等は、滑らかに湾曲しているが、文字板2は鈍角に折れ曲がっていてもよい。その場合、文字板2は単一の盤面上に複数の平坦面を有することとなり、それぞれの平坦面に指針が設けられてよい。また、本実施形態として腕時計を例示したが、懐中時計等その他の携帯時計についても同様の構成が適用できる。当業者は、これら開示された実施形態を適宜変形してもよく、本明細書にて開示される発明の技術的範囲は、そのようになされた変形をも含むものと理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8