特許第6603334号(P6603334)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6603334-エチニル誘導体 図000021
  • 特許6603334-エチニル誘導体 図000022
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603334
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】エチニル誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/04 20060101AFI20191028BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20191028BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20191028BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20191028BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20191028BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20191028BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   C07D401/04CSP
   A61K31/4439
   A61P43/00 111
   A61P25/24
   A61P25/04
   A61P25/16
   A61P1/04
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-561662(P2017-561662)
(86)(22)【出願日】2016年5月31日
(65)【公表番号】特表2018-517695(P2018-517695A)
(43)【公表日】2018年7月5日
(86)【国際出願番号】EP2016062202
(87)【国際公開番号】WO2016193234
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2017年11月27日
(31)【優先権主張番号】15170401.2
(32)【優先日】2015年6月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ヤーシュケ,ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】リンデマン,ローター
(72)【発明者】
【氏名】リッチ,アントーニオ
(72)【発明者】
【氏名】フィエイラ,エリック
【審査官】 早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−523854(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/035823(WO,A2)
【文献】 特表2004−517947(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/026880(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/060384(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/004007(WO,A1)
【文献】 特表2014−514315(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/056710(WO,A1)
【文献】 特表2014−512401(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/012851(WO,A1)
【文献】 米国特許第03549655(US,A)
【文献】 ALAGILLE, D. et al.,Potent mGluR5 antagonists: Pyridyl and thiazolyl-ethynyl-3,5-disubstituted-phenyl series,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2011年,21(11),pp. 3243-3247
【文献】 BACH, P. et al.,Metabotropic glutamate receptor 5 modulators and their potential therapeutic applications,Expert Opinion on Therapeutic Patents,2007年,17(4),pp. 371-384
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化12】

[式中、
は、水素又はFであり;
nは、1又は2である]
で示される化合物又はその薬学的に許容し得る酸付加塩。
【請求項2】
以下である、請求項1に記載の式Iで示される化合物:
(1S,5R)−2−メチル−4−(5−(フェニルエチニル)ピリジン−2−イル)−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン
(1R,5S)−2−(5−((4−フルオロフェニル)エチニル)ピリジン−2−イル)−4−メチル−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン
(1R,5S)−2−(5−((3−フルオロフェニル)エチニル)ピリジン−2−イル)−4−メチル−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン、又は
(1R,5S)−2−(5−((2,5−ジフルオロフェニル)エチニル)ピリジン−2−イル)−4−メチル−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン。
【請求項3】
以下である、化合物:
(−)−(1R,5S)−2−メチル−4−(5−(フェニルエチニル)ピリジン−2−イル)−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン
(+)−(1S,5R)−2−[5−(3−フルオロ−フェニルエチニル)−ピリジン−2−イル]−4−メチル−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン
(+)−(1S,5R)−2−[5−(4−フルオロ−フェニルエチニル)−ピリジン−2−イル]−4−メチル−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン、又は
(+)−(1S,5R)−2−[5−(2,5−ジフルオロ−フェニル−エチニル)−ピリジン−2−イル]−4−メチル−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン。
【請求項4】
治療活性物質としての使用のための、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の式Iで示される化合物の調製プロセスであって、以下の変法:
式II:
【化13】

[式中、Xは、臭素又はヨウ素から選択されるハロゲン原子である]
で示される化合物を、式III:
【化14】

で示される好適なアリール−アセチレンと反応させて、式I:
【化15】

[式中、置換基R及びnは、請求項1に定義されたとおりであり、そして、Wは水素又はトリアルキルシリルもしくはアリールジアルキルシリル基である]
で示される化合物を式Iに描写される通りの絶対立体化学を有するエナンチオピュアな形態で形成するか、又はラセミ形態のIIを使用して、続いてIのキラル分離によって光学的に純粋なエナンチオマーを生成し;そして
所望であれば、得られた化合物を薬学的に許容し得る酸付加塩に変換することを含むプロセス。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物と治療活性担体とを含む、医薬組成物。
【請求項7】
不安症及び疼痛、鬱病、パーキンソン病、並びに胃食道逆流疾患(GERD)の処置のための、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
不安症及び疼痛、鬱病、パーキンソン病、並びに胃食道逆流疾患(GERD)の処置のための医薬の製造のための、請求項1〜3のいずれか一項に記載される通りの化合物の使用。
【請求項9】
不安症及び疼痛、鬱病、パーキンソン病、並びに胃食道逆流疾患(GERD)の処置における使用のための、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式I:
【化1】

[式中、
は、水素又はFであり;
nは、1又は2である]
で示されるエチニル誘導体又はその薬学的に許容し得る酸付加塩に関する。
【0002】
好ましい化合物は、(Rが水素、3−フルオロ、4−フルオロ又は2,5−ジフルオロである、化合物である。
【0003】
今般、驚くべきことに、一般式Iで示される化合物が、代謝型グルタミン酸受容体アンタゴニスト(NAM=陰性アロステリックモジュレーター)であることが見いだされた。
【0004】
類似の主要コアを有する化合物は、一般に、mGluR5受容体の陽性アロステリックモジュレーターとして記載されている。驚くべきことに、極めて強力なmGluR5アンタゴニストがmGluR5陽性アロステリックモジュレーターの代わりに得られ、これが陽性アロステリックモジュレーターと比較した場合に全く反対の薬理学を有することが見いだされた。
【0005】
mGluR5陽性アロステリックモジュレーター(PAM)は、一定濃度のグルタメートの存在下で、増加した受容体活性(Ca2+動員)を導くが、一方で、アロステリックアンタゴニスト(陰性アロステリックモジュレーター、NAM)は、受容体活性化の低下を導く。
【0006】
式Iで示される化合物は、有益な治療特性を有することによって識別される。これらを、不安症及び疼痛、鬱病、脆弱X症候群、自閉スペクトラム障害、パーキンソン病、並びに胃食道逆流疾患(GERD)の処置において使用することができる。
【0007】
中枢神経系(CNS)において、刺激の伝達は、ニューロンよって放出される神経伝達物質と神経受容体との相互作用によって起こる。
【0008】
グルタメートは、脳における主要な興奮性神経伝達物質であり、種々の中枢神経系(CNS)機能においてユニークな役割を担っている。グルタミン酸依存性の刺激受容体は、2つの主要なグループに分類されている。第一の主要グループ(すなわち、イオンチャンネル型受容体)は、リガンド制御型イオンチャネルを形成する。代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)は、第二の主要なグループに属し、さらにGタンパク質共役型受容体のファミリーに属する。
【0009】
現在のところ、これらのmGluRの8つの異なるメンバーが知られており、このうち幾つかには、サブタイプさえある。それらの配列相同性、シグナル伝達機構及びアゴニスト選択性に従って、これら8つの受容体を、3つのサブグループに再分割することができる:
【0010】
mGluR1及びmGluR5は、グループIに属し、mGluR2及びmGluR3は、グループIIに属し、そして、mGluR4、mGluR6、mGluR7及びmGluR8は、グループIIIに属する。
【0011】
第一グループに属する代謝型グルタミン酸受容体の陰性アロステリックモジュレーターを、急性及び/又は慢性神経障害、例えばパーキンソン病、脆弱X症候群、自閉性障害、認知障害及び記憶欠損だけでなく、慢性及び急性痛、並びに胃食道逆流疾患(GERD)の治療又は予防のために使用することができる。
【0012】
これと関連した他の処置可能な適応症は、バイパス術又は移植によって引き起こされる脳機能不全、脳への血液供給不足、脊髄損傷、頭部損傷、妊娠によって引き起こされる低酸素、心停止及び低血糖である。さらなる処置可能な適応症は、虚血、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、エイズによって引き起こされる認知症、眼損傷、網膜症、特発性パーキンソニズム又は薬物によって引き起こされるパーキンソニズムだけでなく、グルタミン酸欠乏機能につながる病状、例えば、筋痙攣、痙攣、片頭痛、尿失禁、ニコチン中毒、アヘン中毒、不安症、嘔吐、ジスキネジア及び鬱病などである。
【0013】
完全又は部分的にmGluR5によって媒介される障害は、例えば、神経系の急性、外傷性及び慢性変性過程、例えばアルツハイマー病、老年認知症、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症及び多発性硬化症、精神疾患、例えば統合失調症及び不安症、鬱病、疼痛並びに薬物依存である(Expert Opin. Ther. Patents (2002), 12, (12))。
【0014】
選択的mGluR5アンタゴニストは、不安症及び疼痛、鬱病、脆弱X症候群、自閉スペクトラム障害、パーキンソン病、並びに胃食道逆流疾患(GERD)などのmGluR5受容体活性化の低下が望まれる障害の処置に特に有用である。
【0015】
本発明の目的は、式Iで示される化合物及びそれらの薬学的に許容し得る塩、薬学的に活性な物質としての上記の化合物、並びにそれらの製造である。本発明のさらなる目的は、本発明に係る化合物に基づく医薬及びそれらの生産、並びにmGluR5受容体(NAM)媒介性障害(不安症及び疼痛、鬱病、脆弱X症候群、自閉スペクトラム障害、パーキンソン病、並びに胃食道逆流疾患(GERD)である)の制御又は予防における、及びそれぞれ対応する医薬の生産のための該化合物の使用である。
【0016】
本発明の化合物は、一般に、参考文献1(国際公開公報第2011128279号)にmGluR5受容体の陽性アロステリックモジュレーターとして記載されている。最も類似した例示的化合物は、5員環または6員環に連結されている。驚くべきことに、より小さい環サイズの4員環を有しかつ二環式環の絶対立体化学(1R,5S)を備えた化合物が、極めて強力なmGluR5アンタゴニストであり、これが陽性アロステリックモジュレーターについて国際公開公報第2011128279号に記載されているものとは全く反対の薬理学を有することが見いだされた。
【0017】
本発明の1つの実施態様は、式Iで示される化合物、例えば、以下である:
(1S,5R)−2−メチル−4−(5−(フェニルエチニル)ピリジン−2−イル)−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン
(1R,5S)−2−(5−((4−フルオロフェニル)エチニル)ピリジン−2−イル)−4−メチル−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン
(1R,5S)−2−(5−((3−フルオロフェニル)エチニル)ピリジン−2−イル)−4−メチル−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン、又は
(1R,5S)−2−(5−((2,5−ジフルオロフェニル)エチニル)ピリジン−2−イル)−4−メチル−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン。
【0018】
陽性アロステリックモジュレーターと陰性アロステリックモジュレーターとの間の主な違いは、図1において確認することができる。mGluR5陽性アロステリックモジュレーター(PAM)は、一定濃度のグルタメートの存在下で、増加した受容体活性(Ca2+動員)を導くが、一方で、アロステリックアンタゴニスト(陰性アロステリックモジュレーター、NAM)は、受容体活性化の低下を導く。図1における受容体に対する親和性は、PAMについて約10−7Mであり、そして、NAMについて10−7M〜10−8Mの間である。これらの値はまた、放射性リガンド(=MPEP)を置換する結合アッセイを使用して測定することができる(アッセイの説明を参照のこと)。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】mGluR5陽性アロステリックモジュレーター(PAM)とmGluR5アンタゴニスト(陰性アロステリックモジュレーター=NAM)との比較
図2】ラットVogel型コンフリクト飲水試験における化合物「実施例2」の活性
【0020】
該化合物によって対処できる適応症は、同じではない。mGluR5−NAMは、過剰な受容体活性の低下が望まれる適応症、例えば、不安症、疼痛、脆弱X症候群(Fragile-X)、自閉スペクトラム障害、及び胃食道逆流疾患に有益である。一方、mGluR5 PAMは、減少した受容体活性の正常化が望まれる適応症、例えば、精神疾患、癲癇、統合失調症、アルツハイマー病及び関連した認知障害、並びに結節性硬化症に有用である。
【0021】
この違いは、例えば、ラットVogel型コンフリクト飲水試験(rat Vogel conflict drinking test)などの不安症動物モデルで実際に示すことができ、ここでは、実施例1の化合物は0.1mg/Kgの最小有効用量で抗不安活性を示すが、mGluR−PAMはこの動物モデルでは活性を示すと期待されない(図2を参照のこと)。
【0022】
生物学的アッセイ及びデータ:
細胞内Ca2+動員アッセイ
ヒトmGlu5a受容体をコードするcDNAを安定にトランスフェクトしたモノクローナルHEK−293細胞株を生成した;mGlu5陽性アロステリックモジュレーター(PAM)を用いた試験については、低い受容体発現レベル及び低い構成的受容体活性を有する細胞株を選択して、アゴニスト活性対PAM活性の差別化を可能にした。細胞を、標準プロトコル(Freshney, 2000)に従い、1mMグルタミン、10%(vol/vol)加熱不活性化仔ウシ血清、ペニシリン/ストレプトマイシン、50μg/mLハイグロマイシン及び15μg/mLブラストサイジンを補充した、高グルコースのダルベッコ変法イーグル培地で培養した(細胞培養試薬及び抗生物質は全て、Invitrogen(Basel, Switzerland)製である)。
【0023】
実験の約24時間前、ポリ−D−リシンでコートした黒色/透明底の96ウェルプレートに、5×10細胞/ウェルを播種した。細胞に、ローディングバッファー(1×HBSS、20mM HEPES)中の2.5μM Fluo-4AMを37℃で1時間ロードし、ローディングバッファーで5回洗浄した。細胞をFunctional Drug Screening System 7000(Hamamatsu, Paris, France)に移し、試験化合物の11種の半対数段階希釈液を37℃で加え、オンラインで蛍光を記録しながら、細胞を10〜30分間インキュベートした。このプレインキュベーション工程に続いて、オンラインで蛍光を記録しながら、アゴニストのL−グルタメートをEC20に相当する濃度(典型的には、80μM前後)で細胞に加えた;細胞の応答性の毎日の変動を説明するために、グルタメートの総用量反応曲線の記録によって各実験の直前にグルタメートのEC20を決定した。
【0024】
応答を、蛍光増加ピークから基底値(すなわち、L−グルタミン酸の添加なしの蛍光)を差し引いたものとして測定し、L−グルタメートの飽和濃度で得られた最大刺激効果に対して正規化した。グラフを、Levenburg Marquardtアルゴリズムを使用してデータを反復的にプロットする曲線当て嵌めプログラムであるXLfitを使用して最大刺激%でプロットした。使用した単一部位競合分析式(single site competition analysis equation)は、y=A+((B−A)/(1+((x/C)D)))[式中、yは、最大刺激効果%であり、Aは、最小yであり、Bは、最大yであり、Cは、EC50であり、xは、競合化合物の濃度のlog10であり、そして、Dは、曲線の傾き(ヒル係数)である]であった。これらの曲線から、EC50(最大刺激の半分に達した濃度)、ヒル係数、及びL−グルタメートの飽和濃度で得られた最大刺激効果の最大応答(%)を計算した。
【0025】
PAM試験化合物とのプレインキュベーションの間(すなわち、EC20濃度のL−グルタメートの適用前)に得られた陽性シグナルはアゴニスト活性を示しており、このようなシグナルの非存在は、アゴニスト活性がないことを実証していた。EC20濃度のL−グルタメートの添加後に観察されたシグナルの低下は、試験化合物の阻害活性を示していた。
【0026】
以下の実施例のリストに、EC50値が100nM以下である全ての化合物の対応する結果を示す。
国際公開公報第2011128279号=参照1
【0027】
【表1】
【0028】
MPEP結合アッセイ:
結合実験については、Schlaeger及びChristensen[Cytotechnology 15:1-13 (1998)]によって記載されている手順を使用して、ヒトmGlu5a受容体をコードするcDNAを、EBNA細胞に一過性にトランスフェクトした。細胞膜ホモジェネートをアッセイ当日まで−80℃で保存した。アッセイ当日、これらを解凍し、pH7.4の結合バッファー(15mM Tris−HCl、120mM NaCl、100mM KCl、25mM CaCl、25mM MgCl)に再懸濁してポリトロナイズ(polytronise)し、最終アッセイ濃度を1ウェル当たり20μgのタンパク質とした。
【0029】
これらの膜(総容量200μl)に12種の濃度(0.04〜100nM)の[H]MPEPを4℃で1時間加えることによって、飽和等温線を決定した。一定濃度の[H]MPEP(2nM)で競合実験を実施し、そして、11種の濃度(0.3〜10,000nM)を使用して、試験化合物のIC50値を評価した。インキュベーションは、4℃で1時間実施した。
【0030】
インキュベーションの最後に、Filtermate 96 harvester(Packard BioScience)を用いて、ユニフィルター(洗浄バッファー中の0.1%PEI中で1時間プレインキュベーションした結合GF/Cフィルターを備えた96ウェル白色マイクロプレート、Packard BioScience, Meriden, CT)で膜を濾過し、冷却した50mM Tris−HClバッファー(pH7.4)で3回洗浄した。10μM MPEPの存在下で、非特異的結合を測定した。フィルター上の放射能を、microscint 40(Canberra Packard S.A., Zurich, Switzerland)45μlを加えて20分間振盪した後、クエンチング補正しながら、PackardのTop-countマイクロプレートシンチレーションカウンターで計測した(3分間)。
【0031】
以下の実施例のリストに、EC50値が20nM以下である全ての化合物の対応する結果を示す。
【0032】
【表2】
【0033】
本発明の化合物対国際公開公報第2011128279号に記載されている最も類似した化合物(実施例106及び109)の比較:
【0034】
以下の表で確認できる通り、本発明の化合物は、NAM活性を示す化合物が望まれるときに有利である構造上類似した先行技術の化合物と比較して、明らかに異なるプロファイルを示す。
【0035】
【表3】
【0036】
式Iで示される化合物を、以下に示される方法によって、実施例に示される方法によって、又は同様の方法によって製造することができる。個別の反応工程についての適切な反応条件は、当業者に公知である。反応順序は、スキームに表示したものに限定されず、出発物質及びそれらのそれぞれの反応性に応じて、反応工程の順序を自由に変更することができる。出発物質は、市販のものであるか、あるいは、以下に示される方法と同様の方法によって、本記載若しくは実施例で引用された参考文献に記載されている方法によって、又は当技術分野において公知の方法によって調製できるかのいずれかである。
【0037】
式Iで示される本化合物及びそれらの薬学的に許容し得る塩は、当技術分野において公知の方法によって、例えば、以下に記載される変法によって調製され得、該方法は、以下:
式II:
【化2】

[式中、Xは、臭素又はヨウ素から選択されるハロゲン原子である]
で示される化合物を、式III:
【化3】

で示される好適なアリール−アセチレンと反応させて、式I:
【化4】

[式中、置換基Rは、上記である]
で示される化合物を式Iに描写される通りの絶対立体化学を有するエナンチオピュアな形態で形成するか、又は、ラセミ形態のIIを使用して、続いてIのキラル分離によって、光学的に純粋なエナンチオマーを生成し;そして
所望であれば、得られた化合物を薬学的に許容し得る酸付加塩に変換することを含む。
【0038】
式Iで示される化合物の調製は、さらに、スキーム1〜3及び実施例1〜4においてより詳細に記載される。
【0039】
【化5】
【0040】
式IIaで示される化合物の合成をスキーム1に記載する。式IIaで示されるハロ−ピリジン化合物を、適切なジハロゲン化ピリジン、例えば2−ブロモ−5−ヨード−ピリジンと式5で示される適切に置換されている環式尿素とのパラジウム触媒反応によって得ることができる(スキーム1)。また、5位に臭素又はヨウ素を有する2−クロロ−又は2−フルオロ−ピリジンと式5で示される二環式尿素との反応も、例えばNaH/THF又は炭酸セシウム/DMFなどの塩基性条件を使用した芳香族求核置換反応によって、式IIaで示される化合物を形成することができる。式5で示される化合物を、Gorrea & al., Tetrahedron asymmetry, 21, 339 (2010) によって記載されているものと類似の手順を使用して得ることができる式1で示される適切に保護された2−アミノ−1−カルボン酸から出発して得ることができる。1の酸性官能基を、アシルアジド中間体を介して、対応するイソシアナート2へと変換し(クルチウス転位)、次いでこれを環化して、二環式尿素化合物3を形成する。3の遊離NH基を標準手順に従ってメチル化して、化合物4を形成することができ、次いでこれを脱保護して、環式尿素5を生成する。また、式1で示される光学的に純粋な保護酸から出発して、又は当業者に公知の手順を使用した合成の任意の段階でのラセミ混合物の分離によって、光学的に純粋な中間体2〜5を得ることも可能である。
【0041】
【化6】

[式中、このスキーム中のRは、(Rによって置換されているフェニルを意味する]
【0042】
式IIa(X=Br、I)で示される化合物を、式III(式中、Wは、水素又はその場で開裂可能な保護基、例えばトリアルキルシリル−若しくはアリールジアルキルシリル基、好ましくは水素又はトリメチルシリルのいずれかである)で示される好適なアリール−アセチレンと、パラジウム触媒カップリング条件下で反応させて(薗頭反応)、式Ia(式中、置換基Rは、上記である)で示される化合物を形成してもよい。別の可能性は、IIaとトリメチルシリルアセチレンとを反応させて式Ia(式中、Rは、トリメチルシリルである)で示される化合物を生成し、次いで、適切な臭化アリール又はヨウ化アリールを用いた第二の薗頭反応を行って、式Iで示される化合物を生成することからなる(スキームは示さない)。
【0043】
アミノ酸誘導体1がラセミ形態である場合には、式Iで示される化合物の合成の間の任意の所与の段階で当業者に公知の手順を使用してそのエナンチオマーを分離することができる。
【0044】
また、反応の順序を反転させて式Iで示される化合物に導くことも可能である(スキーム3)。この場合、アリールアセチレン誘導体IIIとジハロ−ピリジンとの間の薗頭反応を最初に実施して、式6で示されるアリールアセチレン−ピリジン化合物を生成して、次いでこれを二環式尿素1と縮合して、式Iで示される化合物を生成する。
【0045】
【化7】

[式中、このスキーム中のRは、(Rによって置換されているフェニルを意味する]
【0046】
式Iで示される化合物の薬学的に許容し得る塩を、それ自体公知の方法に従いかつ塩へと変換される化合物の性質を考慮して、容易に製造することができる。例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸又はクエン酸、ギ酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの無機酸又は有機酸が、式Iで示される塩基性化合物の薬学的に許容し得る塩の形成に適する。アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどを含有する化合物、塩基性アミン又は塩基性アミノ酸が、酸性化合物の薬学的に許容し得る塩の形成に適する。
【0047】
式Iで示される化合物及びそれらの薬学的に許容し得る塩は、すでに上記した通り、代謝型グルタミン酸受容体アンタゴニストであり、mGluR5受容体媒介性障害、例えば急性及び/又は慢性神経障害、認知障害及び記憶欠損だけでなく、急性及び慢性痛の治療又は予防のために使用することができる。処置可能な神経障害は、例えば、癲癇、統合失調症、不安症、神経系の急性、外傷性若しくは慢性変性過程、例えばアルツハイマー病、老年認知症、ハンチントン舞踏病、ALS、多発性硬化症、エイズによって引き起こされる認知症、眼損傷、網膜症、特発性パーキンソニズム又は薬物によって引き起こされるパーキンソニズムだけでなく、グルタミン酸欠乏機能につながる病状、例えば、筋痙攣、痙攣、片頭痛、尿失禁、ニコチン中毒、精神病、アヘン中毒、不安症、嘔吐、ジスキネジア及び鬱病である。他の処置可能な適応症は、バイパス術又は移植によって引き起こされる脳機能不全、脳への血液供給不足、脊髄損傷、頭部損傷、妊娠によって引き起こされる低酸素、心停止及び低血糖である。
【0048】
式Iで示される化合物及びそれらの薬学的に許容し得る塩は、鎮痛剤として特に有用である。処置可能な疼痛の種類は、炎症性疼痛、例えば関節炎及びリウマチ様疾患、血管炎、神経障害性疼痛、例えば三叉又は帯状疱疹神経痛、糖尿病性神経障害性疼痛、灼熱痛、痛覚過敏、重症慢性痛、術後疼痛、並びに癌、咽喉痛、腎疝痛又は胆石疝痛、月経、片頭痛及び痛風のような種々の病状と関連する疼痛を含む。
【0049】
該化合物の薬理学的活性を以下の方法を使用して試験した。
【0050】
ラットmGlu5a受容体をコードするcDNAを、E.-J. Schlaeger and K. Christensen(Cytotechnology 1998, 15, 1-13)に記載されている手順を使用して、EBNA細胞に一過性にトランスフェクトした。mGlu5aをトランスフェクトしたEBNA細胞をFluo 3-AM(FLUKAによって得ることが可能、最終濃度0.5μM)と37℃で1時間インキュベーションし、続いて、アッセイバッファー(ハンクス塩及び20mM HEPESを補充したDMEM)で4回洗浄した後に、この細胞に対して[Ca2+]i測定を実施した。[Ca2+]i測定は、蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR, Molecular Devices Corporation, La Jolla, CA, USA)を使用して行った。化合物がアンタゴニストとして評価されたとき、これらをアゴニストとしての10μMグルタミン酸に対して試験した。
【0051】
阻害(アンタゴニスト)曲線を、反復非線形曲線当て嵌めソフトウェアOrigin(Microcal Software Inc., Northampton, MA, USA)を使用して、4パラメーターロジスティック方程式に当て嵌めて、IC50及びヒル係数を与えた。
【0052】
試験化合物のKi値が与えられる。Ki値は、以下の式によって定義される:
【0053】
【数1】

[式中、IC50値は、化合物の効果の50%が拮抗される、試験化合物の濃度(μM)である。[L]は、その濃度であり、そして、EC50値は、約50%の刺激をもたらす化合物の濃度(μM)である]
【0054】
本発明の化合物は、mGluR5a受容体アンタゴニストである。上記のアッセイで測定した通りの式Iで示される化合物の活性は、K<100μMの範囲にある。
【0055】
式Iで示される化合物及びその薬学的に許容し得る塩を、医薬として、例えば、医薬製剤の形態で使用することができる。医薬製剤を、例えば錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬及び軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤又は懸濁剤の剤形で、経口投与することができる。しかし、投与をまた、例えば坐剤の剤形で直腸内にも、又は例えば注射用液剤の剤形で非経口的にも実施することができる。
【0056】
式Iで示される化合物及びその薬学的に許容し得る塩を、医薬製剤の生産ため、薬学的に不活性な無機又は有機の担体と共に加工することができる。乳糖、トウモロコシデンプン又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩などを、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠及び硬ゼラチンカプセル剤のためのそのような担体として使用することができる。軟ゼラチンカプセル剤のための好適な担体は、例えば、植物油、ロウ、脂肪、半固体及び液体ポリオール類などである;しかし、活性物質の性質に応じて、軟ゼラチンカプセル剤の場合は、通常担体を必要としない。液剤及びシロップ剤の生産のための好適な担体は、例えば、水、ポリオール、ショ糖、転化糖、グルコースなどである。アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油などの佐剤を、式Iで示される化合物の水溶性塩の水性注射用液剤に使用することができるが、原則として必要ではない。坐剤のための好適な担体は、例えば、天然又は硬化油、ロウ、脂肪、半液体又は液体ポリオールなどである。
【0057】
加えて、医薬製剤は、保存料、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色剤、香料、浸透圧を変動させるための塩、緩衝剤、マスキング剤又は酸化防止剤を含有することができる。これらはまた、さらに他の治療有用物質を含有することができる。
【0058】
前述のように、式Iで示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩と治療上不活性な賦形剤とを含有する医薬も本発明の目的であり、1以上の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、所望により、1以上の他の治療有用物質とを、1以上の治療上不活性な担体と共にガレヌス製剤の投与形態にすることを含む、そのような医薬の生産プロセスも、本発明の目的である。
【0059】
投与量は、広い範囲内で変更することができ、当然ながら、各々の特定の症例における個別の要件に適合されるだろう。一般に、経口又は非経口投与のための有効投与量は、0.01〜10mg/kg/日の間であり、記載した適応症の全てに対して0.1〜5mg/kg/日の投与量が好ましい。従って、体重70kgの成人のための1日投与量は、1日当たり0.7〜700mgの間、好ましくは1日当たり7〜350mgの間である。
【0060】
以下の実施例は、本発明をさらに明確にするために提供される:
【0061】
実施例1
(−)−(1S,5R)−2−メチル−4−(5−(フェニルエチニル)ピリジン−2−イル)−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン
【化8】

工程1:(rac)−(1SR,2RS)−2−(ナフタレン−2−イルメトキシカルボニルアミノ)シクロブタンカルボン酸メチルエステル:
1,2−ジクロロエタン160ml中の(rac)−(cis)−(1RS,2SR)−シクロブタン−1,2−ジカルボン酸モノメチルエステル(CAS:31420−52−7)(10.8g、68.3mmol)、及びN−メチルモルホリン(7.6g、8.26ml、75.1mmol)の十分に撹拌した溶液に、ジフェニルホスホリルアジド(20.7g、16.2ml、75.1mmol)を滴下した。室温で10分間撹拌した後、反応物を60℃まで温めた。2−ナフチルメチルアルコール(10.8g、68.3mmol)及び塩化銅(I)(68mg、0.68mmol)を加え、そして、反応物を60℃でさらに16時間撹拌した。反応物を真空下で濃縮し、明褐色の油性残渣(51g)をジクロロメタン15mlで希釈し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(SiO(650g)、酢酸エチル/ヘプタン 20:80)によって精製して、未反応のナフチルメタノールを含有する不純物質16.8gを生成した。その物質を再精製(Aminophase、ヘプタン中0%〜35%酢酸エチルの勾配)して、標記化合物11.1g(52%)を白色の結晶性固体として生成した。MS: m/e = 314.2 (M+H)。
【0062】
工程2:(rac)−(1SR,2RS)−2−(ナフタレン−2−イルメトキシカルボニルアミノ)シクロブタンカルボン酸
ジオキサン20ml中の(rac)−(1SR,2RS)−2−(ナフタレン−2−イルメトキシカルボニルアミノ)シクロブタンカルボン酸メチルエステル(実施例1、工程1)(4.2g、13.4mmol)の十分に撹拌した溶液に、水(70ml)を加えた。溶液を5℃に冷却し、そして、0.5M 水酸化ナトリウム溶液53.6ml(26.8mmol)を5分間かけて滴下した。5℃で1時間撹拌した後、反応物を激しく撹拌しながら室温まで放温した。次いで、透明な溶液を5℃に冷却し、そして、2N 塩酸溶液約13mlの添加によってpHを2.5に調整した。反応物を酢酸エチルで後処理した。乾燥、濾過及び真空下での濃縮後、標記化合物3.87g(97%)を結晶性の白色固体として得た。MS: m/e = 300.2 (M+H)。
【0063】
工程3:(rac)−(1RS,5SR)−3−オキソ−2,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボン酸ナフタレン−2−イルメチルエステル
ジクロロエタン34ml中の(rac)−(1SR,2RS)−2−(ナフタレン−2−イルメトキシカルボニルアミノ)シクロブタン−カルボン酸(実施例1、工程2)(2.34g、7.82mmol)及びN−メチルモルホリン(0.79g、0.86ml、7.82mmol)の溶液をr.t.で10分間撹拌した。次いで、ジフェニルリン酸アジド(2.15g、1.69ml、7.82mmol)を室温で滴下し、そして、無色の溶液を室温で1時間撹拌し、その間に溶液が明黄色に変化した。次いで、溶液を50℃に温め、6時間撹拌し、そして放冷した。ジクロロメタン/水で後処理した後、合わせた有機相を蒸発乾固して、黄色の固体を生成して、これを酢酸エチル/ヘプタンから再結晶した。標記化合物(1.86g、80%)を白色の結晶性固体として得た。MS: m/e = 297.3 (M+H)。
【0064】
工程4:(rac)−(1RS,5SR)−4−メチル−3−オキソ−2,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボン酸ナフタレン−2−イルメチルエステル
DMF11ml中の(rac)−(1RS,5SR)−3−オキソ−2,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボン酸ナフタレン−2−イルメチルエステル(実施例1、工程3)(1.13g、3.81mmol)の溶液に、鉱油中60%水素化ナトリウム懸濁液(0.198g、4.96mmol)を加えた。懸濁液を室温で35分間撹拌し(ガス発生)、次いで、ヨードメタン(0.81g、0.36ml、5.72mmol)を加え、そして、混合物を室温で一晩撹拌した。飽和塩化アンモニウム溶液3mlの添加によるクエンチ及び真空下での濃縮後、残渣を酢酸エチル/水で後処理した。合わせた有機相を乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣を、シリカゲル(50g)フラッシュクロマトグラフィーによってヘプタン中20〜100%酢酸エチルの勾配で溶離させて精製して、無色の油状物0.98g(82%)を生成した。MS: m/e = 311.2 (M+H)。
【0065】
工程5:(rac)−(1SR,5RS)−2−メチル−2,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン
メタノール15ml中の(rac)−(1RS,5SR)−4−メチル−3−オキソ−2,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボン酸ナフタレン−2−イルメチルエステル(実施例1、工程4)(0.97g、3.13mmol)の溶液を10%Pd/C(0.333g、0.313mmol)で48時間水素化した。溶液にアルゴンをパージし、触媒を濾別し、そして、酢酸エチルで洗浄した。濾液を真空下で濃縮した。残渣を、シリカゲル(20g)フラッシュクロマトグラフィーによってヘプタン中50〜100%酢酸エチルの勾配で溶離させて精製して、標記化合物0.375g(95%)を結晶性の白色固体として生成し、これをさらなる特性決定なしにそのまま次の工程に使用した。
【0066】
工程6:(rac)−(1RS,5SR)−2−(5−ヨード−ピリジン−2−イル)−4−メチル−2,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン
DMF(10ml)中の(rac)−(1SR,5RS)−2−メチル−2,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン(実施例1、工程5)(375mg、2.97mmol)及び2−フルオロ−5−ヨードピリジン(683mg、3.06mmol)の溶液に、鉱油中60%水素化ナトリウム懸濁液(155mg、3.86mmol)を加えた。反応物を室温で一晩撹拌した。飽和塩化アンモニウム溶液3mlの添加によるクエンチ及び真空下での濃縮によりDMFを除去した後、残渣を酢酸エチル/水で後処理した。乾燥及び真空下での濃縮後、残渣を、ヘプタン中0%〜65%酢酸エチルの勾配を使用したフラッシュクロマトグラフィー(SiO、20g)によって精製した。標記化合物(549mg、56%)を結晶性の白色固体として得た。MS: m/e = 330.1 (M+H)。
【0067】
工程7:(rac)−(+/−)−(1SR,5RS)−2−メチル−4−(5−(フェニルエチニル)ピリジン−2−イル)−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン
5mlのマイクロ波管中、(rac)−(1RS,5SR)−2−(5−ヨード−ピリジン−2−イル)−4−メチル−2,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン(実施例1、工程6)110mg(0.33mmol)をDMF1.5ml中に溶解した。溶液中にアルゴンをバブリングした。エチニルベンゼン(73μl、68mg、0.67mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(14mg、20μmol)、ヨウ化銅(I)(1.9mg、10.0μmol)、トリフェニルホスフィン(1.8mg、7.7μmol)及びトリエチルアミン107μl(101mg、140μl、1.0mmol)を加えた。暗褐色の溶液を60℃で3時間撹拌した。反応物を酢酸エチル/水で後処理し、乾燥させ、そして、真空下で濃縮した。残渣を、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、20g、ヘプタン中0%〜50%EtOAcの勾配)によって精製して、標記化合物95mg(94%)を明褐色の結晶性固体として生成した。MS: m/e = 304.2 (M+H)。
【0068】
工程8:(−)−(1S,5R)−2−メチル−4−(5−(フェニルエチニル)ピリジン−2−イル)−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン及び(+)−(1R,5S)−2−メチル−4−(5−(フェニルエチニル)ピリジン−2−イル)−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン
(rac)−(+/−)−(1SR,5RS)−2−メチル−4−(5−(フェニルエチニル)ピリジン−2−イル)−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オンのラセミ混合物(実施例1、工程7)(95mg)をキラルHPLC:(Chiralpak AD(登録商標)−5cm×50cm、20mM;40%イソプロパノール/ヘプタン、35ml/min、18Bar)によって分離した。UV検出器並びに旋光度検出器(ORD)を使用してピーク検出を実現し、一方のピークは、負のシグナルを有し((−)−エナンチオマー)、そして、他方のピークは、正のシグナルを有していた((+)−エナンチオマー)。(−)−エナンチオマー、(−)−(1S,5R)−2−メチル−4−(5−(フェニルエチニル)ピリジン−2−イル)−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン(39mg)を結晶性の明黄色の固体として得た。MS: m/e = 304.1 (M+H)。(+)−エナンチオマー、(−)−(1R,5S)−2−メチル−4−(5−(フェニルエチニル)ピリジン−2−イル)−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン(40mg)を明黄色の固体として得た。MS: m/e = 304.1 (M+H)。
【0069】
実施例2
(−)−(1R,5S)−2−[5−(3−フルオロ−フェニルエチニル)−ピリジン−2−イル]−4−メチル−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン
【化9】

標記化合物を、実施例1、工程7の一般的方法に従って、(rac)−(1RS,5SR)−2−(5−ヨード−ピリジン−2−イル)−4−メチル−2,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン(実施例1、工程6)(110mg)及び1−エチニル−3−フルオロベンゼンから開始して調製して、ラセミ物質((+/−)−(1R,5S)−2−[5−(3−フルオロ−フェニルエチニル)−ピリジン−2−イル]−4−メチル−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン107mg(96%)を明黄色の結晶性固体;MS: m/e = 322.3 (M+H)として生成し、次いでこれを実施例1、工程8に記載のものと類似の分離条件を使用したキラルHPLCによって分離して、エナンチオピュアなエナンチオマー(−)−(1R,5S)−2−[5−(3−フルオロ−フェニルエチニル)−ピリジン−2−イル]−4−メチル−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オンを明黄色の固体;MS: m/e = 322.3 (M+H)として;及びそのエナンチオマー(+)−(1S,5R)−2−[5−(3−フルオロ−フェニルエチニル)−ピリジン−2−イル]−4−メチル−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オンを明黄色の固体;MS: m/e = 322.3 (M+H)として生成した。
【0070】
実施例3
(−)−(1R,5S)−2−[5−(4−フルオロ−フェニルエチニル)−ピリジン−2−イル]−4−メチル−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン
【化10】

標記化合物を、実施例1、工程7の一般的方法に従って、(rac)−(1RS,5SR)−2−(5−ヨード−ピリジン−2−イル)−4−メチル−2,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン(実施例1、工程6)(110mg)及び1−エチニル−4−フルオロベンゼンから開始して調製して、ラセミ物質((+/−)−(rac)−(1SR,5RS)−2−[5−(4−フルオロ−フェニルエチニル)−ピリジン−2−イル]−4−メチル−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン104mg(97%)を明黄色の結晶性固体;MS: m/e = 322.3 (M+H)として生成し、次いでこれを実施例1、工程8に記載のものと類似の分離条件を使用したキラルHPLCによって分離して、エナンチオピュアなエナンチオマー(−)−(1R,5S)−2−[5−(4−フルオロ−フェニルエチニル)−ピリジン−2−イル]−4−メチル−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オンを明黄色の固体;MS: m/e = 322.3 (M+H)として;及びそのエナンチオマー(+)−(1S,5R)−2−[5−(4−フルオロ−フェニルエチニル)−ピリジン−2−イル]−4−メチル−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オンを明黄色の固体;MS: m/e = 322.3 (M+H)として生成した。
【0071】
実施例4
(−)−(1R,5S)−2−[5−(2,5−ジフルオロ−フェニルエチニル)−ピリジン−2−イル]−4−メチル−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン
【化11】

標記化合物を、実施例1、工程7の一般的方法に従って、(rac)−(1RS,5SR)−2−(5−ヨード−ピリジン−2−イル)−4−メチル−2,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン(実施例1、工程6)(110mg)及び2−エチニル−1,4−ジフルオロベンゼンから開始して調製して、ラセミ物質((+/−)−(rac)−(1SR,5RS)−2−[5−(2,5−ジフルオロ−フェニルエチニル)−ピリジン−2−イル]−4−メチル−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オン110mg(97%)を明黄色の結晶性固体;MS: m/e = 340.1 (M+H)として生成し、次いでこれを実施例1、工程8に記載のものと類似の分離条件を使用したキラルHPLCによって分離して、エナンチオピュアなエナンチオマー(−)−(1R,5S)−2−[5−(2,5−ジフルオロ−フェニル−エチニル)−ピリジン−2−イル]−4−メチル−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オンを明黄色の固体;MS: m/e = 340.1 (M+H)として;及びそのエナンチオマー(+)−(1S,5R)−2−[5−(2,5−ジフルオロ−フェニル−エチニル)−ピリジン−2−イル]−4−メチル−2,4−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3−オンを明黄色の固体;MS: m/e = 340.1 (M+H)として生成した。
【0072】
医薬組成物の調製:
実施例I
以下の組成の錠剤を従来法で生産する:
【0073】
mg/錠剤
活性成分 100
粉末乳糖 95
白色トウモロコシデンプン 35
ポリビニルピロリドン 8
Naカルボキシメチルデンプン 10
ステアリン酸マグネシウム 2
錠剤重量 250
【0074】
実施例II
以下の組成の錠剤を従来法で生産する:
【0075】
mg/錠剤
活性成分 200
粉末乳糖 100
白色トウモロコシデンプン 64
ポリビニルピロリドン 12
Naカルボキシメチルデンプン 20
ステアリン酸マグネシウム 4
錠剤重量 400
【0076】
実施例III
以下の組成のカプセル剤を生産する:
【0077】
mg/カプセル
活性成分 50
結晶性乳糖 60
微結晶セルロース 34
タルク 5
ステアリン酸マグネシウム 1
カプセル充填重量 150
【0078】
好適な粒子サイズを有する活性成分、結晶性乳糖及び微結晶セルロースを互いに均一に混合し、篩にかけ、その後、タルク及びステアリン酸マグネシウムを混ぜる。最終混合物を、好適なサイズの硬ゼラチンカプセルに充填する。
図1
図2