(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603338
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】アンチブロッキング剤としての表面反応炭酸カルシウムの使用
(51)【国際特許分類】
C08L 33/00 20060101AFI20191028BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20191028BHJP
C09C 1/02 20060101ALI20191028BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20191028BHJP
C09D 133/06 20060101ALI20191028BHJP
C09D 133/02 20060101ALI20191028BHJP
C09D 133/20 20060101ALI20191028BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20191028BHJP
D21H 19/38 20060101ALI20191028BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
C08L33/00
C09D17/00
C09C1/02
C09D5/02
C09D133/06
C09D133/02
C09D133/20
C09D7/61
D21H19/38
C08K3/26
【請求項の数】28
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-563935(P2017-563935)
(86)(22)【出願日】2016年5月27日
(65)【公表番号】特表2018-525456(P2018-525456A)
(43)【公表日】2018年9月6日
(86)【国際出願番号】EP2016061991
(87)【国際公開番号】WO2016198267
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2018年2月7日
(31)【優先権主張番号】15171409.4
(32)【優先日】2015年6月10日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】62/180,637
(32)【優先日】2015年6月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲイン,パトリック・エイ・シー
(72)【発明者】
【氏名】オール,シュテッフェン
(72)【発明者】
【氏名】リッジウェイ,キャサリン・ジーン
(72)【発明者】
【氏名】フンツィカー,フィリップ
【審査官】
松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第97/003119(WO,A1)
【文献】
特開2001−098164(JP,A)
【文献】
特表2014−515439(JP,A)
【文献】
特表2013−523966(JP,A)
【文献】
特表2011−507986(JP,A)
【文献】
特表2015−500927(JP,A)
【文献】
特開2004−300273(JP,A)
【文献】
特開平05−117443(JP,A)
【文献】
特表2010−521595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/16
C08K 3/00 − 13/08
C09D 1/00 − 10/00
C09D 101/00 − 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー含有組成物中のアンチブロッキング剤としての表面反応炭酸カルシウム、または表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せであって、前記鉱物材料が鉱物顔料および/または充填剤を含む群から選択される組合せ、の使用であって、
・前記表面反応炭酸カルシウムが、水性媒体中での、天然粉砕または沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素および1個以上のH3O+イオン供与体との反応生成物であり、前記二酸化炭素がH3O+イオン供与体処理によってその場で生成され、および/または外部源から供給され、ならびに
・前記表面反応炭酸カルシウム、または前記表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せが、前記ポリマー含有組成物に添加され、
・前記ポリマーが、
(a)C1−C4アルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上の主モノマー、
(b)0.1から5重量%の1種以上の酸モノマー、
(c)0から20重量%のアクリロニトリルおよび
(d)0から10重量%のモノマー(a)から(c)以外のさらなるモノマー
の乳化重合によって得られる少なくとも1種のコポリマーを含む水性ポリマー分散物から選択され、
・前記コポリマーの、示差走査熱量測定(ASTM E1356)により決定したガラス転移温度が、10から45℃の範囲であり、
・前記乳化重合が、水性媒体中で、少なくとも1種の炭水化物化合物の存在下で行われ、ならびに
・前記表面反応炭酸カルシウム、または前記表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せが、1:9から4:1の、前記表面反応炭酸カルシウム、または前記表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せの、前記ポリマーに対する重量比で、前記ポリマー含有組成物中に存在する、使用。
【請求項2】
前記天然粉砕炭酸カルシウムが、大理石、チョーク、ドロマイト、石灰石およびこれらの混合物を含む群から選択される炭酸カルシウム含有鉱物から選択されること、ならびに前記沈降炭酸カルシウムが、アラゴナイト、ファーテライトもしくはカルサイト鉱物結晶形態またはこれらの組合せを有する沈降炭酸カルシウムを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記表面反応炭酸カルシウムが、窒素およびISO 9277に従うBET法を使用して測定した、20m2/gから200m2/gの比表面積を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記表面反応炭酸カルシウムが、窒素およびISO 9277に従うBET法を使用して測定した、27m2/gから180m2/gの比表面積を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項5】
前記表面反応炭酸カルシウム粒子が、1から50μmの体積中央粒度d50(体積)を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記表面反応炭酸カルシウム粒子が、1.3から25μmの体積中央粒度d50(体積)を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記表面反応炭酸カルシウムが、水銀圧入ポロシメトリー測定値から計算した、0.1から1.3cm3/gの範囲内の粒子内圧入比細孔容積を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記表面反応炭酸カルシウムが、水銀圧入ポロシメトリー測定値から計算した、0.18から1.25cm3/gの範囲内の粒子内圧入比細孔容積を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記ポリマーが、10から40℃の範囲のガラス転移温度Tgを有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記表面反応炭酸カルシウムを、鉱物材料と組合せて使用することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記鉱物材料が、沈降炭酸カルシウム(PCC)、天然粉砕炭酸カルシウム(GCC)、ドロマイト、タルク、ベントナイト、粘土、マグネサイト、サテンホワイト、セピオライト、ハンタイト、珪藻土、シリケート、二酸化チタンおよびこれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記表面反応炭酸カルシウムおよび前記鉱物材料が、1:15から15:1の重量比で組合されることを特徴とする、請求項10または11に記載の使用。
【請求項13】
前記表面反応炭酸カルシウムおよび前記鉱物材料が、1:10から10:1の重量比で組合されることを特徴とする、請求項10または11に記載の使用。
【請求項14】
前記表面反応炭酸カルシウム、または前記表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せが、前記ポリマー含有組成物中に、前記ポリマーの乾燥重量に対して5から100重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記表面反応炭酸カルシウム、または前記表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せが、前記ポリマー含有組成物中に、前記ポリマーの乾燥重量に対して10から50重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記表面反応炭酸カルシウム、または前記表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せが、1:4から4:1の、前記表面反応炭酸カルシウム、または前記表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せの、前記ポリマーに対する重量比で、前記ポリマー含有組成物中に存在することを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記表面反応炭酸カルシウム、または前記表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せを含む前記ポリマー含有組成物が、基材上にコーティングされることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記基材が、非再生または再生紙および板紙;合成紙;不織製品;包装材料;構造材;ならびに表面仕上げ材を含む群から選択されることを特徴とする、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記表面反応炭酸カルシウム、または前記表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せを含む前記ポリマー含有組成物の各々のコート重量が、1から30g/m2であることを特徴とする、請求項17または18に記載の使用。
【請求項20】
前記表面反応炭酸カルシウム、または前記表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せを含む前記ポリマー含有組成物の各々のコート重量が、2から25g/m2であることを特徴とする、請求項17または18に記載の使用。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項に記載の表面反応炭酸カルシウムの使用によって、前記ポリマー含有組成物のブロッキングを制御する方法であって、
・前記ポリマーが、
(a)C1−C4アルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上の主モノマー、
(b)0.1から5重量%の1種以上の酸モノマー、
(c)0から20重量%のアクリロニトリルおよび
(d)0から10重量%のモノマー(a)から(c)以外のさらなるモノマー
の乳化重合によって得られる少なくとも1種のコポリマーを含む水性ポリマー分散物から選択され、
・前記コポリマーの、示差走査熱量測定(ASTM E1356)により決定したガラス転移温度が、10から45℃の範囲であり、
・前記乳化重合が、水性媒体中で、少なくとも1種の炭水化物化合物の存在下で行われる、
方法。
【請求項22】
請求項1から16のいずれか一項に記載の表面反応炭酸カルシウム、または表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せを含む、ポリマー含有組成物であって、
・前記ポリマーが、
(a)C1−C4アルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上の主モノマー、
(b)0.1から5重量%の1種以上の酸モノマー、
(c)0から20重量%のアクリロニトリルおよび
(d)0から10重量%のモノマー(a)から(c)以外のさらなるモノマー
の乳化重合によって得られる少なくとも1種のコポリマーを含む水性ポリマー分散物から選択され、
・前記コポリマーの、示差走査熱量測定(ASTM E1356)により決定したガラス転移温度が、10から45℃の範囲であり、
・前記乳化重合が、水性媒体中で、少なくとも1種の炭水化物化合物の存在下で行われたものである、
ポリマー含有組成物。
【請求項23】
請求項1から16のいずれか一項に記載の表面反応炭酸カルシウムを含む、ポリマー含有組成物を含むコーティング組成物であって、
・前記ポリマーが、
(a)C1−C4アルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上の主モノマー、
(b)0.1から5重量%の1種以上の酸モノマー、
(c)0から20重量%のアクリロニトリルおよび
(d)0から10重量%のモノマー(a)から(c)以外のさらなるモノマー
の乳化重合によって得られる少なくとも1種のコポリマーを含む水性ポリマー分散物から選択され、
・前記コポリマーの、示差走査熱量測定(ASTM E1356)により決定したガラス転移温度が、10から45℃の範囲であり、
・前記乳化重合が、水性媒体中で、少なくとも1種の炭水化物化合物の存在下で行われたものである、
コーティング組成物。
【請求項24】
請求項1から16のいずれか一項に記載の表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せを含む、ポリマー含有組成物を含むコーティング組成物であって、
・前記ポリマーが、
(a)C1−C4アルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上の主モノマー、
(b)0.1から5重量%の1種以上の酸モノマー、
(c)0から20重量%のアクリロニトリルおよび
(d)0から10重量%のモノマー(a)から(c)以外のさらなるモノマー
の乳化重合によって得られる少なくとも1種のコポリマーを含む水性ポリマー分散物から選択され、
・前記コポリマーの、示差走査熱量測定(ASTM E1356)により決定したガラス転移温度が、10から45℃の範囲であり、
・前記乳化重合が、水性媒体中で、少なくとも1種の炭水化物化合物の存在下で行われたものである、
コーティング組成物。
【請求項25】
鉱物材料が、天然粉砕炭酸カルシウム(GCC)から選択されることを特徴とする、請求項24に記載のコーティング組成物。
【請求項26】
表面反応炭酸カルシウムおよび鉱物材料が、1:1から1:4の重量比で組合されていることを特徴とする、請求項25に記載のコーティング組成物。
【請求項27】
前記表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せが、1:4の前記表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せの、ポリマーに対する重量比で、前記ポリマー含有組成物中に存在することを特徴とする、請求項25または26に記載のコーティング組成物。
【請求項28】
請求項17から20のいずれか一項に記載の使用によって得られるコート基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー(1種または複数種)含有組成物中でのアンチブロッキング剤としての表面反応炭酸カルシウムの使用、表面反応炭酸カルシウムまたは表面反応炭酸カルシウムと無機材料との組合せを含むアンチブロッキング剤、ポリマー(1種または複数種)含有組成物のブロッキングを制御する方法、表面反応炭酸カルシウムまたは表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せを含むポリマー(1種または複数種)含有組成物、このようなポリマー(1種または複数種)含有組成物を含むコーティング組成物、ならびにこのようなコーティング組成物でコーティングした基材に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロッキングは、多くのポリマーフィルムおよびコーティングに関連する共通の問題である。ブロッキングはフィルムまたは被覆シートの隣接層の間の望ましくない引力であり、個々の層の分離を難しくすることが多い。ポリオレフィンおよびポリエステルを含むあるポリマーは、固有のブロッキング傾向を有する。
【0003】
ブロッキングは、押出、変換過程の間、巻取ロールへの巻取り、または完成変換フィルムまたはフィルムコート材料の積重ね時および貯蔵中に起きることがある。
【0004】
とりわけ、基材をポリマーでコーティングした直後に、基材を巻取るまたは積重ねる前にコーティングがまだ完全に乾燥しておらず、水分が存在することでポリマーコーティングの粘着性が著しく上昇すると、ブロッキングが起こり得る。
【0005】
ブロッキングには、それぞれのポリマーの固有の性質、フィルムの表面平滑性、加工、使用または貯蔵中の圧力または温度による多くの理由がある。ブロッキングの程度または重大度は、フィルムの特性ならびにフィルムに作用する外力の影響の関数である。
【0006】
場合によっては、ガラス転移温度(T
g)もブロッキングに関して役割を果たし得る。製紙業界では、低いT
g値を有するポリマーがコーティング用途によく使用される。不都合なことに、これらのポリマーは、粘着性および結果としての強いブロッキングのために、製紙における問題を引き起こす場合がある。例えば、巻取り過程の間にウェブの温度がポリマーのT
g値よりも高い場合に、このことが当てはまり得る。紙ウェブが冷却シリンダーを介してポリマーのT
g値よりも低い温度に冷却される場合、この問題は場合によっては制御され得る。しかし、装備が不足しているために、または使用したポリマーのT
g値が室温付近または室温未満である場合に、このような制御は不可能なことが多い。
【0007】
このためアンチブロッキング剤をポリマーに導入することは、ブロッキングを低減するための別の周知の手法であり、ブロッキング傾向を低下させ、フィルムまたはシートを容易に分離させることができる。アンチブロッキング剤は、通例、隣接する層間の利用可能な接触面積を低減するフィルムまたはシート表面の微視的粗面化を生じる。
【0008】
多くの異なる材料を使用して、アンチブロッキング効果を付与することができる。商業的に重要なアンチブロッキング添加剤は、珪藻土、合成シリカ、タルク、セラミック球体、雲母、カオリンなどの粘土、炭酸カルシウムなどの無機物、またはビスアミド、第2級アミド、第1級アミド、有機または金属ステアレートなどの有機物であり得る。
【0009】
例えばUS6,284,034B1は、シート材料の光沢コーティングに好適な微細顔料材料である成分Aおよび粗顔料材料である成分Bを含む、印刷されるシート材料のコーティングに好適なコーティング組成物に使用する顔料材料であって、成分Aの成分Bに対する重量比は少なくとも4:1である顔料材料について記載している。該顔料組成物は、コーティング組成物中に使用した場合、アンチブロッキング性を提供するのに役立ち、該コーティング組成物中に存在する少量の粗顔料粒子によって、コート表面の表面形状に局在化した突出点が有益に与えられる。成分AおよびBは、それぞれ独立して、紙コーティング組成物での使用について既知である材料の任意の1種以上から選択され得る。
【0010】
US6,018,010Aは、非常に特異なポリマー、即ちα,β−不飽和カルボン酸モノマーから誘導された構造単位および別のビニルモノマーから誘導された構造単位を含むポリマーに関し、前記ポリマーは、(1)50mgKOH/g以上の酸価、(2)示差走査熱量計で分析した場合に、−80から20℃の範囲および20から120℃の範囲のそれぞれにおいて少なくとも1つのピークトップを有する微分DSC曲線および(3)80%以上の平行光線透過率を有する。得られるポリマーにとりわけ引張り強さおよびアンチブロッキング特性が要求される場合には、これらの特性が微分曲線における高温側ピークトップの高さを上昇させることで付与できることが述べられている。さらに、多価金属塩を添加して金属架橋ポリマーを得てもよい。
【0011】
US4,012,543Aは、高光沢を有し嵩高いコート紙ならびに高固形分コーティングを該紙に適用して、加熱した仕上げ面に押し付ける、紙の製造方法に関する。この点に関して、紙に光沢仕上げを施すための光沢カレンダー加工は、紙コーティングが光沢カレンダー加工ロールによる成形のために十分に湿潤されているべきであり、同時に、コーティングが光沢カレンダー加工ドラムに粘着しないために十分乾燥しているべきであるという、競合する比較的両立しがたい要件のために問題があることが述べられている。従って、スルホン化ひまし油およびカリウムオレエートなどの粘着防止剤が使用される。好ましい粘着防止剤は、予め分散されたカルシウムステアレートおよび乳化オレイン酸の混合物を含む。
【0012】
US5,266,397Aは、特殊な非晶質シリカ粒子を含むシリカ充填剤に関する。この点に関して、非晶質シリカは、樹脂フィルム用のアンチブロッキング剤としてこれまで広く用いられ、これらの表面上にシラノール基を有する微粉シリカが親油基によって置換され、ゼオライト粒子が二軸未延伸ポリプロピレンフィルムに添加され、または特異的な見掛密度および表面積を有する微粉末シリカが用いられていることが論じられている。しかしながら、これらのフィラーはいずれも感熱記録紙での使用には好適でなく、このことはある一次粒子径、ある見掛けの比重、特異的なシリカ基本粒径および特異的な凝集度を有するシリカフィラーによって解決される。
【0013】
このことから、アンチブロッキング添加剤の選択は、使用されるポリマーだけでなく、ポリマーフィルムまたはコーティングの特性がアンチブロッキング剤によって悪影響を受けるべきではない、最終製品の品質要件にも依存することが明らかである。
【0014】
このような特性は数多くあり、光学的特性、機械的特性または非常に特異的な特性、例えばWO2013/083504A1に記載されているような、例えば再生板紙から包装食品への鉱油残留物の移行を防止するポリマーコーティングのバリア特性などの、非常に特異的な特性であり得る。
【0015】
従って、ポリマー特性に悪影響を及ぼすことなく、広く利用可能な新規アンチブロッキング剤が常に必要とされている。
【0016】
特に表面処理された炭酸カルシウムの使用がポリマーフィルムおよびコーティングのブロッキング挙動を改善し得て、バリア特性を有するポリマーフィルムおよびコーティングと組合せると、とりわけ有用であることが、今や見出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第6,284,034号明細書
【特許文献2】米国特許第6,018,010号明細書
【特許文献3】米国特許第4,012,543号明細書
【特許文献4】米国特許第5,266,397号明細書
【特許文献5】国際公開第2013/083504号
【発明の概要】
【0018】
従って、本発明は、ポリマー含有組成物中のアンチブロッキング剤としての表面反応炭酸カルシウムの使用であって、表面反応炭酸カルシウムが、水性媒体中での、天然粉砕または沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素および1個以上のH
3O
+イオン供与体との反応生成物であり、二酸化炭素がH
3O
+イオン供与体処理によってその場で生成される、および/または外部源から供給される、使用に関する。
【0019】
本発明の文脈におけるH
3O
+イオン供与体は、ブレンステッド酸および/または酸性塩である。
【0020】
表面処理に供される炭酸カルシウムは、天然粉砕炭酸カルシウム(GCC)または合成、即ち沈降炭酸カルシウム(PCC)であってよい。
【0021】
天然粉砕炭酸カルシウムは、好ましくは大理石、チョーク、ドロマイト、石灰石およびこれらの混合物を含む群から選択される炭酸カルシウム含有鉱物から選択される。沈降炭酸カルシウムは、好ましくはアラゴナイト、ファーテライトもしくはカルサイト鉱物結晶形態またはこれらの組み合わせを有する沈降炭酸カルシウムを含む群から選択される。
【0022】
好ましい実施形態では、天然または沈降炭酸カルシウムを、1種以上のH
3O
+イオン供与体および二酸化炭素で処理する前に粉砕する。粉砕ステップは、当業者に公知の従来の粉砕装置、例えば粉砕ミルによって行うことができる。
【0023】
調製のための好ましい方法において、粉砕などによって微粉化されている、または微粉化されていない、天然および合成炭酸カルシウムは、水に懸濁される。好ましくは、スラリーは、スラリーの重量に対して1重量%から80重量%、より好ましくは3重量%から60重量%、さらにより好ましくは5重量%から40重量%の範囲内の天然または合成炭酸カルシウムの含有率を有する。
【0024】
次のステップにおいて、酸を天然または合成炭酸カルシウムを含有する水性懸濁物に添加する。好ましくは、酸は25℃にて2.5以下のpK
aを有する。25℃におけるpK
aが0以下である場合、酸は、好ましくは硫酸、塩酸またはこれらの混合物から選択される。25℃におけるpK
aが0から2.5である場合、酸は好ましくはH
2SO
3、M
+HSO
4−(M
+はナトリウムおよびカリウム、リチウムまたは他の第I族金属を含む群から選択されるアルカリ金属イオンである。)、H
3PO
4、シュウ酸またはこれらの混合物から選択される。
【0025】
1種以上の酸は、濃縮溶液またはより希釈された溶液として懸濁物に添加することができる。好ましくは、酸の天然または合成炭酸カルシウムに対するモル比は、0.05から4、より好ましくは0.1から2である。
【0026】
代案として、天然または合成炭酸カルシウムを懸濁する前に、酸を水に添加することも可能である。
【0027】
次のステップにおいて、天然または合成炭酸カルシウムを二酸化炭素で処理する。天然または合成炭酸カルシウムの酸処理に硫酸または塩酸などの強酸を使用すると、二酸化炭素は必要なモル濃度を達成するのに十分な量で自動的に生成される。追加的に、または代替的に、二酸化炭素を外部源から供給することができる。
【0028】
強酸を使用する場合には、酸処理および二酸化炭素を用いる処理を同時に行うことができる。最初に例えば0から2.5の範囲のpK
aを有する中程度の強酸で処理し、続いて外部源から供給される二酸化炭素で処理することによって、酸処理を行うこともできる。
【0029】
好ましくは、懸濁物中のガス状二酸化炭素の濃度は、体積に対して、(懸濁物の体積):(気体CO
2の体積)比が1:0.05から1:20、さらにより好ましくは1:0.05から5:1であるようになっている。
【0030】
好ましい実施形態において、酸処理ステップおよび/または二酸化炭素処理ステップを少なくとも1回、より好ましくは数回反復する。
【0031】
酸処理および二酸化炭素処理に続いて、20℃にて測定した水性懸濁物のpHが当然、6.0を超える、好ましくは6.5を超える、より好ましくは7.0を超える、さらにより好ましくは7.5を超える値に達し、これにより6.0以上、好ましくは6.5以上、より好ましくは7.0以上、さらにより好ましくは7.5以上のpHを有する水性懸濁物として、表面反応天然または合成炭酸カルシウムが調製される。水性懸濁物を平衡に到達させる場合、pHは7より大である。水性懸濁物の撹拌を十分な時間、好ましくは1時間から10時間、より好ましくは1時間から5時間にわたって継続する場合、塩基を添加せずに6.0を超えるpHに調整することができる。
【0032】
または、7を超えるpHにて生じる平衡に達する前に、二酸化炭素処理の後に塩基を添加することによって、水性懸濁物のpHが6を超える値まで上昇させられ得る。任意の従来の塩基、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを使用することができる。
【0033】
表面反応天然炭酸カルシウムの調製に関するさらなる詳細は、WO00/39222A1、WO2004/083316A1、WO2005/121257A2、WO2009/074492A1、EP2264108A1、EP2264109A1およびUS2004/0020410A1に開示され、これらの参考文献の内容はここで本特許出願に含まれる。
【0034】
本発明に有用である表面反応炭酸カルシウムはまた、粉砕天然炭酸カルシウムを少なくとも1種の水溶性酸およびガス状CO
2と接触させることによっても調製され得て、前記(複数の)酸は、20℃にて測定したときに、これらの第1の利用可能な水素のイオン化および、水溶性カルシウム塩を形成することができる、この第1の利用可能な水素の損失時に生成される対応するアニオンに関連して、2.5を超え7以下のpK
aを有する。続いて、水素含有塩の場合、20℃にて測定したときに、第1の利用可能な水素のイオン化および非水溶性カルシウム塩を形成することができる塩アニオンに関連して、7を超えるpK
aを有する少なくとも1種の水溶性塩がさらに提供される。
【0035】
この点において、例示的な酸は、酢酸、ギ酸、プロパン酸およびこれらの混合物であり、前記水溶性塩の例示的なカチオンは、カリウム、ナトリウム、リチウムおよびこれらの混合物からなる群から選択され、前記水溶性塩の例示的なアニオンは、ホスフェート、二水素ホスフェート、一水素ホスフェート、オキサレート、シリケート、これらの混合物およびこれらの水和物からなる群から選択される。
【0036】
これらの表面反応天然炭酸カルシウムの調製に関するさらなる詳細は、EP2264108A1およびEP2264109A1に開示され、これらの内容はここで本出願に含まれる。
【0037】
同様に、表面反応沈降炭酸カルシウムが得られる。WO2009/074492A1から詳細に分かるように、表面反応沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムをH
3O
+イオンおよび水性媒体中で可溶化され、非水溶性カルシウム塩を形成することができるアニオンと、水性媒体中で接触させて、表面反応沈降炭酸カルシウムのスラリーを形成し、前記表面反応沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面上に形成された前記アニオンの不溶性の少なくとも部分的に結晶性のカルシウム塩を含む。
【0038】
前記可溶化カルシウムイオンは、H
3O
+イオンによる沈降炭酸カルシウムの溶解時に自然に生成される可溶化カルシウムイオンと比較して、過剰の可溶化カルシウムイオンに相当し、前記H
3O
+イオンは、アニオンに対して対イオンの形態で、即ち酸または非カルシウム酸性塩の形態のアニオンの添加により、およびさらなるカルシウムイオンまたはカルシウムイオン発生源の非存在下で、単独で提供される。
【0039】
前記過剰の可溶化カルシウムイオンは、好ましくは、可溶性中性または酸性カルシウム塩の添加によって、または可溶性中性もしくは酸性カルシウム塩をその場で生成する酸または中性もしくは酸性非カルシウム塩の添加によって提供される。
【0040】
前記H
3O
+イオンは、前記アニオンの酸もしくは酸性塩の添加、または同時に作用して、前記過剰の可溶化カルシウムイオンの全部または一部を提供する酸または酸性塩の添加によって提供され得る。
【0041】
表面反応天然または合成炭酸カルシウムの調製の好ましい実施形態において、天然または合成炭酸カルシウムを酸および/または二酸化炭素と、シリケート、シリカ、水酸化アルミニウム、ナトリウムアルミネートまたはカリウムアルミネートなどのアルカリ土類アルミネート、酸化マグネシウムまたはこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の存在下で反応させる。好ましくは、少なくとも1種のシリケートは、アルミニウムシリケート、カルシウムシリケートまたはアルカリ土類金属シリケートから選択される。これらの成分は、酸および/または二酸化炭素を添加する前に、天然または合成炭酸カルシウムを含む水性懸濁物に添加することができる。
【0042】
または、天然または合成炭酸カルシウムと酸および二酸化炭素との反応が既に開始しているときに、シリケートおよび/またはシリカおよび/または水酸化アルミニウムおよび/またはアルカリ土類アルミネートおよび/または酸化マグネシウム成分を、天然または合成炭酸カルシウムの水性懸濁物に添加することができる。少なくとも1種のシリケートおよび/またはシリカおよび/または水酸化アルミニウムおよび/またはアルカリ土類アルミネート成分の存在下での表面反応天然または合成炭酸カルシウムの調製に関するさらなる詳細は、WO2004/083316A1に開示され、この参考文献の内容はここで、本出願に含まれる。
【0043】
表面反応天然または合成炭酸カルシウムは、場合により分散剤によってさらに安定化させて、懸濁状態で維持することができる。当業者に公知の従来の分散剤を使用することができる。好ましい分散剤はポリアクリル酸である。
【0044】
または、上記水性懸濁物を乾燥させることができる。
【0045】
表面反応炭酸カルシウムは、例えばバラ、ゴルフボールおよび/または脳などの、各種の結晶形状を有し得る。表面反応炭酸カルシウムは、バラ状の結晶形を有することが好ましい。
【0046】
好ましい実施形態において、表面反応炭酸カルシウムは、窒素およびBET法を使用して測定した、20m
2/gから200m
2/g、好ましくは27m
2/gから180m
2/g、より好ましくは30m
2/gから160m
2/g、さらにより好ましくは45m
2/gから150m
2/g、とりわけ好ましくは48m
2/gから140m
2/gおよび最も好ましくは75m
2/gから100m
2/gの比表面積を有する。本発明の意味におけるBET比表面積は、粒子の質量で割った粒子の表面積として定義される。本明細書で使用する場合、該比表面積は、BET等温線(ISO 9277:1995)を使用して吸着により測定し、m
2/gで規定する。
【0047】
表面反応炭酸カルシウム粒子は、1から50μm、好ましくは1.3から25μm、より好ましくは2から20μm、さらにより好ましくは2.4から10μmおよび最も好ましくは5.1から8μmの体積中央粒度d
50(体積)を有することがさらに好ましい。
【0048】
さらに、表面反応炭酸カルシウム粒子は、1から75μm、好ましくは2から50μm、より好ましくは3から30μm、さらにより好ましくは4から20μmおよび最も好ましくは5から10μmの粒度d
98(体積)を有することがさらに好ましいことがある。
【0049】
値d
xは、粒子のx%がd
x未満の直径を有する粒径を表す。このことは、d
98値が全粒子の98%がこれより小さい粒径であることを意味する。d
98値は、「トップカット」とも呼ぶ。d
x値は、体積または重量パーセントで与えられ得る。このためd
50(重量)値は重量中央粒径であり、即ち全粒子の50重量%がこの粒径より小さく、d
50(体積)値は体積中央粒径であり、即ち全粒子の50体積%であるこの粒径よりも小さい。
【0050】
好ましくは、表面反応炭酸カルシウムは、0.004μm(〜nm)のラプラススロート直径(Laplace throat diameter)に相当する、414MPa(60 000psi)の最大印加水銀圧力を有するMicromeritics Autopore IV 9500水銀ポロシメータを使用する水銀圧入ポロシメトリー測定値から計算した、0.1から1.3cm
3/g、より好ましくは0.18から1.25cm
3/g、とりわけ好ましくは0.49から1.22cm
3/gおよび最も好ましくは0.7から1cm
3/gの範囲内の粒子内圧入比細孔容積を有する。各圧力ステップで使用する平衡時間は、20秒である。サンプル材料を分析用の5cm
3チャンバ粉末硬度計内に密閉する。ソフトウェアPore−Compを使用して、データを水銀圧縮ペネトロメータ拡張およびサンプル材料圧縮について補正する(Gane、P.A.C.,Kettle,J.P.,Matthews、G.P.and Ridgway、C.J.,“Void Space Structure of Compressible Polymer Spheres and Consolidated Calcium Carbonate Paper−Coating Formulations”,Industrial and Engineering Chemistry Research,35(5),1996,p1753−1764)。
【0051】
累積圧入データに見られる全細孔容積を、2つの領域に分離することができ、214μmから約1から4μmまでの圧入データは、強く寄与する任意の凝集構造間でのサンプルの粗充填を示している。これらの直径以下では、粒子自体の微細な粒子間充填が存在する。粒子が粒子内細孔も有する場合、ここでこの領域は双峰性に見える。これらの3つの領域の和は、粉末の全細孔容積を与えるが、分布の粗細孔端における粉末の元のサンプルの圧縮/沈降に強く依存する。
【0052】
累積圧入曲線の一次導関数を得ることにより、必然的に孔の遮蔽を含む等価なラプラス直径に基づく細孔径分布が明らかとなる。微分曲線は、もし存在するならば、粗凝集細孔構造領域、粒子間細孔領域および粒子内細孔領域を明らかに示している。粒子内細孔径範囲を知ることにより、全細孔容積から残りの粒子間および凝集間細孔容積を差し引いて、単位細孔容積(比細孔容積)当たりの細孔容積に対する内部細孔のみの所望の細孔容積を与えることが可能である。同じ減算の原理はもちろん、関心のある他の細孔径領域のいずれをも単離するために適用される。
【0053】
このため、サンプルの単位体積当たりの細孔容積として求められる粒子内孔隙率は、水銀ポロシメトリー測定値から計算して、20体積%(体積/体積)から99体積%(体積/体積)、好ましくは30体積%(体積/体積)から70容量%(体積/体積)、より好ましくは40容量%(体積/体積)から60容量%(体積/体積)の範囲内、例えば50容量%(体積/体積)である。
【0054】
表面反応炭酸カルシウムの粒子内細孔径は、水銀ポロシメトリー測定値により求められた、好ましくは10から100nmの範囲、より好ましくは20から80nmの範囲、とりわけ30から70nm、例えば50nmである。
【0055】
好ましい実施形態において、本発明による表面反応炭酸カルシウムは、ポリマー含有組成物に使用され、該ポリマーは、好ましくは1から50℃の範囲、より好ましくは10から40℃、とりわけ好ましくは15から30℃、最も好ましくは20から25℃の範囲のガラス転移温度T
gを有する。
【0056】
「ガラス転移温度(T
g)」は、当業者に周知のパラメータであり、熱硬化性ポリマーがより柔軟性、適合性の、即ち「ゴム状の」状態から冷却時に硬質、剛性の、即ち「ガラス状」の状態に変化する温度範囲である。T
gは、通例、示差走査熱量測定(DSC)ASTM E1356,“Standard Test Method for Assignment of the Glass Transition Temperature by Differential Scanning Calorimetry(示差走査熱量測定によるガラス転移温度の割当てのための標準試験方法)”を用いて測定する。T
gは実際には特定の温度ではなく、温度範囲である。しかし慣行は、熱流曲線の2つの平坦領域に対する接線で囲まれた温度範囲の中点として定義される、単一の温度を報告することである。
【0057】
とりわけ好ましいポリマーは、アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートおよびn−ブチル(メタ)アクリレート;酸モノマー、好ましくはアクリル酸およびメタクリル酸、これらのエステル;エチレン性不飽和ニトリル、好ましくはアクリロニトリル;エチレン;プロピレン;ブタジエン;スチレン;ならびにこれらの誘導体、塩および混合物を含む群から選択されるモノマーのホモポリマーおよび/またはコポリマーを含む群から選択される。
【0058】
本発明により、ポリマーは、粉末、水溶液、懸濁物またはエマルジョンの形態で使用され得て、場合によりさらなる添加剤を含有し得る。
【0059】
特に、WO2013/083504A1に記載されているようなポリマー、即ち
(a)C
1−C
4アルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上の主モノマー、
(b)0.1から5重量%の1種以上の酸モノマー、
(c)0から20重量%のアクリロニトリルおよび
(d)0から10重量%のモノマー(a)から(c)以外のさらなるモノマー
の乳化重合によって得られる少なくとも1種のコポリマーを含む水性ポリマー分散物が好ましく、
該コポリマーのガラス転移温度は10から45℃の範囲であり、該乳化重合を水性媒体中で、少なくとも1種の炭水化物化合物の存在下で行う。
【0060】
本発明において有利に使用され得るさらなる市販のポリマーは、クラリアントから入手可能なCartaseal
(R)シリーズ、例えばCartaseal
(R)TXU liq(アクリルポリマー)、Cartaseal
(R)SVU liq(エチレン−アクリル酸コポリマー)、Cartaseal VWF−DP(スチレン−アクリルコポリマー)、Cartastal SW−DP(エチレン−アクリル酸コポリマー)、BASF SEから入手可能なAcronal
(R)LR9014(アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルポリマーの分散物)、ドイツのキルヒベルク、55481のKeim additec surface GmbHから入手可能なUltraseal W−952(洗浄化合物とスチレン−ブタジエンコポリマーの混合物)、ドイツのキルヒベルク、55481のKeim additec surface GmbHUltraseal W−953 (パラフィンワックスとスチレン−ブタジエンコポリマーの混合物)、Trub Emulsions Chemieら入手可能なTecseal E787/50(エチレン−アクリルコポリマー分散物)、BASF SEから入手可能なEPOTAL
(R)シリーズ、例えばEPOTAL
(R)SP−101Dのポリマーであり得る。
【0061】
本発明によるポリマー含有組成物は、上で定義した少なくとも1種のポリマーを含有すると定義される。しかし該ポリマー含有組成物は、上で定義したおよび他のポリマーの混合物、ならびに従来の添加剤、例えば増粘剤、可塑剤、安定剤、潤滑剤、殺生物剤、分散剤、粉砕助剤、レオロジー改質剤、消泡剤、蛍光増白剤、染料、pH調節剤およびこれらの混合物を含む群から選択される添加剤も含み得る。
【0062】
表面反応炭酸カルシウムを、鉱物顔料および/または充填剤を含む群から選択される鉱物材料と、好ましくは沈降炭酸カルシウム(PCC)、天然粉砕炭酸カルシウム(GCC)、ドロマイト、タルク、ベントナイト、粘土、マグネサイト、サテンホワイト、ビオライト、ハンタイト、珪藻土、シリケート、二酸化チタンおよびこれらの混合物を含む群から選択される鉱物材料と、組合せて使用することが、とりわけ有利であり得ることが判明している。
【0063】
鉱物材料は、0.01から15μm、好ましくは0.1から10μm、より好ましくは0.3から5μm、とりわけ0.5から4μmおよび最も好ましくは0.7から2μmの重量中央粒径d
50(重量)を有する。
【0064】
天然粉砕炭酸カルシウムは、大理石、石灰石、チョークおよびこれらの混合物からなる群から選択され得て、沈降炭酸カルシウムは、アラゴナイト、ファーテライトまたはカルサイト鉱物質結晶形またはこれらの組み合わせを有する沈降炭酸カルシウムから選択され得て、より好ましくはR−PCC(菱面体晶PCC)、S−PCC(偏三角面体PCC)およびA−PCC(アラゴナイトPCC)であり得る。
【0065】
この点で、表面反応炭酸カルシウムおよび鉱物材料は、1:15から15:1、好ましくは1:10から10:1、より好ましくは1:7.5から7.5:1、最も好ましくは1:4から4:1、とりわけ1:1.5から1.5:1および特に1:1の重量比で組合されることが好ましい。
【0066】
成分のいずれの1つも互いに独立して、乾燥形態または懸濁物、分散物、スラリーもしくは溶液の形態で提供され、任意の順序で混合され得る。
【0067】
従って、表面反応炭酸カルシウム、または表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せを、ポリマー含有組成物に任意の順序で添加することができる。従って、最初に表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料とを混合し、続いてこの混合物をポリマー含有組成物に添加することが有利であり得る。しかし、最初に表面反応炭酸カルシウムを添加し、続いて鉱物材料を添加すること、またはこの逆も可能である。
【0068】
成分の混合は、当業者に既知の任意の適切な混合手段によって行われ得る。
【0069】
特定の実施形態において、水性コーティング組成物は、アルコールエーテル、アルコール、脂肪族炭化水素、エステルおよびこれらの混合物などのさらなる溶媒を含有し得る。好ましいアルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、s−ブタノールおよびt−ブタノールである。
【0070】
表面反応炭酸カルシウム、または表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せが、ポリマー含有組成物中に、ポリマーの乾燥重量に対して5から100重量%、好ましくは10から50重量%、より好ましくは15から45重量%、特に好ましくは20から40重量%、最も好ましくは25から33重量%の量で存在することが好ましい。
【0071】
表面反応炭酸カルシウム、または表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せは好ましくは、1:9から4:1、より好ましくは1:4から4:1、とりわけ好ましくは1:3から3:1、さらにより好ましくは1.5:1から1:1.5および特に1:1の、表面反応炭酸カルシウム、または表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せの、ポリマーに対する重量比でポリマー含有組成物中に存在する。
【0072】
本発明により、表面反応炭酸カルシウム、または表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せを含むポリマー含有組成物が、基材上にコーティングされて、該基材は、好ましくは非再生紙または再生紙および板紙、例えばカレンダー処理および非カレンダー処理、コートおよび非コート紙および板紙;合成紙;不織製品;包装材料;構造材、例えば化粧紙およびボール紙;ならびに表面仕上げ材を含む群から選択される。
【0073】
板紙は厚紙、折り畳み箱用板紙、無地漂白板紙、無地無漂白板紙、白ボールおよびバインダボードを含むボール紙;ならびに段ボール板紙から選択できる。様々な種類の板紙を区別するために一般に有効なコードが定義され、このコードは、表面処理の特徴、供給材料および指標で構成されている。板紙の呼称例は、GN1、GD、UN4である。
【0074】
板紙の表面処理では、キャストコート(A)、顔料コート(G)および非コート(U)を区別する。板紙を形成する供給材料形態は、5つの異なる群:化学漂白非再生繊維(Z)、非化学漂白非再生繊維(N)、砕木パルプ(C)、裏側が白、黄色または茶色の再生パルプ(T)および裏側が灰色の再生パルプ(D)に分けることができる。
【0077】
好ましい板紙は、GC1、GC2、GC3、UC2、GT1、GT2、GT3、GT4、GD2およびGD3からなる群から選択される。
【0078】
基材は、本発明によるポリマー含有組成物によって1回または数回コーティングされ得て、コーティングは当分野で周知であり、それぞれの基材に好適である従来技術、例えばブレードもしくはロールコーティング、フィルムプレスコーティング、ロッドコーティング、カーテンコーティングまたは当業者に既知の他の任意の技術によって行われ得る。
【0079】
各々のコーティング層のコート重量は、1から30g/m
2、好ましくは2から25g/m
2、より好ましくは3から20g/m
2、とりわけ好ましくは4から15g/m
2および最も好ましくは5から10g/m
2、例えば7g/m
2である。
【0080】
従って、得られたコート基材は、本発明のさらなる態様である。
【0081】
コート基材、とりわけコート紙または板紙は良好な鉱物油およびグリースバリアを示す。
【0082】
基材にコーティングしたポリマー含有組成物の粘着性(stickiness)、ひいてはブロッキングは、表面反応炭酸カルシウムを使用することによって著しく減少するか、または完全に防止され得る。
【0083】
従って、本発明のさらなる態様は、上で定義した表面反応炭酸カルシウムの使用によってポリマー含有組成物のブロッキングを制御する方法、ならびに表面反応炭酸カルシウムまたは上で定義した表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せを含むアンチブロッキング剤である。
【0084】
さらに、本発明は、上で定義した表面反応炭酸カルシウム、または表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せを含むポリマー含有組成物に関する。
【0085】
本発明のさらなる態様は、上で定義した表面反応炭酸カルシウムを含む、ポリマー含有組成物を含むコーティング組成物ならびに上で定義した表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せを含む、ポリマー含有組成物を含むコーティング組成物である。
【0086】
とりわけ後者の場合、鉱物材料は、天然粉砕炭酸カルシウム(GCC)から選択されることが好ましく、表面反応炭酸カルシウムおよび鉱物材料、好ましくは天然粉砕炭酸カルシウム(GCC)が1:1から1:4の重量比で組合されていることがとりわけ好ましい。
【0087】
この場合、ポリマー含有組成物に含まれるポリマーが、WO2013/083504A1に記載されているような水性ポリマー分散物から選択される、即ち
(a)C
1−C
4アルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上の主モノマー、
(b)0.1から5重量%の1種以上の酸モノマー、
(c)0から20重量%のアクリロニトリルおよび
(d)0から10重量%のモノマー(a)から(c)以外のさらなるモノマー
の乳化重合によって得られる少なくとも1種のコポリマーを含む水性ポリマー分散物を含み、
該コポリマーのガラス転移温度は10から45℃の範囲であり、該乳化重合を水性媒体中で、少なくとも1種の炭水化物化合物の存在下で行うことがさらにとりわけ好ましい。
【0088】
表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せが、1:4の表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料との組合せの、ポリマーに対する重量比で、ポリマー含有組成物中に存在することが特に有利である。
【0089】
以下の図面、実施例および試験は本発明を例示するが、本発明を決して限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【
図1】表面反応炭酸カルシウムのSEM画像を示す。
【
図2】非コートSynteape
(R)紙ならびに単独のならびにMM1およびSRCC1と組合せたポリマーを含む異なるコーティング組成物でコーティングしたSynteape
(R)紙で得られた粘着力測定の結果を示す。
【
図3】単独のならびにMM2およびSRCC1と組合せたポリマーを含む異なるコーティング組成物でコーティングしたSynteape
(R)紙で得られた粘着力測定の結果を示す。
【
図4】単独のならびにMM1およびSRCC2と組合せたポリマーを含む異なるコーティング組成物でコーティングしたSynteape
(R)紙で得られた粘着力測定の結果を示す。
【
図5】単独のならびにMM1およびSRCC4と組合せたポリマーを異なるコート重量で含むコーティング組成物でコーティングしたSynteape
(R)紙で得られた粘着力測定の結果を示す。
【
図6】単独ならびにMM1およびSRCC4と組合せたポリマーを異なるコート重量で含むコーティング組成物でコーティングしたSynteape
(R)紙で得られた粘着力測定の結果を示す。
【実施例】
【0091】
I.測定方法
以下では、実施例で行った測定方法について説明する。
【0092】
微粒子材料の粒径分布(粒径がX未満の粒子の質量%)ならびにd50(重量)値(重量中央粒度)ならびにd98(重量)値
d
50(重量)値およびd
98(重量)値は、米国のマイクロメリティックス社(Micromeritics)のセディグラフ(Sedigraph)5120を使用して測定した。方法および機器は当業者に公知であり、フィラーおよび顔料の粒径を決定するためによく使用されている。測定は、0.1重量%Na
4P
2O
7を含む水溶液中で行った。高速撹拌機および超音波を使用してサンプルを分散させた。
【0093】
微粒子材料の粒径分布(粒径がX未満の粒子の体積%)ならびにd50(体積)値(体積中央粒度)ならびにd98(体積)値
体積中央粒度d
50(体積)は、マルバーン・ゼータサイザ2000レーザ回折システムを用いて評価した。マルバーン・ゼータサイザ2000レーザ回折システムを用いて測定したd
50(体積)またはd
98(体積)値は、それぞれ粒子の50体積%または98体積%がこの値未満の直径を有するような直径値を示す。測定によって得られた生データを、Mie理論を使用して、粒子屈折率1.57および吸収指数0.005を用いて分析する。
【0094】
水性懸濁物の固体含有率
懸濁物固体含有率(「乾燥重量」としても公知)は、スイスのメトラートレド社(Mettler−Toledo)による水分分析装置MJ33を以下の設定:乾燥温度160℃、質量が30秒の期間にわたって1mgを超えて変化しない場合、自動スイッチオフ、5から20gの懸濁物の標準乾燥で使用して決定した。
【0095】
比表面積(SSA)
比表面積は、250℃にて30分の期間にわたって加熱することによるサンプルの調整後に、窒素を使用してISO 9277によるBET法により測定した。このような測定の前に、サンプルをブフナー漏斗内で濾過して、脱イオン水ですすぎ、オーブンで90から100℃にて一晩乾燥させる。続いて、乾燥ケーキを乳鉢で完全に粉砕し、恒量に達するまで生じた粉末130℃の湿度秤に配置する。
【0096】
SEM画像
走査型電子顕微鏡写真(SEM)は、ウルトラタラックス(ultraturax)(ロータ・ステータ・ミキサ)を使用して固体含有率を水中で20重量%の濃度に調整することによって行った。2,3滴(約100mg)を蒸留水250mlで希釈し、0.2μm孔膜フィルタで濾過した。このようにして膜フィルタ上で得た調製物を金でスパッタリングし、様々な拡大率にてSEMで評価した。
【0097】
粘着力
評価するコーティングの粘着力を、インク表面相互作用(Ink Surface Interaction(ISIT))試験機(SeGan Ltd.、英国)を用いた測定によって求めた。
【0098】
試験原理
表面粘着性は、ソレノイド、コイルバネ、ロードセルおよび接触ディスクからなる特殊アタッチメント(SeGan Ltd.、UK)によって測定する(P.A.C.Gane,E.Seyler,and A.Swan.Some novel aspects of ink/paper Interaction in offset printing.International Printing and Graphic Arts Conference,Halifax,Nova Scotia.Atlanta:Tappi Press.209−228,1994)。接触ディスクは、ソレノイドに作用する電磁力によってサンプルプラテンの表面に押し付けられる。この作用により、ソレノイドと並列に取り付けたコイルバネに伸張力が加えられる。接触時間および力は、接触ディスクと表面との間の接着を最適化するために電子制御装置によって変化させることができる。
【0099】
電磁力が停止すると、接触ディスクは、ディスクを表面から分離するのに十分な強さの、伸長したコイルバネの歪み力によって表面から後退する。接触ディスクとコイルバネとの間に固定された歪み計は、測定した粘着力として記録された荷重依存信号を発生する。試験中の粘着力の領域に及ぶように選択された所定のサイクル数の間、シーケンスが自動的に反復される。個々の分離を行うために必要な引張力の増大を時間と共に記録して、特別設計のソフトウェアによって分析することができる。各試験時点における最大レベルの引張力を、測定された粘着力の発生として時間と共にプロットする。
【0100】
II.材料
1.基板
−Synteape
(R):白色ハーフマットPPホイル、62g/m
2(YUPO(Art.:675227)から入手可能)
【0101】
2.表面反応炭酸カルシウム(SRCC)
−SRCC1
表面反応炭酸カルシウムSRCC1を以下のように調製した。
【0102】
水性懸濁物の総重量に対して16重量%の固体含有率が得られるように、沈降法によって測定した、2μm未満の90%の重量基準中央粒径を有するHustadmarmor製粉砕大理石炭酸カルシウムの固体含有率を調整することによって、粉砕炭酸カルシウムの水性懸濁物10リットルを混合容器内に準備した。
【0103】
スラリーを混合する間に、30重量%リン酸を含有する水溶液の形態でリン酸1.8kgを前記懸濁物に、70℃の温度にて9分間にわたって添加した。最後に、リン酸の添加後に、スラリーをさらに5分間撹拌してから、これを容器から取り出し、乾燥させた。
【0104】
得られたSRCC1は、バラ状構造(
図1参照)ならびに以下の特性:d
50(体積)=5.1μm、d
98(体積)=9.9μmおよびSSA=48m
2g
−1を有していた。粒子内圧入比細孔容積は、(0.004から0.51μmの細孔径範囲に対して)1.224cm
3/gである。
【0105】
−SRCC2
SRCC2は、スイスのオムヤAGから乾燥形態で市販されている表面反応炭酸カルシウムである。
【0106】
SRCC2は、バラ型構造ならびに以下の特性:d
50(体積)=2.4μm;d
98(体積)=9μm;BET SSA=27m
2/gを有し;粒子内圧入比細孔容積は、(0.004から0.421μmの細孔径範囲に対して)0.491cm
3/gである。
【0107】
−SRCC3
SRCC3は、スイスのオムヤAGから市販されている表面反応炭酸カルシウムである。
【0108】
SRCC3は、バラ型構造を有し、以下の特性:d
50(体積)=1.3μm;d
98(体積)=5μm;BET SSA=45m
2/g;粒子内圧入比細孔容積は、0.18cm
3/g(0.004から0.09μmの細孔直径範囲に対して)である。
【0109】
3.さらなる鉱物材料(MM)
−MM1:天然粉砕炭酸カルシウム;d
50(重量)=1.5μm;d
98(重量)=10μm;固体含有率78重量%(スイス、オムヤAGから入手可能)
−MM2:とりわけ脂肪酸によって表面処理された、非常に微細な天然粉砕炭酸カルシウム粉末;d
50(重量)=1.7μm;d
98(重量)=5μm;(スイス、オムヤAGから入手可能)
【0110】
3.ポリマー
以下の実験で使用したポリマーは、WO2013/083504A1の実施例4に従って調製した。
【0111】
反応器を窒素によってパージし、脱塩水427.1gおよびマルトデキストリン(C Dry MD 01915(濃度94.7%);Cargill)を30pphm(モノマー100重量部当たり重量部)の量で添加した。初期投入の混合物を86℃まで加熱した。次いで、ナトリウムペルオキソジサルフェート3.2g(濃度7%)を添加して5分間撹拌した。水180.0g、乳化剤(ダウファックス
(R)2A1、濃度45%)20.0gおよび55重量%エチルアクリレート、44重量%メチルメタクリレートおよび1重量%アクリル酸のモノマー混合物450.0gからなるエマルジョン供給を、2時間にわたって反応器中に計量した。エマルジョン供給と同時に、開始剤供給を開始し(ナトリウムペルオキソジサルフェート12.9gの、濃度7%)、同様に2時間にわたって計量した。エマルジョン供給が終了した後、系を45分間重合させた。次いで反応器を室温まで冷却した。
【0112】
得られた分散物は47重量%の固体含有率を有し、得られたポリマーは30℃のT
gを有していた。
【0113】
III.実験
1.サンプル調製
上記のインク表面相互作用試験機(ISIT)を用いて測定したサンプルの力の発現を比較することによって、ポリマーコーティングの粘着性(tackiness)即ち粘着性(stickiness)を試験した。
【0114】
別途記載しない限り、以下の表に示す組成を有するサンプルを以下のように調製した:
【0115】
2リットルのビーカー中に、30%NaOH溶液を使用して調整したポリマー分散物をpH8.5で準備した。続いて、表面反応炭酸カルシウムと鉱物材料の混合物を、ドイツ、シュプリンゲのPendraulik GmbH製のLD 50型Pendraulik実験用溶解器を用いて、500rpmにて10分間激しく撹拌しながら添加した。
【0116】
得られた混合物を、ワイヤー巻きロッド3を備えたErichsenバーコーター(K−Control−Coater K202、Model 624/製造番号57097−4)を使用して基材上にコーティングして、150℃、7.0m/分にてベルト乾燥機上で風乾した。別途記載しない限り、コーティング重量は約7g/m
2であった。
【0117】
続いて、サンプルの表面をグラビアローラに2回通過させて濡らし、300Nでそれぞれ通過させることによって1g/m
2の水を付着させ、各通過の間に5秒間の遅延を設けた。粘着性は、標準ISIT試験法に相当する500Nにて測定される。
【0118】
最後に、粘着力測定を上記のように行った。以下の結果は、別途記載しない限り、1サンプルに付き3回の測定値の平均値である。
【0119】
2.結果
まず、非コートのSynteape
(R)紙の粘着性を、以下の表1に示すように、異なる量のMM1およびSRCC1を含有するサンプルと比較した。
【0120】
【表2】
【0121】
図2から分かるように、非コートの基材に相当するサンプル1が最も低い粘着力を有するのに対して、最も高い粘着力は、ポリマーのみをコートした基材に相当するサンプル2によって発生する。
【0122】
ポリマー(サンプル3)にMM1を25重量%添加することにより、粘着性は二峰性粘着曲線を示す。この二峰性は、水が最初に表面水分として認められ、次いで吸収され、次いでポリマーマトリックスを可溶化することによってシートの粘着性(stickiness)を生じるためと考えられる。
【0123】
SRCC1によってMM1を2重量%置換すると(サンプル4)、粘着性(stickiness)がわずかに低下するが、SRCC1によって5重量%置換すると(サンプル5)、粘着性(stickiness)はほぼ完全に防止される。
【0124】
10、15および20重量%の鉱物材料をSRCC1で置換したサンプル6から8について、最終的に粘着性(stickiness)を認めることはできない。
【0125】
上の結果を考慮して、SRCC1のみを含有するコーティングと代替鉱物材料を用いてさらに実験を行い、サンプル1の非コートSynteape
(R)紙と比較した。組成は、表2から得ることができる
【0126】
【表3】
【0127】
図3から分かるように、5重量%のSRCC1を使用すると(サンプル9)、粘着性はわずかであるが低下するのに対して、10重量%使用すると(サンプル10)、20重量%のMM1および5wt%のSRCC1を含有するが、鉱物材料の量がより少ない、上のサンプル5に匹敵する、かなり強い影響を粘着性(stickiness)に与える。
【0128】
サンプル11を見ると、ポリマーと容易に混合しない疎水性顔料であるMM2は、25重量%の量でも、コーティングの粘着性(stickiness)をあまり低下させないことが分かる。
【0129】
表3に示す組成を有し、Synteape
(R)上にコートした表面反応炭酸カルシウムSRCC2について、さらに試験を行った。
【0130】
【表4】
【0131】
ポリマーのみでコートした紙(サンプル2)およびMM1のみでコートした紙(サンプル3)と比較して、Synteape
(R)紙にコートしたSRCC2を含有するコーティング(サンプル12および13)の結果を示す
図4から分かるように、サンプル12および13は、SRCC2の量の増加に伴って粘着性のより大きい低下を示した。
【0132】
さらに、表4に示す量のMM1およびSRCC3を用いて、ポリマー含有組成物のコート重量の影響を評価した。
【0133】
【表5】
【0134】
図5および6から分かるように、Synteape
(R)紙にコートしたコート重量に関する最良の性能(最も低下した粘着応答)を示すサンプルは、最も低いコート重量を有するサンプル(サンプル14および18)である。コート重量が7gm
−2であるサンプル15および19は、より高い粘着力を必要とするが、該粘着力はポリマーのみでコーティングした紙の粘着力よりもなお低い。10gm
−2のコート重量(サンプル16および20)はほぼ同じ結果を与え、SRCC3の量がより多いサンプル20は、より早い時間スケールにわたって、より低い粘着応答を与える。コート重量が15gm
−2である場合、両方のサンプルのサンプル17および21の粘着応答は、ポリマー単独の粘着応答と比較した場合にピークにてより高く、従って望ましくない。
【0135】
従って、コート重量が多すぎるべきでなく、より高いSRCC含有率を含有する組成物は、粘着性(stickiness)および鉱物材料の全量に関してより良好な結果をもたらすことが分かる。