特許第6603345号(P6603345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603345
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】介助ロボット
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/02 20060101AFI20191028BHJP
   A61G 7/14 20060101ALI20191028BHJP
   A61G 5/14 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   A61H1/02 Z
   A61G7/14
   A61G5/14 702
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-48340(P2018-48340)
(22)【出願日】2018年3月15日
(62)【分割の表示】特願2016-509850(P2016-509850)の分割
【原出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2018-134430(P2018-134430A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2018年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】五十棲 丈二
(72)【発明者】
【氏名】中根 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】野村 英明
【審査官】 村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−073501(JP,A)
【文献】 特開2011−083364(JP,A)
【文献】 特開平08−071114(JP,A)
【文献】 特開2008−279012(JP,A)
【文献】 米国特許第04985947(US,A)
【文献】 特開平11−047207(JP,A)
【文献】 特開2010−069002(JP,A)
【文献】 特開2010−142562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
A61H 3/04
A61G 5/14
A61G 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台に対して少なくとも上下動可能な保持基部と、
前記保持基部に設けられ、被介助者の体の一部を保持し、且つ、前記被介助者の体格に応じて形成されるアタッチメントである保持部と、
前記基台に対する前記保持部の動作を行うアクチュエータと、
前記保持部を着座姿勢から起立姿勢へ移動させるための前記アクチュエータの動作軌跡を予め記憶する記憶部と、
着座状態の前記被介助者の前記体格および着座高さの少なくとも一方に合うように、前記保持部の前記着座姿勢における上下方向位置の変更が入力操作される上下動操作部と、
前記アクチュエータを制御し、前記保持部を前記着座姿勢から前記起立姿勢へ移動させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記上下動操作部への入力操作に基づいて前記保持部の前記上下方向位置を移動させ、移動させた後の前記保持部の前記上下方向位置に応じて、前記起立姿勢へ移動させるための前記アクチュエータの前記動作軌跡を補正する、介助ロボット。
【請求項2】
前記保持部は、前記被介助者の体格に応じて形状を変更可能なアタッチメント本体を備える、請求項1に記載の介助ロボット。
【請求項3】
前記保持部は、前記被介助者の左右の脇を挟む、請求項1又は2に記載の介助ロボット。
【請求項4】
前記保持部は、
左右の肘載置部と、
前記被介助者により握られる左右の把持部と、
を備える、請求項1に記載の介助ロボット。
【請求項5】
前記保持部は、前記保持基部に対して着脱可能に設けられる、請求項1−4の何れか一項に記載の介助ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被介助者の起立動作を補助する介助ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜4に記載された介助ロボットが知られている。この種の介助ロボットは、着座姿勢から起立姿勢への動作を補助する。これらの介助ロボットは、着座姿勢における被介助者の上半身の一部を保持した状態で、起立姿勢へ移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−066082号公報
【特許文献2】特開2012−030077号公報
【特許文献3】特開2008−067849号公報
【特許文献4】特開2012−217686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、より安定した状態で起立動作を補助するためには、被介助者の着座姿勢及び被介助者の体格に応じた起立動作を行うことが求められる。
【0005】
本発明は、被介助者の着座姿勢及び被介助者の体格に応じた起立動作を行うことができる介助ロボットを提供することを目的とする。また、本発明は、簡易な構成により上記起立動作を行うことができる介助ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る介助ロボットは、基台と、前記基台に対して少なくとも上下動可能な保持基部と、前記保持基部に設けられ、被介助者の体の一部を保持し、且つ、前記被介助者の体格に応じて形成されるアタッチメントである保持部と、前記基台に対する前記保持部の動作を行うアクチュエータと、前記保持部を着座姿勢から起立姿勢へ移動させるための前記アクチュエータの動作軌跡を予め記憶する記憶部と、着座状態の前記被介助者の前記体格および着座高さの少なくとも一方に合うように、前記保持部の前記着座姿勢における上下方向位置の変更が入力操作される上下動操作部と、を備え、前記制御部は、前記上下動操作部への入力操作に基づいて前記保持部の前記上下方向位置を移動させ、移動させた後の前記保持部の前記上下方向位置に応じて、前記起立姿勢へ移動させるための前記アクチュエータの前記動作軌跡を補正する。
被介助者又は介助者が上下動操作部に入力操作することにより、着座状態の被介助者の体格および着座高さの少なくとも一方に合うように、保持部の着座姿勢における上下方向位置が変更可能となる。そして、移動した後の保持部の上下方向位置に応じて、保持部を起立姿勢へ移動させるためのアクチュエータの動作軌跡が補正される。つまり、被介助者の体格や着座高さに応じて、起立姿勢へ移動する保持部の動作の開始位置が自由に決定される。特に、被介助者又は介助者の入力操作によって開始位置が任意の上下方向位置に自由に決定されるため、介助ロボットの操作性が良好となり、被介助者の起立動作が安定して行われる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明による介助ロボットの一実施形態の右側から見た図である。
図2図1に示す伸張状態にある介助ロボットの内部構造の概要の右側から見た図である。
図3図1に示す伸張状態にある介助ロボットの内部構造の概要の後方から見た図である。
図4A図1に示す保持部まわりの上方から見た図である。
図4B図4Aに示す保持部の肘置きパッドを移動させた状態の保持部まわりの上方から見た図である。
図5図1に示す保持部のうち検出装置を示す断面図である。
図6図1に示す制御装置に関する機能ブロック図である。
図7A】介助ロボットが着座している被介助者を支えている様子を右側から見た図である。
図7B】介助ロボットが起立している被介助者を支えている様子を右側から見た図である。
図8】介助ロボットの起立動作を示す図である。
図9図6に示す第一制御部による処理を示すフローチャートである。
図10図6に示す補正部による処理を示すフローチャートである。
図11図6に示す第二制御部による処理を示すフローチャートである。
図12】介助ロボットの他の起立動作を示す図である。
図13】介助ロボットの他の起立動作を示す図である。
図14】他の保持部を取り付けた介助ロボットの右側から見た図である。
図15A図14に示す他の保持部まわりの上方から見た図である。
図15B図14に示す他の保持部の左右の脇挟持部の間隔を変化させた状態の保持部まわりの上方から見た図である。
図16】カム機構を用いた保持部を取り付けた介助ロボットの右側から見た図である。
図17図16に示すカム機構の構成部品の上方から見た図である。
図18図16の介助ロボットの一部の右側から見た図の部分断面図である。
図19】保持部を移動させた状態の介助ロボットの一部の右側から見た図である。
図20図19の介助ロボットの一部の右側から見た図の部分断面図である。
図21】カム溝の一部を使用した状態の介助ロボットの一部の右側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1.介助ロボットの構成)
以下、本発明による介助ロボットの一実施形態について説明する。介助ロボット10は、被介助者M1の体の一部(例えば、上半身)を支えて起立及び着座を補助する。介助ロボット10は、図1図3に示すように、基部11、アクチュエータ12、保持部13、ハンドル(把持部)14、操作装置15、記憶装置(記憶部)16及び制御装置17を備える。以下に、介助ロボット10の構造(記憶装置16及び制御装置17を除く構成)について、図1図5を参照して説明する。また、以下の説明において、前後左右は、介助ロボット10の進行方向を前方としたときの前後左右とする。
【0012】
基部11は、基台21、基部カバー22及び搭乗プレート23を備える。基台21は、後方(図1にて左方向)に開口する平面視略U字形状に形成される。具体的には、基台21は、左右フレーム21a,21b、及び左右フレーム21a,21bの一端部(本実施形態では前端部(図1及び図2にて右方向))を連結する連結フレーム21cを備える。左右フレーム21a,21bは、被介助者M1が入るために必要な間隔を開けて配置される。
【0013】
左右フレーム21a,21bの後端部には、左右後輪21d,21eがそれぞれ設けられる。なお、左右後輪21d,21eは、それぞれモータにより駆動するようにしてもよい。左右フレーム21a,21bの前端部には、左右前輪21h,21iがそれぞれ設けられる。左右前輪21h,21iは、介助ロボット10の進行方向に応じて回転可能である。
【0014】
基部カバー22は、図1に示すように、基台21を上方から覆うカバーである。基部カバー22は、基台21と同様に後方に開口する平面視略U字形状に形成される。搭乗プレート23は、図2及び図3に示すように、基台21のU字状開口部分に設けられる。被介助者M1が搭乗プレート23に搭乗することで、介助ロボット10は、牽引車として機能する。また、搭乗プレート23は、図2の二点鎖線にて示すように、立てた状態にすることができる。この場合には、介助ロボット10は、歩行器として機能する。
【0015】
アクチュエータ12(30)は、図2及び図3に示すように、スライド部31及び傾動部32を備える。スライド部31は、保持部13を基台21に対して上下動させる。傾動部32は、保持部13を基台21に対して傾動させる。
【0016】
スライド部31(40)は、左右スライド部41,42を備える。左スライド部41は、図3に示すように、スライド基部41a、第一スライド部41b及び第二スライド部41cを備える。左スライド部41の基部は、基台21の左フレーム21aに取り付けられる。すなわち、スライド基部41aは、基台21に対して前側に所定角度(例えば80度)にて傾斜させて取り付けられる。第一スライド部41bは、スライド基部41aに対して長手方向(軸動方向)にスライドするものであり、収縮した際にはスライド基部41a内にほぼ収容されるように構成される。第二スライド部41cは、第一スライド部41bに対して長手方向(軸動方向)にスライドするものであり、収縮した際には第一スライド部41b内にほぼ収容されるように構成される。
【0017】
第二スライド部41cの上端には、後方に向けて延設されているアーム部43(保持基部)が取り付けられる。本実施形態では、アーム部43は、左スライド部41の長手方向に対して直交している。アーム部43の先端部には、保持部13が回動自在に取り付けられる。
【0018】
さらに、スライド部31は、第一及び第二スライド部41b、41cをスライドさせる駆動用モータ45(上下動アクチュエータ、第一アクチュエータ)を備える。駆動用モータ45の出力は、変速機構46及び第一ベルト47を介して第二ベルト48に伝達されるように構成される。第二ベルト48は、プーリ48a及びプーリ48bに装架される。プーリ48aは、スライド基部41aの下端部に回転可能に取り付けられる。プーリ48bは、スライド基部41aの上端部に回転可能に取り付けられる。第一スライド部41bの下端部は、第二ベルト48に固定される。
【0019】
第三ベルト49は、プーリ49a及びプーリ49bに装架される。プーリ49aは、第一スライド部41bの下端部に回転可能に取り付けられる。プーリ49bは、第一スライド部41bの上端部に回転可能に取り付けられる。第二スライド部41cの下端部41c1は、第三ベルト49の一方側に固定される。スライド基部41aの上端部41a1は、第三ベルト49の他方側に固定される。
【0020】
左スライド部41は、第一スライド部41b及び第二スライド部41cをカバーするスライドカバー41d(図1に示す)を備える。スライドカバー41dは、筒状に形成される。スライドカバー41dは、1つの筒状体で構成するようにしてもよいし、2つの筒状体がスライドする二段スライド式で構成するようにしてもよい。
【0021】
右スライド部42は、図2及び図3に示すように、左スライド部41と同様に、スライド基部42a、第一スライド部42b及び第二スライド部42cを備える。右スライド部42の基部は、基台21の右フレーム21bに取り付けられる。第二スライド部42cの上端には、後方に向けて延設されているアーム部44(保持基部)が取り付けられる。アーム部44の先端部には、保持部13が回動自在に取り付けられる。
【0022】
さらに、駆動用モータ45の出力は、変速機構46及び第一ベルト51を介して第二ベルト52に伝達される。第二ベルト52は、プーリ52a及びプーリ52bに装架される。プーリ52aは、スライド基部42aの下端部に回転可能に取り付けられる。プーリ52bは、スライド基部42aの上端部に回転可能に取り付けられる。第一スライド部42bの下端部は、第二ベルト52に固定される。
【0023】
第三ベルト53は、プーリ53a及びプーリ53bに装架される。プーリ53aは、第一スライド部42bの下端部に回転可能に取り付けられる。プーリ53bは、第一スライド部42bの上端部に回転可能に取り付けられる。第二スライド部42cの下端部42c1は、第三ベルト53の一方側に固定される。スライド基部42aの上端部42a1は、第三ベルト53の他方側に固定される。
【0024】
右スライド部42は、第一スライド部42b及び第二スライド部42cをカバーするスライドカバー42d(図1に示す)を備える。スライドカバー42dは、スライドカバー41dと同様に構成される。
【0025】
駆動用モータ45が正方向に駆動すると、第二ベルト48が回転され、第一スライド部41bは、スライド基部41aに対して軸動方向に沿って伸張する。同時に、第一スライド部41bの上昇に伴って第三ベルト49が回転され、第二スライド部41cは、第一スライド部41bに対して軸動方向に沿って伸張する。左スライド部41の伸張動作は、右スライド部42においても同様である。
【0026】
一方、駆動用モータ45が逆方向に駆動すると、第二ベルト48が伸張時と反対回りに回転され、第一スライド部41bは、スライド基部41aに対して軸動方向に沿って収縮する。同時に、第一スライド部41bの下降に伴って第三ベルト49が伸張時と反対回りに回転され、第二スライド部41cは、第一スライド部41bに対して軸動方向に沿って収縮する。左スライド部41の収縮動作は、右スライド部42においても同様である。これにより、アーム部43,44及び保持部13は、基台21に対して上下動される。なお、スライド部31は、ベルトを用いる構成の他に、ボールねじなどを用いることもできる。
【0027】
傾動部32は、左右傾動部32a,32bを備える。左傾動部32aは、駆動用モータ32a1(傾動アクチュエータ)、変換機構32a2及び出力ロッド32a3を備える。変換機構32a2は、例えばボールねじを内蔵し、駆動用モータ32a1の回転出力を直線運動に変換して出力ロッド32a3に出力する。出力ロッド32a3は、変換機構32a2に対して軸方向に進退する。駆動用モータ32a1及び変換機構32a2は、第二スライド部41cの下端部に取り付けられる。左傾動部32aは、第二スライド部41c及びアーム部43に対して傾動可能に取り付けられる。出力ロッド32a3の出力端は、保持部13の前端部に傾動可能に取り付けられる。
【0028】
右傾動部32bは、左傾動部32aと同様に、駆動用モータ32b1(傾動アクチュエータ)、変換機構32b2及び出力ロッド32b3を備える。駆動用モータ32b1及び変換機構32b2は、第二スライド部42cの下端部に取り付けられる。右傾動部32bは、第二スライド部42c及びアーム部44に対して傾動可能に取り付けられる。出力ロッド32b3の出力端は、保持部13の前端部に傾動可能に取り付けられる。
【0029】
駆動用モータ32a1が正方向に駆動すると、出力ロッド32a3が出力方向に向けて進む(伸張する)。同時に、駆動用モータ32b1が正方向に駆動すると、出力ロッド32b3が出力方向に向けて進む(伸張する)。その結果、保持部13は、回転軸A1まわりに反時計回り方向(図1及び図2にて)に回転する(後傾される)。一方、駆動用モータ32a1が逆方向に駆動すると、出力ロッド32a3が後退する(収縮する)。同時に、駆動用モータ32b1が正方向に駆動すると、出力ロッド32b3が後退する(収縮する)。その結果、保持部13は、回転軸A1まわりに時計回り方向(図1及び図2にて)に回転する(前傾される)。これにより、保持部13は、基台21及びアーム部43,44に対して傾動される。
【0030】
保持部13は、基台21に対して少なくとも上下動可能かつ傾動可能である。また、保持部13は、アーム部43,44に対して傾動可能である。さらに、保持部13は、アーム部43,44に対して着脱可能(交換可能)なアタッチメントである。つまり、保持部13は、被介助者M1の体格に応じて形成される。介助ロボット10を使用する被介助者M1に合った保持部13が、アーム部43,44に装着される。
【0031】
保持部13の後端部は、アーム部43,44の回転軸A1まわりに回動自在に取り付けられる。保持部13の前端部は、傾動部32によって水平面に対して所定角度に調整され、その位置で支えられるようになっている。保持部13は、被介助者M1の体の一部(例えば、上半身)を保持して起立及び着座ならびに歩行(移動)を補助する。
【0032】
保持部13は、例えば、被介助者M1の起立動作及び着座動作において被介助者M1に対して対向したときに、その上半身を支える部材である。保持部13は、図4Aに示すように、後方向(図4Aにて下方向)に向けて開口する平面視略U字形状に形成される。保持部13は、平面視略U字形状に形成された2枚の板部材61,62(保持部本体、アタッチメント本体)が重ねられた状態で構成される。板部材61と板部材62との間には、図5に示すように、被介助者M1から受ける重量配分を検出する検出装置63が設けられる。
【0033】
検出装置63は、複数の圧力センサ63aから構成される。本実施形態では、圧力センサ63aは、保持部13の4つの角部に配設される。圧力センサ63aは被介助者M1の前後方向(図5にて左右方向)に沿って左右に二つずつ設けられる。被介助者M1の前方向に設けられる圧力センサ63aが、前側圧力センサ63afである。被介助者M1の後方向に設けられる圧力センサ63aが、後側圧力センサ63arである。圧力センサ63aは、荷重の変化によって変化する起歪体の歪み量を電圧変化として検出するものや、シリコンチップに圧力が加わると、そのたわみに応じ、ゲージ抵抗が変化し電気信号に変換される半導体式圧力センサなどである。なお、検出装置63は、面状圧力センサで構成されるようにしてもよい。
【0034】
図4Aに示すように、保持部13の上面の後端部には、一対の肘置きパッド64,64(肘載置部)が設けられる。保持部13の上面の前端部には、一対のハンドル14,14(把持部)が設けられる。ハンドル14,14は、被介助者M1の左右の手でそれぞれ握られるようになっている。
【0035】
左右の肘置きパッド64,64の各々は、図4Bに示すように、板部材61(保持部本体)に被介助者M1の左右方向間隔を可変に設けられる。さらに、左右の肘置きパッド64,64の各々は、ハンドル14,14との前後方向間隔を可変に設けられる。例えば、肘置きパッド64,64は、板部材61に対して着脱可能としてもよいし、前後方向及び左右方向に移動可能となるようにガイドされる機構を採用してもよい。
【0036】
左右の肘置きパッド64,64は、被介助者M1の体格に応じて適宜位置を調整される。これにより、被介助者M1が心地よい姿勢が維持され、且つ、被介助者M1を着座姿勢から起立姿勢へ動作する際に被介助者M1の姿勢が安定しやすい。
【0037】
保持部13の前後方向中央且つ左右方向中央には、胴体検出スイッチ66(胴体検出器)が設けられる。胴体検出スイッチ66は、板部材61の上面より上側に突出しており、被介助者M1の胴体との接触を検出する。
【0038】
保持部13の上面の前端部には、操作装置15が設けられる。操作装置15は、画像を表示する表示部15aと、使用者(介助者や被介助者M1)からの入力操作を受け付ける操作部15bとを備える。表示部15aは、液晶ディスプレイで構成されており、介助ロボット10の作動モードの選択画面などを表示する。操作部15bは、カーソルを上下左右に移動させるカーソルキー、入力をキャンセルするキャンセルキー,選択内容を決定する決定キーなどを備えており、使用者の指示をキー入力できるように構成される。
【0039】
操作装置15は、少なくとも、被介助者M1又は介助者により保持部13の上下方向位置の変更を操作する上下動操作部15cの機能、被介助者M1の身長を取得する身長取得部15dの機能、及び、起立開始スイッチ15eの機能を備える。上下動操作部15c、身長取得部15d及び起立開始スイッチ15eは、機能の発揮状況などを表示部15aに表示させてもよい。なお、操作装置15は、表示部15aの表示機能と操作部15bの入力機能とを備えており、画面上の表示を押すことで機器を操作するタッチパネルで構成するようにしてもよい。
【0040】
保持部13の下面には、図1に示すように、カバー65が下方に向けて取り付けられる。カバー65は、板状かつ扇状に形成されており、保持部13とアーム部43(又はアーム部44)との隙間を塞いでいる。
【0041】
(2.記憶装置及び制御装置の説明)
記憶装置16及び制御装置17について、図6図13を参照して説明する。
記憶装置16(記憶部)は、予め定めた標準的な体格に相当する仮想的な被介助者M1を着座状態から起立させる場合に、保持部13を基準着座姿勢から基準起立姿勢へ移動させるための、上下動アクチュエータとしての駆動用モータ45及び傾動アクチュエータとしての駆動用モータ32a1,32b1の動作軌跡を記憶する。
【0042】
保持部13の基準着座姿勢とは、図7Aに示すように、予め定めた高さの着座部に仮想的な被介助者M1が着座している状態において、被介助者M1の前腕を支える状態の保持部13の姿勢である。基準起立姿勢とは、図7Bに示すように、仮想的な被介助者M1が起立している状態において、被介助者M1の前腕を支える状態の保持部13の姿勢である。
【0043】
記憶装置16に記憶されるアクチュエータ45,32a1,32b1の動作軌跡によって介助ロボット10が動作した場合において、被介助者M1の肩部の動作軌跡Tas1は、図8の破線にて示す。つまり、被介助者M1は、前傾しながら、起立する。
【0044】
制御装置17は、各種情報に基づいて、上下動アクチュエータとしての駆動用モータ45及び傾動アクチュエータとしての駆動用モータ32a1,32b1を制御する。制御装置17は、第一制御部17aと、補正部17bと、第二制御部17cとを備える。
【0045】
第一制御部17aは、図9に示すように、被介助者M1又は介助者による上下動操作部15cへの操作の入力を判定する(S11)。第一制御部17aは、上下動操作部15cへの操作が入力された場合に、上下動操作に応じて上下動アクチュエータとしての駆動用モータ45を制御する(S12)。
【0046】
具体的には、被介助者M1が着座状態のときに、被介助者M1又は介助者が上下動操作部15cを上移動の操作を行うと、第一制御部17aが、駆動用モータ45を制御して、保持部13を上移動させる。一方、被介助者M1が着座状態のときに、被介助者M1又は介助者が上下動操作部15cを下移動の操作を行うと、第一制御部17aが、駆動用モータ45を制御して、保持部13を下移動させる。
【0047】
つまり、第一制御部17aは、被介助者M1が着座状態のときに、保持部13の高さが被介助者M1の前腕の高さに合うように、保持部13を移動させる。着座状態における被介助者M1の前腕の高さは、着座部の高さ及び被介助者M1の体格によって異なる。そこで、被介助者M1又は介助者が上下動操作部15cの操作を行うことによって、容易に、保持部13の高さが被介助者M1の前腕の高さに一致する。
【0048】
補正部17bは、記憶装置16に記憶される基準となる動作軌跡を、第一制御部17aによって移動された保持部13の上下方向位置及び被介助者M1の身長に基づいて補正する。補正部17bは、図10に示すように、第一制御部17aにより動作された状態の保持部13の上下方向位置を取得する(S21)。次に、補正部17bは、身長取得部15dにより取得された被介助者M1の身長を取得し(S22)、記憶装置16に記憶される動作軌跡を取得する(S23)。
【0049】
補正部17dは、取得した上記情報に基づいて、記憶装置16に記憶される動作軌跡を補正する。例えば、図12に示すように、高い着座部に被介助者M1が着座している状態であって、被介助者M1の身長が記憶装置16に記憶される標準的な体格の被介助者M1と同等の場合には、補正されたアクチュエータの動作軌跡による被介助者M1の肩部の動作軌跡Tas2は、実線にて示す動作軌跡となる。ここで、図12の破線は、記憶装置16に記憶される被介助者M1の肩部の動作軌跡Tas1である。
【0050】
また、被介助者M1が標準的な体格の被介助者M1に比べて小柄である場合には、補正されたアクチュエータの動作軌跡による被介助者M1の肩部の動作軌跡Tas3は、図13の実線にて示す動作軌跡となる。図13の破線は、記憶装置16に記憶される被介助者M1の肩部の動作軌跡Tas1である。
【0051】
第二制御部17eは、補正部17dにより補正されたアクチュエータの動作軌跡に基づいて、上下動アクチュエータとしての駆動用モータ45及び傾動アクチュエータとしての駆動用モータ32a1,32b1を制御する。
【0052】
第二制御部17eは、図11に示すように、起立開始スイッチ15eがONであるか否かを判定する(S31)。第二制御部17eは、起立開始スイッチ15eがONであれば、胴体検出スイッチ66がONであるか否かを判定する(S32)。胴体検出スイッチ66がONとなる状態とは、被介助者M1が胴体検出スイッチ66にもたれかかっている状態である。第二制御部17eは、上記何れかの判定を満たさなければ、再びS31から処理を繰り返す。つまり、第二制御部17eは、胴体検出スイッチ66がONである場合に起立動作を行うため、被介助者M1の安定した起立動作を実現できる。
【0053】
起立開始スイッチ15e及び胴体検出スイッチ66がONである場合には、第二制御部17eは、補正部17dにより補正されたアクチュエータの動作軌跡を取得する(S33)。続いて、第二制御部17eは、圧力センサ63aにより検出される各荷重を取得し(S34)、補正されたアクチュエータの動作軌跡及び荷重に応じて起立制御を行う。例えば、第二制御部17eは、被介助者M1が大きく前傾する場合には、被介助者M1の前傾を規制するような制御を行う。また、第二制御部17eは、被介助者M1が大きく後傾する場合には、被介助者M1の後傾を規制するような制御を行う。第二制御部17eは、起立位置へ到達するまでS34,S35の処理を繰り返し、起立位置へ到達した場合には処理を終了する(S36)。
【0054】
以上より、被介助者M1又は介助者が上下動操作部15cを操作することにより、被介助者M1が着座状態において保持部13の位置が任意の位置に移動可能となる。移動された保持部13の上下方向位置に応じて、所定の起立姿勢へ移動させるためのアクチュエータの動作軌跡が補正される。つまり、被介助者M1の着座高さ及び被介助者M1の体格に応じて、起立姿勢へ移動する開始位置が自由に決定される。特に、被介助者M1又は介助者の操作によって開始位置が任意の位置に自由に決定されるため、操作性が良好となり、起立動作が安定して行われる。ここでいう体格とは、被介助者M1の胴体の長さ、臀部の大きさ及び上腕長さなどである。さらに、被介助者M1の身長に応じて、アクチュエータの動作軌跡が補正される。従って、介助ロボット10は、被介助者M1の体格に応じた適切な起立動作を行うことができる。
【0055】
さらに、肘置きパッド64,64は、被介助者M1の左右方向間隔を可変に設けられ、且つ、ハンドル14,14との前後方向間隔を可変に設けられる。つまり、保持部13が、被介助者M1の体格に応じたものとなる。従って、介助ロボット10は、より確実に且つ安定的に、被介助者M1の起立動作を行うことができる。
【0056】
(3.アタッチメント)
保持部13は、上述したように、アーム部43,44に対して着脱可能なアタッチメントである。肘置きパッド64,64及びハンドル14,14を有する保持部13が、被介助者M1に応じて交換可能となる。
【0057】
また、上記構造の保持部13の他、図14図15Bに示す保持部113が適用可能である。保持部113は、被介助者M1の左右の脇で挟むタイプである。保持部113は、保持部113は、アーム部43,44に対して着脱可能なアタッチメントである。
【0058】
保持部113は、板部材61の上面に保持部本体166を備える。保持部本体166は、板部材61の中央に固定される中心固定部166aと、左右の脇挟持部166b,166cとを備える。左右の脇挟持部166b,166cは、中心固定部166aに対してスライド可能である。つまり、被介助者M1の体格に応じて、保持部本体166の形状が適宜変更される。
【0059】
このように、保持部13,113がアーム部43,44に対して着脱可能なアタッチメントとされることにより、被介助者M1の体格に応じて、且つ、被介助者M1の病状などに応じて、適切な保持部13,113が適用される。その結果、安定した起立動作が行われる。ここでいう体格とは、大柄や小柄などの被介助者M1の体型である。
【0060】
(4.カム機構)
上記においては、保持部13,113は、アーム部43,44に対して回転軸A1まわりに回転する。ここで、介助ロボット10が被介助者M1に対して着座状態から起立動作を行う場合に、介助ロボット10は、被介助者M1を前傾させながら上昇することが望まれる。上記構成の介助ロボット10は、被介助者M1を前傾させながら上昇することができる。以下に、カム機構を用いることにより、さらに大きな前傾動作を行うことができる介助ロボット200について説明する。
【0061】
図16図18に示すように、介助ロボット200は、第二スライド部41c,42cの上端に前方に向けて延設されているアーム部243,244(保持基部)を備える。アーム部243,244は、アーム部243,244の前端側を連結部245により連結される。さらに、アーム部243,244の各々は、左右外側に突出する2つずつのカムピン243a,243a,244a,244aを備える。
【0062】
保持部213は、板部材62の下面の左右に固定されるカム板266,267を備える。カム板266,267は、カム板266,267の後端側を連結部268により連結される。カム板266,267には、カム溝266a,267aが形成される。カム溝266a,267aは、前側を直線状に形成され、後側を円弧状に形成される。カム溝266a,267aには、カムピン243a,244aがカム溝266a,267aに沿って移動可能に挿入される。つまり、保持部213は、カム機構によりアーム部243,244に対して前後動可能且つ傾動可能に連結される。
【0063】
さらに、介助ロボット200は、直動アクチュエータ232(第二アクチュエータ)を備える。直動アクチュエータ232の一端が、連結部245に傾動可能に設けられ、直動アクチュエータ232の他端が、連結部268に傾動可能に設けられる。
【0064】
直動アクチュエータ232は、第二制御部17eにより制御される。図16及び図18に示すように直動アクチュエータ232が伸張している状態から、直動アクチュエータ232が収縮すると、保持部213は、図19及び図20に示すようになる。つまり、直動アクチュエータ232が収縮すると、保持部213は、カム溝266a,267aの直線状部分によって、前側へ移動する。さらに、カム溝266a,267aの円弧部分によって、保持部213は前傾する。従って、1つの直動アクチュエータ232によって、アーム部243,244に対して保持部213の前後動及び傾動が行われる。簡易な構成によって、保持部213の上記動作が可能となる。
【0065】
また、被介助者M1の体格が小さい場合には、図21に示すように、第二制御部17eは、カム溝266a,267aの全範囲を用いるのではなく、カム溝266a,267aの一部を用いるようにすることもできる。つまり、補正部17bは、被介助者M1の体格に応じてカム溝266a,267aの動作範囲が異なるようにアクチュエータ232の動作軌跡を補正する。これにより、被介助者M1の体格に応じた適切な前後動及び傾動が実現される。
【符号の説明】
【0066】
10,200:介助ロボット、 13,113,213:保持部、 14:ハンドル(把持部)、 15c:上下動操作部、 15d:身長取得部、 15e:起立開始スイッチ、 16:記憶装置(記憶部)、 17:制御装置、 17a:第一制御部、 17b:補正部、 17c:第二制御部、 17d:補正部、 17e:第二制御部、 21:基台、 31:スライド部、 32:傾動部、 32a1,32b1:駆動用モータ(アクチュエータ)、 43,44,243,244:アーム部(保持基部)、 45:駆動用モータ(第一アクチュエータ)、 61,62:板部材(アタッチメント本体)、 64:肘置きパッド(肘載置部)、 66:胴体検出スイッチ、 232:直動アクチュエータ(第二アクチュエータ)、 M1:被介助者
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
図21