特許第6603350号(P6603350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603350
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】ローエッジVベルト
(51)【国際特許分類】
   F16G 5/06 20060101AFI20191028BHJP
   F16G 5/20 20060101ALI20191028BHJP
   D02G 3/26 20060101ALI20191028BHJP
   D02G 3/44 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   F16G5/06 A
   F16G5/20 B
   D02G3/26
   D02G3/44
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-68458(P2018-68458)
(22)【出願日】2018年3月30日
(65)【公開番号】特開2019-178739(P2019-178739A)
(43)【公開日】2019年10月17日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀之
(72)【発明者】
【氏名】阿隅 通雄
(72)【発明者】
【氏名】小室 広一
【審査官】 岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/061100(WO,A1)
【文献】 特開2015−152101(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/121907(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 5/06
D02G 3/26
D02G 3/44
F16G 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト幅方向の両側にプーリ接触面が構成されたゴム製のVベルト本体と、
前記Vベルト本体に、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように埋設された心線と、
を備えた変速用のローエッジVベルトであって、
前記心線は、各々、2000dtex以上3000dtex以下のポリエステル繊維のフィラメント束が一方向に下撚りされた複数本の下撚り糸が引き揃えられ、前記複数本の下撚り糸が前記下撚りとは逆方向に上撚りされた諸撚り糸で構成されており、
120℃の温度雰囲気に1時間保持したときに、ベルト長さ300mm当たりに発生する前記心線を形成するポリエステル繊維1dtex当たりの収縮力が0.0015N以上であるローエッジVベルト。
【請求項2】
請求項1に記載されたローエッジVベルトにおいて、
前記下撚り糸の本数が2本以上4本以下であるローエッジVベルト。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたローエッジVベルトにおいて、
前記心線のベルト幅方向の配設ピッチが1.30mm以下であるローエッジVベルト。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載されたローエッジVベルトにおいて、
前記心線のベルト幅方向の外径が0.7mm以上1.3mm以下であるローエッジVベルト。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載されたローエッジVベルトにおいて、
前記心線の下撚り係数が2.0以上3.0以下であるローエッジVベルト。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載されたローエッジVベルトにおいて、
前記心線の上撚り係数が2.3以上3.5以下であるローエッジVベルト。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載されたローエッジVベルトにおいて、
前記心線の上撚り係数の下撚り係数に対する比が0.8以上1.8以下であるローエッジVベルト。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載されたローエッジVベルトにおいて、
前記心線は、上撚り係数が下撚り係数よりも大きいローエッジVベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速用のローエッジVベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
2輪車の変速装置には、変速用の動力伝達部材としてゴム製のローエッジVベルトが用いられている。例えば、特許文献1には、かかる変速用のローエッジVベルトの一種のダブルコグドVベルトであって、経時的なトランスミッションレシオの変化を抑えることを目的として、120℃で1時間の熱処理を行ったときの収縮率が1.2%以上2.0%以下である心線を埋設したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2015/121907
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、変速用のローエッジVベルトについて、経時的なトランスミッションレシオの変化を従来よりもさらに効果的に抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ベルト幅方向の両側にプーリ接触面が構成されたゴム製のVベルト本体と、前記Vベルト本体に、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように埋設された心線とを備えた変速用のローエッジVベルトであって、前記心線は、各々、2000dtex以上3000dtex以下のポリエステル繊維のフィラメント束が一方向に下撚りされた複数本の下撚り糸が引き揃えられ、前記複数本の下撚り糸が前記下撚りとは逆方向に上撚りされた諸撚り糸で構成されており、120℃の温度雰囲気に1時間保持したときに、ベルト長さ300mm当たりに発生する前記心線を形成するポリエステル繊維1dtex当たりの収縮力が0.0015N以上である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、変速用のローエッジVベルトについて、120℃の温度雰囲気に1時間保持したときに、ベルト長さ300mm当たりに発生する心線を形成するポリエステル繊維1dtex当たりの収縮力が0.0015N以上であることにより、経時的なトランスミッションレシオの変化を従来よりもさらに効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係るダブルコグドVベルトの一片の斜視図である。
図2】実施形態に係るダブルコグドVベルトのベルト幅方向に沿った断面図である。
図3】実施形態に係るダブルコグドVベルトのベルト長さ方向に沿った断面図である。
図4】心線を形成するポリエステル繊維1dtex当たりの収縮力とレシオ変化率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0009】
図1〜3は、実施形態に係るダブルコグドVベルトB(ローエッジVベルト)を示す。実施形態に係るダブルコグドVベルトBは、例えば、2輪車の変速装置における変速用の動力伝達部材として用いられるゴム製のエンドレスベルトである。実施形態に係るダブルコグドVベルトBは、例えば、ベルト長さが500mm以上1200mm以下、ベルト最大幅が16mm以上30mm以下、及びベルト最大厚さが8.0mm以上12.0mm以下である。
【0010】
実施形態に係るダブルコグドVベルトBは、ゴム製のVベルト本体10と、心線20と、補強布30とを備える。
【0011】
Vベルト本体10は、ベルト幅方向に沿った断面形状が、内周側の等脚台形と外周側の横長矩形とが積層されるように組み合わされた形状に形成されている。Vベルト本体10の両側のそれぞれの側面は、等脚台形の斜辺に対応するベルト厚さ方向に対して内側に傾斜して延びる傾斜面10aと、横長矩形の短辺に対応するベルト厚さ方向に延びる縦面10bとを有する。これらのうち傾斜面10aがプーリ接触面に構成されている。両側のプーリ接触面を構成する傾斜面10aのなす角度θは、例えば24°以上36°以下である。
【0012】
Vベルト本体10は、ベルト厚さの中間部に設けられた平帯状の接着ゴム層11と、接着ゴム層11の内周側に設けられた圧縮ゴム層12と、接着ゴム層11の外周側に設けられた伸張ゴム層13とを有する。プーリ接触面の傾斜面10aは、接着ゴム層11、圧縮ゴム層12、及び伸張ゴム層13の内周側の一部分の側面で構成され、縦面10bは、伸張ゴム層13の残りの部分の側面で構成されている。圧縮ゴム層12の内周には、ベルト長さ方向に沿った断面形状がサインカーブ状に形成された下コグ形成部12aが一定ピッチで配設されている。伸張ゴム層13の外周には、ベルト長さ方向に沿った断面形状が矩形状に形成された上コグ14が一定ピッチで配設されている。上コグ14は、例えば、高さが1.2mm以上2.5mm以下、幅が2.0mm以上5.0mm以下、及び配設ピッチが4.0mm以上6.0mm以下である。
【0013】
接着ゴム層11、圧縮ゴム層12、及び伸張ゴム層13は、ゴム成分に種々の配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物が加熱及び加圧されて架橋剤により架橋したゴム組成物で形成されている。ゴム成分としては、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)、エチレン−α−オレフィンエラストマー(EPDM、EPRなど)等が挙げられる。これらのうちクロロプレンゴムが好ましい。配合剤としては、補強材、充填剤、老化防止剤、軟化剤、架橋剤、加硫促進剤、加硫促進助剤等が挙げられる。接着ゴム層11、圧縮ゴム層12、及び伸張ゴム層13は、同一のゴム組成物で形成されていても、また、異なるゴム組成物で形成されていても、どちらでもよい。圧縮ゴム層12及び伸張ゴム層13を形成するゴム組成物には、ベルト幅方向の剛性を高めるために、補強材として、短繊維がベルト幅方向に配向するように含有されていてもよい。圧縮ゴム層12及び伸張ゴム層13を形成するゴム組成物のJISK6253−3:2012に基づいてタイプAデュロメータで測定される硬さは、A80以上A90未満であることが好ましい。
【0014】
心線20は、Vベルト本体10の接着ゴム層11の厚さ方向の中間部に、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように埋設されている。心線20のベルト幅方向の外径dは、好ましくは0.7mm以上1.3mm以下、より好ましくは0.9mm以上1.1mm以下である。心線20のベルト幅方向の配設ピッチPは、好ましくは1.30mm以下、より好ましくは1.25mm以下、更に好ましくは1.20mm以下である。
【0015】
心線20は、各々、2000dtex以上3000dtex以下のポリエステル繊維のフィラメント束が一方向に下撚りされた複数本の下撚り糸が引き揃えられ、それらの複数本の下撚り糸が下撚りとは逆方向に上撚りされた諸撚り糸で構成されている。下撚り糸の本数は、好ましくは2本以上4本以下、より好ましくは3本である。
【0016】
心線20の下撚り糸の繊度は、好ましくは2000dtex以上2500dtex以下、より好ましくは2100dtex以上2300dtex以下、更に好ましくは2200dtexである。下記式に基づいて算出される心線20の下撚り係数は、好ましくは2.0以上3.0以下、より好ましくは2.4以上2.8以下である。なお、複数本の下撚り糸の繊度及び下撚り係数は同一であることが好ましい。
【0017】
【数1】
【0018】
心線20の繊度は、好ましくは6000dtex以上7500dtex以下、より好ましくは6300dtex以上6900dtex以下、更に好ましくは6600dtexである。上記式に基づいて算出される心線20の上撚り係数は、好ましくは2.3以上3.5以下、より好ましくは2.7以上3.1以下である。上撚り係数は、下撚り係数よりも大きいことが好ましい。上撚り係数の下撚り係数に対する比(上撚り係数/下撚り係数)は、好ましくは0.8以上1.8以下、より好ましくは1.0以上1.3以下である。
【0019】
心線20には、Vベルト本体10の接着ゴム層11に対する接着性を付与するために、成形加工前に、エポキシ化合物又はイソシアネート化合物を含有する下地処理剤に浸漬した後に加熱する接着処理、RFL水溶液に浸漬した後に加熱する接着処理、及びゴム糊に浸漬した後に乾燥させる接着処理のうちの1つ又は2つ以上が施されていることが好ましい。
【0020】
補強布30は、Vベルト本体10の圧縮ゴム層12の内周面を被覆するように設けられている。この補強布30で圧縮ゴム層12の下コグ形成部12aが被覆されて下コグ15が構成されている。下コグ15は、例えば、高さが3.4mm以上5.0mm以下、幅が3.0mm以上6.0mm以下、及び配設ピッチが7.0mm以上11.0mm以下である。
【0021】
補強布30の厚さは、例えば0.1mm以上1.0mm以下である。補強布30は、例えば、織布や編布で構成されている。補強布30を形成する繊維材料としては、例えば、脂肪族ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、綿等が挙げられる。
【0022】
補強布30には、Vベルト本体10の圧縮ゴム層12に対する接着性を付与するために、成形加工前に、エポキシ化合物又はイソシアネート化合物を含有する下地処理剤に浸漬した後に加熱する接着処理、RFL水溶液に浸漬した後に加熱する接着処理、ゴム糊に浸漬した後に乾燥させる接着処理、及びVベルト本体10側となる面上に高粘度のゴム糊をコーティングして乾燥させる接着処理のうちの1つ又は2つ以上が施されていることが好ましい。
【0023】
実施形態に係るダブルコグドVベルトBのベルト強度は、好ましくは5000N以上、より好ましくは6000N以上である。
【0024】
実施形態に係るダブルコグドVベルトBは、120℃の温度雰囲気に1時間保持したときに、ベルト長さ300mm当たりに発生する心線20を形成するポリエステル繊維1dtex当たりの収縮力が0.0015N以上である。この収縮力は、好ましくは0.0016N以上、より好ましくは0.0017N以上である。なお、この収縮力は、好ましくは0.0030N以下である。この収縮力は、実施形態に係るダブルコグドVベルトBを120℃の温度雰囲気に1時間保持したときにベルト長さ300mm当たりに発生するベルト収縮力を、ベルト幅当たりの心線20を形成するポリエステル繊維の総繊度で除したものである。ベルト幅当たりの心線20を形成するポリエステル繊維の総繊度は、心線埋設位置におけるベルト幅W(ベルトピッチ幅)を心線20の配設ピッチPで除して算出される心線20の本数に、1本の心線20を形成するポリエステル繊維の繊度を乗じて求められる。
【0025】
本発明らは、レシオ固定であるVリブドベルト等に比べて、経時的なトランスミッションレシオの変化を抑えることが求められる変速用のローエッジVベルト、特にダブルコグドVベルトにおいて、種々検討した結果、かかる経時的なトランスミッションレシオの変化に対して支配的な影響を及ぼす寄与因子が、ベルトを高温度雰囲気下に保持した際に発生する心線20を形成するポリエステル繊維1dtex当たりの収縮力の大きさであり、この1dtex当たりの収縮力がこのレシオ変化率の抑制に支配的な要素であることを見出した。このことより、実施形態に係るトランスミッションレシオ変化(を行う)用のダブルコグドVベルトB、あるいは、その他のトランスミッションレシオ変化(を行う)用のローエッジVベルトによれば、120℃の温度雰囲気に1時間保持したときに、ベルト長さ300mm当たりに発生する心線20を形成するポリエステル繊維1dtex当たりの収縮力が0.0015N以上であることにより、図4に示すように、経時的なトランスミッションレシオの変化を抑えることができる。
【0026】
以上の実施形態に係るダブルコグドVベルトBは、公知の方法によって製造することができる。
【0027】
なお、上記実施形態では、ダブルコグドVベルトBとしたが、特にこれに限定されるものではなく、シングルコグドVベルトであってもよく、また、コグを有さないローエッジVベルトであってもよい。
【0028】
上記実施形態では、圧縮ゴム層12の内周面のみを補強布30で被覆した構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、伸張ゴム層13の外周面のみを補強布で被覆した構成であってもよく、また、圧縮ゴム層12の内周面及び伸張ゴム層13の外周面のいずれも補強布で被覆した構成であってもよく、さらに、圧縮ゴム層12の内周面及び伸張ゴム層13の外周面のいずれも補強布で被覆されていない構成であってもよい。
【実施例】
【0029】
(ダブルコグドVベルト)
<実施例>
補強布を用いずにゴムの下コグ形成部で下コグとしたことを除いて上記実施形態と同様の構成のダブルコグドVベルトであって、各々、1100dtexのポリエステル繊維のフィラメント束を2本束ねた2200dtexのポリエステル繊維のフィラメント束をS方向に下撚り係数を2.6として下撚りした3本の下撚り糸を引き揃え、それらの3本の下撚り糸をZ方向に上撚り係数を2.9として上撚りした繊度が6600dtexの諸撚り糸(1100/2×3)を心線とし、心線の配設ピッチを1.15mmとしたものを実施例とした。
【0030】
なお、実施例のダブルコグドVベルトは、ベルト長さが800mm、ベルト最大幅が21mm、ベルト最大厚さが10mm、両側のプーリ接触面を構成する傾斜面のなす角度が32°であった。接着ゴム層、圧縮ゴム層、及び伸張ゴム層は、クロロプレンゴム(CR)をゴム成分とするゴム組成物で形成した。圧縮ゴム層及び伸張ゴム層を形成するゴム組成物には、ベルト幅方向に配向するようにメタ系アラミド短繊維を含有させ、そのJISK6253−3:2012に基づいてタイプAデュロメータで測定される硬さはA85であった。下コグは、高さが4.0mm、幅が5.0mm、及び配設ピッチが7.5mmであり、上コグは、高さが2.0mm、幅が3.0mm、及び配設ピッチが5.7mmであった。心線のベルト幅方向の外径は1.0mmであった。心線には、イソシアネート化合物を含有する下地処理剤に浸漬した後に加熱する接着処理、RFL水溶液に浸漬した後に加熱する接着処理、及びゴム糊に浸漬した後に乾燥させる接着処理を施した。
【0031】
<比較例>
各々、1100dtexのポリエステル繊維のフィラメント束を2本束ねた2200dtexのポリエステル繊維のフィラメント束をS方向に下撚り係数を2.6として下撚りした5本の下撚り糸を引き揃え、それらの5本の下撚り糸をZ方向に上撚り係数を2.9として上撚りした繊度が11000dtexの諸撚り糸(1100dtex/2×5)を心線とし、心線の配設ピッチを1.50mmとしたことを除いて実施例と同一の構成のダブルコグドVベルトを比較例とした。比較例のダブルコグドVベルトでは、心線のベルト幅方向の外径は1.2mmであった。なお、この比較例のダブルコグドVベルトは、特許文献1に開示された実施例におけるベルト1と同一構成を有するものである。
【0032】
【表1】
【0033】
(試験方法)
<収縮率>
実施例及び比較例のそれぞれについて、炉内温度を120℃に設定した加熱炉に入れ、その状態で1時間保持した。そして、加熱前後のベルト長さの差の加熱前のベルト長さに対する百分率である収縮率を算出した。
【0034】
<収縮力>
実施例及び比較例のそれぞれについて、短冊状の試験片を作製した。チャンバー付き引張試験機を用い、チャンバー内の雰囲気温度を120℃に設定するとともに、チャンバー内のチャック間距離を300mmに設定した後、そのチャック間に試験片をセットして45Nの初荷重を負荷し、その状態で1時間保持した。そして、1時間後にロードセルで計測されたベルト収縮力を、ベルト幅当たりの心線を形成するポリエステル繊維の総繊度で除して収縮力を算出した。なお、ベルト幅当たりの心線を形成するポリエステル繊維の総繊度は、ベルトピッチ幅を心線の配設ピッチで除して算出される心線の本数に、1本の心線を形成するポリエステル繊維の繊度を乗じて求めた。
【0035】
<伝動効率>
実施例及び比較例のそれぞれについて、各々、巻き掛け径が可変である駆動プーリ及び従動プーリに巻き掛け、駆動軸トルクを4N・mとして駆動プーリを3000rmpで回転させてベルト走行させ、駆動プーリ及び従動プーリへの巻き掛け径が同一のときの入力回転数(N)、入力トルク(Tr)、出力回転数(N)及び出力トルク(Tr)を測定し、次式(1)に基づいて伝動効率を算出した。そして、実施例及び比較例の伝動効率を、後者の伝動効率を100として相対評価した。
【0036】
【数2】
【0037】
<レシオ変化率>
実施例及び比較例のそれぞれについて、各々、巻き掛け径が可変である駆動プーリ及び従動プーリに巻き掛け、駆動軸トルクを8N・mとして駆動プーリを5000rmpで回転させて200時間ベルト走行させ、駆動プーリ及び従動プーリへの巻き掛け径が同一のときのベルト走行開始直後の入力回転数(N)及び出力回転数(N)と、200時間ベルト走行後の入力回転数(N’)及び出力回転数(N’)とを測定し、次式(2)に基づいてトランスミッションレシオの変化率(レシオ変化率)を算出した。そして、実施例及び比較例のトランスミッションレシオの変化率(レシオ変化率)を、後者のレシオ変化率を100として相対評価した。
【0038】
【数3】
【0039】
(試験結果)
試験結果を表1に示す。
【0040】
表1によれば、実施例及び比較例は、高温度雰囲気下に保持した際の収縮率がほぼ同水準であることが分かる。しかしながら、実施例は、比較例と対比すると、高温度雰囲気下に保持した際に発生する心線を形成するポリエステル繊維1dtex当たりの収縮力が80%程度高いことが分かる。そして、その収縮力の高い実施例は、比較例と対比すると、伝動効率が11%高く、レシオ変化率が71%である、すなわち、伝動効率が高いことに加え、経時的なトランスミッションレシオの変化が非常に小さいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、ローエッジVベルトの技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0042】
B ダブルコグドVベルト
10 Vベルト本体
10a 傾斜面(プーリ接触面)
10b 縦面
11 接着ゴム層
12 圧縮ゴム層
12a 下コグ形成部
13 伸張ゴム層
14 上コグ
15 下コグ
20 心線
30 補強布
図1
図2
図3
図4