特許第6603397号(P6603397)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603397
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】超低温フリーザ
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/02 20060101AFI20191028BHJP
【FI】
   F25D23/02 305Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-504423(P2018-504423)
(86)(22)【出願日】2017年3月2日
(86)【国際出願番号】JP2017008316
(87)【国際公開番号】WO2017154733
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2018年6月14日
(31)【優先権主張番号】特願2016-48222(P2016-48222)
(32)【優先日】2016年3月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314005768
【氏名又は名称】PHCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 正
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5671675(JP,B2)
【文献】 特開2006−046852(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3018297(JP,U)
【文献】 実公昭29−015165(JP,Y1)
【文献】 実開昭57−100666(JP,U)
【文献】 米国特許第05600966(US,A)
【文献】 米国特許第01883609(US,A)
【文献】 特開平11−311477(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02445916(FR,A1)
【文献】 実開昭57−024358(JP,U)
【文献】 実開昭61−014190(JP,U)
【文献】 特公昭39−003200(JP,B1)
【文献】 実開昭52−031958(JP,U)
【文献】 国際公開第2011/142128(WO,A1)
【文献】 特公昭49−027892(JP,B1)
【文献】 実開昭54−143033(JP,U)
【文献】 中国実用新案第2692602(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口の周囲に第一周縁部を有する筐体と、
前記筐体に開閉自在に取り付けられた扉であって、閉じた時に前記第一周縁部と第一方向において対向する第二周縁部を有する扉と、
前記扉が閉じた時に前記第一および前記第二周縁部の間に介在するシール部材と、を備え、
前記シール部材は、
前記扉が閉じた時に前記第一および前記第二周縁部の間で第二方向に並ぶ中空の第一および第二空気層形成部と、
前記第一および前記第二空気層形成部の間に架け渡されて空気層を形成する第一接続部と、を有し、
前記第一接続部は、前記第二方向へと仮想的に平行移動した時に、前記第一および前記第二空気層形成部の一部と重なり合う形状を有し、
前記第一接続部の外周面と、前記第一および前記第二空気層形成部の外周面とは、前記開口の周囲に沿う延在方向に延在する第一および第二凹部を形成し、
前記第一および前記第二空気層形成部の内周面は、前記延在方向から平面視した時、互いに同一の真円形状または円弧形状を有する、超低温フリーザ。
【請求項2】
開口の周囲に第一周縁部を有する筐体と、
前記筐体に開閉自在に取り付けられた扉であって、閉じた時に前記第一周縁部と第一方向において対向する第二周縁部を有する扉と、
前記扉が閉じた時に前記第一および前記第二周縁部の間に介在するシール部材と、を備え、
前記シール部材は、
前記扉が閉じた時に前記第一および前記第二周縁部の間で第二方向に並ぶ中空の第一および第二空気層形成部と、
前記第一および前記第二空気層形成部の間に架け渡されて空気層を形成する第一接続部と、を有し、
前記第一接続部は、前記第二方向へと仮想的に平行移動した時に、前記第一および前記第二空気層形成部の一部と重なり合う形状を有し、
前記第一接続部の外周面と、前記第一および前記第二空気層形成部の外周面とは、前記開口の周囲に沿う延在方向に延在する第一および第二凹部を形成し、
前記第一および前記第二空気層形成部の内周面は、前記延在方向から平面視した時、互いに同一の曲率分布を有する楕円形状または楕円弧形状を有する、超低温フリーザ。
【請求項3】
前記第一および前記第二空気層形成部の各外周面には、前記第一または前記第二周縁部向かって突出するリブが形成されている、請求項1または2に記載の超低温フリーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、筐体と、閉じた扉との間に介在するシール部材を備えた超低温フリーザに関する。
【背景技術】
【0002】
上記超低温フリーザに関連する技術が、例えば特許文献1に冷却貯蔵庫のドア装置として記載されている。このドア装置では、外扉を閉じた時、フランジ部の庫内側の面が、シール部材としてのパッキンを介して出入口の庫外側の口縁に当接されるようになっている。ここで、このドア装置では、庫内側の当接面もパッキン側の当接面も平坦面になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−147476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、超低温フリーザに関しては、庫内温度が超低温域(例えば−50℃以下)になるため、高い断熱性・気密性が要求される。そのため、超低温フリーザは、家庭用冷蔵庫等とは異なり、扉がユーザにより筐体に強く押し付けられた状態で、扉をロック機構により筐体に固定する。よって、従来のシール部材のように庫内側の当接面もパッキン側の当接面も平坦面であると、扉を閉じた時に両当接面の間に水分が入り、当接面が庫内側の面に凍結すると、扉が開きにくくなる場合がある。
【0005】
上記問題点に鑑み、本開示の目的は、凍結により扉が開きにくくなることを低減可能なシール部材を備えた超低温フリーザを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、開口の周囲に第一周縁部を有する筐体と、前記筐体に開閉自在に取り付けられた扉であって、閉じた時に前記第一周縁部と第一方向において対向する第二周縁部を有する扉と、前記扉が閉じた時に前記第一および前記第二周縁部の間に介在するシール部材と、を備え、前記シール部材は、前記扉が閉じた時に前記第一および前記第二周縁部の間で第二方向に並ぶ中空の第一および第二空気層形成部と、前記第一および前記第二空気層形成部の間に架け渡されて空気層を形成する第一接続部と、を有し、前記第一接続部は、前記第二方向へと仮想的に平行移動した時に、前記第一および前記第二空気層形成部の一部と重なり合う形状を有し、前記第一接続部の外周面と、前記第一および前記第二空気層形成部の外周面とは、前記開口の周囲に沿う延在方向に延在する第一および第二凹部を形成し、前記第一および前記第二空気層形成部の内周面は、前記延在方向から平面視した時、互いに同一の真円形状または円弧形状を有する、超低温フリーザである。別の本開示は、開口の周囲に第一周縁部を有する筐体と、前記筐体に開閉自在に取り付けられた扉であって、閉じた時に前記第一周縁部と第一方向において対向する第二周縁部を有する扉と、前記扉が閉じた時に前記第一および前記第二周縁部の間に介在するシール部材と、を備え、前記シール部材は、前記扉が閉じた時に前記第一および前記第二周縁部の間で第二方向に並ぶ中空の第一および第二空気層形成部と、前記第一および前記第二空気層形成部の間に架け渡されて空気層を形成する第一接続部と、を有し、前記第一接続部は、前記第二方向へと仮想的に平行移動した時に、前記第一および前記第二空気層形成部の一部と重なり合う形状を有し、前記第一接続部の外周面と、前記第一および前記第二空気層形成部の外周面とは、前記開口の周囲に沿う延在方向に延在する第一および第二凹部を形成し、前記第一および前記第二空気層形成部の内周面は、前記延在方向から平面視した時、互いに同一の曲率分布を有する楕円形状または楕円弧形状を有する、超低温フリーザである。
【発明の効果】
【0007】
上記開示によれば、凍結により外扉が開きにくくなることを低減可能なシール部材を備えた超低温フリーザを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係る超低温フリーザの斜視図である。
図2図1の線II−II’に沿う超低温フリーザの断面を上方から見た時の図である。
図3図1の筐体の斜視図であって、外扉と複数の内扉を取り外した時の図である。
図4A図3の線IV−IV’に沿う超低温フリーザ(外扉を開けた時)の断面を斜め上方から見た時の斜視図である。
図4B図3の線IV−IV’に沿う超低温フリーザ(外扉を閉じた時)の断面を斜め上方から見た時の斜視図である。
図5】押し出し成型直後の直線状のシール部材を示す斜視図である。
図6】シール部材の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪1.実施形態≫
以下、上記図面を参照して、本開示の一実施形態に係る超低温フリーザ1について詳説する。
≪1−1.定義≫
各図において、x軸は、超低温フリーザ1の横方向を示し、より具体的には、ユーザが超低温フリーザ1と正対した時に左側から右側に向かう方向を示す。y軸は、超低温フリーザ1の前後方向を示し、より具体的には、上記正対時に奥側から手前側に向かう方向(即ち、前方向)を示す。また、z軸は、超低温フリーザ1の上下方向を示し、より具体的は、超低温フリーザ1の設置面(略水平面)から鉛直上方に向かう方向(即ち、鉛直上方向)を示す。
【0010】
≪1−2.超低温フリーザ1の概略構成≫
超低温フリーザ1は、図1図3に示すよう、基本的には、筐体2と、外扉3と、機械室4と、を備えている。なお、図1では、後述の断熱材23,33のように外部から視認出来ない構成を破線で示している。
【0011】
筐体2は、大略的には、例えば金属製の外装体21および内装体22と、複数枚の断熱材23と、を含む。外装体21は、筐体2の外形を定義する。内装体22は、外装体21の内側に設けられ、保存対象物を収容するためのスペース(以下、収容スペースという)Aを定義する。収容スペースAにおいて前方向の端部(以下、開口A1という)は、zx平面に平行な略矩形状をなす。複数枚の断熱材23は、好ましくは真空断熱パネルおよびポリウレタンの積層体等からなる。なお、図1図2には、都合上、全ての断熱材23が示されない。より具体的には、図1には、外装体21の右側面および内装体22の右側面の間に介在する二個の断熱材23と、外装体21の上面および内装体22の上面の間に介在する一個の断熱材23のみが破線により示される。また、図2には、筐体2の左右両側および背面に設けられた断熱材23が示される。断熱材23の真空断熱パネルは、左下がりのハッチングを付して示され、ポリウレタンは、右下がりのハッチングを付して示されている。
【0012】
外扉3は、例えば金属製の内装体31および外装体32と、内装体31および外装体32の間の空間に配置された少なくとも一枚の断熱材33と、を含む。外扉3は、ユーザ操作により、例えば三個のヒンジ34の回転軸まわりに回転し開閉する。外扉3は閉じた時に開口A1を塞ぐ。それに対し、外扉3を開いた時、ユーザは、後述の内扉5を開閉できるようになる。断熱材33は、好ましくは、断熱材23と同様の真空断熱パネルおよびポリウレタンの組み合わせからなる。なお、図1には、一枚の断熱材33が破線により例示される。また、図2では、一枚の断熱材33を構成する真空断熱パネルが外扉3の内面S10側に設けられ(左下がりのハッチングを参照)、ポリウレタンは、真空断熱パネルと外装体32との間に設けられる(右下がりのハッチングを参照)。
【0013】
また、外扉3には、開閉時にユーザが把持するハンドル35が設けられている。ハンドル35は、本実施形態では、ロック機構36を有する。ロック機構36は、外扉3を閉じた状態でロックしたり、外扉3を開くことができるようにロック状態を解除したりする。外扉3がロック機構36でロックされることで、超低温フリーザ1の気密性・断熱性を高くすることが出来る。
【0014】
また、外扉3の外面には、コントロールパネル37が設けられている。コントロールパネル37は、制御回路基板(図示せず)を内部に有すると共に、ユーザが操作・視認可能にタッチパネルを有する。タッチパネルは、例えば収容スペースAの目標温度(即ち、庫内温度の目標値)等をユーザが設定可能にする機器であると共に、現在の設定温度(庫内温度の目標値)等、様々な情報を表示する機器である。
【0015】
機械室4は、例えば、筐体2の下部に設けられている。機械室4には、周知の二元冷凍サイクル(カスケードサイクルともいう)が格納される。但し、二元冷凍サイクルの全要素が機械室4に格納されるのではなく、低温側蒸発器は、収容スペースAを取り囲むように、筐体2の外装体21と内装体22との間に配置され、カスケードコンデンサは収容スペースAの背面側に配置されている。その余の要素は機械室4に格納される。なお、二元冷凍サイクルの詳細に関しては、特開2010−096490号公報等に詳細に説明されているため、本実施形態での詳説は控える。
【0016】
また、機械室4の内部には、互いに独立的に制御される二基の単元多段冷凍サイクルが設けられても構わない。この場合、各単元多段冷凍サイクルに備わる蒸発器が収容スペースAを取り囲むように筐体2の内部に配置される。また、一方の単元多段冷凍サイクルに問題が発生しても、他方の単元多段冷凍サイクルにより収容スペースA内が超低温域に維持される。
【0017】
また、超低温フリーザ1は、好ましくは、少なくとも一枚の内扉5と、少なくとも一個の貯蔵ボックス6と、をさらに備える。
【0018】
各内扉5は、例えば樹脂で作製され、開口A1の右端に、少なくとも一個の内扉側ヒンジ(図示せず)によってz軸に平行な回転軸まわりに回転する。かかる内扉5は、ユーザ操作により開閉される。各内扉5は、閉じた時に開口A1の少なくとも一部を塞ぐ。それに対し、内扉5が開いた時、ユーザは収容スペースAにアクセス可能となる。このような内扉5により収容スペースA内の断熱効果が高められる。
【0019】
また、貯蔵ボックス6は、保存対象物を収容して、収容スペースA内に設けられた架台7の上に載置される。保存対象物を貯蔵ボックス6から取り出す場合、まず、ユーザは、外扉3および内扉5を開けて、貯蔵ボックス6を収容スペースAから引き出す。
【0020】
≪1−3.筐体2・外扉3の外表面≫
筐体2の外表面は、図2図3に示すように、筐体側左側面S1と、筐体側右側面S2と、背面S3と、筐体側周縁部S4と、天面S5と、底面S6と、を含む。
【0021】
左側面S1および右側面S2は、左右方向に互いに対向しており、例えば、yz平面と概ね平行な平面からなる。右側面S2は、左側面S1から横方向(即ちx軸方向)に約1030mm離れた位置にて左側面S1と対向する。
【0022】
背面S3および周縁部S4は前後方向に互いに対向しており、例えば、zx平面と概ね平行な面を含む。周縁部S4は、第一周縁部であって、背面S3からy軸方向に約793mm離れた位置にて背面S3と対向する。この周縁部S4は、開口A1の外縁に沿って開口A1を四方(即ち、上下左右)から取り囲む。
【0023】
天面S5および底面S6は、上下方向に互いに対向しており、例えば、xy平面と概ね平行な面を含む。天面S5は、底面S6から上方(即ちx軸方向)に約1540mm離れた位置にて底面S6と対向する。
【0024】
また、外扉3の外表面は、図2に示すように、扉側左側面S7と、扉側右側面S8と、外面S9と、内面S10と、扉側周縁部S11、を含む。なお、図2には、閉じた状態の外扉3に加え、開いた状態の外扉3も破線で示される。
【0025】
左側面S7および右側面S8は、外扉3が閉じた時、左右方向に互いに対向し、例えば、yz平面と概ね平行な面を含む。右側面S8は、左側面S7からx軸方向に約1030mm離れた位置にて左側面S7と対向する。また、左側面S7および右側面S8は、後述の内面S10の左端部および右端部から前方(即ちy軸方向)に向かっている。ここで、左側面S7および右側面S8のy軸方向長さは例えば約60mmである。
【0026】
外面S9および内面S10は、外扉3が閉じた時、前後方向に互いに対向する。内面S10は、外扉3が閉じた時、開口A1を塞ぐ。外面S9は、内面S10から前方向(即ちy軸方向)に最大で約90mmだけ離れている。
【0027】
扉側周縁部S11は、第二周縁部であって、内面S10の外縁部分をなし、外扉3が閉じた時に、zx平面と概ね平行な面を含む。また、周縁部S11は、外扉3が閉じた時、後述のシール部材10を介して周縁部S4と、第一方向の一例としてのy軸方向に互いに対向する。
【0028】
≪1−4.ブレーカ8,9とシール部材10≫
図4Aは、図3の線IV−IV’に沿う超低温フリーザ1(外扉3を開けた時)の前方左端部分の断面を斜め上方から見た時の拡大図である。図4Bは、図3の線IV−IV’に沿う超低温フリーザ1(外扉3を閉じた時)の前方左端部分の断面を斜め上方から見た時の拡大図である。なお、図示が煩雑になることを避けるため、図4Bには、シール部材10の各構成の参照符号を付していない。図5は、押し出し成型直後の直線状のシール部材10を示す斜視図である。
【0029】
以下、図3図5を参照して、シール部材10について詳説する。
以上の筐体側周縁部S4および扉側周縁部S11には、図4Aおよび図4Bに示すように、例えば樹脂製の筐体側ブレーカ8および扉側ブレーカ9が取り付けられることが好ましい。筐体側ブレーカ8は、外扉3の開閉に関わらず、y軸方向からの平面視で開口A1を取り囲むように周縁部S4上に設けられる。それに対し、扉側ブレーカ9は、外扉3が閉じた時に、y軸方向からの平面視で開口A1を取り囲むように、周縁部S11上に設けられる。
【0030】
以上の筐体側ブレーカ8を介して周縁部S4上に、y軸方向からの平面視で開口A1を取り囲むようにシール部材10が取り付けられる(図3を参照)。
【0031】
シール部材10は、典型的には、ゴムや樹脂等の弾性材料を押し出し成型により加工した後、周縁部S4の形状に整合するよう屈曲させることで作製される。かかるシール部材10は、基部101と、取付け部102、第一空気層形成部103と、第二空気層形成部104と、第三空気層形成部105と、第一接続部106と、第二接続部107と、複数のリブ108と、を含む。また、シール部材10は一体成形により作製されて、各部101〜107は一体的な構造をなしていることが好ましい。
【0032】
基材101は、y軸方向からの平面視で矩形枠状の形状を有すると共に、y軸方向に所定の厚みを有する。また、基材101は、y軸方向からの平面視で、開口A1の周囲に沿って延在するように、筐体側ブレーカ8上に設けられる。以下、基材101が延在する方向を延在方向pという。延在方向pは、図3に示すように、矩形状の開口A1の各辺に平行な方向である。即ち、延在方向pは、x軸またはz軸に平行な方向である。
【0033】
取付け部102は、基材101の背面から後方(即ち、基材101のy軸の負方向側)に突出する。この取付け部102は、筐体側ブレーカ8に形成されたスリット81に挿入され、これによって、シール部材10が筐体側ブレーカ8に取り付けられる。
【0034】
各空気層形成部103〜105は、中空になっており、基材101の前面から前方(即ち、y軸の正方向側)に突出すると共に、開口A1の全周囲を四方(即ち、上下左右)から取り囲むように設けられる。また、空気層形成部104,105は、空気層形成部103,104と第二方向qに所定の間隔を開けて並ぶ。ここで、第二方向qは、延在方向pおよびy軸方向(即ち、第一方向)と直交する方向である。より具体的には、延在方向pがz軸と平行な場合、空気層形成部103〜105はx軸方向(即ち、横方向)に沿って並ぶ。それに対し、延在方向がx軸と平行な場合、空気層形成部103〜105はz軸方向(即ち、上下方向)に沿って並ぶ。
【0035】
また、本実施形態では、空気層形成部103〜105は、外扉3が開いている時、図4Aに示すように、線IV−IV’を含む仮想平面で切断した時、楕円形状をなす内周面を有し、楕円弧をなす外周面を有する。ここで、仮想平面は、延在方向pに直交しかつy軸と平行な面である。各内周面の断面形状をなす楕円は互いに同一の曲率分布を有する。同様に、各外周面の断面形状を定義する楕円弧は互いに同一の曲率分布を有する。
【0036】
第一接続部106は、y軸方向からの平面視で、開口A1の全周囲を四方から取り囲み、かつ、空気層形成部103,104の外周面の間に架け渡されるように、両外周面を繋ぐ。第一接続部106は、第二空気層形成部104のy軸方向端部と略同一の形状を有する。より具体的には、第一接続部106の内周面および外周面は、第二空気層形成部104の内周面および外周面のy軸方向端部を仮想的に平行移動したような形状を有する。これによって、第一接続部106の内周面が、両空気層形成部103,104の外周面と、基材101の表面と共に、空気層を形成する。
【0037】
第二接続部107は、y軸方向からの平面視で、開口A1の全周囲を四方から取り囲み、かつ、空気層形成部104,105の外周面の間に架け渡されるように、両外周面を繋ぐ。第二接続部107の内周面は、第一接続部106と同様に、両空気層形成部104,105の外周面と、基材101の表面と共に、空気層を形成する。
【0038】
また、上記構成の空気層形成部103〜105および接続部106,107が備わることにより、シール部材10のy軸方向端部には、外扉3が閉じた時に、開口A1を四方から取り囲むように合計四個の凹部C1〜C4(即ち、第一凹部C1ないし第四凹部C4)が形成される。
【0039】
また、上記構成の空気層形成部103〜105および接続部106,107の各外周面には、y軸方向に突出する複数のリブ108が形成されている。
【0040】
≪1−5.シール部材の作用・効果≫
ユーザは、外扉3を閉じる時、図4Bに示すように、外扉3を筐体2に押し付けた状態で、ロック機構36を操作して、外扉3を筐体2に対し固定する。その結果、扉側周縁部S11がシール部材10を介して筐体側周縁部S4と近接し前後方向に対向する。この時、シール部材10は、扉側ブレーカ9と筐体側ブレーカ8との間で押し潰され、これによって、収容スペースAの温度を超低温域に維持することに寄与する。
【0041】
ここで、本シール部材10にはy軸方向端部に四個の凹部C1〜C4が形成される。従って、外扉3が閉じた時、シール部材10のy軸方向端部と、扉側ブレーカ9との間に残留した水分が各凹部C1〜C4により分割される。それゆえ、シール部材10のy軸方向端部と、扉側ブレーカ9の間の水分により、これらが凍結したとしても、凹部C1〜C4により分割された氷1つ当たりの扉側ブレーカ9との接触面積が減少するため、外扉3が開きにくくなることを低減することが出来る。
【0042】
また、各凹部C1〜C4は、外扉3が閉じられシール部材10がつぶれた状態では、凹部C1〜C4を形成するシール部材10の外周面が凹部C1〜C4の開口を広げるように互いに離れるため、各凹部C1〜C4の深さが浅くなる。それに対し、外扉3が開かれシール部材10が元の形状に復帰する際に、当該外周面が凹部C1〜C4の開口を狭めるように互いに近づいていき、各凹部C1〜C4の深さが深くなる。それゆえ、外扉3が閉じられているときに凹部C1〜C4内で凍結した氷は、外扉3が開かれることにより、凹部C1〜C4外へ押し出され、凹部C1〜C4内に残留することを低減することが出来る。これにより、外扉3が開きにくくなることを低減することが出来る。また、ユーザによる各凹部C1〜C4の清掃の負担を軽減することが出来る。
【0043】
また、本実施形態では、好ましい構成として、空気層形成部103〜105および接続部106,107のそれぞれの外周面に少なくとも1つのリブ108が設けられる。これにより、外扉3が閉じた時に、シール部材10のy軸方向端部と、扉側ブレーカ9とが線接触になるため、これらの間に残留した水分を、凹部C1〜C4のみの場合と比較してより確実に分割することができる。また、それぞれの当該外周面に複数のリブ108が設けられることで、氷の分割の数を増加させることができる。かかる分割数に応じて、分割された氷1つ当たりの扉側ブレーカ9との接触面積が減少することにより、シール部材10のy軸方向端部と、扉側ブレーカ9の間の水分により、これらが凍結したとしても、外扉3が開きにくくなることをさらに低減することが出来る。
【0044】
また、接続部106は、基材101の表面から離隔した位置にて、隣り合う二つの空気層形成部103,104を接続している。接続部107も同様である。それ故、各凹部C1〜C4の深さは相対的に浅く、ユーザは各凹部C1〜C4を簡単に清掃できる。それに対し、もし、接続部106,107が無い場合、空気層形成部103〜105の間を清掃しなければならず、手間のかかる清掃をユーザは強いられる。
【0045】
また、本シール部材10によれば、空気層形成部103〜105内の空気層に加えて、接続部106,107により空気層が追加されている。従って、第二方向qには合計五層の空気層が並ぶため、超低温フリーザ1の気密性・断熱性を向上させることが可能となる。
【0046】
また、本シール部材10によれば、各空気層103〜105の外周面および内周面は、y軸方向への中間位置にて、y軸方向と非平行に屈曲している。かかる屈曲点から延びる両辺はy軸と非平行である。この構成により、各空気層形成部103〜105は、y軸方向からの荷重が加わった時に、基材101側につぶれ易い構造になっている。
【0047】
さらに、空気層形成部103〜105において、各外周面の曲率分布は互いに等しく、各内周面の曲率分布も互いに等しい。さらに、接続部106,107の外周面および内周面の曲率分布も、空気層形成部103等の外周面および内周面の曲率分布と等しい。さらに、隣り合う空気層形成部103,104の間の間隔と、隣り合う空気層形成部104,105の間の間隔は互いに等しい。よって、外扉3を閉じて、シール部材10にy軸方向からの荷重が加わった時に、各空気層形成部103〜105は概ね同様につぶれるようになっている。これにより、外扉3を閉じた時、外部の熱が収容スペースA内に伝わりにくくなるため、超低温フリーザ1の気密性・断熱性を安定的になる。
【0048】
≪1−6.変形例≫
上記説明では、各空気層形成部103〜105の断面形状は略楕円形状であり、各接続部106,107の断面形状は楕円弧形状であった。しかし、これに限らず、図6最上段に示すように、各空気層形成部103,104の断面形状は真円状であっても構わない。接続部106の断面形状は、真円状の空気層形成部103,104のy軸方向端部を第二方向qに仮想的に平行移動させたような形状を有していても構わない。
【0049】
他にも、図6の上から二段目、三段目に示すように、各空気層形成部103〜105の断面形状は六角形状や五角形の形状をなしていても構わない。各接続部106,107の断面形状は、六角形状や五角形の空気層形成部103〜105のy軸方向端部をx軸方向に平行移動させたような形状を有していても構わない。
【0050】
他にも、図6の上から四段目、五段目に示すように、各空気層形成部103〜105の断面形状は半円状、半楕円状の形状をなしていても構わない。この場合、各接続部106,107の断面形状は、半円状、半楕円状の空気層形成部103〜105のy軸方向端部をx軸方向に平行移動させたような形状を有していても構わない。
【0051】
さらに他にも、図6の最下段に示すように、各空気層形成部103〜105の断面形状は半八角形状の形状をなしていても構わない。この場合、各接続部106,107の断面形状は、半八角形状の空気層形成部103〜105のy軸方向端部をx軸方向に平行移動させたような形状を有する。
【0052】
図6の上から四段目から最下段に示す各空気層形成部103〜105の場合、内周面および外周面における屈曲点から延びる両辺がy軸と非平行である訳では無いが、一方の辺が非平行である。この場合も、各空気層形成部103〜105は、y軸方向からの荷重が加わった時に、基材101側につぶれ易い。
【0053】
≪1−7.付記≫
上記説明では、シール部材10は、筐体2側の周縁部S4に設けられていた。しかし、これに限らず、シール部材10は、外扉3側の周縁部S11に設けられていても構わない。
【0054】
また、シール部材10は、三個の空気層形成部103〜105と、二個の接続部106,107と、を備えるとして説明した。しかし、これに限らず、シール部材10は、少なくとも二個の空気層形成部と、少なくとも一個の接続部と、を備えていれば良い。
【0055】
また、複数のリブ108は必須の構成では無く、必要に応じて設けられれば良い。
【0056】
本出願は、日本国特許庁に2016年3月11日付で提出した特許出願2016−048222に基づく優先権を主張する。特許出願2016−048222の内容は、参照により本出願に取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る超低温フリーザは、凍結により外扉が開きにくくなることを低減可能であり、生物医療等に関連する用途に好適である。
【符号の説明】
【0058】
1 超低温フリーザ
2 筐体
S4 筐体側周縁部
A1 開口
3 外扉
S11 扉側周縁部
10 シール部材
103 第一空気層形成部
104 第二空気層形成部
105 第三空気層形成部
106 第一接続部
107 第二接続部
C1 第一凹部
C2 第二凹部
108 リブ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6