(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記異相プロピレンコポリマー(HECO)は、前記異相プロピレンコポリマー(HECO)の総重量に基づくエチレン含量(EC‐HECO)が8〜18重量%である、請求項1〜2のいずれか一項に記載のポリオレフィン組成物(PO)。
前記自動車物品は、バンパ、ボディパネル、ロッカーパネル、サイドトリムパネル、インテリアトリム、ステップアシスト、スポイラ、フェンダおよびダッシュボードより選択される外装または内装自動車物品である、請求項8に記載の自動車物品。
前記異相プロピレンコポリマー(HECO)は、少なくとも一つの反応器で前記プロピレンホモポリマー(HPP)を生産し、前記プロピレンホモポリマー(HPP)を少なくとも一つの後続の反応器に移し、前記プロピレンホモポリマー(HPP)の存在下で前記弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)が生産されることにより得られる、請求項10に記載のプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下で本発明をさらに詳細に説明する。
【0024】
異相プロピレンコポリマー(HECO)
本発明の異相プロピレンコポリマー(HECO)は、
a)ISO1133にしたがって測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が100〜200g/10分の範囲内であるプロピレンホモポリマー(HPP)と、
b)弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)と
を含み、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、
(i)ISO1133にしたがって測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が15〜35g/10分の範囲内であり、
(ii)異相プロピレンコポリマー(HECO)の総重量に基づいて26〜36重量%の量の冷キシレン可溶性(XCS:xylene cold soluble)画分を含み、
さらに異相プロピレンコポリマー(HECO)の冷キシレン可溶性(XCS)画分は、
(iii)固有粘度(IV)が2.8〜3.8dl/gの範囲内であり、
(iv)異相プロピレンコポリマー(HECO)の冷キシレン可溶性(XCS)画分の総重量に基づくエチレン含量(EC:ethylene content)が35〜50重量%である。
【0025】
本発明による異なるポリマーに使用する言い回し(HECO、HPPおよびE)から、それらが互いに(化学的に)異ならなければならないことが明らかである。「異相」という表現は、マトリックスすなわちプロピレンホモポリマー(HPP)が、マトリックスの一部ではない(微細に)分散された包含物を含み、前記包含物が弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)を含むことを示す。本発明による「包含物」という用語は、マトリックスすなわちプロピレンホモポリマー(HPP)と包含物すなわち弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)とが異相プロピレンコポリマー(HECO)内において異なる相を形成し、前記包含物は例えば電子顕微鏡法または走査型力顕微鏡法などの高解像度顕微鏡法により視認可能であることを好ましくは示す。異相プロピレンコポリマー(HECO)の一部としてマトリックスすなわちプロピレンホモポリマー(HPP)と弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)とを含む最終ポリオレフィン組成物(PO)は、複合構造体であると考えられる。
【0026】
したがって本発明による異相プロピレンコポリマー(HECO)は、
a)マトリックス(M:matrix)としてのプロピレンホモポリマー(HPP)と、
b)プロピレンおよびエチレンから誘導される単位を含む、好ましくはプロピレンおよびエチレンから誘導される単位からなる弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)と
を含む。
【0027】
異相プロピレンコポリマー(HECO)中のプロピレン含量(PC‐HECO)は、異相プロピレンコポリマー(HECO)の総重量に基づいて、より好ましくは異相プロピレンコポリマー(HECO)のポリマー成分の量に基づいて、なお好ましくはマトリックス(M)すなわちプロピレンホモポリマー(HPP)と弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)とを合わせた量に基づいて、82〜92重量%であるのが好ましく、85〜91重量%であるのがより好ましい。残部はコモノマー、好ましくはエチレンを構成する。
【0028】
したがって異相プロピレンコポリマー(HECO)中のコモノマー含量、好ましくはエチレン含量(EC‐HECO)は、異相プロピレンコポリマー(HECO)の総重量に基づいて、より好ましくは異相プロピレンコポリマー(HECO)のポリマー成分の量に基づいて、なお好ましくはマトリックス(M)すなわちプロピレンホモポリマー(HPP)と弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)とを合わせた量に基づいて、8〜18重量%であるのが好ましく、9〜15重量%であるのがより好ましい。
【0029】
異相プロピレンコポリマー(HECO)中のプロピレンホモポリマー(HPP)含量は、異相プロピレンコポリマー(HECO)の総重量に基づいて64〜74重量%の範囲内であるのが好ましく、66〜72重量%の範囲内であるのがより好ましい。
【0030】
他方で異相プロピレンコポリマー(HECO)中の弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)含量は、異相プロピレンコポリマー(HECO)の総重量に基づいて26〜36重量%の範囲内であるのが好ましく、28〜34重量%の範囲内であるのがより好ましい。
【0031】
プロピレンホモポリマー(HPP)が異相プロピレンコポリマー(HECO)と比較して特定の重量比で存在することが好ましい。
【0032】
例えば、異相プロピレンコポリマー(HECO)のポリプロピレンホモポリマー(HPP)に対する重量比[HECO/HPP]は、3.0:1.0〜1.0:1.0である。異相プロピレンコポリマー(HECO)のポリプロピレンホモポリマー(HPP)に対する重量比[HECO/HPP]は、2.5:1.0〜1.0:1.0であるのが好ましく、2.0:1.0〜1.1:1.0であるのがより好ましく、1.8:1.0〜1.1:1.0であるのが最も好ましい。
【0033】
本発明の一つの要件は、異相プロピレンコポリマー(HECO)のISO1133にしたがって測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が15〜35g/10分の範囲内であり、好ましくは18〜35g/10分の範囲内であることである。
【0034】
異相プロピレンコポリマー(HECO)のポリプロピレンマトリックス(M)は、プロピレンホモポリマー(HPP)である。
【0035】
本発明で使用されるプロピレンホモポリマー(HPP)という表現は、実質的にすなわち99.7重量%超の、さらに好ましくは少なくとも99.8重量%のプロピレン単位からなるポリプロピレンに関する。好ましい実施形態では、プロピレンホモポリマー(HPP)中のプロピレン単位だけが検出可能である。
【0036】
したがって、ポリプロピレンマトリックス(M)すなわちプロピレンホモポリマー(HPP)のコモノマー含量は、好ましくは、0.2重量%を超えないなど、0.3重量%以下、例えば検出不能である。
【0037】
さらなる要件は、異相プロピレンコポリマー(HECO)のポリプロピレンマトリックス(M)すなわちプロピレンホモポリマー(HPP)のメルトフローMFR
2(230℃)が比較的高いことである。したがって、異相プロピレンコポリマー(HECO)のプロピレンホモポリマー(HPP)は、ISO1133にしたがって測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が100〜200g/10分の範囲内であるのが好ましく、100〜190g/10分の範囲内であるのがより好ましく、110〜190g/10分の範囲内であるのがさらに好ましい。
【0038】
異相プロピレンコポリマー(HECO)のプロピレンホモポリマー(HPP)は、ISO1133にしたがって測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)に関して単峰性であるのが好ましい。
【0039】
プロピレンホモポリマー(HPP)が異相プロピレンコポリマー(HECO)と比較して特定のメルトフローレートMFR
2(230℃)を有することが好ましい。
【0040】
例えば、ISO1133にしたがって測定される異相プロピレンコポリマー(HECO)のメルトフローレートMFR
2(230℃)に対する、ISO1133にしたがって測定されるポリプロピレンホモポリマー(HPP)のメルトフローレートMFR
2(230℃)[HECO/HPP][MFR
2(HPP)/MFR
2(HECO)]は、10.0:1.0〜2.0:1.0である。ISO1133にしたがって測定される異相プロピレンコポリマー(HECO)のメルトフローレートMFR
2(230℃)に対する、ISO1133にしたがって測定されるポリプロピレンホモポリマー(HPP)のメルトフローレートMFR
2(230℃)[HECO/HPP][MFR
2(HPP)/MFR
2(HECO)]は、9.0:1.0〜3.0:1.0であるのが好ましく、8.0:1.0〜3.5:1.0であるのがより好ましく、7.0:1.0〜4.0:1.0であるのが最も好ましい。
【0041】
マトリックス(M)すなわちプロピレンホモポリマー(HPP)の冷キシレン可溶性含量(XCS)は、プロピレンホモポリマー(HPP)の総重量に基づいて5重量%以下であるのが好ましく、4.5重量%以下であるのがより好ましく、3.5重量%以下であるのがさらに好ましい。マトリックス(M)すなわちプロピレンホモポリマー(HPP)の冷キシレン可溶性含量は、プロピレンホモポリマー(HPP)の総重量に基づいて2.5重量%以下であるのがさらに好ましい。
【0042】
加えてまたは代わりに、異相プロピレンコポリマー(HECO)のマトリックス(M)すなわちプロピレンホモポリマー(HPP)のコモノマー含量、好ましくはエチレン含量は、プロピレンホモポリマー(HPP)の総重量に基づいて2重量%以下であり、1.5重量%以下であるのがより好ましく、1重量%以下であるのがさらに好ましい。異相プロピレンコポリマー(HECO)のマトリックス(M)すなわちプロピレンホモポリマー(HPP)のコモノマー含量、好ましくはエチレン含量は、プロピレンホモポリマー(HPP)の総重量に基づいて0.5重量%以下であるのが好ましく、0.3重量%以下であるのがより好ましく、0.1重量%以下であるのがさらに好ましい。
【0043】
一実施形態では、プロピレンホモポリマー(HPP)は、分子量(Mw)が100,000〜250,000等、100,000〜400,000の間であるのが好ましい。
【0044】
加えてまたは代わりに、プロピレンホモポリマー(HPP)は、分子量分布(MWD)が4〜8等、3〜9の間であるのが好ましい。
【0045】
異相プロピレンコポリマー(HECO)の一つのさらなる必須成分は、弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)である。
【0046】
弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)は、(i)プロピレンおよび(ii)エチレンから誘導可能な単位を含み、好ましくは(i)プロピレンおよび(ii)エチレンから誘導可能な単位からなる。
【0047】
本発明においては、弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)におけるプロピレン(PC)から誘導可能な単位の含量は、弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)の総重量に基づいて50〜65重量%の範囲内であるのが好ましく、52〜64重量%の範囲内であるのがより好ましく、54〜63重量%の範囲内であるのがなお好ましく、56〜62重量%の範囲内であるのが最も好ましい。
【0048】
したがって、弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)は、エチレン(EC)から誘導可能な単位を、弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)の総重量に基づいて35〜50重量%含むのが好ましく、36〜48重量%含むのがより好ましく、37〜46重量%含むのがなお好ましく、38〜44重量%含むのが最も好ましい。弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)は、本段落および前段落に定義されたプロピレンおよび/またはエチレン含量の、エチレンプロピレン非共役ジエンモノマーポリマー(EPDM1)またはエチレンプロピレンゴム(EPR1)であるのが好ましく、後者であるのが特に好ましい。
【0049】
異相プロピレンコポリマー(HECO)の弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)は、ISO1133にしたがって測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)に関して単峰性であるのが好ましい。
【0050】
一実施形態では、弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)は、分子量分布が単峰性であるのが好ましい。弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)は、分子量(Mw)が250,000〜650,000等、好ましくは150,000〜700,000の間であるのが好ましい。
【0051】
加えてまたは代わりに、弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)は、分子量分布(MWD)が3.5〜7等、3.5〜8の間であるのが好ましい。
【0052】
一実施形態では、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、Mw(XCU)に対しMw(XCS)が2〜3等、1.5〜3.5の間である。
【0053】
異相プロピレンコポリマー(HECO)は、冷キシレン可溶性(XCS)画分を含む。
【0054】
異相プロピレンコポリマー(HECO)が、異相プロピレンコポリマー(HECO)の総重量に基づいて26〜36重量%の量の冷キシレン可溶性(XCS)画分を含むことが本発明の一つの要件である。例えば、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、異相プロピレンコポリマー(HECO)の総重量に基づいて、より好ましくは、28〜34重量%の範囲内の量の冷キシレン可溶性(XCS)画分を含む。
【0055】
異相プロピレンコポリマー(HECO)の冷キシレン可溶性(XCS)画分は、エチレン含量(EC)が異相プロピレンコポリマー(HECO)の冷キシレン可溶性(XCS)画分の総重量に基づいて35〜50重量%であり、より好ましくは36〜48重量%であり、なお好ましくは37〜46重量%であり、最も好ましくは38〜44重量%であることが本発明のさらなる要件である。
【0056】
異相プロピレンコポリマー(HECO)の冷キシレン可溶性(XCS)画分は、エチレン含量(EC)に関して単峰性であるのが好ましい。
【0057】
加えてまたは代わりに、冷キシレン可溶性(XCS)画分中に検出可能なプロピレンは、50〜65重量%の範囲であるのが好ましく、52〜64重量%の範囲であるのがより好ましく、54〜63重量%の範囲であるのがなお好ましく、56〜62重量%の範囲であるのが最も好ましい。
【0058】
本発明の一実施形態では、異相プロピレンコポリマー(HECO)の冷キシレン可溶性(XCS)画分の固有粘度(IV)はかなり高い。かなり高い固有粘度(IV)の値は、靭性を向上させる。したがって、異相プロピレンコポリマー(HECO)の冷キシレン可溶性(XCS)画分の固有粘度は、2.8dl/gを上回るものと理解される。他方で、固有粘度(IV)は高すぎてはならず、高すぎると流動性が減少する。したがって、異相プロピレンコポリマー(HECO)の冷キシレン可溶性(XCS)画分の固有粘度が2.8〜3.8dl/gの範囲内であることが本発明のもう一つの要件である。
【0059】
異相プロピレンコポリマー(HECO)の冷キシレン可溶性(XCS)画分は、ISO1133にしたがって測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)に関して単峰性であるのが好ましい。
【0060】
一実施形態では、異相プロピレンコポリマー(HECO)の冷キシレン可溶性(XCS)画分は、単峰形の分子量分布を有するのが好ましい。異相プロピレンコポリマー(HECO)の冷キシレン可溶性(XCS)画分は、分子量(Mw)が250,000〜650,000等、好ましくは150,000〜700,000の間であるのが好ましい。
【0061】
加えてまたは代わりに、異相プロピレンコポリマー(HECO)の冷キシレン可溶性(XCS)画分は、分子量分布(MWD)が3.5〜7等、3.5〜8の間であるのが好ましい。
【0062】
好ましくは、異相プロピレンコポリマー(HECO)は良好な靭性を示すことが望ましい。したがって、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、+23℃のシャルピーノッチ付き衝撃強度が30kJ/m
2以上であり、30〜60kJ/m
2の範囲内であるのがより好ましく、30〜56kJ/m
2の範囲内であるのがさらに好ましく、30〜53kJ/m
2の範囲内であるのが最も好ましいと理解される。
【0063】
加えてまたは代わりに、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、−20℃のシャルピーノッチ付き衝撃強度が5〜20kJ/m
2の範囲内であり、5〜16kJ/m
2の範囲内であるのがさらに好ましく、6〜13kJ/m
2の範囲内であるのが最も好ましい。
【0064】
加えてまたは代わりに、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、良好な引張弾性率を有しなければならない。異相プロピレンコポリマー(HECO)の引張弾性率は、850MPa以上であるのが好ましく、850〜1250MPaの範囲内であるのがより好ましく、900〜1250MPaの範囲内であるのがなお好ましく、950〜1200MPaの範囲内であるのがさらに好ましく、950〜1100MPaの範囲内であるのが最も好ましい。
【0065】
したがって、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、
i)ISO1133にしたがって測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が15〜35g/10分の範囲内であり、18〜35g/10分の範囲内であるのが好ましく、かつ
ii)引張弾性率が850MPa以上であり、850〜1250MPaの範囲内であるのがより好ましく、900〜1250MPaの範囲内であるのがなお好ましく、950〜1200MPaの範囲内であるのがさらに好ましく、950〜1100MPaの範囲内であるのが最も好ましく、かつ/または
iii)23℃のシャルピーノッチ付き衝撃強度が30kJ/m
2以上であり、30〜60kJ/m
2の範囲内であるのがより好ましく、30〜56kJ/m
2の範囲内であるのがさらに好ましく、30〜53kJ/m
2の範囲内であるのが最も好ましい。
【0066】
一実施形態では、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、
i)ISO1133にしたがって測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が15〜35g/10分の範囲内であり、18〜35g/10分の範囲内であるのが好ましく、かつ
ii)引張弾性率が850MPa以上であり、850〜1250MPaの範囲内であるのがより好ましく、900〜1250MPaの範囲内であるのがなお好ましく、950〜1200MPaの範囲内であるのがさらに好ましく、950〜1100MPaの範囲内であるのが最も好ましく、または
iii)23℃のシャルピーノッチ付き衝撃強度が30kJ/m
2以上であり、30〜60kJ/m
2の範囲内であるのがより好ましく、30〜56kJ/m
2の範囲内であるのがさらに好ましく、30〜53kJ/m
2の範囲内であるのが最も好ましい。
【0067】
あるいは、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、
i)ISO1133にしたがって測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が15〜35g/10分の範囲内であり、18〜35g/10分の範囲内であるのが好ましく、かつ
ii)引張弾性率が850MPa以上であり、850〜1250MPaの範囲内であるのがより好ましく、900〜1250MPaの範囲内であるのがなお好ましく、950〜1200MPaの範囲内であるのがさらに好ましく、950〜1100MPaの範囲内であるのが最も好ましく、かつ
iii)23℃のシャルピーノッチ付き衝撃強度が30kJ/m
2以上であり、30〜60kJ/m
2の範囲内であるのがより好ましく、30〜56kJ/m
2の範囲内であるのがさらに好ましく、30〜53kJ/m
2の範囲内であるのが最も好ましい。
【0068】
例えば、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、
i)ISO1133にしたがって測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が15〜35g/10分の範囲内であり、18〜35g/10分の範囲内であるのが好ましく、かつ
ii)引張弾性率が850MPa以上であり、850〜1250MPaの範囲内であるのがより好ましく、900〜1250MPaの範囲内であるのがなお好ましく、950〜1200MPaの範囲内であるのがさらに好ましく、950〜1100MPaの範囲内であるのが最も好ましく、かつ
iii)23℃のシャルピーノッチ付き衝撃強度が30kJ/m
2以上であり、30〜60kJ/m
2の範囲内であるのがより好ましく、30〜56kJ/m
2の範囲内であるのがさらに好ましく、30〜53kJ/m
2の範囲内であるのが最も好ましく、かつ
iv)−20℃のシャルピーノッチ付き衝撃強度が5〜20kJ/m
2の範囲内であり、5〜16kJ/m
2の範囲内であるのがさらに好ましく、6〜13kJ/m
2の範囲内であるのが最も好ましい。
【0069】
異相プロピレンコポリマー(HECO)は、α核形成されるのが好ましい。本発明は、β核形成剤を含まないのがなお好ましい。したがって、α核形成剤は、
(i)モノカルボン酸およびポリカルボン酸の塩、例えば安息香酸ナトリウムまたはtert‐ブチルベンゾエート、および
(ii)ジベンジリデンソルビトール(例えば1,3:2,4ジベンジリデンソルビトール)、およびメチルジベンジリデンソルビトール、エチルジベンジリデンソルビトールもしくはジメチルジベンジリデンソルビトール等のC
1〜C
8‐アルキル置換ジベンジリデンソルビトール誘導体(例えば1,3:2,4ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール)、または1,2,3‐トリデオキシ‐4,6:5,7‐ビス‐O‐[(4‐プロピルフェニル)メチレン]‐ノニトール等の置換ノニトール誘導体、および
(iii)リン酸のジエステルの塩、例えばナトリウム2,2’‐メチレンビス(4,6‐ジ‐tert‐ブチルフェニル)フォスフェートまたはアルミニウム‐ヒドロキシ‐ビス[2,2’‐メチレン‐ビス(4,6‐ジ‐t‐ブチルフェニル)フォスフェート]、および
(iv)ビニルシクロアルカンポリマーおよびビニルアルカンポリマー(以下に詳述)、ならびに、
(v)これらの混合物
からなる群より選択されるのが好ましい。
【0070】
このような添加剤は一般に市販されており、例えばHans Zweifelの”Plastic Additives Handbook”、第5版、2001年(871〜873ページ)に記載されている。
【0071】
異相プロピレンコポリマー(HECO)は、α核形成剤を異相プロピレンコポリマー(HECO)の総重量に基づいて最大5.0重量%含むのが好ましい。好ましい実施形態では、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、ジベンジリデンソルビトール(例えば1,3:2,4ジベンジリデンソルビトール)、ジベンジリデンソルビトール誘導体、好ましくはジメチルジベンジリデンソルビトール(例えば1,3:2,4ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール)、または置換ノニトール誘導体、例えば1,2,3‐トリデオキシ‐4,6:5,7‐ビス‐O‐[(4‐プロピルフェニル)メチレン]‐ノニトール、ビニルシクロアルカンポリマー、ビニルアルカンポリマー、およびこれらの混合物からなる群より特に選択されるα核形成剤を、200ppm以下含み、1〜200ppm含むのがより好ましく、5〜100ppm含むのがより好ましい。
【0072】
異相プロピレンコポリマー(HECO)は、ビニルシクロヘキサン(VCH)などのビニルシクロアルカンポリマーおよび/またはビニルアルカンポリマーを含むのが特に好ましい。ビニルシクロアルカンは、BNT技術により異相プロピレンコポリマー(HECO)に導入されるビニルシクロヘキサン(VCH:vinylcyclohexane)ポリマーであるのが好ましい。
【0073】
本異相プロピレンコポリマー(HECO)は、好ましくは、特定のプロセスにより得られる。したがって、好ましくは、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、第一反応器(第1R)および任意に第二反応器(第2R)においてプロピレンホモポリマー(HPP)が生産され、第三反応器(第3R)および任意に第四反応器(第4R)において異相プロピレンコポリマー(HECO)の弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)が得られる、逐次重合プロセスによって得られる。
【0074】
一実施形態では、好ましくは、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、第一反応器(第1R)においてプロピレンホモポリマー(HPP)が生産され、第三反応器(第3R)において異相プロピレンコポリマー(HECO)の弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)が得られる、逐次重合プロセスによって得られる。
【0075】
あるいは、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、第一反応器(第1R)および第二反応器(第2R)においてプロピレンホモポリマー(HPP)が生産され、第三反応器(第3R)および第四反応器(第4R)において異相プロピレンコポリマー(HECO)の弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)が得られる、逐次重合プロセスによって得られるのが好ましい。
【0076】
「逐次重合プロセス」という用語は、異相プロピレンコポリマー(HECO)が直列に接続された少なくとも二つの反応器、好ましくは四つの反応器など三つ以上の反応器において生産されることを示す。したがって本プロセスは、少なくとも第一反応器(第1R)、任意の第二反応器(第2R)、第三反応器(第3R)、および任意の第四反応器(第4R)を含む。例えば、本プロセスは、少なくとも第一反応器(第1R)、第二反応器(第2R)、第三反応器(第3R)、および任意の第四反応器(第4R)を含み、好ましくは少なくとも第一反応器(第1R)、第二反応器(第2R)、第三反応器(第3R)、および第四反応器(第4R)を含む。「重合反応器」という用語は、本重合が生じることを示すものとする。したがって、プロセスが三つまたは四つの重合反応器からなる場合には、この定義は、プロセス全体が例えば予備重合反応器における予備重合ステップを含む選択肢を排除しない。「からなる」という用語は、主重合反応器を考慮した閉鎖語句にすぎない。
【0077】
第一反応器(第1R)および任意の第二反応器(第2R)の後に、異相プロピレンコポリマー(HECO)のマトリックス(M)すなわちプロピレンホモポリマー(HPP)が得られる。このマトリックス(M)はその後、第三反応器(第3R)および任意の第四反応器(第4R)内に、好ましくは第三反応器(第3R)および第四反応器(第4R)内に移され、そこで弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)が生産されて、本発明の異相プロピレンコポリマー(HECO)が得られる。
【0078】
マトリックス(M)すなわちプロピレンホモポリマー(HPP)と弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)との間の重量比[(M)/(E)]は、85/15〜55/45であるのが好ましく、80/20〜60/40であるのがより好ましい。
【0079】
第一反応器(第1R)は、スラリー反応器であるのが好ましく、バルクまたはスラリーで運転する任意の連続または単純な撹拌バッチ槽反応器またはループ反応器でありうる。バルクは、少なくとも60%(w/w)のモノマーを含む反応媒体における重合を意味する。本発明によれば、スラリー反応器(SR:slurry reactor)は(バルク)ループ反応器(LR:loop reactor)であるのが好ましい。
【0080】
任意の第二反応器(第2R)、第三反応器(第3R)、および任意の第四反応器(第4R)は、気相反応器(GPR)であるのが好ましい。このような気相反応器(GPR)は、任意の機械混合または流動床反応器でありうる。気相反応器(GPR)は、ガス速度が少なくとも0.2m/秒の機械撹拌(agitated)流動床反応器を含むのが好ましい。したがって気相反応器は、機械的撹拌器を好ましくは有する流動床型反応器であるものと理解される。
【0081】
したがって好ましい実施形態では、第一反応器(第1R)はループ反応器(LR)などのスラリー反応器(SR)であり、任意の第二反応器(第2R)、第三反応器(第3R)および任意の第四反応器(第4R)は気相反応器(GPR:gas phase reactor)である。したがって本プロセスには、少なくとも二つ、好ましくは二つまたは三つまたは四つの重合反応器、すなわちループ反応器(LR)などのスラリー反応器(SR)、任意に第一気相反応器(GPR‐1)、第二気相反応器(GPR‐2)、および任意に第三気相反応器(GPR‐3)が直列に接続されて使用される。必要に応じて、スラリー反応器(SR)の前に予備重合反応器が置かれる。
【0082】
一実施形態では、第二反応器(第2R)はスラリー反応器(SR)でありうる。この実施形態では、第一反応器(第1R)および第二反応器(第2R)はスラリー反応器(SR)であり、第三反応器(第3R)および任意の第四反応器(第4R)は気相反応器(GPR)である。
【0083】
好ましい多段階プロセスは、例えば欧州特許第0887379号、国際公開第92/12182号、国際公開第2004/000899号、国際公開第2004/111095号、国際公開第99/24478号、国際公開第99/24479号、または国際公開第00/68315号等の特許文献などに記載されるデンマークのBorealis A/Sにより開発された(BORSTAR(登録商標)技術として知られる)もの等の「ループ‐気相」プロセスである。
【0084】
さらなる適切なスラリー‐気相プロセスは、BasellのSpheripol(登録商標)プロセスである。
【0085】
好ましくは、上に定義された異相プロピレンコポリマー(HECO)を生産するための本プロセスにおいて、第一反応器(第1R)すなわちループ反応器(LR)などのスラリー反応器(SR)の条件は、以下の通りでありうる:
‐ 温度は40℃〜110℃の範囲内であり、68〜95℃など、60℃〜100℃の間であるのが好ましく、
‐ 圧力は20バール〜80バールの範囲内であり、35バール〜70バールの間であるのが好ましく、
‐ それ自体公知の様式でモル質量を制御するために水素が添加されうる。
【0086】
その後、第一反応器(第1R)からの反応混合物が、任意の第二反応器(第2R)すなわち気相反応器(GPR‐1)へ移され、その条件は好ましくは以下の通りである:
‐ 温度は50℃〜130℃の範囲内であり、60℃と100℃との間であるのが好ましく、
‐ 圧力は、5バール〜50バールの範囲内であり、15バール〜35バールの間であるのが好ましく、
‐ それ自体公知の様式でモル質量を制御するために水素が添加されうる。
【0087】
第一反応器(第1R)および第二反応器(第2R)がスラリー反応器である場合、第二反応器(第2R)すなわちスラリー反応器の条件は、第一反応器(第1R)と同様であるのが好ましい。
【0088】
第三反応器(第3R)および任意の第四反応器(第4R)、好ましくは第二気相反応器(GPR‐2)および任意に第三気相反応器(GPR‐3)の条件は、第二反応器(第2R)と同様である。これは、第二反応器(第2R)が気相反応器(GPR‐1)である場合に、好ましくは当てはまる。この実施形態では、第二反応器(第2R)すなわち気相反応器(GPR‐1)の条件は、第一反応器(第1R)の条件と異なるのが好ましい。
【0089】
第一反応器(第1R)および第二反応器(第2R)がスラリー反応器である場合、第三反応器(第3R)および任意の第四反応器(第4R)の条件は好ましくは以下の通りである:
‐ 温度は50℃〜130℃の範囲内であり、60℃と100℃との間であるのが好ましく、
‐ 圧力は、5バール〜50バールの範囲内であり、10バール〜35バールの間であるのが好ましく、
‐ それ自体公知の様式でモル質量を制御するために水素が添加されうる。
【0090】
滞留時間は、三つの反応器ゾーンで変動しうる。
【0091】
異相プロピレンコポリマー(HECO)を生産するプロセスの一実施形態では、第一反応器(第1R)すなわちループ反応器(LR)などのスラリー反応器(SR)の滞留時間は0.2〜4時間、例えば0.3〜1.5時間の範囲内であり、気相反応器の滞留時間は一般に0.5〜4.0時間など、0.2〜6.0時間となる。
【0092】
必要に応じて、重合は、第一反応器(第1R)すなわちループ反応器(LR)などスラリー反応器(SR)で超臨界条件下で、および/または気相反応器で凝縮モードとして、既知の様式でもたらされうる。
【0093】
本プロセスは、使用される触媒系による予備重合も含むのが好ましい。
【0094】
好ましい実施形態では、予備重合は、液体プロピレン中のバルクスラリー重合として行われる、すなわち液相は主にプロピレンを含み、少量の他の反応物および場合によっては液相に溶解した不活性成分を含む。
【0095】
予備重合反応は通常、0〜50℃、好ましくは10〜45℃、より好ましくは15〜40℃の温度で実施される。
【0096】
予備重合反応器内の圧力は重要ではないが、反応混合物を液相に維持するために十分高くなければならない。したがって圧力は、20〜100バール、例えば30〜70バールでありうる。
【0097】
触媒成分は予備重合ステップに全て導入されるのが好ましい。しかし、固体触媒成分(i)および助触媒(ii)が別々に供給されうる場合には、助触媒の一部だけが予備重合段階に導入され、残部が後の重合段階に導入されることが可能である。また、そのような場合には、予備重合段階に十分な重合反応が得られるだけ多くの助触媒を導入することが必要である。
【0098】
他の成分も予備重合段階に添加することが可能である。したがって、当技術分野で周知のようにプレポリマーの分子量を制御するために、予備重合段階に水素が添加されうる。さらに、粒子が互いにまたは反応器の壁に接着するのを防ぐために帯電防止添加剤が使用されうる。
【0099】
予備重合条件および反応パラメータの正確な制御は、当業者の技術の範囲内である。
【0100】
本発明によれば、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、触媒系の存在下で上述のように逐次重合プロセスによって得られる。チーグラー・ナッタ触媒が使用される限り、触媒系に関して特に制約はないものと理解される。異相プロピレンコポリマー(HECO)の調製に適した触媒系に関しては、例えば参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2014/023603号、欧州特許第591224号、国際公開第2012/007430号、欧州特許第2610271号、欧州特許第261027号および欧州特許第2610272号が参照される。
【0101】
ポリオレフィン組成物(PO)
ポリオレフィン組成物(PO)は、異相プロピレンコポリマー(HECO)を組成物の総重量に基づいて95重量%以上の量含むものと理解される。
【0102】
本発明の一実施形態では、ポリオレフィン組成物(PO)は、異相プロピレンコポリマー(HECO)を組成物の総重量に基づいて96重量%以上の量含む。ポリオレフィン組成物(PO)は、異相プロピレンコポリマー(HECO)を組成物の総重量に基づいて97重量%以上、または98重量%以上の量含むのが好ましい。
【0103】
例えば、ポリオレフィン組成物(PO)は、異相プロピレンコポリマー(HECO)を組成物の総重量に基づいて95〜100重量%、好ましくは96〜99.8重量%の量含む。ポリオレフィン組成物(PO)は、異相プロピレンコポリマー(HECO)を組成物の総重量に基づいて好ましくは97〜100重量%、より好ましくは97〜99.8重量%の量含む。
【0104】
一実施形態では、ポリオレフィン組成物(PO)は、異相プロピレンコポリマー(HECO)からなる。
【0105】
任意に、最終ポリオレフィン組成物(PO)の包含物は、無機充填剤(F)も含みうるが、無機充填剤(F)は、マトリックスすなわちプロピレンホモポリマー(HPP)中の別個の包含物を形成するのが好ましい。
【0106】
ポリマー成分に加えて、本発明によるポリオレフィン組成物(PO)は無機充填剤(F)を、組成物の総重量に基づいて好ましくは5重量%以下の量含みうる。無機充填剤(F)は、タルク、ウォラストナイト、マイカ、チョークおよびこれらの混合物からなる群より選択されうるものと理解される。
【0107】
本発明の一実施形態では、無機充填剤(F)はタルクである。
【0108】
無機充填剤(F)は、平均粒径d
50が0.5〜20.0μmの範囲内であるのが好ましく、0.5〜15.0μmの範囲内であるのがより好ましく、0.75〜10.0μmの範囲内であるのがさらに好ましい。
【0109】
通常、無機充填剤(F)は、カットオフ粒径d
95[重量%]が25.0μm以下であり、1.5〜17.5μmの範囲内であるのがより好ましく、2.0〜15.0μmの範囲内であるのがさらに好ましい。
【0110】
ポリオレフィン組成物(PO)は、良好な流動性、すなわちかなり低いメルトフローレートを有する。したがって、ポリオレフィン組成物(PO)は、ISO1133にしたがって測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が15〜35g/10分の範囲内であるものと認められる。特に、ポリオレフィン組成物(PO)は、ISO1133にしたがって測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が18〜35g/10分の範囲内である。
【0111】
ポリオレフィン組成物(PO)は、優れた剛性/靭性バランスを有することがさらに好ましい。したがってポリオレフィン組成物(PO)は良好な靭性を示すことが好ましい。したがって、ポリオレフィン組成物(PO)は、+23℃のシャルピーノッチ付き衝撃強度が30kJ/m
2以上であるものと認められ、30〜60kJ/m
2の範囲内であるのがより好ましく、30〜56kJ/m
2の範囲内であるのがさらに好ましく、30〜53kJ/m
2の範囲内であるのが最も好ましい。
【0112】
加えてまたは代わりに、ポリオレフィン組成物(PO)は、−20℃のシャルピーノッチ付き衝撃強度が5〜20kJ/m
2の範囲内であり、5〜16kJ/m
2の範囲内であるのがさらに好ましく、6〜13kJ/m
2の範囲内であるのが最も好ましい。
【0113】
加えてまたは代わりに、ポリオレフィン組成物(PO)は、良好な引張弾性率を有しなければならない。ポリオレフィン組成物(PO)の引張弾性率は、850MPa以上であるのが好ましく、850〜1250MPaの範囲内であるのがより好ましく、900〜1250MPaの範囲内であるのがなお好ましく、950〜1200MPaの範囲内であるのがさらに好ましく、950〜1100MPaの範囲内であるのが最も好ましい。
【0114】
したがって、ポリオレフィン組成物(PO)は、
i)ISO1133にしたがって測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が15〜35g/10分の範囲内であり、18〜35g/10分の範囲内であるのが好ましく、かつ
ii)引張弾性率が850MPa以上であり、850〜1250MPaの範囲内であるのがより好ましく、900〜1250MPaの範囲内であるのがなお好ましく、950〜1200MPaの範囲内であるのがさらに好ましく、950〜1100MPaの範囲内であるのが最も好ましく、かつ/または
iii)23℃のシャルピーノッチ付き衝撃強度が30kJ/m
2以上であり、30〜60kJ/m
2の範囲内であるのがより好ましく、30〜56kJ/m
2の範囲内であるのがさらに好ましく、30〜53kJ/m
2の範囲内であるのが最も好ましい。
【0115】
一実施形態では、ポリオレフィン組成物(PO)は、
i)ISO1133にしたがって測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が15〜35g/10分の範囲内であり、18〜35g/10分の範囲内であるのが好ましく、かつ
ii)引張弾性率が850MPa以上であり、850〜1250MPaの範囲内であるのがより好ましく、900〜1250MPaの範囲内であるのがなお好ましく、950〜1200MPaの範囲内であるのがさらに好ましく、950〜1100MPaの範囲内であるのが最も好ましく、または
iii)23℃のシャルピーノッチ付き衝撃強度が30kJ/m
2以上であり、30〜60kJ/m
2の範囲内であるのがより好ましく、30〜56kJ/m
2の範囲内であるのがさらに好ましく、30〜53kJ/m
2の範囲内であるのが最も好ましい。
【0116】
あるいは、ポリオレフィン組成物(PO)は、
i)ISO1133にしたがって測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が15〜35g/10分の範囲内であり、18〜35g/10分の範囲内であるのが好ましく、かつ
ii)引張弾性率が850MPa以上であり、850〜1250MPaの範囲内であるのがより好ましく、900〜1250MPaの範囲内であるのがなお好ましく、950〜1200MPaの範囲内であるのがさらに好ましく、950〜1100MPaの範囲内であるのが最も好ましく、かつ
iii)23℃のシャルピーノッチ付き衝撃強度が30kJ/m
2以上であり、30〜60kJ/m
2の範囲内であるのがより好ましく、30〜56kJ/m
2の範囲内であるのがさらに好ましく、30〜53kJ/m
2の範囲内であるのが最も好ましい。
【0117】
例えば、ポリオレフィン組成物(PO)は、
i)ISO1133にしたがって測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が15〜35g/10分の範囲内であり、18〜35g/10分の範囲内であるのが好ましく、かつ
ii)引張弾性率が850MPa以上であり、850〜1250MPaの範囲内であるのがより好ましく、900〜1250MPaの範囲内であるのがなお好ましく、950〜1200MPaの範囲内であるのがさらに好ましく、950〜1100MPaの範囲内であるのが最も好ましく、かつ
iii)23℃のシャルピーノッチ付き衝撃強度が30kJ/m
2以上であり、30〜60kJ/m
2の範囲内であるのがより好ましく、30〜56kJ/m
2の範囲内であるのがさらに好ましく、30〜53kJ/m
2の範囲内であるのが最も好ましく、かつ
iv)−20℃のシャルピーノッチ付き衝撃強度が5〜20kJ/m
2の範囲内であり、5〜16kJ/m
2の範囲内であるのがさらに好ましく、6〜13kJ/m
2の範囲内であるのが最も好ましい。
【0118】
ポリオレフィン組成物(PO)の調製には、従来の調合またはブレンド装置、例えばバンバリーミキサ、2ロールラバーミル、ブスコニーダまたは二軸押出機が使用されうる。押出機から回収されるポリオレフィン組成物(PO)は通常、ペレットの形である。次いで、これらのペレットが、好ましくは例えば射出成形によりさらに加工されて、本発明のポリオレフィン組成物(PO)の物品および製品が生成される。
【0119】
したがって、本発明は、異相プロピレンコポリマー(HECO)および任意に無機充填剤(F)を(上述の)押出機に加えるステップと、同を押出し、それによって前記ポリオレフィン組成物(PO)を得るステップとを含むポリオレフィン組成物(PO)の調製のためのプロセスも対象とする。
【0120】
異相プロピレンコポリマー(HECO)は、少なくとも一つの反応器、例えば二つの反応器でプロピレンホモポリマー(HPP)を生産し、前記プロピレンホモポリマー(HPP)を少なくとも一つの後続の反応器、例えば二つの反応器に移し、プロピレンホモポリマー(HPP)の存在下で弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)が生産されることにより得られるのが好ましい。
【0121】
本発明によるポリオレフィン組成物(PO)は、樹脂調合技術において周知であり一般的に用いられる様々な調合またはブレンド方法のいずれかを用いて、ペレット化および調合されうる。
【0122】
本発明による自動車物品および使用法
本異相プロピレンコポリマー(HECO)は、好ましくは本異相プロピレンコポリマー(HECO)から調製されたポリオレフィン組成物に、良好な流動性と優れた剛性/靭性バランスとの組み合わせを提供するものと理解される。
【0123】
したがって、異相プロピレンコポリマー(HECO)および/またはポリオレフィン組成物(PO)から調製される成形物品は、良好な流動性と優れた剛性/靭性バランスとを示す点に留意する必要がある。
【0124】
したがって、本発明の別の態様によれば、ポリオレフィン組成物(PO)の機械的性質を改良するための、本明細書に定義される異相プロピレンコポリマー(HECO)の使用が提供され、この改良は、ポリオレフィン組成物(PO)の
i)ISO1133にしたがって測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が15〜35g/10分の範囲内であり、かつ
ii)引張弾性率が850MPa以上であり、かつ/または
iii)23℃のシャルピーノッチ付き衝撃強度が30kJ/m
2以上である
ときに達成される。
【0125】
一実施形態では、改良は、ポリオレフィン組成物(PO)の
i)ISO1133にしたがって測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が15〜35g/10分の範囲内であり、かつ
ii)引張弾性率が850MPa以上であり、または
iii)23℃のシャルピーノッチ付き衝撃強度が30kJ/m
2以上である
ときに達成される。
【0126】
改良は、ポリオレフィン組成物(PO)の
i)ISO1133にしたがって測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が15〜35g/10分の範囲内であり、かつ
ii)引張弾性率が850MPa以上であり、かつ
iii)23℃のシャルピーノッチ付き衝撃強度が30kJ/m
2以上である
ときに好ましくは達成される。
【0127】
異相プロピレンコポリマー(HECO)、ポリオレフィン組成物(PO)の定義およびこれらの好ましい実施形態に関しては、異相プロピレンコポリマー(HECO)およびポリオレフィン組成物(PO)の技術的詳細について述べる際に以上に行った記載が参照される。
【0128】
異相プロピレンコポリマー(HECO)および/またはポリオレフィン組成物(PO)は、好ましくは自動車物品、好ましくは(射出)成形自動車物品の、すなわち(内装または外装)自動車物品の一部である。例えば、異相プロピレンコポリマー(HECO)および/またはポリオレフィン組成物(PO)は、組成物の一部であり、この組成物はさらに、自動車物品、好ましくは(射出)成形自動車物品の、すなわち(内装または外装)自動車物品の一部である。
【0129】
異相プロピレンコポリマー(HECO)はポリオレフィン組成物(PO)の一部であり、このポリオレフィン組成物(PO)はさらに、自動車物品、好ましくは(射出)成形自動車物品の、すなわち(内装または外装)自動車物品の一部であるのが特に好ましい。
【0130】
得られた非常に良い結果に鑑み、本発明は、異相プロピレンコポリマー(HECO)および/またはポリオレフィン組成物(PO)を対象とするだけでなく、異相プロピレンコポリマー(HECO)および/またはポリオレフィン組成物(PO)を一部とする自動車物品も対象とする。
【0131】
したがって本発明は、異相プロピレンコポリマー(HECO)および/またはポリオレフィン組成物(PO)を含む自動車物品をさらに対象とする。
【0132】
好ましくは、自動車物品はポリオレフィン組成物(PO)を含み、前記ポリオレフィン組成物(PO)は異相プロピレンコポリマー(HECO)を含み、好ましくは異相プロピレンコポリマー(HECO)からなり、この異相プロピレンコポリマー(HECO)は、
a)ISO1133にしたがって測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が100〜200g/10分の範囲内であるプロピレンホモポリマー(HPP)と、
b)弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)と
を含み、この異相プロピレンコポリマー(HECO)は、
(i)ISO1133にしたがって測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が15〜35g/10分の範囲内であり、
(ii)異相プロピレンコポリマー(HECO)の総重量に基づいて26〜36重量%の量の冷キシレン可溶性(XCS:xylene cold soluble)画分を含み、
さらに異相プロピレンコポリマー(HECO)の冷キシレン可溶性(XCS)画分は、
(iii)固有粘度(IV)が2.8〜3.8dl/gの範囲内であり、
(iv)異相プロピレンコポリマー(HECO)の冷キシレン可溶性(XCS)画分の総重量に基づくエチレン含量(EC:ethylene content)が35〜50重量%である。
【0133】
本発明で使用されるところの「自動車物品」という用語は、自動車の内装または外装用の成形された三次元物品であることを意味する。典型的な自動車物品は、バンパ、ボディパネル、ロッカーパネル、サイドトリムパネル、インテリアトリム、ステップアシスト、スポイラ、フェンダ、ダッシュボードなどである。「外装」という用語は、物品が車の内装の一部ではなく自動車の外装の一部であることを意味する。したがって、好適な外装自動車物品は、バンパ、サイドトリムパネル、ステップアシスト、ボディパネル、フェンダおよびスポイラからなる群より選択される。これに対して、「内装」という用語は、物品が車の内装の一部であり自動車の外装の一部ではないことを意味する。したがって、好適な内装自動車物品は、ロッカーパネル、ダッシュボードおよびインテリアトリムからなる群より選択される。
【0134】
自動車物品、すなわち外装または内装自動車物品は、異相プロピレンコポリマー(HECO)および/またはポリオレフィン組成物(PO)を50.0重量%以上含むのが好ましく、55.0重量%以上含むのがより好ましく、70.0重量%以上含むのがなお好ましく、80.0重量%以上含むのがさらに好ましく、異相プロピレンコポリマー(HECO)および/またはポリオレフィン組成物(PO)からなるのがなおさら好ましい。
【0135】
一実施形態では、自動車物品、すなわち外装または内装自動車物品は、異相プロピレンコポリマー(HECO)および/またはポリオレフィン組成物(PO)を80.0重量%以上含み、90.0重量%以上含むのがより好ましく、95.0重量%以上含むのがなお好ましく、99.0重量%以上含むのがさらに好ましく、異相プロピレンコポリマー(HECO)および/またはポリオレフィン組成物(PO)からなるのがなおさら好ましい。
【0136】
本ポリオレフィン組成物(PO)の個々の成分の混合には、従来の調合またはブレンド装置、例えばバンバリーミキサ、2ロールラバーミル、ブスコニーダまたは二軸押出機が使用されうる。押出機から回収されるポリマー材料は通常、ペレットの形である。これらのペレットはその後、好ましくは、物品すなわち(内装または外装)自動車物品が生成するために、例えば射出成形によりさらに加工される。
【0137】
次に本発明を、以下に提供する実施例によりさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0138】
A.測定方法
以下の用語および決定方法の定義が、別段の定めがない限り、本発明の以上の一般的説明にも以下の実施例にも当てはまる。
【0139】
第二画分(F2)のコモノマー含量の計算:
【0140】
【数1】
【0141】
式中、
w(F1)は、第一画分(F1)、すなわち第一反応器(R1)の生成物の重量分率であり、
w(F2)は、第二画分(F2)の、すなわち第二反応器(R2)で生産されるポリマーの重量分率であり、
C(F1)は、第一画分(F1)の、すなわち第一反応器(R1)の生成物のコモノマー含量[重量%]であり、
C(R2)は、第二反応器(R2)で得られる生成物、すなわち第一画分(F1)と第二画分(F2)との混合物のコモノマー含量[重量%]であり、
C(F2)は、計算される第二画分(F2)のコモノマー含量[重量%]である。
【0142】
第二画分(F2)の冷キシレン可溶性(XCS)含量の計算:
【0143】
【数2】
【0144】
式中、
w(F1)は、第一画分(1)、すなわち第一反応器(R1)の生成物の重量分率であり、
w(F2)は、第二画分(F2)の、すなわち第二反応器(R2)で生産されるポリマーの重量分率であり、
XS(F1)は、第一画分(F1)の、すなわち第一反応器(R1)の生成物の冷キシレン可溶性(XCS)含量[重量%]であり、
XS(R2)は、第二反応器(R2)で得られる生成物、すなわち第一画分(F1)と第二画分(F2)との混合物の冷キシレン可溶性(XCS)含量[重量%]であり、
XS(F2)は、計算される第二画分(F2)の冷キシレン可溶性(XCS)含量[重量%]である。
【0145】
第二画分(F2)のメルトフローレートMFR
2(230℃)の計算:
【0146】
【数3】
【0147】
式中、
w(F1)は、第一画分(F1)、すなわち第一反応器(R1)の生成物の重量分率であり、
w(F2)は、第二画分(F2)の、すなわち第二反応器(R2)で生産されるポリマーの重量分率であり、
MFR(F1)は、第一画分(F1)の、すなわち第一反応器(R1)の生成物のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]であり、
MFR(R2)は、第二反応器(R2)で得られる生成物、すなわち第一画分(F1)と第二画分(F2)との混合物のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]であり、
MFR(F2)は、計算される第二画分(F2)のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]である。
【0148】
第三画分(F3)のコモノマー含量の計算:
【0149】
【数4】
【0150】
式中、
w(R2)は、第二反応器(R2)、すなわち第一画分(1)と第二画分(F2)との混合物の重量分率であり、
w(F3)は、第三画分(F3)の、すなわち第三反応器(R3)で生産されるポリマーの重量分率であり、
C(R2)は、第二反応器(R2)の生成物の、すなわち第一画分(F1)と第二画分(F2)との混合物のコモノマー含量[重量%]であり、
C(R3)は、第三反応器(R3)で得られる生成物、すなわち第一画分(F1)と第二画分(F2)と第三画分(F3)との混合物のコモノマー含量[重量%]であり、
C(F3)は、計算される第三画分(F3)のコモノマー含量[重量%]である。
【0151】
第三画分(F3)の冷キシレン可溶性(XCS)含量の計算:
【0152】
【数5】
【0153】
式中、
w(R2)は、第二反応器(R2)、すなわち第一画分(F1)と第二画分(F2)との混合物の重量分率であり、
w(F3)は、第三画分(F3)の、すなわち第三反応器(R3)で生産されるポリマーの重量分率であり、
XS(R2)は、第二反応器(R2)の生成物の、すなわち第一画分(F1)と第二画分(F2)との混合物の冷キシレン可溶性(XCS)含量[重量%]であり、
XS(R3)は、第三反応器(R3)で得られる生成物、すなわち第一画分(F1)と第二画分(F2)と第三画分(F3)との混合物の冷キシレン可溶性(XCS)含量[重量%]であり、
XS(F3)は、計算される第三画分(F3)の冷キシレン可溶性(XCS)含量[重量%]である。
【0154】
第三画分(F3)のメルトフローレートMFR
2(230℃)の計算:
【0155】
【数6】
【0156】
式中、
w(R2)は、第二反応器(R2)、すなわち第一画分(F1)と第二画分(F2)との混合物の重量分率であり、
w(F3)は、第三画分(F3)の、すなわち第三反応器(R3)で生産されるポリマーの重量分率であり、
MFR(R2)は、第二反応器(R2)の生成物の、すなわち第一画分(F1)と第二画分(F2)との混合物のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]であり、
MFR(R3)は、第三反応器(R3)で得られる生成物、すなわち第一画分(F1)と第二画分(F2)と第三画分(F3)との混合物のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]であり、
MFR(F3)は、計算される第三画分(F3)のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]である。
【0157】
第四画分(F4)のコモノマー含量の計算:
【0158】
【数7】
【0159】
式中、
w(R3)は、第三反応器(R3)、すなわち第一画分(F1)と第二画分(F2)と第四画分(F3)との混合物の重量分率であり、
w(F4)は、第四画分(F4)の、すなわち第四反応器(R4)で生産されるポリマーの重量分率であり、
C(R3)は、第三反応器(R3)の生成物の、すなわち第一画分(F1)と第二画分(F2)と第三画分(F3)との混合物のコモノマー含量[重量%]であり、
C(R4)は、第四反応器(R4)で得られる生成物、すなわち第一画分(F1)と第二画分(F2)と第三画分(F3)と第四画分(F4)との混合物のコモノマー含量[重量%]であり、
C(F4)は、計算される第四画分(F4)のコモノマー含量[重量%]である。
【0160】
第四画分(F4)の冷キシレン可溶性(XCS)含量の計算:
【0161】
【数8】
【0162】
式中、
w(R3)は、第三反応器(R3)、すなわち第一画分(F1)と第二画分(F2)と第三画分(F3)との混合物の重量分率であり、
w(F4)は、第四画分(F4)の、すなわち第四反応器(R4)で生産されるポリマーの重量分率であり、
XS(R3)は、第三反応器(R3)の生成物の、すなわち第一画分(F1)と第二画分(F2)と第三画分(F3)との混合物の冷キシレン可溶性(XCS)含量[重量%]であり、
XS(R4)は、第四反応器(R4)で得られる生成物、すなわち第一画分(F1)と第二画分(F2)と第三画分(F3)と第四画分との混合物の冷キシレン可溶性(XCS)含量[重量%]であり、
XS(F4)は、計算される第四画分(F4)の冷キシレン可溶性(XCS)含量[重量%]である。
【0163】
第四画分(F4)のメルトフローレートMFR
2(230℃)の計算:
【0164】
【数9】
【0165】
式中、
w(R3)は、第三反応器(R3)、すなわち第一画分(F1)と第二画分(F2)と第三画分(F3)との混合物の重量分率であり、
w(F4)は、第四画分(F4)の、すなわち第四反応器(R4)で生産されるポリマーの重量分率であり、
MFR(R3)は、第三反応器(R3)の生成物の、すなわち第一画分(F1)と第二画分(F2)と第三画分(F3)との混合物のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]であり、
MFR(R4)は、第四反応器(R4)で得られる生成物、すなわち第一画分(F1)と第二画分(F2)と第三画分(F3)と第四画分(F4)との混合物のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]であり、
MFR(F4)は、計算される第四画分(F4)のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]である。
【0166】
NMR分光法測定:
ポリプロピレンの
13C‐NMRスペクトルは、1,2,4‐トリクロロベンゼン/ベンゼン‐d6(90/10w/w)に溶解したサンプルからBruker400MHz分光計で130℃で記録した。ペンタッド分析は、文献:T.Hayashi,Y.Inoue,R.Chuejoe,and T.Asakura,Polymer 29 138‐43(1988)およびChujo R,et al,Polymer 35 339(1994)に記載された方法により帰属を行う。
【0167】
NMR測定は、当技術分野で周知の様式でmmmmペンタッド密度を測定するために使用した。
【0168】
FTIR分光法によるコモノマー含量の定量
コモノマー含量は、当技術分野で周知の様式で定量的
13C核磁気共鳴(NMR)分光法により校正した基本的な帰属の後に定量的フーリエ変換赤外分光法(FTIR:Fourier transform infrared spectroscopy)により決定する。薄フィルムを100〜500μmの間の厚さにプレスし、スペクトルを透過モードで記録する。
【0169】
特に、ポリプロピレン‐コ‐エチレンコポリマーのエチレン含量を、720〜722および730〜733cm
−1で見られる定量的バンドのベースライン補正されたピーク面積を使用して決定する。特に、ポリエチレンコポリマーのブテンまたはヘキセン含量は、1377〜1379cm
−1で見られる定量的バンドのベースライン補正されたピーク面積を使用して決定する。定量結果は、フィルム厚の参照に基づいて得られる。
【0170】
密度は、ISO1183‐187にしたがって測定する。サンプル調製は、ISO1872‐2:2007にしたがって圧縮成形することにより行う。
【0171】
MFR
2(230℃)は、ISO1133(230℃、2.16kg荷重)にしたがって測定する。
【0172】
MFR
2(190℃)は、ISO1133(190℃、2.16kg荷重)にしたがって測定する。
【0173】
固有粘度は、DIN ISO1628/1、1999年10月(デカリン中135℃)にしたがって測定する。
【0174】
冷キシレン可溶性画分(XCS、重量%):冷キシレン可溶分(XCS)の含量は、25℃でISO16152;第一版;2005‐07‐01にしたがって決定する。不溶性のままである部分は、冷キシレン不溶性(XCI)画分である。
【0175】
溶融温度T
m、結晶化温度T
cは、Mettler TA820示差走査熱量計(DSC)で、5〜10mgのサンプルで測定する。結晶化および溶融曲線はいずれも、30℃と225℃との間の10℃/分の冷却および加熱走査の間に得た。溶融および結晶化温度は、吸熱および発熱のピークとみなした。
【0176】
また、溶融および結晶化エンタルピー(HmおよびHc)を、ISO11357‐1にしたがってDSC法により測定した。
【0177】
数平均分子量(M
n)、重量平均分子量(M
w)および分子量分布(MWD)は、以下の方法にしたがってゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により決定される。
重量平均分子量Mwおよび分子量分布(MWD=Mw/Mn、式中Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量である)は、ISO16014‐1:2003およびISO16014‐4:2003に基づく方法により測定する。屈折率検出器およびオンライン粘度計を備えたWaters Alliance GPCV2000機器を、TosoHaasからの3×TSKゲルカラム(GMHXL‐HT)、および145℃で1mL/分の一定流量の溶媒としての1,2,4‐トリクロロベンゼン(TCB、200mg/Lの2,6‐ジtertブチル‐4‐メチル‐フェノールにより安定化)とともに用いた。分析ごとに216.5μLのサンプル溶液を注入した。カラムセットを、0.5kg/mol〜11500kg/molの範囲内の19の狭いMWDポリスチレン(PS)標準と、十分に特徴付けされた広いポリプロピレン標準のセットとによる相対的校正を用いて校正した。全てのサンプルを、10mL(160℃)の安定化されたTCB(移動相と同じ)に5〜10mgのポリマーを溶解し、GPC機器にサンプリングする前に3時間連続的に振盪し続けることにより調製した。
【0178】
メジアン粒径d
50(沈降)は、ISO13317‐3(Sedigraph)にしたがって重力液体沈降により決定される粒径分布[質量%]から計算する。
【0179】
引張弾性率;引張破断呼びひずみは、EN ISO1873‐2に記載される射出成形試料(ドッグボーン形状、4mm厚)を用いて、ISO527‐2(クロスヘッド速度=50mm/分、23℃)にしたがって測定した。
【0180】
曲げ弾性率は、EN ISO1873‐2に記載される80×10×4mm
3の寸法の射出成形試験試料を用いて、ISO178にしたがって測定した。曲げ弾性率を決定するためのクロスヘッド速度は2mm/分であった。
【0181】
シャルピー衝撃試験:シャルピーノッチ付き衝撃強度(シャルピーNIS)は、ISO179‐1/1eA/DIN53453にしたがって23℃、−20℃および−30℃で、ISO294‐1:1996にしたがって調製された80×10×4mm
3の射出成形バー試験試料を用いて測定する。
【0182】
半径方向収縮(SH);接線方向収縮(SH)は、センターゲート射出成形円形ディスク(直径180mm、厚さ3mm、流れ角度355°およびカットアウト5°)で決定した。二つの異なる保持圧力時間(それぞれ10秒および20秒)を用いて二つの試料を成形する。ゲートのメルト温度は260℃、金型内の平均流頭速度は100mm/秒である。ツール温度:40℃、背圧:600バール。
【0183】
試料を室温で96時間コンディショニングした後、流れ方向に対して半径方向および接線方向の寸法変化を両方のディスクで測定する。両方のディスクからのそれぞれの値の平均を、最終結果として報告する。
【0184】
カットオフ粒径d
95(沈降)は、ISO13317‐3(Sedigraph)にしたがって重力液体沈降により決定される粒径分布[質量%]から計算する。
【0185】
2.実施例
全てのポリマーを、予備重合反応器、一つのスラリーループ反応器および三つの気相反応器を備えたBorstarパイロットプラントで生産した。本発明の実施例のための重合プロセスで使用した触媒は、Borealis AGの市販のBCF55P触媒(欧州特許第591224号に記載の1.9重量%Ti‐チーグラー・ナッタ触媒)と助触媒としてのトリエチルアルミニウム(TEAL)、およびジエチルアミノトリエトキシシラン[Si(OCH
2CH
3)
3(N(CH
2CH
3)
2)](Uドナー)またはジシクロペンチルジメトキシシラン(Dドナー)であった。アルミニウム対ドナー比を含む、プロピレンホモポリマー(HPP)と弾性プロピレン‐エチレンコポリマー(E)とを含む異相プロピレンコポリマー(HECO)の調製が、以下の表1に記載される。表1は、比較実施例(CE)の調製条件も概説する。
【0186】
表2は、本発明の異相プロピレンコポリマー(HECO)および比較実施例(CE)の性質プロフィールをまとめる。
【0187】
【表1】
【0188】
【表2】
【0189】
比較実施例と対照的に、本発明の材料HECO1〜HECO5は、機械的性質の優れた組み合わせを提供する。特に、本発明の異相プロピレンコポリマー(HECO)が優れた剛性/靭性バランスと組み合わせて良好な流動性を提供することが推測できる。