【実施例1】
【0013】
図1から
図3に従って、本発明を説明する。
図1は、本発明に係る移動型表示装置の使用例を示す図である。
図2は、本発明に係る移動型表示装置のシステムブロック図である。
図3(a)は、本発明に係る移動型表示装置の移動型表示部のマーカ、センサー構造を示す図である。
図3(b)は、駆動構造を示す図である。
移動型表示装置1は、利用者の位置に応じて、移動、回転する表示装置である。
設置される場所は、基本的に問わないが、不特定の人が使用する公共施設での案内や、博物館、美術館等での展示の一部とすることも出来る。
【0014】
移動型表示装置1は、主に移動型表示部10と指示部70とから構成されている。
移動型表示部10は、本発明の主要部分である。移動型表示部10の外形としては、薄型表示部分が自走型の台に載置された構造である。平坦な床を、前後左右に移動可能であり、その場での回転動作も出来る。表示されるものは、単なる情報告知でもいいし、動物等の動画映像でもよい(
図1)。
移動型表示部10は、制御部20と通信部21と表示部30と位置測定部40と駆動部50から成る。
図2に沿って説明する。
【0015】
制御部20は、移動型表示部10全体を制御する部分である。主に、CPUとメモリーから構成され、メモリー内のプログラムによって、移動型表示部10内の制御を行う。通信部21に対しては、指示部70への情報送信と指示部70からの指示内容の受信の制御を行う。指示部70に対しては、利用者Hの位置情報として、利用者Hの方向、利用者Hまでの距離を送る。指示部70からは、移動型表示部10の移動方向と速度、移動型表示部10の回転量、表示部30に表示する映像データを取得する。表示部30に対して、表示制御を行う。主に、指示部70からの映像データを表示部30に対して表示する制御を行う。
位置測定部40からは、利用者Hの位置情報を取得する。例えば、位置情報として、角度は、利用者Hが表示部30に対して略正対する方向を0度とし、左右にプラスマイナス180度とする。利用者Hまでの距離は、cm単位で取得する。
駆動部50に対して、前後左右への移動方向と移動速度を指示する。また、移動せず、その場で回転する際の回転角度を指示する。
【0016】
通信部21は、外部との無線通信部分である。WiFi(登録商標)等で指示部70とデータのやり取りを行う。
表示部30は、利用者Hに対して映像を表示する部分である。例えば、一般的なテレビと同様に横型の表示でもいいし、人物等を表示するのであれば、縦型でもよい。移動型表示部10は移動していくので、表示部30は圧迫感の無い薄型の表示が適当である。表示部30の大きさは、利用者Hがある程度遠くから見る場合は、40型や50型などの比較的大きな表示のものが好適である。逆に、小さな物品等をリアルに見せたい場合は、小さな表示が適当である。表示部30は、駆動部50の上に設置される構造である。表示部30と駆動部50の重量バランスは、移動型表示部10が容易に転倒しない比率になっていると好適である。
【0017】
位置測定部40は、利用者Hとの角度、距離を計測する部分である。計測には、種々の方法がある。一例として、利用者Hがマーカ部60を装着する方法が考えられる(
図3(a))。位置測定部40から周期的に赤外線を発し、マーカ部60から応答する赤外線を返す。応答までに時間で距離がわかり、応答する赤外線の方向で、利用者Hの方向が検出出来る。また、位置測定部40は、カメラでもよい。画像解析することで、人の方向が分かり、人の大きさによって、人までに距離がわかる。カメラであれば、利用者Hはマーカ部60を装着する必要は無い。
【0018】
図3(b)に沿って、駆動部50を説明する。駆動部50は、移動型表示部10を移動、回転させる部分であり、移動型表示部10の土台部分であって、その具体的構造は限定するものではないが、例えば図示の様に、駆動輪51と駆動輪回転部52とキャスタ53によって構成された態様が考え得る。キャスタ53は、移動型表示部10全体を仮に支える構造であり、駆動輪51の動作に応じて、車輪の方向が変化する構造である。駆動輪51は、底部分に2つ、駆動輪回転部52を介して設置されている。2つの駆動部は、独立してモータによって、駆動する。例えば、表示部30と略正対した状態で、右に移動させる場合は、駆動輪回転部52を回転させ、駆動輪51を左右に駆動可能として、駆動輪51を2つとも、右方向に回転させる。
移動型表示部10をその場で回転させる場合には、2つの駆動輪51を互いに反対方向に駆動することで、2つの駆動輪51の中間部分を軸に移動型表示部10が回転する。
【0019】
指示部70は、移動型表示部10の位置、移動方向を指示し、表示部30に表示する映像データを移動型表示部10に対して送信する部分である。移動型表示部10から、通信部21を介して、利用者Hとの角度、距離を受信する。利用者Hとの角度、距離から、利用者Hと移動型表示部10の最適な位置を決定する。例えば、利用者Hとの角度が移動型表示部10を基準に右に10度であれば、角度が0度になるように、移動型表示部10に対して、右方向への回転を指示する。
利用者Hとの距離が、所定の範囲よりも遠い場合は、所定の範囲になるように、移動型表示部10を利用者H方向に前進させる。所定の範囲とは、例えば、2mから3mである。
【0020】
表示部30に表示する映像が、情報の告知等の場合は、送信する映像データは常に同じである。例えば、動物の歩く動画映像の場合には、移動型表示部10の移動する方向に歩くような動画映像としてもいいし、移動型表示部10を利用者H方向に前進させる場合は、利用者H方向に歩く正面からの動画映像でもよい。映像は、映像記憶部71に記憶されている。指示部70は適宜、映像記憶部71から適切な映像を抽出して、移動型表示部10に対して、送信する。指示部70に適当な映像が無い場合は、補間、補正等を行い、適当な映像に加工して、移動型表示部10に送る。
【0021】
なお、この説明では、指示部70、映像記憶部71を移動型表示部10と別の構成として説明したが、移動型表示部10内に指示部70、映像記憶部71を持つ構成でも構わない。
【0022】
図1に沿って、使用例を説明する。利用者Hと移動型表示部10の位置関係と、その際の移動型表示部10の表示部30の方向を示している。例えば、利用者Hに対して、0度の方向に移動型表示部10があった場合には、移動型表示部10は、位置測定部40によって、移動型表示部10に対する利用者Hの位置を検出する。制御部20は、検出結果を通信部21を介して、指示部70に送信する。指示部70は、移動型表示部10の表示部30が利用者Hに対して略正対する方向に移動型表示部10を回転させる指示を移動型表示部10に対して送信する。移動型表示部10の通信部21は指示を受信し、制御部20に送信する。制御部20は、駆動部50に対して、移動型表示部10を回転させる駆動を指示する。駆動が開始され、移動型表示部10の表示部30は利用者Hと略正対する位置となり、略正対したことが指示部70に伝えられ、指示部70から駆動停止の指示がされ制御部20が駆動部50に対して、駆動停止を指示する。
結果、移動型表示部10の表示部30は、常に、利用者Hと略正対した位置を保つことが出来る。利用者Hからの移動型表示部10の角度が他の角度であっても同様の動きを行うことが出来る。
【0023】
(変形例)
また、複数の利用者への対応について
図4に沿って説明する。利用者が複数いる場合には、表示部30をすべての利用者に略正対させることが出来ない。そこで、表示部30を複数持つことで、対応する構成を説明する。移動型表示部10は、表示部30と他の表示部32を持つ。本例では、他の表示部32は、3個あり、正方形の各辺に表示部30と3つの他の表示部32が配置されている。表示部30と他の表示部32は、中心軸で回転可能である。位置測定部40も4つあり、表示部30、他の表示部32に対応している。利用者Hと他の利用者H2が1人ずつの場合は、
図4(a)のように、表示部30と他の表示部32の1つが回転し、それぞれの利用者に略正対するように配置される。
【0024】
他の利用者H2が3人いる場合は、
図4(b)のように、それぞれの他の表示部32が回転し、それぞれの他の利用者H2と略正対することが出来る。他の利用者H2の人数がさらに増えた場合は、代表者を決めて、代表者に対して、略正対させる。
【0025】
このように、本変形例を用いれば、多くの利用者に対して、表示を見やすくすることができ好適である。
【0026】
また、移動型表示部10の別の形態を
図5に示す。移動型表示部10の表示部30は通常のテレビの構造として説明したが、それにとどまらず、プロジェクタを用いる形態でもよい。投影型移動表部90は台座の上にプロジェクタ92を設置し、等身大のスクリーン91を設け、下方のプロジェクタ92からスクリーン91に人物等を投射する。テレビで等身大の表示を行うと表示部30の重量が極端に大きくなる。それに比べ、シート状のスクリーン91のみを等身大に設ければいいので、威圧感も少なく、インフォメーション用に好適である。また、利用者Hに沿って移動する場合は、利用者Hと投影型移動表部90の位置関係によって、横からの姿であったり、後ろ姿であってもよい。
【0027】
このように、本発明に係る移動型表示装置によれば、利用者は表示部の映像を常に見やすい位置で確認でき、利用者の利便性を向上させることが出来る。
特に、利用者が動きながら、表示部を確認するような公共の場所で有効に機能する。
【0028】
また、利用者との距離を適切に保つように移動型表示部10が移動することによって、利用者は、より快適に表示を確認することができる。
【0029】
博物館等で仮想的な表示への応用について、
図6を用いて説明する。
博物館等で、展示を行う際、剥製等の展示では、リアル性はあるものの動きについての確認は出来ない。模型を用いた展示も行われるが、個別に作成しなければならず、迂遠であるし、作成費用も必要である。
そこで、比較的容易に、生物等の動きをリアルに再現する構成を採用する。
【0030】
移動型表示部10は、1固体の生物を表示部30に表示する。例えば、動物の歩く動画を表示する。移動型表示部10は、展示スペース内を移動可能であり、常に、利用者Hと略正対するように表示部30が向くように制御する。
図6(a)及び(b)に示す様に、移動型表示部10が移動する。部屋内を右から左に移動する際は、表示部30に表示される動物も右から左に移動する映像とする。逆に、移動型表示部10が左から右に移動する際は、映像も左から右に移動する映像とする。表示部30内の動物の大きさは、利用者Hとの距離に関わらず一定である。移動型表示部10自体が利用者Hとの距離を変えることで、現実感を出すためである。
利用者Hは、表示部30を見ることで、容易に、動物等の動きを確認できるし、あたかも部屋の中を動物が動きまわっているかのように感じることが出来る。
【0031】
このように、本発明に係る移動型表示装置によれば、ランダムに移動型表示部10を動かすことによって、動物の動きをよりリアルにすることが出来、動物等の動的展示を容易に行うことが出来る。
【実施例2】
【0032】
他の実施例について、
図7を用いて説明する。実施例1と同様の部分は省略する。実施例1によって、表示部の見えにくさを軽減することが出来る。さらに、大きな映像を利用者の負担なく、見ることが出来る構成を説明する。
実施例1の構成に加えて、視線方向計測部61を設ける。
視線方向計測部61は、利用者Hの視線の方向を検出するものである。種々の方式があるが、1例としては、メガネ状のセンサであり、赤外線で目の瞳の位置を検出することで視線の方向を検出する。
視線方向計測部61からの情報を用いることによって、利用者Hに略正対しているかだけでなく、利用者Hがどの方向を見ているかが確認出来る。
利用者Hが右方向を見ている場合は、移動型表示部10を右方向に移動し、利用者Hの視線の先に移動型表示部10を移動することが出来る(
図7(a))。
【0033】
次に、パノラマ映像や、周囲360度の映像を見る場合を想定する。通常では、パノラマ映像や周囲360度の映像に対応して、表示部を並べなければならない。しかし、場所や費用の点で困難な場合が多い。その際の解決方法を説明する。
周囲映像80が用意されている場合、周囲映像80のデータは、映像記憶部71に記憶されている。移動型表示部10は、例えば1台で、利用者Hの視線の方向に移動可能とする。視線方向計測部61からの情報によって、指示部70は、映像記憶部71内の周囲映像80から視線方向に合致した映像を部分映像81として生成する。部分映像81は、移動型表示部10に送られ、表示される。
すると、利用者Hは、周囲映像80の中の利用者Hの視線方向の部分映像81が確認出来る。利用者Hが視線を移すと共に、移動型表示部10も視線方向に移動し、同時に、視線方向にあった部分映像81が表示部30に表示される(
図7(b))。
このように、利用者は、大きな表示装置を用いることなく、パノラマ映像や周囲360度の映像を容易に把握することが出来る。