(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
誘電体フィルムと金属膜とが積層されているとともに、一対の対向する第1面と、該一対の第1面をつなぐ一対の対向する第1側面、および一対の対向する第2側面を有する直方体状の本体部と、前記第1側面に位置する一対の外部電極と、前記第2側面を被覆する絶縁性の被覆層と、を備え、
前記第2側面と前記被覆層との間に、絶縁性のグリースを含むグリース含有部を有する、フィルムコンデンサ。
前記被覆層が、シリコーン、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、およびシクロオレフィンポリマーのうち少なくともいずれかを含む、請求項1または2に記載のフィルムコンデンサ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
積層型のフィルムコンデンサは、
図1、
図2に示すように、フィルムコンデンサ本体部3と、一対の外部電極である第1外部電極4a、第2外部電極4bとを具備している。以下、フィルムコンデンサ本体部3を、単に本体部3という場合もある。本体部3は、第1誘電体フィルム1a、第1金属膜2a、第2誘電体フィルム1bおよび第2金属膜2bが積層されている。本体部3は直方体状であり、誘電体フィルムと金属膜とが積層された方向、すなわち積層方向に一対の対向する第1面3a、3bを有し、第1面3a、3bの間には、第1面3aと3bとをつなぐ一対の第1側面3c、3d、および一対の第2側面3e、3fを有する。なお、以下の各図において、各部位の相対的な寸法は説明を容易にするために誇張したものであり、各部位の実際の厚さは本体部3の大きさに対して非常に小さい。
【0013】
第1外部電極4aは本体部3の第1側面3cに、第2外部電極4bは本体部3の第1側面3dに、それぞれメタリコンにより設けられている。絶縁性の被覆層5は本体部3の第2側面3e、3fに設けられている。
【0014】
図2は
図1のii−ii線断面図である。
図2に示す積層型のフィルムコンデンサAの本体部3は、第1誘電体フィルム1aの面1acに第1金属膜2aを備えた第1金属化フィルム6aと、第2誘電体フィルム1bの面1bcに第2金属膜2bを備えた第2金属化フィルム6bとが交互に積層されている。第1金属膜2aは本体部3の第1側面3cで第1外部電極4aに電気的に接続されている。第2金属膜2bは、本体部3の第1側面3dで第2外部電極4bに電気的に接続されている。
図1に示すように第1外部電極4aおよび第2外部電極4bが位置する方向を第1方向xとし、被覆層5が位置する方向を第2方向yとする。また、第1誘電体フィルム1aおよび第2誘電体フィルム1bの厚さ方向、すなわち積層方向を第3方向zとする。
【0015】
第1金属化フィルム6aとは、第1誘電体フィルム1aの面1ac上に第1金属膜2aを形成したものである。第1金属化フィルム6aは、面1ac上の側面1af近傍に、第1金属膜2aが形成されていない、すなわち第1誘電体フィルム1aが露出した部分が第2方向yに連続して存在する、いわゆる絶縁マージン部7aを有している。
【0016】
第2金属化フィルム6bとは、第2誘電体フィルム1bの面1bc上に第2金属膜2bを形成したものである。第2金属化フィルム6bは、面1bc上の側面1bf近傍に、第2金属膜2bが形成されていない、すなわち第2誘電体フィルム1bが露出した部分が第2方向yに連続して存在する、いわゆる絶縁マージン部7bを有している。
【0017】
これらの金属化フィルム6a、6bは、
図2に示すように、幅方向である第1方向xに互いに少しずれた状態で積層されている。
【0018】
第1金属膜2aと第2金属膜2bとの間に電位差があると、第1金属膜2aと第2金属膜2bとが、第1誘電体フィルム1aまたは第2誘電体フィルム1bを挟んで重なり合う有効領域8に、静電容量が発生する。
【0019】
このような積層型のフィルムコンデンサAは、次のようにして得られる。長尺状の第1金属化フィルム6aと第2金属化フィルム6bとを幅方向である第1方向xに互いに少しずらして重ね合わせ、積層して積層体を作製する。得られた積層体の第1方向xに位置する第1側面3cに第1外部電極4aを、第1側面3dに第2外部電極4bを、メタリコンにより形成する。外部電極4、すなわち第1外部電極4aおよび第2外部電極4bを形成した積層体を、第1方向xに切断して個々の素子に切りわける。外部電極4は、積層体を切断した後、個々の本体部3に形成してもよい。積層体が切断された切断面が、個々の本体部3の第2側面3e、3fとなる。
【0020】
フィルムコンデンサAの第1金属化フィルム6a、第2金属化フィルム6bに共通する本実施形態の特徴について説明するため、以下では、
図3に示すように、a、bの符号を省略し、単に誘電体フィルム1、金属膜2、外部電極4、金属化フィルム6等という場合がある。
【0021】
図3は、
図1のiii−iii線断面図であり、
図4は
図3の破線で囲んだ部分の拡大図である。本体部3は、
図3および
図4に示すように、第2側面3e、3fに絶縁層9を有していてもよい。
図3および
図4では、本体部3の第2側面3e、3fは、絶縁層9の表面である。被覆層5は、第2側面3e、3fすなわち絶縁層9を被覆している。被覆層5と絶縁層9との間には、グリース含有部10が配置されている。
【0022】
絶縁層9は、誘電体フィルム1を構成する有機樹脂材料と、金属膜2を構成する金属成分が混ざり合ったものである。絶縁層9は、積層体を切断した時の機械的衝撃および熱により形成され、混練層とも呼ばれる。絶縁層9では樹脂材料に金属成分が分散して絶縁化されている。
図4に示す絶縁層9の厚さt1は、たとえば平均で0.5μm〜4μm程度である。
図3および
図4には、第2側面3e、3fに絶縁層9を有している本体部3を示したが、第2側面3e、3fは絶縁層9を有していなくてもよい。
【0023】
グリース含有部10は、絶縁性のグリースを含む部位である。グリースとは、液状潤滑油中に増稠剤を分散させたものである。グリースは、油よりも粘度が高く流動性が低いため、常温で半固体状または半流動体状である。グリースは絶縁層9の表面、すなわち第2側面3e、3fだけでなく、絶縁層9が有する凹部、誘電体フィルム1と金属膜2との隙間、および誘電体フィルム1同士の隙間に存在してもよい。グリースは流動性を有するため、このような凹部および隙間に入りやすく、凹部すなわち絶縁層9の薄い部位等、欠陥になり得る部位に入り込み、欠陥になり得る部位で金属膜2間の放電を生じにくくすることができる。
【0024】
また、金属膜2間で放電が生じた場合も、放電により発生した高温ガスを、流動性を有するグリースを含むグリース含有部10を通って速やかに分散させることができる。したがって、高温ガスによる誘電体フィルム1の炭化を起こり難くすることができる。その結果、フィルムコンデンサAの絶縁抵抗が低下し難くなる。
【0025】
被覆層5は、第2側面3e、3fおよびグリース含有部10を被覆している。被覆層5の一部は、第2側面3e、3fの一部、および本体部3の第1面3a、3bの一部を直接被覆していてもよい。
【0026】
被覆層5を有するフィルムコンデンサAは、その一部または全部が図示しない外装樹脂により被覆されていてもよい。外部電極4は、リード線、バスバーなどにより外部回路に接続されてもよい。
【0027】
グリース含有部10のグリースは、被覆層5、絶縁層9、誘電体フィルム1、金属膜2および外部電極4のうち少なくともいずれかにより、フィルムコンデンサA内に封止されている。流動性を有するグリースをフィルムコンデンサA内に封止することで、グリースがフィルムコンデンサAの外部に漏出し難くなる。
【0028】
グリースは、絶縁性が高く流動性を有するものであればよい。グリースは、たとえばフッ素系、シリコーン系、ポリ−α−オレフィン(PAO)系、およびフェニルエーテル系などの液状潤滑油を含むグリースであってもよい。これらのグリースは、高い耐熱性および化学的安定性を有し、高温でも炭化し難い。また、誘電体フィルム1の材料である有機樹脂への影響が小さい。特にシリコーン系グリースは高い絶縁性、耐熱性、耐湿性を有している。シリコーン系グリースをフィルムコンデンサAのグリース含有部10に含まれるグリースとして用いると、より絶縁抵抗の低下が生じ難いフィルムコンデンサAとすることができる。
【0029】
図4に示すグリース含有部10の厚さt2の平均は、たとえば10μm以上、100μm以下であってもよい。グリース含有部10は、グリースが入り込んだ部位、たとえば絶縁層9が有する凹部、誘電体フィルム1と金属膜2との隙間、および誘電体フィルム1同士の隙間なども含むが、ここでは、被覆層5と第2側面3e、3fとのx方向の間隔を、グリース含有部10の厚さt2とする。t2の平均を10μm以上とすることで、グリース含有部10により、フィルムコンデンサAの絶縁抵抗の低下を小さくすることができる。t2の平均を100μm以下とすることで、フィルムコンデンサAの大きさへの影響を小さくすることができる。t2の平均は、特に20μm以上、80μm以下、さらに25μm以上、50μm以下であってもよい。
【0030】
被覆層5は、絶縁性を有するとともに、グリース含有部10に含まれるグリースを封止している。被覆層5は、たとえばシリコーン、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、およびシクロオレフィンポリマーなどの樹脂材料のいずれかでもよい。これらは高い絶縁性および耐熱性を有する樹脂材料である。
【0031】
図4に示す被覆層5の厚さt3の平均は、たとえば3μm以上、80μm以下であってもよい。t3の平均を3μm以上とすることで、グリース含有部10に含まれるグリースを十分封止することができる。t3の平均を80μm以下とすることで、フィルムコンデンサAの大きさへの影響を小さくすることができる。t3の平均は、特に20μm以上、60μm以下、さらに30μm以上、50μm以下であってもよい。
【0032】
また、t2とt3の合計であるt2+t3は、100μm以下、特に80μm以下であってもよい。
【0033】
被覆層5、絶縁層9およびグリース含有部10の厚さは、たとえばフィルムコンデンサAの断面をマイクロスコープまたは走査型電子顕微鏡(SEM)などで観察し、測定することができる。グリース含有部10の有無は、被覆層5と第2側面3e、3fとの間に含まれる成分を、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析、蛍光X線分析などの元素分析、X線回折(XRD)、ガスクロマトグラフィ質量分析(GC−MS)、フーリエ変換赤外分光(FT−IR)、および核磁気共鳴分光(NMR)などの分析手法で確認できる。
【0034】
グリース含有部10および被覆層5は、たとえば以下のような方法で本体部3の切断面すなわち第2側面3e、3fに形成してもよい。
【0035】
本体部3の切断面に、グリースを塗布する。塗布方法は、たとえばスクリーン印刷などの各種印刷法、およびスプレー法、ローラー法、ディップコーティング法など周知の塗布方法から適宜選択できる。特に印刷法は、塗布部位、塗布量、塗布厚さの調整を容易にできる。
【0036】
グリースを塗布した切断面に、さらに被覆層5を形成する。被覆層5は、たとえば絶縁性の樹脂を含む前駆体を塗布した後、硬化させることで形成してもよい。前駆体は、いわゆる接着剤でもよい。たとえば前駆体として湿気硬化型のシリコーン接着剤を用いると、フィルムコンデンサAの外部または内部の水分を吸収して硬化し、フィルムコンデンサAの高温高湿に対する耐性を向上させることができる。前駆体の塗布方法は、上述のような周知の塗布方法から適宜選択できる。また、絶縁性の樹脂テープを用いて被覆層5を形成してもよい。樹脂テープは、接着層を有していてもよい。
【0037】
このように、フィルムコンデンサAは第2側面3e、3fを被覆する絶縁性の被覆層5を備え、第2側面3e、3fと被覆層5との間にグリース含有部10を有している。グリース含有部10に含まれる絶縁性のグリースは流動性を有し、切断面である第2側面3e、3fの欠陥になり得る部位にグリースが入り込む。その結果、切断面で放電が生じにくくなる。また、切断面で放電が生じた場合も、放電により発生した高温ガスを、流動性を有するグリースを含むグリース含有部10を通って速やかに分散させることができる。その結果、フィルムコンデンサAは、絶縁抵抗が低下し難いフィルムコンデンサとなる。
【0038】
また、被覆層5およびグリース含有部10は、合計した厚さt2+t3を100μm以下としてもフィルムコンデンサAの絶縁抵抗を低下し難くすることが十分可能である。すなわち、被覆層5およびグリース含有部10を有するフィルムコンデンサAは、大きさを大幅に増大させることなく性能を高めることができる。
【0039】
図5は、連結型コンデンサの例の1つを模式的に示した斜視図である。
図5では、連結型コンデンサの構成を分かりやすくするために、ケースおよびコンデンサ表面を覆う外装樹脂の記載を省略している。連結型コンデンサCは、複数の積層型のフィルムコンデンサが一対のバスバー21、23により並列接続されている。バスバー21、23は、外部接続用の端子部21a、23aと、引出端子部21b、23bと、を有している。引出端子部21b、23bは、フィルムコンデンサの外部電極4a、4bにそれぞれ接続される。
【0040】
連結型コンデンサCのフィルムコンデンサに、上記の被覆層5およびグリース含有部10を有するフィルムコンデンサAが含まれると、絶縁抵抗の低下し難い連結型コンデンサCを得ることができる。
【0041】
連結型コンデンサCは、フィルムコンデンサAを少なくとも1つ有していてもよいし、2つ以上のフィルムコンデンサAを有していてもよい。連結型コンデンサCは、フィルムコンデンサを複数、例えば
図5に示すように4個並べた状態で、本体部3の両端の外部電極に、接合材を介してバスバー21、23を取り付けることによって得られる。
【0042】
連結型コンデンサCは、
図5に示したようにフィルムコンデンサが平面的に配置されていてもよいし、フィルムコンデンサが積み上げられた配置としてもよい。また、フィルムコンデンサの配置は、外部電極4の位置する方向、すなわち第1方向xが鉛直方向に沿った配置としてもよい。
【0043】
図6は、インバータの例の1つを説明するための概略構成図である。
図6には、直流から交流を作り出すインバータDを示している。インバータDは、
図6に示すように、ブリッジ回路31と、容量部33とを備えている。ブリッジ回路31は、例えばIGBT(Insulated gate Bipolar Transistor)のようなスイッチング素子と、ダイオードにより構成される。容量部33は、ブリッジ回路31の入力端子間に配置され、電圧を安定化する。インバータDは、容量部33として上記のフィルムコンデンサAを含む。
【0044】
インバータDは、直流電源の電圧を昇圧する昇圧回路35に接続される。ブリッジ回路31は駆動源となるモータジェネレータMに接続される。
【0045】
図7は、電動車輌の概略構成図である。
図7には、電動車輌の例の1つとして、ハイブリッド自動車(HEV)を示している。
【0046】
電動車輌Eは、駆動用のモータ41、エンジン43、トランスミッション45、インバータ47、電源または電池49、前輪51aおよび後輪51bを備えている。
【0047】
電動車輌Eは、駆動源としてモータ41、エンジン43、またはその両方の出力を備えている。駆動源の出力は、トランスミッション45を介して左右一対の前輪51aに伝達される。電源49は、インバータ47に接続され、インバータ47はモータ41に接続されている。
【0048】
また、
図7に示した電動車輌Eは、車輌ECU53、およびエンジンECU57を備えている。車輌ECU53は、電動車輌E全体の統括的な制御を行う。エンジンECU57は、エンジン43の回転数を制御し電動車輌Eを駆動する。電動車輌Eは、さらに運転者等に操作されるイグニッションキー55、図示しないアクセルペダルおよびブレーキ等の運転装置を備えている。車輌ECU53には、運転者等による運転装置の操作に応じた駆動信号が入力される。車輌ECU53は、その駆動信号に基づいて、指示信号をエンジンECU57、電源49、および負荷としてのインバータ47に出力する。エンジンECU57は、指示信号に応答してエンジン43の回転数を制御し、電動車輌Eを駆動する。
【0049】
電動車輌Eのインバータ47として、インバータD、すなわち容量部33に上記のフィルムコンデンサAを含むインバータDを用いる。このような電動車輌Eでは、フィルムコンデンサAの絶縁抵抗が低下し難いため、電動車輌Eのエンジン部等の過酷な環境下においても、フィルムコンデンサAの絶縁抵抗の低下が長期間にわたって小さく抑えられる。その結果、電動車輌Eでは、ECUなどの制御装置の電流制御をより安定にすることができる。
【0050】
なお、本実施形態のインバータDは、上記のハイブリッド自動車(HEV)のみならず、電気自動車(EV)、燃料電池車、電動自転車、発電機、または太陽電池など種々の電力変換応用製品に適用できる。
【実施例】
【0051】
ポリアリレート(U−100、ユニチカ製)を用いて平均厚さ3.0μmの誘電体フィルムを作製した。誘電体フィルムは、ポリアリレートをトルエンに溶解した樹脂溶液を、コータを用いてポリエチレンテレフタレート(PET)製の基材フィルム上に塗布し、シート状に成形した。成形した樹脂シートを、130℃で熱処理してトルエンを除去し、誘電体フィルムを得た。
【0052】
得られた誘電体フィルムを基材フィルムから剥離し、200mm幅にスリット加工した。200mm幅の誘電体フィルムの一方の面に、Al金属膜を真空蒸着法により形成し、金属化フィルムを得た。Al金属膜を蒸着するとき、メタルマスクとオイルマスクを用いて、Al金属膜の幅を180mmとした。オイルマスクは、パターンロールを用いてフォンブリンオイルを誘電体フィルム上に転写することで形成した。また、金属膜には、ヒューズ機能を備えた電極パターンを設けた。
【0053】
金属膜の厚さは40nm、シート抵抗は8.0Ω/□であった。金属膜の膜厚は、イオンミリング加工をした断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により求めた。シート抵抗(Rs)は、金属膜の電極パターンを有さない部分を幅(w)10mm、長さ(l)300mmで切り出し、金属膜の両端間の抵抗値(R)を四端子法で測定して、式Rs=R×w/lにより算出した。
【0054】
180mm幅の金属化フィルムをさらにスリット加工し、1.5mmの絶縁マージン部を有する幅30mmの金属化フィルムとした。
【0055】
幅30mmの金属化フィルムを2枚一組とし、ドラムに500回巻回し巻回体を作製した。一組の金属化フィルムは、誘電体フィルムの金属膜を有する部分が幅方向の端部に突出するように、それぞれ幅方向に5mmずらして重ね合わせた状態で巻回した。巻回体の一部を切断し、ドラムから取り外して、長さ100mm、幅30.5mm、厚さ3.1mmのベルト状の積層体を得た。
【0056】
ベルト状の積層体をプレス成型で平坦化し、幅方向の一対の端面である第1側面に亜鉛と錫との合金を溶射し、メタリコンの外部電極を形成した。このとき、第1側面の個片に切断する部位を、幅5mmのポリイミドテープでマスキングし、メタリコンが付着しないようにした。個片に切断するピッチは20mmとした。
【0057】
外部電極を形成したベルト状の積層体を切断器で切断して個片、すなわち外部電極を有する本体部を得た。切断器としてホーザン製バンドソーK−100を用い、切断刃としてK−100−2を用いた。切断速度は、速度200m/分とした。
【0058】
得られた個片の切断面である第2側面に、シリコーングリース(Synco Chemical製、91003)をスクリーン印刷で塗布した。塗布厚さは、10μm、25μmまたは50μmとした。
【0059】
試料No.1〜3には、塗布したシリコーングリースの上にさらにシリコーン接着剤(スリーボンド製、TB1220H)をスクリーン印刷で塗布し、24時間室温放置して硬化させ、被覆層とした。シリコーン接着剤の厚さは30μmとした。試料No.4〜6には、塗布したシリコーングリースの上に幅10mm、厚さ50μmのポリイミドテープを貼り付け被覆層とした。試料No.7は第2側面にグリースを塗布せず、直接シリコーン接着剤を塗布した。試料No.8は第2側面にグリース含有部および被覆層を形成しなかった。
【0060】
得られたフィルムコンデンサの外部電極にメッキ線を半田付けしたのち、ポリフェニレンサルファイド(PPS)製のケースに収納した。フィルムコンデンサとケースの隙間には外装樹脂としてエポキシ樹脂を注入して加熱、硬化させた。
【0061】
得られたフィルムコンデンサについて、絶縁抵抗(IR)と耐電圧を測定した。絶縁抵抗は絶縁抵抗計(日置電機製、DSM−8104)で測定した。耐電圧は、絶縁破壊試験器(菊水電子製、TOS9201)を用いて評価した。評価条件は、印加電圧を0Vから10V/秒の昇圧速度で1000Vまで昇圧し、10mA以上の電流が1秒以上流れた電圧をフィルムコンデンサの耐電圧とした。耐電圧を測定した後、再度絶縁抵抗を測定した。なお、絶縁破壊試験前の絶縁抵抗は、いずれの試料も1GΩ以上であった。耐電圧と絶縁破壊試験後の絶縁抵抗を表1に示す。
【0062】
評価後の試料を
図1のiii−iii線に沿って切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、
図3に示す絶縁層の厚さt1を測定した。グリース含有部の厚さt2、および被覆層の厚さt3は、デジタルマイクロスコープを用いて切断面を観察し、測定した。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
試料No.1〜6は、グリース含有部と、シリコーンまたはポリイミドの被覆層とを有しており、耐電圧が900V以上で絶縁破壊試験後の絶縁抵抗は1GΩ以上であった。特に試料No.1は、グリース含有部を有することで、絶縁層の厚さt1が薄くても900V以上の耐電圧を示した。
【0065】
一方、試料No.7および8はグリース含有部を有さないため、耐電圧が900Vより低く、切断面で放電が発生して絶縁破壊試験後の絶縁抵抗が大きく低下した。これらの試料では、切断面に放電による樹脂の炭化が見られた。
直方体状の本体部3と、一対の外部電極4とを備えるフィルムコンデンサ。本体部3は、誘電体フィルム1と金属膜2とが積層されているとともに、一対の対向する第1面3a、3bと、一対の第1面3a、3bをつなぐ一対の対向する第1側面3c、3d、および一対の対向する第2側面3e、3fを有する。一対の外部電極4は、第1側面3c、3dに位置する。第2側面3e、3fは、絶縁性の被覆層5で被覆されている。フィルムコンデンサは、第2側面3e、3fと被覆層5との間に、絶縁性のグリースを含むグリース含有部10を有する。