(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
相続された不動産は、被相続人の生前時と同様に有効活用される場合もあれば、ほとんど活用されずに放置される場合もある。
【0006】
このような非活用の不動産は、保守・保全が行われない状態で長期間経過した後にようやく周囲から感知されることになり、不動産が有効に活用されない状態が久しく続いてしまうこともある。
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みて、相続の発生後に活用されない可能性のある不動産についての情報を検知することができる情報処理システム、情報処理方法、および、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる情報処理システムは、上記課題に鑑みて、所定の条件を満たす不動産を、相続による所有権移転対象の不動産として検出する相続不動産検出手段と、前記所定の条件を満たす不動産の登記情報に基づいて、所有権の移転先となる相続人の住所情報を取得する住所情報取得手段と、前記住所情報取得手段によって取得された相続人の住所情報と、前記相続不動産検出手段によって検出された不動産の位置を特定するための物件特定情報に基づいて、前記相続不動産検出手段によって検出された不動産が非活用不動産となる可能性を判断する判断手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
また本発明にかかる情報処理システムの一態様では、登記の申請があったことを示す登記申請情報を記憶する登記申請情報記憶手段をさらに有し、前記相続不動産検出手段は、登記の目的が所有権移転であって相続または遺贈を示す登記申請情報が前記登記申請情報記憶手段に存在することを前記所定の条件として、相続による所有権移転対象としての不動産を検出する、ことを特徴としてもよい。
【0010】
また本発明にかかる情報処理システムの一態様では、前記相続不動産検出手段は、最新となる所有権の移転が所定の基準よりも過去の移転によって発生した不動産を、前記所定の条件を満たす不動産として検出し、前記住所情報取得手段は、前記相続不動産検出手段によって検出された不動産の登記情報に基づいて、現時点の所有者を示す所有者情報を導出する所有者導出手段と、各個人の親族を示す情報を記憶する親族情報記憶部から、前記現時点の所有者の親族を示す情報を読み出すことにより、前記現時点の所有者の相続人となる者の情報を取得する相続人情報取得手段と、各個人の住所を示す情報を記憶する住所情報記憶部から、前記現時点の所有者の相続人となる者の情報に基づいて、前記現時点の所有者の相続人となる者の住所情報を取得する相続人住所情報取得手段と、を有する、ことを特徴としてもよい。
【0011】
また本発明にかかる情報処理システムの一態様では、前記相続不動産検出手段は、登記情報を取得する登記情報取得手段と、登記情報に含まれる不動産の現時点の所有者を示す所有者情報に基づいて、前記現時点の所有者に関する情報を取得する所有者関連情報取得手段と、を有し、前記登記情報と、前記現時点の所有者に関する情報とに基づいて、前記所定の条件を満たす不動産を検出し、前記住所情報取得手段は、各個人の親族を示す情報を記憶する親族情報記憶部から、前記所定の条件を満たす不動産の前記現時点の所有者の親族を示す情報を読み出すことにより、前記所定の条件を満たす不動産の相続人となる者の情報を取得する相続人情報取得手段と、各個人の住所を示す情報を記憶する住所情報記憶部から、前記所定の条件を満たす不動産の相続人となる者の情報に基づいて、前記所定の条件を満たす不動産の相続人となる者の住所情報を取得する相続人住所情報取得手段と、を有する、ことを特徴としてもよい。
【0012】
また本発明にかかる情報処理システムの一態様では、前記住所情報取得手段は、1又は複数の前記相続人の候補者を導出してそれぞれの住所情報を取得し、前記判断手段は、前記相続人の候補者のそれぞれの住所情報と、前記物件特定情報に基づいて、非活用不動産となる可能性を判断する、ことを特徴としてもよい。
【0013】
また本発明にかかる情報処理システムの一態様では、前記判断手段は、前記住所情報取得手段によって取得された相続人の住所情報と、前記相続不動産検出手段によって検出された不動産の位置を特定するための物件特定情報との一致性を判断することにより、前記相続不動産検出手段によって検出された不動産が非活用不動産となる可能性を判断する、ことを特徴としてもよい。
【0014】
また本発明にかかる情報処理システムの一態様では、前記判断手段によって判断される、非活用不動産となる可能性が予め定められた基準よりも高い不動産を地図上に表示する地図表示手段を有する、ことを特徴としてもよい。
【0015】
また、本発明にかかる情報処理方法は、上記課題に鑑みて、相続不動産検出手段が、所定の条件を満たす不動産を、相続による所有権移転対象の不動産として検出し、住所情報取得手段が、前記所定の条件を満たす不動産の登記情報に基づいて、所有権の移転先となる相続人の住所情報を取得し、判断手段が、前記住所情報取得手段によって取得された相続人の住所情報と、前記相続不動産検出手段によって検出された不動産の位置を特定するための物件特定情報に基づいて、前記相続不動産検出手段によって検出された不動産が非活用不動産となる可能性を判断する、ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかるプログラムは、上記課題に鑑みて、コンピュータを、所定の条件を満たす不動産を、相続による所有権移転対象の不動産として検出する相続不動産検出手段、前記所定の条件を満たす不動産の登記情報に基づいて、所有権の移転先となる相続人の住所情報を取得する住所情報取得手段、前記住所情報取得手段によって取得された相続人の住所情報と、前記相続不動産検出手段によって検出された不動産の位置を特定するための物件特定情報に基づいて、前記相続不動産検出手段によって検出された不動産が非活用不動産となる可能性を判断する判断手段として機能させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、相続の発生後に活用されない可能性のある不動産についての情報を検知することができる情報処理システム、情報処理方法、および、プログラムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施形態]
以下においては、本発明の第1の実施形態に係る情報処理システム1(非活用不動産検出システム)についての説明をする。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る情報処理システム1の機能的構成を示す図である。同図で示されるように、本実施形態の情報処理システム1は、サーバ装置2とクライアント装置3とを含んで構成されて、サーバ装置2とクライアント装置3はWANやLANなどのネットワークを介して相互にデータ通信可能に接続されている。またサーバ装置2は、後述の登記申請情報が記録された外部のデータベースとして構成される登記申請情報記憶部R1や、登記情報が記録された登記情報記憶部R2にアクセスできるようになっている。
【0021】
本実施形態のサーバ装置2およびクライアント装置3は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶素子、ならびにハードディスク等によって構成される記憶領域と、CPU(Central Processing Unit)等のプログラム制御デバイスを含むことによって実現される。サーバ装置2およびクライアント装置3では、ハードディスク等の記憶領域に格納されたプログラムをCPUが実行することによって各機能が実現される。
【0022】
登記申請情報記憶部R1は、ハードディスク等によって構成されて、複数の登記申請情報を記憶するものとなっており、例えば、紙媒体ベースにて登記申請情報の記載された不動産登記受付簿を法務局から定期的に取得することができ、これらの記載内容をデータ化して蓄積することによって登記申請情報記憶部R1を構成することができる。
【0023】
登記情報記憶部R2は、例えば、財団法人民事法務協会によるインターネット登記情報提供サービスを利用して実現することが出来る。登記情報記憶部R2およびサーバ装置2は、インターネットを介して情報通信をし、登記情報記憶部R2は、サーバ装置2から要求された登記情報を送信する。
【0024】
サーバ装置2は、相続不動産検出部SRと、住所情報取得部AGと、判断部FRを含んで構成されて、クライアント装置3は、地図表示部MPを含んで構成される。
【0025】
本実施形態におけるサーバ装置2は、クライアント装置3からの指示により、相続が発生した不動産を検出して、さらに、検出された不動産の登記情報に照会して当該不動産の所有者(相続人)の住所情報を取得する。そして取得された相続人の住所情報と、相続が発生した不動産の位置を特定するための物件特定情報との一致性を判断することで、当該不動産が将来的に非活用不動産となる可能性を判断するものとなっている。
【0026】
相続不動産検出部SRは、所定の条件を満たす不動産を、相続による所有権移転の対象となる不動産として検出する。本実施形態における相続不動産検出部SRは、登記申請情報記憶部R1を検索することにより、登記申請を伴って相続が発生した不動産を、所定の条件を満たした不動産として検出をするようになっている。
【0027】
ここで
図2は、本実施形態における登記申請情報記憶部R1にて記録される登記申請情報の例を示す図となっている。同図において示されるように、登記申請情報の1レコードは、その登記申請が行われた受付年月日、その申請を特定する受付番号、登記の目的、用途のほかに、登記申請された対象物件を特定するための情報(物件特定情報)としての都道府県名、市区町村名、大字・町名、地番及び家屋番号を含んで構成される。また、登記申請が行われた不動産が存在する位置は、物件特定情報によって特定されることとなるが、以下においては、この物件特定情報を単に所在・地番ともいうこととする。また地番および家屋番号については、登記申請の対象物件が「土地」の場合には「地番」であり、「建物」や「区分建物」の場合には「家屋番号」となる。また、
図2における受付番号が第98230号の「家屋番号」は、親番「150」と、枝番「1」と、部屋番号「2006」を含んで構成されるものとなっている。また、「家屋番号」には、枝番が含まれないものが存在することがある。
【0028】
また
図2において、「用途」のフィールドにおける「区建」とは、独立して住居等の用途に供することができる構造上区分された数個の部分(専有部分)を有した区分建物のことをいい、例えば、マンションやアパートのような土地に定着した集合住宅がこれに該当する。また、「建物」とは、区分建物ではない家屋を示す建造物のことをいう。
【0029】
またさらに、「登記の目的」のフィールドにおける「区分建物の表題」は、新たに集合住宅が建設されて登記申請されたことを示す情報が格納されたものとなっており、登記申請情報記憶部R1では、集合住宅の各専有部分のそれぞれについての登記申請情報が記録される。また、「登記の目的」のフィールドにおける「所有権の移転(売買)」は、所有権の移転かつ売買を示す情報に対応しており、「所有権の保存(申請)」は、所有権の保存を示す情報に対応している。
【0030】
また
図2における受付番号第98226号と第98227号は、不動産の位置を示す物件特定情報が同一となる「土地」と「建物」の所有権が同時に移転されたことが読み取れる登記申請情報となっており、受付番号第98228号と第98229号は、建物が取り壊されて更地となった状態の土地の所有権が移転されたことを読み取ることが出来る登記申請情報となっている。またさらに、受付番号第98230号の登記申請情報は、区分建物(例えば、マンションの一室)の所有権が相続によって移転されたことを読み取れるものとなっており、受付番号第98232号の登記申請情報は、土地の所有権が相続によって移転されたことを、受付番号第98233号と第98234号の登記申請情報は、土地と建物の所有権が相続によって同時に移転されたことを読み取ることが出来るものとなっている。
【0031】
具体的には、相続不動産検出部SRは、登記の目的が所有権移転であって相続または遺贈を示す登記申請情報を検出できた不動産を、相続の対象となった不動産として検出をする。この際に相続不動産検出部SRは、検出された不動産のうち、相続または遺贈を示す登記申請の受付年月日の以降において、所有権の移転や抵当権設定等を目的とする登記申請情報が検出された不動産を排除する。すなわち相続不動産検出部SRは、相続の発生した不動産のうち、相続後に売買等の処分がされていない不動産を検出するものとなっており、最新となる所有権の移転が相続によって発生した不動産を検出するものとなっている。
【0032】
次に、住所情報取得部AGは、相続不動産検出部SRによって検出された不動産の物件特定情報によって取得される登記情報に基づいて、相続人の住所情報を取得する。具体的には、住所情報取得部AGは、物件特定情報取得部G1と、登記情報取得部G2と、相続人住所情報取得部G3を含んで構成されて、まず物件特定情報取得部G1は、相続不動産検出部SRによって検出された不動産の所在・地番を取得する。そして登記情報取得部G2は、物件特定情報取得部G1にて取得された不動産の所在・地番に基づいて登記情報記憶部R2にアクセスして登記情報を取得し、相続人住所情報取得部G3は、取得された登記情報から不動産の現在の所有者を示す情報と、当該所有者の住所を示す住所情報を取得する。
【0033】
判断部FRは、相続不動産検出部SRにて検出された不動産を特定するための物件特定情報と、住所情報取得部AGにて取得された相続人の住所情報とに基づいて、相続不動産検出部SRにて検出された不動産が非活用不動産となる可能性を判断する。相続人の住所が、相続対象となった不動産から離れている場合には、管理が行き届きにくく放置されやすい傾向にある。本実施形態の情報処理システム1は、このような不動産の発生を予め検知して、不動産事業を営む者等に提供して不動産の有効活用に貢献できるものとなっている。
【0034】
具体的には、判断部FRは、相続された不動産の物件特定情報と、相続人の住所情報とで、都道府県名と市区町村名とが一致するか否かを判断することで非活用不動産となる可能性を判断する。本実施形態の場合には、都道府県名と市区町村名とが完全一致しない場合には、非活用不動産になる可能性が高いものとしてサーバ装置2が出力をするようになっているが、都道府県名や市区町村名の一致性に応じて段階的に可能性を判断するようにしてもよい。なお判断部FRとしては、相続された不動産の物件特定情報を住所情報に変換しつつ、相続人の住所情報との一致性を判断するようにしてもよいし、さらに、「町丁目」までもが一致するか否かを判断することで、非活用不動産となる可能性を判断してもよい。また、相続された不動産の物件特定情報と相続人の住所情報のそれぞれを、地図上の座標情報に変換して、両者の距離が所定基準よりも離れているか否かを判断することで、(地図座標上での)一致性を判断するようにしてもよいし、両者の距離に応じて非活用不動産となる可能性を判断して出力をするようにしてもよい。
【0035】
クライアント装置3は、サーバ装置2にて、相続不動産検出部SRにて検出された不動産のうち非活用不動産になる可能性が高いと判断された相続対象となった不動産の情報を受信し、地図表示部MPが表示をする地図上にて当該不動産の表示をする。またこの際、相続人の住所に対応する位置も地図上にて表示をするようにしてもよい。
【0036】
図3は、本実施形態の情報処理システム1における処理のフローを示す図である。同図で示されるように、まず、相続不動産検出部SRは、登記申請情報の検索を行なうことで、相続が発生した不動産であって、かつ、相続の発生後に所有権移転等がなされていない不動産を検出する(S101)。次にS102では、検出された登記申請情報から不動産の物件特定情報を抽出し、S103では、抽出された物件特定情報に基づいて登記情報を取得する。
【0037】
そしてS104では、S103にて取得された登記情報から、相続対象となった不動産の現時点における所有者の名称や住所についての情報を取得する。登記情報は、「表示部」と、「権利部(甲区)(所有権に関する事項)」と、「権利部(乙区)(所有権以外の権利に関する事項)」、「共同担保目録」といった内容の情報を含んで構成され、「権利部(甲区)」における「権利者その他の事項」欄から、最新の所有者名称を示す情報や、当該所有者の住所または居所を示す情報(住所情報)を取得することができる。
【0038】
S104にて登記情報から取得される現時点の所有者名称や住所は、S101における処理によって、相続の発生後に所有権移転のなされていない不動産であることが前提となっているため、相続人の名称や住所に対応するものとなっている。
【0039】
最後に、S105における処理では、S102にて取得された不動産の物件特定情報と、S104にて取得された相続人の住所情報との一致性を判断して、非活用不動産となる可能性を判断する。本実施形態における判断部FRは、相続対象となった不動産の物件特定情報に含まれる都道府県・市区町村名と、相続人の住所における都道府県・市区町村名とが一致しない場合に、相続不動産が放置される可能性が高いものと判断する出力をする。なお、S104にて複数の相続人が取得された場合には、相続対象となった不動産の物件特定情報と、各相続人の住所情報との一致性を判断し、例えば、全ての相続人の住所情報が、相続不動産の物件特定情報と一致しない場合に、相続不動産が放置される可能性が高いものと判断をする出力してもよい。
【0040】
[第1の実施形態の変形例]
ここで、本実施形態の変形例にかかる情報処理システム1について説明をする。この変形例においては、相続不動産検出部SRは、所定の基準を満たす受付年月日の登記申請情報であって、登記の目的が所有権移転であって相続または遺贈を示す登記申請情報を検出することにより、相続の対象となった不動産を検出するようになっている。換言すると、相続不動産検出部SRは、最新となる所有権の移転が相続によって発生して、かつ、当該所有権の移転が所定の基準を満たすタイミングで発生したという条件を満たす不動産を検出するようになっている。
【0041】
登記申請情報の受付年月日についての所定の基準としては、例えば、現在から3年前の時点以降、あるいは、5年前の時点以降というようなものが考えられる。相続が発生して間もないタイミングの不動産について、非活用不動産の可能性が判断されるようにすることで、不動産の営業要員としては、非活用不動産に対して効率よくアプローチをすることができるようになる。
【0042】
また、
図4は、上記の変形例の構成をも包含した第1の実施形態の情報処理システム1のクライアント装置3における地図表示画面の一例を示すものとなっている。
図4における◎印は、現在から3年前の時点以降において相続が発生して、相続人が離れた場所に居住する等で非活用不動産となっている可能性が高い家屋を示しており、○印は、現在から3年前の時点以前において相続が発生して非活用不動産となっている可能性が高い家屋を示すものとなっている。このように地図画面上に表示されることで、不動産事業者としては、高度な不動産活用・都市開発の提案をすることができるようになる。例えば、
図4の地図の右上箇所のように、相続が発生して非活用不動産となっている可能性が高い不動産が密集しているような場合には、これらの不動産を一括して処分して新たに広い家屋を建設すること等が考えられる。また相続や非活用不動産の発生が多発しているような区域の場合には、
図4のような表示が提供されることで、区域内における不動産の効率的活用や都市計画、ひいては資産価値の増大に寄与できることとなる。
【0043】
[第2の実施形態]
次に、
図5〜
図7を用いて、本発明の第2の実施形態について説明をする。第1の実施形態の情報処理システム1は、既に発生した相続によって非活用不動産になる可能性を判断するものとなっているが、第2の実施形態の情報処理システム1は、近い将来において相続が新たに発生して非活用不動産になる可能性が高いと判断されるものを検出するようになっている。
【0044】
図5は、第2の実施形態における情報処理システム1の機能的構成を示す図である。同図で示されるように、第2の実施形態のサーバ装置2は、登記申請情報記憶部R1や、登記情報記憶部R2にアクセスできるようになっているほかに、個人情報記憶部R3にアクセスすることが出来るようにもなっている。
【0045】
図6は、この個人情報記憶部R3にて保持された個人情報について説明するための図である。本実施形態における個人情報記憶部R3は、各個人の住所情報と、各個人の親族を示す情報と、各個人に関する個人関連情報(例えば、生年月日)等のそれぞれを記憶する記憶部によって構成されたものとなっている。具体的には、同図で示されるように、個人情報記憶部R3に記録される個人情報の1レコードは、各レコードを識別するための「識別情報」と、戸籍上の名称を示す「名称」と、住民票に記載された住所又は居所を示す「住所情報」と、「生年月日」と、「親族情報」と、現時点においての生死の状態を示す「生存フラグ」とを含んで構成されたものとなっている。なお、「住所情報」においては、現在における住所とともに、過去において住民票に記載された住所も含まれるようにしてもよい。
【0046】
そして「親族情報」のフィールドには、
図5において示されるように、その個人の両親や子供等の他の個人情報を示すレコードにリンクされるように、「父」や「母」等のフィールドにて、「識別番号」が記録されるようになっている。なお個人情報としては、男女を示す情報が含まれていてもよいし、親族情報には、「兄弟」や「配偶者」のフィールドが設けられて、これらの個人の識別番号がリンクされるようになっていてもよい。またさらに親族情報としては、「父(実父)」や「母(実母)」の他に、「養父」や「養母」といったフィールドが設けられていてもよい。
【0047】
また第2の実施形態における相続不動産検出部SRは、最新となる所有権の移転が、所定の基準(例えば、現時点よりも20年前、あるいは、30年前の時点)よりも過去の相続によって発生した不動産を検出する。具体的には、「登記の目的」が所有権移転であって相続または遺贈を示して、その「受付年月日」が30年以上前となる登記申請情報が存在し、かつ、その受付年月日以降にて所有権の移転等を目的とする登記申請情報が存在しないという条件を満たす不動産を検出する。このように最新の相続の時点から年月の経過した不動産は、その所有者が高齢化するために新たな相続が近い将来に発生する可能性が高まっていることとなる。
【0048】
次に、第2の実施形態における住所情報取得部AGは、物件特定情報取得部G1と、登記情報取得部G2と、相続人住所情報取得部G3の他に、所有者導出部G4と、相続人情報取得部G5を含んで構成されている。
【0049】
物件特定情報取得部G1は、相続不動産検出部SRにて検出された不動産の物件特定情報を取得し、さらに、登記情報取得部G2は、取得された物件特定情報により不動産の登記情報を取得する。所有者導出部G4は、登記情報取得部G2によって取得された不動産の登記情報から現時点における所有者を示す所有者情報を導出し、相続人情報取得部G5は、個人情報記憶部R3の親族情報記憶部を参照しつつ所有者情報に基づいて、現時点における所有者の相続人の候補となる者を特定する(相続人候補者の識別情報を取得する)。そしてさらに、相続人住所情報取得部G3は、相続人の候補者の識別情報に基づいて、個人情報記憶部R3の住所情報記憶部を参照しつつ、相続人の候補者の住所情報を取得する。
【0050】
具体的には、所有者導出部G4は、所有者の名称とその住所情報(所有者情報)を登記情報から導出し、相続人住所情報取得部G3は、この2つの情報をキーとして個人情報記憶部R3を検索して、不動産の現時点における所有者のレコードを特定する。相続人情報取得部G5は、特定された所有者のレコードにおける親族情報のフィールドに記録された情報に基づいて、相続人として相応な1又は複数の候補を選択し(法定相続人となる者を選択し)、相続人住所情報取得部G3は、選択された相続人候補の住所情報をさらに取得する。
【0051】
判断部FRは、第1の実施形態の場合と同様に、相続人住所情報取得部G3によって取得された相続人となる予定の者の住所情報と、相続不動産検出部SRにて検出された不動産の物件特定情報の一致性に基づいて、将来的に所有者が死去した後において非活用不動産となる可能性を判断する。
【0052】
なお、住所情報取得部AGとしては、さらに、相続不動産検出部SRにて検出された不動産の所有者の年齢を判定する判定部を備えるようにしてもよく、相続人情報取得部G5および相続人住所情報取得部G3は、この判定部の判定に応じて、当該所有者の相続人候補の住所情報を取得するようにしてもよい。現時点における不動産の所有者の年齢が、所定の基準を満たす場合(例えば、80歳以上となる場合)には、相続が数年内に発生する可能性が高くなる。逆に、所定の基準を満たさない場合には、近い将来において相続が発生する可能性が低くなるため、判断部FRにおける非活用不動産となるか否かを判断する処理を省略して、サーバ装置2における処理を効率化することもできる。また、近い将来において相続が発生する場合には、相続が発生するまでの期間が短期間となるため、相続人候補者が引っ越し等をして住居が変動する可能性が低くなり、サーバ装置2による判断結果の精度の向上につなげられる。
【0053】
図7は、第2の実施形態の情報処理システム1における処理のフローを示す図である。同図で示されるように、まずS201においては、相続不動産検出部SRは、登記申請情報記憶部R1を検索して、最新となる所有権移転が、所定基準よりも過去の時点で相続されることにより発生した不動産を検出する。そしてS202では、S201において検索された登記申請情報から物件特定情報を取得し、この物件特定情報に基づいて登記情報とその登記情報に含まれる現在の所有者情報を取得する。
【0054】
S203では、さらに、S202で取得された所有者情報に基づいて、個人情報記憶部R3から当該所有者の相続人候補となる者に該当する個人情報をさらに取得し、当該相続人候補の住所情報も取得する。本実施形態においては、具体的には、所有者に該当する個人情報の1レコードからの「親族情報」のフィールドに記録されたリンクをたどって、相続人候補となる者の個人情報の1レコードを特定することで相続人候補の住所情報を取得する。
【0055】
S204においては、S201にて検出された登記申請情報に含まれる物件特定情報と、S203にて取得された相続人候補の住所情報に基づいて、近い将来的に相続されうる不動産が非活用不動産となる可能性を判断する。
【0056】
第2の実施形態の情報処理システム1は、以上のような観点で第1の実施形態の情報処理システム1と相違するが、以上のような観点以外については第1の実施形態とほぼ同様であるため説明を省略するものとする。
【0057】
なお、第2の実施形態においては、相続不動産検出部SRが、最新の所有権移転が、所定基準よりも過去の時点に相続されることにより発生した不動産を検出するものとなっているが、登記申請情報における登記の目的が、相続又は遺贈を目的とする所有権移転に限定されず、最新の所有権移転が、所定基準よりも過去の時点に発生した不動産を検出するものとしてもよい。なお、この場合において、S202とS203の間において、個人情報記憶部R3にて現時点の所有者の個人情報に照会した後に、当該所有者の年齢が予め定められた基準を満たすか否かを判定し、基準を満たさない場合には、S203やS204の処理を行なわないようにすることで効率化してもよい。
【0058】
[第3の実施形態]
次に、
図8、
図9を用いて、本発明の第3の実施形態について説明をする。第3の実施形態における情報処理システム1は、近い将来において新たに相続が発生して非活用不動産になる可能性が高いと判断されるものを検出する点では、第2の実施形態と同様であるが、相続不動産検出部SRが登記申請情報を検索せずに登記情報を検索して、近い将来に相続が発生しうる不動産を検出するようになっている点で、第2の実施形態と異なっている。
【0059】
以下において、第3の実施形態の情報処理システム1についての説明をする。
【0060】
図8は、第3の実施形態の情報処理システム1の機能的構成を示す図である。同図で示されるように、第3の実施形態のサーバ装置2の相続不動産検出部SRは、登記情報取得部S1と、所有者関連情報取得部S2と、判定部S3とを含んで構成される。また、住所情報取得部AGは、相続人情報取得部G5と、相続人住所情報取得部G3を含んで構成される。
【0061】
第3の実施形態の情報処理システム1では、まずクライアント装置3からの要求により、所定の地域内において、非活用不動産となる可能性が高い不動産を検索・出力するものとなっている。具体的には、登記情報取得部S1は、所定の地域内(例えば、特定の市区町村における特定の町丁目区画内)における不動産の登記情報を、登記情報記憶部R2から網羅的に取得し、それぞれの不動産における所有者とその住所情報を取得する。
【0062】
所有者関連情報取得部S2は、個人情報記憶部R3から、登記情報記憶部S1によって取得された不動産の所有者の名称と住所情報とに基づいて、当該所有者に対応する個人情報の1レコードを特定しつつ、当該所有者に対応する者の「生年月日」の情報を取得する。判定部S3は、個人情報取得部S3にて取得された個人情報の「生年月日」に記録されたフィールドの内容に基づいて、当該所有者の年齢が所定基準を満足するか否かを判定する。本実施形態の場合には、当該所有者の年齢が80歳以上(あるいは90歳以上)となる場合に相続が近い将来に発生しうるものとして判断をすることとし、相続不動産検出部SRは、所有者の年齢が80歳以上となるという条件を満たす不動産を、相続による所有権移転対象となる不動産として検出をするようになっている。なお、複数人によって不動産が所有される場合には、例えば、全ての所有者がこのような条件を満たす場合に、相続による所有権移転対象となる不動産として検出をするようにしてよい。
【0063】
住所情報取得部AGにおける相続人情報取得部G5は、判定部S3によって近い将来に相続が発生しうるとして判定された不動産の所有者を示す所有者情報に基づいて、個人情報記憶部R3に含まれる親族情報を参照し、相続人として相応な1又は複数の候補を選択する(法定相続人となる者を選択する)。そしてさらに相続人住所情報取得部R3は、選択された相続人候補の住所情報を、個人情報記憶部R3からさらに取得する。
【0064】
図9は、第3の実施形態の情報処理システム1の処理のフローを示す図である。同図で示されるように、まずS301においては、不動産の登記情報を取得し、S302においては、取得された登記情報を参照して当該不動産の現時点における所有者を示す所有者情報(所有者の名称・住所を示す情報)を取得する。S303では、所有者情報をキーとして個人情報記憶部R3にて、現時点の不動産の所有者の個人情報の1レコードを特定し、所有者に関する情報を取得する。
【0065】
S304においては、S303において取得された不動産の所有者に関する情報から、不動産の所有者が所定の条件を満たすか否か(具体的には、不動産の所有者の年齢が所定基準を満たすか否か)を判定し、NOとなる場合には終了する(他の不動産について、同様の処理を繰り返す)。YESとなる場合には、S305に進んで、S303にて特定される現時点の不動産の所有者の個人情報の1レコードから、親族情報にてリンクされた相続人候補となる者の個人情報のレコードを取得する。S306では、相続人候補の住所情報と、相続対象となる不動産の物件特定情報との一致性を判断して、非活用不動産となる可能性の判断を行い、その結果を出力する。
【0066】
なお、第2の実施形態、第3の実施形態における、個人情報記憶部R3の1レコードの識別番号としては、例えば、国民総背番号制のいわゆるマイナンバーが採用されていてもよい。また、登記情報における不動産の所有者を示す欄において、マイナンバーが記載されていてもよい。サーバ装置2が、所有者のマイナンバーを取得することで、円滑に個人情報を検索できるようになる。
【0067】
なお、上記の情報処理システム1としては、建物や区分建物が将来的に空家となるか否かではなく、土地等をはじめとするその他の不動産に関して非活用不動産となるか否かが判断されるようにしてもよい。また土地の不動産の場合には、山林であっても農地であってもよく、その用途にかかわらず本発明の情報処理システム1の適用範囲内となる。
【0068】
なお、上述した各実施形態の情報処理システム1においては、例えば、登記申請情報記憶部R1や、登記情報記憶部R2、個人情報記憶部R3が、サーバ装置2にて構築されてもよいし別のサーバにて構築されてもよい。また、情報処理システム1としては、例えば、クライアント装置3にてサーバ装置2の一部の機能を有するように構成されてもよい。また上述の個人情報記憶部R3は、相続人情報と住所情報等が1つのレコードに含まれるようにして構成されているが、このような態様には限定されず、これらが別々のハードウェアによるデータベースにて記録されていてもよい。また個人情報記憶部R3としては、登記情報記憶部R2と同様に、外部のサービスによって提供されるものであってもよい。本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能であり、各実施形態を適宜組み合わせた構成としてもよいことは言うまでもなく、例えば、第1の実施形態の情報処理システム1の構成に、第2の実施形態や第3の実施形態の情報処理システム1の構成を組み合わせて、既に相続が発生した不動産が非活用不動産となる可能性と、将来的に相続が発生して非活用不動産となる可能性とが同時に判断されるようにして、利便性を向上させるようにしてもよい。