(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603480
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】電気機器取付装置および方法
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20191028BHJP
B23P 19/04 20060101ALI20191028BHJP
B23P 21/00 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
B25J15/08 C
B23P19/04 G
B23P21/00 305Z
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-103002(P2015-103002)
(22)【出願日】2015年5月20日
(65)【公開番号】特開2016-215321(P2016-215321A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 満
(72)【発明者】
【氏名】山 根 秀 士
(72)【発明者】
【氏名】竹 林 潤
(72)【発明者】
【氏名】倉 岡 修 平
(72)【発明者】
【氏名】水 本 裕 之
【審査官】
牧 初
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−44267(JP,A)
【文献】
特開平6−39767(JP,A)
【文献】
特開平11−339875(JP,A)
【文献】
米国特許第4621398(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
B23P 19/00−21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットを用いて電気機器を搬送して所定の位置に取り付けるための電気機器取付装置であって、
前記ロボットのアームに装着されるエンドエフェクタに設けられ、ロボット側接点を有するロボット側接点治具と、
前記電気機器に取外し可能に設けられ、前記電気機器と電気的に接続される電気機器側接点を有する電気機器側接点治具と、を備え、
前記ロボット側接点治具および前記電気機器側接点治具は、前記エンドエフェクタによって前記電気機器を保持した状態において前記ロボット側接点と前記電気機器側接点とが接続状態となるように構成されている、電気機器取付装置。
【請求項2】
前記電気機器は、モータを含む、請求項1記載の電気機器取付装置。
【請求項3】
前記電気機器側接点は、前記モータの電磁ブレーキと電気的に接続される、請求項2記載の電気機器取付装置。
【請求項4】
前記電磁ブレーキは、無励磁作動形電磁ブレーキであり、
前記ロボット側接点は、前記無励磁作動形電磁ブレーキを解除するための電力を供給するための電源と電気的に接続される、請求項3記載の電気機器取付装置。
【請求項5】
前記電気機器側接点は、前記モータの回転駆動機構に電気的に接続される、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の電気機器取付装置。
【請求項6】
前記ロボット側接点は、前記ロボットのコントローラと電気的に接続される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電気機器取付装置。
【請求項7】
ロボットを用いて電気機器を搬送して所定の位置に取り付ける電気機器取付方法であって、
前記ロボットを駆動して、前記ロボットのアームに装着されたエンドエフェクタに設けられたロボット側接点治具のロボット側接点を、前記電気機器に取外し可能に設けられた電気機器側接点治具の電気機器側接点に接続する接点接続工程と、
前記ロボットを駆動して、前記エンドエフェクタで保持した前記電気機器を搬送する電気機器搬送工程と、
前記ロボット側接点に電気的に接続された電源から前記電気機器に電力を供給する電力供給工程と、を備えた電気機器取付方法。
【請求項8】
前記電気機器は、モータを含み、
前記電力供給工程によって前記モータの電磁ブレーキを解除する、請求項7記載の電気機器取付方法。
【請求項9】
前記電力供給工程によって前記モータの前記電磁ブレーキを解除した後、前記ロボットを駆動して、前記モータの出力軸の軸線周りに前記モータの本体を回転させて前記モータの本体を位置決めするモータ本体位置決め工程をさらに有する、請求項8記載の電気機器取付方法。
【請求項10】
前記電力供給工程における前記電源は、前記ロボットのコントローラによって提供される、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の電気機器取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットを用いてモータなどの電気機器を搬送して所定の位置に取り付けるための電気機器取付装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来は作業員が行っていた各種の作業をロボットに代替させて、生産プロセスを自動化するシステムが幅広く実用化されている(特許文献1)。
【0003】
例えば、比較的重量の大きい機器を、製造中の製品における所定の位置に取り付ける作業について、従来はホイストなどで機器を吊り上げ、作業員が所定の位置まで移動させて、製造中の製品に対してボルトなどで機器を固定していたが、この機器の搬送作業をロボットに代替させるシステムがある。
【0004】
ところで、製造中の製品にモータを取り付ける際に、取付け作業を支障なく行うために、モータの状態を変化させたい場合がある。例えば、製造中の製品がロボット(以下、製造対象のロボットを「製品ロボット」と呼ぶ。)であり、製品ロボットのアームを駆動するためのサーボモータを、作業用のロボット(以下、製品ロボットの製造に用いる作業用のロボットを「作業ロボット」と呼ぶ。)を用いて製品ロボットの所定の位置に取り付ける場合、サーボモータの電磁ブレーキを一時的に解除する必要が生じることがある。
【0005】
すなわち、サーボモータを固定ボルトにより固定する構造の製品ロボットにおいて、作業ロボットによってサーボモータを搬送し、製品ロボットの駆動軸に取り付けを行う場合、製品ロボット側に設けられた挿入孔にサーボモータの出力軸を挿入して駆動軸側の歯車と出力軸先端の歯車とを噛み合わせるとともに、モータ本体を出力軸の軸線回りに回転させて、製品ロボット本体側に設けられたネジ孔とモータ本体側に設けられた固定ボルト用孔の位置合わせをして、ネジ孔に固定ボルトを挿入する必要がある。
【0006】
しかるに、製品ロボットの駆動軸に取り付けられるサーボモータには、一般に、電源喪失時におけるロボットの暴走や搬送対象物の落下等を防止するために、無励磁作動形電磁ブレーキが備えられている。
【0007】
このような無励磁作動形電磁ブレーキ付きサーボモータを製品ロボットの駆動軸に取り付ける場合には、サーボモータには電源が供給されていないため、モータ出力軸はモータ本体に対して固定又は拘束されていて回転させることができない。
【0008】
したがって、無励磁作動形電磁ブレーキ付きサーボモータの出力軸を、製品ロボットの駆動軸側に設けられた孔に挿入して、駆動軸側の歯車とモータ出力軸側の歯車とを噛み合わせると、モータ出力軸とモータ本体とが拘束されているので、モータ本体を回転させてその固定ボルト用孔の位置をロボット側のネジ孔に位置合わせすることができない。
【0009】
そのため、無励磁作動形電磁ブレーキ付きサーボモータを、製品ロボットの駆動軸に取り付ける作業を行う際は、サーボモータの出力軸をロボット駆動軸側に設けられた孔に挿入して駆動軸側の歯車とモータ出力軸側の歯車とを噛み合わせるまでは電磁ブレーキを作動させておき、駆動軸側の歯車とモータ出力軸側の歯車を噛み合わせた後に、モータ本体をモータ出力軸回りに回転できるように電磁ブレーキを解除する必要がある。
【0010】
ちなみに、従来のように作業員がサーボモータを取り付ける場合には、製品ロボットの姿勢(ロボットアームの角度など)を製造中に多少変えることができたので、製品ロボットの駆動軸側の歯車とモータ出力軸側の歯車とを噛み合わせた状態で、製品ロボットの姿勢を多少変えることによって、モータ本体の固定ボルト用孔の位置を、ロボット側のネジ孔の位置に合わせることができた。
【0011】
これに対して、作業ロボットを用いて製品ロボットを製造する場合には、予め教示された位置にモータなどの部品を取り付ける必要があるため、製造中の製品ロボットの姿勢はしっかりと固定されている。このため、製品ロボットの駆動軸側の歯車とモータ出力軸側の歯車とを噛み合わせた状態において、製品ロボットの姿勢を変えることによってモータ本体側の固定ボルト用孔の位置とロボット側のネジ孔の位置とを合せることができない。
【0012】
また、作業ロボットによってモータを取り付ける対象が、製品ロボットではなく他の製品である場合でも、製品側の歯車が固定状態にある場合には、モータのブレーキを解除しなければ、製品側の歯車とモータ出力軸側の歯車とを噛み合わせた状態でモータ本体を回転させることができない。
【0013】
また、作業ロボットによる搬送対象物がモータ以外の電気機器の場合も、作業ロボットによる搬送・取付作業の途中で電気機器を動作させてその状態を変更したい場合があるが、従来の技術ではそのような要求に対応することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2013−193155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上述した従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであって、ロボットを用いてモータなどの電気機器を搬送して所定の位置に取り付ける作業を支障なく行うことができる電気機器取付装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、ロボットを用いて電気機器を搬送して所定の位置に取り付けるための電気機器取付装置であって、前記ロボットのアームに装着されるエンドエフェクタに設けられ、ロボット側接点を有するロボット側接点治具と、前記電気機器に取外し可能に設けられ、前記電気機器と電気的に接続される電気機器側接点を有する電気機器側接点治具と、を備え、前記ロボット側接点治具および前記電気機器側接点治具は、前記エンドエフェクタによって前記電気機器を保持した状態において前記ロボット側接点と前記電気機器側接点とが接続状態となるように構成されている、ことを特徴とする。
【0017】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記電気機器は、モータを含む、ことを特徴とする。
【0018】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記電気機器側接点は、前記モータの電磁ブレーキと電気的に接続される、ことを特徴とする。
【0019】
本発明の第4の態様は、第3の態様において、前記電磁ブレーキは、無励磁作動形電磁ブレーキであり、前記ロボット側接点は、前記無励磁作動形電磁ブレーキを解除するための電力を供給するための電源と電気的に接続される、ことを特徴とする。
【0020】
本発明の第5の態様は、第2乃至第4のいずれかの態様において、前記電気機器側接点は、前記モータの回転駆動機構に電気的に接続される、ことを特徴とする。
【0021】
本発明の第6の態様は、第1乃至第5のいずれかの態様において、前記ロボット側接点は、前記ロボットのコントローラと電気的に接続される、ことを特徴とする。
【0022】
上記課題を解決するために、本発明の第7の態様は、は、ロボットを用いて電気機器を搬送して所定の位置に取り付ける電気機器取付方法であって、前記ロボットを駆動して、前記ロボットのアームに装着されたエンドエフェクタに設けられたロボット側接点治具のロボット側接点を、前記電気機器に取外し可能に設けられた電気機器側接点治具の電気機器側接点に接続する接点接続工程と、前記ロボットを駆動して、前記エンドエフェクタで保持した前記電気機器を搬送する
電気機器搬送工程と、前記ロボット側接点に電気的に接続された電源から前記電気機器に電力を供給する電力供給工程と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
本発明の第8の態様は、第7の態様において、前記電気機器は、モータを含み、前記電力供給工程によって前記モータの電磁ブレーキを解除する、ことを特徴とする。
【0024】
本発明の第9の態様は、第8の態様において、前記電力供給工程によって前記モータの前記電磁ブレーキを解除した後、前記ロボットを駆動して、前記モータの出力軸の軸線周りに前記モータの本体を回転させて前記モータの本体を位置決めするモータ本体位置決め工程をさらに有する、ことを特徴とする。
【0025】
本発明の第10の態様は、第7乃至第9のいずれかの態様において、前記電力供給工程における前記電源は、前記ロボットのコントローラによって提供される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ロボットを用いてモータなどの電気機器を搬送して所定の位置に取り付ける作業を支障なく行うことができる電気機器取付装置および方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態によるモータ取付装置をサーボモータと共に模式的に示した正面図。
【
図2】本発明の一実施形態によるモータ取付装置をサーボモータと共に模式的に示した側面図。
【
図3A】
図1に示したモータ取付装置のモータ側接点治具を示した平面図。
【
図4A】
図3Aに示したモータ側接点治具をサーボモータに装着した状態を示した平面図。
【
図4B】
図3Aに示したモータ側接点治具をサーボモータに装着した状態を示した側面図。
【
図4C】
図3Aに示したモータ側接点治具をサーボモータに装着した状態を示した正面図。
【
図5A】
図1に示したモータ取付装置のロボット側接点治具を示した平面図。
【
図6A】
図5Aに示したロボット側接点治具をエンドエフェクタに装着した状態を示した正面図。
【
図6B】
図5Aに示したロボット側接点治具をエンドエフェクタに装着した状態を示した側面図。
【
図6C】
図5Aに示したロボット側接点治具をエンドエフェクタに装着した状態を示した平面図。
【
図6D】
図5Aに示したロボット側接点治具をエンドエフェクタに装着した状態を示した底面図。
【
図7】
図1に示したモータ取付装置のロボット側接点治具をモータ側接点治具に接続する様子を示した正面図。
【
図8A】
図1に示したモータ取付装置のロボット側接点治具をモータ側接点治具に接続した状態を模式的に示した正面図。
【
図8B】
図8Aに示した状態からエンドエフェクタを駆動して、エンドエフェクタによってサーボモータを把持した状態を模式的に示した正面図。
【
図8C】
図8Bに示した状態からロボットを駆動して、ロボットによってサーボモータを所定の取付け位置に搬送した状態を模式的に示した正面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態によるモータ取付装置(電気機器取付装置)およびモータ取付方法(電気機器取付方法)について、図面を参照して説明する。
【0029】
図1および
図2に示したように、本実施形態によるモータ取付装置1は、作業ロボット2のアーム3に装着されたエンドエフェクタ4に設けられたロボット側接点治具5と、搬送対象物であるサーボモータ6に取外し可能に設けられたモータ側接点治具(電気機器側接点治具)7と、を備えている。
【0030】
エンドエフェクタ4は、サーボモータ6を解放可能に把持するためのモータ把持機構8を有する。モータ把持機構8は、ロボットコントローラ9によって駆動制御されて開閉する一対の把持爪10を有する。作業ロボット2としては、例えば6軸多関節型ロボットを使用することができる。
【0031】
ロボット側接点治具5は、ロボットコントローラ9に電気的に接続されたロボット側接点11を有する。モータ側接点治具7は、サーボモータ6の内部機構と電気的に接続されたモータ側接点(電気機器側接点)12を有する。
【0032】
ロボット側接点治具5およびモータ側接点治具7は、エンドエフェクタ4によってサーボモータ6を保持した状態において、ロボット側接点11とモータ側接点12とが接続状態となるように構成されている。
【0033】
サーボモータ6は、無励磁作動形電磁ブレーキ付きのサーボモータである。モータ側接点治具7のモータ側接点12は、少なくともサーボモータ6の電磁ブレーキの解除機構と電気的に接続されている。
【0034】
サーボモータ6は、モータ本体13と、モータ本体13から延出するモータ出力軸14とを有する。モータ本体13には、モータ本体13を対象物に固定するための固定ボルト15を挿通するボルト孔16が形成されている。モータ出力軸14の先端部には、歯車17が形成されている。
【0035】
図3A乃至
図3Cおよび
図4A乃至
図4Cに示したように、モータ側接点治具7は、サーボモータ6の後端部にネジ18によって取外し可能に固定される有孔プレート部材19と、この有孔プレート部材19の一側に一対のL字状部材20で固定されたモータ側コネクタ21とを有する。
【0036】
モータ側コネクタ21には、上述のモータ側接点12が形成されている。モータ側コネクタ21には、モータ側接点12の両側に一対の受入孔22が形成されている。一対の受入孔22は、ロボット側接点治具5をモータ側接点治具7に接続する際のガイド機構として機能する。
【0037】
図5A乃至
図5Cおよび
図6A乃至
図6Dに示したように、ロボット側接点治具5は、エンドエフェクタ4に固定された基端部材23と、この基端部材23から延在する一対の細長部材24と、これら細長部材24の間に設けられたロボット側コネクタ25とを有する。一対の細長部材24の各々の先端部24Aは、先細形状を成している。
【0038】
ロボット側コネクタ25には、上述のロボット側接点11が形成されている。また、ロボット側コネクタ25には、ロボットコントローラ9に電気的に接続された電気ケーブル(図示省略)が接続される接続ポート26が形成されている。
【0039】
図7に示したように、ロボット側接点治具5の一対の細長部材24は、モータ側接点治具7の一対の受入孔22に挿入可能に形成されている。ロボット側接点治具5の細長部材24は、その先端部24Aが先細形状を成しているので、モータ側接点治具7の受入孔22に挿入される際に、ロボット側接点治具5をモータ側接点治具7に対して位置決めする機能を有する。
【0040】
次に、上述した本実施形態によるモータ取付装置1を用いて、サーボモータ6を所定の取付位置に取り付ける方法について、図面を参照して説明する。
【0041】
図1に示したようにエンドエフェクタ4のモータ把持機構8の一対の把持爪10を開放状態として、ロボットコントローラ9によって作業ロボット2のアーム3を駆動し、作業台等に載置されているサーボモータ6に向けてエンドエフェクタ4を移動させる。なお、サーボモータ6には、作業員によって予めモータ側接点治具7が18ネジによって取外し可能に装着されている。
【0042】
サーボモータ6に向けてエンドエフェクタ4を移動させると、
図7を参照して説明したように、ロボット側接点治具5の一対の細長部材24が、その位置決め機能を発揮しながら、モータ側接点治具7の一対の受入孔22に挿入される。ロボット側接点治具5の一対の細長部材24がモータ側接点治具7の一対の受入孔22に挿入されると、
図8Aに示したように、ロボット側接点治具5のロボット側接点11と、モータ側接点治具7のモータ側接点12とが接続される(接点接続工程)。
【0043】
図8Aに示した状態から、ロボットコントローラ9によってエンドエフェクタ4を駆動して、その一対の把持爪10を開放状態から閉止状態へと切り換える。これにより、
図8Bに示したように、エンドエフェクタ4の一対の把持爪10によってサーボモータ6が把持される。
【0044】
上述したように、本実施形態によるモータ取付装置1を用いたモータ取付方法においては、搬送対象物であるサーボモータ6が載置されている位置にエンドエフェクタ4を移動させて把持する一連の動作の中で、ロボット側接点治具5のロボット側接点11とモータ側接点治具7のモータ側接点12との接続が完了する。
【0045】
図8Bに示したようにエンドエフェクタ4によってサーボモータ6を把持したら、ロボットコントローラ9によって作業ロボット2を駆動してサーボモータ6を搬送し、
図8Cに示したように製造中の製品の所定の位置にサーボモータ6を位置決めする(モータ搬送工程)。
【0046】
ここで、本実施形態においては、モータ取付装置1を用いて、製造中のロボット(製品ロボット)26にサーボモータ6を取り付ける。すなわち、製品ロボット26側に設けられた挿入孔27にサーボモータ6のモータ出力軸14を挿入し、モータ出力軸14に形成された歯車17と、製品ロボット26の駆動軸側の歯車28とを噛み合わせる。
【0047】
次に、ロボットコントローラ9からの電力をロボット側接点治具5のロボット側接点11に供給し、モータ側接点治具7のモータ側接点12を介してサーボモータ6に電力を供給する(電力供給工程)。これにより、サーボモータ6の電磁ブレーキが解除される。
【0048】
サーボモータ6の電磁ブレーキが解除された状態で、ロボットコントローラ9によって作業ロボット2を駆動して、サーボモータ6のモータ本体13をモータ出力軸14周りに回転させる。これにより、モータ本体13に形成された固定ボルト用孔16を、製品ロボット側に形成されたネジ孔29に位置合わせする(モータ本体位置決め工程)。
【0049】
このとき、サーボモータ6の電磁ブレーキは予め解除されているので、モータ出力軸14はモータ本体13に対して自由に回転できる状態にある。このため、作業ロボット2によってモータ本体13を回転させても、その回転力がモータ出力軸14に伝達されることはなく、製造中の製品ロボット26がその姿勢をしっかりと固定されていても、製品ロボット26側に無理な力が加えられることがない。
【0050】
以上述べたように、本実施形態によるモータ取付装置1および方法によれば、エンドエフェクタ4で把持したサーボモータ6に対して、ロボット側接点治具5のロボット側接点11およびモータ側接点治具7のモータ側接点12を介して電力を供給することができるので、必要に応じてサーボモータ6の電磁ブレーキを解除することができる。これにより、モータ出力軸14の歯車17を製品ロボット26の駆動軸側の歯車28に噛み合わせた状態においても、モータ出力軸14の軸線周りでのモータ本体13の位置決めを支障なく行うことができる。
【0051】
また、本実施形態においては、ロボットコントローラ9を電源としてサーボモータ6の電磁ブレーキを解除することができるので、電磁ブレーキを解除するための専用の電源を準備する必要が無い。これにより、モータ取付装置1の構造を簡素化することができる。
【0052】
また、本実施形態においては、ロボット側接点11およびモータ側接点12を介してサーボモータ6に供給される電力は、サーボモータ6の電磁ブレーキの解除のためのものであり、サーボモータ駆動のための電力に比べて極めて小さい。このため、ロボット側接点部材5に接続する電気ケーブルは細いもので十分であり、電気ケーブルの引き回しが容易である。
【0053】
なお、上述した実施形態の一変形例としては、ロボット側接点治具5のロボット側接点11およびモータ側接点治具7のモータ側接点12を介して、サーボモータ6の電磁ブレーキの解除のための電力のみならず、サーボモータ6を回転駆動するための電力を供給し、制御信号を送受信するようにしても良い。
【0054】
このようにすれば、製造中の製品ロボット26にサーボモータ6を取り付けた後、ロボット側接点11およびモータ側接点12を介して、サーボモータ6に電力および制御信号を供給してサーボモータ6を回転制御し、これにより、製造中の製品ロボット26の姿勢を、そのときの作業に適した姿勢に変えることができる。
【0055】
なお、上述した実施形態においては、作業ロボットを用いて製品ロボットを製造する場合を例として説明したが、本発明による電気機器取付装置および方法は、製品ロボット以外の製品の製造にも適用可能である。
【0056】
また、上述した実施形態においては、作業ロボットを用いてモータを所定の位置に取り付ける場合を例として説明したが、本発明による電気機器取付装置および方法は、モータ以外の電気機器の取り付けにも適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 モータ取付装置(電気機器取付装置)
2 作業ロボット
3 作業ロボットのアーム
4 エンドエフェクタ
5 ロボット側接点治具
6 サーボモータ(電気機器)
7 モータ側接点治具(電気機器側接点治具)
8 エンドエフェクタのモータ把持機構
9 作業ロボットのロボットコントローラ
10 モータ把持機構の把持爪
11 ロボット側接点
12 モータ側接点(電気機器側接点)
13 モータ本体
14 モータ出力軸
15 サーボモータの固定ボルト
16 サーボモータのボルト孔
17 モータ出力軸の歯車
18 モータ側接点治具のネジ
19 モータ側接点治具の有孔プレート部材
20 L字状部材
21 モータ側コネクタ
22 モータ側接点治具の受入孔
23 ロボット側接点治具の基端部材
24 ロボット側接点治具の細長部材
24A 細長部材の先端部
25 ロボット側コネクタ
26 製品ロボット
27 製品ロボットの挿入孔
28 製品ロボットの駆動軸の歯車
29 製品ロボット側のネジ穴