特許第6603602号(P6603602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6603602配管の内面補修用の樹脂保持基材およびその基材を用いた補修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603602
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】配管の内面補修用の樹脂保持基材およびその基材を用いた補修方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/34 20060101AFI20191028BHJP
   B29C 70/24 20060101ALI20191028BHJP
   D04B 21/14 20060101ALI20191028BHJP
   D04B 21/10 20060101ALI20191028BHJP
   F16L 55/162 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   B29C63/34
   B29C70/24
   D04B21/14 Z
   D04B21/10
   F16L55/162
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-56315(P2016-56315)
(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公開番号】特開2017-170654(P2017-170654A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年2月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597022975
【氏名又は名称】エスジーシー下水道センター株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516083885
【氏名又は名称】ヒロベ産業有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】日沼 史人
(72)【発明者】
【氏名】長倉 享司
(72)【発明者】
【氏名】廣部 晋彦
【審査官】 ▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−332917(JP,A)
【文献】 特開2006−181875(JP,A)
【文献】 特開2004−156682(JP,A)
【文献】 特開2012−131218(JP,A)
【文献】 特開平09−123280(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/050352(WO,A1)
【文献】 国際公開第96/035021(WO,A1)
【文献】 特開2014−178063(JP,A)
【文献】 特開平07−229039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00 − 63/48
B29C 70/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維またはポリエステル繊維の経編みニットであって、その繊維の繊度が100TEX〜400TEXのものであり、
鎖編みの編目列(L4)と横振りの挿入糸(L5、L6)との角目状の組織(L4、L5、L6)である裏素地(2)と、その裏素地(2)に対向して菱目状または亀甲状の組織(L1、L2)である表素地(1)と、両素地(1、2)間を連結する連結糸(3)とにより立体構造ネットの組織を有している配管の内面補修用の樹脂保持基材。
【請求項2】
請求項1に記載の配管の内面補修用の樹脂保持基材であって、
前記繊維のコース(2.54cm(=1インチ)間の網目を縦方向に数えた数値)が、2.36回/cm(=6.0回/インチ)〜4.72回/cm(=12.0回/インチ)であり、
前記繊維のウェール(2.54cm(=1インチ)間の網目を横方向に数えた数値) が、3.54回/cm(=9.0回/インチ)〜7.08回/cm(=18.0回/インチ)である配管の内面補修用の樹脂保持基材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の配管の内面補修用の樹脂保持基材において、
前記裏素地(2)と表素地(1)とを連結する連結糸(3)の構造をストレート構造とした配管の内面補修用の樹脂保持基材。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の配管の内面補修用の樹脂保持基材において、
前記立体構造ネットの厚みが2mm〜12mmである配管の内面補修用の樹脂保持基材。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の配管の内面補修用の樹脂保持基材を用いた配管の内面補修方法において、
その樹脂保持基材(8)に光硬化性または熱硬化性の樹脂材を含浸する工程と、
その樹脂保持基材(8)の前記裏素地(2)側にアウターフィルム(5)を被着し、前記表素地(1)側にインナーフィルム(4)を被着して、その表素地(1)の網目の縦方向が既設取付管(9)の軸方向と一致させる工程と、
そのインナーフィルム(4)の内部に流体を供給して、膨張させながら、その樹脂保持基材(8)の裏素地(2)側を既設取付管(9)の内面にアウターフィルム(5)を介して圧着する工程と、
次いでインナーフィルム(4)内に樹脂硬化用の補修機を挿入し、前記樹脂保持基材(8)を硬化する工程と、
を具備する配管の内面補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、本管に接続された取付管の内面を補修して、樹脂被覆するための樹脂保持基材およびそれを用いた補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は既に、下記特許文献1に記載の既設取付管の補修方法を提案している。
この発明は、長尺で筒状の軟質なインナーフィルムとアウターフィルムと、両フィルム間に介装された未硬化の樹脂付き補修基材とを具備し、内部に気体を供給して樹脂を硬化させるものである。
これは、アウターフィルムとインナーフィルムとの間にガラスパイルを配置すると共に、耐食性の優れたエポキシアクリレート樹脂をそのパイルに十分に付着させる。そして、エアーを供給すると共に、光硬化装置を内部に挿入して樹脂材を光硬化させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4464933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の配管内面の補修用の樹脂保持基材は、縦糸と横糸をクロスさせ、それに樹脂を付着させ、光硬化又は熱硬化により、配管内面を被覆するものである。
ところが、従来の樹脂保持基材では、特に配管の曲り部において、皺が生じ、そこに盛り上がりが形成される。すると、その曲り部で流体の流通を阻害するおそれがある。
そこで、本発明は、配管の曲り部で皺ができ難く、その被覆層の内面を可及的に平滑にできる配管の内面補修用の樹脂保持基材およびそれを用いた補修方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、ガラス繊維またはポリエステル繊維の経編みニットであって、その繊維の繊度が100TEX〜400TEXのものであり、
鎖編みの編目列(L4)と横振りの挿入糸(L5、L6)との角目状の組織(L4、L5、L6)である裏素地(2)と、その裏素地(2)に対向して菱目状または亀甲状の組織(L1、L2)である表素地(1)と、両素地(1、2)間を連結する連結糸(3)とにより立体構造ネットの組織を有している配管の内面補修用の樹脂保持基材である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の配管の内面補修用の樹脂保持基材であって、
前記繊維のコース(2.54cm(=1インチ)間の網目を縦方向に数えた数値)が、2.36回/cm(=6.0回/インチ)〜4.72回/cm(=12.0回/インチ)であり、
前記繊維のウェール(2.54cm(=1インチ)間の網目を横方向に数えた数値) が、3.54回/cm(=9.0回/インチ)〜7.08回/cm(=18.0回/インチ)である配管の内面補修用の樹脂保持基材である。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の配管の内面補修用の樹脂保持基材において、
前記裏素地2と表素地1とを連結する連結糸3の構造をストレート構造とした配管の内面補修用の樹脂保持基材である。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の配管の内面補修用の樹脂保持基材において、
前記立体構造ネットの厚みが2mm〜12mmである配管の内面補修用の樹脂保持基材である。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の配管の内面補修用の樹脂保持基材を用いた配管の内面補修方法において、
その樹脂保持基材8に光硬化性または熱硬化性の樹脂材を含浸する工程と、
その樹脂保持基材8の前記裏素地2側にアウターフィルム5を被着し、前記表素地1側にインナーフィルム4を被着して、その表素地1の網目の縦方向が既設取付管9の軸方向と一致させる工程と、
そのインナーフィルム4の内部に流体を供給して、膨張させながら、その樹脂保持基材8の裏素地2側を既設取付管9の内面にアウターフィルム5を介して圧着する工程と、
次いでインナーフィルム4内に樹脂硬化用の補修機を挿入し、前記樹脂保持基材8を硬化する工程と、
を具備する配管の内面補修方法である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明は、比較的屈曲に弱いガラス繊維を用いても、その繊維の繊度が100TEX〜400TEXの範囲であるため、基材を経編みニットの立体構造とすることができ、その基材に十分な樹脂を含浸できる。特に、表素地と裏素地との間を連結する連結糸の存在により、樹脂の空間保持率を高めて、そこに樹脂を保持し、配管の内面に形成する樹脂層を厚くできる。即ち、配管の内面に十分厚みのある補修層を形成でき、耐久性の高い配管内面となる。
なお、繊維を100TEX以下とすると、空隙部が多くなり必要な強度が得られなくなる。また、400TEXを以上太い繊維を使用すると、ガラス繊維を小さな半径で屈曲させて網目を形成することができなくなる。
【0011】
次に、この樹脂保持基材は、裏素地(被補修管に接する内面側)が、鎖編みの編目列L4と横振りの挿入糸L5、L6からなる角目状の組織として構成されており、表素地(裏素地に対向して配管の軸線側に配置される素地)は網目のように編成される菱目または亀甲状の組織L1、L2として構成されており、両素地間を連結糸で連結した立体構造ネットを構成している。
配管の内面側に配置される裏素地を角目状の組織としたことにより、その角目組織が軸方向にも円周方向へも延び易くい構造となっているため、配管の屈曲部に追随することができ、樹脂保持基材が配管内面にフィットすることができる。
一方で、表素地を網目のように編成される菱目または亀甲状の組織としたことにより、一定の伸縮性を保ちながら、軸方向には伸び難くく、円周方向に伸び易い構造となっている。そのため、配管に圧着して硬化したときには、配管の軸線側に皺が出来にくくなり、 素地表面の凹凸を少なくして樹脂硬化後の表面を平滑にして、管内の流水性をよくし、体裁のよい内面を形成できる。即ち、配管の屈曲部での内部流体の流通を促進できる。
また、この表素地の構造により、連結糸を補強して樹脂材の厚みを保持することができる。
【0012】
請求項2に記載のように、繊維のコースが6.0〜12.0回/インチであり、繊維のウェールが9.0〜18.0回/インチである場合には、良好な編み組織となる。
繊維のコースが6.0回/インチ以下または12.0回/インチ以上だと、編み機の能力的な困難を伴う。繊維のウェールが9.0〜18.0回/インチとしたのは、9.0回/インチよりも網目列の間隔があくと、成形後に表面に凹凸ができ、18.0回/インチより緻密になると、伸縮性が得られなくなることが分かったからである。
【0013】
請求項3に記載の発明のように、裏素地2と表素地1とを連結する連結糸3の構造をストレート構造とした場合には、連結糸の糸量が大きくなるのを抑制して、生産効率を上げることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明のように、前記立体構造ネットの厚みを2mm〜12mmとすると、ダブルラッセル編み機で、伸縮性のよいダブルラッセル構造を容易に編むことができ、本樹脂保持材を容易に製造することができる。
【0015】
請求項5に記載の配管の内面補修方法によれば、上記いずれかの内面補修用の樹脂保持基材を用いて、配管内面に十分に厚い被覆層を形成することができる。そして、表素地の編み目状の菱目または亀甲状の組織のコース(1インチ間の網目を縦方向に数えた数値)の方向を軸線方向に一致させる。
実験によれば、その表素地の縦方向を配管の軸線方向に一致させることにより、一定の伸縮性を保ちながら、軸方向には伸びにくく、円周方向に伸び易くなり、皺が出来にくくなる。即ち、表素地の編み目状の菱目または亀甲状の組織のコース(1インチ間の網目を縦方向に数えた数値)の方向を軸線方向に一致させる。
【0016】
なお、上記の裏素地と表素地との配置を配管内で逆にすると、配管の内面側に凹凸が生じ、流水の流れを妨げることが分かった。即ち、鎖状に編成される角目状の組織の裏素地を配管の中心側に配置すると、その内面が平滑にならないことが、実験により明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の配管の内面補修用の樹脂保持基材の説明図。
図2】同基材に用いる各糸L1〜L6の説明図。
図3】同樹脂保持基材を既設取付管に挿入し、管内面を補修する説明図。
図4】補修時におけるアウターフィルムと樹脂保持基材とインナーフィルムとの関係を示す説明図。
図5】補修後の配管の横断面図。
図6】同樹脂保持基材の裏素地。
図7】同樹脂保持基材の表素地。
図8】同樹脂保持基材に樹脂を付着させてそれを配管の内面側に成形したものであって、配管内面に接する側の写真。
図9】同配管の中心側の写真。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図面に基づいて本発明の樹脂保持基材およびそれを用いた補修方法につき、説明する。図1は、本発明の樹脂保持基材の説明図であり、図2は、それを構成する各糸L1〜L6を示す。
(樹脂保持基材の構造)
この配管の内面補修用の樹脂保持基材8は、それに熱硬化性又は光硬化性の樹脂を含浸するものであり、流体圧により既設取付管9の内面に圧着し、光硬化又は熱硬化により樹脂を硬化して、その取付管9の内面を補修するためのものである。
【0019】
この樹脂保持基材8は、ガラス繊維又はポリエステル繊維の経編みニットである。また、その繊維の太さ(繊度)が100TEX〜400TEXであって、図1に示す如く、立体構造ネットの組織を有している。
即ち、その立体構造ネット状の組織は、表素地1と裏素地2と、両素地の間を架け渡す連結糸3とからなる。
【0020】
表素地1は、図2の糸L1と糸L2とにより網目状に編成される菱目状または亀甲状の組織であり、裏素地2は、図2の鎖状の編目列糸L4と、これに横ぶり挿入される挿入糸L5、挿入糸L6とにより角目状の組織であり、図1に示す如く、これらの表素地1と裏素地2とが連結糸3(図2の糸L3からなる)により立体構造ネット状の構造をしている。
この例では図1の如く、連結糸3は表素地1と裏素地2の間を接続するものであり、その繊維は表素地1、裏素地2の素地に直行(ストレート状)して架け渡すように編み込まれる構造をしている。ただし、連結糸3を用いた連結構造は、ストレート状の構造に限定されるものではない。
【0021】
図6は、その裏素地2の拡大図であり、図7は、表素地1の平面拡大図である。
図6および図7において、繊維の繊度は100TEX〜400TEXである。
繊維を100TEX以下とすると空隙部が大きくなり、必要な強度が得られなくなる。また、400TEX以上太い繊維を用いるとガラス繊維を小さな半径で屈曲させて、編目を形成することができなくなる。
【0022】
また、表素地1、裏素地2の繊維のコース(1インチ間の網目を縦方向に数えた数値)は6.0〜12.0回/インチであり、繊維のウェール(1インチ間の網目を横方向に数えた数値)は、9.0〜18.0回/インチとすることが好ましい。
コースを6.0回/インチ以下または12.0回/インチ以上にすると、この樹脂保持基材を作成するためのダブルラッセル機で編成することが難しい。また、ウェールを9.0回/インチよりも編目列の間隔をあけると、成形後に表面に凹凸ができる。また、18.0回/インチより緻密になると伸縮性が得られなくなることが発明者の実験により分かった。この条件は、設計により変更可能である。
【0023】
また、表素地1と裏素地2の間を連結糸3によりストレート状に接続する構造にすることが好ましく、そうすることにより、連結糸の糸量が大きくなることを抑制して、生産効率を上げることができる。この条件は、設計により変更可能である。
このような立体構造ネットの組織からなる基材は、その厚みが2mm〜12mmとすることが好ましい。この条件は、設計により変更可能である。
【0024】
(樹脂保持基材の製造方法)
このような樹脂保持基材は、ダブルラッセル編み機により製造することができる。
このダブルラッセル編み機は、生地を編成する2列の針床(ニードルヘッド)を有している。この編み機によって編成される生地は、表素地と裏素地を別々に編む(組織は表素地と裏素地を変えて編むことも可能である)ことができ、表素地と裏素地の全部または一部を連結糸で連結して編むことができる。厚みのある立体的なシート状や円筒状の基材を製造することができる。
この編み機により、伸縮性のよいダブルラッセル構造(本発明の樹脂保持基材に適用される編み構造の上位概念)を容易に編むことができ、本発明の樹脂保持基材を容易に製造することができる。
【0025】
(本発明の樹脂保持基材を用いた配管の補修方法)
次に、本発明の樹脂保持基材による配管の補修方法につき説明する。
先ず、樹脂保持基材8に光硬化性または熱硬化性の樹脂材を含浸する。この樹脂保持基材8は、通常、筒状に加工されたものを用いる(シート状のものを丸めた状態にしたものを使用してもよい)。
次に、図4に示す如く、その樹脂保持基材8の前記裏素地2(角目状の組織)の側にアウターフィルム5を配置し、表素地1(菱目状または亀甲状の組織)の側にインナーフィルム4(インナーフィルム5は、その先端に取付けられたボビン6により袋状に形成されている。)を配置する。その際、樹脂保持基材8の表素地1(菱目状または亀甲状の組織)の編目の縦方向(コースの方向)が既設取付管9の軸Oの方向と一致するように、反転機(図示しない)に取付ける。反転機(圧縮空気などの流体をインナーフィルム4内に送り込むもの)は公知のものを用いることができる。
【0026】
次いで、そのインナーフィルム4の内部に反転機から圧縮流体を供給することにより、インナーフィルム4を膨張させ、各フィルム4、5と共に樹脂保持基材8を反転しながら既設取付管9の内面に沿って侵入させる。
図3は、樹脂保持基材8がアウターフィルム5を介して既設取付管9の内面に圧着されている状態を示している。
そして、図3に示す如く、樹脂保持基材8の裏素地2(角目状の組織)の側がアウターフィルム5を介して既設取付管9の内面に圧着させる。なお、図3に示す如く、インナーフィルム4は、既設取付管9から既設本管7内に突出した状態となっている。
【0027】
この樹脂保持基材8の裏素地2の角目組織は、その角目組織が軸方向にも円周方向へも延び易い構造となっているため、既設取付管9の屈曲部に追随することができ、樹脂保持基材8を既設取付管9の曲り部の内面にフィットさせることができる。
一方、表素地1を菱目または亀甲状の組織としたことにより、一定の伸縮性を保ちながら、軸方向には伸び難く、円周方向に伸び易い構造となっている。そのため、配管の屈曲部で皺が出来にくくなる。
上記樹脂保持基材の特性を生かすため、アウターフィルム5および樹脂保持基材8は、反転機に固定されている端の反対側は、図3の如く、フリーな状態にすることが、好ましい。
【0028】
次いで、インナーフィルム4の内部に図示しない樹脂硬化用の補修機を挿入し、インナーフィルム4内を移動させて、樹脂保持基材8を硬化させる。そして、既設取付管9の内面を補修する。
次いで、インナーフィルム4を取り除くことにより、既設取付管9の内面の補修を完成する。後処理として、その取付管9から既設本管7に突出したアウターフィルム5および樹脂保持基材8の部分をカットすると良い。
【0029】
既設取付管9のライニングされた内面は、図5に示す如く、既設取付管9の内面側から、アウターフィルム5、樹脂保持基材8の裏素地2(角目状の組織)、連結糸3、表素地1(菱目状または亀甲状の組織)の補修層の構造となっている。
樹脂保持基材8の表素地1の構造は、連結糸3の層の強度を補強して、樹脂保持基材8の厚みを保持することができ構造となっているため、基材の硬化後は、強固なライニング構造とすることができる。
その補修層は、既設取付管の内面に接する側(裏素地側)が図8の如く形成され、既設取付管の中心側(表素地側)に位置するのは、図9の如く形成される。配管の中心側が図9の如く滑らかに形成されることにより、内部を流通する流体が円滑に導かれる。
【符号の説明】
【0030】
1 表素地
2 裏素地
L1〜L6 糸
3 連結糸
4 インナーフィルム
5 アウターフィルム
6 ボビン
7 既設本管
8 樹脂保持基材
9 既設取付管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9