(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ウレタン樹脂が、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分の共重合体であり、 前記ポリオール成分の数平均分子量が800〜15000である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の現像ローラ。
前記含フッ素樹脂が、四フッ化エチレン単位及び三フッ化エチレン単位からなる群より選択される少なくとも一種の構成単位を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の現像ローラ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は理解を容易にするため一部を誇張して描いており、寸法比率等は図面に記載のものに限定されるものではない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る現像ローラの概略を示す正面図であり、
図2は、
図1のII−II線に沿った現像ローラの断面を示す断面図であり、
図3は、
図1のIII−III線に沿った現像ローラの断面を示す断面図である。
【0017】
本実施形態に係る現像ローラ1は、軸体10と、軸体10の外周面上に設けられたローラ本体20と、を備える。ローラ本体20は、円筒状の弾性層21と、弾性層21の外周面を被覆するコート層23と、ローラ本体20の軸線方向の両端側にそれぞれ設けられた端部保護層25とを含む。
【0018】
(軸体10)
軸体10は、公知の現像ローラに用いられる軸体であってよい。軸体10は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属で構成されていてよく、このような軸体10は「芯金」と言い換えることができる。軸体10は、導電性を有するものであってよい。
【0019】
軸体10は、必ずしも金属製である必要は無く、例えば、樹脂材料で構成されていてよい。樹脂材料は、例えば、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に導電性付与剤を配合した導電性樹脂であってよい。
【0020】
軸体10は、1つの材質で構成されていてよく、2以上の材質から構成されていてもよい。軸体10は、例えば、芯材と、芯材の外周面を覆う外層と、から構成されていてよい。具体的には、軸体10は、例えば金属製の芯材にメッキ処理を施したものであってよい。また、軸体10は、例えば樹脂材料製の絶縁性芯材にメッキ処理を施して導電化したものであってもよい。
【0021】
本実施形態において、軸体10は円柱形状を有しているが、軸体10の形状はこれに限定されない。軸体10は、例えば、円柱形状、円筒形状、多角柱状、多角筒状等であってよい。
【0022】
軸体10の外周面には、弾性層21との接着性を向上させるため、洗浄処理、脱脂処理、プライマー処理等の処理が施されていてよい。
【0023】
軸体10の軸線方向の長さは特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整してよい。例えば、一態様において、軸体10の軸線方向の長さは260〜290mmであってよく、好ましくは270〜280mmである。
【0024】
軸体10の外径は特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整してよい。例えば、一態様において、軸体10の外径(外接円の直径)は6〜10mmであってよく、好ましくは7〜8mmである。
【0025】
(弾性層21)
弾性層21は、軸体10の胴体部の外周面上に設けられており、シリコーン系ゴムと金属ケイ素粒子とを含有している。本実施形態では、弾性層21が金属ケイ素粒子を含むことで、弾性層21の熱伝導率が向上し、摩擦熱等による現像ローラ1上の現像剤の溶融が防止される。
【0026】
シリコーン系ゴムは、シリコーンゴム及びシリコーン変性ゴムからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。また、シリコーン系ゴムは、シリコーン生ゴムの架橋物ということもできる。シリコーン生ゴムは特に限定されず、公知のシリコーン生ゴムであってよい。シリコーン生ゴムとしては、例えば、ビニル基含有シリコーン生ゴム(より具体的には、例えば、ビニル基含有ジメチルシリコーン生ゴム、ビニル基含有フェニルシリコーン生ゴム、ビニル基含有フルオロシリコーン生ゴム等)又はその変性物等が挙げられる。
【0027】
本明細書中、金属ケイ素とは、βスズ構造を有するケイ素を示す。金属ケイ素粒子は、金属ケイ素で構成される粒子であり、場合により、ダイヤモンド構造を有する非金属のケイ素を含有していてよい。また、金属ケイ素粒子は、Fe、Ni、Al及びこれらの酸化物等の不純物を含有していてもよい。
【0028】
金属ケイ素粒子の純度(金属ケイ素の含有割合)は、熱伝導性に優れる観点からは50%以上(50〜100%)であることが好ましく、80%以上(80〜100%)であることがより好ましく、95%以上(95〜100%)であることが更に好ましい。
【0029】
金属ケイ素粒子の平均一次粒子径は、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、25μm以下であることが更に好ましく、20μm以下であってもよい。このような平均一次粒子径であると、弾性層21の外周面の凹凸が低減され、現像ローラ1の外周面がより均質となる。また、金属ケイ素粒子の平均一次粒子径は、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることが更に好ましい。このような平均一次粒子径を有する金属ケイ素粒子は、製造が容易であり、弾性層21中での分散性に優れる。
【0030】
金属ケイ素粒子は、シリコーン系ゴムとの配合性の向上等を目的として、表面処理されていてよい。表面処理にはカップリング剤等の公知の表面処理剤を用いてよい。表面処理は、例えば、金属ケイ素粒子の表面を疎水化する疎水化処理であってよい。
【0031】
金属ケイ素粒子を表面処理するための表面処理剤としては、例えば、シリコーンオイル(例えば、直鎖状又は環状のジメチルポリシロキサン等)、シラン化合物(オルガノクロロシラン類、オルガノヒドロキシシラン類、オルガノアルコキシシラン類等)、シランカップリング剤(有機官能基を含有するオルガノアルコキシシラン等)、チタネート系カップリング剤、炭化水素系オイル、ワックス等が挙げられる。また、表面処理剤としては、少なくとも1つの加水分解性基を有するシラン化合物(例えば、トリメチルシラノール等のオルガノヒドロキシシラン;アルキルクロロシラン、アルケニルクロロシラン、アリールクロロシラン等のオルガノクロロシラン;アルキルアルコキシシラン、アルケニルアルコキシシラン、アリールアルコキシシラン等のオルガノアルコキシシラン)又はその部分加水分解物、シランカップリング剤又はその部分加水分解物、有機シラザン類(例えば、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン等のヘキサオルガノジシラザン)、加水分解性基を有するオルガノポリシロキサン等が好適に使用される。なお、上述のシランカップリング剤における有機官能基としては、例えば、ビニル基、アリル基等のアルケニル基や、アミノ基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、メルカプト基等の官能基で置換されたアルキル基などが挙げられる。
【0032】
金属ケイ素粒子は、弾性層21中に分散されていてよい。金属ケイ素粒子の含有量は、シリコーン系ゴム100質量部に対して5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。金属ケイ素粒子の含有量を多くすることで、弾性層21の熱伝導率がより顕著に向上し、摩擦熱等による現像ローラ1上の現像剤の溶融がより顕著に防止される。また、金属ケイ素粒子の含有量は、シリコーン系ゴム100質量部に対して50質量部以下であってよく、45質量部以下であることが好ましい。金属ケイ素粒子の含有量を少なくすることで、弾性層21の機械的強度が向上し、作業時の削れ等による劣化が顕著に抑制される。
【0033】
弾性層21は、導電性付与剤を更に含有していてよい。導電性付与剤は、弾性層21に導電性を付与し得る成分であればよく、特に限定されない。導電性付与剤としては、例えば、導電性粉末、イオン導電性物質等が挙げられる。導電性粉末としては、例えば、導電性カーボン(例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等)、ゴム用カーボン類(例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等)、金属又は金属酸化物の粉末(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等)、導電性ポリマー粉末(例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等)などが挙げられる。イオン導電性物質としては、例えば、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電性物質などが挙げられる。
【0034】
弾性層21が導電性付与剤を含有するとき、導電性付与剤の含有量は、例えば、シリコーン系ゴム100質量部に対して2〜80質量部であってよく、5〜60質量部であることが好ましく、8〜40質量部であることがより好ましい。
【0035】
弾性層21は、上記以外の添加剤を更に含有していてよい。添加剤の具体例としては、低分子シロキサンエステル、シラノール、フェニルシランジオール等の分散剤が挙げられる。また、添加剤の具体例としては、オクチル酸鉄、酸化鉄、酸化セリウム等の耐熱向上剤が挙げられる。また、添加剤としては、接着性、成形加工性等を向上させるための各種カーボンファンクショナルシラン、各種オレフィン系エラストマー等を用いてもよい。また、添加剤としては、難燃性を付与させるハロゲン化合物等を用いてもよい。
【0036】
弾性層21は、例えば、付加硬化型ミラブルシリコーンゴム組成物、又は、付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を用いて形成されてよい。すなわち、弾性層21は、付加硬化型ミラブルシリコーンゴム組成物の硬化物で構成されていてよく、付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物で構成されていてもよい。
【0037】
付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物は、例えば、(A)下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン、(B)充填材、(C)導電性材料、及び(X)金属ケイ素粒子を含有するものであってよい。
R
1nSiO
(4−n)/2 …(1)
式(1)中、nは1.95〜2.05の正数を示す。また、R
1は、同一又は異なっていてよい、置換又は非置換の一価の炭化水素基を示す。炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1〜12であり、より好ましくは1〜8である。
【0038】
R
1としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びドデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基及びトリル基等のアリール基、β−フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。また、R
1は、これらの炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部が置換基で置換された基であってもよい。置換基は、例えばハロゲン原子、シアノ基等であってよい。置換基を有する炭化水素基としては、例えば、クロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0039】
(A)オルガノポリシロキサンは、分子鎖末端が、トリメチルシリル基等のトリアルキルシリル基、ジメチルビニルシリル基等のジアルキルアラルキルシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基等のジアルキルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基等のトリアラルキルシリル基などで封鎖されていることが好ましい。
【0040】
(A)オルガノポリシロキサンは、分子中に2つ以上のアルケニル基を有することが好ましい。(A)オルガノポリシロキサンは、R
1のうち0.001〜5モル%(より好ましくは0.01〜0.5モル%)のアルケニル基を有することが好ましい。(A)オルガノポリシロキサンが有するアルケニル基としてはビニル基が特に好ましい。
【0041】
(A)オルガノポリシロキサンは、例えば、オルガノハロシランの1種若しくは2種以上を共加水分解縮合することによって、又は、シロキサンの3量体若しくは4量体等の環状ポリシロキサンを開環重合することによって得ることができる。(A)オルガノポリシロキサンは、基本的には直鎖状のジオルガノポリシロキサンであってよく、一部分岐していてもよい。また、(A)オルガノポリシロキサンは、分子構造の異なる2種又はそれ以上の混合物であってもよい。
【0042】
(A)オルガノポリシロキサンは、25℃における粘度100cSt以上であることが好ましく、100000〜10000000cStであることがより好ましい。また、(A)オルガノポリシロキサンの重合度は、例えば100以上であってよく、好ましくは3000以上であり、100000であってよく、好ましくは10000以下である。
【0043】
(B)充填材としては、例えばシリカ系充填材が挙げられる。シリカ系充填材としては、例えば、煙霧質シリカ、沈降性シリカ等が挙げられる。
【0044】
シリカ系充填材としては、R
2Si(OR
3)
3で示されるシランカップリング剤で表面処理された、表面処理シリカ系充填材を好適に用いることができる。ここで、R
2は、ビニル基又はアミノ基を有する基であってよく、例えば、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N−フェニルアミノプロピル基、メルカプト基等であってよい。R
3はアルキル基であってよく、例えばメチル基、エチル基等であってよい。シランカップリング剤は、例えば信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」、「KBE402」等として、容易に入手できる。表面処理シリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面をシランカップリング剤で処理することにより得ることができる。表面処理シリカ系充填材としては、市販品を用いてもよく、例えば、J.M.HUBER株式会社製の商品名「Zeothix 95」等が挙げられる。
【0045】
シリカ系充填材の配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して11〜39質量部であることが好ましく、15〜35質量部であることがより好ましい。また、シリカ系充填材の平均粒子径は、1〜80μmであることが好ましく、2〜40μmであることがより好ましい。なお、シリカ系充填材の平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定装置を用いて、メジアン径として測定できる。
【0046】
(C)導電性材料は、弾性層3に導電性を付与できるものであればよく、上述した導電性付与剤であってよい。(C)導電性材料としては、カーボンブラックが好ましい。(C)導電性材料は2種以上を併用してもよい。(C)導電性材料の配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、例えば2〜80質量部であってよい。
【0047】
(X)金属ケイ素粒子については上記のとおりである。(X)金属ケイ素粒子の配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。また、金属ケイ素粒子の含有量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、45質量部以下であることがより好ましい。
【0048】
付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物は、(A)〜(C)及び(X)以外の添加剤を更に含有していてよい。添加剤としては、例えば、助剤(鎖延長剤、架橋剤等)、触媒、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。
【0049】
添加剤の具体例としては、(A)オルガノポリシロキサンより重合度の低いジメチルシロキサンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シラノール、ジフェニルシランジオール及びα,ω−ジメチルシロキサンジオール等の両末端シラノール基封止低分子シロキサン、シラン等の分散剤が挙げられる。また、添加剤の具体例としては、オクチル酸鉄、酸化鉄、酸化セリウム等の耐熱向上剤が挙げられる。また、添加剤としては、接着性、成形加工性等を向上させるための各種カーボンファンクショナルシラン、各種オレフィン系エラストマー等を用いてもよい。
【0050】
付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、例えば、(D)分子中に2つ以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、(E)分子中にケイ素原子と結合する水素原子を2つ以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(F)充填材と、(G)導電性付与剤と、(H)付加反応触媒と、(Y)金属ケイ素粒子とを含有していてよい。
【0051】
(D)オルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(2)で示される化合物が好適である。
R
4aSiO
(4−a)/2 …(2)
式(2)中、aは1.5〜2.8の正数を示し、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05である。また、R
4は、同一又は異なっていてよい、置換又は非置換の一価の炭化水素基を示す。但し、一分子中のR
4のうち少なくとも2つはアルケニル基である。炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1〜12であり、より好ましくは1〜8である。
【0052】
R
4としては、上記R
1として例示した基と同じ基が例示できる。また、一分子中のR
4のうち少なくとも2つがアルケニル基であり、それ以外のR
4はアルキル基であることが好ましい。アルケニル基はビニル基であることが好ましく、アルキル基はメチル基であることが好ましい。また、R
4のうち、例えば90%以上がアルキル基(好ましくはメチル基)であってよい。(D)オルガノポリシロキサンにおけるアルケニル基の含有量は、例えば、1.0×10
−6〜5.0×10
−3mol/gであってよく、5.0×10
−6〜1.0×10
−3mol/gであることが好ましい。
【0053】
(D)オルガノポリシロキサンは、25℃で液状であることが好ましく、25℃における粘度が100〜1000000mPa・s(より好ましくは200〜100000mPa・s)であることが好ましい。また、(D)オルガノポリシロキサンの平均重合度は100〜800であることが好ましく、150〜600であることがより好ましい。
【0054】
(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(3)で示される化合物が好適である。
R
5bH
cSiO
(4−b−c)/2 …(3)
式(3)中、bは0.7〜2.1の正数を示し、cは0.001〜1.0の正数を示し、b+cは0.8〜3.0である。また、R
5は、同一又は異なっていてよい、置換又は非置換の一価の炭化水素基を示す。炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1〜10である。なお、R
5としては、上記R
1として例示した基と同じ基が例示できる。
【0055】
(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、ケイ素原子に結合した水素原子(Si−H)を一分子中に2つ以上有しており、3つ以上有していることが好ましい。また、(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンが一分子中に有する、ケイ素原子に結合した水素原子の個数は、200以下であってよく、100以下であってもよい。
【0056】
(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンにおいて、ケイ素原子に結合した水素原子の含有量は、0.001〜0.017mol/gであることが好ましく、0.002〜0.015mol/gであることがより好ましい。
【0057】
(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位とから成る共重合体、及び、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位と(C
6H
5)SiO
3/2単位とから成る共重合体等が挙げられる。
【0058】
(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(D)オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、0.3〜20質量部であることがより好ましい。また、(D)オルガノポリシロキサンのアルケニル基に対する、(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンのSi−Hのモル比は、0.3〜5.0であることが好ましく、0.5〜2.5であることがより好ましい。
【0059】
(F)充填材は、例えば、無機質充填材であってよい。付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物に(F)充填材を配合することで、圧縮永久ひずみが低くなり、体積抵抗率が経時で安定し、且つ十分なローラ耐久性が得られる。
【0060】
(F)充填材の平均粒子径は、好ましくは1〜30μmであり、より好ましくは2〜20μmである。(F)充填材の平均粒子径が1μm以上であると、体積抵抗率の経時変化が一層抑制される傾向がある。また、(F)充填材の平均粒子径が30μm以下であると、耐久性に一層優れる弾性層3が得られる傾向がある。なお、(F)充填材の平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定装置を用いて、メジアン径として測定できる。
【0061】
(F)充填材の嵩密度は、好ましくは0.1〜0.5g/cm
3であり、より好ましくは0.15〜0.45g/cm
3である。(F)充填材の嵩密度が0.1g/cm
3以上であると、圧縮永久ひずみをより低くすることができ、体積抵抗率の経時変化が一層抑制される傾向がある。また、(F)充填材の嵩密度が0.5g/cm
3以下であると、耐久性に一層優れる弾性層3が得られる傾向がある。なお、(F)充填材の嵩密度は、JIS K 6223の見かけ比重の測定方法に基づいて求めることができる。
【0062】
(F)充填材としては、例えば、珪藻土、パーライト、マイカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、中空フィラー等が挙げられる。これらの中でも、(F)充填材としては、珪藻土、パーライト及び発泡パーライトの粉砕物を好適に用いることができる。
【0063】
(F)充填材の配合量は、(D)オルガノポリシロキサン100質量部に対して5〜100質量部であることが好ましく、10〜80質量部であることがより好ましい。
【0064】
(G)導電性付与剤は、弾性層3に導電性を付与できるものであればよく、特に限定されない。(G)導電性付与剤は、例えば、上述した導電性付与剤であってよい。(G)導電性付与剤としては、例えば、導電性カーボン、ゴム用カーボン類、金属、金属酸化物、導電性ポリマー等の導電性粉末、イオン導電剤等が好適に用いられる。
【0065】
(G)導電性付与剤の配合量は、(D)オルガノポリシロキサン100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、2〜80質量部であることがより好ましい。
【0066】
(H)付加反応触媒は、(D)オルガノポリシロキサンと(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応を活性化できる触媒であればよい。(H)付加反応触媒としては、例えば、白金族元素を有する触媒が挙げられる。白金族元素を有する触媒としては、例えば、白金系触媒(例えば、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等)、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。
【0067】
(H)付加反応触媒の配合量は、触媒量であってよい。例えば、(H)付加反応触媒の配合量は、白金族元素量が、(D)オルガノポリシロキサン及び(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計質量に対して0.5〜1000質量ppmとなる量であることが好ましく、1〜500質量ppmとなる量であることがより好ましい。
【0068】
(Y)金属ケイ素粒子については上記のとおりである。(Y)金属ケイ素粒子の配合量は、(D)オルガノポリシロキサン及び(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。また、金属ケイ素粒子の含有量は、(D)オルガノポリシロキサン及び(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、45質量部以下であることがより好ましい。
【0069】
付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、(D)〜(H)及び(Y)以外の添加剤を更に含有していてよい。添加剤としては、例えば、助剤(鎖延長剤、架橋剤等)、発泡剤、分散剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、希釈剤、反応性希釈剤、溶剤等が挙げられる。
【0070】
添加剤の具体例としては、低分子シロキサンエステル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シラノール、フェニルシランジオール等の分散剤が挙げられる。また、添加剤の具体例としては、オクチル酸鉄、酸化鉄、酸化セリウム等の耐熱向上剤が挙げられる。また、添加剤としては、接着性、成形加工性等を向上させるための各種カーボンファンクショナルシラン、各種オレフィン系エラストマー等を用いてもよい。また、添加剤としては、難燃性を付与させるハロゲン化合物等を用いてもよい。
【0071】
付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の25℃における粘度は、5〜500Pa・sであることが好ましく、5〜200Pa・sであることがより好ましい。
【0072】
弾性層21の熱伝導率は、0.2〜0.7W/mKであることが好ましく、0.3〜0.6W/mKであることがより好ましい。このような熱伝導率であると、摩擦熱等による現像ローラ1上の現像剤の溶融がより顕著に防止される。なお、本明細書中、弾性層21の熱伝導率は、迅速熱伝導率計(商品名「QTM−500」、京都電子工業社製)を用いたボックス式プローブ法により測定される値を示す。
【0073】
弾性層21の圧縮永久歪は、2〜15%であることが好ましく、3〜10%であることがより好ましい。これにより、弾性層21の変形による現像ローラ1の外周面の歪みが十分に抑制され、均一な画像形成能がより長期間維持される。なお、本明細書中、圧縮永久歪は、JIS K6262の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの常温・高温及び低温における圧縮永久ひずみの求め方」に準拠して測定される値を示す。
【0074】
弾性層21の厚さは特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整してよい。例えば、一態様において、弾性層21の厚さは2〜8mmであってよく、好ましくは5〜7mmである。なお、本明細書における弾性層21の厚さは、現像ローラ1の軸線方向に垂直な方向の厚さを示す。
【0075】
弾性層21の外径は特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整してよい。例えば、一態様において、弾性層21の外径は12〜22mmであってよく、好ましくは13〜21mmである。なお、本明細書における弾性層21の外径は、現像ローラ1の軸線方向に垂直な断面における外径を示す。
【0076】
弾性層21の外周面には、コート層23との接着性向上等の理由で、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、エキシマ処理、UV処理、イトロ処理、フレーム処理等の表面処理が施されていてよい。
【0077】
(コート層23)
コート層23は、弾性層21の外周面を被覆しており、ウレタン樹脂を含有する層である。本実施形態において、コート層23は、現像剤を担持する担持面を構成している。また、コート層23は、弾性層21と端部保護層25との間に介在され、他の部材が端部保護層25と接したときの衝撃を緩和するクッションの役割も担っている。
【0078】
コート層23を構成する樹脂材料は、ウレタン樹脂を含有する。ウレタン樹脂は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との重合体であってよい。
【0079】
ポリオール成分は、ヒドロキシル基を2つ以上有する化合物である。ポリオール成分としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアクリルポリオール等が挙げられる。ポリオール成分はこれらの1種であってよく2種以上であってもよい。
【0080】
ポリエステルポリオールは、分子内に2つ以上のエステル結合と2つ以上のヒドロキシル基を有していてよい。ポリエステルポリオールは、例えば、ジカルボン酸とポリオールとの縮合反応物であってよい。ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタルさん等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。ポリオールとしては、例えば、ヘキサンジオール、ブタンジオール等のジオール、2,4−ブタントリオール等のトリオールが挙げられる。
【0081】
ポリカーボネートポリオールは、分子内に2つ以上のカーボネート結合と2つ以上のヒドロキシル基を有していてよい。ポリカーボネートポリオールは、例えば、上述のジオールとカーボネート化合物との縮合反応物等が挙げられる。カーボネート化合物としては、例えば、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、アルキレンカーボネート等が挙げられる。
【0082】
ポリエーテルポリオールは、分子内に2つ以上のエーテル結合と2つ以上のヒドロキシル基を有していてよい。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、多価アルコールにポリエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加重合させた重合体等が挙げられる。ポリカプロラクトンポリオールは、ポリカプロラクトン骨格と2つ以上のヒドロキシル基を有していてよい。
【0083】
ポリアクリルポリオールは、アクリル系モノマー由来の繰り返し単位と2つ以上のヒドロキシル基とを有していてよい。アクリル系モノマーは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド等であってよい。
【0084】
ポリオール成分の数平均分子量は、コート層23の柔軟性が向上する観点から、800〜15000であることが好ましく、1000〜5000であることがより好ましい。なお、本明細書中、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の値を示す。
【0085】
ポリイソシアネート成分は、イソシアネート基(−NCO)を2以上有する化合物である。ポリイソシアネート成分としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、その他のポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0086】
コート層23を構成する樹脂材料は、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を含む樹脂原料の硬化物であってよい。樹脂原料には、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分以外の他の成分が更に含まれていてよい。他の成分としては、例えば、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応に通常使用される助剤(例えば、鎖延長剤、架橋剤等)、触媒、分散材、導電性付与剤、粗さ付与材等が挙げられる。助剤としては、例えば、グリコール類、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、アミン類等が挙げられる。また、導電性付与剤としては、弾性層21に配合され得る導電性付与剤と同じものが例示できる。
【0087】
コート層23を構成する樹脂材料は、350%以上の伸び率を有することが好ましい。これにより、コート層23の耐久性及びクッション性が向上し、現像ローラ1の長期信頼性が一層向上する傾向がある。樹脂材料の伸び率は、より好ましくは400%以上である。樹脂材料の伸び率の上限は特に限定されないが、例えば800%以下であってよい。なお、本明細書中、樹脂材料の伸び率は、70mm×15mm×0.05mmの短冊形状の試験片について引っ張り試験を行い、測定前のチャック間距離(L
1)と破断直前でのチャック間距離(L
2)から以下の式(i)で求められる値を示す。
伸び率(%)=(L
2/L
1)×100 …(i)
【0088】
コート層23の厚さは特に限定されず、例えば13μm以上であってよく、17μm以上であることが好ましい。コート層23を厚くすることで、摩耗、破損等の劣化がより顕著に抑制され、一層高い耐久性が得られる傾向がある。また、コート層23の厚さは、例えば100μm以下であってよく、50μm以下であることが好ましい。これにより、材料使用量を抑えつつ、本発明の効果を十分に得ることができる。
【0089】
コート層23の外周面には、現像剤の担持性能の改善等を目的として表面処理が施されていてよい。
【0090】
(端部保護層25)
端部保護層25は、軸線方向の両端側それぞれにおいて、コート層23の外周面上に設けられている。端部保護層25は、現像ローラ1と対向配置されて現像剤の担持量を調整する調整部材との摺接する箇所に設けられており、当該調製部材との摩擦による発熱を低減して現像剤の溶け出しを抑制する、調整部材との摩擦による現像ローラ1の損傷を抑制して現像ローラ1の長期信頼性を高める、といった役割を担っている。
【0091】
調整部材は、通常、現像ローラ1の外周と平行に設置される現像ブレードと、現像ブレードの両端で現像ローラ1の端部に接し、現像剤の漏出を防止するシール部と、を備えている。端部保護層25はシール部との接面に設けられており、現像ローラ1が高速回転すると、端部保護層25の外周面とシール部とが摺接する。
【0092】
端部保護層25は、含フッ素樹脂を含有する樹脂材料から構成されている。端部保護層25において、含フッ素樹脂は層を構成するマトリクスとして存在していることが望ましい。これにより上述の効果がより顕著に奏される。
【0093】
含フッ素樹脂は、フッ素原子を含む構成単位を有する重合体であってよい。このような含フッ素樹脂としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシ樹脂)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン樹脂)、ECTFE(エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン樹脂)、PVF(ポリフッ化ビニル)等が挙げられる。
【0094】
含フッ素樹脂は、上述の効果が顕著に得られる観点から、四フッ化エチレン単位及び三フッ化エチレン単位からなる群より選択される少なくとも一種の構成単位を有することが好ましい。
【0095】
また、含フッ素樹脂は、架橋性基を有するフッ素系樹脂を架橋剤により架橋させたものであってよい。架橋性基と架橋剤との組み合わせは公知の組み合わせであってよい。例えば、架橋性基がヒドロキシル基であるとき、架橋剤としてはポリイソシアネート成分を好適に用いることができる。
【0096】
含フッ素樹脂におけるフッ素原子の含有量は、含フッ素樹脂の全量基準で30〜60質量%であることが好ましく、40〜50質量%であることがより好ましい。これにより後述の好適な動摩擦係数が得られやすくなる傾向がある。
【0097】
端部保護層25を構成する樹脂材料は、含フッ素樹脂以外の他の成分を更に含有していてよい。他の成分としては、例えば、導電性付与剤、粗さ付与材、潤滑油等が例示できる。これら他の成分の含有量は、例えば、樹脂材料の全量基準で50質量%以下であってよく、40質量%以下であることが好ましい。
【0098】
端部保護層25の外周面における動摩擦係数は0.30以下であることが好ましく、0.27以下であることがより好ましい。これにより上述の効果が一層顕著に奏される。なお、本明細書中、動摩擦係数は、JIS K7125の「プラスチック−フィルム及びシート−摩擦係数試験方法」に準拠して測定される値を示す。
【0099】
端部保護層25の厚さは、例えば5μm以下であってよく、3μm以下であることが好ましい。また、端部保護層25の厚さは、例えば0.5μm以上であってよく、1μm以上であることが好ましい。
【0100】
端部保護層25の幅(軸線方向に沿った長さ)は、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整してよい。端部保護層25の幅は、例えば5〜15mmであってよく、7〜13mmであることが好ましい。
【0101】
ローラ本体20は、弾性層21、コート層23及び端部保護層25以外の構成を更に有していてよい。例えば、ローラ本体20は、各層の間に、層間接着強度を向上させるための接着剤層を更に有していてよい。
【0102】
本実施形態に係る現像ローラ1は、画像形成装置における現像剤担持体として、好適に用いることができる。
【0103】
画像形成装置の一態様において、現像ローラ1は、現像ローラ1上に担持される現像剤の量を調整する調整部材と対向して配置される。調整部材は、現像ローラ1の外周と平行に設置される現像ブレードと、現像ブレードの両端で現像ローラ1の端部に接し、現像剤の漏出を防止するシール部と、を備え、シール部が現像ローラ1の端部保護層25と摺接するように設置される。
【0104】
本実施形態において、画像形成装置は上記態様に限定されず、現像ローラ1は公知の様々な画像形成装置に適用できる。
【0105】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0106】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0107】
(実施例1)
<弾性層の形成>
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体(SUM22製、直径7.5mm、長さ275mm)をエタノールで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業製)を塗布した。プライマーを塗布した軸体を、ギヤオーブンを用いて150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体の外周面にプライマー層を形成した。
【0108】
次いで、弾性層を形成するためのシリコーンゴム組成物を次のようにして調製した。
すなわち、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(重合度300)100質量部、BET比表面積が110m
2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、R−972)1質量部、平均粒径が6μm、嵩密度が0.25g/cm
3である珪藻土(オプライトW−3005S、北秋珪藻土社製)40質量部、アセチレンブラック(デンカブラックHS−100、電気化学工業社製)5質量部、及び、金属ケイ素粒子20質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌した後、3本ロールに1回通した。これを再度プラネタリーミキサーに戻し、架橋剤として、両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(重合度17、Si−H量0.0060mol/g)2.1質量部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.1質量部、及び、白金触媒(Pt濃度1%)0.1部を添加し、15分撹拌して混練して、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を調製した。
【0109】
調製した付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を用いた液体射出成形により、軸体の外周面上に外径20mmの弾性層を形成した。なお、射出成形では、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を150℃で10分間加熱して硬化させた。
【0110】
<コート層の形成>
次いで、コート層を形成するための樹脂組成物を次のように調製した。
すなわち、直鎖状ポリエステルポリオール28質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(商品名「デュラネートTPA−100」、旭化成社製)14質量部、ジブチルスズジラウレート(昭和化学社製)0.03質量部、カーボンブラック(商品名「トーカブラック#5500」、東海カーボン社製))5質量部、小径ウレタンビーズ(平均粒径3μm、商品名「アートパール C−1000透明」、根上工業社製)4質量部、及び、溶媒として酢酸ブチル5質量部を混合して、樹脂組成物(a−1)を調製した。
【0111】
調製した樹脂組成物(a−1)を弾性層の外周面にスプレーコーティング法によって塗布し、160℃で30分間加熱して、厚さ20μmのコート層を形成した。
【0112】
<端部保護層の形成>
次いで、端部保護層を形成するための樹脂組成物を次のように調製した。
すなわち、四フッ化エチレン共重合体(商品名「ゼッフル GK510」、ダイキン工業社製)17質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(商品名「デュラネートTPA−100」、旭化成社製)9質量部、シリコーンレジン(商品名「KR−5235」、信越化学社製)3質量部、カーボンブラック(商品名「トーカブラック#5500」、東海カーボン社製)4.5質量部、シリカ(商品名「ACEMATT OK−607」、デグサ社製)2質量部、及び、酢酸ブチル(溶媒)72質量部を混合して、樹脂組成物(b−1)を調製した。
【0113】
コート層の両端縁から中央側に向かって10mmまでの範囲(以下、「両端部」)を除き、コート層の外周面にマスキング処理を施した。マスキング処理されていない両端部に、樹脂組成物(b−1)をスプレーコーティング法によって塗布し、160℃で30分間加熱して、厚さ2μmの端部保護層を形成した。
【0114】
以上の方法で、実施例1の現像ローラA−1を作製した。作製した現像ローラA−1について、以下の評価を行った。
【0115】
<現像剤溶融評価>
作製した現像ローラを接触型モノクロ画像形成装置(商品名「HL−6180DW」、ブラザー工業社製)に装着した。なお、現像剤及び現像剤規制部材は、この接触型モノクロ画像形成装置に付属の現像剤及び現像剤規制部材を用いた。この現像剤の帯電特性はプラスであった。
現像ローラを装着した接触型モノクロ画像形成装置内の環境を、温度30℃、相対湿度80%の高湿環境に調整して、A4用紙の片面全面に白べた画像を連続的に印刷し、1時間毎に画像形成装置を分解して、現像装置のブレードの切り欠き部から現像剤が溶融し、外部に漏れているか否かを目視にて確認した。
評価は、運転開始から8時間以上経過した段階で現像剤が溶融せず、現像剤漏れが確認されなかった場合を「A」、5〜8時間の間で現像剤が溶融する兆しがあるが、現像剤が漏れずに使用上問題なかった場合を「B」、5時間未満で現像剤が溶融し、現像剤の漏れが確認された場合を「C」とした。
【0116】
<表層削れ評価>
作製した現像ローラを接触型モノクロ画像形成装置(商品名「HL−6180DW」、ブラザー工業社製)に装着した。なお、現像剤及び現像剤規制部材は、この接触型モノクロ画像形成装置に付属の現像剤及び現像剤規制部材を用いた。この現像剤の帯電特性はプラスであった。
現像ローラを装着した接触型モノクロ画像形成装置内の環境を、温度10℃、相対湿度20%の低湿環境に調整して、A4用紙の片面全面に白べた画像を連続的に印刷し、1時間毎に画像形成装置を分解して、現像装置のトナーシール接触部で現像ローラの表層が削られ、亀裂等が生じているか否かを目視にて確認した。
評価は、運転開始から25時間経過した段階で現像ローラの表層に亀裂が発生しなかった場合を「A」、25時間未満で現像ローラの表層に亀裂が生じ、現像ローラの表層が削られていることが確認された場合を「C」とした。
【0117】
評価結果は表1に示すとおりとなった。
【0118】
(実施例2)
四フッ化エチレン共重合体(商品名「ゼッフル GK510」、ダイキン工業社製)17質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(商品名「デュラネートTPA−100」、旭化成社製)9質量部、シリコーンレジン(商品名「KR−5234」、信越化学社製)3質量部、カーボンブラック(商品名「トーカブラック#5500」、東海カーボン社製)4.5質量部、及び、酢酸ブチル(溶媒)72質量部を混合して、樹脂組成物(b−2)調製した。
【0119】
端部保護層を形成するための樹脂組成物として、上記樹脂組成物(b−2)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で現像ローラ(現像ローラA−2)を作製した。作製した現像ローラA−2について、実施例1と同様の方法で評価した。
【0120】
(実施例3)
三フッ化エチレン共重合体(商品名「ルミフロン LF200」、旭硝子社製)17質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(商品名「デュラネートTPA−100」、旭化成社製)9質量部、シリコーンレジン(商品名「KR−5235」、信越化学社製)3質量部、カーボンブラック(商品名「トーカブラック#5500」、東海カーボン社製)4.5質量部、シリカ(商品名「ACEMATT OK−607」、デグサ社製)2質量部、及び、酢酸ブチル(溶媒)72質量部を混合して、樹脂組成物(b−3)を調製した。
【0121】
端部保護層を形成するための樹脂組成物として、上記樹脂組成物(b−3)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で現像ローラ(現像ローラA−3)を作製した。作製した現像ローラA−3について、実施例1と同様の方法で評価した。
【0122】
(比較例1)
実施例1と同様の方法で弾性層及びコート層を形成して、比較例1の現像ローラB−1を作製した。なお、現像ローラB−1には端部保護層を設けなかった。現像ローラB−1について、実施例1と同様の方法で評価した。
【0123】
(比較例2)
金属ケイ素粒子の配合量を30質量部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で弾性層を形成した。次いで、実施例1と同様の方法でコート層を形成して、比較例2の現像ローラB−2を作製した。なお、現像ローラB−2には端部保護層を設けなかった。現像ローラB−2について、実施例1と同様の方法で評価した。
【0124】
【表1】