(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603670
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】溶融物を浄化するための装置及び方法並びに溶融めっきシステム
(51)【国際特許分類】
C23C 2/00 20060101AFI20191028BHJP
C23C 2/40 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
C23C2/00
C23C2/40
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-560366(P2016-560366)
(86)(22)【出願日】2015年3月3日
(65)【公表番号】特表2017-509800(P2017-509800A)
(43)【公表日】2017年4月6日
(86)【国際出願番号】EP2015054421
(87)【国際公開番号】WO2015150008
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2017年10月26日
(31)【優先権主張番号】102014104509.2
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510041496
【氏名又は名称】ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Steel Europe AG
(73)【特許権者】
【識別番号】501186597
【氏名又は名称】ティッセンクルップ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ペーテルズ
(72)【発明者】
【氏名】フランク スペレケン
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン スペルツ
【審査官】
萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−295506(JP,A)
【文献】
特表2002−502466(JP,A)
【文献】
特開平08−239743(JP,A)
【文献】
米国特許第06187257(US,B1)
【文献】
特開平04−221049(JP,A)
【文献】
特開平01−189492(JP,A)
【文献】
特開平07−268576(JP,A)
【文献】
特許第2790686(JP,B2)
【文献】
特開平06−262300(JP,A)
【文献】
特開昭48−100316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00−2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融めっきシステム(2)の溶融物(3)を浄化するための装置(1)であって、前記溶融物(3)から固形粒子を分離するための浄化ユニット(5)と、前記浄化ユニット(5)につながり、前記溶融めっきシステム(2)の浸漬槽(4)と動作可能に接続することができる供給ライン(7)と、前記浄化ユニット(5)によって浄化された前記溶融物(3)のため、前記浄化ユニット(5)から前記浸漬槽(4)につながる戻りライン(6)とを備える前記装置(1)であって、前記浄化ユニット(5)は液体サイクロン(9)を備え、端面が前記浄化ユニット(5)から離れる方向を向く前記供給ライン(7)の端部が前記浸漬槽(4)の下部領域内に配置され、前記装置(1)は、前記浄化ユニット(5)によって分離された前記固形粒子を運び出すための排出ユニット(15)を備え、且つ、前記排出ユニット(15)は、前記分離された固形粒子から金属塊(17)を鋳造するための少なくとも1つの鋳型(16)を有し前記底流開口部(13)の下に配置された鋳造ユニットを備え、前記鋳造ユニットは、タレットのように回転可能であるか又は直線的に移動可能であり複数の鋳型(16)を有する鋳型マガジンを備える、ことを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
前記装置(1)は、前記溶融物(3)を、前記供給ライン(7)を通して前記浄化ユニット(5)まで移送するためのポンプユニット(8)を備える、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記ポンプユニット(8)は、前記供給ライン(7)の中に組み込まれる、請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記ポンプユニット(8)は電磁ポンプを備え、具体的には電磁円形ポンプを備える、請求項2または3に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記液体サイクロン(9)は、円筒形上部領域(12)の中に前記供給ライン(7)が接線方向に開口する、前記円筒形上部領域(12)と、前記上部領域(12)の下に配置され、底流開口部(13)内に開口する円錐形下部領域(18)とを備え、前記戻りライン(6)に接続された浸漬管(14)が前記上部領域(12)の内側に上から垂直に突き出る、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記装置(1)は、少なくとも部分的に断熱性を備え、前記浄化ユニット(5)及び/又は前記ポンプユニット(8)が、断熱性を備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記装置(1)は、前記浄化ユニット(5)及び/又は前記ポンプユニット(8)を加熱及び/又は冷却するための温度制御ユニットを備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項8】
金属ストリップ(11)を被覆するための溶融めっきシステム(2)であって、溶融物(3)で充填することができる浸漬槽(4)と、前記浸漬槽(4)内で前記金属ストリップ(11)を搬送するための搬送装置(10)とを備え、前記溶融めっきシステム(2)は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の、前記溶融物(3)を浄化するための装置(1)を備える、溶融めっきシステム(2)。
【請求項9】
溶融めっきシステム(2)の溶融物(3)を浄化する方法であって、前記溶融物(3)は前記溶融めっきシステム(2)の前記浸漬槽(4)の下部領域から供給ライン(7)を通して浄化ユニット(5)に供給され、前記浄化ユニット(5)内で前記溶融物(3)から固形粒子が分離され、前記浄化ユニット(5)によって浄化された前記溶融物(3)が戻りライン(6)を通して前記浸漬槽(4)の中に戻るように誘導される、前記方法であって、前記溶融物(3)は、液体サイクロン(9)として設計された前記浄化ユニット(5)内で、誘導されて先細のラセン渦流にされ、前記ラセン渦流によって前記溶融物から分離された前記固形粒子は、前記液体サイクロンの底流開口部を通して排出され、前記浄化された溶融物は、前記底流開口部と対向する垂直浸漬管によって前記戻りラインに供給され、且つ、前記溶融物(3)は、電磁円形ポンプによって前記浸漬槽(4)から前記供給ライン(7)を通して前記浄化ユニット(5)に送り込まれ、前記溶融物(3)は前記液体サイクロン(9)の内部に接線方向に導入され、前記分離された固形粒子は、排出ユニット(15)の鋳型の中で金属塊(17)に鋳造される、ことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記浄化ユニット及び/又は前記電磁円形ポンプは、温度制御ユニットによって加熱又は冷却される、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融めっきシステムの溶融物を浄化するための装置及び方法並びに溶融めっきシステムに基づく。
【背景技術】
【0002】
金属ストリップの浸漬被覆のための溶融めっきシステムは、従来技術により良く知られている。そのような溶融めっきシステムにおいては、金属ストリップが、低融点の液体金属又は合金から成る浸漬槽に浸される。浸漬槽を通過した後、液体金属又は合金が金属ストリップの表面に付着して残り、冷えると、金属ストリップ上の堅固な金属被覆を形成する。金属ストリップは、通例、金属ストリップの被覆の高いサイクル速度を実現するためにローラによって浸漬槽中を連続的に誘導される。溶融めっきシステムの浸漬槽中で金属ストリップを誘導するための装置は、例えば、特許文献1によって知られている。
【0003】
そのような溶融めっきシステムの動作中、時間経過とともに浸漬槽中にスラグが生じ、前記スラグは、特に浸漬槽の底部領域内に蓄積する。金属ストリップを浸漬槽中に浸し、それから吊り出すことは、このスラグを巻き上げるので、スラグからの小さい固形粒子が、被覆される金属ストリップの表面に接触する可能性がある。それにより、被覆された金属ストリップの表面品質が不都合なほど大幅に損なわれる。この背景及び品質に課せられるますます増加する要件に対して、溶融物を可能な限り清浄にすることが必要である。しかし、溶融物の高温及び付随する場合によっては攻撃的な挙動のために処理が困難であり、そのため、表面上及び底部領域内のスラグは、通例、掬い取ツール又はドレッジャ(独:Baggers、英:dredger)を用いて除去される。これらの処置は、対応する運転停止期間及び操作安全上の危険性をもたらす。幾つかの状況のもとでは、浸漬槽全体を一定間隔で交換する必要がある。これは、不都合なことに、溶融めっきシステムのごく短い耐用年数をもたらし、比較的大量の溶融物浪費をもたらす。
【0004】
この問題を解決するために、特許文献2は、浸漬槽内の底部スラグを適切な吸引装置、及び、化学反応又は合金化によって前記底部スラグをそこで上部スラグに変換することによって溶融物の表面に移すことを提案している。次いで上部スラグが浸漬槽から除去される。この方法の不利点は、上部スラグを掬い取り又はポンプ除去によって浸漬槽の表面から除去する必要があることである。この操作は比較的複雑であり、溶融めっきシステムの連続的動作を妨げ、また比較的大量の溶融物浪費につながる。
【0005】
さらに、スラグを含んだ溶融物の再利用のために、前記溶融物を遠心分離機内でバッチ式に固化させ、次いで密度差のために概ね分離される物質を機械的に分離することが従来技術により知られている。この解決策は、不都合なことに、溶融物の連続浄化には適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許公報第10 2011 001 216(B4)号
【特許文献2】独国特許公報第102 34 010(B4)号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、結果的に、溶融めっきシステムの溶融物の連続浄化を、簡単で費用効率が高く、溶融めっきシステムの連続動作が損なわれない効率的な仕方で可能にする、装置及び方法を提供することである。さらに、高い被覆品質を達成するために溶融物を可能な限り清浄にすることを目的とし、同時に溶融物の浪費を最小限にすることを目的とする。
【0008】
この目的は、溶融めっきシステムの溶融物を清浄にするための装置であって、溶融物から固形粒子を分離するための浄化ユニットと、浄化ユニットにつながり、溶融めっきシステムの浸漬槽と動作可能に接続することができる供給ラインと、浄化ユニットによって浄化された溶融物のための、浄化ユニットから浸漬槽につながる戻りラインとを備え、ここで、浄化ユニットが液体サイクロンを備える、装置によって達成される。
【0009】
本発明による装置は、溶融物の連続浄化がもたらされ、その結果、第1に、溶融めっきシステムの耐用年数を延長することができ、第2に、溶融物の清浄度を著しく高めることができるという、従来技術に優る利点を有する。同時に、溶融物浪費の量を減らすことができ、その理由は、液体サイクロンの使用によって固形粒子又はスラグのみが溶融物から分離され、その一方で浄化された溶融物が浸漬槽で再利用されるからである。具体的には、固形粒子、例えば、スラグ、酸化物膜などが溶融物からろ過除去され、それゆえに、前記固形粒子は、被覆される金属ストリップの被覆内にもはや堆積され得ない。本発明による装置のさらに別の利点は、溶融めっきシステムの連続動作が溶融物の浄化によって損なわれないことである。さらに、既存の溶融めっきシステムもまた、本発明による装置を用いて簡単に改良することができる。溶融物は、溶融金属又は合金から成る溶融被覆材料の形態の金属溶融物を含むことが好ましい。特に、亜鉛、アルミニウム及びそれらをベースとする合金が、この目的のための通例のものである。溶融めっきシステムは、特に、溶融亜鉛めっきシステムを備え、特に金属ストリップの連続被覆又は個々の金属部材の被覆のために役立つ。
【0010】
本発明の有利な改良点及び発展は、従属請求項から、及び図面に関する説明から、知ることができる。
【0011】
本発明の好ましい一実施形態により、装置は、溶融物を、供給ラインを通して浄化ユニットに移送するためのポンプユニットを備えること、がもたらされる。ポンプユニットは、浄化される溶融物を液体サイクロン内に接線方向に連続的に移送するように働き、その結果、液体サイクロン内で固形粒子が溶融物から分離される。この溶融物は連続的移送により、即ち、液体サイクロンとして設計された浄化ユニット内で、先細のラセン渦流にされ、その結果、固形粒子が壁領域に蓄積して下方に移動し、その一方で背圧、及びそれゆえに、上方に上昇する浄化された溶融物の反対向きのカラムが、渦の内側に生じる。ポンプユニットは、具体的には供給ライン内に組み込まれる。ポンプユニットは電磁ポンプ、特に電磁円形ポンプを備えることが望ましい。有利な様式において、ここでは、ポンプの可動部分が溶融物と直接に接触せず、それゆえに、第1に、ポンプの密封が簡単になり、第2に、ポンプの耐用年数が延びる。
【0012】
本発明の好ましい一実施形態により、端面が浄化ユニットから離れる方向を向く供給ラインの端部が、浸漬槽の下部領域内に配置され、それゆえに、通常、スラグが堆積する浸漬槽の下部領域から、溶融物が浄化ユニットの方向に吸引されること、がもたらされる。
【0013】
本発明の好ましい一実施形態により、液体サイクロンが、円筒形上部領域の中に供給ラインが接線方向に開口する該円筒形上部領域と、上部領域の下に配置され、底流開口部内に開口する円錐形下部領域とを備え、戻りラインに接続される浸漬管が、上方から上部領域の内側に垂直に突き出ること、がもたらされる。円筒形上部領域内への溶融物の接線方向の導入により、金属溶融物が、円錐形下部領域のために下向きに次第に先細になる下向きのラセン渦流中に押し込まれる。先細になることは、量の内側への移動及び下部領域内での蓄積をもたらし、これが内側の上向きの、浸漬管を通って戻りラインに抜け出る渦の形成をもたらす。このようにして、特に重い粒子はサイクロンの壁の上に堆積するので底流開口部を通して放出され、その一方で特に軽い部分、即ち、ここでは浄化された溶融物は、浸漬管を通って抜け出る。従って、より重い固形粒子が取り除かれた溶融物が浸漬槽に戻される。液体サイクロンの使用は、堆積した残渣が底流開口部を通して液体サイクロンから放出されるために、比較的長い耐用年数が達成されるという利点を有する。液体溶融物の液体サイクロン内への層流移動は、電磁ポンプの使用によって可能にされ、その結果、必要な渦が生じることが好ましい。
【0014】
本発明の好ましい一実施形態により、装置が、浄化ユニットによって分離された固形粒子を運び出すための排出ユニットを備え、ここで、排出ユニットは、分離された固形粒子から金属塊を鋳造するための少なくとも1つの鋳型を有し底流開口部の下に配置された鋳造ユニットを備えることが好ましく、この鋳造ユニットは、タレットのように回転可能であるか又は直線的に移動可能であり且つ複数の鋳型を有する鋳型マガジンを備えることが特に好ましいこと、がもたらされる。分離された固形粒子は底流開口部から熱的に安定な鋳型の中に流れ、そこで残りの溶融物と共に固化する。固化した「ろ過ケーキ」は次に廃棄されるか又は再利用される。それゆえに、有利な方法において、分離された固形粒子の(実質的に)連続的な運び出しが、操作が比較的簡単な方法で達成される。
【0015】
本発明の好ましい一実施形態により、装置が少なくとも部分的に断熱性を備え、ここで、浄化ユニット及び/又はポンプユニットが断熱性を備えることが好ましいこと、がもたらされる。有利な方法で、浄化中の溶融物の温度の過度の低下が断熱性によって防止されるので、溶融物の粘度が過度に増すことがなく、溶融物が固化しない。
【0016】
本発明の好ましい一実施形態により、装置が、浄化ユニット及び/若しくはポンプユニットを加熱並びに/又は冷却するための温度制御ユニットを備えること、がもたらされる。溶融物の温度の過度の低下及びポンプユニットの過熱を、温度制御ユニットにより有利な方法で防止することができる。
【0017】
本発明は、さらに、金属ストリップを被覆するための溶融めっきシステムであって、溶融物で充填することができる浸漬槽と、浸漬槽内で金属ストリップを搬送するための搬送装置とを備え、溶融物を浄化するための本発明による装置を備えた溶融めっきシステムに関する。
【0018】
本発明は、さらに、溶融めっきシステムの溶融物を浄化する方法であって、溶融物が溶融めっきシステムの浸漬槽から供給ラインを通して浄化ユニットに供給され、浄化ユニット内で固形粒子が溶融物から分離され、浄化ユニットによって浄化された溶融物が戻りラインを通って浸漬槽内に戻るように誘導され、ここで、溶融物が液体サイクロンとして設計された浄化ユニット内で誘導されて先細のラセン渦流にされる、方法に関する。
【0019】
本発明の好ましい一実施形態により、溶融物が電磁円形ポンプによって浸漬槽から供給ラインを通して浄化ユニットに送り込まれ、ここで、溶融物が液体サイクロンの内部に接線方向に導入されること、がもたらされる。
【0020】
本発明の好ましい一実施形態により、ラセン渦流によって溶融物から分離された固形粒子が液体サイクロンの底流開口部を通して除去され、浄化された溶融物が、底流開口部と対向する垂直浸漬管によって戻りラインに供給されること、がもたらされる。
【0021】
本発明の好ましい一実施形態により、分離された固形粒子が、排出ユニットの鋳型内で金属塊に鋳造されること、がもたらされる。
【0022】
本発明の好ましい一実施形態により、浄化ユニット及び/又は電磁円形ポンプが温度制御ユニットによって加熱又は冷却されること、がもたらされる。
【0023】
本発明の、さらなる詳細、特徴及び利点が図面から、及び以下の図面に関する好ましい実施形態の説明から明らかになる。添付の図面は、本発明の基本的な構想を限定するものではない本発明の例示的な実施形態を単に説明するものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の例示的な実施形態による装置を有する溶融めっきシステムの略図を示す。
【
図2】本発明の第1の例示的な実施形態による装置の浄化ユニットの略斜視図を示す。
【
図3】本発明の第2の例示的な実施形態による装置を有する溶融めっきシステムの略斜視図を示す。
【
図4】本発明の第2の例示的な実施形態による装置の略斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
種々の図面において、同一の部分には常に同じ参照符号が与えられるので、通常、各場合においても一度だけ示されるか又は言及される。
【0026】
図1は、本発明の第1の例示的な実施形態による装置1を有する溶融めっきシステム2の略図を示す。
【0027】
溶融めっきシステム2は、一例として、溶融物3、例えば、亜鉛、アルミニウム、又はそれらをベースとする合金の形態の溶融被覆材料で充填される浸漬槽4を備える。金属ストリップ11が搬送機構10によって浸漬槽4中を連続的に誘導され、その搬送機構は、この例においては、複数のガイドローラに加えて搬送ローラを備える。プロセス中、溶融物3が金属ストリップ11の表面を濡らす。それゆえに、冷却後、堅固な金属被覆が金属ストリップ11の上に形成される。
【0028】
溶融めっきシステム2の動作中、時間増加と共に、不純物が、スラグとして蓄積する固形粒子の形態で、溶融物3の中に、特に浸漬槽4の底部領域内に蓄積する。しかし、底部スラグに加えて、スラグは上部スラグ又は浮遊スラグとしても生じ得る。前記スラグが金属ストリップ11の被覆に悪影響を及ぼさないように、溶融めっきシステム2は、溶融物3を浄化するための本発明による装置1を備え、それによりスラグが浸漬槽4から連続的に除去される。
【0029】
この目的ために、装置1は供給ライン7を備え、その自由端が、浸漬槽4の下部領域、即ち、底の直ぐ上に配置され、その他方の端部が浄化ユニット5の中に開口している。ここで供給ライン7は電磁円形ポンプとして設計されたポンプユニット8を貫通する。電磁円形ポンプは移送ポンプとして機能し、スラグで汚された溶融物3を、浸漬槽4の下部領域から、供給ライン7を通して浄化ユニット5の中に送り込む。
【0030】
浄化ユニット5は液体サイクロン9を備え、その動作の様式が、
図2に関して以下で示され詳細に説明される。液体サイクロン9の内部で、スラグが残りの溶融物3から分離される。次に、スラグが取り除かれた溶融物3が戻りライン6を介して浸漬槽4の中に戻され、その一方で分離されたスラグは別に除去される。
【0031】
次に、
図2は、本発明の第1の例示的な実施形態による装置1の浄化ユニット5の略斜視図を詳細に示す。液体サイクロン9として設計される浄化ユニット5は、円筒形に形成された上部領域12を備え、その中に供給ライン7が開口している。供給ライン7の液体サイクロン9への開口部は、ここでは、スラグで汚された溶融物3が円筒形上部領域12の内部に接線方向に送り込まれるように設計される。液体サイクロン9は、さらに、円錐形に形成された下部領域18を備え、これは上部領域12に隣接し、底流開口部13まで達する先端が切取られた円錐のように、下に向かって先細になる。それにより、溶融物3は、下方に流れるラセン渦流19の中に押し込まれる。電磁円形ポンプが、スラグで汚された溶融物3を液体サイクロン9の中に連続的に送り込み、ここで、液体サイクロン9内への溶融物3の浸入速度は、残りの溶融物3からのスラグの分離をもたらす剪断流が生じるような大きさにされる。下方に向くラセン渦流19は、ここでは下部領域18の円錐形状のために先細になり、その結果、量の移動が内向きに起り、液体サイクロン9の下部領域18に集積が起る。これにより、中央の上向きの渦20が内側に形成され、前記渦は、上方から液体サイクロン9の内側に垂直に突き出る浸漬管14の中に通じる。スラグの特に重い粒子は液体サイクロン9の壁の上に堆積し、それ故に、液体サイクロン9から、液体サイクロン9の底部領域内に配置された底流開口部13を通して放出され、その一方で、特に軽い部分、即ち、スラグが取り除かれた溶融物3は浸漬管14を通って脱出する。
【0032】
浸漬管14は戻りライン6に接続されるので、浄化された溶融物3は浸漬槽4内で再利用され、ここで、戻りライン6の端部は浸漬管14の上部領域に配置される。底流開口部13から排出されたスラグは廃棄するか又は再利用することができる。
【0033】
図3及び
図4は、本発明の第2の例示的な実施形態による装置1を有する溶融めっきシステム2の略斜視図を示す。第2の実施形態は、概ね第1の実施形態と同じであるが、違いとして、第2の実施形態による装置1は、さらに排出ユニット15を備える。
【0034】
排出ユニット15は、液体サイクロン9の底流開口部13の下に配置され、残留溶融物とともに提供されるスラグ又は固形粒子を、簡単に扱い易い形態で運び出すように機能する。このために、排出ユニット15は、熱的に安定な複数の鋳型16を有する鋳造ユニットを備え、この鋳造ユニットは、液体サイクロン9の長手軸に平行な回転軸の周りに、タレットのように回転可能に取付けられる。鋳型16は、回転軸の周りに円形に配置されるので、鋳造ユニットの回転により、鋳型16の1つが底流開口部13の下に配置される。液体サイクロン9内で溶融物3から分離されたスラグは、底流開口部13を通って、対応する鋳型16の中に流れ込む。前記鋳型16が完全に充填されると、空の新しい鋳型16が底流開口部13の下に配置されるように、鋳造ユニットが回転させられる。完全に充填された鋳型16の中に配置されたスラグは、しばらく冷却され、鋳型16内で固化して、ろ過ケーキの形態の金属塊17を形成する。固化した金属塊17は、対応する鋳型16から自動的に取り出され、例えば、可搬型収集容器21の中に移されることが好ましい。
図4は、本発明の第2の例示的な実施形態による装置1を、異なる視点から概略的に示す。
【符号の説明】
【0035】
1 装置
2 溶融めっきシステム
3 溶融物
4 浸漬槽
5 浄化ユニット
6 戻りライン
7 供給ライン
8 ポンプユニット
9 液体サイクロン
10 搬送装置
11 金属ストリップ
12 上部領域
13 底流開口部
14 浸漬管
15 排出ユニット
16 鋳型
17 金属塊
18 下部領域
19 ラセン渦流
20 上向きの渦
21 収集容器