特許第6603708号(P6603708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603708
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】二酸化チタン
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/047 20060101AFI20191028BHJP
   C09C 1/36 20060101ALI20191028BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   C01G23/047
   C09C1/36
   C09D17/00
【請求項の数】16
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-513367(P2017-513367)
(86)(22)【出願日】2015年5月21日
(65)【公表番号】特表2017-521348(P2017-521348A)
(43)【公表日】2017年8月3日
(86)【国際出願番号】GB2015051504
(87)【国際公開番号】WO2015177562
(87)【国際公開日】20151126
【審査請求日】2018年5月17日
(31)【優先権主張番号】1409208.4
(32)【優先日】2014年5月23日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】510286008
【氏名又は名称】ハンツマン・ピーアンドエイ・ユーケイ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Huntsman P&A UK Limited
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エドワーズ,ジヨン・エル
(72)【発明者】
【氏名】タツカー,ベンジヤミン・デイ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,アンドリユー・イー
(72)【発明者】
【氏名】ギボンズ,リンダ
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−042232(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0105817(US,A1)
【文献】 特開2008−207983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 1/00− 23/08
C09C 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥二酸化チタン生成物の製造方法であって:
分散物が以下の寸法基準:
a)Brookhaven BI−XDCW X−ray Disc Centrifuge Systemを用いて決定される時の平均粒度が、1.45より小さい幾何標準偏差を以て、0.29〜0.32ミクロンである、
b)粒子の90重量%かもしくはそれより多くが0.5ミクロンより小さい粒度を有する、
c)粒子の99重量%かもしくはそれより多くが1.5ミクロンより小さい粒度を有する、
の1つかもしくはそれより多くを満たす二酸化チタン粒子を含有する、
二酸化チタン粒子を含んでなる分散物を与える段階;
−二酸化チタン粒子を式(I):
II(ORIaORSiX3 (I)
[式中、
Rはケイ素原子に炭素−結合している二価のC1−24有機基であり、
IはC2−6アルキレン基であり、
IIC1−4アルキル基;及びmが1〜10の整数である式(CH3)(OCH2m−のアルキルエーテル基から選ばれ
Xは加水分解可能な基であり、そして
aは3〜150の値を有する数である]
のシランで処理する段階;
及び次いで
−分散物を乾燥して乾燥二酸化チタン生成物を与える段階
を含んでなる方法。
【請求項2】
包装容器中に含有された二酸化チタン粒子状材料を含んでなる包装生成物の製造方法であって:
分散物が以下の寸法基準:
a)Brookhaven BI−XDCW X−ray Disc Centrifuge Systemを用いて決定される時の平均粒度が、1.45より小さい幾何標準偏差を以て、0.29〜0.32ミクロンである、
b)粒子の90重量%かもしくはそれより多くが0.5ミクロンより小さい粒度を有する、
c)粒子の99重量%かもしくはそれより多くが1.5ミクロンより小さい粒度を有する、
の1つかもしくはそれより多くを満たす二酸化チタン粒子を含有する、
二酸化チタン粒子を含んでなる分散物を与える段階;
−請求項1で定義された式(I)のシランを用いて二酸化チタン粒子を処理する段階;
及び次いで
−分散物を乾燥して乾燥二酸化チタン生成物を与える段階;
及び次いで
−乾燥二酸化チタン生成物を包装容器内に入れる段階
を含んでなる方法。
【請求項3】
ビヒクル中に分散された二酸化チタン粒子状材料を含んでなる顔料生成物の製造方法であって:
分散物が以下の寸法基準:
a)Brookhaven BI−XDCW X−ray Disc Centrifuge Systemを用いて決定される時の平均粒度が、1.45より小さい幾何標準偏差を以て、0.29〜0.32ミクロンである、
b)粒子の90重量%かもしくはそれより多くが0.5ミクロンより小さい粒度を有する、
c)粒子の99重量%かもしくはそれより多くが1.5ミクロンより小さい粒度を有する、
の1つかもしくはそれより多くを満たす二酸化チタン粒子を含有する、
二酸化チタン粒子を含んでなる分散物を与える段階;
−請求項1で定義された式(I)のシランを用いて二酸化チタン粒子を処理する段階;
及び次いで
−分散物を乾燥して乾燥二酸化チタン生成物を与える段階;
及び次いで
−乾燥二酸化チタン生成物をビヒクル中に分散させる段階
を含んでなる方法。
【請求項4】
包装容器内に乾燥二酸化チタン生成物を入れる段階の前に乾燥二酸化チタン生成物を超微粉砕しない請求項2の方法、あるいは、ビヒクル中に乾燥二酸化チタン生成物を分散させる段階の前に乾燥二酸化チタン生成物を超微粉砕しない請求項3の方法。
【請求項5】
粒子を乾燥する前に二酸化チタン粒子の分散物を濃縮する請求項1〜4のいずれか1つの方法。
【請求項6】
ビヒクル中に容易に分散される乾燥二酸化チタン生成物を得て、二酸化チタン粒子を含んでなる顔料生成物を得るための請求項1で定義された式(I)のシランの使用であって、
二酸化チタン粒子が以下の寸法基準:
a)平均粒度(Brookhaven BI−XDCW X−ray Disc Centrifuge Systemを用いて決定される時)が、1.45より小さい幾何標準偏差を以て、0.29〜0.32ミクロンである、
b)粒子の90重量%かもしくはそれより多くが0.5ミクロンより小さい粒度(直径)を有する、
c)粒子の99重量%かもしくはそれより多くが1.5ミクロンより小さい粒度(直径)を有する、
の1つかもしくはそれより多くを満たす、上記使用
【請求項7】
ビヒクル中に容易に分散される乾燥二酸化チタン生成物を得て、顔料生成物を二酸化チタン顔料粒子の超微粉砕を経ることなく得るためにシランを用いる請求項の使用。
【請求項8】
二酸化チタン粒子を、それらを式(I)のシランで処理する前にコーティングする請求項1〜5のいずれか1つの方法又は請求項6〜のいずれか1つの使用。
【請求項9】
Rが:C1−20アルキレン;C2−20アルケニレン;及びC1−20アルコキシエン基から選ばれる分枝鎖状又は非分枝鎖状二価連結基である請求項1〜5又はのいずれか1つの方法あるいは請求項6〜のいずれか1つの使用。
【請求項10】
Iが分枝鎖状又は非分枝鎖状であることができるC2−4 1,2−アルキレン基で
ある請求項1〜5又は又はのいずれか1つの方法あるいは請求項6〜のいずれか1つの使用。
【請求項11】
Xが:ハロゲン基;C1−20アルコキシ基;末端アルキルが1〜10個の炭素原子を含有し、内部アルキレンが2〜20個の炭素原子を含有するアルコキシアルコキシ基;C2−8アシルオキシ基;ならびにC6−20アリールオキシ基から選ばれる請求項1〜5又は10のいずれか1つの方法あるいは請求項6〜10のいずれか1つの使用。
【請求項12】
XがCl、Br及びC1−8分枝鎖状もしくは非分枝鎖状アルコキシ基から選ばれる請求項11の方法又は使用。
【請求項13】
aが3〜100の平均値を有する数である請求項1〜5又は12のいずれか1つの方法あるいは請求項6〜12のいずれか1つの使用。
【請求項14】
aが3〜50の平均値を有する数である請求項13の方法又は使用。
【請求項15】
シランが
CH3(OCH2CH2aORSiX3
CH3(OCH(CH3)CH2aORSiX3
CH3(OCH2CH(CH3))aORSiX3
CH3CH2(OCH2CH2aORSiX3
CH3CH2(OCH(CH3)CH2aORSiX3
CH3CH2(OCH2CH(CH3))aORSiX3
CH3(OCH2m(OCH2CH2aORSiX3
CH3(OCH2m(OCH(CH3)CH2aORSiX3
又は
CH3(OCH2m(OCH2CH(CH3))aORSiX3
であり、式中、aは3〜50の平均値を有する数であり;mは1〜10の数であり;XはCl、Br及びC1−4分枝鎖状もしくは非分枝鎖状アルコキシ基から選ばれ;そしてRはC1−12アルキレン基、C2−12アルケニレン基及びC1−12アルコキシエン基から選ばれる分枝鎖状もしくは非分枝鎖状2価連結基である
請求項1〜5又は14のいずれか1つの方法あるいは請求項6〜14のいずれか1つの使用。
【請求項16】
二酸化チタン粒子上に0.05〜25%w/wの添加レベルを与えるようにシランを与える請求項1〜5又は15のいずれか1つの方法あるいは請求項6〜15のいずれか1つの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、二酸化チタン顔料生成物の製造方法に関する。特に方法は、優れた光沢性を有する塗料又はインキの製造における使用に適した顔料(pigmentary)二酸化チタン粒子を含んでなる二酸化チタン顔料生成物の製造を含む。本発明の方法は、超微粉砕段階を必要とせずにそのような生成物を製造することを可能にし、従って、方法はエネルギー効率及びコスト効率がより高い。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
二酸化チタン(TiO2)は通常、商業的に主要な白色顔料であるとみなされている。それは例外的に高い屈折率、無視し得る色を有し、不活性でもある。二酸化チタンは市場で一般に2つの主な多形、アナターゼ又はルチルのいずれかにおいて存在し;大部分の商業的用途のために、ルチルは望ましい形態である。二酸化チタンは、塗料、紙、プラスチック、セラミック、インキなどにおける不透明剤として有用であるとして周知である。二酸化チタンは商業的に販売される時、一般に150nm〜350nmの平均粒度を有する。
【0003】
顔料二酸化チタン原料(raw pigmentary titanium dioxide)の製造のために、2つの主な方法:サルフェート法及びクロリド法がある。
【0004】
サルフェート法は濃硫酸中でのイルメナイト又はチタニアスラグの温浸(digestion)に基づく。硫酸鉄として鉄を除去した後、溶液を加熱し、水で希釈する。チタンは加水電解し、オキシ硫酸チタン沈殿を生成し、それをさらに処理してTiO2顔料を製造する。
【0005】
クロリド法は、低−鉄チタン含有鉱石又は中間生成物をカルボクロリネーション(carbo−chlorination)してTiCl4を形成し、続いてTiCl4を気相酸化することに頼っている。
【0006】
二酸化チタン含有分散物から、分散物のpH調整により二酸化チタンを凝集及び/又は沈殿させることができる。
【0007】
既知の方法により得られる二酸化チタンのための仕上げ法は:乾式磨砕、湿式磨砕、分別(classification)、ろ過、洗浄、乾燥、蒸気超微粉砕(steam micronizing)及び包装の1つもしくはそれより多くを含むことができる。
【0008】
一般に商業的な方法において、二酸化チタン分散物は所望の粒度分布を達成するために常に磨砕され、超微粉砕されるであろう。
【0009】
場合により、表面処理段階があり得る。表面処理段階は一般に、二酸化チタンの表面上にアルミナ、シリカ、ジルコニア及び/又は他の金属酸化物を沈殿させることを含む。このコーティング処理の目的は、光安定性、保存寿命、分散性及び/又は流動性を賦与することである。この段階は一般に湿式磨砕段階の後且つ乾燥段階の前に行われる。
【0010】
所望の粒度分布を有する最終的な二酸化チタン白色顔料生成物を得るために、仕上げ法は:磨砕;続く必要な表面処理段階、例えば金属酸化物コーティング;続くろ過及び/又
は洗浄;続く乾燥;ならびに次いで超微粉砕を含むのが当該技術分野において一般的に好ましい。
【0011】
生成物を処理及び乾燥する段階は、粒子を凝集させ得、超微粉砕段階は、乾燥及び処理された生成物中の粒子が分離され、所望の粒度分布が回復することを確実にする。
【0012】
通常二酸化チタンは、塗料又はインキの製造の間の機械エネルギー投入が低い塗料、インキなどにおける白色顔料としての使用に適した所望の粒度分布を与えるために、常に超微粉砕される。
【0013】
塗料又は他の顔料含有生成物における粒度分布は、顔料含有生成物により達成される隠蔽力を決定する。
【0014】
ほとんどの塗料のために、平均粒度(Brookhaven BI−XDCW X−ray Disc Centrifuge Systemを用いて決定される時)は、1.45より小さい幾何標準偏差を以て0.29〜0.32ミクロンの範囲内にあるべきである。熟練者が認識する通り、粒度分布は対数正規分布に則っている。
【0015】
Brookhaven BI−XDCW X−ray Disc Centrifuge System(XDC)を用いる粒度分布測定値は以下のように決定され得る:Boschミルポット中で乾燥TiO2材料(0.92g)を1/16%のケイ酸ナトリウム溶液(16.80g)及び脱イオン水(5.28g)と混合し、〜4%固体の希薄懸濁液を与える。2滴の水酸化ナトリウム溶液(2%)を用いてpHを10〜10.5に調整する。次いでBosch高速羽根車を用いて試料を10分間激しく磨砕する。この方法は、ほとんどの塗料及びインキの製造において用いられる機械エネルギーの代表的なものであるべく設計されている。
【0016】
粒度分布は長い「尾部」を持っていない、言い換えると有意な量の大きな寸法の粒子が存在しないのも望ましいかも知れない。例えば粒子の90重量%かもしくはそれより多くが0.5ミクロンより小さい粒度を有するべきであることが一般に望ましい。0.5ミクロンより大きい粒子の高い濃度は塗料又はインキの光沢にとって有害である。X線沈降(X−ray sedimentation)を用いて粒度径(particle size diameter)を決定することができる。理想的には、粒子の99重量%かもしくはそれより多くが1.5ミクロンより小さい粒度径(X−線沈降を用いて決定される)を有することも事実である。
【0017】
上記の通り、生成物を処理及び乾燥する段階は粒子を凝集させ得、それは、粒子を所望の寸法に戻すために、通常の二酸化チタン顔料製造経路において通常流体エネルギー磨砕(超微粉砕)が必要であることを意味する。そうでないと、例えば塗料又はインキの生成のために最終的な生成物を続いてビヒクル中に分散させる時(例えば高速分散により)、得られる二酸化チタンの粒子を含有する生成物は所望の寸法分布を有しておらず、代わりに多すぎる量の特大粒子(oversize particles)を有するであろう。
【0018】
流体エネルギー磨砕は流体エネルギーミル(又は超微粉砕機)中で行われる。ほとんどの流体エネルギーミルは、軸壁を区画する2つの一般的に平行な円板及び外周壁を区画する環状の縁により囲まれた円板形粉砕室の基本的な形状に基づく変形であり、軸長又は室の高さは実質的に直径より小さい。ミルの円周の周りには、微粉砕されるべき粒子状材料を供給するための1個もしくはそれより多い供給ノズルと共に、微粉砕のための追加のエネルギーを提供する粉砕流体を噴射するための複数の均一な間隔のジェットが置かれる。粉砕流体及び粒子状材料が室の円周より小さい円の円周への接線方向に噴射されるように
ジェットを向ける。粉砕室への接線である側入口(side inlet)を介して、あるいは上部からある角度で、通常粉砕室の平面に30oの角度で粉砕室への供給を導入することができる。側供給超微粉砕機(side feed micronizers)は一般により優れた粉砕分散物(grinding dispersion)を与えるが、上部供給超微粉砕機はより速い速度を与えることができる。
【0019】
粉砕室の外周の周りに環状の配置で置かれる供給入口を介するか又は流体ノズルを介する圧縮ガスのような粉砕流体の導入により、粉砕室内で渦が形成される。室の外周内に接線方向に供給される粉砕流体(圧縮ガス、例えば空気、蒸気、窒素など)は、それが粉砕室内を移動する時に高速の渦を形成する。高速の渦は粒子状材料を掃き上げ(sweep
up)、それは高速の粒子から粒子への(particle−to−particle)衝突ならびに粉砕室の壁の内部との衝突を生ずる。二酸化チタンの超微粉砕において、粉砕流体は通常、過熱された蒸気である。
【0020】
明らかに、より重い粒子は渦内でより長い滞留時間を有する。より軽い粒子は、排出導管に達するまでガスの渦と一緒に移動する。典型的には、流体エネルギーミルは微(10ミクロンより小さい直径)及び超微(5ミクロンより小さい直径)粒子を与えることができる。しかしながら、それでも時々、粉砕の間に望ましくなく大きな粒度が生成物中に抜け出すのが見出され得る。
【0021】
一般に白色顔料工業において、得られる顔料生成物中に早まって通過する特大材料の量を減らす特別な必要性がある。かくして超微粉砕の間の粉砕の強度は、他の生成物を超微粉砕する時に比較して典型的に高くなる。これは流体の使用、エネルギー消費及びミル当たりの容量の減少の点でより高いコストの必然的な結果を有する。
【0022】
さらに、そのような方法を用いると、特大材料の量を減らすことができるが、顔料の性質への悪影響があり得る。
【0023】
通常の顔料仕上げ法が高度にエネルギー集約的な方法であることは、著しい懸念である。仕上げにおける最高のエネルギー消費操作は一般に過熱蒸気を用いる乾燥生成物の流体エネルギー磨砕である。
【0024】
しかしながら、この超微粉砕段階を単純に省略することはできない。通常通りに、しかし流体エネルギー超微粉砕段階を使用せずに製造される二酸化チタン顔料は、塗料又はインキの製造に適していない生成物を与えるであろう。特に、生成物は光沢性の点でそのような生成物の必要条件を満たさないであろう。これは、粒度分布が特大粒子の長い「尾部」を含んで広すぎるという事実の故である。
【0025】
特許文献1に、ポリエーテル置換ケイ素化合物を用いる粒子状二酸化チタンの処理が、着色された(pigmented)及び/又は充填剤添加された(filled)塗料及びプラスチック中における、ならびに強化されたプラスチック複合組成物中におけるその分散性を強化する方法として記載されている。分散促進剤化合物は、ケイ素に結合した2〜3個の加水分解可能な基及びポリアルキレンオキシド基を含有する有機基を保有する。二酸化チタンを含有するプラスチック、樹脂又は他のビヒクルにこの化合物を直接加えることができる。
【0026】
特許文献2は、有機修飾された(organically modified)金属酸化物の製造方法及びその生成物に関する。酸の存在下で解凝固される(peptized)ことができる金属酸化物の水性分散物を式RySiX4-yを有する有機シランの水性分散物と混合し、式中、Rは有機部分であり、Xは水の存在下で酸アニオンを生ずる部分であ
り、yは1〜3である。水性分散物と有機シランの混合物を次いで熱的に熟成させてコロイド状金属酸化物ゾルを与える。
【0027】
特許文献3は、ポリ(オキシアルケン)ホスホネートを用いて安定化された無機粒子分散物を記載している。これに関し:(1)水及び/又は極性溶媒;(2)無機粒子のコロイド状分散物;ならびに(3)ホスホネート末端ポリ(オキシアルケン)ポリマーの混合物を含む液体組成物が与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】米国特許第4 061 503号明細書
【特許文献2】米国特許第6 972 301 B2号明細書
【特許文献3】米国特許第7 381 251 B2号明細書
【発明の概要】
【0029】
発明の概略
本発明は、1つの側面において:
−二酸化チタン粒子を含んでなる分散物を与える段階;
−二酸化チタン粒子を式(I):
II(ORIaORSiX3 (I)
[式中、
Rはケイ素原子に炭素結合している二価のC1−24有機基であり、
IはC2−6アルキレン基であり、
IIは水素、C1−16アルキル基、C2−16アルキルエーテル基又はC2−12アシルオキシ基であり、
Xは加水分解可能な基であり、そして
aは3〜150の値を有する数である]
のシランで処理する段階;
及び次いで
−分散物を乾燥して乾燥二酸化チタン生成物を与える段階
を含んでなる乾燥二酸化チタン生成物の製造方法を提供する。
【0030】
この方法の利益は、乾燥段階の前のシランを用いる二酸化チタン粒子の処理が、乾燥後でさえ許容され得る粒度分布を保持している生成物を生ずることである。乾燥段階の後に得られる乾燥二酸化チタン生成物は、ビヒクル中に容易に分散され得(例えば高速分散により)、許容され得る粒度分布を有する、すなわち特大粒子の望ましい低いレベルを有する二酸化チタン顔料を含んでなる顔料生成物(例えば塗料又はインキ生成物)を与えるものである。
【0031】
上記の通り、ほとんどの塗料のために許容され得る粒度分布は、平均粒度(Brookhaven BI−XDCW X−ray Disc Centrifuge Systemを用いて決定される時)が、1.45より小さい幾何標準偏差を以て0.29〜0.32ミクロンでなければならないことである。好ましくは、粒子の90重量%かもしくはそれより多くが0.5ミクロンより小さい粒度径(X線沈降を用いて決定される時)を有することもある。好ましくは、粒子の99重量%かもしくはそれより多くが1.5ミクロンより小さい粒度径(X線沈降を用いて決定される時)を有することもある。
【0032】
本発明を用い、これらの基準の1つかもしくはそれより多く、例えばこれらの基準の2つかもしくはそれより多くあるいはこれらの基準のすべてを満たす乾燥二酸化チタン生成物を、超微粉砕なしで得ることが可能である。
【0033】
本発明の方法は、シランを用いる二酸化チタン粒子の処理がない通常の方法と対照的である。そのような先行方法において、仕上げ法は粒度分布に不利に影響し、従って許容され得る粒度分布を達成するために乾燥後に超微粉砕段階が必要である。
【0034】
従って本発明において、乾燥二酸化チタン生成物を超微粉砕する必要はない。それどころか、仕上げ法の後でさえ粒度分布は許容され得るままであり、従ってこのエネルギー集約的な段階を省略することができる。
【0035】
従って1つの態様において、第1の側面の方法は乾燥二酸化チタン生成物を超微粉砕する段階を含まない。
【0036】
先行方法のいずれも仕上げ法の一部として、及び二酸化チタン粒子を乾燥する前に、(コーティングされないか又はコーティングされた)二酸化チタン粒子の表面を改質するために式(I)のシランを用いていない。そのような処理が、容易に分散されて、許容され得る粒度分布を有する二酸化チタン顔料を含んでなる生成物を与える生成物を生じ、乾燥二酸化チタン生成物を超微粉砕する必要がないことを意味するという記載もなかった。
【0037】
第1の側面の方法は、式(I)のシランを用いて二酸化チタン粒子を処理する前に、場合により二酸化チタン粒子をコーティングする段階を含むことができる。生成物に関する意図される最終用途の観点から二酸化チタンのためのコーティングが必要であるか又は望ましい場合、この段階を行うべきである。
【0038】
第1の側面の方法は、粒子を乾燥する前に、場合により二酸化チタン粒子の分散物を濃縮する段階を含むことができる。この濃縮段階は、続いて分散物を乾燥するために必要なエネルギーを減少させるであろう。式(I)のシランを用いて二酸化チタン粒子を処理する前又は後に濃縮段階を行うことができる。
【0039】
1つの態様において、乾燥段階に得られる乾燥二酸化チタン生成物を、次いで例えば高速分散により分散させ、分散された二酸化チタン顔料を含んでなる顔料生成物を与える。1つのそのような態様において、乾燥二酸化チタン生成物をビヒクル中に分散させて、該ビヒクル中に分散された顔料二酸化チタン粒子を含んでなる塗料又はインキ生成物のような顔料生成物を与える。好ましくは、あらかじめ乾燥二酸化チタン生成物に超微粉砕段階を行わずに、この分散段階を乾燥二酸化チタン生成物に行う。
【0040】
本発明は、第2の側面において、容易に分散される乾燥二酸化チタン生成物を得るための第1の側面で定義された式(I)のシランの使用も提供する。
【0041】
特に、二酸化チタン粒子を含んでなる塗料又はインキ生成物のような顔料生成物を得るために、ビヒクル中に容易に分散される乾燥二酸化チタン生成物を得るためのシランの使用を提供する。
【0042】
本発明は、第3の側面において、ビヒクル中に容易に分散される乾燥二酸化チタン生成物を、二酸化チタンの超微粉砕を経ずに得るための第1の側面で定義された式(I)のシランの使用も提供する。
【0043】
特に、ビヒクル中に容易に分散される乾燥二酸化チタン生成物を得て、塗料又はインキ
生成物のような顔料生成物を二酸化チタン顔料粒子の超微粉砕を経ることなく得るための、第1の側面で定義された式(I)のシランの使用が提供される。
【0044】
本発明のすべての側面において、好ましくは本発明の乾燥二酸化チタン生成物を分散させることにより得られる顔料生成物は、以下の寸法基準の1つかもしくはそれより多くを満たす二酸化チタン粒子を含有する:
a)平均粒度(Brookhaven BI−XDCW X−ray Disc Centrifuge Systemを用いて決定される時)は1.45より小さい幾何標準偏差を以て0.29〜0.32ミクロンである。
b)粒子の90重量%かもしくはそれより多くが0.5ミクロンより小さい粒度(直径)を有する。
c)粒子の99重量%かもしくはそれより多くが1.5ミクロンより小さい粒度(直径)を有する。
【0045】
好ましくは、この顔料生成物は、それらの寸法基準の2つかもしくはそれより多くを満たす二酸化チタン粒子を含有する;最も好ましくは、この顔料生成物はそれらの寸法基準のすべてを満たす二酸化チタン粒子を含有する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図面の記述
図1図1は、実施例1及び比較実施例1aで用いられるチタニアの濃厚分散物に関する、処理を開始する前にX−ray Disk Centrifugeを用いて測定される粒度分布を示すグラフである。
図2図2は、処理を開始する前の実施例1及び比較実施例1aで用いられるチタニアの濃厚分散物の光学顕微鏡写真である。
図3図3は、実施例1に記載される通り本発明に従う方法において6−9 mPEGシランを用いて処理され、乾燥された後のチタニアの濃厚分散物の光学顕微鏡写真である。
図4図4は、実施例1に記載される通り本発明に従う方法において6−9 mPEGシランを用いて処理され、乾燥された後のチタニアの濃厚分散物に関する、X−ray Disk Centrifugeを用いて測定される粒度分布を示すグラフである。
図5図5は、比較実施例1aに記載される通り本発明に従わない比較法において乾燥された後のチタニアの濃厚分散物に関する、X−ray Disk Centrifugeを用いて測定される粒度分布を示すグラフである。
図6図6は、比較実施例1aに記載される通り本発明に従わない比較法において乾燥された後のチタニアの濃厚分散物の光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
発明の詳細な記述
本発明は式(I):
II(ORIaORSiX3 (I)
のシランを用いる。
【0048】
Rはケイ素原子に炭素結合した二価のC1−24有機基である。Rは直鎖状又は分枝鎖状であることができる。熟練者が認識する通りRは連結基であるので、Rは広範囲の基であることができる。従ってRは単にシラン化合物の2つの活性な部分を連結する目的のために働くが、それ自身は活性に含まれない。従ってこの基の性質は比較的広い範囲になる。
【0049】
1つの態様において、Rは二価のC1−22有機基、例えば二価のC1−20有機基又
は二価のC1−18有機基又は二価のC1−12有機基である。
【0050】
Rは分枝鎖状又は非分枝鎖状であることができ、例えばそれは分枝鎖状もしくは非分枝鎖状C1−24アルキレン、C2−24アルケニレン又はC1−24アルコキシエン基であることができる。
【0051】
1つの態様において、RはC1−20アルキレン、C2−20アルケニレン及びC1−20アルコキシエン基から選ばれる分枝鎖状又は非分枝鎖状二価連結基であり;例えばそれはC1−18アルキレン、C2−18アルケニレン又はC1−18アルコキシエン基、例えばC1−12アルキレン、C2−12アルケニレン又はC1−12アルコキシエン基であることができる。
【0052】
1つのそのような態様において、RはC2−10アルキレン、C2−10アルケニレン又はC2−10アルコキシエン基;好ましくはC2−8アルキレン、C2−8アルケニレン又はC2−8アルコキシエン基;より好ましくはC2、C3、C4、C5又はC6アルキレン又はアルコキシエン基;最も好ましくはC2、C3又はC4アルキレン又はアルコキシエン基から選ばれる分枝鎖状又は非分枝鎖状二価連結基である。
【0053】
IはC2−6アルキレン基、好ましくはC2−5アルキレン基、より好ましくはC2−4アルキレン基、すなわちC2、C3又はC4アルキレン基である。好ましくは、それは1,2−アルキレン基である。アルキレン基は分枝鎖状又は非分枝鎖状であることができる。
【0054】
1つの態様において、RIはC2−4 1,2−アルキレン基であり、それは分枝鎖状又は非分枝鎖状であることができる。1つのそのような態様において、RIは非分枝鎖状であるC2、C3又はC4 1,2−アルキレン基である。別のそのような態様において、RIは分枝鎖状であるC3又はC4 1,2−アルキレン基である。
【0055】
IIは水素、C1−16アルキル基、C2−16アルキルエーテル基又はC2−12アシルオキシ基である。RIIが水素でない場合、その炭化水素鎖は分枝鎖状(但し、もちろんその鎖中には3個かもしくはそれより多い炭素原子がある)又は非分枝鎖状であることができる。アルキルエーテル基は式(CH3)(CH2o(OCH2m−のものであることができ、式中、mは1〜10の整数であり、oは0〜5の整数である。
【0056】
1つの態様において、RIIは水素、C1−12アルキル基、C2−14アルキルエーテル基又はC2−10アシルオキシ基;例えば水素、C1−10アルキル基、C2−12アルキルエーテル基又はC2−8アシルオキシ基である。アルキルエーテル基は式(CH3)(CH2o(OCH2m−のものであることができ、式中、mは1〜10、例えば1〜8の整数であり、oは0〜3の整数、例えば0又は1又は2である。
【0057】
好ましくは、RIIは水素、C1−8アルキル基、C2−11アルキルエーテル基又はC2−6アシルオキシ基、例えば水素、C1−6アルキル基、C2−10アルキルエーテル基又はC2−5アシルオキシ基であり、例えばそれは水素、C1−4アルキル基、C2−8アルキルエーテル基又はC2−4アシルオキシ基であることができる。アルキルエーテル基は式(CH3)(CH2o(OCH2m−のものであることができ、式中、mは1〜10、例えば1〜8の整数であり、oは0〜2の整数、例えば0又は1である。
【0058】
1つの態様において、RIIは水素;C1−12アルキル基;mが1〜10、例えば1〜8の整数であり、oが0〜3の整数、例えば0又は1である式(CH3)(CH2o(OCH2m−のC2−12アルキルエーテル基;及びC2−8アシルオキシ基から選ばれる
【0059】
別の態様において、RIIは水素;C1−8アルキル基;mが1〜10、例えば1〜8の整数であり、oが0〜2の整数、例えば0又は1である式(CH3)(CH2o(OCH2m−のC2−11アルキルエーテル基;及びC2−8アシルオキシ基から選ばれる。
【0060】
さらに別の態様において、RIIは:C1−4アルキル基(アルキル基がC3又はC4である場合、それは分枝鎖状又は非分枝鎖状であることができる);及びmが1〜10、例えば1〜8又は1〜6又は1〜4の整数である式(CH3)(OCH2m−のアルキルエーテル基から選ばれる。
【0061】
Xは加水分解可能な基である。例えばそれはハロゲン基、例えばF、Cl又はBrであることができるか、あるいはそれはC1−20有機基、例えばC1−20アルコキシ基、又は、末端アルキルが1〜10個の炭素原子を含有し、内部アルキレンが2〜20個の炭素原子を含有するアルコキシアルコキシ基、又は、C2−8アシルオキシ基、又は、C6−20アリールオキシ基であることができる。X基中の炭化水素鎖は分枝鎖状又は非分枝鎖状であることができる。
【0062】
従って1つの態様においてXは:F、Cl、Br、C1−18アルコキシ基、末端アルキルが1〜8個の炭素原子を含有し、内部アルキレンが2〜12個の炭素原子を含有するアルコキシアルコキシ基、C2−6アシルオキシ基、及び、C6−18アリールオキシ基から選ばれることができる。
【0063】
1つのそのような態様において、Xは:F、Cl、Br、C1−12アルコキシ基、末端アルキルが1〜6個の炭素原子を含有し、内部アルキレンが2〜8個の炭素原子を含有するアルコキシアルコキシ基、C2−6アシルオキシ基、及び、C6−12アリールオキシ基から選ばれることができる。例えばXは:F、Cl、Br、C1−8アルコキシ基、末端アルキルが1〜4個の炭素原子を含有し、内部アルキレンが2〜6個の炭素原子を含有するアルコキシアルコキシ基、C2−6アシルオキシ基、及び、C6−10アリールオキシ基から選ばれることができる。
【0064】
1つの態様において、XはCl、Br、及び、C1−8分枝鎖状もしくは非分枝鎖状アルコキシ基;例えばCl、Br、及び、C1−6分枝鎖状もしくは非分枝鎖状アルコキシ基;例えばCl、Br、及び、C1−4分枝鎖状もしくは非分枝鎖状アルコキシ基から選ばれる。
【0065】
XはCl基、C1アルコキシ基、C2アルコキシ基、C3分枝鎖状もしくは非分枝鎖状アルコキシ基、又は、C4分枝鎖状もしくは非分枝鎖状であるかも知れない。XはOCH3、OCH2CH3、又は、Clであるかも知れない。
【0066】
aは3〜150の平均(average(mean))値を有する数である。1つの態様において、aは3〜120、例えば3〜100又は3〜80の平均値を有する数である。1つのそのような態様において、aは3〜70、例えば3〜60、特に3〜50の平均値を有する数である。aは3〜40、例えば3〜30又は3〜20、例えば3〜18又は3〜15の平均値を有する数であるかも知れない。
【0067】
用いられ得るいくつかの式(I)のシランの例は:
CH3(OCH2CH2aORSiX3
CH3(OCH(CH3)CH2aORSiX3
CH3(OCH2CH(CH3))aORSiX3
CH3CH2(OCH2CH2aORSiX3
CH3CH2(OCH(CH3)CH2aORSiX3
CH3CH2(OCH2CH(CH3))aORSiX3
CH3(OCH2m(OCH2CH2aORSiX3
CH3(OCH2m(OCH(CH3)CH2aORSiX3
CH3(OCH2m(OCH2CH(CH3))aORSiX3
であり、式中、aは3〜50(例えば3〜30)の平均値を有する数であり;mは1〜10(例えば1〜5)の数であり;XはCl、Br、及び、C1−4分枝鎖状もしくは非分枝鎖状アルコキシ基から選ばれ;そしてRはC1−12アルキレン基、C2−12アルケニレン基、及び、C1−12アルコキシエン基から選ばれる分枝鎖状もしくは非分枝鎖状2価連結基である。
【0068】
分散物にシランを加えることにより、あるいはシランに分散物を加えることにより、シランを用いて与えられる分散物中の二酸化チタン粒子を処理することができる。好ましくは、当該技術分野において既知の通常の混合装置を用いてシランと分散物の混合を行う。
【0069】
適した長さの時間、例えば1分間かもしくはそれより長時間、2分間かもしくはそれより長時間、3分間かもしくはそれより長時間、4分間かもしくはそれより長時間、又は、5分間かもしくはそれより長時間、混合を行うことができる。場合により最高で3時間、例えば最高で2時間又は最高で1時間、又は、最高で45分間、又は、最高で30分間、混合を行うことができる。1つの態様において、5分間〜1時間、例えば10分間〜30分間、混合を行う。
【0070】
二酸化チタン粒子上への0.05〜25%w/w、例えば0.05〜15%w/w;好ましくは0.05〜10%w/w、例えば0.1〜5%w/w又は0.2〜4%w/w、又は、0.3〜3%w/wの添加レベルを与えるようにシランを与えることができる。
【0071】
1つの態様において、二酸化チタン粒子をコーティングせず、二酸化チタン粒子上への0.05〜25%w/w、例えば0.05〜15%w/w;好ましくは0.05〜10%w/w、例えば0.1〜5%w/w、又は、0.2〜4%w/w、又は、0.3〜3%w/wの添加レベルを与えるようにシランを与えることができる。
【0072】
1つの態様において、二酸化チタン粒子をコーティングし、二酸化チタン粒子上への0.05〜25%w/w、例えば0.1〜15%w/w;好ましくは0.5〜10%w/w、例えば1〜7%w/w、又は、1.2〜5%w/w、又は、1.5〜4%w/wの添加レベルを与えるようにシランを与えることができる。
【0073】
本発明において、二酸化チタン粒子上へのシランの添加レベルに言及する時、これはw/w量として、すなわち処理される二酸化チタン粒子の合計重量に関する加えられるシランの合計重量として示される。例えば「シランの添加レベルはTiO2上に2%w/wであった」と記載され得る。
【0074】
分散物中で与えられる二酸化チタン顔料粒子はアナターゼ、ルチル又は非晶質あるいはそれらの混合物であることができる。
【0075】
1つの態様において、二酸化チタンは実質的にルチル晶癖にある。かくして1つの態様に従い、粒子状材料の合計重量に基づいて90重量%より多くの二酸化チタン、好ましくは95%より多くの二酸化チタン、そしてさらに好ましくは99重量%より多くの二酸化チタンがルチル晶癖にある。既知の方法により、例えばX線回折パターンの測定により、ルチル晶癖にある二酸化チタンのパーセントを決定することができる。しかしながらいく
つかの態様において、粒子状材料はアナターゼ結晶形における二酸化チタンを含むことができる。
【0076】
当該技術分野における熟練者が気づく通り、結晶寸法は粒度と異なる。結晶寸法は粒子状材料を構成する基本的な結晶の寸法に関する。これらの結晶は次いでいくらかの程度まで凝集し、より大きな粒子を形成することができる。例えばルチル結晶形における通常の二酸化チタンは約0.17μm〜0.29μmの結晶寸法及び約0.25μm〜0.40μmの粒度を有するが、アナターゼ結晶形における通常の二酸化チタンは約0.10μm〜0.25μmの結晶寸法及び約0.20μm〜0.40μmの粒度を有する。かくして粒度は結晶寸法ならびに調製の間に用いられる磨砕法、例えば乾式、湿式又は練りこみ磨砕(incorporative milling)及び結晶を凝集させる続く処理のような因子により影響される。
【0077】
従って二酸化チタンの粒度は結晶寸法より大きいか又は大体それに等しいことができる。
【0078】
当該技術分野における熟練者に周知の方法により、二酸化チタンの結晶寸法及び粒度を決定することができる。例えばこすり取られた(rubbed out)試料についての透過型電子顕微鏡により、得られる写真の画像分析を以て結晶寸法を決定することができる。ラテックスNANOSPHERETM Size Standards(Thermo
Scientificから入手可能)を用いる引照により、結晶寸法の結果をさらに確認することができる。二酸化チタンの粒度の決定のために用いられ得る方法は、X線沈降である。
【0079】
二酸化チタン粒子が与えられる分散物中の液体担体は、好ましくは極性である。
【0080】
1つの態様において、液体担体は水性であり;これは水又は水溶液であることができる。しかしながら、粒子のための他の極性担体も包含され得、例えばそれらを極性有機溶媒又はアルコールから選ぶことができる。液体担体は2種もしくはそれより多い極性担体の混合物であることもでき、例えばそれは水とアルコールの混合物であることができる。
【0081】
与えられる分散物は、適切には50g/l〜3000g/l、例えば100g/l〜3000g/lの二酸化チタン粒子の濃度を有することができる。それは300g/l〜3000g/l、例えば500g/l〜2700g/l、又は、600g/l〜2500g/l、又は、750g/l〜2300g/lであることができる。
【0082】
1つの態様において、出発分散物中に50g/l〜600g/lのTiO2、例えば50g/l〜500g/lのTiO2がある;例えば100g/l〜600g/lのTiO2、又は、100g/l〜550g/lのTiO2、又は、150g/l〜550g/lのTiO2、又は、150g/l〜500g/lのTiO2があるかも知れない。1つの態様において、初期の分散物中に200g/l〜500g/lのTiO2、例えば200g/l〜450g/lのTiO2、又は、250g/l〜450g/lのTiO2、又は、250g/l〜400g/lのTiO2、又は、300g/l〜400g/lのTiO2がある。
【0083】
該濃度の二酸化チタン粒子を有する分散物を与えるために、分散物は場合により希釈されていることができるか、あるいは濃縮されていることができる。
【0084】
二酸化チタンの調製のために、天然鉱石(例えばイルメナイト及びミネラルルチル(mineral rutile))、濃縮鉱石(enriched ores)(例えばチ
タンスラグ及び選鉱イルメナイト(beneficiated ilmenite))あるいはそれらの混合物を出発原材料として用いることができる。サルフェート法又はクロリド法のようないずれかの適した手段によりこれらの鉱石を加工し、必要な純度及び寸法の二酸化チタン結晶を調製することができる。しかしながら、本発明の方法における分散物の形態で与えられる二酸化チタンは、結局いずれかの適した方法により得られ得、本発明はいずれかの調製方法に制限されないことが認識されるであろう。
【0085】
上記の通り、粒度及び結晶寸法は同じではない。当該技術分野における通常通り、二酸化チタンを磨砕し、所望の粒度分布が得られることを保証することができる。
【0086】
かくして本発明の方法において与えられる分散物の形態における二酸化チタンは、その二酸化チタン分散物において所望の粒度分布が得られることを保証するために、磨砕されていることができる。
【0087】
これに関し、二酸化チタン粒子は、分散物の形態に分散される前に乾式磨砕されたかも知れない。代わりに又はさらに、分散物の形態における二酸化チタン粒子は、例えば微細媒体ミル(fine media mill)中で湿潤状態において磨砕されていることができる。いずれの場合も意図は、本発明の方法において与えられる二酸化チタン粒子を含んでなる分散物が、意図される最終用途に望ましい粒度分布を有することである。
【0088】
本発明の方法において与えられる二酸化チタン粒子を含んでなる分散物は、以下の寸法基準の1つかもしくはそれより多くを満たす二酸化チタン粒子を含有するかも知れない:a)平均粒度(Brookhaven BI−XDCW X−ray Disc Centrifuge Systemを用いて決定される時)は1.45より小さい幾何標準偏差を以て0.29〜0.32ミクロンである。
b)粒子の90重量%かもしくはそれより多くが0.5ミクロンより小さい粒度(直径)を有する。
c)粒子の99重量%かもしくはそれより多くが1.5ミクロンより小さい粒度(直径)を有する。
【0089】
好ましくは、本発明の方法において与えられる二酸化チタン粒子を含んでなる分散物は、それらの寸法基準の2つかもしくはそれより多くを満たす二酸化チタン粒子を含有する;最も好ましくは、それはそれらの寸法基準のすべてを満たす二酸化チタン粒子を含有する。
【0090】
上記で議論した通り、本発明の利益は、式(I)のシランを用いて二酸化チタン粒子を処理することにより、仕上げ段階が完了した後でさえ、超微粉砕段階の必要なく所望の粒度特性がまだ保持されることである。かくして乾燥二酸化チタン生成物を(a)ビヒクル中に容易に分散させることができ(すなわち必要な機械エネルギー投入が低い)、且つ(b)それは適した特性、例えば優れた隠蔽力及び光沢性を有する塗料又はインキ生成物のような顔料生成物を生ずる。
【0091】
二酸化チタン顔料粒子を場合により表面処理又はコーティングすることができる。処理は、意図される生成物の最終用途の観点で望ましい特性を賦与するためであり得る。例えば二酸化チタンの光触媒活性を低下させ、かくして二酸化チタンが導入された顔料生成物が日射にさらされる時に生成物の寿命を延ばすために表面処理を施すことができる。熟練した読者は、そのような二酸化チタン粒子のための表面処理が当該技術分野において既知であることを知っているであろう。
【0092】
従って本発明の方法は、場合により二酸化チタン粒子を乾燥する前にそれらをコーティ
ングする段階を含むことができる。
【0093】
この段階を、適切には式(I)のシランを用いて二酸化チタン粒子を処理する前に行うことができる。
【0094】
使用に適したコーティング剤には無機酸化物及び水和酸化物(hydrous oxides)が含まれる。これらの材料は、粒子の表面上に無機酸化物又は水和酸化物をコーティングするために通常用いられる。コーティング剤としての使用のために挙げることができる典型的な無機酸化物及び水和酸化物には、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、亜鉛、セリウム、リン又は錫の1種もしくはそれより多い酸化物及び/又は水和酸化物が含まれる。
【0095】
例えばコーティング剤はAl23、SiO2、ZrO2、CeO2、P25、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム又はそれらの混合物であることができる。ケイ酸も挙げられ得る。
【0096】
コーティングは濃厚又は非濃厚(non dense)であることができる。例えば濃厚もしくは非濃厚シリカコーティングを用いることができ、及び/又は濃厚もしくは非濃厚アルミナコーティングを用いることができる。
【0097】
1つの態様において、コーティング剤は濃厚形態で適用される二酸化ケイ素を含む。1つのそのような態様において、コーティングは米国特許第2,885,366号明細書に記載されている濃厚シリカコーティングを含む。
【0098】
1層のみのコーティングを適用することができるか、あるいは1層より多いコーティングを適用することができる(例えば2層又は3層)。1層より多いコーティングを適用する場合、各層は同じかもしくは異なることができる。
【0099】
1つの態様において、1層のみの濃厚シリカコーティングを加える。他の態様において、2層の濃厚シリカコーティングを加える。別の態様において、1層の濃厚シリカコーティング及び1層の濃厚アルミナコーティングを加える。
【0100】
1つの態様において、粒子をコーティングするために2種もしくはそれより多いコーティング材料が用いられる。これらのコーティングを1つの操作で同時に、あるいは連続的に適用することができる。同時に適用する場合、異なるコーティング材料を組み合わせて用い、1つの層を形成することができる。連続的に適用する場合、異なるコーティング材料を個別に用いて2つもしくはそれより多い層を形成することができ、各層は異なる組成を有する。
【0101】
例えば1つの態様において、粒子に濃厚シリカのようなシリカをコーティングして1つの層を形成し、ジルコニアもコーティングして別の層を形成する。
【0102】
二酸化チタンの表面上にコーティングされるコーティングの量は、二酸化チタンの合計重量に対して約0.1重量%〜約20重量%のコーティング(例えば無機酸化物及び/又は水和酸化物)の範囲であることができる。1つの態様において、コーティング剤の量は二酸化チタンの合計重量に対して約0.1〜約15重量%又は約0.1〜約10重量%である。
【0103】
例えば最高で二酸化チタンの合計重量に対して約7重量%、例えば約0.1重量%〜約7重量%あるいは例えば約0.5重量%〜約7重量%、あるいは例えば約0.5重量%〜
約6重量%あるいは例えば約1重量%〜約6重量%のレベルで粒子にコーティング剤をコーティングすることができる。二酸化チタンの合計重量に対して約0.1重量%〜約5重量%あるいは例えば約0.5重量%〜約5重量%ならびに特に約1重量%〜約5重量%のレベルで粒子にコーティング剤をコーティングするかも知れない。
【0104】
本発明において、二酸化チタン粒子上へのコーティングの添加レベルに言及する場合、これはw/wの量として、すなわち処理される二酸化チタン粒子の合計重量に関する加えられるコーティング材料の合計重量として与えられる。かくして例えばシリカコーティングを考慮する場合、「SiO2の添加レベルはTiO2上への1.5%w/wであった」と記述され得る。
【0105】
コーティング材料を分散物に加えることにより、あるいは分散物をコーティング材料に加えることにより、コーティング材料を用いて、与えられる分散物中の二酸化チタン粒子を処理することができる。好ましくは、当該技術分野において既知の通常の混合装置を用いて、コーティング材料と分散物の混合を行う。
【0106】
いずれかの適した長さの時間、例えば1分間かもしくはそれより長時間、2分間かもしくはそれより長時間、3分間かもしくはそれより長時間、4分間かもしくはそれより長時間あるいは5分間かもしくはそれより長時間、混合を行うことができる。混合は3時間より長くない時間、例えば2時間より長くない時間、例えば1時間かそれより短時間行われるかも知れない。1つの態様において、混合は5分間〜1時間、例えば10分間〜45分間、例えば20分間〜40分間行われる。
【0107】
1つの態様において、以下の通りにコーティングを適用することができる:二酸化チタンの粒子を含んでなる水性分散物を撹拌のためのタンク中に導入する。次いで分散物の温度を調整し(例えば75℃に)、そのpHを調整する(例えば約10.5に)。次いで撹拌されたタンク中に、所望のコーティングを形成するのに十分な量でコーティング材料を導入する。例えば1重量%の濃厚シリカコーティングを形成するために、撹拌されたタンクに1%のシリカ(二酸化チタン上への%wt/wt)を30分間かけて加え、次いで30分間撹拌する;一方、3重量%の濃厚シリカコーティングを形成するために、3%のシリカ(二酸化チタン上への%wt/wt)を同じやり方で加える。1つの態様において、コーティング材料としてのケイ酸ナトリウムの形態で、撹拌されたタンクにシリカを加えることができる。粒子上に濃厚シリカコーティングを沈殿させるために、例えば撹拌されたタンクに硫酸を加えることにより、pHを調整する。1つの特定の態様において、60分間かけて硫酸を加え、pHを約8.8にし、次いで35分間かけてpHをさらに1.3に調整する。
【0108】
熟練した読者はもちろん、この方法を容易に修正して、所望通りに種々の量のコーティングを加え得ることを認識するであろう。本発明はコーティングの適用それ自体にあるのではない;そのようなコーティングはすでに当該技術分野において既知であり、容易に実施され得る。
【0109】
1つの態様において、分散物内の二酸化チタン粒子のコロイド安定性を維持しながらコーティングを達成する。熟練した読者は認識するであろう通り、分散物中の電解質濃度及び分散物のpHのような因子の制御を介してこれを達成することができる。
【0110】
これに関し、コロイド安定性はコロイド粒子間の反発力を必要とする。しかしながら、水中又は他の溶媒中の二酸化チタン粒子は自然に互いに引き付け合う。粒子上の電荷は静電反発力を生じ、それはこの引力を阻止する(screens)。従ってコロイド安定性があるべき場合、そのような静電反発力は望ましい。この静電反発力の強さは、高い表面
電荷ならびに低い電解質濃度を有することに依存する;高い電解質濃度において静電力の範囲は減少し、従って引力の阻止は有効性が低い。二酸化チタン粒子上の表面電荷はH+/OH-イオンの吸着により決定される;従って粒子上の正味の表面電荷は粒子が分散される溶液のpHにより影響される。あるpHにおいて、粒子は正味の電荷を保有していない(そして静電反発力はないであろう);pHがこのpHから上方に上昇するとともに粒子はだんだん負に帯電し、コロイド安定性は向上するであろう。類似して、pHが低下するとともに粒子はだんだん正に帯電し、コロイド安定性は向上するであろう。
【0111】
凝集していないコーティングされた粒子を、次いで「クロス−フロー」ろ過法、すなわち膜を横切って圧力勾配がある間に膜に平行な方向で分散物を通過させる方法を用いて分散物からろ過する。固体は膜の上に留まりながら系を介して移動し、保持分(retentate)として集められ、一方液体は膜を通過し、透過分(permeate)として集められる。「クロス−フロー」ろ過法の例には接線流ろ過(tangential flow filtration)ならびに膜の面に接線方向で激しく振動を起こすことにより追加のせん断を導入するクロスフローろ過の形態が含まれる。
【0112】
別の態様において、分散物内の二酸化チタン粒子のコロイド安定性を維持せずにコーティングを達成する。これは、工業において現在多くのコーティングが適用される、例えばオキシ水酸化アルミニウムトップコートが中性のpHにおいて二酸化チタン粒子を凝集させる通常の方法である。
【0113】
凝集したコーティングされた粒子を、次いで「デッドエンド(dead end)」ろ過法、すなわち膜に垂直な方向でのみフィルター膜を介して分散物を通過させ、すべての固体をフィルター膜上に残してフィルターケークを形成する方法を用いて分散物からろ過することができる。重力及び/又は他の力(例えば真空又は適用される圧力)を用い、膜を介して分散物を押し通すことができる。「デッドエンド」ろ過法の例には管フィルター(tube filters)、圧力フィルター及びドラムフィルターが含まれる。
【0114】
必要なコーティング/表面処理段階が完了したら、コーティングされた二酸化チタンを場合により洗浄することができる。
【0115】
第1の側面の方法は、粒子を乾燥する前に場合により二酸化チタン粒子の分散物を濃縮する段階を含むことができる。この濃縮段階は、続いて分散物を乾燥するために必要なエネルギーを減少させるであろう。式(I)のシランを用いて二酸化チタン粒子を処理する前又は後に濃縮段階を行うことができる。
【0116】
適切には、粒子を乾燥する前に二酸化チタン粒子の分散物をろ過することにより濃縮段階を達成し、濃厚分散物を与えることができる。
【0117】
濃縮段階の後、濃厚分散物は750g/lかもしくはそれより高い、例えば800g/lかもしくはそれより高い、例えば900g/lかもしくはそれより高い、1000g/lかもしくはそれより高い、1100g/lかもしくはそれより高い、1200g/lかもしくはそれより高い、1300g/lかもしくはそれより高い、1400g/lかもしくはそれより高いあるいは1500g/lかもしくはそれより高い二酸化チタン粒子の濃度を有するであろう。
【0118】
濃厚分散物は、適切には750g/l〜3000g/l、例えば1000g/l〜2500g/lの二酸化チタン粒子の濃度を有することができる。
【0119】
濃縮段階の後、濃厚分散物は800g/l〜3000g/l、例えば800g/l〜2
700g/l、又は、800g/l〜2500g/l、又は、800g/l〜2000g/lの二酸化チタン粒子の濃度を有するかも知れない。好ましくは、濃厚分散物は1000g/l〜3000g/l、例えば1000g/l〜2700g/l、又は、1000g/l〜2500g/l、又は、1000g/l〜2000g/lの二酸化チタン粒子の濃度を有する。1つの態様において、濃厚分散物は1200g/l〜3000g/l、例えば1200g/l〜2700g/l、又は、1200g/l〜2500g/l、又は、1200g/l〜2000g/lの二酸化チタン粒子の濃度を有する。別の態様において、濃厚分散物は1400g/l〜3000g/l、例えば1400g/l〜2700g/l、又は、1400g/l〜2500g/l、又は、1400g/l〜2000g/lの二酸化チタン粒子の濃度を有する。
【0120】
1つの態様において、濃厚分散物は1500g/l〜2000g/lの二酸化チタン粒子の濃度を有する。
【0121】
ろ過段階により分散物を濃縮する段階は、分散物中で粒子が凝集しているか否かに依存して適したろ過法を選択することを必要とするであろう。粒子が凝集している場合、「デッドエンド」ろ過法が適している。粒子が凝集していない場合、「クロスフロー」ろ過法が適している。
【0122】
コーティングが適用されていない場合、一般に粒子は凝集しておらず、「クロスフロー」ろ過法が適しているであろう。さらに、分散物内の二酸化チタン粒子のコロイド安定性を維持しながらコーティングを適用した場合、粒子は凝集しておらず、「クロスフロー」ろ過法が適しているであろう。上記で議論した通り、分散物中の帯電した塩の量及び分散物のpHのような因子の制御を介してこれを達成することができる。
【0123】
対照的に、分散物内の二酸化チタン粒子のコロイド安定性を維持しない間にコーティングを適用した場合、粒子は凝集しており、「デッドエンド」ろ過法が適しているであろう。上記で議論した通り、例えばオキシ水酸化アルミニウムトップコートが中性のpHで二酸化チタン粒子を凝集させる通常のコーティング法は、分散物内の二酸化チタン粒子のコロイド安定性を維持しないであろう。
【0124】
熟練した読者は、コーティングが適用されたか否か、及び、コーティングが適用された場合に分散物内の二酸化チタン粒子のコロイド安定性を維持するために条件が制御されたかどうかに基づいて、粒子が凝集しているか否かがわかるであろうことを認識するであろう。
【0125】
本発明の方法は、分散物を乾燥して乾燥二酸化チタン生成物を与える段階を含む。熟練した読者は、これが二酸化チタンの仕上げ法の間に行われる通常の段階であること、ならびに、この段階は本発明の本質ではないことを認識するであろう。本質的にこの段階を通常通りに行うことができる。
【0126】
従ってこの段階を通常の方法及び装置を用いて行うことができる。例えばオーブン、噴霧乾燥器、バンドドライヤー(band drier)、スピンフラッシュドライヤー(spin flash drier)などの使用により、乾燥を行うことができる。
【0127】
いずれかの適した高められた温度で、例えば50℃かもしくはそれより高温、例えば70℃かもしくはそれより高温あるいは80℃かもしくはそれより高温あるいは90℃かもしくはそれより高温、例えば90〜150℃又は100〜120℃において乾燥を行うことができる。
【0128】
いずれかの適した長さの時間、例えば30分間かもしくはそれより長時間、例えば1時間かもしくはそれより長時間、2時間かもしくはそれより長時間、3時間かもしくはそれより長時間、例えば1〜10時間又は2〜5時間、乾燥を行うことができる。
【0129】
二酸化チタンが通常用いられる通りに乾燥二酸化チタン生成物を用いることができる。本発明の要点は、乾燥段階の後に二酸化チタン生成物が使用のための準備ができており;超微粉砕段階が必要でないことである。
【0130】
1つの態様において、貯蔵のために乾燥二酸化チタン生成物を容器内に包装する。この段階を乾燥段階の直後に行うことができる;超微粉砕段階は必要でない。
【0131】
従って本発明は、包装容器内に含有された二酸化チタン粒子状材料を含んでなる包装生成物を提供する。
【0132】
本発明は、包装容器中に含有された二酸化チタン粒子状材料を含んでなる包装生成物の製造方法も提供し、方法は:
−第1の側面の方法(上記の場合による段階の1つもしくはそれより多くを含む)を行い;そして次いで
−乾燥二酸化チタン生成物を包装容器内に入れる
ことを含んでなる。
【0133】
かくして本発明は、包装容器中に含有された二酸化チタン粒子状材料を含んでなる包装生成物の製造方法を提供し、方法は:
−二酸化チタン粒子を含んでなる分散物を与える段階;
−二酸化チタン粒子を式(I):
II(ORIaORSiX3 (I)
[式中、
Rはケイ素原子に炭素結合している二価のC1−24有機基であり、
IはC2−6アルキレン基であり、
IIは水素、C1−16アルキル基、C2−16アルキルエーテル基又はC2−12アシルオキシ基であり、
Xは加水分解可能な基であり、そして
aは3〜150の値を有する数である]
のシランで処理する段階;
及び次いで
−分散物を乾燥して乾燥二酸化チタン生成物を与える段階;
及び次いで
−乾燥二酸化チタン生成物を包装容器内に入れる段階
を含んでなる。
【0134】
別の態様において、乾燥二酸化チタン生成物をビヒクル中に分散させ、所望の顔料生成物を得る。この段階を乾燥段階の直後に行うことができる;超微粉砕段階は必要でない。
【0135】
ビヒクルは、中に粒子状材料を分散させることができるいずれの成分又は成分の組み合わせであることもでき、樹脂、担体、結合剤又はそれらの混合物が含まれるが、それらに限られない。
【0136】
1つの態様において、ビヒクルは合成又は天然樹脂である。樹脂はポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、アルキド樹脂、アクリル
樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フルオロポリマー又はエポキシ樹脂であることができるが、これらに限られない。
【0137】
別の態様において、ビヒクルは担体である。担体は水性溶媒であることができるが、これに限られない。例えば担体は水であることができるか、あるいは本質的に水から成ることができる。
【0138】
しかしながら担体は場合により非水性溶媒を含むことができ、例えばそれは有機溶媒、例えば石油蒸留物、アルコール、ケトン、エステル、グリコールエーテルなどであることができるか又はそれらを含むことができる。
【0139】
さらに別の態様において、ビヒクルは結合剤である。結合剤は金属ケイ酸塩結合剤、例えばアルミノシリケート結合剤であることができる。結合剤は高分子結合剤、例えばアクリルポリマーもしくはコポリマー結合剤であることもできる。
【0140】
従って本発明は、ビヒクル中に分散された二酸化チタン粒子状材料を含んでなる顔料生成物を提供する。
【0141】
本発明は、ビヒクル中に分散された二酸化チタン粒子状材料を含んでなる顔料生成物の製造方法も提供し、方法は:
−第1の側面の方法(上記の場合による段階の1つもしくはそれより多くを含む)を行い;そして
−乾燥二酸化チタン生成物をビヒクル中に分散させる
ことを含んでなる。
【0142】
かくして本発明は、ビヒクル中に分散された二酸化チタン粒子状材料を含んでなる顔料生成物の製造方法を提供し、方法は:
−二酸化チタン粒子を含んでなる分散物を与える段階;
−二酸化チタン粒子を式(I):
II(ORIaORSiX3 (I)
[式中、
Rはケイ素原子に炭素−結合している二価のC1−24有機基であり、
IはC2−6アルキレン基であり、
IIは水素、C1−16アルキル基、C2−16アルキルエーテル基又はC2−12アシルオキシ基であり、
Xは加水分解可能な基であり、そして
aは3〜150の値を有する数である]
のシランで処理する段階;
及び次いで
−分散物を乾燥して乾燥二酸化チタン生成物を与える段階;
及び次いで
−乾燥二酸化チタン生成物をビヒクル中に分散させる段階
を含んでなる。
【0143】
粒子状材料は、例えば顔料生成物の合計容量に基づいて約1容量%〜約40容量%の濃度で存在することができる。
【0144】
1つの態様において、ビヒクルは合成又は天然樹脂である。樹脂はポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、アルキド樹脂、アクリル
樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フルオロポリマー又はエポキシ樹脂であることができるが、これらに限られない。
【0145】
別の態様において、ビヒクルは担体である。担体は水性溶媒であることができるが、これに限られない。例えば担体は水であることができるか、あるいは本質的に水から成ることができる。
【0146】
しかしながら担体は場合により非水性溶媒を含むことができ、例えばそれは有機溶媒、例えば石油蒸留物、アルコール、ケトン、エステル、グリコールエーテルなどであることができるか又はそれらを含むことができる。
【0147】
さらに別の態様において、ビヒクルは結合剤である。結合剤は金属ケイ酸塩結合剤、例えばアルミノシリケート結合剤であることができる。結合剤は高分子結合剤、例えばアクリルポリマーもしくはコポリマー結合剤であることもできる。
【0148】
顔料生成物は、場合により1種もしくはそれより多い通例の添加物を含むことができる。使用に適した添加物には、増粘剤、安定剤、乳化剤、調質剤(texturizers)、定着剤、UV安定剤、艶消し剤(de−glossing agents)、分散剤、消泡剤、湿潤剤、融合助剤、スペーサー粒子及び殺生物剤(biocides)/殺菌・殺カビ剤(fungicides)が含まれるが、これらに限られない。
【0149】
粒子状材料を含有する顔料生成物をいずれの型の用途においても用いることができ、材料又は基材のいずれの1つもしくはそれより多い表面に適用することもできる。
【0150】
例えば顔料生成物は、塗料、ワニス、インキ、プラスチック、コーティング、ゴムなどであることができるか、あるいはそれら中で使用され得る。
【0151】
さらに、顔料生成物を適用する(既知の手段により)ことができる基材(material substrates)及びそれらの表面は本質的に制限されない;これらには建築物表面、自動車、給水塔、ポータブルコンテナ、路面、編織布、航空機、ボート、船舶、他の型の船艇、窓用形材、サイディング(siding)、標識、家具、フェンス、デッキ及び手すりが含まれるが、これらに限られない。
【0152】
顔料生成物を、製品を形成することができる独立組成物(stand alone composition)として用いることもできる。
【0153】
ここで以下の実施例に言及することにより、制限ではないやり方で本発明をさらに記述する。
【実施例1】
【0154】
コロイド法ルチル製造流(production stream)から微細媒体磨砕された(fine media milled)反応器排出分散物を採取した。この分散物を、水中で約390g/lの二酸化チタンの濃度に調整した。
【0155】
この分散物を、6.6m2の膜面積を有する“Koch SUPER−COR(登録商標)”管状膜を用いるAxium 250 L“Ultrafiltration Pilot Plant”上における希釈により洗浄した。この洗浄は、分散物の導電率を3.5mS/cmから1mS/cmに低下させた。
【0156】
この洗浄された分散物を、次いで“Koch ABCOR−FEG”管状膜を用いて1
100g/lに濃縮した。
【0157】
この濃厚分散物に関する粒度分布を、X−ray Disk Centrifugeを用いて測定した。分散物中の粒子は、0.30ミクロンの平均粒度及び1.33の幾何標準偏差(GSD)を有した。
【0158】
処理前の濃厚分散物に関する粒度分布を示すグラフを図1に示す。
【0159】
処理前の濃厚分散物の光学顕微鏡写真を図2に示す。
【0160】
この濃厚分散物(1100g/l)を、分子式CH3(OCH2CH26-9O(CH23Si(OCH33(“6−9 mPEG”)を有するmPEGシランと37.5分間混合した。シランの添加レベルはTiO2上に2%w/wであった。混合物のpHは7.25であり、温度は37.5℃であった。
【0161】
mPEGシラン処理に続き、分散物をMemmertオーブン中で105℃において4時間15分間乾燥した。
【0162】
乾燥試料を次いでデシケーター中で冷ました。乾燥顔料を微粉砕機(micro pulverisette)中で粉砕し(broken up)、次いで高速分散機において水と混合した。
【0163】
X−ray Disk Centrifuge法を用いて粒度分布を測定した。平均粒度は1.33のGSDを以て0.30ミクロンであった。
【0164】
従ってこれは、1.45より小さい幾何標準偏差を以て0.29〜0.32ミクロンの所望の平均粒度(Brookhaven BI−XDCW X−ray Disc Centrifuge Systemを用いて決定される時)の基準を満たす。
【0165】
処理及び乾燥の後の濃厚分散物の光学顕微鏡写真を図3に示す。
【0166】
処理及び乾燥の後の濃厚分散物に関する粒度分布を示すグラフを図4に示す。
【0167】
粒子の90重量%かもしくはそれより多くが0.43ミクロンより小さい粒度を有すること及び粒子の99重量%かもしくはそれより多くが1.12ミクロンより小さい粒度(直径)を有することがわかる。
【0168】
従ってこれは、粒子の90重量%かもしくはそれより多くが0.5ミクロンより小さい粒度を有し、粒子の99重量%かもしくはそれより多くが1.5ミクロンより小さい粒度を有する所望の基準を満たす。
【0169】
[比較実施例1a]
コロイド法ルチル製造流から微細媒体磨砕された反応器排出分散物を採取した。この分散物を、水中で約390g/lの二酸化チタンの濃度に調整した。
【0170】
この分散物を、6.6m2の膜面積を有する“Koch SUPER−COR(登録商標)”管状膜を用いるAxium 250 L“Ultrafiltration Pilot Plant”上における希釈により洗浄した。この洗浄は、分散物の導電率を3.5mS/cmから1mS/cmに低下させた。
【0171】
この洗浄された分散物を、次いで“Koch ABCOR−FEG”管状膜を用いて1100g/lに濃縮した。
【0172】
この濃厚分散物に関する粒度分布を、X−ray Disk Centrifugeを用いて測定した。分散物中の粒子は、0.30ミクロンの平均粒度及び1.33の幾何標準偏差(GSD)を有した。
【0173】
処理前の濃厚分散物に関する粒度分布を示すグラフを図1に示す。
【0174】
処理前の濃厚分散物の光学顕微鏡写真を図2に示す。
【0175】
シラン処理は行われなかった。
【0176】
シラン処理なしのこの分散物を、Memmertオーブン中で105℃において4時間15分間乾燥した。
【0177】
乾燥試料を次いでデシケーター中で冷ました。乾燥顔料を微粉砕機中で粉砕し、次いで高速分散機において水と混合した。
【0178】
X−ray Disk Centrifuge法を用いて粒度分布を測定した。平均粒度は1.38のGSDを以て0.35ミクロンであった。
【0179】
従ってこれは、0.29〜0.32ミクロンの所望の平均粒度(Brookhaven
BI−XDCW X−ray Disc Centrifuge Systemを用いて決定される時)の基準を満たさない。
【0180】
乾燥の後の濃厚分散物に関する粒度分布を示すグラフを図5に示す。
【0181】
粒子の90重量%かもしくはそれより多くが0.56ミクロンより小さい粒度を有することがわかる。
【0182】
従ってこれは、粒子の90重量%かもしくはそれより多くが0.5ミクロンより小さい粒度を有するという所望の基準を満たさない。
【0183】
乾燥後の濃厚分散物の光学顕微鏡写真を図6に示す。
【0184】
結論
実施例1におけるような本発明に従うシラン処理が所望の粒度特性を有する乾燥試料を生じ、それは処理及び乾燥の前の分散物中の粒子の粒度特性に非常に類似していたことが分かる。乾燥粒子は上記で議論した所望の基準(a)〜(c)のすべて3つを満たした。
【0185】
対照的に、乾燥前に分散物にシラン処理を行わなかった比較実施例1aにおける乾燥試料は、粒度分布に関してより高い平均粒度及びより大きな幾何標準偏差を有した。さらに、それはより長い「尾部」を有し、より大きい割合の粒子が寸法において大きかった。それは上記で議論した所望の基準(a)〜(c)の3つすべてを満たさなかった。
【0186】
かくして本発明に従うシラン処理は、超微粉砕段階を必要とせずに、優れた粒度特性を有する乾燥二酸化チタン粒子を直接生ずる。シラン処理を行わなかった場合、乾燥二酸化チタン粒子は十分に優れた粒度特性を有しておらず、従って塗料又はインキ生成物のような顔料生成物の製造のためにそれを使用する前に乾燥生成物に超微粉砕段階を行う必要が
ある。
【実施例2】
【0187】
コロイド法ルチル製造流から微細媒体磨砕された反応器排出分散物を採取した。この分散物を、水中で約390g/lの二酸化チタンの濃度に調整した。
【0188】
この分散物を、6.6m2の膜面積を有する“Koch SUPER−COR(登録商標)”管状膜を用いるAxium 250 L“Ultrafiltration Pilot Plant”上における希釈により洗浄した。この洗浄は、分散物の導電率を3.5mS/cmから1mS/cmに低下させた。
【0189】
希釈により分散物中のTiO2濃度を350g/lに調整した。
【0190】
次いで粒子をコーティングした。これに関し、分散物のpHを10に調整し、その温度を90℃に上げた。分散物にケイ酸ナトリウムを45分間かけて加え、30分間混合した。SiO2の添加レベルはTiO2上に1.5%w/wであった。硫酸の添加により、分散物のpHを90分間かけて10から8に下げた。次いで分散物を室温に冷ました。
【0191】
このコーティング段階に続いて分散物を洗浄し、1mS/cmに下げ、次いで“Koch SUPER−COR(登録商標)”膜を用いて1000g/lに濃縮した。次いでX−ray Disk Centrifugeを用いて粒度分布を測定した。分散物は0.31ミクロンの粒度及び1.39のGSDを有した。かくしてコーティング法は分散物中の二酸化チタン粒子の粒度を変化させなかった。
【0192】
この1.5%SiO2コーティングされ、濃縮された分散物(1000g/l)を、分子式CH3(OCH2CH29-12O(CH23Si(OCH33(“9−12 mPEG”)を有するmPEGシランと37.5分間混合した。シランの添加レベルはTiO2上に2%w/wであった。混合物のpHは7.25であり、温度は37.5℃であった。
【0193】
mPEGシラン処理に続き、分散物をMemmertオーブン中で105℃において4時間15分間乾燥した。
【0194】
乾燥試料を次いでデシケーター中で冷ました。乾燥顔料を微粉砕機中で粉砕し、次いで高速分散機において水と混合した。
【0195】
X−ray Disk Centrifuge法を用いて粒度分布を測定した。粒度は1.43のGSDを以て0.31ミクロンであった。
【0196】
従ってこれは、1.45より小さい幾何標準偏差を以て0.29〜0.32ミクロンの所望の平均粒度(Brookhaven BI−XDCW X−ray Disc Centrifuge Systemを用いて決定される時)の基準を満たす。
【0197】
[比較実施例2a]
コロイド法ルチル製造流から微細媒体磨砕された反応器排出分散物を採取した。この分散物を、水中で約390g/lの二酸化チタンの濃度に調整した。
【0198】
この分散物を、6.6m2の膜面積を有する“Koch SUPER−COR(登録商標)”管状膜を用いるAxium 250 L“Ultrafiltration Pilot Plant”上における希釈により洗浄した。この洗浄は、分散物の導電率を3.5mS/cmから1mS/cmに低下させた。
【0199】
希釈により分散物中のTiO2濃度を350g/lに調整した。
【0200】
次いで粒子をコーティングした。これに関し、分散物のpHを10に調整し、その温度を90℃に上げた。分散物にケイ酸ナトリウムを45分間かけて加え、30分間混合した。SiO2の添加レベルはTiO2上に1.5%w/wであった。硫酸の添加により、分散物のpHを90分間かけて10から8に下げた。次いで分散物を室温に冷ました。
【0201】
このコーティング段階に続いて分散物を洗浄し、1mS/cmに下げ、次いで“Koch SUPER−COR(登録商標)”膜を用いて1000g/lに濃縮した。次いでX−ray Disk Centrifugeを用いて粒度分布を測定した。分散物は0.31ミクロンの粒度及び1.39のGSDを有した。かくしてコーティング法は分散物中の二酸化チタン粒子の粒度を変化させなかった。
【0202】
シラン処理は行われなかった。
【0203】
シラン処理なしのこの分散物を、Memmertオーブン中で105℃において4時間15分間乾燥した。
【0204】
乾燥試料を次いでデシケーター中で冷ました。乾燥顔料を微粉砕機中で粉砕し、次いで高速分散機において水と混合した。
【0205】
X−ray Disk Centrifuge法を用いて粒度分布を測定した。粒度は1.87のGSDを以て0.41ミクロンであった。
【0206】
従ってこれは、1.45より小さい幾何標準偏差を以て0.29〜0.32ミクロンの所望の平均粒度(Brookhaven BI−XDCW X−ray Disc Centrifuge Systemを用いて決定される時)の基準を満たさない。
【0207】
[比較実施例2b]
コロイド法ルチル製造流から微細媒体磨砕された反応器排出分散物を採取した。この分散物を、水中で約390g/lの二酸化チタンの濃度に調整した。
【0208】
この分散物を、6.6m2の膜面積を有する“Koch SUPER−COR(登録商標)”管状膜を用いるAxium 250 L“Ultrafiltration Pilot Plant”上における希釈により洗浄した。この洗浄は、分散物の導電率を3.5mS/cmから1mS/cmに低下させた。
【0209】
希釈により分散物中のTiO2濃度を350g/lに調整した。
【0210】
次いで粒子をコーティングした。これに関し、分散物のpHを10に調整し、その温度を90℃に上げた。分散物にケイ酸ナトリウムを45分間かけて加え、30分間混合した。SiO2の添加レベルはTiO2上に1.5%w/wであった。硫酸の添加により、分散物のpHを90分間かけて10から8に下げた。次いで分散物を室温に冷ました。
【0211】
このコーティング段階に続いて分散物を洗浄し、1mS/cmに下げ、次いで“Koch SUPER−COR(登録商標)”膜を用いて1000g/lに濃縮した。次いでX−ray Disk Centrifugeを用いて粒度分布を測定した。分散物は0.308ミクロンの粒度及び1.393のGSDを有した。かくしてコーティング法は分散物中の二酸化チタン粒子の粒度を変化させなかった。
【0212】
シラン処理は行われなかった。
【0213】
次いで材料を噴霧乾燥し、1回通過超微粉砕した(single pass micronized)。X−ray Disk Centrifuge法を用いて粒度分布を測定した。
【0214】
1回通過超微粉砕された材料は、1.37のGSDを以て0.34ミクロンの粒度を有した。
【0215】
従ってこれは、平均粒度が大きすぎるので、1.45より小さい幾何標準偏差を以て0.29〜0.32ミクロンの所望の平均粒度(Brookhaven BI−XDCW X−ray Disc Centrifuge Systemを用いて決定される時)の基準を満たさない。
【0216】
2回通過超微粉砕された材料は、1.35の幾何標準偏差を以て0.332の粒度を有した。
【0217】
従って、粒度及びGSDの両方は低下するが、平均粒度がまだ大きすぎるので、これはまだ1.45より小さい幾何標準偏差を以て0.29〜0.32ミクロンの所望の平均粒度(Brookhaven BI−XDCW X−ray Disc Centrifuge Systemを用いて決定される時)の基準を満たさない。
【0218】
結論
実施例2におけるような本発明に従うシラン処理が所望の粒度特性を有するコーティングされ且つ乾燥された試料を生ずることが分かる。乾燥粒子は上記で議論した所望の基準(a)を満たした。この実施例において基準(b)及び(c)は調べられなかった。
【0219】
対照的に、乾燥前に分散物にシラン処理を行わなかった比較実施例2aにおけるコーティングされ且つ乾燥された試料は、粒度分布に関してより高い平均粒度及びより大きな幾何標準偏差を有した。それは上記で議論した所望の基準(a)を満たさなかった。この実施例において基準(b)及び(c)は試験されなかった。
【0220】
さらに、乾燥前に分散物にシラン処理を行わなかった比較実施例2bにおけるコーティングされ且つ乾燥された試料は、超微粉砕の後でさえ実施例2より高い平均粒度を有した。それは上記で議論した所望の基準(a)を満たさなかった。この実施例において基準(b)及び(c)は試験されなかった。
【0221】
従って、乾燥段階の後の超微粉砕の使用は明らかに粒度分布に関する平均粒度及び幾何標準偏差を下げるが、それはこれらの値の両方を、本発明に従うシラン処理の使用により達成され得るレベルまでは下げない。
【0222】
かくして本発明に従うシラン処理は、超微粉砕段階を必要とせずに、優れた粒度特性を有するコーティングされ且つ乾燥された二酸化チタン粒子を直接生ずる。シラン処理を行わなかった場合、コーティングされ且つ乾燥された二酸化チタン粒子は十分に優れた粒度特性を有していなかった。乾燥生成物に超微粉砕段階を行った場合でさえ、粒度特性は有意に向上したが、生成物が塗料又はインキ生成物のような顔料生成物の製造における使用のために理想的になる前に、平均粒度はまださらなる低下を必要とする。
【実施例3】
【0223】
3種のシラン:
−CH3(OCH2CH23O(CH23Si(OCH33(“3 mPEG”)
−CH3(OCH2CH26-9O(CH23Si(OCH33(“6−9 mPEG”)
−CH3(OCH2CH29-12O(CH23Si(OCH33(“9−12 mPEG”)
を用い、実施例1及び2に基づいてさらなる試験を行った。
【0224】
シランの異なる量も用い、1.00%〜3.00%(TiO2上へのw/wシラン)の添加レベルを試験した。
【0225】
二酸化チタン粒子はコーティングされなかった(実施例1におけるように)か、あるいは1.5%SiO2でコーティングされた(実施例2におけるように)。
【0226】
X−ray Disk Centrifuge法を用いて粒度分布を測定した。
【0227】
粒度及びGSDの結果を表1に示す。
【0228】
【表1】
【0229】
平均粒度(Brookhaven BI−XDCW X−ray Disc Centrifuge Systemを用いて決定される時)は、1.33〜1.43の範囲のGSDを以て0.290〜0.313ミクロンの範囲である。
【0230】
これは、0.29〜0.32ミクロンの所望の平均粒度及び1.45より小さい所望の幾何標準偏差を満たしている。
【0231】
一般にコーティングされた生成物のために、所望の平均粒度及び所望の幾何標準偏差の両方が達成されることを保証するために、わずかにより多量のシラン処理が必要であり得る。
【0232】
結論
試験されたすべてのシランに関し、すべての処理レベルにおいて、ならびに粒子がコーティングされているか又はコーティングされていないかにかかわらず、優れた結果が得られることがわかる。
【0233】
従って本発明のシラン処理は、二酸化チタン粒子を乾燥した後の超微粉砕段階を必要とせずに所望の粒度特性、例えば所望の平均粒度及び所望の幾何標準偏差を達成するための手段を提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6