特許第6603710号(P6603710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アグフア−ゲヴエルトの特許一覧

特許6603710導電パターン製造用エッチ抵抗性インクジェットインク
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603710
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】導電パターン製造用エッチ抵抗性インクジェットインク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/36 20140101AFI20191028BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20191028BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20191028BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20191028BHJP
   C09D 11/106 20140101ALI20191028BHJP
【FI】
   C09D11/36
   C09D11/101
   B41M5/00 120
   B41M5/00 100
   B41J2/01 129
   B41J2/01 501
   C09D11/106
【請求項の数】10
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-516851(P2017-516851)
(86)(22)【出願日】2015年9月16日
(65)【公表番号】特表2017-537986(P2017-537986A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(86)【国際出願番号】EP2015071147
(87)【国際公開番号】WO2016050504
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2017年3月28日
(31)【優先権主張番号】14186726.7
(32)【優先日】2014年9月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504376795
【氏名又は名称】アグフア−ゲヴエルト
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トルフ,リタ
(72)【発明者】
【氏名】ロキユフイエ,ヨハン
【審査官】 藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−053177(JP,A)
【文献】 特開2010−152155(JP,A)
【文献】 特開2014−011297(JP,A)
【文献】 特開2005−036181(JP,A)
【文献】 特開平06−206369(JP,A)
【文献】 特開2010−024276(JP,A)
【文献】 特開平02−153909(JP,A)
【文献】 特開昭62−199608(JP,A)
【文献】 特開昭63−120715(JP,A)
【文献】 特開2002−220422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D11/00−13/00
G03C 3/00
G03F7/004−7/04
7/06
7/075−7/115
7/16−7/18
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
H05K 3/10−3/26
3/38
B41J 2/01
2/165−2/20
2/21−2/215
B41M 5/00
5/50
5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性組成物を含有して成る紫外線硬化性インクジェットインクであって、前記重合性組成物の少なくとも80重量%が
a)15.0から70.0重量%の量のアクリルアミド類、
b)20.0から75.0重量%の量の多官能アクリレート、および
c)1.0から15.0重量%の量のカルボン酸基、燐酸基もしくはホスホン酸基含有単官能(メタ)アクリレート、
から成っていて、重量パーセント(重量%)の全部が前記重合性組成物の総重量が基になっており、前記アクリルアミド類がアクリロイルモルホリンである、紫外線硬化性インクジェットインク。
【請求項2】
カルボン酸基、燐酸基もしくはホスホン酸基含有(メタ)アクリレートが前記重合性組成物中に少なくとも1.5重量%存在する請求項記載の紫外線硬化性インクジェットインク。
【請求項3】
前記カルボン酸基、燐酸基もしくはホスホン酸基含有(メタ)アクリレートがアクリル酸2−カルボキシエチル、こはく酸2−アクリロイルエチルおよび2−ヒドロキシエチルメタアクリレートホスフェートから成る群より選択される請求項1からのいずれか1項記載の紫外線硬化性インクジェットインク。
【請求項4】
前記多官能アクリレートがジプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコール(2xプロポキシル化)ジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、エトキシル化tmpta、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジトリメチロイルプロパンテトラアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレートおよびポリエチレングリコールジアクリレートから成る群より選択される請求項1からのいずれか1項記載の紫外線硬化性インクジェットインク。
【請求項5】
前記重合性組成物が1種以上のアクリルアミド類、1種以上の多官能アクリレートおよび1種以上のカルボン酸基、燐酸基もしくはホスホン酸基含有(メタ)アクリレートから成る請求項1からのいずれか1項記載の紫外線硬化性インクジェットインク。
【請求項6】
界面活性剤を紫外線硬化性インクジェットインクの総重量を基準にして0から0.05重量%含有する請求項1からのいずれか1項記載の紫外線硬化性インクジェットインク。
【請求項7】
インクジェット印刷方法であって、
a)金属表面に紫外線硬化性インクジェットインクを印刷して硬化させることで前記金属表面に保護された領域を生じさせ、
b)前記金属表面の保護されていない領域から金属をエッチングで除去し、そして
c)前記金属表面の前記保護された領域から硬化した紫外線硬化性インクジェットインクを少なくともある程度除去する、
段階を包含し、前記紫外線硬化性インクジェットインクが重合性組成物を含有して成っていて、前記重合性組成物の少なくとも80重量%が
a)15.0から70.0重量%の量のアクリルアミド類、
b)20.0から75.0重量%の量の多官能アクリレート、および
c)1.0から15.0重量%の量のカルボン酸基、燐酸基もしくはホスホン酸基含有(メタ)アクリレート、
から成ることを特徴とし、ここで、重量パーセント(重量%)の全部が前記重合性組成物の総重量が基になっており、前記アクリルアミド類がアクリロイルモルホリンである、インクジェット印刷方法。
【請求項8】
前記重合性組成物の化合物にアクリロイルモルホリン、アクリル酸2−カルボキシエチル、2−ヒドロキシエチルメタアクリレートホスフェート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコール(2xプロポキシル化)ジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートおよびアクリル酸2−(2−ビニルオキシ−エトキシ)−エチルから選択される群から選択した1種以上の化合物を含める請求項記載のインクジェット印刷方法。
【請求項9】
導電パターンの製造方法であって、請求項からのいずれか記載のインクジェット印刷方法を包含する方法。
【請求項10】
装飾的にエッチングされた金属板の製造方法であって、請求項からのいずれか記載のインクジェット印刷方法を包含する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエッチ抵抗性(etch−resistant)インクジェットインクおよび導電パターン製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷された回路基板の製造は、一般に、非導電基質に結合させておいた銅板にフォトレジスト層をコーティングし、所望導電パターンを有する陰画の一時的紫外線マスクを塗布し、前記フォトレジスト層を紫外線に暴露させ、非暴露フォトレジスト層を現像液で除去し、不必要な銅をエッチングで除去し、暴露フォトレジスト層をアルカリ性ストリッピング溶液(stripping bath)で除去することで、前記非導電基質上に存在する所望の導電銅パターンのみを残存させることで行われる。
【0003】
エッチングは化学品、通常は強酸または腐食剤を用いて金属表面の非保護部分に切り込みを入れる工程である。現像液を用いてフォトレジスト層をしばしば50μm以上の厚みで除去すると結果として余分な費用と化学廃棄物が生じてしまう。従って、エッチ抵抗性インクジェットインク層を銅板に紫外線硬化性インクジェット印刷しそしてエッチング後にそれをアルカリ性ストリッピング溶液で薄片状に除去して導電銅パターンを露出させることによって現像段階を省くことができないかについて調査されてきた。
【0004】
回路基板をインクジェット印刷するための紫外線硬化性でエッチ抵抗性のインクが特許文献1に開示されており、それは少なくとも2種類のアクリレート成分(それの中の1種類はペンダント型カルボキシル基を有する芳香族アクリレートでありそしてもう1種類はアクリレート化エポキシ単量体もしくは二量体である)を有する樹脂配合物、光開始剤および有機担体を含有して成る。メタノールおよびメチルエチルケトンから成る好適な有機担体をインク組成物の40から90重量%の範囲で用いている。そのような揮発性の有機溶媒を用いると潜在的にインクジェットプリントヘッドに問題が生じることで工業的環境工程で信頼できるインクジェット印刷を行うことが困難になってしまう。有機溶媒の量を少なくするとインクの粘度があまりにも高くなってしまう、と言うのは、フォトレジストコーティングの調製で伝統的に用いられているある種の芳香族アクリレート化合物は非常に高い粘度を有するからである。例えば、特許文献1のあらゆる実施例で用いられているビスフェノールAのエトキシル化ジアクリレート(PhotomerTM 4028)が25℃で示す粘度は800から1200mPa.sである。印刷されたインク層がエッチ抵抗性でありながらエッチング後に容易に除去可能であるように接着力が良好なバランスを示すようにするには、そのような芳香族アクリレート化合物が必須である、と言うのは、特に本産業では多種多様なエッチング条件およびエッチング液が用いられているからである。
【0005】
金属または合金表面のエッチング方法が特許文献2に開示されており、その方法は、金属または合金の選択した領域にエッチ抵抗性インクをインクジェット印刷で塗布し、そのエッチ抵抗性インクを化学作用のある放射線および/または粒子ビーム放射線に暴露させることで重合を起させ、場合によりそのエッチ抵抗性インクを熱処理し、そして次にその暴露させた金属または合金を化学的エッチング工程で除去することを含んで成り、そのエッチ抵抗性インクには実質的に溶媒が入っていない。
【0006】
別の問題は、アルカリ性ストリッピング溶液中に薄片は生じてしまうことにある。ストリッピング溶液は一般にアルカリ性の金属水酸化物、例えばナトリウムまたはカリウムの水酸化物であるか或はアミン、例えばモノまたはトリエタノールアミンおよび水酸化テト
ラメチルアンモニウムなどが基になっている。そのようなストリッピング溶液は三次元構造を有する架橋点(レジストを重合させている間に生じる)の所の重合体鎖をレジストと銅表面の間の結合が破壊される前に分解させる。ストリッピング溶液の作業寿命を長くするには、レジストの剥がれた薄片を除去する目的でその溶液を濾過する必要がある。その薄片の大きさがあまりにも大きいと、それがストリッピング装置に粘着する傾向があることで、製造工程の滑らかな稼働が邪魔される。その薄片があまりにも小さいと、それらはフィルターを通り抜けてストリッピング溶液の中に戻ってしまう。しばらくするとそのような小さな薄片が集積することでまた製造工程の滑らかな稼働が邪魔され始める。そのような非常に小さな薄片はストリッピングラインのスプレーノズルを詰まらせる傾向がある。剥がれる薄片の大きさは、ストリッピング溶液の種類、ストリッピング溶液の濃度、ストリッピング溶液の温度およびストリッピング装置のデザインなどに依存する。このような数多くの影響を与える要因によって薄片の大きさを所望の大きさに制御するのは非常に困難である。
【0007】
従って、薄片の生成およびストリッピングに関して全く問題を示さずかつ幅広い範囲のエッチング液およびエッチング条件に適用可能でありかつ工業的エッチング工程における信頼できるインクジェット印刷に適するように改良された低粘度の放射線硬化性インクジェットインクが必要とされているままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5270368号(VIDEOJET)
【特許文献2】WO 2004/106437 A(AVECIA)
【発明の概要】
【0009】
上述した問題を克服する目的で、本発明の好適な態様では、請求項1で請求する如き紫外線硬化性インクジェットインクを提供する。
【0010】
非常に特殊な組成物を持たせた紫外線硬化性インクジェットインクが硬化速度、エッチ抵抗性、ストリッピング性および薄片生成のあらゆる要求を組み合わせて満足させ得ることを見いだした。
【0011】
本明細書の以下に行う説明から本発明のさらなる目的が明らかになるであろう。
【0012】
[態様の説明]
定義
用語“単官能”は、単量体またはオリゴマーが含有するフリーラジカル重合性基が1個であることを意味する。
【0013】
用語“多官能”は、単量体またはオリゴマーが含有するフリーラジカル重合性基が2個以上であることを意味する。例えば、多官能アクリレートがフリーラジカル重合性基として含有するアクリレート基は2、3またはそれ以上である。
【0014】
用語“アルキル”はアルキル基の炭素原子数各々に可能なあらゆる変形、即ちメチル、エチル、炭素原子数が3のアルキルのn−プロピルおよびイソプロピル、炭素原子数が4の場合のn−ブチル、イソブチルおよびt−ブチル、炭素原子数が5の場合のn−ペンチル、1,1−ジメチル−プロピル、2,2−ジメチルプロピルおよび2−メチル−ブチルなどを意味する。
【0015】
特に明記しない限り、置換もしくは非置換アルキル基は好適にはC1からC6−アルキル
基である。
【0016】
特に明記しない限り、置換もしくは非置換アルケニル基は好適にはC1からC6−アルケニル基である。
【0017】
特に明記しない限り、置換もしくは非置換アルキニル基は好適にはC1からC6−アルキニル基である。
【0018】
特に明記しない限り、置換もしくは非置換アラルキル基は好適にはC1からC6−アルキル基を1、2、3またはそれ以上含有するフェニルまたはナフチル基である。
【0019】
特に明記しない限り、置換もしくは非置換アルカリール基は好適にはフェニル基またはナフチル基を含有するC7からC20−アルキル基である。
【0020】
特に明記しない限り、置換もしくは非置換アリール基は好適にはフェニル基またはナフチル基である。
【0021】
特に明記しない限り、置換もしくは非置換ヘテロアリール基は好適には1、2または3個の酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子またはこれらの組み合わせに置き換わっている5員もしくは6員環である。
【0022】
用語“置換”、例えば置換アルキル基における置換は、アルキル基がそのような基に通常存在する原子、即ち炭素および水素以外の他の原子で置換されていてもよいことを意味する。例えば、置換アルキル基はハロゲン原子またはチオール基を含有していてもよい。非置換アルキル基が含有するのは炭素および水素原子のみである。
【0023】
特に明記しない限り、置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基、置換アラルキル基、置換アルカリール基、置換アリールおよび置換ヘテロアリール基は好適にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチルおよびt−ブチル、エステル、アミド、エーテル、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、スルホキサイド、スルホン、スルホン酸エステル、スルホンアミド、−Cl、−Br、−I、−OH、−SH、−CNおよび−NO2から成る群より選択される1個以上の置換基で置換されている。
【0024】
紫外線硬化性インクジェットインク
本発明の好適な態様に従う紫外線硬化性インクジェットインクは重合性組成物を含有して成り、ここで、前記重合性組成物の少なくとも80重量%、好適には少なくとも90重量%、最も好適には100重量%が、
a)15.0から70.0重量%の量のアクリルアミド類(以下、「アクリルアミド」ということもある)
b)20.0から75.0重量%の量の多官能アクリレート、および
c)1.0から15.0重量%の量のカルボン酸基、燐酸基もしくはホスホン酸基含有単官能(メタ)アクリレート、
から成り、ここで、重量パーセント(重量%)は全部が前記重合性組成物の総重量が基になっている。
【0025】
本紫外線硬化性インクジェットインクはまたカチオン硬化性であってもよいが、好適にはフリーラジカル紫外線硬化性インクジェットインクである。この紫外線硬化性インクジェットインクの硬化を電子線を用いて起させることも可能であるが、好適には紫外光を用いて硬化を起させる。
【0026】
本紫外線硬化性インクを無色のインクジェットインクにすることも可能であるが、好適にはそれに少なくとも1種の着色剤を含有させる。その利点は、印刷されたインクパターンを明瞭に見ることができることで取り扱い中に金属表面を配向させることができかつPCB製造工程の品質を裸眼で可視的に検査できる点にある。前記着色剤は染料または顔料であってもよい。その着色剤が顔料の場合には好適には分散剤、より好適には高分子量分散剤を存在させる。その顔料を入れた硬化性インクに分散相乗剤を含有させることでインクの分散品質および安定性を向上させることができる。しかしながら、最も好適な着色剤は、インクジェット印刷工程で紫外線による硬化を起させる段階に生き残る染料である。染料は、顔料および分散剤とは異なり、通常はエッチングおよびストリッピング溶液中にスラッジを生じさせない。
【0027】
信頼できる工業的インクジェット印刷を行う目的で、本紫外線硬化性インクジェットインクの粘度を好適には45℃で20mPa.s以下、より好適には45℃で1および18mPa.s、最も好適には45℃で4および14mPa.sの範囲にする。
【0028】
良好なイメージ品質および接着力を得る目的で、本紫外線硬化性インクジェットインクの表面張力を好適には25℃で18mN/mから70mN/mの範囲、より好適には25℃で約20mN/mから約40mN/mの範囲にする。
【0029】
インクジェット印刷および導電パターン製造方法
本発明の好適な態様に従うインクジェット印刷は、a)紫外線硬化性インクジェットインクを金属表面に印刷して硬化させることで前記金属表面に保護された領域を生じさせ、b)その金属表面の保護されていない領域から金属をエッチングで除去しそしてc)その金属表面の保護された領域から硬化した紫外線硬化性インクジェットインクを少なくともある程度除去する段階を包含し、ここで、前記紫外線硬化性インクジェットインクは重合性組成物を含有して成り、ここで、前記重合性組成物の少なくとも80重量%が、
a)15.0から70.0重量%の量のアクリルアミド、
b)20.0から75.0重量%の量の多官能アクリレート、および
c)1.0から15.0重量%の量のカルボン酸基、燐酸基もしくはホスホン酸基含有単官能(メタ)アクリレート、
から成り、ここで、重量パーセント(重量%)は全部が前記重合性組成物の総重量が基になっている。
【0030】
1つの好適な態様では、本インクジェット印刷方法を導電パターンの製造で用いる。この場合の金属表面は好適には金属箔、最も好適に基質に付着させておいた銅箔である。金属板に接着させる基質の種類にはそれが非導電性である限り実際上制限はない。その基質はセラミック、ガラス、プラスチック、例えばポリイミドなどで作られていてもよい。その金属板、通常は厚みが9から105μmの範囲の金属板を当該基質に接着させるが、その金属板は好適には銅板である、と言うのは、銅は高い導電性を示しかつ相対的に安価であるからである。
【0031】
別の好適な態様では、本インクジェット印刷方法を装飾的にエッチングされた金属板の製造で用いる。この場合、好適には固体状の金属板を用いる。しかしながら、また、基質に取り付けておいた金属箔を用いることも可能である。金属箔に結合させる基質の種類には実際上制限はない。その基質はセラミック、ガラスまたはプラスチックで出来ていてもよいか、或は二次的(より安価な)金属板でさえあってもよい。その金属はまた合金であってもよい。
【0032】
導電および装飾的パターンの両方の場合とも、紫外線硬化性インクジェットインクで印刷してエッチングを受けさせる金属もしくは合金基質に好適には銅を含有させる。
【0033】
金属表面の性質には制限はない。金属表面を好適には銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、錫、チタンまたは亜鉛で構成させるが、またそれはそのような金属を含有する合金であってもよい。非常に好適な態様では、金属表面を銅で構成させる。銅は高い導電性を示しかつ相対的に安価な金属であることから、印刷回路基板の製造に非常に適する。
【0034】
金属表面は自己支持型であってもよいか或は支持体上に存在していてもよい。その支持体は、PCBの製造で通常用いられる如き柔軟性のない支持体であってもよいが、また例えばポリエチレンテレフタレートまたはポリイミドなどで作られた柔軟な基質であってもよい。
【0035】
装飾的金属板を製造しようとする時には一般に自己支持型金属表面を用いる。そのような装飾的金属板は純粋に装飾的な目的以外の目的、例えば情報を与える目的なども果たし得る。例えば、エッチ抵抗性紫外線硬化性インクジェットインクを情報、例えば個人または会社の名称などとして印刷した後にそれを除去する結果としてつや消しエッチングされた背景に光り輝く名称が現われるようにしたアルミニウム製ネームプレートもまた装飾的要素を含有する装飾的金属板であると見なされる。エッチングによって金属表面の光学的特性を変化させる、例えば光沢などを変化させる。硬化させた紫外線硬化性インクジェットインクを金属表面から除去すると、エッチングされた金属表面とエッチングされなかった金属表面の間に美的効果が作り出される。
【0036】
装飾的金属板の別の態様における金属表面は自己支持型ではなく、エッチングによる除去を行うと支持体上に色が現われるか或は情報が現われる。
【0037】
本インクジェット印刷方法の好適な態様では、金属表面に本紫外線硬化性インクジェットインクを印刷する前にそれを奇麗にしておく。このことは特に手袋を着用しないで金属表面を手で取り扱った時などに好ましい。その洗浄によって本紫外線硬化性インクジェットインクと金属表面の接着力に影響を与える可能性のある粉じん粒子および油を除去する。
【0038】
本インクジェット印刷方法の段階b)に示した如き金属表面のエッチングをエッチング液を用いて実施する。そのエッチング液は好適にはpHが<3または8<pH<10の水溶液である。
【0039】
好適な態様におけるエッチング液は、pHが2未満の酸性水溶液である。その酸性エッチング液は好適には硝酸、ピクリン酸、塩酸、フッ化水素酸および硫酸から成る群より選択した少なくとも1種の酸を入れた液である。
【0040】
当該技術分野で公知の好適なエッチング液には、Kalling’s N°2、ASTM N° 30、Kellers Etch、Klemm’s Reagent、Kroll’s Reagent、Marble’s Reagent、Murakami’s
Reagent、PicralおよびVilella’s Reagentが含まれる。
【0041】
別の好適な態様におけるエッチング液はpHが9以下のアルカリ性水溶液である。そのアルカリ性エッチング液は好適にはアンモニアまたは水酸化アンモニウム、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムから成る群より選択した少なくとも1種の塩基が入っている液である。
【0042】
エッチング液にはまた金属塩、例えば二塩化銅、硫酸銅、フェリシアン化カリウムおよ
び三塩化鉄などが入っていてもよい。
【0043】
エッチングを好適には数秒から数分、より好適には5から150秒の時間的枠で実施する。エッチングを好適には35から50℃の範囲の温度で実施する。
【0044】
エッチングの後に好適には水を用いた濯ぎを実施していくらか残存するエッチング液を除去する。
【0045】
エッチング後、例えば電気もしくは電子機器が残の金属表面(導電パターン)に接触することができるか或はエッチングされた金属板の装飾的特徴を完全に見ることができるように、その硬化させた紫外線硬化性インクジェットインクを金属表面から少なくともある程度除去する必要がある。例えば、電子部品、例えばトランジスターなどがその印刷回路基板上の導電(銅)パターンと電気的に接触し得るようにする必要がある。好適な態様では、その硬化させた紫外線硬化性インクジェットインクを金属表面から完全に除去する。
【0046】
好適な態様では、その硬化させた紫外線硬化性インクジェットインクをその保護された領域から段階c)でアルカリ性ストリッピング溶液を用いて除去する。そのようなアルカリ性ストリッピング溶液は一般にpHが>10の水溶液である。
【0047】
別の態様では、その硬化させた紫外線硬化性インクジェットインクをその保護された領域から段階c)で乾式層剥離を用いて除去する。“乾式除去”の技術は現在のところ印刷回路基板製造技術で未知であるが、製造工程にいくつかの生態学的および経済的利点をもたらす。乾式除去を用いると腐食性のあるアルカリ性ストリッピング溶液を用いる必要がなくなることで本質的に液状廃棄物が生じなくなるばかりでなくまた生産率も高くなり得る。乾式除去は例えば接着性箔およびロールツーロール(roll−to−roll)積層−層剥離装置を用いることなどで実施可能である。最初に、その接着性箔の接着側に金属表面に存在させる硬化紫外線硬化性インクジェットインクを積層させた後にその硬化紫外線硬化性インクジェットインクを金属表面から除去することで層剥離を起させる。ロールツーロール積層−層剥離装置を用いる層剥離は数秒間で実施可能であると同時にアルカリによる除去に要する時間は数分間であり得る。
【0048】
アクリルアミド
本発明に従う紫外線硬化性インクジェットインクに含める重合性組成物にアクリルアミドを少なくとも15.0から70.0重量%、好適には少なくとも20.0から65.0重量%、最も好適には少なくとも30.0から60.0重量%含有させるが、重量パーセント(重量%)は全部が前記重合性組成物の総重量が基になっている。
【0049】
単一のアクリルアミドまたはアクリルアミド混合物を用いることができる。
【0050】
好適なアクリルアミドを表1に開示する。
【0051】
【表1】
【0052】
本紫外線硬化性インクジェットインクの好適な態様におけるアクリルアミドは環式アクリルアミドである。
【0053】
本紫外線硬化性インクジェットインクの最も好適な態様におけるアクリルアミドはアクリロイルモルホリンである。
【0054】
多官能アクリレート
本発明に従う紫外線硬化性インクジェットインクに含める重合性組成物に多官能アクリレートを少なくとも20.0から75.0重量%、好適には少なくとも30.0から65.0重量%、最も好適には少なくとも40.0から55.0重量%含有させるが、重量パーセント(重量%)は全部が前記重合性組成物の総重量が基になっている。
【0055】
単一の多官能アクリレートまたは多官能アクリレート混合物を用いることができる。
【0056】
好適な態様では、多官能アクリレートをジプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコール(2xプロポキシル化)ジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジトリメチロイルプロパンテトラアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレートおよびポリエチレングリコールジアクリレートから成る群より選択する。
【0057】
本紫外線硬化性インクジェットインクの最も好適な態様における多官能アクリレートにはネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレートが含まれる。
【0058】
酸基含有(メタ)アクリレート
本発明に従う紫外線硬化性インクジェットインクに含める重合性組成物にカルボン酸基、燐酸基もしくはホスホン酸基を含有する(メタ)アクリレートを少なくとも1から15重量%、好適には少なくとも2から12重量%、最も好適には少なくとも4から8重量%含有させるが、重量パーセント(重量%)は全部が前記重合性組成物の総重量が基になっている。
【0059】
カルボン酸基含有単官能(メタ)アクリレートの適切な例には、式(I):
【0060】
【化1】
【0061】
[式中、
Rは水素原子またはメチル基、好適には水素原子を表しそしてZは二価の有機基を表す]で表される化合物が含まれる。
【0062】
Zの好適な例は、*−(CH2)n−*[ここで、nは2から12の整数を表す]、*−CH2−CH2−O−CO−Z’−*[ここで、Z’は下記から選択される二価の有機基を表す]、*−C6H4−**−C6H4−(CH2)n−*[ここで、nは1から12の整数を表す]、*−(CH2)n−C6H4−*[ここで、nは1から12の整数を表す]、および*−(CH2)n−O−C6H4−*[ここで、nは1から12の整数を表す]であり、ここで、*は結合部位を表す。
【0063】
カルボン酸基を含有する(メタ)アクリレートの好適な例を表2に開示する。
【0064】
【表2】
【0065】
燐酸基もしくはホスホン酸基を含有する(メタ)アクリレートの好適な例には、2−(メタアクリロイルオキシ)エチルホスフェート、ヒドロキシエチルメタアクリレートホスフェート、ビス−(2−メタアクリロイルオキシエチル)ホスフェートが含まれる。
【0066】
燐酸基を含有する(メタ)アクリレートの好適な例は、式P−1またはP−2:
【0067】
【化2】
【0068】
に従う化合物であり、ここで、RはCn2n+1を表しそしてnは6から18の範囲の整数を表す。
【0069】
燐酸基を含有する(メタ)アクリレートの好適な例を表3に開示する。
【0070】
【表3】
【0071】
本紫外線硬化性インクジェットインクの特に好適な態様では、カルボン酸基、燐酸基もしくはホスホン酸基を含有する(メタ)アクリレートをアクリル酸2−カルボキシエチル、こはく酸2−アクリロイルエチルおよび2−ヒドロキシエチルメタアクリレートホスフェートから成る群より選択する。
【0072】
他の合性化合物
この上に示した重合性化合物以外の他の重合性化合物を本紫外線硬化性インクジェットインクに0から20重量%、より好適には15重量%以下、最も好適には10重量%以下の量で存在させてもよいが、重量パーセント(重量%)は全部が前記重合性組成物の総重量が基になっている。
【0073】
そのような他の重合性化合物は好適には1種以上の単量体、オリゴマーおよび/またはプレポリマーから成る。そのような単量体、オリゴマーおよび/またはプレポリマーは官能性を様々な度合で有する可能性があり、単官能、二官能、三官能およびそれより高い官能性を示す単量体、オリゴマーおよび/またはプレポリマーの組み合わせを含有する混合物を用いることも可能である。
【0074】
特に好適な他の単量体およびオリゴマーはEP 1911814 A(AGFA)の[0106]から[0115]に挙げられているそれらである。
【0075】
着色剤
本紫外線硬化性インクジェットは実質的に無色のインクジェットインクであってもよいが、好適には本紫外線硬化性インクジェットインクに少なくとも1種の着色剤を含有させる。その着色剤によって一時的マスクを導電パターン製造業者が明確に見ることができることで品質の可視的検査が可能になる。
【0076】
金属板に付着させる硬化インクジェットインクパターンおよび紫外線硬化性インクジェットインクに入れる着色剤は顔料または染料であってもよいが、好適には紫外線硬化性インクジェットインクのインクジェット印刷工程中の紫外線硬化段階によって染み出すことがない染料である。
【0077】
顔料は黒色、白色、シアン、赤紫色、黄色、赤色、オレンジ色、紫色、青色、緑色、褐色、それらの混合物などであってもよい。着色顔料はHERBST、Willy他のIn
dustrial Organic Pigments、Production、Properties、Applications、第3版、Wiley−VCH、2004、ISBN 3527305769に開示されているそれらから選択可能である。
【0078】
適切な顔料がWO 2008/074548(AGFA GRAPHICS)のパラグラフ[0128]から[0138]に開示されている。
【0079】
インクジェットインクに入れる顔料の粒子はインクジェット印刷装置、特に噴出ノズルの所を通るインクが自由に流れるに充分なほど小さくなければならない。また、色強度が最大限になりかつ沈降速度が遅くなるように小さい粒子を用いる方が好ましい。最も好適には、顔料の平均粒径を150nm以下にする。顔料粒子の平均粒径の測定を好適には動的光散乱の原理が基になったBrookhaven Instruments Particle Sizer BI90plusを用いて行う。
【0080】
一般に、染料が示す光退色速度の方が顔料のそれよりも速いが、噴出性の問題の原因にならない。アントラキノン染料が紫外線硬化性インクジェット印刷で用いられる通常の紫外線硬化条件下で示す光退色は僅かのみであることを見いだした。
【0081】
好適な態様における紫外線硬化性インクジェットインクに入れる着色剤はアントラキノン染料、例えばLANXESSのMacrolexTM Blue 3R(CASRN 325781−98−4)である。
【0082】
他の好適な染料には、クリスタルバイオレットおよび銅フタロシアニン染料が含まれる。
【0083】
好適な態様では、着色剤を紫外線硬化性インクジェットインクの総重量を基準にして0.5から6.0重量%、より好適には1.0から2.5重量%の量で存在させる。
【0084】
高分子量分散剤
本紫外線硬化性インクジェットインクに入れる着色剤が顔料の場合、その顔料を分散させる目的で、本紫外線硬化性インクジェットインクに好適には分散剤、より好適には高分子量分散剤を含有させる。
【0085】
適切な高分子量分散剤は、2種類の単量体から作られた共重合体であるが、それに3種類、4種類、5種類またはそれ以上の種類の単量体を含有させることも可能である。その高分子量分散剤の特性は当該単量体の性質およびそれらが重合体中で示す分布の両方に依存する。共重合体である分散剤に好適には下記の重合体組成を持たせる:
・ 単量体を統計学的に重合(例えば単量体AおよびBを重合させてABBAABABにする)、
・ 単量体を交互に重合させる(例えば単量体AおよびBを重合させてABABABABにする)、
・ 単量体を勾配(先細)重合させる(例えば単量体AおよびBを重合させてAAABAABBABBBにする)、
・ ブロック共重合体(例えば単量体AおよびBを重合させてAAAAABBBBBBにする)[ブロック各々のブロック長(2、3、4、5またはそれ以上)が高分子量分散剤の分散能力にとって重要である]、
・ グラフト共重合体(グラフト共重合体は重合体側鎖が重合体バックボーンに結合しているバックボーンで構成されている)、および
・ そのような重合体の混合形態、例えばブロック状勾配共重合体。
【0086】
適切な高分子量分散剤がEP 1911814 A(AGFA)の中の“Dispersants”のセクション、より具体的には[0064]から[0070]および[0074]から[0077]に挙げられている。
【0087】
高分子量分散剤の商業的例は下記である:
・ BYK CHEMIE GMBHから入手可能なDISPERBYKTM 分散剤、
・ NOVEONから入手可能なSOLSPERSETM 分散剤、
・ NOVEONのTEGOTM DISPERSTM 分散剤、
・ MUENZING CHEMIEのEDAPLANTM 分散剤、
・ LYONDELLのETHACRYLTM 分散剤、
・ ISPのGANEXTM 分散剤、
・ CIBA SPECIALTY CHEMICALS INCのDISPEXTM およびEFKATM 分散剤、
・ DEUCHEMのDISPONERTM 分散剤、および
・ JOHNSON POLYMERのJONCRYLTM 分散剤。
【0088】
光開始剤および光開始系
本紫外線硬化性インクジェットインクに少なくとも1種の光開始剤を含有させるが、複数の光開始剤および/または共開始剤を含有する光開始系を含有させることも可能である。
【0089】
本紫外線硬化性インクジェットインクに入れる光開始剤は好適にはフリーラジカル開始剤、より具体的にはノリッシュI型開始剤またはノリッシュII型開始剤である。フリーラジカル光開始剤は、化学作用のある放射線に暴露された時にフリーラジカルを生成することで単量体およびオリゴマーの重合を開始させる化学的化合物である。ノリッシュI型開始剤は、励起後に開裂を起して直ちに開始用ラジカルを発生する開始剤である。ノリッシュII型開始剤は、化学作用のある放射線によって活性化して実際の開始用フリーラジカルになる二次的化合物から水素を引き抜くことによってフリーラジカルを生成する光開始剤である。そのような二次的化合物は重合相乗剤または共開始剤と呼ばれる。本発明ではI型およびII型両方の光開始剤を単独または組み合わせて用いることができる。
【0090】
適切な光開始剤がCRIVELLO、J.V.他のPhotoinitiators for Free Radical Cationic and Anionic Photopolymerization、第2版、BRADLEY、G.編集、London、UK:John Wiley and Sons Ltd、1998、287−294頁に開示されている。
【0091】
光開始剤の具体例には、これらに限定するものでないが、下記の化合物またはそれらの組み合わせ:ベンゾフェノンおよび置換ベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン、例えばイソプロピルチオキサントンなど、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、2,4,6 トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンまたは5,7−ジヨード−3−ブトキシ−6−フルオロンが含まれ得る。
【0092】
適切な商業的光開始剤には、IrgacureTM 184、IrgacureTM 50
0、IrgacureTM 369、IrgacureTM 1700、IrgacureTM
651、IrgacureTM 819、IrgacureTM 1000、IrgacureTM 1300、IrgacureTM 1870、DarocurTM 1173、DarocurTM 2959、DarocurTM 4265およびDarocurTM ITX(CIBA SPECIALTY CHEMICALSから入手可能)、LucerinTM TPO(BASF AGから入手可能)、EsacureTM KT046、EsacureTM KIP150、EsacureTM KT37およびEsacureTM EDB(LAMBERTIから入手可能)、H−NuTM 470およびH−NuTM 470X(SPECTRA GROUP Ltd.から入手可能)が含まれる。
【0093】
導電パターン製造中の安全の理由で、光開始剤を好適にはいわゆる拡散障害光開始剤にする。拡散障害光開始剤は、単官能光開始剤、例えばベンゾフェノンなどに比べて硬化インク層内でずっと低い可動性を示す光開始剤である。いくつかの方法を用いて光開始剤の可動性を低くすることができる。1つの方法は、拡散速度が低くなるように光開始剤の分子量を大きくする方法、例えば高分子量の光開始剤を用いる方法である。別の方法は、重合する網目構造の中に組み入れられるように反応性を高める方法、例えば多官能光開始剤(光開始基を2、3またはそれ以上有する)および重合性光開始剤を用いる方法である。
【0094】
本紫外線硬化性インクジェットインク用の拡散障害光開始剤を好適には高分子量ではない多官能光開始剤、オリゴマー状または高分子量光開始剤および重合性光開始剤から成る群より選択する。最も好適な拡散障害光開始剤は重合性開始剤または高分子量光開始剤である。
【0095】
好適な拡散障害光開始剤は、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α,αジアルコキシアセトフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、αアミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキサイド、アシルホスフィンスルフィド、α−ハロケトン、α−ハロスルホンおよびフェニルグリオキサレートから成る群より選択されるノリッシュI型光開始剤に由来する光開始官能基を1個以上含有する。
【0096】
好適な拡散障害光開始剤は、ベンゾフェノン、チオキサントン、1,2−ジケトンおよびアントラキノンから成る群より選択されるノリッシュII型開始剤に由来する光開始官能基を1個以上含有する。
【0097】
適切な拡散障害光開始剤はまたEP 2065362 A(AGFA)の中の二官能および多官能光開始剤に関してはパラグラフ[0074]および[0075]、高分子量光開始剤に関してはパラグラフ[0077]から[0080]および重合性光開始剤に関してはパラグラフ[0081]から[0083]に開示されているそれらである。
【0098】
光開始剤の好適な量は紫外線硬化性インクジェットインクの総重量の0.1−20重量%、より好適には2−15重量%、最も好適には3−10重量%である。
【0099】
感光性を更に高める目的で、本紫外線硬化性インクジェットインクに追加的に共開始剤を含有させることも可能である。共開始剤の適切な例は下記の3グループに分類分け可能である:1)第三級脂肪族アミン、例えばメチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミンおよびN−メチルモルホリン、(2)芳香族アミン、例えばアミルパラジメチルアミノベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエートおよび2−エチルヘキシル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、および(3)(メタ)アクリレート化アミン、例えばジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えばジエチルアミノエチルアクリレート)
またはN−モルホリノアルキル−(メタ)アクリレート(例えばN−モルホリノエチル−アクリレート)。好適な共開始剤はアミノベンゾエートである。
【0100】
1種以上の共開始剤を本紫外線硬化性インクジェットインクに含める場合、安全の理由で、そのような共開始剤を好適には拡散障害にする。
【0101】
拡散障害共開始剤を好適には高分子ではない二または多官能共開始剤、オリゴマー状または高分子量共開始剤および重合性共開始剤から成る群より選択する。より好適には、拡散障害共開始剤を高分子量共開始剤および重合性共開始剤から成る群より選択する。最も好適な拡散障害共開始剤は、(メタ)アクリレート基を少なくとも1個、より好適にはアクリレート基を少なくとも1個有する重合性共開始剤である。
【0102】
本紫外線硬化性インクジェットインクに好適には重合性もしくは高分子量の第三級アミン系共開始剤を含有させる。
【0103】
好適な拡散障害共開始剤はEP 2053101 A(AGFA)のパラグラフ[0088]および[0097]に開示されている重合性共開始剤である。
【0104】
本紫外線硬化性インクジェットインクに好適には(拡散障害)共開始剤を紫外線硬化性インクジェットインクの総重量の0.1から20重量%の量、より好適には0.5から15重量%の量、最も好適には1から10重量%の量で含有させる。
【0105】
重合禁止剤
本紫外線硬化性インクジェットインクの熱安定性を向上させる目的で本インクに少なくとも1種の禁止剤を含有させてもよい。
【0106】
適切な重合禁止剤には、フェノール型抗酸化剤、障害アミン系光安定剤、蛍光体型抗酸化剤、ヒドロキノンモノメチルエーテル[(メタ)アクリレート単量体で通常用いられる]が含まれ、そしてまたヒドロキノン、t−ブチルカテコール、ピロガロール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(=BHT)も使用可能である。
【0107】
適切な商業的禁止剤は、例えば、SumilizerTM GA−80、SumilizerTM GMおよびSumilizerTM GS(住友化学株式会社が製造)、GenoradTM 16、GenoradTM 18およびGenoradTM 20(Rahn AG)、IrgastabTM UV10およびIrgastabTM UV22、TinuvinTM 460およびCGS20(Ciba Specialty Chemicals)、FloorstabTM UV range(UV−1、UV−2、UV−5およびUV−8)(Kromachem Ltd)、AdditolTM S range(S100、S110、S120およびS130)(Cytec Surface Specialties)である。
【0108】
その禁止剤は好適には重合性禁止剤である。
【0109】
そのような重合禁止剤を過剰に添加すると硬化速度が遅くなる可能性があることから、重合を妨害し得る量を混合前に決定しておくのが好適である。重合禁止剤の量を好適には紫外線硬化性インクジェットインクの総量の5重量%以下、より好適には3重量%以下にする。
【0110】
界面活性剤
本紫外線硬化性インクジェットインクに少なくとも1種の界面活性剤を含有させてもよ
いが、好適には界面活性剤を存在させない。界面活性剤を存在させないと本紫外線硬化性インクジェットインクが金属板上に良好に拡散しないことで薄い導電ラインを生じさせることができなくなる可能性がある。
【0111】
そのような界面活性剤はアニオン性、カチオン性、非イオン性または双性イオン性であってもよく、それを添加する総量を通常は紫外線硬化性インクジェットインクの総重量を基準にして1重量%未満にする。
【0112】
適切な界面活性剤には、フッ素化界面活性剤、脂肪酸塩、高級アルコールのエステル塩、高級アルコールのアルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホこはく酸エステル塩および燐酸エステル塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびジオクチルスルホこはく酸ナトリウム)、高級アルコールのエチレンオキサイド付加体、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加体、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加体およびアセチレングリコールおよびそれのエチレンオキサイド付加体(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルおよびSURFYNOLTM 104、104H、440、465およびTG[AIR PRODUCTS & CHEMICALS INC.から入手可能])が含まれる。
【0113】
好適な界面活性剤をフッ素系界面活性剤(例えばフッ素化炭化水素)およびシリコーン系界面活性剤から選択する。シリコーン系界面活性剤は好適にはシロキサンであり、それにアルコキシル化、ポリエーテル改質、ポリエーテル改質ヒドロキシ官能、アミン改質、エポキシ改質および他の改質またはこれらの組み合わせを受けさせてもよい。好適なシロキサンは高分子量、例えばポリジメチルシロキサンなどである。
【0114】
好適な商業的シリコーン系界面活性剤にはBYK ChemieのBYKTM 333およびBYKTM UV3510が含まれる。
【0115】
好適な態様の界面活性剤は重合性化合物である。
【0116】
好適な重合性シリコーン系界面活性剤には、(メタ)アクリレート化シリコーン系界面活性剤が含まれる。最も好適な(メタ)アクリレート化シリコーン系界面活性剤はアクリレート化シリコーン系界面活性剤である、と言うのは、アクリレートが示す反応性の方がメタアクリレートのそれよりも高いからである。
【0117】
好適な態様の(メタ)アクリレート化シリコーン系界面活性剤は、ポリエーテル改質(メタ)アクリレート化ポリジメチルシロキサンまたはポリエステル改質(メタ)アクリレート化ポリジメチルシロキサンである。
【0118】
好適には、界面活性剤を本紫外線硬化性インクジェットインクに紫外線硬化性インクジェットインクの総重量を基準にして0から0.05重量%の量で存在させる。
【0119】
インクジェット印刷装置
小さい液滴をノズルに通してプリントヘッド1個または2個以上と関連して動いている基質上に制御様式で噴出する1個以上のプリントヘッドを用いて本紫外線硬化性インクジェットインクを噴出させることができる。
【0120】
インクジェット印刷装置用の好適なプリントヘッドは圧電ヘッドである。圧電インクジェット印刷は、電圧がかかった時にセラミック製圧電トランスデューサーが動くことが基になっている。電圧をかけるとプリントヘッドの中のセラミック製圧電トランスデューサーの形状が変化して空隙部が生じ、それがインクで満たされる。電圧を再び取り除くとセ
ラミックが元々の形状にまで膨張することでインクの液滴がプリントヘッドから噴出される。しかしながら、本発明に従うインクジェット印刷方法を圧電インクジェット印刷に限定するものでない。他のインクジェットプリントヘッドも使用可能であり、それには様々な種類、例えば連続型などが含まれる。
【0121】
インクジェットプリントヘッドは一般に移動しているインク受け入れ表面を横切る横方向に前後走査する。インクジェットプリントヘッドはしばしば戻って来る時には印刷しない。高い面積処理量を得ようとする時には2方向印刷が好適である。別の好適な印刷方法は“単一通過印刷方法”であり、これはページの幅のインクジェットプリントヘッドまたは複数のジグザグ状インクジェットプリントヘッド(インク受け入れ表面の幅全体を覆う)を用いて実施可能である。単一通過印刷方法の場合、インクジェットプリントヘッドは一般に静止したままでありそして基質表面がインクジェットプリントヘッドの下を移動する。
【0122】
硬化装置
紫外線硬化性インクジェットインクの硬化はそれを化学作用のある放射線、好適には紫外放射線に暴露させることで実施可能である。
【0123】
インクジェット印刷では、硬化手段をインクジェットプリンターのプリントヘッドと組み合わせてそれらを一緒に移動させることで硬化性液体が噴射された直ぐ後に硬化用放射線に暴露されるように配置させてもよい。
【0124】
そのような配置では、プリントヘッドに連結していてそれらと一緒に移動するに充分なほど小さな放射線源、例えばLEDなどを装備するのは困難であり得る。従って、固定式静止型放射線源、例えば硬化用紫外光源などを用いてもよく、それを柔軟な放射線伝達手段、例えば光学繊維束または内部反射性軟質管などで放射線源と連結させてもよい。
【0125】
別法として、鏡を放射ヘッドの上に装備する鏡配置を用いて化学作用のある放射線を固定源から放射ヘッドに当てることも可能である。
【0126】
また、放射線源は硬化させるべき基質を横切って横方向に伸びる細長い放射線源であってもよい。それをプリントヘッドの横方向路に隣接させて位置させてもよく、その結果としてプリントヘッドによって生じる次の列のイメージが放射線源の下を段階的または連続的に通るようにする。
【0127】
発射される光の一部が光開始剤もしくは光開始剤系に吸収され得る限り如何なる紫外光源も放射線源として使用可能であり、例えば高もしくは低圧水銀ランプ、冷陰極管、ブラックライト、紫外LED、紫外レーザーおよびフラッシュライトなどが使用可能である。これらの中で好適な源は、主波長が300−400nmの比較的長波長の紫外寄与を示す源である。具体的には、UV−A光源が好適である、と言うのは、それらを用いた時の光散乱度合が低い結果として効率がより高い内部硬化がもたらされるからである。
【0128】
紫外放射線は一般に下記の如くUV−A、UV−BおよびUV−Cとして分類分けされる:
・UV−A:400nmから320nm
・UV−B:320nmから290nm
・UV−C:290nmから100nm。
【0129】
好適な態様では、紫外線硬化性インクジェットインクの硬化を紫外LEDを用いて起させる。インクジェット印刷装置に好適には1個以上の紫外LED、好適には波長が360
nm以上のもの、好適には波長が380nm以上の紫外LED、最も好適には波長が約395nm以上の紫外LEDを1個以上装備する。
【0130】
その上、異なる波長または照度を有する2個の光源を逐次または同時に用いてインクパターンを硬化させることも可能である。例えば、1番目の紫外源をUV−Cが豊富、特に260nm−200nmの範囲になるように選択してもよい。その上、2番目の紫外源をUV−Aが豊富になるようにし、例えガリウムがドーパントとして添加されているランプまたはUV−AとUV−Bの両方が高い異なるランプにしてもよい。2個の紫外源を用いる方が有利、例えば硬化速度が速くなることおよび硬化度が高くなることなどの利点が得られることを見いだした。
【0131】
硬化を速める目的で、インクジェット印刷装置にはしばしば1個以上の酸素欠乏装置が備わっている。酸素欠乏装置は、硬化環境内の酸素濃度を低下させる目的で、窒素または他の比較的不活性なガス(例えばCO2)のブランケットを設けるものであり、その位置は調整可能でありかつ不活性ガスの濃度も調整可能である。残存酸素濃度を通常は200ppmの如く低く維持するが、一般に200ppmから1200ppmの範囲内にする。
【実施例】
【0132】
材料
以下の実施例で用いる材料は全部、特に明記しない限り、標準的供給源、例えばALDRICH CHEMICAL Co.(Belgium)およびACROS(Belgium)などから容易に入手可能であった。用いた水は脱イオン水であった。
【0133】
Dye−1は、MacrolexTM Blue 3RとしてLANXESSから入手可能な青色アントラキノン染料である。
【0134】
ITXはBASFのDarocurTM ITXであり、これは2−と4−イソプロピルチオキサントンの異性体混合物である。
【0135】
EPDは、GenocureTM EPDとしてRAHNから入手可能な4−ジメチアミノ安息香酸エチルである。
【0136】
TPOは、DarocurTM TPOとしてBASFから入手可能な2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイドである。
【0137】
BAPOは、BASFから入手可能なフェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキサイドである。
【0138】
IrgacureTM 907は、BASFから入手可能な2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オンである光開始剤である。
【0139】
INHIBは、重合禁止剤を生じる混合物であり、これの組成は下記である:
【0140】
【表4】
【0141】
CupferronTM ALは、WAKO CHEMICALS LTDのアルミニウムN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンである。
【0142】
MacrolexTM Blue 3Rは、LANXESSの青色アントラキノン染料である。
【0143】
DPGDAは、SartomerTM SR508としてSARTOMERから入手可能なジプロピレングリコールジアクリレートである。
【0144】
2−HEAは、ALDRICHのアクリル酸2−ヒドロキシエチルである。
【0145】
MADAMEは、NorsocrylTM MADAMEとしてARKEMA Franceから入手可能なメタアクリル酸N,N−ジメチル2−アミノエチルである。
【0146】
EOEOEAは、SartomerTM SR256としてSARTOMERから入手可能なエトキシエトキシエチルアクリレートである。
【0147】
ACMOは、RAHNから入手可能なアクリロイルモルホリンである。
【0148】
VEEAまたはアクリル酸2−(2−ビニルオキシ−エトキシ)−エチルは日本触媒が供給している材料である。
【0149】
IDAは、SartomerTM SR395としてSARTOMERから入手可能なイソデシルアクリレートである。
【0150】
SR606Aは、SartomerTM SR606AとしてSARTOMERから入手可能なネオペンチルグリコールヒドロキシルピバレートジアクリレートである。
【0151】
HDDAは、SartomerTM SR238としてSARTOMERから入手可能な1,6−ヘキサンジオールジアクリレートである。
【0152】
TMPTAは、SartomerTM SR350としてSARTOMERから入手可能なトリメチロールプロパントリメタアクリレートである。
【0153】
NPGDAは、SartomerTM SR9003としてSARTOMERから入手可能なネオペンチルグリコール(2xプロポキシル化)ジアクリレートである。
【0154】
PETAは、Sartomer 295としてSartomerから入手可能なペンタエリスリトールテトラアクリレートである。
【0155】
CEAは、ALDRICHのアクリル酸2−カルボキシエチルである。
【0156】
SR9054は、SartomerTM SR9054としてSARTOMERから入手可能な2−ヒドロキシエチルメタアクリレートホスフェートである。
【0157】
測定方法
1.硬化速度
銅板に印刷して硬化させた後のインクジェット層に指を触れる評価を受けさせた。評価を表5に記述する判断基準に従って行った。
【0158】
【表5】
【0159】
2.エッチ抵抗性
エッチ抵抗性の評価をエッチングおよび濯ぎ直後の層を綿棒でこすることで実施した。評価を表6に記述する判断基準に従って行った。
【0160】
【表6】
【0161】
3.除去性および薄片
エッチングして乾燥させたサンプルの打ち抜き片を6.25%のNaOH溶液が入っているビーカーにいれて50℃で撹拌した。インクジェット層が銅表面から剥がれる時間、即ち剥離時間を測定した。評価を表7に記述する判断基準に従って行った。
【0162】
【表7】
【0163】
インクジェット層の剥離が始まった後に薄片の生成を観察した。評価を表8に記述する判断基準に従って行った。
【0164】
【表8】
【0165】
4.粘度
配合物が示す粘度の測定をCAMBRIDGE APPLIED SYSTEMSの“Robotic Viscometer Type VISCObot”を用いて45℃で実施した。
【0166】
工業的インクジェット印刷の場合には粘度を好適には45℃で3.0から20mPa.sの範囲にする。より好適には、粘度を45℃で15mPa.s未満にする。
【実施例1】
【0167】
この実施例では、本発明に従う紫外線硬化性インクジェットインクを用いた導電パターン製造を例示する。
【0168】
紫外線硬化性インクジェットインクの調製
比較紫外線硬化性インクジェットインクであるCOMP−1からCOMP−11および発明紫外線硬化性インクであるINV−1からINV−16の調製を表9に示すタイプAまたはBの組成に従って実施した。重量パーセント(重量%)の全部を紫外線硬化性インクジェットインクの総重量を基準にした。
【0169】
【表9】
【0170】
インクジェットインクの重合性組成物で用いる単量体の量および種類を表10に示す。表4に示す重量パーセント(重量%)の全部を前記重合性組成物の総重量を基準にした。粘度の測定値を表11に示す。
【0171】
【表10】
【0172】
評価および結果
銅箔が35μmのIsolaTM IS400銅板(CCI Eurolamから入手可能)にMEC EuropeのMecbriteTM CA−95と呼ばれる溶液(これはpH<1であり、H2SO4、H22およびCu2+が入っている)を用いた洗浄を25℃で5秒間受けさせた。この操作中にCuの上部薄層(0.3−0.5μm)を除去した。次に、その板を水ジェットで90秒間濯いだ。
【0173】
紫外線硬化性インクジェットインクCOMP−1からCOMP−11およびINV−1からINV−16のパターンの印刷をKonica Minolta 512 プリントヘッドが備わっているAnapurnaTM M インクジェットプリンターで一方向に14pLの液滴体積になるように8パス(1440x720dpi)で実施した後、Feが
ドーパントとして添加されているHgランプを550mJ/cm2の出力で用いて硬化させた。硬化速度の評価を行って、その結果を表11に示す。
【0174】
前記板を酸性エッチ液(Mega Electronicsから入手した“Mega”酸性エッチング液、pH2、FeCl3含有)に35℃で115秒間入れた。その後、前記板を水で90秒間濯いだ後、乾燥させた。次に、エッチ抵抗性の評価を行い、表11に示す如くであった。エッチング中にインクジェットインク層が剥がれた銅板には当然剥離性および薄片生成に関する評価を受けさせることはできなかった。(表11中に適用不能:NAの印を付けた)。
【0175】
【表11】
【0176】
優れた結果を示したのは請求項1の要求に合致する紫外線硬化性インクジェットインクのみであることが表11から明らかであろう。アクリルアミドACMOを等しく親水性で
あるが(メタ)アクリレートである他の単量体に置き換えたか或はアクリルアミド、多官能アクリレートおよび酸単量体に関する範囲を無視した紫外線硬化性インクジェットインクは、導電パターン製造に関する要求の1つ以上を満たさなかった。