【実施例】
【0081】
実施例1.RGEN (RNA−guided engineered nuclease)
実験方法
本発明によるA型血友病患者の尿由来のiPSCの分析は、大韓民国の延世大学校研究倫理審議委員会の承認(IRB # 4−2012−0028)下になされた。あらゆる自願者は、ヒトiPSC生成のための尿試料の寄贈に先立って、書面同意書に署名した。
【0082】
細胞培養及び形質転換
HeLa細胞(ATCC、CCL−2)を10%FBS(fetal bovine serum)、0.1mM非必須アミノ酸及び1%抗生剤が補充されたDMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium)で培養した。DSBを誘発するために、1×10
5HeLa細胞をLipofectamine 2000形質感染試薬(Invitrogen)を用いて製造社の説明書によって、Cas9をコードするプラスミド及びsgRNAをコードするプラスミド(それぞれ0.5mg)に共形質転換した。WiCell Incで購入したヒトESC(hESC)細胞株(H9)、ヒト皮膚線維芽細胞由来の野生型iPSCs(WT−iPSC Epi3 line)(Park et al.,2014)及び尿由来のiPSCは、hESC培地[20%ノックアウト血清代替物(Gibco)、1%非必須アミノ酸(Invitrogen)及び0.1mM 2−メルカプトエタノール(Sigma)を補充したDMEM/F12(Gibco)]で4ng/mL bFGF(basic fibroblast growth factor、PeproTech)と共に保持させた。尿由来のiPSCで修復を誘発させるために、電気穿孔システム(Neon;Invitrogen)を用いて1×10
6細胞に5μg Cas9をコードするプラスミド及び5μg sgRNAをコードするプラスミド(イントロン22の逆位に対して、各5μgのsgRNAプラスミド)を電気穿孔した。
【0083】
Cas9タンパク質を尿由来のiPSCに直接伝達するために、従来に報告された方法を少し変形して形質転換を行った(Kim et al.,2014)。Cas9タンパク質(15μg)を20μgの転写されたsgRNA(イントロン22の逆位に対する各sgRNAプラスミド20μg)と混合し、常温で10分間インキュベーションしてRNP(RGEN ribonucleoprotein)を形成させた。RNPは、微細穿孔システムを通じて2X10
5iPSCに形質転換された。
【0084】
重症A型血友病患者から尿由来の細胞の分離及び拡張
重症A型血友病と診断された11人の患者から尿試料を収集し、前記診断は、韓国血友財団から臨床的に確認されたものである。尿由来の細胞は、従来に報告された方法で分離した(Zhou et al.,2012)。要約すれば、細胞を約100mlの中間尿(midstream urine)から10分間400gでの遠心分離を通じて収集した。細胞をPBSで2回洗浄した後、10%(vol/vol)FBS、REGM(renal epithelial cell growth medium、Single Quot kit(Lonza)から収得)及び1%抗生剤が補充されたDMEM/Ham’s F12(1:1)培地(Hyclone)で培養した。このような条件で4日間培養後、細胞を拡張させるために、REGM(Lonza)で培養した。これら細胞をゼラチン−コーティングされた培養皿に80〜90%のコンフルエンシに分けた。F8遺伝子型を確認するために、尿由来の患者細胞から分離したゲノムDNA視標をF8座位のイントロン1及び22の逆位付近の適切な部位を認識するプライマーセットを用いてPCR分析を行った(Bagnall et al.,2006;Park et al.,2014)。
【0085】
RGEN組成物
従来報告された方法でCas9をコードするプラスミドを構築した(Cho et al.,2013)。HAエピトープ及びNLS(nuclear localization signal)に融合されたCas9タンパク質をCMVプロモーター下で発現させた。sgRNA発現には、U6プロモーターを使用した(Cho et al.,2014)。精製された組換えCas9タンパク質は、ToolGen,Incで購入した。ガイドRNAは、MEGA short script T7キット(Ambion)を用いて従来に報告された方法でインビトロで転写した(Kim et al.,2014)。転写されたRNAは、フェノール:クロロホルム抽出を通じて精製し、分光計で定量化した。
【0086】
T7E1分析及びターゲッティングされた逆位の頻度測定
従来に報告された方法によってT7E1分析を行った(Kim et al.,2009)。要約すれば、RGENターゲット部位を含むPCRアンプリコンを加熱して変性(denature)させ、アニーリングして異型接合(heteroduplex)DNA切片を形成させた。以後、前記切片にT7エンドヌクレアーゼ(New England Biolabs)を37℃で20分間処理して、ミスマッチ部位が切断されるようにした後、生成物をアガロースゲル電気泳動で分析した。F8座位でのターゲッティングされた矯正の頻度を従来に報告された方法でデジタルPCR分析を通じて測定した(Kim et al.,2010)。リポフェクタミン2000形質転換試薬(Invitrogen)を用いてRGEN及びsgRNAプラスミドに共形質転換された細胞から分離したゲノムDNAを順次に希釈し、該希釈された試料に対してPCR分析を行った。各希釈ポイントでの陽性バンド切片を決定し、結果をExtreme Limiting Dilution Analysisプログラムを用いて分析した(HuandSmyth,2009)。
【0087】
HeLa細胞でF8座位のRGEN−媒介逆位の確認
本発明で設計されたRGENの誘電体矯正活性を確認するために、各RGENをsgRNA発現プラスミドと共にHeLa細胞に共形質転換した。RGEN活性は、T7E1分析を通じて測定した。
【0088】
患者由来のiPSCのF8座位でのターゲッティングされたRGEN−媒介矯正
iPSCをSTO細胞支持層で培養し、IV型コラゲナーゼで処理して採集した。PBSで洗浄した後、細胞を従来に報告された方法で単一細胞に分離した(Desbordes et al.,2008)。これら単一細胞をRGEN及びsgRNAプラスミドと混合し、850ボルトの電圧で30分間パルスを加えた。以後、細胞を支持細胞上にシーディングし、10日間培養した。F8座位で発生した遺伝子逆位を検出するために、それぞれのコロニーから抽出した細胞を破砕し、PCR分析を行い、使われたプライマーは、次の通りである:
1−F1:5’−AAATCACCCAAGGAAGCACA−3’、
1−R1:5’−TGGCATTAACGTATTACTTGGAGA−3’;
1−F2:5’−TGCTGAGCTAGCAGGTTTAATG−3’、
1−R2:5’−TGCTGAGCTAGCAGGTTTAATG−3’;
22−F1:5’−TGGGGCTGTGTAAATTTGCT−3’、
22−R2:5’−CAAACGTAGCATTACCTGATTGT−3’;
22−F2:5’−ACAACCAGAGCAGAAATCAATGA−3’、
22−R2:5’−TTTCACCACATCCACGCCAA−3’。
【0089】
クローン細胞群の確立及び特性分析
矯正された細胞のクローンを分離するために、所望の遺伝子変形(逆位遺伝子型の矯正)がなされたものであって、PCRを通じて確認された各コロニーを単一細胞に分離し、新たな細胞支持層にシーディングした。4回継代培養後、いくつかのクローン(イントロン1矯正された4個のクローン及びイントロン22矯正された3個のクローン)を選定してシーケンシングを行い、追加実験を進行した。変曲点の配列分析のために、増幅されたPCR産物を電気泳動してアガロースゲルから溶出した。
【0090】
RNA分離、RT−PCR及びqPCR
TRIzol試薬(Invitrogen)を用いて製造社の説明書によって、総RNAを精製した。DiaStar
TM cDNA合成キット(SolGent,Korea)を用いて総RNA(1μg)からcDNAを合成した。Factor VIII、Brachyury及びGAPDHの発現を確認するために、合成されたcDNAを鋳型としてEx−Taq(Takara)を用いてPCRを行った。qPCRのために、SYBRPremix Ex−Taq(Takara)を製造社の説明書によって使用した。イントロン1またはイントロン22矯正細胞株からF8 mRNAをそれぞれ増幅するために、エキソン1(または、イントロン22矯正細胞株でエキソン21)に位置した正方向プライマーをエキソン3(または、イントロン22矯正細胞株でエキソン23)に位置した逆方向プライマーと共に使用した。RT−PCRまたはqPCRには、次のプライマーセットを用いた:
GAPDH−F:5’−CCCCTCAAGGGCATCCTGGGCTA−3’、
GAPDH−R:5’−GAGGTCCACCACCCTGTTGCTGTA−3’;
OCT4−F:5’−CCTCACTTCACTGCACTGTA−3’、
OCT4−R:5’−CAGGTTTTCTTTCCCTAGCT−3’;
LIN28−F:5’−AGCCATATGGTAGCCTCATGTCCGC−3’、
LIN28−R:5’−TCAATTCTGTGCCTCCGGGAGCAGGGTAGG−3’;
SOX2−F:5’−TTCACATGTCCCAGCACTACCAGA−3’、
SOX2−R:5’−TCACATGTGTGAGAGGGGCAGTGTGC−3’;
NANOG−F:5’−TGAACCTCAGCTACAAACAG−3’、
NANOG−R:5’−TGGTGGTAGGAAGAGTAAAG−3’;
F8−エキソン1−F:5’−CTGCTTTAGTGCCACCAGAAGA−3’、
F8−エキソン3−R:5’−GACTGACAGGATGGGAAGCC−3’;
F8−エキソン21−F:5’−CCGGATCAATCAATGCCTGGAG−3’、
F8−エキソン23−R:5’−ATGAGTTGGGTGCAAACGGATG−3’;
Brachyury−F:5’−ATCACAAAGAGATGATGGAGGAA−3’、
Brachyury−R:5’−GGTGAGTTGTCAGAATAGGTTGG−3’)。
【0091】
尿由来のiPSCの生成及びインビトロ分化
3継代以下に培養後、尿由来の細胞からiPSCを生成した。エピソームリプログラムベクターまたはセンダイウイルス(Invitrogen)を用いて従来に報告された方法によって尿由来の細胞からiPSCを製作した(Okita et al.,2011)。ヒトES細胞と類似した形態を示す7個のiPSCコロニーを機械装置で取り上げて特性分析のためにさらに培養した。iPSCは、インビトロで公知の方法を用いて3つの胚葉に分化させた(Sugii et al.,2010)。IV型コラゲナーゼ(Invitrogen)を通じて部分的にiPSCを分離させることによって、胚芽体(Embryoid body、EB)形成を誘導した。EBをペトリディッシュ(SPL Lifesciences,Korea)に移し、bFGFがなく、5%FBSが補充されたhESC培地で10日間分化した。EBが3つの胚葉を代表する細胞に自発的に分化されるかの有無は、適切な抗体を用いた免疫染色を通じて調査した。iPSCを中胚葉系列に分化させるために、従来に報告された方法を少し変形して使用した(Yoo et al.,2013)。要約すれば、EBをペトリディッシュに移し、bFGFがなく、20ng/mL BMP4(bone morphogenic protein−4、R&D Systems)及び10ng/mLアクチビンA(PeproTech)が補充されたhESC培地で培養した。3日目に、EBをマトリゲル−コーティングされたディッシュにプレーティングし、前述した培地で3日間さらに培養した。分化6日目に、中胚葉系列に分化した細胞を採集してF8遺伝子発現を調査した。
【0092】
iPSCの特性分析
白血球アルカリホスファターゼ染色キット(Sigma)を用いて製造社の説明書によって、アルカリホスファターゼ活性を測定した。iPSC細胞株が尿由来の細胞で生成されたということを確認するために、STR(hort tandem repeat)を分析した。AmpFISTR PCR反応システム(Applied Biosystems)を用いてiPSC細胞株及び親細胞から分離したゲノムDNA試料からSTR座位を増幅した。PCR−基盤STR分析は、Human Pass Inc(Korea)で行った。核型分析のために、各iPSC細胞株由来染色体に対するG−バンディング分析をGenDix Inc(Korea)で行った。ES細胞マーカーに対する免疫染色は、従来に報告された方法通りに行った(Park et al.,2014)。核の視覚化のために、DAPI(4’,6−ジアミノ−2−フェニルインドール、Vector Laboratories)を使用し、イメージは、Olympus IX71顕微鏡またはFSXシステムを用いてキャプチャー後、分析した。
【0093】
ターゲッティングされた深層シーケンシング
ヌクレアーゼターゲット部位を含むゲノムDNA分節は、Phusion重合酵素(New England Biolabs)を用いて増幅した。同量のPCRアンプリコンに対してIlluminaMiSeqを用いてペアードエンドリード(paired−end read)シーケンシングを行った。RGEN切断部位付近(PAMen3bpアップストリーム)にlはRGENによって誘発された突然変異と見なした。
【0094】
全体遺伝子シーケンシング
DNeasy Tissueキット(Qiagen)を用いて製造社の説明書によって、ゲノムDNAを精製した。Covarisシステムを用いてゲノムDNA(1μg)を切片化し、End Repair Mixを通じて鈍い末端(blunt end)を形成させた。切片化されたDNAをアダプタで結合させてライブラリーを製作した。IlluminaHiSeq X Ten Sequencerを用いてMacrogen(Korea)でライブラリーをシーケンシングした。
【0095】
全体遺伝子シーケンシング分析及び変異情報の抽出
IlluminaHiSeq X Ten Sequencerで収得したFASTQファイルをIllumina,Inc(USA)のIsaacワークフローを通じてMacrogenで分析した。要約すれば、ペアードエンドによってリーディングされたFASTQファイルを基準遺伝子(hg19)によってIsaac Genome Alignment software(Isaac Aligner)を用いてアラインした。以後、SNP(single nucleotide polymorphism)及びindelsをIsaac Variant Callerで同定した。多様な変異のうちから、本発明者らは、RGENが置換をほとんど誘導しないために、インデル(indel)に焦点を合わせた。バイオインフォマティクスフィルターを適用して公共データベースに登載されたindel及び他の遺伝子から抽出されたindelを除外させた。次いで、RGENターゲット部位をindel位置に相応する野生型座位と比較した。31〜106個のindel部位が5’−N(G/A)G−3’PAM配列を含み、それぞれのオンターゲット配列と少なくとも12ヌクレオチドマッチを示した。最後に、繰り返し配列を有する部位を除外させた後、10個のindel部位に対してターゲッティングされた深層シーケンシングを行った。
【0096】
潜在的なオフターゲット部位の検査
各遺伝子配列で多様な潜在的なオフターゲット部位にヌクレアーゼ−誘導indelが存在するか否かを調査するために、Cas−OFFinderを使用してオンターゲット部位と8個までのヌクレオチドが差が出るか、5塩基のDNAまたはRNAバルジ(bulge)と2個までのヌクレオチドが差が出る、あらゆる潜在的なオフターゲット部位を同定した(Bae et al.,2014)。各潜在的なオフターゲット部位で全体CIGARストリングの20%からなる保存的CIGARストリングを作るために、内部コンピュータプログラムを使用した。次いで、多様な潜在的なオフターゲット部位の保全的CIGARストリングと基準配列のCIGARストリングとを比較した。その結果、83〜348個の潜在的なオフターゲット部位を収得した。最後に、独立クローンのみで観察され、ターゲット部位周辺で繰り返し配列を有さない4個のindel部位に対してターゲッティングされた深層シーケンシングを行った。
【0097】
実験結果
まず、本発明者らは、互いに姻戚関係のない11人の重症A型血友病患者の遺伝子型を分析し、int1逆位を有した1人の患者とint22逆位を有した2人の患者とを同定した。これにより、int1逆位を有した1人の患者(“Pa1”と命名)及びint22逆位を有した2人の患者(“Pa2”及び“Pa3”と命名)を選定して実験を進行した(
図1a)。エピソームベクターまたはセンダイウイルスを通じて4個のYamanaka因子を尿内の上皮細胞に導入することによって、それぞれのiPSCを確立して、出血性疾患を有するこれら患者の線維芽細胞を収得して浸湿型生検を通すことを避けようとした。同時に、Cas9タンパク質及びsgRNA(small guide RNA)で構成されたRGENが野生型HeLa細胞及び患者iPSCで、これら逆位を誘導または修復する活性を有するか否かを調査した。RGEN 01は、int1h内の部位をターゲッティングするように設計された(
図3a)。RGEN 01は、活性が非常に高く、int1h内のターゲット部位で34%の頻度で小規模挿入及び削除(insertions and deletions、indels)を誘導した(
図3b)。さらに、RGEN 01は、逆位−特異的PCRから見るように、HeLa細胞の140−kbp染色体分節逆位を誘導する(
図3c)。デジタルPCR分析結果、前記逆位の頻度は、2.2%〜3.1%に測定された(Kim et al.,2010;Lee et al.,2010)。
【0098】
本発明者らは、逆位−特異的PCRアンプリコンのDNA配列を分析した結果、2つの逆位変曲点連結部でindelが誘導されたということを確認した(
図3d)。このような高い頻度に基づいて、本発明者らは、Cas9タンパク質及びsgRNAをコードするプラスミドをPa1由来iPSC(Pa1−iPSCs)に共形質転換し、PCRを用いてiPSCコロニーを分析した。120個のコロニーのうち、8個のコロニー(必ずしも1つの細胞でから由来しない)(6.7%)が、アガロースゲル上で陽性PCRバンドを生成した。
【0099】
4個のコロニーを追加的に培養して単一細胞由来クローンを収得した。これらクローンは、int1h−1及びint1h−2部位に該当するPCRアンプリコンを生成したが、それを通じてPa1細胞の140−kbp染色体分節での逆位が修復されたということが分かる(
図3e)。
【0100】
一方、このようなPCRアンプリコンは、Pa1 iPSCsまたは泌尿器細胞から生成されていない。本発明者らは、PCRアンプリコンをシーケンシングすることによって、3つのクローンのターゲット部位でindelが誘導されないということを観察した。他のクローンでは、ターゲット部位で3−bp削除が検出された(
図3f)。
【0101】
引き続き本発明者らは、他のint22h逆位にも焦点を合わせた。目的する600−kbp分節逆位の修復以外に、2つまたは3つのint22相同体を含む所望しない削除または逆位の可能性を排除するために、相同体の外側部分をターゲッティングする2つのRGENを使用した(
図1b)。このような戦略は、また適切なプライマーを使用して修復有無をよく検出可能にする。本発明者らは、int22h−1及びint22h−3付近の部位をターゲッティングするために、2つのRGEN(RGEN 02及びRGEN 03)を設計し、T7E1(T7 endnuclease I)分析を通じてHeLa細胞でのヌクレアーゼ活性を試験した。これらRGENは、活性が非常に高く、44%または32%の頻度でターゲット部位のindelを誘導した(
図1c)。次いで、2つのターゲット部位の間の563−kbp染色体分節の逆位をPCRで検出した。RGEN 02またはRGEN 03のみをHeLa細胞に形質転換する場合、逆位−特異的PCRアンプリコンが生成されていない。一方、これらRGENプラスミドを共形質転換すると2つの逆位−特異的PCRアンプリコンが生成された(
図1d)。逆位頻度は、1.5%〜2.2%である(表1)。
【0102】
【表1】
*上限及び下限は、95%信頼区間を示す。
【0103】
PCRアンプリコンのDNA配列を調査した結果、indelがほとんど2つの逆位変曲点連結部を伴うことを観察することによって、2つのRGENで誘発された2つのDSBがエラー頻発NHEJ(non−homologous end joining)によって修復されたということが分かった(
図4a)。HeLa細胞は、F8エキソンの方向において野生型である。Pa2及びPa3細胞で、F8エキソン1〜22は逆位された。しかし、依然としてこれら2つのRGENターゲット部位は、保存されており、大量の染色体分節を修復することができる。
【0104】
次いで、RGEN 02及び03を電気穿孔を通じてPa2 iPSCに形質転換し、135個のコロニーを分離した後、そのゲノムDNAに対するPCR分析を行った。5個のコロニー(3.7%)が逆位−矯正(すなわち、修復)に該当するPCRアンプリコンを生成した。Pa2 iPSCsまたは野生型iPSCでは、このようなPCR産物が収得されていない(
図1e)。これらコロニーを確張して3個の独立した単一細胞由来のクローンを分離した。2つのRGEN部位の間の563−kbp染色体分節が修復されたか否かを確認するために、2つの逆位変曲点連結部でのDNA配列を調査した(
図1f)。その結果、HeLa細胞でのようにエラー頻発NHEJの特徴であるindelが、これら逆位−矯正されたiPSCの2つの変曲点連結部で観察された。
【0105】
本発明者らは、逆位−矯正されたiPSCが多能性を保持するか否かを調査した。まず、逆位−矯正されたPa1(int1h逆位)及びPa2(int22h逆位)iPSCでの幹細胞マーカー発現を調査した結果、OCT4、SOX2、LIN28及びNANOGが活発に転写されることを確認した(
図2a)。また、これら逆位−矯正されたiPSCは、3つの1次胚葉に成功的に分化し(
図2b)、さらに、これらは正常な核型を示した(
図2c)。それを総合すれば、RGENによる全体的な染色体修復は、患者由来のiPSCの多能性に否定的な影響を及ぼさないということが分かる。
【0106】
中胚葉から由来した上皮細胞は、F8遺伝子発現の主な根源である(Shahani et al.,2010)。本発明者らは、患者iPSC及び逆位−矯正された患者iPSCを中胚葉に分化させた後、RT−PCRを通じてF8 mRNAのレベルを測定した。予想通りに、Pa1−iPSCから分化された細胞でF8エキソン1及び2に相応するPCRバンドが検出されることによって、患者由来の細胞では、F8が発現されないということが分かった(
図2d)。一方、これらエキソンに該当するPCRバンドは、野生型iPSCまたは2つの逆位−矯正されたPa1−iPSCs(Co−1及びCo−2)から分化された細胞から検出された。同様に、F8エキソン22及び23に相応するPCRアンプリコンは、Pa2−及びPa3−iPSCから分化された細胞で検出されていないが、3個の逆位−矯正されたiPSCから分化された細胞では検出された(
図2d)。
【0107】
逆位−矯正されたiPSCから分化された細胞でエキソン1及び2またはエキソン22及び23が、正しくスプライシングされたということをサンガーシーケンシングを通じて確認した(
図2e)。このような結果は、イントロン1及び22の逆位を有する患者iPSCでF8遺伝子が矯正されたということを示す。
【0108】
RGENオンターゲット及びオフターゲット部位でプラスミド切片の所望しない挿入を防ぐために、イントロン1または22の逆位を有する2つの患者iPSC(Pa1及びPa3)にE.coliから発現された後、精製された組換えCas9タンパク質及びインビトロから転写されたsgRNA(RGEN ribonucleoprotein、RNP)を形質導入した。
【0109】
PCR及びサンガーシーケンシングを用いてF8遺伝子の遺伝的機能を回復する140−kbpまたは563−kbp染色体分節の修復を確認した(
図4b及び
図4c)。プラスミドとは異なって、RNPは、形質導入直後、染色体のターゲットDNAを即時切断し、細胞内で迅速に分解されるために(Kim et al.,2014)、RGEN RNPの形質導入を通じてオンターゲットサイトの誘電体矯正活性を犠牲させずとも、オフターゲット効果を減少させることができる。
【0110】
RGENは、オンターゲット部位と配列が同じオフターゲット突然変異を誘導することができる(Cho et al.,2014;Cradick et al.,2013;Fu et al.,2013;Hsu et al.,2013;Pattanayak et al.,2013)。本発明者らは、ターゲッティングされた深層シーケンシング(deep sequencing)及び全体ゲノムシーケンシング(whole genome sequencing、WGS)を用いて、本発明で用いられたRGENが患者iPSCで逆位の矯正以外に、他の二次的被害を残すか否かを調査した。まず、ウェブ基盤プログラムであるCas−OFFinder(www.rgenome.net,Bae et al.2014)を用いてヒト遺伝子で3個のRGENオンターゲット部位と3個に至るヌクレオチドが、異なる潜在的なオフターゲット部位を探索した。RGEN 01、RGEN 02及びRGEN 03で総12、6及び14個の部位がそれぞれ発見された。逆位−矯正されたiPSCでindelが、これら部位で誘発されていないということを確認するために、ターゲッティングされた深層シーケンシングを用いた(表2)。
【0111】
【表2】
【0112】
次いで、患者(Pa1及びPa2)iPSCから分離したゲノムDNA及びそれぞれの逆位−矯正されたiPSCに対してWGSを行った。まず、hg19標準遺伝子を基準にindelを同定するために、変異情報抽出プログラムであるIsaacを使用した。バイオインフォマティクスフィルターを適用して公共データベースに登載されたindel、int1hまたはint22h逆位及び他の逆位−矯正された遺伝子を有する患者遺伝子から抽出されたindel、そして、シーケンシングエラーに起因したhomo−polymerまたは繰り返し配列で表われるindelを除外させた。その結果、それぞれの逆位−矯正された遺伝子配列で固有の9,848〜13,707個のindelが収得された。次いで、RGENターゲット部位をindel位置に相応する野生型座位と比較した。31〜106個のindel部位のみが5’−N(G/A)G−3’PAM配列を有し、それぞれのオンターゲット配列と少なくとも12個のヌクレオチドマッチを示した(表2)。以後、2つの逆位−矯正された遺伝子で、これらindelに相応するDNA配列を調査した。如何なるindelも、ターゲッティングされた深層シーケンシングで確認されていない。次いで、オンターゲット部位と8個までのヌクレオチドが差が出るか、5塩基のDNAまたはRNAバルジと2個までのヌクレオチドが差が出る、あらゆる潜在的なオフターゲット部位をCas−OFFinderを通じてコンピュータで同定した。以後、数千個の潜在的なオフターゲット部位のうち、導出された10個の付近に配列されたシーケンスリードを標準配列と比較した結果(表2)、オフターゲットindelは、同定されていない。このような結果は、本発明で用いられた3つのRGENが逆位−矯正された患者iPSCでオフターゲット突然変異を誘発しないということを示す。要約すれば、本発明者らは、重症A型血友病の半分に至る原因を提供する2つの大規模染色体逆位を修復するために、患者由来のiPSCでRGENを使用し、それを通じて逆位−矯正されたiPSCから分化された細胞がF8遺伝子を発現することを観察した。ターゲッティングされた深層シーケンシング及びWGS分析を通じて逆位−矯正されたiPSCでオフターゲット突然変異が誘発されないということを確認した。これは、RGENまたは他の遺伝子ハサミを用いて患者iPSCで染色体逆位などの大規模遺伝子再配列が矯正されうるということを示す最初の事例である。染色体逆位は、ハンター症候群(Bondeson et al.,1995)及び癌(Nikiforova et al.,2000)のような他の遺伝的疾患とも関連がある。RGENを用いたiPSCでのターゲッティングされた遺伝子再配列は、遺伝子の構造的変形を可能にして、これらの機能を研究する手段及びA型血友病を含めた幅広い染色体再配列で誘発される多様な遺伝疾患の遺伝子及び細胞治療方法で有用に用いられうる。
【0113】
実施例2.TALEN(Transcription activator−like effector nucleases)
実験方法
TALENをコードするプラスミド
本発明で用いられるTALENプラスミドは、ワンストップGolden−Gateアセンブリーのために構築されたTALエフェクターアレイプラスミドを用いて従来に報告された方法で合成した(Kim Y,et al.(2013)A library of TAL effector nucleases spanning the human genome.Nat Biotechnol 31(3):251−258)。それぞれのTALENプラスミドは、RVDモジュールのアレイであるAvrBs3のN末端135アミノ酸、4個のRVD halfrepeatsのうちの1つ、そして、Sharkey FokIドメインをコードする(Guo J,Gaj T,Barbas CF,3rd(2010)Directed evolution of an enhanced and highly efficient FokI cleavage domain for zinc finger nucleases.J Mol Biol 400(1):96−107)。TALENサイトは、F8遺伝子の1番イントロン相同体をターゲッティングするように設計された;潜在的なオフターゲットサイトは、従来報告された方法によって同定した(Kim Y,et al.(2013)A library of TAL effector nucleases spanning the human genome.Nat Biotechnol 31(3):251−258)。
【0114】
A型血友病患者からゲノムDNAの分離
大韓民国のソウル大学校研究倫理審議委員会の承認下にA型血友病患者の血液細胞を分析した。血液試料は、韓国血友財団から提供され、ゲノムDNAは、従来に報告された方法で分離した(Lee HJ,Kweon J,Kim E,Kim S,Kim JS(2012)Targeted chromosomal duplications and inversions in the human genome using zinc finger nucleases.Genome RES 22(3):539−548)。
【0115】
ターゲッティングされた逆位の頻度測定
ターゲッティングされた逆位の頻度をデジタルPCR分析を通じて従来に報告された方法で測定した(Kim S,Lee HJ,Kim E,Kim JS(2010)Analysis of targeted chromosomal deletions induced by zinc finger nucleases.Cold Spring Harb Protoc 10.1101/pdb.prot5477)。TALENプラスミドに形質転換された細胞から分離したゲノムDNA試料を順次に希釈し、該希釈した試料に対して適切なプライマーを使用してnested PCRを行った(表3)。各希釈時点での陽性バンドの分節をカウンティングし、結果をExtreme Limiting Dilution Analysisプログラムを用いて分析した(Hu Y,Smyth GK(2009)ELDA:Extreme limiting dilution analysis for comparing depleted and enriched populations in stem cell and other assays.J Immunol Methods 347(1−2):70−78)。
【0116】
【表3】
【0117】
細胞培養
HEK293T/17(ATCC;CRL−11268)及び成人HDFs(Invitrogen;C−004−5C)をFBS(10%vol/vol)及び抗生剤(1%)が補充されたDMEMで培養した。WiCellで購入したヒトESC(hESC)細胞株(H9)、レトロウイルス由来の野生型iPSCs(iPSC1)、及び本発明で製作したiPSCは、20%(vol/vol)ノックアウト血清代替物(Invitrogen)、4.5g/L L−グルタミン、1%非必須アミノ酸、0.1mM 2−メルカプトエタノール及び4ng/mL bFGF(PeproTech)が補充されたDMEM/F12培地で構成されたhESC培養液で従来に報告された方法通りに保持した(Kim DS,et al.(2010)Robust enhancement of neural differentiation from human ES and iPS cells regardless of their innate difference in differentiation propensity.Stem Cell Rev 6(2):270−281)。
【0118】
HEK293T細胞でF8座位をターゲッティングするTALENの確認
本発明で設計されたTALENの遺伝子−操作活性を確認するために、それぞれのTALEN対をHEK293T細胞に形質転換し、これらの活性をT7E1分析を通じて測定した(Kim HJ,Lee HJ,Kim H,Cho SW,Kim JS(2009)Targeted genome editing in human cells with zinc finger nucleases constructed via modular assembly.Genome Res 19(7):1279−1288)。F8座位をターゲッティングするTALENによって誘導された逆位の頻度を測定するために、HEK293T/17細胞を80%のコンフルエンシでシーディングし、以後、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を用いてTALENをコードするプラスミドに形質転換した。ゲノムDNA試料を分離し、従来報告された方法でPCR分析を行って染色体逆位を確認した(Kim S,Lee HJ,Kim E,Kim JS(2010)Analysis of targeted chromosomal deletions induced by zinc finger nucleases.Cold Spring Harb Protoc 10.1101/pdb.prot5477)。
【0119】
iPSCの製作及び3つの胚葉へのインビトロ分化
特定のリプログラミング因子をコードするエピソームベクターを報告された方法によって使用した(Okita K,et al.(2011)A more efficient method to generate integration−free human iPS cells.Nat Methods 8(5):409−412)。要約すれば、10%FBSが補充されたDMEMで育ったHDFを微細穿孔システム(Neon;Invitrogen)を通じて製造社の説明書によって、エピソームベクター(総3μg)を電気穿孔した。1,650ボルトの電圧で10分間3回パルスを加えた後、細胞をDMEM(10%FBS含む)でさらに培養した。形質転換7日後、細胞をフィーダー層に移した。hESCと類似した形態を示すiPSCコロニーを機械装置で取り上げて特性分析のためにさらに培養した。
【0120】
iPSCは、インビトロで公知の方法を用いて3つの胚葉に分化させた(Sugii S,et al.(2010)Human and mouse adipose−derived cells support feederindependent induction of pluripotent stem cells.Proc Natl Acad Sci USA 107(8):3558−3563)。IV型コラゲナーゼ(Invitrogen)を通じて部分的にiPSCを分離させることによって、形成された胚芽体(Embryoid bodies、EBs)を超低吸着プレート((Ultralow attachment plate、Corning)に移し、20%(vol/vol)ノックアウト血清(Invitrogen)、4.5g/L L−グルタミン、1%非必須アミノ酸、0.1mM 2−メルカプトエタノール及び5%FBSが補充されたDMEM/F12(1:1)培地で培養した。前記条件で1週間培養後、EBをマトリゲル−コーティングディッシュに付着させ、10日間さらに培養した。EBが3つの胚葉を代表する細胞で自発的に分化されるかの有無は、適切な抗体を用いた免疫染色を通じて調査した。
【0121】
iPSCの分化
従来報告された方法によってiPSCを内胚葉系列に分化させた(Si−Tayeb K,et al.(2010)Highly efficient generation of human hepatocyte−like cells from induced pluripotent stem cells.Hepatology 51(1):297−305)。要約すれば、iPSCコロニーをmTeSR−1 hESC成長培地(StemCell Technology)で無支持細胞環境(feeder free)で培養した。確かな内胚葉細胞を収得するために、未分化iPCSを100ng/mLアクチビンA(PeproTech)及び5μMホスファチジルイノシトール3−キナーゼ抑制剤(LY−294002;Sigma)が補充されたRPMI/B27(RPMI−1640はSigma、B27はInvitrogenで購入)培地で5日間培養した。内胚葉に分化された細胞を採集して総RNAを分離し、cDNA合成のための鋳型として使用した。
【0122】
従来報告された方法を少し変形してiPSCを内胚葉上皮細胞に分化させた(Yoo CH,et al.(2013)Endothelial progenitor cells from human dental pulp−derived iPS cells as a therapeutic target for ischemic vascular diseases.Biomaterials 34(33):8149−8160)。要約すれば、EBを20ng/mL BMP4(bone morphogenic protein 4、R&D Systems)及び10ng/mLアクチビンA(PeproTech)が補充されたhESC培地で培養し、EB形成3日目にEBをマトリゲル−コーティングされたディッシュに付着させた後、10日間100ng/mL VEGF(PeproTech)及び50ng/mL basic FGF(R&D Systems)が補充された培地で上皮細胞への分化を誘導した。
【0123】
iPSCの逆位及び修復誘導のためのTALEN形質転換
IV型コラーゲンを処理することによって、培養されたiPSCを収集した。PBSで洗浄した後、細胞をAccutase(Invitrogen)で追加的に処理して単一細胞浮遊物を生成した(Desbordes SC,et al.(2008)High−throughput screening assay for the identification of compounds regulating self−renewal and differentiation in human embryonic stem cells.Cell Stem Cell 2(6):602−612)。これら単一細胞は、TALENをコードするプラスミド(5μgのそれぞれのプラスミド)と混合して850ボルトの電圧で30分間パルスを加えた。以後、細胞をフィーダー細胞に細胞をシーディングし、10日間培養した。ゲノム逆位または修復を検出するために、それぞれのコロニーで得た細胞をリシス緩衝液[プロテイナーゼKを含有する1×Ex−taq緩衝液(pH8.0)]で3時間56℃で破砕した。プロテイナーゼKを不活性化した後、2μL ゲノムDNA溶液をEx−taq DNA重合酵素(Takara)及び特異的プライマーを用いてPCRを行った。PCR産物は、アガロースゲル電気泳動で分析し、使われたプライマーは、表5に表示した。
【0124】
細胞のクローナルポピュレーションの分離、PCR分析及び変曲点のDNAシーケンシング
逆位(または、繰り返し)細胞のクローナルポピュレーションを分離するために、PCRを通じて所望の遺伝子変形がなされたものであって、同定された各コロニーを公知の方法を通じてコラゲナーゼ及びAccutaseを用いて単一細胞に分離し、リプレーティングした。3回の継代培養後、いくつかのクローン(逆位6クローン及び修復4クローン)を選定してシーケンシング及び追加実験を進行した。配列決定のために、増幅されたPCR産物を電気泳動し、Gel Extraction kit(SolGent)を用いてアガロースゲルで溶出し、pGEM−Tベクター(Promega)にクローニングした。クローニングされたPCR産物は、T7プライマーを用いてシーケンシングした。
【0125】
RNA分離、RT−PCR及びqPCR
TRIzol試薬(Invitrogen)を用いて製造社の説明書によって、細胞から全体RNAを精製した。DiaStar cDNA合成キット(SolGent)を用いて総RNA(1μg)からcDNAを合成した。Factor VIII、FOXA2、Sox17及びGAPDHの発現を確認するために、合成されたcDNAを鋳型としてEx−Taq(Takara)を用いてPCRを行った。qPCRのために、製造社の説明書によって、SYBR Premix Ex−Taq(Takara)を使用した。RT−PCRまたはqPCRのための特異的プライマーは、表5に羅列した。
【0126】
アルカリホスファターゼ染色及び免疫染色
白血球アルカリホスファターゼ染色キット(Sigma)を用いて製造社の説明書によって、アルカリホスファターゼ活性を測定した。多能性幹細胞マーカー染色のために、細胞を4%ホルムアルデヒド溶液に固定させ、0.2%Triton X−100で透過化させた。PBSで洗浄した後、細胞を5%正常ゴート血清及び2%BSAを含むPBS溶液で培養した。以後、細胞を1次抗体と共に2時間常温で培養し、PBSで洗浄した後、常温で1時間蛍光−接合2次抗体(Alexa Fluor 488 or 594;Invitrogen)と共に培養した。核を視覚化するために、細胞をDAPI(Vector Laboratories)を含むアンチフェード・マウンティング培地にマウンティングした。イメージをキャプチャーしてOlympus IX71顕微鏡またはFSXシステムを通じて分析した。
【0127】
DNA指紋分析及び核型分析
iPSC細胞株の皮膚線維芽細胞の起源を確認するために、Gene−Analysis Institute of Human Pass Inc.でPCR−基盤STR(short tandem repeat)分析を行った。要約すれば、iPSC細胞株及びこれらの親細胞から分離されたゲノムでPCRからAmpFISTR PCRシステム(Applied Biosystems)を用いてSTR座位を増幅した。増幅産物は、ABI PRISM 3130XLSTR P分析器及びGenemapper(Version 3.2;Applied Biosystems)を用いて分析した。核型の調査のために、染色体をGiemsaで染色してG−バンディング分析を行い、分析には、Chromosome Image Processing Systemを使用した。
【0128】
統計的分析
データは、平均±標準誤差で示した。統計的分析にスチューデントt検定を適用し、P<0.05である場合、統計的有意性を有すると見なした。
【0129】
実験結果
ヒトiPSCsの製作及び特性分析
4つのYamanaka因子をコードするエピソームベクターを電気穿孔してヒト皮膚線維芽細胞(human dermal fibroblasts、HDFs)から野生型iPSCsを収得した。胚芽幹細胞(ESC)−類似コロニーは、形質転換された細胞をフィーダー細胞層にリプレーティングした後、10日後に表われた。アルカリホスファターゼ活性を有する総8個のコロニー(Epi1−Epi8と命名)を選定した(
図5a及び
図5b)。7または8継代後、これらクローンにエピソームベクターが存在しないということを確認するために、ベクター内のEBNA−1配列に特異的なプライマーを用いたPCRを行った。1つのクローン(Epi1)のみがEBNA−1配列を含有し、これにより、以後、分析から除外された(
図5c)。次いで、2つのiPSC細胞株(Epi3及びEpi8)の核型を確認し、
図10aから見るように、これらは、正常な核型を有した。これらiPSCが、親HDFから由来したものであるか否かを確認するために、DNA指紋分析を行った(表4)。このような初期特性分析後、本発明者らは、Epi3細胞株を追加実験の対象として選定した。
【0130】
【表4】
【0131】
このiPSC細胞株は、OCT4、NANOG、SSEA−4及びTRA−1−60のような典型的なESCマーカータンパク質を発現した(
図5d及び
図10b)。RT−PCR及び定量的PCR(qPCR)の分析結果、ヒトESC細胞株であるH9よりもEpi3細胞株で多能性マーカー遺伝子が高発現されることが分かった(
図5e及び
図5f)。次いで、Epi3細胞株の分化能を調査した。胚芽体を収得してゼラチン−コーティング培養皿に付着させてインビトロで3個の胚葉に自発的に分化されるようにした。予想通りに、外胚葉(Nestin及びPax6)、中胚葉[α−SMA(α−smooth muscle actin)及びBrachyury]及び内胚葉[AFP(α−fetoタンパク質)及びHNF3β(hepatocyte nuclear factor 3−β)]系列のマーカータンパク質が分化された細胞で発現された(
図5g及び
図10c)。これらデータは、成人HDF由来のEpi3細胞株が多能性を有するということを示す。
【0132】
TALEN対を用いたiPSCsのF8座位のターゲティングされた逆位
逆位のような構造変異(Structural variations、SVs)は、A型血友病を含む遺伝的疾患と関連がある(Feuk L,Carson AR,Scherer SW(2006)Structural variation in the human genome.Nat Rev Genet 7(2):85−97)。ほぼ半分に達する重症A型血友病は、X−関連F8遺伝子を損傷させる2つの互いに異なる逆位によって誘発される。これら逆位は、1番イントロン(重症A型血友病の1〜4%)または22番イントロン(重症A型血友病の約50%)内の配列を含む非対立性HR(nonallelic HR、NAHR)及びこれらの相応する相同配列(それぞれ1番または2番イントロン逆位と命名)から発生する(Lakich D,Kazazian HH,Jr.,Antonarakis SE,Gitschier J(1993)Inversions disrupting the factor VIII gene are a common cause of severe haemophilia A.Nat Genet 5(3):236−241)。本発明者らは、1番イントロン逆位に焦点を合わせて1番イントロン相同体をターゲットとする11対のTALENを構築した(
図6a)。これらTALENの遺伝子操作活性をT7E1(T7 endonuclease I)分析を用いてHEK293T細胞を通じて試験した(Kim HJ,Lee HJ,Kim H,Cho SW,Kim JS(2009)Targeted genome editing in human cells with zinc finger nucleases constructed via modular assembly.Genome Res 19(7):1279−1288)(
図6b)。ターゲット部位で33%の頻度で突然変異を誘導して、最も活性が高いTALEN対(TALEN 01と命名)を選定した。前記TALENは、1.9%の頻度でHEK293T細胞で1番イントロン相同体を含む140−kb逆位を誘導した(
図11)。次いで、本発明者らは、前記TALENが相同性が高い部位でオフターゲット効果を示すか否かを調査した結果、T7E1分析を通じて、これら部位でオフターゲット突然変異が検出されないということを確認した(
図12及び表5)。
【0133】
【表5】
【0134】
以後、本発明者らは、血友病モデル細胞株を製作するために、同じTALEN対を用いてiPSCで140−kb逆位を誘導した。野生型iPSCにTALENプラスミドを電気穿孔して10日間培養することによって、コロニーを形成させた。逆位を検出することができる特異的プライマーを用いて、各コロニーから分離されたゲノムDNA試料に対するPCRを行った。432個のうち、6個のコロニー(1.4%、HEK293細胞に匹敵)が、2つの逆位変曲点連結部で陽性PCRバンドを表わした。4個のコロニーを追加的に培養して単一細胞クローンを作った。これらクローンは、140−kb逆位の診断基準となるPCRバンドを形成したが、野生型の遺伝子型に該当するPCRバンドを生成しなかった(
図7a)。次いで、本発明者らは、これらPCR産物をクローニングしてDNA配列を調査することによって、逆位遺伝子型を確認した。TALENのターゲット部位でindel(挿入あるいは削除)は発見されず(
図7b)、これは、1番または2番イントロン類似体でTALENによって誘導された単一DSBが無エラー(error−free)NAHRを通じてDNA逆位を触発したということを示唆する。しかし、TALENがイントロン相同体1で1つ、相同体2でさらに1つに総2個のDSBを生成し、これらDSBが、2次突然変異を残さないままNHEJによって切れた間に結合した可能性を排除することができない。
【0135】
iPSCシステムでの逆位分節のターゲッティングされた逆位
以前研究で、本発明者らは、ZFN対を用いてHEK293細胞の1番イントロン相同体を含むターゲッティングされた染色体逆位を誘導して逆位を有する異型接合クローンを分離した(Lee HJ,Kweon J,Kim E,Kim S,Kim JS(2012)Targeted chromosomal duplications and inversions in the human genome using zinc finger nucleases.Genome Res 22(3):539−548)。しかし、HEK293細胞は、F8遺伝子を発現せず、細胞治療に使われない。さらに、HEK293細胞は、3つのコピーのX染色体を有する。このような限界は、逆位部位を修復してF8遺伝子の発現を回復させることによって、治療的適用をしようとする試みに障害になる。
【0136】
本発明者らは、血友病モデルiPSC細胞株の逆位140−kbp分節がTALEN対を用いた修復によって矯正されうるか否かを調査した(TALEN部位は、疾患モデル細胞株で完全に保存される)。TALENプラスミドを逆位を含む2つのiPSCクローン(以下、“逆位クローン”)に形質転換し、いくつかのコロニーから分離したゲノムDNA試料に対してPCR分析を行うことによって、繰り返し細胞を同定しようとした。本発明者らは、総300個のコロニーをスクリーニングした後、それぞれのiPSCクローンから2つの繰り返しクローンを収得した。したがって、修復頻度は、1.3%(300のうち4)であり、これは、逆位頻度と同一である。PCR分析を通じて、これら繰り返しクローンの遺伝子型が野生型に修復された遺伝子型と一致するということが分かった:これらクローンの試料では、逆位特異的PCRバンドは検出されていない(
図8a)。以後、相同体1及び2を含むこれらPCR産物をクローニングし、シーケンシングした。2つのクローンには、追加的な突然変異がなかったが、残りの2つのクローンには、相同体1及び2いずれもで2つのTALEN部位に2−bp削除が起こった(
図8b)。このような結果は、重症A型血友病で表われる逆位遺伝子型が疾患モデルの生成に使われたものと同じTALEN対を用いて矯正されうるということを示す。
【0137】
それだけではなく、本発明者らは、ヒトESマーカーを発現するか、及びこれらが、3つの1次胚葉に分化する能力を有するか否かを確認することによって、逆位クローン及び繰り返しクローンが依然として多能性細胞に残っているか否かを調査した。これらクローンは、幹細胞マーカーを野生型iPSCに匹敵するレベルに発現し(
図5f)、インビトロで3個の胚葉に分化した(
図14)。このような結果は、TALEN−媒介誘電体工学がiPSCの多能性に否定的な影響を及ぼさないということを示す。
【0138】
繰り返しiPSCから分化された細胞でのF8遺伝子発現
F8遺伝子は、それぞれ内胚葉及び中胚葉から由来する肝細胞及び上皮細胞で発現される(Zelechowska MG,van Mourik JA,Brodniewicz−Proba T(1985)Ultrastructural localization of factor VIII procoagulant antigen in human liver hepatocytes.Nature 317(6039):729−730;Hollestelle MJ,et al.(2001)Tissue distribution of factor VIII gene expression in vivo;Shahani T,et al.(2010)Activation of human endothelial cells from specific vascular beds induces the release of a FVIII storage pool.Blood 115(23):4902−4909)。まず、本発明者らは、F8遺伝子が野生型及び繰り返しiPSCクローンから由来する内胚葉細胞で発現されうるか否かを調査した。iPSCを内胚葉に分化させた後、RT−PCR分析してF8 mRNAを測定した結果、予想通りに、F8 mRNAが野生型及び繰り返しiPSCクローンから分化された細胞から検出された(
図9a)。一方、逆位を有するiPSCから分化した細胞では、野生型及び繰り返しiPSCほど効率的に内胚葉に分化されたにもかかわらず、F8 mRNAは検出されていない。次いで、F8タンパク質の主生産源である上皮細胞でのF8タンパク質発現を調査した(Shahani T,et al.(2010)Activation of human endothelial cells from specific vascular beds induces the release of a FVIII storage pool.Blood 115(23):4902−4909)。iPSCを上皮細胞に分化させた後、F8タンパク質検出のための免疫染色を行った。予想通りに、野生型及び繰り返しiPSCクローンから分化された細胞は、F8タンパク質を発現した(
図9b)。しかし、逆位クローンから分化された細胞は、これらiPSCが成功的に上皮細胞に分化したことが成熟上皮細胞標識タンパク質であるvon Willebrand因子の発現を通じて確認されたということにも、F8タンパク質は発現されていない。このような結果は、F8遺伝子の保全性が繰り返しiPSCで保持されることを立証するものである。
【0139】
以上、本発明の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者にとって、このような具体的な記述は、単に望ましい具現例であり、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物とによって定義される。