【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面によれば、成分として、
SiO
2 58−60.4重量%と、
Al
2O
3 14−16.5重量%と、
CaO 14.1−16.5重量%と、
MgO 6−8.2重量%と、
Li
2O 0.01−0.4重量%と、
Na
2O+K
2O 1.15重量%未満と、
K
2O >0.5重量%と、
TiO
2 1.5重量%未満と、
Fe
2O
3 1重量%未満とを含み、
且つ、重量比率の比C1=CaO/MgOの範囲が2より大きく且つ2.4以下である無ホウ素ガラス繊維組成物を提供する。
【0010】
同時に、さらに、重量比率の比C2=K
2O/Na
2Oの範囲が2より大きく1且つ6以下に限定される。
【0011】
好ましくは、重量比率の比C1=CaO/MgOの範囲が2より大きく且つ2.3以下である。
【0012】
好ましくは、重量比率の比C2=K
2O/Na
2Oの範囲が1.2−5である。
【0013】
本発明の別の局面によれば、上記ガラス繊維組成物から成るガラス繊維を提供する。
【0014】
本発明の別の局面によれば、上記ガラス繊維を含む複合材を提供する。
【0015】
本発明に係る無ホウ素ガラス繊維組成物は、適量のK
2OとLi
2Oを導入して、CaO、MgO、K
2O及びLi
2Oの含有量範囲を合理的にして、CaO/MgOとK
2O/Na
2Oの比の範囲を厳格に制御し、及びK
2O、Na
2O及びLi
2O三元混合アルカリの効果を利用し、さらに選択的に少量のZrO
2とHfO
2を導入する。
【0016】
具体的に、本発明に係る無ホウ素ガラス繊維組成物は、成分として、
SiO
2 58−60.4重量%と、
Al
2O
3 14−16.5重量%と、
CaO 14.1−16.5重量%と、
MgO 6−8.2重量%と、
Li
2O 0.01−0.4重量%と、
Na
2O+K
2O 1.15重量%未満と、
K
2O >0.5重量%と、
TiO
2 1.5重量%未満と、
Fe
2O
3 1重量%未満とを含み、
且つ、重量比率の比C1=CaO/MgOの範囲が2より大きく且つ2.4以下である。
【0017】
該ガラス繊維組成物の各成分の役割及び含有量について説明する。
SiO
2は、ガラスの骨格を構成する主な酸化物であり、且つ各成分を安定化させる役割を果たす。本発明に係るガラス繊維組成物において、SiO
2の含有量範囲が58−60.4重量%に限定される。機械的特性を確保する上、ガラスの澄清し難さを向上させないように、本発明では、酸化ケイ素含有量を低いレベルに制御する。好ましくは、SiO
2の含有量範囲が58.5−60.4重量%に限定される。
【0018】
Al
2O
3は、ガラスの骨格を構成する酸化物であり、SiO
2と結合するとガラスの機械的特性に対し実質的な役割を果たし、且つガラスの相分離と耐水性の点にも重要な作用を有する。本発明に係るガラス繊維組成物において、Al
2O
3の含有量範囲が14−16.5重量%に限定され、含有量が低すぎる場合、十分に高いガラス機械的特性、特にモジュラスが得られることができず、含有量が高すぎる場合、ガラスの粘度が過度に高くなり溶融してしまい、澄清が困難になる。好ましくは、Al
2O
3の含有量範囲が14.5−16.5重量%に限定される。
【0019】
CaOは、重要な網目修飾剤酸化物として、ガラスの高温粘度を低下させて、ガラスの結晶化や粘度温度依存性の制御に特に有効であるが、含有量が高すぎる場合、ガラスの結晶化には増大する傾向があり、ガラスからアノーサイト、ウォラストナイト等の結晶が析出される懸念がある。本発明に係るガラス繊維組成物において、CaOの含有量範囲が14.1−16.5重量%に限定され、好ましくは、CaOの含有量範囲が14.1−16.1重量%に限定される。
【0020】
MgOはガラスにおいてCaOとほぼ類似する役割を果たすが、Mg
2+の方は電界強度が高く、ガラスのモジュラス向上に重要な役割を果たす。MgOの含有量が高すぎる場合、ガラスの結晶化傾向を向上させて結晶化速度を増大し、ガラスからディオプサイド等の結晶が析出される懸念があり、且つこの傾向がCaOよりも高い。本発明に係るガラス繊維組成物において、MgOの含有量範囲が6−8.2重量%に限定され、好ましくは、MgOの含有量範囲が6−8重量%に限定される。
【0021】
さらに、MgO−CaO−Al
2O
3−SiO
2系を本体とする高性能ガラスは、結晶化されたガラスに含まれた結晶相として主にディオプサイド(CaMgSi
2O
6)、アノーサイト(CaAl
2Si
2O
8)又はウォラストナイト(CaSiO
3)を含む。この3種類の結晶相の結晶化傾向を抑制して、ガラスの結晶化の上限温度(液相線温度)と結晶化の程度を低下させるために、本発明に係るガラス繊維組成物において、重量比率の比C1=CaO/MgO範囲が2より大きく且つ2.4以下に限定される。Ca
2+/Mg
2+イオンのモル比の範囲を約1.42−1.72に制御することによって、ガラスの結晶化過程でのCa
2+イオンを十分に供給する上、Mg
2+イオンの高電界強度の特徴を利用して、ガラスにおいてMg
2+イオンとCa
2+イオンによる陰イオン団への競争作用によって、ディオプサイドとアノーサイトが結晶化過程において拮抗するようにして、それにより2種の結晶相の結晶化速度と結晶粒子の完全度を低下させ、2種の結晶相の結晶化傾向を同時に抑制するとともに液相線温度を低下させる目的を達成させる。勿論、CaO/MgOが低すぎる場合、Mg
2+イオンの方が多くなり、ディオプサイドの結晶化が強くなり、CaO/MgOが高すぎる場合、Ca
2+イオンの方が多くなり、アノーサイトの結晶化が強くなり、またはウォラストナイトの結晶化が発生し、競争結晶化のバランスが崩れる。好ましくは、C1=CaO/MgOの比C1の範囲が2より大きく且つ2.3以下に限定され、より好ましくは、C1=CaO/MgOの比の範囲が2より大きく且つ2.14以下に限定される。従来の高性能ガラスでは、このような技術的効果は予測以外のことである。また、Ca−Oの酸化物結合エネルギーが大きく、同時にガラス構造に対する蓄積作用が顕著であることから、CaO含有量が高い場合、得られたガラスの機械的強度がより良好になる。
【0022】
K
2OとNa
2Oのいずれもガラスの粘度を低下できるものであり、良好なフラックス剤である。発明者は、アルカリ金属酸化物の総量が一定である場合、Na
2Oの代わりにK
2Oを用いることで、ガラスの結晶化傾向を低下させて、繊維成形性を改善し、溶融ガラスの表面張力を著しく低下させて、ガラスの澄清効果を効果的に改善することができ、さらに、ガラスの機械的強度の向上に有利であることを見出した。本発明に係るガラス繊維組成物において、Na
2O+K
2Oの含有量範囲が1.15重量%未満に限定され、K
2Oの含有量範囲が0.5重量%より大きく限定され、さらに、重量比率の比C2=K
2O/Na
2O範囲が1より大きく6以下に限定され、好ましくは、C2=K
2O/Na
2Oの比の範囲が1.2−5に限定される。
【0023】
Na
2OとK
2Oに比べて、Li
2Oはガラス粘度を著しく低下させ、それによりガラスの融解性を改善することができ、且つガラスの力学的性質の向上にも役立つ。同時に、少量のLi
2Oだけで十分の遊離酸素を提供でき、より多くのアルミニウムイオンが四面体配位を形成して、ガラス系の網目構造を強化させて、さらにガラスの結晶化能力を低下させることに有利である。しかしながら、Li
2Oの含有量が高すぎる場合、過量のLi
+が顕著な網目切れになり、ガラス構造の安定性を破壊し、却ってガラスの結晶化傾向を速めてしまう。従って、本発明に係るガラス繊維組成物において、Li
2Oの含有量範囲が0.01−0.4重量%に限定される。発明人は、Li
2Oの含有量制御を、0.01重量%以上で且つ0.1重量%未満であるような低範囲に制限しても、技術的効果が高いことを見出した。
【0024】
TiO
2は、高温でのガラス粘度を低下させるとともに、一定のフラックス作用を有する。しかし、チタンイオンが一定の着色作用を有し、特にTiO
2含有量が1.5重量%を超える場合、このような着色作用は非常に顕著になり、ガラス繊維製品の外観に悪影響を及ぼす。従って、本発明に係るガラス繊維組成物において、TiO
2の含有量範囲が1.5重量%未満に限定される。
【0025】
Fe
2O
3はガラスの融解に有利であるとともに、ガラスの結晶化性能を改善できる。しかしながら、鉄イオンと第一鉄イオンが着色作用を有するので、導入量が多いことが好ましくない。そのため、本発明に係るガラス繊維組成物において、Fe
2O
3の含有量範囲が1重量%未満に限定される。
【0026】
また、ガラスの機械的特性と熱安定性を向上させるために、本発明に係るガラス繊維組成物に少量のZrO
2とHfO
2を選択的に導入してもよい。これら物質がガラスの粘度を増大するため、導入量が多いことが好ましくない。従って、本発明に係るガラス繊維組成物において、ZrO
2とHfO
2の合計含有量範囲が0.01−2重量%に限定される。
【0027】
また、本発明に係るガラス繊維組成物には1重量%以下の少量の不純物の含有が許可される。
【0028】
本発明に係るガラス繊維組成物において、各成分の含有量を上記範囲にすることによる有益な効果は、実施例によって具体的な実験データを用いて後述する。
【0029】
以下は、本発明に係るガラス繊維組成物に含まれる各成分の好適な含有量範囲の例である。
【0030】
好適例1
本発明に係る無ホウ素ガラス繊維組成物は、成分として、
SiO
2 58.5−60.4重量%と、
Al
2O
3 14.5−16.5重量%と、
CaO 14.1−16.1重量%と、
MgO 6−8重量%と、
Li
2O 0.01−0.4重量%と、
Na
2O+K
2O 1.15重量%未満と、
K
2O >0.5重量%と、
TiO
2 1.5重量%未満と、
Fe
2O
3 1重量%未満とを含み、
且つ、重量比率の比C1=CaO/MgOの範囲が2より大きく且つ2.3以下であり、重量比率の比C2=K
2O/Na
2Oの範囲が1より大きく且つ6以下である。
【0031】
好適例2
本発明に係る無ホウ素ガラス繊維組成物は、成分として、
SiO
2 58.5−60.4重量%と、
Al
2O
3 14.5−16.5重量%と、
CaO 14.1−16.1重量%と、
MgO 6−8重量%と、
Li
2O 0.01−0.4重量%と、
Na
2O+K
2O 1.15重量%未満と、
K
2O >0.5重量%と、
TiO
2 1.5重量%未満と、
Fe
2O
3 1重量%未満とを含み、
且つ、重量比率の比C1=CaO/MgOの範囲が2より大きく且つ2.14以下であり、重量比率の比C2=K
2O/Na
2Oの範囲が1.2−5である。
【0032】
好適例3
本発明に係る無ホウ素ガラス繊維組成物は、成分として、
SiO
2 58.5−60.4重量%と、
Al
2O
3 14.5−16.5重量%と、
CaO 14.1−16.1重量%と、
MgO 6−8重量%と、
Li
2O 0.01重量%以上で且つ0.1重量%未満と、
Na
2O+K
2O 1.15重量%未満と、
K
2O >0.5重量%と、
TiO
2 1.5重量%未満と、
Fe
2O
3 1重量%未満とを含み、
且つ、重量比率の比C1=CaO/MgOの範囲が2より大きく且つ2.14以下であり、重量比率の比C2=K
2O/Na
2Oの範囲が1.2−5である。