(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
光沢ニッケル電気めっき浴は、自動車、電気、電気器具、ハードウェア及び様々な他の産業において使用される。最も一般的に知られ、使用されているニッケル電気めっき浴の1つはワット浴である。典型的なワット浴は、硫酸ニッケル、塩化ニッケル及びホウ酸を含む。ワット浴は、典型的には、2〜5.2のpH範囲、30〜70℃のめっき温度範囲及び1〜6アンペア/dm
2の電流密度範囲で操作する。硫酸ニッケルは、所望のニッケルイオン濃度を提供するために浴中に比較的大量に含まれる。塩化ニッケルはアノードの腐食を改善し、導電性を高める。ホウ酸は、浴のpHを維持する弱い緩衝液として使用される。光沢と艶のあるめっき層を得るために、有機及び無機の光沢剤がしばしば浴に添加される。
【0003】
ほとんどの金属めっき浴の共通の問題は、浴成分の回収及び使用後の分解製品の処分である。回収プロセスが高価になる可能性があるが、いくつかの浴成分は容易に回収することができる一方で、他の成分及び分解生成物は回収が困難であり、排水中に排出され、したがって環境を汚染する可能性がある。ワット浴の場合、硫酸ニッケル及び塩化ニッケルは容易に回収することができるが、ホウ酸の回収は困難であり、多くの場合、最後には環境を汚染する廃水となる。
【0004】
世界中の多くの政府は、どのように化学廃棄物が処理されるか、またどの種類の化学工業が開発プロセス及び製造プロセスで使用されるかについて、より厳しい環境法規制を通過させている。例えば、欧州連合(EU)では、REAChとして知られる化学物質の登録、評価、認可及び制限の規制により、多くの化学物質が禁止されているか、または、実質的な工業的使用からホウ酸のような化学物質を禁止する過程にある。したがって、ホウ酸を含む典型的な電気めっき浴を製造し販売する金属めっき産業は、ホウ酸を含まない浴を開発しようと試みている。ニッケル電気めっき浴の場合、多くの製造業者が、ホウ酸を酢酸ニッケルで置換することによって実質的に同じめっき性能を有するホウ酸を含まないニッケル電気めっき浴を開発する問題に取り組もうとしている。残念なことに、酢酸ニッケル浴は、適用される電流密度に依存して外観が変化する不規則で不十分なニッケルめっき層をしばしば生成する。さらに、酢酸ニッケルをベースとする浴は、ニッケル浴に含まれる量に依存して、悪臭を発生させて、作業環境を損なう可能性がある。
【0005】
めっき性能を改善するためにニッケル電気めっき浴に典型的に含まれる他の化合物は、現在、多くの国の政府によって認められない、クマリンである。クマリンは、ワット浴からの高レベリングの、延性のある、半光沢で、硫黄を含まないニッケルめっき層を提供するためにニッケルめっき浴に含まれる。レベリングとは、ニッケルめっき層がスクラッチ及びポリッシュラインなどの表面欠陥を埋めて滑らかにする能力を指す。クマリンを含む典型的なニッケルめっき浴の例は、約150〜200mg/Lのクマリン及び約30mg/Lのホルムアルデヒドを含む。浴中の高濃度のクマリンは、非常に良好なレベリング性能を提供するが、そのような性能は短命である。そのような高いクマリン濃度は、有害な分解生成物の割合を高くする。分解生成物は、その後の光沢ニッケルめっき層によって容易には光沢の出ない、不均一でくすんだ灰色の領域をめっき層中に生じさせるので、望ましくない。それらは、ニッケル浴のレベリング性能を低下させ得るとともに、ニッケルめっき層の他の有益な物理的性質を低下させ得る。この問題を解決するために、産業界の作業者はクマリン濃度を減らし、ホルムアルデヒドと抱水クロラールを加えることを提案しているが、適度な濃度のこのような添加剤の使用は、ニッケルめっき層の引張応力を増加させるだけでなく、浴のレベリング性能を損なう。さらに、ホルムアルデヒドは、ホウ酸及びクマリンと同様に、REAChなどの多くの政府規制が環境に有害であるとみなす別の化合物である。
【0006】
めっき層の延性及び内部応力を犠牲にすることなく高度にレベリングされたニッケルめっき層を提供することが重要である。めっきしたニッケルめっき層の内部応力は、圧縮応力または引張応力であり得る。圧縮応力は、応力が緩和されるようにめっき層が膨張する場所である。対照的に、引張応力は、めっき層が収縮する場所である。高度に圧縮されためっき層は、ブリスター、ひずみ、またはめっき層を基材から分離させることがあり、引張応力の高いめっき層は、ひび割れ及び疲労強度の低下に加えて、ひずみを引き起こす可能性がある。
【0007】
上記で簡単に述べたように、ニッケル電気めっき浴は様々な産業で使用されている。ニッケル電気めっき浴は、電気コネクタ及びリードフレーム上にニッケル層を電気めっきする際に典型的に使用される。このような物品は、不規則な形状を有し、比較的粗い表面を有する銅及び銅合金のような金属で構成される。したがって、ニッケル電気めっきの間、電流密度は物品にわたって不均一であり、物品にわたって厚さ及び光沢性が容認できないほど不均一であるニッケルめっき層をもたらすことが多い。
【0008】
ニッケル電気めっき浴の別の重要な機能は、金及び金合金でめっきされた下地金属の腐食を防止するために、金及び金合金めっき層のためのニッケル下地層を提供することである。下地金属の腐食をもたらす金及び金合金の細孔形成の防止は、困難な問題である。金及び金合金めっきされた物品の細孔形成は、腐食が電子デバイス内の構成要素間の電気的接触の欠陥につながり得る電子材料産業において特に問題となっている。エレクトロニクスでは、金と金の合金が接点及びコネクタのはんだ付け可能な耐食性表面として使用されている。金及び金合金層は、集積回路(IC)製造のためのリード仕上げにも使用される。しかしながら、相対多孔度のような金のある種の物理的特性は、金が基材上に付着するときに問題になる。例えば、金の多孔性は、めっきされた表面上に隙間を生じさせる可能性がある。これらの小さな空間は、金層と下地金属層とのガルバニックカップリングによって腐食の一因となり、実際に腐食を促進したりする可能性がある。これは、卑金属基材と、金の外面の孔を介して腐食性要素に曝される可能性のある付随する任意の下地金属層に起因すると考えられている。
【0009】
さらに、多くの用途には、コーティングされたリードフレームの熱暴露が含まれる。下地金属が貴金属表面層に拡散すると、熱老化条件下での層間の金属の拡散によって表面品質が低下することがある。
【0010】
腐食問題を克服するための少なくとも3つの異なるアプローチが試みられている:1)コーティングの多孔度の減少、2)異なる金属の電位差によって引き起こされるガルバニック効果の抑制、及び3)電気めっき層の孔の封止。多孔度の低減は広範に研究されている。金のパルスめっき及び種々の湿潤/結晶粒微細化剤の金めっき浴への利用は、金の構造に影響を及ぼし、金の多孔度の低減に寄与する2つの要因である。多くの場合、予防保守プログラムと組み合わされる、標準のカーボン浴処理及び一連の電気めっき浴またはタンクの良好なろ過の実施は、金の金属付着レベル及びそれに対応して低レベルの表面多孔度を維持するのに役立つ。しかしながら、ある程度の多孔度は、依然として残っている。
【0011】
細孔の閉鎖、シーリング及び他の腐食抑制方法が試みられたが、成功は限られていた。腐食抑制効果を有する有機沈殿物を使用する潜在的機序は、当該技術分野において知られている。これらの化合物の多くは、典型的には有機溶媒に可溶性であり、長期的な腐食保護を提供しないと考えられた。細孔シーリングまたは細孔ブロッキングの他の方法は、細孔内の不溶性化合物の形成に基づいている。
【0012】
細孔形成の問題に加えて、高温に金を暴露する例えば熱老化における、金の接触抵抗が望ましくなく増加する。この接触抵抗の増加は、電流の導体としての金の性能を損なう。理論的には、作業者は、この問題は、金と共付着された(co−deposited)有機材料の接触面への拡散によって生じると考えている。この問題を回避するための様々な技術が従来試みられてきており、典型的には電解研磨が含まれる。しかしながら、この目的のために完全に満足のいくものであることは証明されておらず、調査努力が続けられている。
【0013】
したがって、広い電流密度範囲においても、良好な延性であり、金及び金合金層における孔食及び細孔形成を低減または抑制するための下地層として使用することができ、そのため下地金属の腐食を抑制することができる、光沢性のある均一なニッケルめっき層を提供するためのニッケル電気めっき組成物及び方法が必要である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書全体を通して使用される略語は、文脈上他に明白に示さない限り、以下の意味を有する:℃=摂氏度、g=グラム、mg=ミリグラム、ppm=mg/L、L=リットル、mL=ミリリットル、cm=センチメートル、μm=ミクロン、DI=脱イオン、A=アンペア、ASD=アンペア/dm
2 =めっき速度、DC=直流、UV=紫外線、lbf=重量ポンド=4.44822162N、N=ニュートン、psi=ポンド/平方インチ=0.06805気圧、1気圧=1.01325×10
6ダイン/平方センチメートル、wt%=重量%、v/v=容積に対する容積、XRF=蛍光X線、SEM=走査型電子顕微鏡写真、rpm=毎分回転数、ASTM=米国標準試験法、及びGIMP=GNU画像編集プログラム。
【0023】
「隣接する」という用語は、2つの金属層が共通の界面を有するように直接接触していることを意味する。「双性イオン」(以前は「双極子」と称された)という用語は、正及び負に帯電した基を有する中性分子を意味し、内塩と称されることが多い。「水性」という用語は、水または水ベースであることを意味する。「レベリング」という用語は、電気めっきされためっき層がスクラッチまたはポリッシュラインなどの表面欠陥を埋めて滑らかにする能力を有することを意味する。「マット」という用語は、くすんだ外観を意味する。「孔(pit)」または「孔食(pitting)」または「細孔(pore)」という用語は、基材を完全に貫通し得る穴またはオリフィスを意味する。「デンドライト」という用語は、分枝構造を有する結晶材料を意味する。「組成物」及び「浴」という用語は、明細書全体にわたって交換可能に使用される。「めっき層(deposit)」及び「層(layer)」という用語は、明細書全体にわたって交換可能に使用される。「電気めっき(electroplating)」、「めっき(plating)」及び「付着(depositing)」という用語は、明細書全体にわたって交換可能に使用される。「a」及び「an」という用語は、明細書全体にわたって単数及び複数の両方を指すことができる。そのような数値範囲が最大100%に制限されることが論理的である場合を除いて、すべての数値範囲は包括的で任意の順序で組み合わせ可能である。
【0024】
本発明は、環境に優しい水性ニッケル電気めっき組成物、及びその環境に優しいニッケル電気めっき組成物が、1つ以上のN−ベンジルピリジニウムスルホネート双性イオン化合物を含む、光沢性で均一なニッケルめっき層を提供する、基材上にニッケルを電気めっきする方法を対象とする。ニッケル電気めっき組成物は、電気コネクタ及びリードフレームなどの不規則な形状の物品であっても、広い電流密度範囲にわたって光沢性で均一なニッケルめっき層を電気めっきすることができる。環境に優しい水性ニッケル電気めっき組成物は、良好なレベリング性能を有し、この環境に優しい水性ニッケル電気めっき組成物からめっきされた光沢性で均一なニッケルめっき層は、良好な内部応力特性及び良好な延性を有する。
【0025】
1つ以上のN−ベンジルピリジニウムスルホネート化合物は、式
【0027】
を有し、
式中、R
1及びR
2は、独立して、水素、ヒドロキシル、及び(C
1−C
4)アルキルから選択される。好ましくは、R
1及びR
2は、独立して、水素、ヒドロキシル、及び(C
1−C
2)アルキルから選択され、より好ましくはR
1及びR
2は、独立して、水素、ヒドロキシル、及びメチルから選択される。さらにより好ましくは、R
1及びR
2は、独立して、水素及びヒドロキシルから選択され、最も好ましくは、R
1及びR
2は水素である。最も好ましいN−ベンジルピリジニウムスルホネート双性イオン化合物は、N−ベンジルピリジニウム−3−スルホネートである。
【0028】
1つ以上のN−ベンジルピリジニウムスルホネート化合物は、環境に優しい水性ニッケル電気めっき組成物中に、少なくとも0.5ppmの量、好ましくは5ppm〜400ppmの量、さらにより好ましくは10ppm〜300ppmの量、なおより好ましくは50ppm〜300ppm、なおさらに好ましくは100ppm〜300ppmの量、最も好ましくは150ppm〜250ppmで含まれる。
【0029】
1つ以上のニッケルイオン供給源は、水性ニッケル電気めっき組成物中に、少なくとも25g/L、好ましくは30g/L〜150g/L、より好ましくは35g/L〜125g/L、さらにより好ましくは40g/L〜100g/L、なおさらにより好ましくは45g/L〜95,g/L、なおさらに好ましくは50g/L〜90g/L、最も好ましくは50g/L〜80g/Lのニッケルイオン濃度を提供するのに十分な量で含まれる。
【0030】
1つ以上のニッケルイオン供給源には、水に可溶なニッケル塩が含まれる。1つ以上のニッケルイオン供給源には、硫酸ニッケル及びその水和形態の硫酸ニッケル六水和物及び硫酸ニッケル七水和物、スルファミン酸ニッケル及びその水和形態のスルファミン酸四水和物、塩化ニッケル及びその水和形態の塩化ニッケル六水和物、ならびに酢酸ニッケル及びその水和形態の酢酸ニッケル四水和物が含まれるが、これらに限定されない。1つ以上のニッケルイオン供給源は、上記で開示された所望のニッケルイオン濃度を提供するのに十分な量で環境に優しい水性ニッケル電気めっき組成物に含まれる。酢酸ニッケルまたはその水和形態は、水性ニッケル電気めっき組成物中に、好ましくは15g/L〜45g/L、より好ましくは20g/L〜40g/Lの量で含まれ得る。硫酸ニッケルが水性ニッケル電気めっき組成物に含まれる場合、好ましくは、スルファミン酸ニッケルまたはその水和形態は除かれる。硫酸ニッケルは、好ましくは100g/L〜550g/L、より好ましくは150g/L〜350g/Lの量で水性ニッケル電気めっき組成物中に含まれ得る。スルファミン酸ニッケルまたはその水和形態が水性ニッケル電気めっき組成物に含まれる場合、それらは、好ましくは120g/L〜675g/L、より好ましくは200g/L〜450g/Lの量で含まれ得る。塩化ニッケルまたはその水和形態は、水性ニッケル電気めっき組成物中に、好ましくは0〜22g/L、より好ましくは5g/L〜20g/L、さらにより好ましくは5g/L〜15g/L量で含まれ得る。
【0031】
サッカリン酸ナトリウムは、水性ニッケル電気めっき組成物中に、少なくとも0.1g/Lの量で含まれる。好ましくは、サッカリン酸ナトリウムは、0.1g/L〜5g/L、より好ましくは0.2g/L〜3g/Lの量で含まれる。
【0032】
1つ以上の酢酸イオン供給源が、水性ニッケル電気めっき組成物に含まれる。酢酸イオン供給源には、酢酸ニッケル、酢酸ニッケル四水和物、酢酸塩のアルカリ金属塩、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、及び酢酸カリウムが挙げられるが、これらに限定されない。酢酸イオン供給源も酢酸である。アルカリ金属塩がニッケル電気めっき組成物に含まれる場合、好ましくは、酢酸ナトリウム及び酢酸カリウムのうちの1つ以上が選択され、より好ましくは、酢酸が選択される。好ましくは、1つ以上の酢酸イオン供給源の十分な量を水性ニッケル電気めっき組成物に添加して、少なくとも5g/L、好ましくは5g/L〜30g/L、より好ましくは10g/L〜25g/Lでの酢酸イオン濃度を提供する。
【0033】
任意選択的に、1つ以上の塩化物イオン供給源を水性ニッケル電気めっき組成物に含めることができる。1つ以上の塩化物イオン供給源の十分な量を水性ニッケル電気めっき組成物に添加して、0〜20g/L、好ましくは0.5〜20g/L、より好ましくは1g/L〜15g/L、さらにより好ましくは2g/L〜10g/Lでの塩化物イオン濃度を提供する。白金または白金チタンを含有する不溶性アノードのような不溶性アノードを使用してニッケル電気めっきを行う場合、好ましくは、ニッケル電気めっき組成物は塩化物を含まない。塩化物の供給源としては、塩化ニッケル、塩化ニッケル六水和物、塩化水素、塩化ナトリウム及び塩化カリウムのようなアルカリ金属塩が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、塩化物の供給源は塩化ニッケル及び塩化ニッケル六水和物である。好ましくは、塩化物は水性ニッケル電気めっき組成物に含まれる。
【0034】
本発明の水性ニッケル電気めっき組成物は酸性であり、pHは好ましくは2〜6、より好ましくは3〜5.5、さらにより好ましくは4〜5.1の範囲であることができる。無機酸、有機酸、無機塩基または有機塩基は、水性ニッケル電気めっき組成物を緩衝するために使用することができる。そのような酸としては、硫酸、塩酸、スルファミン酸及びホウ酸などの無機酸が挙げられるが、これらに限定されない。酢酸、アミノ酢酸、アスコルビン酸などの有機酸を用いることができる。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基、各種アミン等の有機塩基を用いることができる。好ましくは、緩衝液は、酢酸及びアミノ酢酸から選択される。最も好ましくは緩衝液は酢酸である。ホウ酸を緩衝剤として使用することができるが、最も好ましくは、本発明の水性ニッケル電気めっき組成物はホウ酸を含まない。緩衝液は、所望のpH範囲を維持するのに必要な量で添加することができる。
【0035】
任意選択的に、水性ニッケル電気めっき組成物中に1種以上の光沢剤を含めることができる。任意の光沢剤としては、2−ブチン−1,4−ジオール、1−ブチン−1,4−ジオールエトキシレート、1−エチニルシクロヘキシルアミン及びプロパルギルアルコールが挙げられるが、これらに限定されない。そのような光沢剤は、0.5g/L〜10g/Lの量で含まれ得る。好ましくは、このような任意の光沢剤は、水性ニッケル電気めっき組成物から除外される。
【0036】
任意選択的に、本発明の水性ニッケル電気めっき組成物には、1種以上の界面活性剤を含めることができる。このような界面活性剤には、カチオン性及びアニオン性界面活性剤などのイオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。界面活性剤は、0.05gm/L〜30gm/Lのような従来の量で使用することができる。
【0037】
使用できる界面活性剤の例は、アニオン性界面活性剤であるジ(1,3−ジメチルブチル)スルホコハク酸ナトリウム、2−エチルヘキシル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジアミルナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ジ−アルキルスルホコハク酸ナトリウム、及びドデシルベンゼンナトリウム、ならびにカチオン性界面活性剤、例えば過フッ素化第四級アミンのような第四級アンモニウム塩である。
【0038】
他の任意の添加剤としては、レベラー、キレート剤、錯化剤及び殺生物剤が挙げられるが、これらに限定されない。そのような任意の添加剤は、従来の量で含めることができる。
【0039】
本発明のニッケル電気めっき組成物は環境に優しいので、クマリン、ホルムアルデヒドなどの化合物を含まず、好ましくはホウ酸を含まない。さらに、ニッケル電気めっき組成物は、アリルスルホン酸を含まない。
【0040】
不可避的な金属汚染物を除いて、本発明の水性ニッケル電気めっき組成物はまた、金属めっき浴に通常含まれる合金化金属または金属を含まず、金属めっき層の光沢を輝かせるかまたは改善する。本発明の水性ニッケル電気めっき組成物は、この電気めっき組成物中に最小数の成分を用いる実質的に平滑な表面を有する光沢性で均一なニッケル金属層を付着させる。
【0041】
好ましくは、本発明の水性の環境に優しいニッケル電気めっき組成物は、1つ以上のニッケルイオン供給源であって、この1つ以上のニッケルイオン供給源が溶液中にニッケルをめっきするのに十分な量のニッケルイオンを提供する、1つ以上のニッケルイオン供給源、及びこの1つ以上のニッケルイオン供給源からの対応する対アニオンと、1つ以上のN−ベンジルピリジニウムスルホネート化合物と、1つ以上の酢酸イオン供給源及び対応する対カチオンと、サッカリン酸ナトリウムと、任意選択的に、1つ以上の塩化物イオン供給源及び対応する対カチオンと、任意選択的に1つ以上の界面活性剤と、水と、から構成される。
【0042】
より好ましくは、本発明の環境に優しい水性ニッケル電気めっき組成物は、1つ以上のニッケルイオン供給源であって、この1つ以上のニッケルイオン供給源が溶液中にニッケルをめっきするのに十分な量のニッケルイオンを提供する、1つ以上のニッケルイオン供給源、及びこの1つ以上のニッケルイオン供給源からの対応する対アニオンと、1つ以上のN−ベンジルピリジニウム−3−スルホネート化合物と、1つ以上の酢酸イオン供給源及び対応する対カチオンと、サッカリン酸ナトリウムと、任意選択的に、1つ以上の塩化物イオン供給源及び対応する対カチオンと、任意選択的に1つ以上の界面活性剤と、水と、から構成される。
【0043】
さらにより好ましくは、本発明の環境に優しい水性ニッケル電気めっき組成物は、1つ以上のニッケルイオン供給源であって、この1つ以上のニッケルイオン供給源が溶液中にニッケルをめっきするのに十分な量のニッケルイオンを提供する、1つ以上のニッケルイオン供給源、及びこの1つ以上のニッケルイオン供給源からの対応する対アニオンと、N−ベンジルピリジニウム−3−スルホネートと、サッカリン酸ナトリウムと、酢酸イオンであって、酢酸イオン供給源が、酢酸ニッケル、酢酸ニッケル四水和物、及び酢酸のうちの1つ以上から選択される、酢酸イオンと、1つ以上の塩化物イオン供給源及び対応するカチオンと、任意選択的に1つ以上の界面活性剤と、水と、から構成される。
【0044】
本発明のN−ベンジルピリジニウムスルホネート双性イオン化合物は、経済的に効率的で一般的に使用される電気めっき工業用の分析ツールである従来のUV可視分光法を用いて約2ppmの低濃度で分析可能である。これにより、ニッケル電気めっき業界の作業者は、めっきプロセスが最適な性能で維持され、より効率的かつ経済的な電気めっき法になるように、電気めっき中の組成物中のN−ベンジルピリジニウムスルホネートの濃度をより正確に監視することができる。
【0045】
本発明の水性環境に優しいニッケル電気めっき組成物を使用して、導電性基材と半導体基材の両方の様々な基材上にニッケル層を付着させることができる。好ましくは、ニッケル層が付着される基材は銅及び銅合金基材である。そのような銅合金基材には、黄銅及び青銅が含まれるが、これらに限定されない。めっき中の電気めっき組成物の温度は、室温から、70℃、好ましくは30℃〜60℃、より好ましくは40℃〜60℃までの範囲であり得る。ニッケル電気めっき組成物は、好ましくは、電気めっき中は連続した撹拌下にある。
【0046】
本発明のニッケル金属電気めっき方法は、水性ニッケル電気めっき組成物を提供することと、基材を組成物に浸漬することまたは基材に組成物を噴霧することなどによって、基材を水性ニッケル電気めっき組成物と接触させることと、を含む。基材がカソードとして機能し、対極またはアノードが存在する従来の整流器に電流を印加する。アノードは、基材の表面に隣接してニッケル金属を電気めっきするために使用される任意の従来の可溶性または不溶性アノードであり得る。本発明の水性ニッケル電気めっき組成物は、広い電流密度範囲にわたって光沢性で均一なニッケル金属層の付着を可能にする。多くの基材は不規則な形状であり、典型的には不連続な金属表面を有する。したがって、電流密度は、そのような基材の表面にわたって変化し得、典型的には、めっきの間に不均一な金属めっき層をもたらす。また、表面の光沢性は、通常、マットと光沢性のめっき層の組み合わせでふぞろいである。本発明のニッケル電気めっき組成物からめっきされたニッケル金属は、不規則な形状の基材を含む基材の表面にわたって実質的に滑らかで均一で光沢性のニッケルめっき層を可能にする。さらに、本発明の環境に優しいニッケル電気めっき組成物は、金属基材上のスクラッチ及び研磨目を覆うように実質的に均一で光沢性のニッケルめっき層のめっきを可能にする。
【0047】
電流密度は、0.1ASD以上であることができる。好ましくは、電流密度は0.5ASD〜70ASD、より好ましくは1ASD〜40ASD、さらにより好ましくは5ASD〜30ASDの範囲である。ニッケル電気めっき組成物がリールツーリール電気めっきに使用される場合、電流密度は50ASD〜70ASD、より好ましくは5ASD〜50ASD、さらにより好ましくは5ASD〜30ASDの範囲であり得る。ニッケル電気めっきが60ASD〜70ASDの電流密度で行われる場合、好ましくは、1つ以上のニッケルイオン供給源は、環境に優しいニッケル電気めっき組成物中に、90g/L以上、より好ましくは90g/L〜150g/L、さらにより好ましくは90g/L〜125g/L、最も好ましくは90g/L〜100g/Lの量で含まれる。
【0048】
一般に、ニッケル金属層の厚さは、1μm以上の範囲であり得る。好ましくは、ニッケル層は、1μm〜100μm、より好ましくは1μm〜50μm、さらに好ましくは1μm〜10μmの厚さ範囲を有する。
【0049】
水性ニッケル電気めっき組成物は、種々のタイプの基材上のニッケル金属層をめっきするために使用することができるが、好ましくは、水性ニッケル電気めっき組成物はニッケル下地層をめっきするのに使用される。より好ましくは、水性ニッケル電気めっき組成物を用いてニッケル金属下地層を電気めっきして、金及び金合金の細孔形成または孔食を抑制し、めっきされた物品の金または金合金層の下の金属の腐食を抑制する。
【0050】
ニッケル金属下地層をベース基材上に1μm〜20μm、好ましくは1μm〜10μm、より好ましくは1μm〜5μmの厚さで電気めっきする。基材は、限定されないが、銅、銅合金、鉄、鉄合金、ステンレス鋼のうちの1つ以上の金属層、または基材は、シリコンウエハまたは他のタイプの半導体材料のような半導体材料であってもよく、任意選択的に、めっき技術において知られている従来の方法によって処理され、半導体材料を1つ以上の金属層を受けるのに十分に導電性にするものであってもよい。銅合金には、銅/スズ、銅/銀、銅/金、銅/銀/スズ、銅/ベリリウム、及び銅/亜鉛が挙げられるが、これらに限定されない。鉄合金には、鉄/銅及び鉄/ニッケルが挙げられるが、これらに限定されない。ニッケル金属下地層に隣接する金または金合金層を含むことができる基材の例は、プリント配線板、コネクタ、半導体ウエハ上のバンプ、リードフレーム、電気コネクタ、コネクタピン、及びICユニット用の抵抗やコンデンサなどの受動部品である。
ニッケル下地層を有する典型的な基材の例は、典型的には銅または銅合金で構成されるコネクタピンなどのリードフレームまたは電気コネクタである。コネクタピン用の典型的な銅合金の一例は、ベリリウム/銅合金である。下地層のニッケル電気めっきは、上に開示された温度範囲で行われる。めっきニッケル下地層の電流密度範囲は、0.1ASD〜50ASD、好ましくは1ASD〜40ASD、より好ましくは5ASD〜30ASDであり得る。
【0051】
ニッケル金属下地層が、金属、金属合金層または基材の半導体表面に隣接して電気めっきされた後、金または金合金の層がニッケル金属層に隣接して付着される。金または金合金層は、物理蒸着、化学蒸着、電気めっき、浸漬金めっきを含む無電解金属めっきなどの従来の金及び金合金付着プロセスを用いてニッケル金属下地層に隣接して付着させることができる。好ましくは、金または金合金層は、電気めっきによって付着される。
【0052】
従来の金及び金合金めっき浴を用いて、本発明の金及び金合金層をめっきすることができる。市販されている硬質金合金電気めっき浴の例は、RONOVEL(商標)LB−300電解硬質金電気めっき浴(Dow Electronic Materials、Marlborough、MAから入手可能)である。
【0053】
金及び金合金めっき浴のための金イオン供給源には、シアン化金カリウム、ジシアノ金酸ナトリウム、ジシアノ金酸アンモニウム、テトラシアノ金酸カリウム、テトラシアノ金酸トナトリウム、テトラシアノ金酸アンモニウム、ジクロロ金酸塩、テトラクロロ金酸、テトラクロロ金酸ナトリウム、亜硫酸金アンモニウム、亜硫酸金カリウム、亜硫酸金ナトリウム、金酸化物、金水酸化物などが含まれるが、これらに限定されない。金供給源は、従来の量、好ましくは0.1g/L〜20g/L、より好ましくは1g/L〜15g/Lの量で含まれ得る。
【0054】
合金化金属には、銅、ニッケル、亜鉛、コバルト、銀、プラチナカドミウム、鉛、水銀、ヒ素、スズ、セレン、テルル、マンガン、マグネシウム、インジウム、アンチモン、鉄、ビスマス及びタリウムが含まれるが、これらに限定されない。典型的には、合金化金属はコバルトまたはニッケルであり、これは硬質金合金のめっき層を提供する。合金化金属供給源は当該技術分野において周知である。合金化金属供給源は、従来の量で浴中に含まれ、使用される合金化金属の種類に応じて幅広く変化する。
【0055】
金及び金合金浴は、界面活性剤、光沢剤、レベラー、錯化剤、キレート剤、緩衝剤及び殺生物剤のような慣用の添加剤を含むことができる。そのような添加剤は、従来の量で含まれ、当業者に周知である。
【0056】
一般に、金及び金合金層を電気めっきするための電流密度は、1ASD〜40ASD、または5ASD〜30ASDの範囲であり得る。金及び金合金めっき浴の温度は、室温〜60℃までの範囲であり得る。
【0057】
金または金合金層がニッケル金属下地層に隣接して付着された後、典型的には、金属層を有する基材は熱老化を受ける。熱老化は、当技術分野で既知の任意の適切な方法によって行うことができる。このような方法には、蒸気エージング及び乾式ベーキングが含まれるが、これらに限定されない。ニッケル金属下地層は、貴金属の金または金合金層への卑金属の表面拡散を抑制し、はんだ付け性が改善される。
【0058】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために含まれているが、その範囲を限定するものではない。
【0059】
実施例1(本発明)
N−ベンイルピリジニウム−3−スルホネートを含む本発明のニッケル電気めっき浴及びハルセルめっき結果
以下の表に示す、各成分の成分及び量を有する3種の水性ニッケル系電気めっき浴を調製した。
【0061】
各浴を、様々な電流密度またはめっき速度の較正を用いて、各ハルセルの基部に沿って黄銅パネル及び定規を備えた個々のハルセルに配置した。アノードは硫化ニッケル電極であった。ニッケル電気めっきを各浴に対して5分間行った。浴を、全めっき時間の間、ハルセルパドル撹拌機で撹拌した。浴のpHは4.6であり、浴の温度は60℃であった。酢酸塩からの検出可能な臭気はなかった。電流は3Aであった。直流電流を印加して、黄銅パネル上に0.1〜12ASDの連続電流密度範囲により付着されるニッケル層を生成した。めっき後、パネルをハルセルから取り出し、脱イオン水ですすぎ、空気乾燥させた。各ハルセルからのニッケルめっき層は光沢が見られ、ニッケルめっき層は、全電流密度範囲に沿って均一に見えた。
【0062】
実施例2(本発明)
本発明のニッケル電気めっき浴及び回転型円筒セルめっき結果
実施例1の3つのニッケル電気めっき浴の各々を円筒形めっきセル中に置き、その中に回転型黄銅円筒形カソード及び硫化ニッケルアノードを挿入した。カソードの回転が、従来のリールツーリール電気めっきよりも高い撹拌を模倣した1000rpmsというより速い速度であったことを除いて、従来のリールツーリール電気めっきに類似した速度(10〜30ASD)及びそれを上回る速度(40〜60ASD)を含む、10ASD、20ASD、30ASD、40ASD、50ASD、及び60ASDの高DC電気めっき速度を達成するのに適した量のDC電流を使用して、ニッケル電気めっきを行った。層厚が60℃で8.5μmに達するまでニッケルめっきを行った。各浴のpHは4.6であった。
【0063】
めっき後、円筒形カソードを円筒形めっきセルから取り出し、脱イオン水ですすぎ、空気乾燥させた。各回転型円筒形ハルセルからのニッケル層は光沢性に見え、ニッケル層は10ASD〜50ASDの電流密度から均一に見えた。60ASDでのニッケル層は均一に見えたが、これらは外観がくすんでいた。
【0064】
実施例3(本発明)
より高いニッケルイオン濃度での本発明のニッケル電気めっき浴及び回転型円筒セルめっき結果
3つのニッケル電気めっき浴が以下の表中の配合を有し、回転型円筒系ハルセル中の電流密度が、40ASD、50ASD、60ASD、70ASD、及び80ASDであったことを除き、上記の実施例2に開示の方法を繰り返した。電気めっき条件の残りは実施例2に記載した通りである。
【0066】
めっき後、円筒形カソードを円筒形めっきセルから取り出し、脱イオン水ですすぎ、空気乾燥させた。各円筒形カソードからのニッケル層は光沢性に見え、ニッケル層は40ASD〜70ASDの電流密度から均一に見えた。80ASDでのニッケル層は均一に見えたが、これらは外観がくすんでいた。
【0067】
実施例4(比較例)
1−ベンイルピリジニウム−3−カルボン酸を含有する比較ニッケル電気めっき浴及びハルセルめっき結果
以下の表に示す、各成分の成分及び量を有する4種の水性ベースのニッケル電気めっき浴を調製した。
【0070】
各浴を、様々な電流密度またはめっき速度の較正を用いて、各ハルセルの基部に沿って黄銅パネル及び定規を備えた個々のハルセルに配置した。アノードは硫化ニッケル電極であった。ニッケル電気めっきを各浴に対して5分間行った。浴を、全めっき時間の間、ハルセルパドル撹拌機で撹拌した。浴のpHは4.6であり、浴の温度は60℃であった。酢酸塩からの検出可能な臭気はなかった。電流は3Aであった。直流電流を印加して、黄銅パネル上に0.1〜12ASDの連続電流密度範囲により付着されるにニッケル層を生成した。めっき後、パネルをハルセルから取り出し、脱イオン水ですすぎ、空気乾燥させた。100ppmの1−ベンイルピリジニウム−3−カルボキシレートを含む浴(比較浴3)からのニッケルめっき層を除くと、ニッケルめっき層の光沢度は、電流密度範囲全体にわたって均一ではなく不規則であった。
【0071】
実施例5(比較例)
ピリジニウムプロピルスルホン酸塩化合物を含有する比較ニッケル電気めっき浴及びハルセルめっき結果
以下の表に示す、各成分の成分及び量を有する3種の水性ニッケル系電気めっき浴を調製した。
【0075】
各浴を、様々な電流密度またはめっき速度の較正を用いて、各ハルセルの基部に沿って黄銅パネル及び定規を備えた個々のハルセルに配置した。アノードは硫化ニッケル電極であった。ニッケル電気めっきを各浴に対して5分間行った。浴を、全めっき時間の間、ハルセルパドル撹拌機で撹拌した。浴のpHは4.6であり、浴の温度は60℃であった。酢酸塩からの検出可能な臭気はなかった。電流は3Aであった。直流電流を印加して、黄銅パネル上に0.1〜12ASDの連続電流密度範囲により付着されるニッケル層を生成した。めっき後、パネルをハルセルから取り出し、脱イオン水ですすぎ、空気乾燥させた。比較浴5〜7のいずれついても電流密度範囲全体にわたって均一なニッケルめっきの兆候はなかった。比較浴5〜6は、マットなめっき層の領域が散在したまばらに光沢性であったニッケルめっき層をめっきした。比較浴7は、まばらな光沢性及びマットな領域に加えてデンドライトな成長を有しためっき層をめっきした。デンドライトは、物品に電気的短絡を引き起こす可能性があるため、めっきされた物品では望ましくない。
【0076】
実施例6(比較例)
1−メチルピリジニウム−3−スルホネートを含有する比較ニッケル電気めっき浴及びハルセルめっき結果
以下の表に示す、各成分の成分及び量を有する4種の水性ベースのニッケル電気めっき浴を調製した。
【0079】
各浴を、様々な電流密度またはめっき速度の較正を用いて、各ハルセルの基部に沿って黄銅パネル及び定規を備えた個々のハルセルに配置した。アノードは硫化ニッケル電極であった。ニッケル電気めっきを各浴に対して5分間行った。浴を、全めっき時間の間、ハルセルパドル撹拌機で撹拌した。浴のpHは4.6であり、浴の温度は60℃であった。酢酸塩からの検出可能な臭気はなかった。電流は3Aであった。直流電流を印加して、黄銅パネル上に0.1〜12ASDの連続電流密度範囲により付着されるニッケル層を生成した。めっき後、パネルをハルセルから取り出し、脱イオン水ですすぎ、空気乾燥させた。比較浴8〜11のいずれについても電流密度範囲全体にわたって光沢性で均一なニッケルめっきの兆候はなかった。めっき層は、マットな領域が散在した光沢性領域を有した。
【0080】
実施例7
ピリジニウムプロピルスルホネートを含む比較ニッケル電気めっき浴と比べたN−ベンジルピリジニウム−3−スルホネートを含む本発明のニッケル電気めっき浴対のレベリング性能
以下の表に示す、各成分の成分及び量を有する2種の水性ベースのニッケル電気めっき浴を調製した。
【0082】
500mLの各ニッケル電気めっき浴を、硫化ニッケルアノードを有する別の1リットル電気めっきセル中に置いた。カソードは、寸法が5cm×5cmの黄銅パネルであった。各浴のpHは4.6であり、ニッケル浴の温度は60℃であった。ニッケル電気めっき中の電流密度は5ASDであった。ニッケル電気めっきを2分間行った。ニッケルめっき後、パネルをめっきセルから取り出し、脱イオン水ですすぎ、空気乾燥させた。
【0083】
次に、ニッケルめっきした各パネルを、LEICA DM13000M光学顕微鏡下に置いた。
図1は、浴7(発明)のニッケル層を示す光学顕微鏡を用いて撮影した50倍の写真である。ニッケル層は光沢性かつ実質的に均一であり、いくつかの可視の細孔(暗いスポット)及びほとんど可視でないスクラッチ(ストライエーション)を伴った。一方、
図2は、比較浴12のニッケルめっきパネルの写真である。ニッケルは光沢性であったが、写真は、相当の細孔形成(暗いスポット)及び極めて可視であるスクラッチ(ストライエーション)を示す。浴7からめっきしたニッケル層は、比較浴12からめっきしたニッケルと比べて際立った改善を示した。
【0084】
図3は、ニッケルによるめっき前の黄銅パネルの50倍の写真である。写真は、研磨材による広範囲のスクラッチ及び細孔形成を示す。
図3は、比較浴12のニッケル組成物でめっきした
図2と実質的に同じであるように見える。一方、
図1は、浴12のニッケルめっき組成物により、黄銅パネルのスクラッチ及び細孔の実質的に全てを満たしコーティングするニッケル層を実現したことを示す。
【0085】
実施例8
ニッケル下地層を用いた硬質金合金めっき層の硝酸蒸気試験
以下の表に開示された配合を有する2種の水性ニッケル電気めっき浴を調製した。
【0087】
不規則表面を有する42個の厚さ1.25cmの両面ベリリウム/銅(Be/Cu)合金コネクタピンをニッケル電気めっき浴2で電気めっきし、別の42個のピンを1リットルめっきセル内のニッケル電気めっき比較浴13で電気めっきした。浴2のpHは4.6であり、比較浴13のpHは3.6であった。ニッケルめっき浴の温度は約60℃であった。アノードは硫化ニッケル電極であった。約2μmの目標厚さのために、各コネクタピン上にニッケル層を電気めっきするのに十分な時間、電流密度5ASDで電気めっきを行った。ニッケルめっき層の厚さを、従来のXRF分光計によるXRF分析を用いて測定した。
【0088】
コネクタピン上にニッケルの層をめっきした後、ピンを浴から取り出し、10%v/vの硫酸水溶液中に30秒間置いた後、RONOVEL(商標)LB−300電解硬質金めっき浴(Dow Electronic Materials,Marlborough,MAから入手可能)を含むめっきセルに移し、各コネクタピンを約0.38μmの目標厚さの硬質金合金層でめっきした。
【0089】
金合金めっきは50℃で1ASDの電流密度で行った。アノードは白金処理されたチタン電極であった。金合金浴のpHは4.3であったピンを金合金めっきした後、それらをめっきセルから取り出し、空気乾燥させた。各ピンを、腐食試験の前にピンの表面外観を記録するため画像化した。LEICA DM13000M光学顕微鏡を使用して50倍の倍率で各ピンの表面の画像を撮影した。ピン(両面)のいずれの表面にも観察可能な腐食の兆候はなかった。
【0090】
次いで、金合金めっきされたコネクタピンを、実質的にASTM B735−06硝酸蒸気試験に従って硝酸蒸気に暴露して、2種類のニッケルめっき浴からのニッケル下地層の腐食抑制能力を評価した。各コネクタピンを、500mLのガラス容器に吊り下げ、そのガラス容器内の環境は22℃で70重量%の硝酸蒸気で飽和されていた。ピンを硝酸蒸気に約2時間曝した。硝酸蒸気で処理したピンをガラス容器から取り出し、125℃で焼成し、次いで分析前にデシケータで冷却した。
【0091】
LEICA DM13000M光学顕微鏡を用いて50倍で各ピンの表面(両側)の画像を撮影した。光学顕微鏡下で観察可能な腐食スポットに、GIMPを使用して手で色を塗った。
【0092】
腐食スポットを含む画素数をGIMPソフトウェアによって計数して、各コネクタピンの両面の腐食面積%を決定した。浴2でめっきしたピンの片面の平均腐食面積%は0.2%であり、もう片面の平均腐食面積%は0.1%であった。
図4は、浴2からのニッケル下地層でめっきされた金合金めっきされた1つのコネクタピンの、LEICA DM13000M光学顕微鏡で撮影された50倍の写真である。1つの腐食スポット(黒点)がピン表面上で可視である。比較対照的に、浴13でめっきしたピンの片面上の平均腐食面積%は1%であり、もう片面の平均腐食面積%は0.4%であった。
図5は、比較浴13からのニッケル下地層でめっきされた金合金めっきされた1つのコネクタピンの、光学顕微鏡で撮影された50倍の写真である。金合金のめっき層の表面に多数の腐食スポット(黒点)を観察する。黒点は、ニッケルめっき中に金合金層の表面に形成された細孔によって観察可能である下層のニッケル層の腐食によるものである。本発明の浴2からのニッケル下地層で電気めっきされたコネクタピンは、比較浴13からのニッケル下地層で電気めっきされたピンとは対照的に、有意な腐食抑制を示す。
【0093】
実施例9
ニッケルめっき層の延性
上記の実施例8に開示された本発明の浴2及び比較浴13から電気めっきされたニッケルめっき層について伸び試験を行い、ニッケルめっき層の延性を測定した。延性試験は、実質的に、工業規格ASTM B489−85:金属上の電着された、自己触媒的に付着した金属コーティングの延性のための曲げ試験に従って行った。
【0094】
複数の黄銅パネルを提供した。黄銅パネルの半分に、浴2からの2μmのニッケルをめっきし、もう半分を浴13からの2μmのニッケルをめっきする。電気めっきを60℃、5ASDで行った。めっきされたパネルを、0.32cm〜1.3cmの範囲の様々な直径のマンドレルの上で180°曲げ、次いで、めっき層の亀裂について50X顕微鏡下で検査した。亀裂が観察されない試験された最小直径を使用して、めっき層の伸びの程度を計算した。浴2及び浴13両方からのニッケルめっき層の伸びは、商業的ニッケル浴めっき層の良好な延性と考えられる11.2%であることが見出された。結果は、浴2からめっきしたニッケルの延性が比較浴13と同様に良好であったことを示した。