特許第6603969号(P6603969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6603969
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/38 20060101AFI20191031BHJP
   B63H 21/14 20060101ALI20191031BHJP
   B63B 11/04 20060101ALI20191031BHJP
   B63B 27/00 20060101ALI20191031BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20191031BHJP
   F02B 43/00 20060101ALI20191031BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   B63H21/38 B
   B63H21/14
   B63B11/04 B
   B63B27/00 B
   F02M37/00 301B
   F02M37/00 341D
   F02B43/00 A
   F02M21/02 L
   F02M21/02 X
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-75914(P2017-75914)
(22)【出願日】2017年4月6日
(65)【公開番号】特開2018-176867(P2018-176867A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年5月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】上田 伸
【審査官】 結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0128081(KR,A)
【文献】 特開2014−169637(JP,A)
【文献】 特表2009−541140(JP,A)
【文献】 特表2013−514944(JP,A)
【文献】 船のいろいろ,SHIPPING NOW 2010-2011,日本,日本船主協会,2011年,pp.14-19
【文献】 雲石隆司,LNG燃料使用による環境負荷低減船舶の検討,日本マリンエンジニアリング学会誌,日本,日本マリンエンジニアリング学会,2012年,第47巻,第6号,pp.817-822,ISSN:1884-3778(online),1346-1427(print),特にp.818右欄3.1 LNGタンク方式,p.819右欄3.3 LNG燃料の供給
【文献】 Using Methanol Fuel in the MAN B&W ME-LGI Series,デンマーク,MAN Diesel & Turbo,2014年
【文献】 KJARTANSSON, Sveinbjorn,A Feasibility Study on LPG as Marine Fuel,スウェーデン,CHALMERS UNIVERSITY OF TECHNOLOGY,2012年,pp.5-42,修士論文
【文献】 Guide to LPG Use in Waterborne Vessels,フランス,WLPGA,2017年 2月
【文献】 LNG FUEL TANK CONTAINER FOR SHIPS,ドイツ,Marine Service GmbH,2014年
【文献】 Kjeld Aabo, Rene Sejer Laursen,New Optimization of ME-GI Dual Fuel Engines for LNG Carriers and Marine Vessels in General,日本マリンエンジニアリング学会誌,日本,日本マリンエンジニアリング学会,2009年,第44巻,第6号,pp.25-36,ISSN:1884-3778(online),1346-1427(print)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/04−25/06,43/32,
B63B 11/04,27/00,27/22,27/25,
B63H 21/14,21/38,
F02B 43/00,
F02M 21/02,37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化石油ガスを常温加圧状態で貯蔵する複数の燃料タンクと、
前記複数の燃料タンクが接続され、前記複数の燃料タンクから選択的に前記常温加圧状態の前記液化石油ガスが供給されるとともに該液化石油ガスを常温加圧状態で貯留する中間タンクと、
前記中間タンクが供給する液化石油ガスを燃料として駆動される主機と、
を備え
前記燃料タンクは、陸上に積み下ろし可能なポータブルタンクである船舶。
【請求項2】
液化石油ガスを常温加圧状態で貯蔵する複数の燃料タンクと、
前記複数の燃料タンクが接続され、前記複数の燃料タンクから選択的に前記常温加圧状態の前記液化石油ガスが供給されるとともに該液化石油ガスを常温加圧状態で貯留する中間タンクと、
前記中間タンクが供給する液化石油ガスを燃料として駆動される主機と、
車両が自走して乗り込み可能な船体と、を備え、
前記燃料タンクは、自走可能なタンクトレーラである船舶。
【請求項3】
液化石油ガスを常温加圧状態で貯蔵する複数の燃料タンクと、
前記複数の燃料タンクが接続され、前記複数の燃料タンクから選択的に前記常温加圧状態の前記液化石油ガスが供給されるとともに該液化石油ガスを常温加圧状態で貯留する中間タンクと、
前記中間タンクが供給する液化石油ガスを燃料として駆動される主機と、
を備え
前記燃料タンクは、前記中間タンクよりも上層に配置されている船舶。
【請求項4】
各前記燃料タンクにそれぞれ接続された枝管と、
複数の前記枝管が合流接続された合流配管と、
を備え、
前記中間タンクは、前記枝管及び前記合流配管を介して前記複数の燃料タンクに接続されており、
各前記枝管に設けられた流量調整弁をさらに備える請求項1から3のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項5】
前記中間タンクは、
前記主機に供給した液化石油ガスの一部を還流する還流配管が合流接続されている請求項1から4の何れか一項に記載の船舶。
【請求項6】
前記中間タンクの液面を検出する液面センサを備える請求項1から5の何れか一項に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶においては、二酸化炭素や硫黄酸化物等の大気汚染物質の排出抑制が望まれている。このような大気汚染物質の排出を抑制するためには、液化天然ガス(LNG)を燃料とする方法がある。しかし、液化天然ガスは、輸送に係る設備が複雑化するとともに大型化してしまう。
特許文献1には、天然ガスハイドレート(NGH)により、天然ガスを輸送するシステムが開示されている。この天然ガスハイドレートは、低温高圧(例えば、10気圧で摂氏−30度以下等)の環境下で約170倍のガスを包蔵することが可能となっており、液化天然ガスよりも取り扱いが容易となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−105447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された天然ガスハイドレートは、液化天然ガスよりも取り扱いが容易であるものの、低温高圧を維持しなければならないため、依然として取り扱いが難しい。また、天然ガスハイドレートを供給可能な陸側の設備が限られるため、燃料調達が困難になる場合が想定される。
【0005】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、燃料調達や燃料の取扱いを容易としつつ、大気汚染物質の排出を抑制することができる船舶を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために以下の構成を採用する。
この発明の第一態様によれば、船舶は、液化石油ガスを常温加圧状態で貯蔵する複数の燃料タンクと、前記複数の燃料タンクが接続され、前記複数の燃料タンクから選択的に前記常温加圧状態の前記液化石油ガスが供給されるとともに該液化石油ガスを常温加圧状態で貯留する中間タンクと、前記中間タンクが供給する液化石油ガスを燃料として駆動される主機と、を備え、前記燃料タンクは、陸上に積み下ろし可能なポータブルタンクである
また、船舶は、液化石油ガスを常温加圧状態で貯蔵する複数の燃料タンクと、前記複数の燃料タンクが接続され、前記複数の燃料タンクから選択的に前記常温加圧状態の前記液化石油ガスが供給されるとともに該液化石油ガスを常温加圧状態で貯留する中間タンクと前記中間タンクが供給する液化石油ガスを燃料として駆動される主機と、車両が自走して乗り込み可能な船体と、を備え、前記燃料タンクは、自走可能なタンクトレーラであってもよい。
また、上記船舶は、各前記燃料タンクにそれぞれ接続された枝管と、複数の前記枝管が合流接続された合流配管と、を備え、前記中間タンクは、前記枝管及び前記合流配管を介して前記複数の燃料タンクに接続されており、各前記枝管に設けられた流量調整弁をさらに備えていてもよい。
このように構成することで、複数の燃料タンクに貯蔵された加圧状態の液化石油ガスが、それぞれ中間タンクを介して主機に供給される。加圧状態の液化石油ガスは、常温でも気化しないため、基本的に再液化装置等を必要としない。さらに、容量の小さい燃料タンクを複数用いることで、高価な大型の加圧タンクを用いる必要が無い。また、加圧状態の液化石油ガスは、陸上の供給施設が整っているため、燃料調達も容易である。さらに、中間タンクを介して液化石油ガスを主機に供給するため、液化石油ガスを供給する複数の燃料タンクを切り替える際にも、主機を停止させる必要が無く、円滑に燃料タンクの切替を行うことができる。したがって、燃料調達や燃料の取扱いを容易としつつ、大気汚染物質の排出を抑制することができる。
また、燃料タンクのうち空になった燃料タンクのみを、陸上に積み下ろすことができる。そして、陸上で液化石油ガスの充填がなされた燃料タンクを、船上に積み上げて利用することができる。また、船上の常設の燃料タンクを省略できる。そのため、加圧された液化石油ガスを船上の燃料タンクまで供給する配管等を省略することができる。したがって、配管を介して加圧された液化石油ガスを供給できる港湾設備が無い場合であっても、船舶に燃料を供給することができ、燃料の取扱いが容易となる。さらに、燃料タンクの拡張性や配置自由度も向上できる。
さらに、クレーン等の港湾設備が無い場合であっても、トラクタ等により燃料タンクの搬入、搬出を行うことができる。したがって、より一層、燃料の取扱いが容易となる。
【0009】
上記船舶では、中間タンクは、前記主機に供給した液化石油ガスの一部を還流する還流配管が合流接続されていてもよい。
このように構成することで、主機に流入した液化石油ガスの一部を還流させるためのタンクとして、中間タンクを機能させることができる。その結果、主機に流入した液化石油ガスの一部を還流させるためのタンクと中間タンクとを両方設ける必要が無く、船体内の設備を簡略化することができる。
【0010】
上記船舶では、中間タンクの液面を検出する液面センサを備えていてもよい。
このように構成することで、中間タンクの液面を監視することができる。そのため、複数の燃料タンクから中間タンクへの燃料供給を円滑に行うことができる。
【0011】
船舶は、液化石油ガスを常温加圧状態で貯蔵する複数の燃料タンクと、前記複数の燃料タンクが接続され、前記複数の燃料タンクから選択的に前記常温加圧状態の前記液化石油ガスが供給されるとともに該液化石油ガスを常温加圧状態で貯留する中間タンクと、前記中間タンクが供給する液化石油ガスを燃料として駆動される主機と、を備え、前記燃料タンクは、前記中間タンクよりも上層に配置されていてもよい。
このように構成することで、燃料タンク内に貯蔵されている液化石油ガスを、その自重を利用して中間タンクに送り込むことができる。そのため、燃料タンクから、中間タンクに液化石油ガスを送り込むためのポンプを省略又は、より小型なものにすることができる。したがって、より一層、船体内の設備を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0012】
上記船舶によれば、燃料調達や燃料の取扱いを容易としつつ、大気汚染物質の排出を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の実施形態における船舶の概略構成を示す図である。
図2】この発明の実施形態における船舶の燃料供給システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、この発明の実施形態における船舶を図面に基づき説明する。なお、この実施形態の船舶は、自動車やトラックを貨物として運搬可能なRO−RO船(roll-on/roll-off ship)を一例にして説明する。
図1は、この発明の実施形態における船舶の概略構成を示す図である。
図1に示すように、この実施形態における船舶1は、船体2と、上部構造3と、を備えている。
【0015】
船体2は、舷側4と、船底5と、複数の甲板10と、を有している。舷側4は、左右舷側をそれぞれ構成する一対の舷側外板からなる。船底5は、これら舷側4を接続する船底外板からなる。
【0016】
船体2は、船尾2Aの下方にスクリュー7と舵8とを備えている。
スクリュー7は、船体2内に設けられた主機であるエンジン9によって回転駆動され、エンジン9の回転エネルギーを船体2の推進力に変換する。舵8は、スクリュー7の後方に設けられており、船体2の進行方向を制御する。
【0017】
エンジン9は、船体2の下層における船尾2Aに近い側に区画された主機室11内に配置されている。エンジン9は、液化石油ガス(LPG;liquefied petroleum gas)を燃料として駆動可能とされている。ここで、エンジン9の燃料は、液化石油ガスのみに限られず、液化石油ガスと他の燃料との併用(バイフューエル)や、混合(デュアルフューエル)等であってもよい。さらに、エンジン9は、スクリュー7を駆動するものに限られない。例えば、エンジン9によって発電機を駆動するようにしても良い。
【0018】
船体2は、車両等の貨物を搬入・搬出させるための2つのショアランプ12を備えている。この実施形態における船舶1は、船尾2Aと、右側の舷側4の船首尾方向の中間位置にそれぞれショアランプ12(スターンランプ12A、センターランプ12B)が設けられた場合を例示している。これらショアランプ12は、階層状に形成された船体2の甲板10のうち、中間層に配置された乗り込み甲板である乾舷甲板10Aに繋がっている。
【0019】
これらショアランプ12を倒して展開させると、乗用車やトラック等の車両が岸壁からショアランプ12を通じて自走して乾舷甲板10Aに乗り込むことが可能となる。乗船した車両(図示せず)は、例えば、上下に隣り合う甲板10同士を繋ぐ傾斜路であるランプウェイ13を介して、それぞれ所定の階層の甲板10上の所定の搭載位置に停車して運搬される。
【0020】
上部構造3は、船体2の上甲板10Bの上に形成されている。上部構造3は、船橋3Aと居住区3Bとを備えている。
【0021】
図2は、この発明の実施形態における船舶の燃料供給システムの概略構成を示す図である。
図2に示すように、この実施形態における燃料供給システム20は、複数(n個)の燃料タンク21と、複数の枝管L1〜Lnと、流量調整弁V1〜Vnと、合流配管Lcと、中間タンク22と、燃料供給配管Lfと、昇圧ポンプ23と、ヒータ24と、還流配管Lrと、制御弁25と、を主に備えている。なお、中間タンク22や各配管等の内圧が異常上昇した際に、それらの内部気体を大気に排出する緊急装置(ベント)を有しているが、図2においては、これら緊急装置の図示を省略している。
【0022】
複数の燃料タンク21は、液化石油ガスを加圧状態で貯蔵する。これら燃料タンク21に貯蔵された液化石油ガスは、常温(例えば、摂氏20度程度)で液体の状態を維持可能な圧力(常温高圧)とされている。そのため、燃料タンク21は、この液化石油ガスの圧力に応じた耐圧性能を有している。ここで、燃料タンク21は、常温高圧で燃料の保管が可能であるため、液化天然ガスのように、低温を維持するための真空防熱等の防熱構造や冷凍機等を設置する必要が無い。また、液化天然ガスと比較して長期間の保管が可能となり、気化した天然ガスを再液化する設備も不要となる点で有利となる。
【0023】
この実施形態における燃料タンク21は、船体2と岸壁との間で搬出及び搬入が可能なポータブルタンクである。この実施形態で例示する燃料タンク21は、更に、車輪を有するトレーラに搭載されて自走可能なタンクトレーラとなっている。これら燃料タンク21は、トラクタT等によって牽引可能となっている。トラクタTによって牽引された燃料タンク21は、上述したショアランプ12を自走して船体2から乗降することが可能となっている。
【0024】
これら複数の燃料タンク21は、それぞれ船体2の所定の階層の所定のタンクスペースTs(例えば、図1参照)にタンクトレーラの状態で載置される。この実施形態におけるタンクスペースTsは、乾舷甲板10Aよりも一つ下階層に設けられている。
【0025】
タンクスペースTsに燃料タンク21を載置する数量(n個)は、船舶1が必要とする航続距離から設定される。これらn個の燃料タンク21は、それぞれ枝管L1〜Lnに接続される。ここで、この実施形態のタンクスペースTsのように、タンクスペースTsが船体2の内部に配置される場合には、ガス検知器及び換気装置等が設けられている。なお、図1において、タンクスペースTsが同一階層に設けられる場合を例示しているが、タンクスペースTsは、複数の階層に跨って形成されていても良い。
【0026】
枝管L1〜Lnの端部は、n個の燃料タンク21にそれぞれ一つずつ接続可能となっている。これら枝管L1〜Lnは、合流配管Lcに合流接続されている。流量調整弁V1〜Vnは、枝管L1〜Lnにそれぞれ設けられている。流量調整弁V1〜Vnは、それぞれ枝管L1〜Lnの流路面積を調整する弁機構である。これら流量調整弁V1〜Vnは、全閉位置から全開位置まで開度を変化させることが可能となっている。この実施形態においては、流量調整弁V1〜Vnのうち何れか一つを開放し、他の全てを閉塞するようにして中間タンク22に連通される燃料タンク21を択一的(選択的)に切り替える場合について説明するが、これら流量調整弁V1〜Vnは、中間タンク22に対して複数の燃料タンク21を同時に連通させるように運用しても良い。
【0027】
合流配管Lcは、枝管L1〜Lnを中間タンク22と連通させる。つまり、合流配管Lcは、複数の燃料タンク21から中間タンク22へ向けて液化石油ガスを案内する。なお、この実施形態においては、枝管L1〜Lnを一本の合流配管Lcに合流接続させる場合について説明したが、枝管L1〜Lnをそれぞれ中間タンク22に接続するようにしても良い。
【0028】
中間タンク22は、合流配管Lcを介して燃料タンク21から供給された液化石油ガスを一時的に貯留する。この中間タンク22は、上述した燃料タンク21と同様に、液化石油ガスが液体の状態を維持できるように加圧状態で液化石油ガスを貯留する。この中間タンク22には、液化石油ガスの液面を検出する液面センサS1が設けられている。この液面センサS1の検出結果に基づいて、上述した流量調整弁V1〜Vnによる液化石油ガスの流量調整がなされる。
【0029】
この実施形態における中間タンク22は、上述した燃料タンク21が設置される階層よりも低い階層に設置されている(図1参照)。これにより、この実施形態においては、燃料タンク21に貯蔵された液化石油ガスが、その自重によって中間タンク22に流入可能となっている。
【0030】
燃料供給配管Lfは、中間タンク22に一時貯留された液化石油ガスを、エンジン9に供給する配管である。この実施形態における燃料供給配管Lfは、中間タンク22から液化石油ガスを吐出させる燃料ポンプ26に接続されている。なお、中間タンク22の液面がエンジン9や昇圧ポンプ23よりも上方にある場合には、燃料ポンプ26を省略できる場合もある。
【0031】
昇圧ポンプ23は、燃料供給配管Lfの途中に設けられている。この昇圧ポンプ23は、中間タンク22の液化石油ガス(例えば、18bar程度)を昇圧して(例えば、50bar程度)エンジン9に供給する。
ヒータ24は、昇圧ポンプ23によって昇圧された液化石油ガスを所定温度(例えば、摂氏50度程度)になるように加熱する。すなわち、エンジン9には、昇圧ポンプ23及びヒータ24によって加熱昇温された液化石油ガスが供給される。
【0032】
還流配管Lrは、エンジン9に供給した液化石油ガスの一部を中間タンク22に還流させる配管である。還流配管Lrの途中には、制御弁25が設けられている。
制御弁25は、還流配管Lrを介して中間タンク22に還流させる液化石油ガスの流量を調整する。制御弁25は、例えば、中間タンク22内圧力等に応じて還流させる液化石油ガスの圧力を増減させることで流量調整するようにしても良い。
【0033】
したがって、上述した実施形態の船舶1によれば、複数の燃料タンク21に貯蔵された加圧状態の液化石油ガスが、それぞれ中間タンク22を介して主機であるエンジン9に供給される。このような加圧状態の液化石油ガスは、常温でも気化しないため、基本的に再液化装置等が不要となる。
【0034】
さらに、容量の小さい燃料タンク21を複数用いることができるため、高価な大型の加圧タンクを用いる必要が無い。
また、加圧状態の液化石油ガスは、陸上のインフラが整っているため、燃料調達も容易である。
【0035】
さらに、中間タンク22を介して液化石油ガスがエンジン9に供給される。そのため、液化石油ガスを供給する複数の燃料タンク21を切り替える際にも、エンジン9を停止させる必要が無く、円滑に燃料タンク21の切り替えを行うことができる。
その結果、燃料調達や燃料の取扱いを容易としつつ、大気汚染物質の排出を抑制することができる。
【0036】
さらに、燃料タンク21が、ポータブルタンクであるため、空になった燃料タンク21のみを、陸上に積み下ろすことができる。そして、陸上で液化石油ガスが充填された燃料タンク21を、船上に積み上げて利用することができる。また、船上の常設の燃料タンクを省略できる。これにより、加圧された液化石油ガスを船上の燃料タンクまで供給する配管等を省略することができる。
その結果、配管を介して加圧された液化石油ガスを供給できる港湾設備が無い場合や、燃料としての液化石油ガスを供給する配管スペースが無い船舶であっても、燃料を供給することができるとともに、燃料の取扱いが容易となる。
【0037】
さらに、燃料タンク21がタンクトレーラである場合、クレーン等の港湾設備が無い場合であっても、トラクタにより牽引して燃料タンク21の搬入、搬出を行うことができる。その結果、より一層、燃料の取扱いが容易となる。
【0038】
また、中間タンク22をエンジン9に供給された液化石油ガスの一部を還流させるためのタンクとして機能させることができる。その結果、ブローバイガスを還流させるためのタンクと中間タンク22とを両方設ける必要が無く、船体2内の設備を簡略化することができる。
さらに、液面センサS1により中間タンク22の液面を監視することができる。そのため、複数の燃料タンク21から中間タンク22への燃料供給を円滑に行うことができる。
【0039】
また、燃料タンク21が中間タンク22よりも上層に設置されているため、燃料タンク21内に貯蔵されている液化石油ガスを、その自重を利用して中間タンク22に送り込むことができる。そのため、燃料タンク21から、中間タンク22に液化石油ガスを送り込むためのポンプを省略又は、より小型なものにすることができる。その結果、より一層、船体内の設備を簡略化することができる。
【0040】
この発明は上述した実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
例えば、上述した実施形態では、暴露甲板である上甲板10Bよりも下方の甲板10上に燃料タンク21を配置する場合について説明した。しかし、燃料タンク21の配置は、上述した配置に限られず、例えば、上甲板10Bよりも上方に配置するようにしてもよい。この場合、燃料タンク21の周囲に、ベンチレーション等を行うための設備が不要となるので、設備を簡略化することができる。
【0041】
また、上述した実施形態では、船舶1がRO−RO船の場合を一例にして説明したが、船舶1の種類は、上述したRO−RO船に限られない。また、船舶1が、車両の乗降が可能なショアランプ12を有する場合について説明したが、車両の乗降が不能な船舶1であっても良い。このような車両乗降不能な船舶1の場合、港湾設備や船舶1が備えるクレーンにより燃料タンク21を荷揚げ及び荷下ろしするようにすればよい。
【0042】
さらに、燃料タンク21として、円筒状の燃料タンクを例示したが、燃料タンク21の形状は円筒状に限られない。また、円筒状の燃料タンク21の中心線が甲板10に沿うように燃料タンク21を配置する場合について説明した。しかし、円筒状の燃料タンク21の中心線が上下方向に向くように燃料タンク21を配置しても良い。
【0043】
また、燃料タンク21が、トラクタTと分離可能なタンクトレーラである場合について説明したが、タンクローリー等、燃料タンク21が車室(運転席)と分離不能な車両であっても良い。
【0044】
さらに、燃料タンク21は、20フィートコンテナや40フィートコンテナ等のISO規格コンテナ内に収容して運搬するようにしても良い。このようにすることで、コンテナ船における荷役設備を利用することできる。さらに、容易に上下に積み上げることができるため、配置自由度を更に向上できる。
【0045】
また、中間タンク22の液面に応じて上述した流量調整弁V1〜Vnの開度を調整する場合について説明した。しかし、これら流量調整弁V1〜Vnの開度調整は、制御装置を用いて自動的に行うようにしても良い。この場合、制御装置は、中間タンク22の液面の情報、及び、各燃料タンク21の残量計(図示せず)により検出された残量情報に基づいて、中間タンク22の液面が所定レベルを下回らないように、アクチュエータを制御して流量調整弁V1〜Vnの開度を調整すればよい。
【符号の説明】
【0046】
1 船舶
2 船体
2A 船尾
2F 船首
3 上部構造
4 舷側
5 船底
7 スクリュー
8 舵
9 エンジン
10 甲板
10A 乾舷甲板
10B 上甲板
11 主機室
12 ショアランプ
12A スターンランプ
12B センターランプ
13 ランプウェイ
20 燃料供給システム
21 燃料タンク
22 中間タンク
23 昇圧ポンプ
24 ヒータ
25 制御弁
26 燃料ポンプ
L1〜Ln 枝管
V1〜Vn 流量調整弁
S1 液面センサ
T トラクタ
Ts タンクスペース
図1
図2