(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
記録媒体へインクジェット法によりインク組成物を付着させる工程の際の記録媒体表面温度が35℃以上である記録方法に用いるものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の非水系インクジェットインク組成物。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0020】
1.インクジェットインク組成物
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、溶剤と、顔料と、を含む。本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、非水系インク組成物であり、揮発性の溶剤(主に有機溶剤)を主成分とする溶剤系インク組成物とすることが好ましい。記録媒体上に付着させた後、加熱あるいは常温により溶剤を乾燥させて固形分を定着させて記録を行う非光硬化型インクとすることが好ましい。放射線(光)を照射して硬化させる光硬化型インクとしてもよいが、放射線照射を不要とする点で非光硬化型インクが好ましい。
【0021】
非水系インク組成物は、水を主要な溶媒成分とするものではなく、インクの機能や性能を奏するための機能成分としては水を含有しないインク組成物である。インク組成物に対する水の含有量は5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは0.5質量%以下であり、より特に好ましくは0.1質量%以下であり、さらには水を含有しないとしてもよい。本実施形態における非水系インクジェットインク組成物の溶剤の含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは85〜98質量%である。
【0022】
1.1.溶剤
本実施形態に係るインクジェットインク組成物に含有される溶剤は、下記一般式(1)で表される化合物である溶剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。以下、下記一般式(1)で表される化合物である溶剤を溶剤Aともいう。
【0023】
1.1.1.式(1)で表される化合物
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、溶剤として一般式(1)で表される化合物(グリコールエーテル)である溶剤Aを含有することが好ましい。
R
1O−(R
2O)
m−R
3 ・・・(1)
[一般式(1)中、R
1及びR
3は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上5以下のアルキル基を表し、R
2は、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、mは、2〜6整数を表す。ただし、R
1及びR
3は、少なくとも何れかは炭素数1以上5以下のアルキル基である。]
【0024】
上記のうち、R
1及びR
3は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上4以下のアルキル基が好ましく、mは、2〜3の整数が好ましい。ここで、炭素数1以上5以下のアルキル基としては、直鎖状または分岐状のアルキル基であることができ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、又はtert−ブチル基が挙げられる。また、炭素数2又は3のアルキレン基としては、エチレン基(ジメチレン)、プロピレン基(トリメチレン、又は、メチルエチレン)が挙げられる。なお、上記一般式(1)に示す化合物は、アルキレングリコールアルキルエーテルやグリコールエーテルともいう。上記一般式(1)で表される化合物は、1種単独で含有されてもよいし、2種以上含有されてもよい。
【0025】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(64℃)(「DEGMEE」又は「MEDG」と略記することがある。)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(56℃)(「DEGdME」と略記することがある。)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(65℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(71℃)(「DEGdEE」又は「DEDG」と略記することがある。)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(105℃)(「DEGmME」と略記することがある。)、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(112℃)、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(101℃)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(141℃)、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル(94℃)(「DEGBME」と略記することがある。)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(122℃)(「DEGdBE」と略記することがある。)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(108℃)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(117℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(139℃)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(156℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(113℃)(「TriEGdME」又は「DMTG」と略記することがある。)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(123℃)、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル(138℃)、トリプロピレングリコールジメチルエーテル(104℃)、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル(177℃)(「TetraEGmBE」又は「BTG−H」と略記することがある。)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(141℃)(「TetraEGdME」と略記することがある。)、等が挙げられる。なお、上記例示における括弧内の数値は、引火点を示す。
【0026】
本実施形態における化合物の引火点は、タグ密閉式引火点試験器による引火点が80℃以下では無い場合はクリーブランド開放式引火点試験器による引火点とし、タグ密閉式引火点試験器による引火点が80℃以下の場合は、当該引火点における溶剤の動粘度が10cSt未満の場合はタグ密閉式引火点試験器による引火点とし、当該引火点における溶剤の動粘度が10cSt以上の場合はセタ密閉式引火点試験器による引火点とする。
【0027】
インクジェットインク組成物の乾燥性をより高くすることができる観点からは、これらの化合物のうち、引火点が140℃以下の化合物を用いることが好ましい。引火点が140℃以下の化合物を用いることにより、インクジェットインク組成物の乾燥性が高まり、形成される画像における凝集ムラ(顔料の凝集等)をより生じにくくすることができ耐擦性も優れたものとできる。
【0028】
また、これらの化合物は、溶剤に混合して配合されることができるが、引火点が140℃以下の化合物が配合されることがより好ましい。引火点が140℃を越える化合物のみが配合される場合には、インクジェットインク組成物の乾燥が遅くなる場合があり、インクの記録媒体上での濡れ拡がり性が高まり、形成される画像の光沢性を期待できる反面、例えば、形成される画像における凝集ムラ(顔料の凝集等)が生じてしまう場合がある。他方、引火点が140℃以下の化合物は、インクジェットインク組成物の乾燥性を向上させるため、これを配合することにより、形成される画像における凝集ムラ(顔料の凝集等)を生じにくくすることができる。そして、引火点が140℃を越える化合物と、引火点が140℃以下の化合物との配合量をバランスさせれば、形成される画像の光沢性を高くし、かつ、凝集ムラを抑制することができる。また、溶剤Aは顔料の分散安定性にも優れる傾向があり、記録媒体上でインクが乾燥する過程で凝集ムラが発生してしまうことを防止できる点でも優れている。さらには、引火点120℃以下の上記化合物(溶剤A)を配合することが好ましく、引火点70℃以下の上記化合物(溶剤A)を配合することが上記の点で一層好ましい。
【0029】
上記式(1)で表される化合物の、インクジェットインク組成物の全量に対する含有量(複数種を使用する場合にはその合計量)は、好ましくは10質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上90質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以上80質量%以下、よりさらに好ましくは30質量%以上75質量%以下、特に好ましくは40質量%以上70質量%以下である。
【0030】
また、上記式(1)の化合物のうち、引火点が140℃以下の化合物のインクジェットインク組成物の全量に対する含有量(複数種を使用する場合にはその合計量)は、好ましくは10質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上90質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以上80質量%以下、さらにより好ましくは40質量%以上70質量%以下である。また、上記式(1)の化合物のうち、引火点が120℃以下、さらには70℃以下の化合物のインクジェットインク組成物の全量に対する含有量(複数種を使用する場合にはその合計量)は、好ましくは10質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上90質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以上80質量%以下、さらにより好ましくは40質量%以上70質量%以下である。
【0031】
一方、凝集ムラ抑制、耐擦性が特に優れることをより重視する観点では、上記式(1)の化合物のうち引火点が140℃以下70℃超の溶剤Aを用いることが好ましい。上記式(1)の化合物のうち、引火点が140℃以下70℃超の化合物のインクジェットインク組成物の全量に対する含有量(複数種を使用する場合にはその合計量)は、好ましくは10質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上90質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以上80質量%以下、さらにより好ましくは40質量%以上70質量%以下である。
【0032】
式(1)で表される化合物のうち引火点がより低い溶剤、特に140℃以下の溶剤を含有する場合、インク組成物の乾燥性に一層優れ凝集ムラ抑制や耐擦性に一層優れる。反面、乾燥性が比較的高い為か、インク組成物の記録媒体表面においてインクの記録媒体表面方向への広がり性が劣りインクの発色性が劣る傾向があるが、このような場合でも、インク組成物が顔料としてピグメントオレンジ−43(PO−43)を含むことで発色性を優れたものとすることができる。
【0033】
式(1)で表される化合物のうちR
1及びR
3の何れかが水素であるグリコールモノエーテル化合物をインクが含有する場合、上述の効果に加え、凝集ムラ低減が特に優れる傾向があり好ましい。グリコールモノエーテル化合物をインクが含有する場合、その含有量は、上記の点で2〜20質量%が好ましく、3〜15質量%がより好ましく、3〜10質量%が更に好ましい。グリコールモノエーテル化合物の引火点は問わない。
【0034】
1.1.2.環状エステル化合物
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、溶剤として環状エステル(環状ラクトン)を含有することが好ましい。インクジェットインク組成物は、環状エステル(環状エステル化合物)が含有されることにより、記録媒体の記録面(好ましくは塩化ビニル系樹脂を含む記録面)の一部を溶解して記録媒体の内部にインクジェットインク組成物を浸透させることができる。このように記録媒体の内部にインク組成物が浸透することで、記録媒体上に記録した画像の耐擦性(摩擦堅牢性)を向上させることができる。換言すると、環状エステルは、塩化ビニル系樹脂との親和性が高いため、インクジェットインク組成物の成分を記録面に浸潤させやすい(食い付かせやすい)。環状エステルがこのような作用を有する結果、これを配合したインクジェットインク組成物が、屋外環境等の厳しい条件下であっても、耐擦性に優れた画像を形成できるものと考えられる。また、インク組成物中に含む定着樹脂などの固形分成分の溶解性にも優れるため、インクの長期保管中や使用中のインク中の樹脂の析出を防止してインクジェットヘッドからインクを吐出する際の吐出不良の原因となることが無いことや、記録物表面に付着した顔料を樹脂により均一に覆うことができ記録物の耐候性が一層優れ傾向があり好ましい。反面、上記環状エステルは、記録媒体内部へのインクの浸透を促進するため、記録媒体の表面の横方向へインクが広がることを抑制し、このため記録物におけるインク組成物の発色性を妨げる傾向がある。
【0035】
環状エステルとは、ヒドロキシル基とカルボキシル基とを有する1つの分子において、当該分子内で、該ヒドロキシル基と該カルボキシル基とが脱水縮合した構造を有する化合物である。環状エステルは、炭素原子を2個以上、酸素原子を1個含む複素環を有し、当該複素環を形成する酸素原子に隣接してカルボニル基が配置された構造を有し、ラクトンと総称される化合物である。
【0036】
環状エステルのうち、単純な構造を有するものとしては、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、σ−バレロラクトン、およびε−カプロラクトンなどを例示することができる。なお、環状エステルの複素環の環員数には特に制限が無く、さらに、例えば、複素環の環員には任意の側鎖が結合していてもよい。環状エステルは、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0037】
本実施形態のインク組成物によって形成される画像の耐擦性をより高める観点からは、上記例示した環状エステルのうち、3員環以上7員環以下の環状エステルが好ましく、5員環または6員環の環状エステルを用いることがより好ましく、いずれの場合でも側鎖を有さないことがより好ましい。このような環状エステルの具体例としては、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、およびγ−バレロラクトンが挙げられる。またこのような環状エステルは、特に、ポリ塩化ビニルとの親和性が高いので、ポリ塩化ビニルが含有される記録媒体に付着された場合に、耐擦性を高める効果を極めて顕著に得ることができる。
【0038】
環状エステルを配合する場合における、インクジェットインク組成物の全量に対する含有量(複数種を使用する場合にはその合計量)は、2質量%以上40質量%以下であり、好ましくは5質量%以上40質量%以下、より好ましくは10質量%以上30質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以上20質量%以下である。含有量が上記範囲内である場合、耐擦性、発色性、吐出安定性、光沢性、凝集ムラ抑制の点で一層好ましい。
【0039】
1.1.3.その他の溶剤
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、溶剤として、上記の他に、以下のような化合物を用いることができる。
【0040】
そのような溶剤としては、例えば、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、フッ化アルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、多価アルコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等)等が挙げられる。
【0041】
また、溶剤として、(多価)アルコール類を含有してもよい。(多価)アルコール類としては、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールや、2−メチルペンタン−2,4−ジオールなどが挙げられる。
【0042】
インクジェットインク組成物に、(多価)アルコール類を含有させる場合の合計の含有量は、記録媒体上での濡れ拡がり性及び浸透性を向上させて濃淡むらを低減させる効果や、保存安定性及び吐出信頼性を確保する観点から、インクジェットインク組成物の全質量に対して、0.05質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。(多価)アルコール類の含有量が上記範囲内にあることで、インクの濡れ性、浸透性、乾燥性が良好となり、良好な印刷濃度(発色性)を備えた画像が得られる場合がある。また、(多価)アルコール類の含有量が上記範囲内にあることで、インクの粘度を適正にすることができ、ノズルの目詰まり等の発生を低減できる場合がある。
【0043】
また、インクジェットインク組成物にはアミン類を配合してもよく、例えば、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、N,N−ジメチル−2−アミノエタノール、N,N−ジエチル−2−アミノエタノール等のヒドロキシルアミンが挙げられ、1種または複数種を用いることができる。アミン類を含有させる場合の合計の含有量は、インクジェットインク組成物の全質量に対して、0.05質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。
【0044】
また、溶剤として、ラウリン酸メチル、ヘキサデカン酸イソプロピル(パルミチン酸イソプロピル)、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル等の高級脂肪酸エステル、炭素数2〜8の脂肪族炭化水素のジカルボン酸(炭素数はカルボキシル基の炭素を除く)を炭素数1〜5のアルキル基でジエステル化した二塩基酸ジエステル、並びに、炭素数6〜10の脂肪族炭化水素のモノカルボン酸(炭素数はカルボキシル基の炭素を除く)をアミド化した(アミド窒素原子を置換している置換基がそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基である)アルキルアミド(N,N−ジメチルデカンアミド等)等が挙げられる。
【0045】
ここで例示したその他の溶剤は、一種又は複数種を、インクジェットインク組成物に対して、適宜の配合量で添加することができる。
【0046】
1.2.顔料
本実施形態のインクジェットインク組成物は、顔料としてC.I.ピグメントオレンジ−43(PO−43)を含むことが好ましい。C.I.ピグメントオレンジ−43(PO−43)を含むことで、記録物が、屋外での使用にも好適な優れた耐候性と暖色系の広い色再現範囲が得られる。
【0047】
PO−43は、CAS登録番号4424−06−0の顔料であり、化学名は、ビスベンゾイミダゾ[2,1−b:2’,1’−i]ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン−8,17−ジオン、又は、1,8−(1H−ベンゾイミダゾール−2,1−ジイルカルボニル)−5,4−(1H−ベンゾイミダゾール−2,1−ジイルカルボニル)ナフタレンである。PO−43は、ペノリン構造を有し、一般名として「ペノリンオレンジ」が与えられている。PO−43の色相としては、鮮やかな赤味のオレンジである。なお、「C.I.」は、カラーインデックスの略である。非水系インクジェットインク組成物がC.I.ピグメントオレンジ−43(ピグメントオレンジ−43、PO−43)を含むことで、暖色系の色再現領域を広げることができ、かつ、耐候性、発色性にも優れる記録物の記録が可能となる。発色性が優れることは、所定の濃度の印刷を行う際に要する記録媒体へのインクの付着量を少なくできる点で有利である。インクの付着量が少ないことは、乾燥を早めて、凝集ムラ低減などにより画質を向上する点で有利であり、印刷コスト低減の点でも有利である。
【0048】
暖色系の色再現領域は、CIE(国際照明委員会)が推奨した、L
*a
*b
*表色系において、a
*とb
*が共に正の範囲を言う。本実施形態において、C.I.ピグメントオレンジ−43を含むインク組成物を、特定の非水系インク組成物とも言う。本実施形態のC.I.ピグメントオレンジ−43を含むインク組成物は、少なくともC.I.ピグメントオレンジ−43を含むものであればよく、オレンジインク、イエローインク、レッドインク、マゼンタインクなどなどにしてもよい。後述の基本色インクと比べて暖色系の色の印刷に特に用いられるインクとしてもよい。特にオレンジ色の色再現領域が広いことからオレンジインク(オレンジインク組成物)とする場合に特に有用である。オレンジインクはオレンジ系の着色に用いるインクである。オレンジインクは、商品名がオレンジインクやこれと実質的に似た意味の商品名のインクである場合は少なくともオレンジインクとする。また、後述の基本色インクと比べてオレンジ色の印刷に特に用いられるインクが該当する。
【0049】
PO−43は、市販品を利用することができ、例えば、Clariant社の「Hostaperm Orange」、「PV Gast Orange GRL」、DIC株式会社製「Fasogen Super Orange 6200」、東洋インキ株式会社製「Lionogen Orange GR−F」等として入手することができる。
【0050】
本実施形態のインクジェットインク組成物に含有されるPO−43の体積平均粒子径は、吐出安定性や耐候性や発色性の点で100nm以上400nm以下が好ましく、より好ましくは150nm以上300nm以下である。ここで顔料の体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により評価することができる。具体的には、インク化した検体(顔料)を、DEGdEE(ジエチレングリコールジエチルエーテル)にて1000ppm以下となるように希釈し、これをレーザー回折・散乱測定装置(例えば、マイクロトラックUPA250(日機装株式会社製))を用いて20℃の環境下で、メディアン径D50の値を読み取ることにより測定することができる。したがって、異なる体積平均粒子径を有するPO−43を混合して使用する場合においても、それぞれの体積平均粒子径及び混合物の体積平均粒子径を測定することもできる。
【0051】
本実施形態のインクジェットインク組成物の全量に対する、PO−43の含有量は、好ましくは0.05質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上10質量%以下であり、よりさらに好ましくは1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上8質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上7質量%以下である。
【0052】
一方、本実施形態のインクジェットインク組成物は、上述のPO−43以外の色材をさらに含有してもよい。そのような色材としては、PO−43と類似する色相の顔料及び染料が挙げられ、例えば、カラーインデックス番号で、C.I.ピグメントオレンジの番号が与えられている顔料や、C.I.ピグメントレッドの番号が与えられているものなどが挙げられる。
【0053】
1.3.定着樹脂
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は定着樹脂を含有することが好ましい。定着樹脂は顔料などのインクに含む固形分を記録媒体に保護、接着し耐擦性を高める樹脂である。使用し得る定着樹脂としては塩化ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂などがある。定着樹脂は、インクに含む溶剤が前記環状エステル溶剤である場合、良好に溶解されインクに溶解させることができる。その結果、定着樹脂により記録媒体の表面にインクを強固に定着させることができ記録物の耐擦性に優れ、また、インクに溶解しきらずに異物となりインクジェット吐出時の吐出安定性を低下させることがない。定着樹脂の中でも、塩化ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂は、溶剤、特に環状エステルへの溶解性が特に優れ、耐擦性に特に優れ好ましい。
【0054】
塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル重合体、塩化ビニル共重合体などがあげられ、塩化ビニル共重合体としては、塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体などが挙げられる。塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体は、インクに含む溶剤が前記溶剤群Aの溶剤である場合、溶解性が特に優れ良好にインクに溶解させることができる。その結果、溶剤に溶解した塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体により、塩化ビニル系樹脂を含有する記録媒体の表面にインクを強固に定着させることができる。
【0055】
塩化ビニル系樹脂は、常法によって得ることができ、例えば、懸濁重合によって得ることができる。具体的には、重合器内に水と分散剤と重合開始剤を仕込み、脱気した後、塩化ビニル及び酢酸ビニルを圧入し懸濁重合を行うか、塩化ビニルの一部と酢酸ビニルを圧入して反応をスタートさせ、残りの塩化ビニルを反応中に圧入しながら懸濁重合を行うことができる。
【0056】
塩化ビニル系樹脂は、その構成として、塩化ビニル単位を70〜90質量%含有することが好ましい。上記の範囲であれば、インクジェットインク組成物中に安定して溶解するため長期の保存安定性に優れる。さらには、吐出安定性に優れ、記録媒体に対して優れた定着性を得ることができる。
【0057】
塩化ビニル系樹脂は、例えば、塩化ビニル単位及び酢酸ビニル単位とともに必要に応じて、その他の構成単位を備えていても良く、例えば、カルボン酸単位、ビニルアルコール単位、ヒドロキシアルキルアクリレート単位が挙げられ、とりわけビニルアルコール単位が好ましく挙げられる。前述の各単位に対応する単量体を用いることで得ることができる。カルボン酸単位を与える単量体の具体例としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。ヒドロキシアルキルアクリレート単位を与える単量体の具体例としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテルなどが挙げられる。これらの単量体の含有量は本発明の効果を損なわない限り限定されないが、例えば単量体全量の15質量%以下の範囲で共重合させることができる。
【0058】
塩化ビニル系樹脂は、市販されているものを用いてもよく、例えば、ソルバインCN、ソルバインCNL、ソルバインC5R、ソルバインTA5R、ソルバインCL(以上、日信化学工業社製)などが挙げられる。
【0059】
塩化ビニル系樹脂は、平均重合度は、特に限定されないが、好ましくは150〜1100、より好ましくは200〜750である。塩化ビニル系樹脂は、平均重合度が上記の範囲である場合、本実施形態のインク組成物中に安定して溶解するため長期の保存安定性に優れる。さらには、吐出安定性に優れ、記録媒体に対して優れた定着性を得ることができる。なお、塩化ビニル系樹脂は、平均重合度は、比粘度を測定し、これから算出されるものであり、「JISK6720−2」に記載の平均重合度算出方法に準じて求めることができる。
【0060】
また、塩化ビニル系樹脂は、数平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは10000〜50000、より好ましくは12000〜42000である。なお、数平均分子量は、GPCによって測定することが可能であり、ポリスチレン換算とした相対値として求めることができる。
インクジェットインク組成物中における塩化ビニル系樹脂の含有量は、例えば、0.05〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%、より好ましくは0.5〜3質量%、さらに好ましくは0.5〜2.5質量%、特に好しくは1〜2質量%とすることができる。含有量が前記範囲であると、溶剤への溶解性が良好でインクの吐出安定性に優れ、記録媒体に対して優れた定着性が得られ耐擦性が優れる。また含有量が上記範囲内であると、記録物が白っぽく濁って見えてしまうことがなく優れた発色が得られる。このことは、特にC.I.ピグメントオレンジ−43を含むインクの場合、暖色系の色の優れた発色性を得るために特に好ましい。
【0061】
(メタ)アクリル系樹脂((メタ)アクリル樹脂)は、アクリル系樹脂又はメタクリル系樹脂を意味する。(メタ)アクリルモノマーの重合体や(メタ)アクリルモノマーと他のモノマーとの共重合体である。(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、エチル−、プロピル−、またはブチル−(メタ)アクリレートなどのアルキル−(メタ)アクリレート:ヒドロキシメチル−、ヒドロキシエチル−、ヒドロキシプロピル−、ヒドロキシブチル−、ヒドロキシペンチル−(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の単独重合体またはこれらの共重合体が挙げられるが、メチル(メタ)アクリレート単独重合体、また、メチル(メタ)アクリレートとブチル(メタ)アクリレートの共重合体、メチル(メタ)アクリレートとエチル(メタ)アクリレートの共重合体、メチル(メタ)アクリレートとプロピル(メタ)アクリレートの共重合体が好ましい。
(メタ)アクリルモノマーと他のモノマーとの共重合体としては、スチレン(メタ)アクリル共重合樹脂などのオレフィン(メタ)アクリル共重合樹脂が挙げられる。(メタ)アクリルモノマーと他のモノマーとの共重合体における(メタ)アクリルモノマーの質量比としては、30質量%以上が好ましく50質量%以上がより好ましい。
【0062】
市販の(メタ)アクリル樹脂としては、例えばロームアンドハース社の「パラロイドB99N」(メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート共重合体)Tg82℃、重量平均分子量15,000)、「パラロイドB60」(メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート共重合体)Tg75℃、重量平均分子量50,000)等が例示される。
【0063】
(メタ)アクリル樹脂は、上記一般式(1)で示されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテル、または、上記一般式(3)で示されるポリオキシエチレン(アルキレン)グリコールアルキルエーテルアセテート中でラジカル重合開始剤を用いて溶液重合して得られる(メタ)アクリル樹脂とするとよい。
【0064】
(メタ)アクリル樹脂を溶液重合して形成することにより、溶剤への溶解性を向上させることができ、良好な吐出安定性、耐擦性、再溶解性に優れたインクジェットインク組成物とできる。
【0065】
(メタ)アクリル樹脂の分子量ならびにガラス転移温度(Tg)は任意であるが、(メタ)アクリル樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は8,000〜100,000、好ましくは10,000〜60,000である。また、(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は70℃以上、特に80℃以上であるものが好ましい。なお、ガラス転移温度の上限は120℃程度である。重量平均分子量またはTgが上記範囲内とすることにより、良好なインク保存安定性と、乾燥性、隠蔽性等が良好な印刷物が得られるという効果が特に顕著となるので好ましい。
インクジェットインク組成物中における(メタ))アクリル系樹脂の含有量は、例えば、0.05〜10質量%、好ましくは0.5〜7質量%、より好ましくは1〜6質量%、さらに好ましくは2〜5質量%、よりさらに好ましくは2.5〜5質量%、特に好ましくは2.5〜4.5質量%、より特に好ましくは3〜4.5質量%とすることができる。含有量が前記範囲であると、溶剤への溶解性が良好でインクの吐出安定性に優れ、記録媒体に対して優れた定着性が得られ耐擦性が優れる。
【0066】
他の定着樹脂をインクに含有させてもよい。他の樹脂としては、例えば、ロジン変成樹脂、フェノール樹脂、テルペン系樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、セルロースアセテートブチレート等の繊維素系樹脂、ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体樹脂等が挙げられ、溶解性、耐擦性が優れる点で、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂が好ましい。
【0067】
インクジェットインク組成物中における定着樹脂の含有量は、例えば、0.05〜10質量%、好ましくは0.5〜7質量%、より好ましくは1〜6質量%、さらに好ましくは2〜5質量%とすることができる。定着樹脂の含有量が前記範囲であると、溶剤への溶解性が良好でインクの吐出安定性に優れ、記録媒体に対して優れた定着性が得られ耐擦性が優れる。
【0068】
インクジェットインク組成物において、環状絵エステルの総含有量に対する定着樹脂の総含有量の比が質量基準で0.1〜1.5であることが好ましく、0.1〜1.0であることがより好ましく、0.2〜0.5がさらに好ましく、0.3〜0.5が特に好ましい。前記量比の範囲内であれば、溶剤中に定着樹脂を容易に溶解させることができノズルの目詰まりが起こりにくくなり、かつ記録媒体の表面へのインク定着性を充分に向上できる。上述の定着樹脂の含有量や量比において、定着樹脂として塩化ビニル系樹脂及びまたは(メタ)アクリル系樹脂とする場合、上記の点でより好ましい。
インクが定着樹脂として塩化ビニル系樹脂及び(メタ)アクリル系樹脂を含有する場合、耐擦性、耐候性、吐出安定性などを共にバランスよく優れたものとできる点で好ましい。
【0069】
1.4.その他
(界面活性剤)
本実施の形態に係るインクジェットインク組成物には、前記有機溶媒の他に、表面張力を低下させ記録媒体との濡れ性を向上させる観点から、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、または非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン誘導体を添加してもよい。
【0070】
シリコン系界面活性剤としては、ポリエステル変性シリコンやポリエーテル変性シリコンを用いることが好ましい。具体例としては、BYK−347、348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(いずれもビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
【0071】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK−340(ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
【0072】
また、ポリオキシエチレン誘導体としては、アセチレングリコール系界面活性剤を用いることが好ましい。具体例としては、サーフィノール82、104、465、485、TG(いずれもエアープロダクツジャパン社製)、オルフィンSTG、E1010(いずれも日信化学株式会社製)、ニッサンノニオンA−10R、A−13R(いずれも日油株式会社製)、フローレンTG−740W、D−90(共栄社化学株式会社製)、ノイゲンCX−100(第一工業製薬株式会社製)等が挙げられる。
【0073】
本実施形態に係るインクジェットインク組成物中における界面活性剤の含有量は、好ましくは0.05質量%以上3質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上2質量%以下である。
【0074】
(分散剤)
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、顔料の分散安定性を向上させる観点から、通常のインク組成物において用いられる任意の分散剤を用いることができる。このような分散剤の具体例としては、ヒノアクトKF1−M、T−6000、T−7000、T−8000、T−8350P、T−8000E(いずれも武生ファインケミカル株式会社製)等のポリエステル系高分子化合物、Solsperse20000、24000、32000、32500、33500、34000、35200、37500(いずれもLUBRIZOL社製「ソルスパース」)、Disperbyk−161、162、163、164、166、180、190、191、192(いずれもビックケミー・ジャパン社製)、フローレンDOPA−17、22、33、G−700(いずれも共栄社化学株式会社製)、アジスパーPB821、PB711(いずれも味の素株式会社製)、LP4010、LP4050、LP4055、POLYMER400、401、402、403、450、451、453(いずれもEFKAケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0075】
また、分散剤としては、金属石鹸、塩基性基を有する高分子分散剤等を用いることもでき、塩基性基を有する高分子分散剤が好ましい。特に、塩基性基としてアミノ基、イミノ基又はピロリドン基を有するものが好ましい。塩基性基を有する高分子分散剤として、ポリアルキレンポリアミン、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、変性ポリウレタン、ポリエステルポリアミン等を用いることができる。
【0076】
塩基性基を有する高分子分散剤の具体例としては、BYKChemie社製の「Anti−Terra−U(ポリアミノアマイドリン酸塩)」、「Anti−Terra−204(高分子量ポリカルボン酸塩)」、「Disperbyk−101(ポリアミノアマイドリン酸塩と酸エステル)130(ポリアマイド)を挙げることができる。また、アビシア社製のソルスパース5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、13940(ポリエステルポリイミン)、17000、18000、19000(ポリエステルポリアミン)、11200(ポリエステルポリイミン)を挙げることができる。また、ISP社製のV−216、V−220(長鎖アルキル基を持ったポリビニルピロリドン)を挙げることができる。
【0077】
本実施形態に係るインク組成物において、前記分散剤を使用する場合の含有量は、含有される顔料に応じて適宜選択することができるが、インク組成物中の顔料の含有量100質量部に対して、好ましくは5質量部以上200質量部以下、より好ましくは30質量部以上120質量部以下である。顔料分散剤は用いる顔料に応じて分散安定性に優れるよう適したものを使用すれば良い。
【0078】
(その他)
本実施形態のインクジェットインク組成物は、上記の成分の他にも、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)等のキレート化剤、防腐剤・防かび剤、及び防錆剤など、所定の性能を付与するための物質を含有することができる。
【0079】
2.インクセット
本実施の形態に係るインクセットは、上述の溶剤とピグメントオレンジ−43(PO−43)を含む非水系インクジェットインク組成物と、溶剤と顔料とを含む非水系シアンインクジェットインク組成物と、溶剤と顔料とを含む非水系マゼンタインクジェットインク組成物と、溶剤と顔料とを含む非水系イエローインクジェットインク組成物と、を少なくとも備えるインクセットとすることが、暖色系の色再現範囲が広く、記録物の耐候性にも優れる点で好ましい。
【0080】
上述のピグメントオレンジ−43(PO−43)を含む非水系インクジェットインク組成物は、溶剤と顔料としてピグメントオレンジ−43(PO−43)を含むものとした前述のインクジェットインク組成物とする場合、前述の効果を奏する点で好ましい。非水系シアンインクジェットインク組成物、非水系マゼンタインクジェットインク組成物、非水系イエローインクジェットインク組成物(以下、基本色インクという)は、それぞれ、顔料として、シアン系顔料、マゼンタ系顔料、イエロー系顔料を含むこと以外は、前述のインクジェットインク組成物と同様の組成とすることが好ましく、特に溶剤A、さらには引火点140℃以下の溶剤A、よりさらには引火点70℃以下の溶剤A、及びまたはグリコールモノエーテルである溶剤Aを含むインクとする場合、前述の効果を奏する点で特に好ましい。
【0081】
基本色インク組成物に含む顔料としては、それぞれ、従来の非水系インク組成物に通常用いられている有色無機顔料または有色有機顔料等の顔料を用いることができる。顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料;塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキ;ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料;カーボンブラック等の無機顔料等が挙げられる。顔料粒子の平均一次粒径は、特に限定されるものではないが、好ましくは50nm以上500nm以下である。
【0082】
マゼンタインクに用いるマゼンタ系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド194、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド222、C.I.ピグメントレッド224等が挙げられる。
【0083】
イエローインクに用いるイエロー系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー180等が挙げられる。
【0084】
シアンインクに用いるシアン系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントブルー15:4等が挙げられる。
【0085】
基本色インクの顔料は、インクに対し1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。インク組成物における顔料の含有量は、好ましくは0.5〜25質量%、より好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは2〜10質量%、特に好ましくは3〜7質量%である。
【0086】
基本色インクと非水系オレンジインクジェットインク組成物は、それぞれ、溶剤として前述の一般式(1)で表される化合物の1種以上を含む場合、特に、インク組成物としての特性、例えば、乾燥性、凝集ムラ抑制、光沢性、発色性などの点でバランスよく優れ好ましい。特に、溶剤として前述の一般式(1)で表される化合物の引火点が140.℃以下のものを含むことで、乾燥が促進されることにより、インクの凝集ムラの低減の点で好ましく、複数のインクを用いて二次色以上の色の記録を行う際に、インクが凝集してしまいきれいな二次色が得られないという問題を低減する点で好ましい。溶剤として前述の一般式(1)で表される化合物の1種以上、中でも引火点が140℃以下、さらに引火点が120℃以下、特に引火点が70℃以下、及びまたはグリコールモノエーテルのものを含む場合、それらの含有量は前述の範囲が好ましい。
基本色インクと非水系オレンジインクジェットインク組成物は、それぞれ、溶剤として前述の環状エステル溶剤の少なくとも何れかを含む場合、耐擦性、耐候性、吐出安定性が一層優れる点で好ましい。溶剤として環状エルテルの1種以上を含む場合、その含有量は前述の範囲が好ましい。
【0087】
本実施形態のインセットにはさらに他の非水系インクジェットインク組成物を備えても良い。他の非水系インクジェットインク組成物としては、顔料として上記の各系顔料とは異なるものを含有するインク組成物や、着色のために用いるものではないクリアインク組成物などがあげられる。他の非水系インクジェットインク組成物の顔料種以外の構成については前述のインクジェットインク組成物と同様にすることができる。例えばブラック系顔料を含む非水系インクジェットブラックインク組成物を備える場合、濃色系(L
*値の低い色領域)の色再現範囲が広く好ましい。ブラック系顔料としては、例えば、カーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)等が挙げられる。
【0088】
3.インクジェット記録方法
本実施の形態に係るインクジェット記録方法は、前述したインクジェットインク組成物またはインクセットを用いて、記録媒体に対してインクジェット法により記録することを特徴とする。本実施の形態に係るインクジェット記録方法によれば、前述したインクジェットインク組成物またはインクセットを用いるので、耐候性が良好で暖色系色再現領域が広い画像を形成でき、さらに、かつ、安定したインクジェット記録が可能で、画質及び堅牢性の良好な画像の記録が可能である。記録媒体は塩化ビニル系記録媒体が上記の点で好ましい。また、インクジェット記録方法で記録を行うものであるインクジェットインク組成物またはインクセットとしてもよい。
【0089】
インクジェットインク組成物又はインクセットのインクに溶剤群Aの溶剤を含む場合、該溶剤は、塩化ビニル系樹脂と相互作用する。そのため、本実施の形態に係るインクジェット記録方法は、塩化ビニル系記録媒体の表面に前述したインクジェットインク組成物の液滴を付着させて画像を記録する場合に、記録媒体上に強固に定着される点で優れている。
【0090】
本実施の形態に係るインクジェット記録方法における塩化ビニル系記録媒体としては、塩化ビニル系樹脂を含有するものであれば特に限定されない。塩化ビニル系樹脂を含有する記録媒体としては、硬質もしくは軟質の塩化ビニル系フィルムまたはシート等が挙げられる。前述したインクジェットインク組成物は、塩化ビニル系樹脂基材における無処理表面への画像の記録を可能ならしめるものであり、従来の受容層を有する記録媒体のごとく、高価な記録媒体の使用を不要とする優れた効果を有するが、インク受容層により表面処理された基材であっても適用できることは言うまでもない。
【0091】
本実施の形態に係るインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置は、特に限定されないが、ドロップオンデマンド型のインクジェット記録装置が好ましい。ドロップオンデマンド型のインクジェット記録装置には、記録ヘッドに配設された圧電素子を用いて記録を行う圧電素子記録方法を採用したもの、記録ヘッドに配設された発熱抵抗素子のヒーター等による熱エネルギーを用いて記録を行う熱ジェット記録方法を採用したもの等があるが、いずれの記録方法も採用することができる。また、本実施の形態に係るインクジェットインク組成物は、撥インク処理された吐出ノズル表面に対して不活性であるという利点を有するので、例えば撥インク処理された吐出ノズル表面を有するインクジェット記録用ヘッドから吐出させるインクジェット記録方法に有利に用いることができる。
【0092】
記録媒体へインクジェット法によりインク組成物を付着させる際に、記録媒体を加熱して行う場合、インクの乾燥を早めて凝集ムラを低減でき、記録物耐擦性向上ができる点で好ましい。加熱はプラテンにヒーターを設けて行うなどし記録媒体の記録面と反対側から加熱することや、記録媒体の記録面の上方から記録媒体へ電子線照射や送風することで行うことができる。インク組成物を付着させる際の記録媒体の記録面の表面温度は、15℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、25℃以上が更に好ましく、30℃以上が特に好ましく、35℃以上がより特に好ましく、40℃以上が一層好ましい。温度の上限は限るものではないが100℃以下が好ましく、70℃以下が更に好ましく、60℃以下がより好ましい。温度が上記範囲の場合、凝集ムラ低減、吐出安定性、光沢性、耐擦性、発色性の点で好ましい。
【0093】
3.実施例
以下に実施例を示し、本発明をさらに説明するが、本発明は以下の例によってなんら限定されるものではない。
【0094】
3.1.インク組成物例
3.1.1.顔料分散液の調製
顔料として一次粒径160nmのピグメントオレンジ43(PO−43)を用意した。分散剤としてソルスパース17000(ルーブリゾール社製、ポリエステルポリアミン)を用い、当該顔料に対して同質量の範囲で分散剤の添加量をして分散液を作製した。分散媒としては、各インク組成例ごとに溶剤として最も含有量の多い溶剤を分散媒として用い顔料分散液とした。ピグメントオレンジ31、64、71についてもこれと同様にして顔料分散液を得た。顔料の体積平均粒子径はいずれも約200nmとした。
【0095】
3.1.2.インク組成物の調製
上記で調製された顔料分散液を用いて、表に示す材料組成にて顔料や組成の異なるインク組成物を調製した。各インク組成物は、表中に示す材料を容器中に入れ、マグネチックスターラーにて2時間混合撹拌した後、孔径5μmのメンブランフィルターにて濾過してゴミや粗大粒子等の不純物を除去することにより調製した。なお、表中の組成欄の数値は、質量%を示す。
【0096】
なお、表に示した略称又は商品名は、以下の通りである。
<顔料>
・PO−43:C.I.ピグメントオレンジ43
・PO−31:C.I.ピグメントオレンジ31
・PO−64:C.I.ピグメントオレンジ64
・PO−71:C.I.ピグメントオレンジ71
<環状エステル溶剤>
・γ−ブチロラクトン:商品名、関東化学株式会社製
・σ−バレロラクトン:商品名、キシダ化学株式会社製
【0097】
<一般式(1)溶剤>
・DEGMEE:ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、商品名「ハイソルブEDM」、東邦化学工業株式会社製、引火点64℃)
・DEGdME:ジエチレングリコールジメチルエーテル、商品名「ジエチレングリコールジメチルエーテル」、東京化成工業株式会社製、引火点56℃)
・DEGDEE:ジエチレングリコールジエチルエーテル、商品名「ジエチレングリコールジエチルエーテル」、東京化成工業株式会社製、引火点71℃)
・DEGBME:ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、商品名「ハイソルブBDM」、東邦化学工業株式会社製、引火点94℃)
・TriEGdME:トリエチレングリコールジメチルエーテル、商品名「トリエチレングリコールジメチルエーテル」、キシダ化学株式会社製、引火点113℃)
・TetraEGdME:テトラエチレングリコールジメチルエーテル、商品名「テトラエチレングリコールジメチルエーテル」、東京化成工業株式会社製、引火点141℃)
・TetraEGmBE:テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、商品名「ブチセノール40」、KHネオケム株式会社製、引火点177℃)
【0098】
<その他溶剤>
・AF−7:JX日鋼日石エネルギー社製、ナフテン系炭化水素溶剤。
・パルミチン酸イソオクチル:日光ケミカルズ社製、脂肪酸エステル溶剤。
<顔料分散剤>
・ソルスパース17000:商品名、ルーブリゾール社製、ポリエステルポリアミン
<界面活性剤>
・BYK340:商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、シリコン系界面活性剤
<定着樹脂>
・ソルバインCL:商品名、日信化学工業株式会社製、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体
・パラロイドB60:商品名、ダウケミカル社製、(メタ)アクリル樹脂。
【0099】
3.1.3.評価試験
3.1.3.1.耐候性
調製した各インク組成物を用いて、インクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、型式「SC−S70650」)により、初期OD値が0.5、1.0、最大値となるようにDutyを調整しながら印刷を行った。記録解像度1440×1440dpiとした。インク付着の際、プラテンヒーターを作動させ記録媒体表面温度を表中の値とした。記録媒体には、光沢ポリ塩化ビニルシート(ローランドDG社、型番SV−G−1270G)を使用した。得られた記録物を一般環境下で1時間放置して乾燥させた。その後、得られた記録物をキセノンウェザーメーター(スガ試験機株式会社製)のチャンバー内に投入し、「光照射25分間」→「光照射+水降雨20分間」→「光照射30分間」→「水降雨60分間」のサイクル試験を行った。このサイクル試験を4週間連続して行い、4週間後にその記録物を取り出した。取り出した各記録物について、グレタグ濃度計(グレタグマクベス社製)を用いてOD値を測定し、OD値の残存率(%)を求め、初期OD値が0.5、1.0、最大値の3種の記録物のうち、残存率が最も低い記録物を評価の対象とした。耐候性は、下記基準に基づき判定した。その結果を表に示す。
5:OD値残存率が90%以上
4:OD値残存率が87%以上90%未満
3:OD値残存率が84%以上87%未満
2:OD値残存率が81%以上84%未満
1:OD値残存率が81%未満
【0100】
3.1.3.2.吐出安定性(間欠評価)
インクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、型式「SC−S70650」)に搭載されているピエゾ素子の振動数を7kHzとし、その駆動波形を最適化した状態で、各インク組成物についてヘッドの各ノズルから250秒間の液滴の連続吐出を行い、その後300秒間液滴の吐出を中断した(1シーケンス)。その後、同様に、液滴の連続吐出、及び、吐出の中断の操作を10シーケンス繰り返し行った。その間、ノズル面温度は表中の記録媒体温度と同じ温度にヒーターで加熱した。10シーケンス終了時において、ノズル360個中の不吐出ノズル数をカウントすることにより印字安定性評価(間欠評価)を行った。その評価結果を表に示す。なお、評価基準は、以下の通りである。
4:不吐出ノズル数が0個
3:不吐出ノズル数が1〜2個
2:不吐出ノズル数が3〜4個
1:不吐出ノズル数が5個以上
【0101】
3.1.3.3.光沢性(画質)
上記プリンターを用いて、実施例および比較例の各インク組成物を光沢ポリ塩化ビニルシート(ローランドDG社、型番SV−G−1270G)上に記録解像度1440×1440dpiの100%濃度でベタ印刷をした。インク付着の際、プラテンヒーターを作動させ記録媒体表面温度を表中の値とした。その後、25℃−65%RH(相対湿度)にて1日間乾燥させて各例の記録物を作製した。このようにして得られた記録物を、光沢度計MULTI Gloss 268(コニカミノルタ社製)を用いて、記録面20°反射の光沢度を測定した。その評価結果を表に示す。なお、評価基準は、以下の通りである。
4:50以上
3:40以上50未満
2:30以上40未満
1:30未満
【0102】
3.1.3.4.凝集ムラ
上記「光沢性の評価」と同様にして各例の記録物を作製した。このようにして得られた記録物の記録面における顔料の凝集ムラを目視にて観察することにより、凝集ムラの評価を行った。その評価結果を表に示す。なお、評価基準は、以下の通りである。
4:凝集ムラが認められない。
3:拡大観察で凝集ムラが認められる。
2:若干の凝集ムラが認められる。
1:凝集ムラが目立つ。
【0103】
3.1.3.5.耐擦性
上記「光沢性の評価」と同様にして各例の記録物を作製した。このようにして得られた記録物につき、JIS K5701(ISO 11628)に準じて、学振式摩擦堅牢度試験機(テスター産業株式会社製、商品名「AB−301」)を用いて耐擦性の評価を行った。すなわち、記録物の記録面に綿布を載せ、荷重500gで20回往復させて擦り、擦った後の記録物の記録面の剥離状態を目視にて観察した。その評価結果を表に示す。なお、評価基準は、以下の通りである。
3:綿布に汚れが無い。記録面に傷が無い。
2:綿布に記録物の付着がある。記録面に傷がほとんど無い。
1:綿布に記録物の付着がある。記録面に傷がある。
【0104】
3.1.3.6.発色性
上記の耐候性評価と同様にして印刷を行い、同様に初期OD値を測定した。ただし、記録媒体へのインクの付着量は何れの例も8mg/inch
2の付着量とし、記録解像度1440×1440dpiとした。評価結果を表に示す。
4:初期OD値が1.0以上
3:初期OD値が0.85以上1.0未満
2:初期OD値が0.7以上0.85未満
1:初期OD値が0.7未満
【0107】
3.1.4.評価結果
引火点140℃以下の溶剤Aとピグメントオレンジ43を含むインク組成物である組成物1〜12は何れも優れた画質(凝集ムラ低減)、耐候性、発色性を示した。また、記録媒体表面温度をより高くした記録例13は、画質や耐擦性の向上の点で優れており、発色性、吐出安定性も良好であった。これに対し、引火点140℃以下の溶剤Aの溶剤を含まないインク組成物13、14、19は画質が劣り、ピグメントオレンジ43を含まない組成物15〜17は耐候性と発色性の何れかが劣った。引火点140℃以下の溶剤Aの溶剤もピグメントオレンジ43も含まないインク組成物18は、組成物17と比べて発色性は比較的良かったが、画質が劣った。また、引火点140℃以下の溶剤Aの溶剤を含まないインク組成物を用いて記録媒体表面温度をより高くした記録例21は、はやり画質が劣った。また、塩化ビニル系樹脂を比較的多く含有するインク組成物12は発色性がやや劣る傾向が見られたが、記録物が白く白濁して見え、このため発色性がやや劣ったと推測する。このことから、特にピグメントオレンジ43を含有するインクとして暖色系の優れた発色を得る場合に、塩化ビニル系樹脂の特に好ましい範囲があることがわかった。
【0108】
3.2.インクセット例
3.2.1.インク組成物調製
顔料と顔料分散剤の種類を変え、前述のインク組成物例と同様に他の色のインク組成物20〜23を調製した。顔料分散液は、顔料毎に適した顔料分散剤を使用した。
<顔料>
・P.B.15:3 C.I.ピグメントブルー15:3
・P.R.122: C.I.ピグメントレッド122
・P.Y.155: C.I.ピグメントイエロー155
・CB: カーボンブラック顔料
【0109】
3.2.2.評価試験
3.2.2.1.耐候性
前述のインク組成物例の耐候性評価と同様にして印刷を行った。ただし、各インクセットの備えるインクを使用して記録媒体へ色再現が可能な、L
*値が70、a
*b
*の成すa
*b
*平面上の色相角が45°においてC
*=√(a
*2+b
*2)の値が最も大きい色の印刷物を印刷し評価に用いた。その際のL
*a
*b
*値の確認には、分光測色系(コニカミノルタ社製)を用いた。耐候加速試験、OD値測定、評価基準はインク組成物例の耐候性評価と同様にして行った。評価結果を表に示す。
【0110】
3.2.2.2.ガマット体積
上記耐候性評価と同様にして印刷を行った。ただし、各インクセットのインクを使用して記録媒体へ色再現が可能な全ての色の印刷を行い、印刷可能なL
*a
*b
*色空間のガマット体積を計算した。結果を表に示す。
【0113】
3.2.2.3.凝集ムラ
前述のインク組成物の凝集ムラ評価と同様にして印刷と評価を行った。ただし、インクセットによる二次色以上の色を印刷した場合の凝集ムラの評価をするために、印刷は、インクセットを構成する5つのインクの記録媒体に対する合計のインクの付着量を、インク組成物の凝集ムラの評価の場合のインク付着量と同じとして、各インクごとのインクの付着量は等しくして5等分とした。また、インクセットとして、下記のインクセット5、6を構成し、インクセット1、5、6を用いて印刷を行った。
インクセット5: インク組成物20〜23、8。
インクセット6: インク組成物20〜23、13。
結果を下記に記す。
インクセットNo. 凝集ムラ
インクセット1 4
インクセット5 3
インクセット6 1
【0114】
3.2.3.評価結果
ピグメントオレンジ43を含むオレンジインク組成物を備えるインクセット1は、記録物の優れた耐候性を示しガマット体積も広かった。これに対し、ピグメントオレンジ43を含むオレンジインク組成物を備えないインクセット2〜4は、耐候性が劣ったかガマット体積が狭かった。また、各インクが溶剤Aの溶剤を含有するインクを含むインクセット1、5は二次色凝集ムラ低減にも優れ、インクセット1は特に優れていたが、溶剤郡Aの溶剤を含まないインク組成物13を含むインクセット6は二次色凝集ムラ低減の点で劣っていた。
【0115】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。